(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135775
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】内包磁石型モータおよびそのロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20230922BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041036
(22)【出願日】2022-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「部素材の代替・使用量削減に資する技術開発・実証事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 和徳
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622PP10
(57)【要約】
【課題】鎖交磁束の増加による性能向上が図れる内包磁石型モータ用ロータを提供する。
【解決手段】本発明は、磁性材からなるロータコア(1)のスロット(12)に永久磁石(3)が内包された内包磁石型モータ用ロータである。ロータコアは、一以上のスロットの少なくとも一方にある枠端外側に非磁性域(110)を有する。この非磁性域は、スロットの枠端中央(Ps)を基準に、磁極中心(Pc)から遠い側に偏在している。
非磁性域は、スロットの外周端側にあるブリッジに設けられても、スロットの隣接間にあるリブに設けられてもよい。非磁性域は、例えば、電磁鋼板の一部を非磁性改質して形成される。非磁性域の少なくとも一部は、ブリッジの径方向幅またはリブの隣接間隔が周囲よりも小さい狭幅部からなってもよい。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材からなるロータコアのスロットに永久磁石が内包された内包磁石型モータ用ロータであって、
該ロータコアは、一以上の該スロットの少なくとも一方にある枠端外側に非磁性域を有し、
該非磁性域は、該スロットの枠端中央を基準に、磁極中心から遠い側に偏在している内包磁石型モータ用ロータ。
【請求項2】
前記非磁性域は、前記スロットの外周端側にあるブリッジおよび/または該スロットの隣接間にあるリブに設けられる請求項1に記載の内包磁石型モータ用ロータ。
【請求項3】
前記非磁性域は、電磁鋼板の一部が非磁性改質されてなる請求項1または2に記載の内包磁石型モータ用ロータ。
【請求項4】
前記非磁性域の少なくとも一部は、前記ブリッジの径方向幅または前記リブの隣接間隔が周囲よりも小さい狭幅部からなる請求項2に記載の内包磁石型モータ用ロータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のロータと、
電機子を構成するステータと、
を備える内包磁石型モータ。
【請求項6】
前記スロットの外周端側に設ける非磁性域は、周方向長が前記ロータと前記ステータの間に形成される空隙幅より大きい請求項5に記載の内包磁石型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内包磁石型モータ用ロータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機(発電機を含めて単に「モータ」という。)には種々のタイプがある。最近ではインバータ制御の発達と高性能な希土類磁石の普及に伴い、省電力で高効率な同期機が多用されている。
【0003】
同期機(Synchronous Motor)は、回転子(ロータ)に永久磁石(界磁源)を、固定子(ステータ)に電機子巻線(コイル)を備え、電機子巻線に交流(AC)を供給して固定子に回転磁界を生じさせ、回転子を駆動するACモータである。
【0004】
同期機には、永久磁石が回転子の表面に配設された表面磁石型モータ(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor/「SPMモータ」という。)と、その永久磁石が回転子の内部に配設された内包(埋込)磁石型モータ(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor/「IPMモータ」という。)とがある。現在では、高トルク化や省電力化のみならず、永久磁石の飛散防止による信頼性の向上も図れるIPMモータが主流となっている。このようなIPMモータに関連した記載が、例えば、下記の特許文献にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-247850
【特許文献2】特開2015-201997
【特許文献3】WO2022/004672
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3はいずれも、回転子鉄心(ロータコア)の磁石孔(スロット)の外周端部(ブリッジ)に非磁性部(域)を設けることを提案している。これにより永久磁石から供給される磁束が、ブリッジで短絡することが抑止され、モータの性能向上が図られる。
【0007】
もっとも、いずれの特許文献にも、ブリッジ内における非磁性部(域)の配置や形態等について何ら記載も示唆もない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、内包磁石型モータの性能向上を図れる新たなロータ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究した結果、スロットの枠端外側に設ける非磁性域の配置を見直すことにより、ロータとステータの間に生じる鎖交磁束を増加させ得ることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0010】
《内包磁石型モータ用ロータ》
(1)本発明は、磁性材からなるロータコアのスロットに永久磁石が内包された内包磁石型モータ用ロータであって、該ロータコアは、一以上の該スロットの少なくとも一方にある枠端外側に非磁性域を有し、該非磁性域は、該スロットの枠端中央を基準に、磁極中心から遠い側に偏在している内包磁石型モータ用ロータである。
【0011】
(2)本発明の内包磁石型モータ用ロータ(単に「ロータ」という。)は、先ず、スロットの枠端外側に非磁性域を有する。これにより、その枠端外側の部分・領域(適宜「枠端部」という。)を通じて永久磁石から供給される磁束の一部が短絡することが抑止される。次に、その非磁性域は、スロットの枠端中央を基準にして、磁極中心から遠い側(適宜「外側」ともいう。)に偏って設けられている。このため、その枠端外側の周辺域において、永久磁石の磁束は、磁極中心に近い側(適宜「内側」ともいう。)にある磁性域(「非磁性域」以外の部分)を通じてステータへ誘導される。こうしてロータとステータの間の鎖交磁束の増加、ひいてはIPMモータの性能向上が図られる。
【0012】
《内包磁石型モータ》
本発明は、IPMモータとしても把握される。例えば、本発明は、上述したロータと、電機子を構成するステータと、を備える内包磁石型モータでもよい。このとき、スロット(ロータコア)の外周端側(ブリッジ付近)に設ける非磁性域は、例えば、周方向長(周方向の最小長)がロータとステータの間に形成される空隙幅(通常、エアギャップ)より大きいとよい。さらに、非磁性域の径方向長(径方向の最小長)も、その空隙幅より大きいとよい。これにより、スロット(ロータコア)の外周端側において、永久磁石から供給される磁束がステータ側へより誘導され易くなる。
【0013】
《その他》
(1)本明細書でいう「非磁性域」と「磁性域(非磁性域以外の領域)」は、磁束の通り易さにより定まる。例えば、非磁性域は磁性域よりも、低(初)透磁率、低飽和磁束密度または高磁気抵抗であるとよい。透磁率の調整は、例えば、材質(成分組成、組織等)の変化によりなされる。飽和磁化の調整は、例えば、材質変化の他、形態変化(狭幅化、空隙化等)によりなされ得る。
【0014】
(2)本明細書でいう「磁極中心」は、ロータの磁極毎にあり、永久磁石から供給される磁束が向かう仮想的な点である。磁極中心は、各磁極の中心線(対称線)上で、ロータの外周端線付近にある(例えば、
図1に示す点Pcまたは点Pp)。磁極中心の径方向上の位置はロータ(電動機)の仕様により異なるが、本明細書では、説明の便宜上、磁極の中心線(対称線)とロータの外周端線との交点(例えば、
図1に示す点Pc)を「磁極中心」とする。
【0015】
「枠端中央」は、基本的に、スロットを区画する枠線とスロットの中央線との交点(例えば、
図1に示す点Ps)とする。但し、非磁性域の区画に必要なら、その交点と、スロットの中央線がロータの外周端線または別なスロットの枠線と交差する点(例えば、
図1に示す点Pe)とを結ぶ線分を、「枠端中央」としてもよい。
【0016】
スロットの中央線は、磁極中心から引いた直線とスロットの枠線とが交差してできる交点間の中点の軌跡とする。
図1に基づいて例示するなら、磁極中心(Pc)から延びる直線とスロットの枠線との両交点(Pi、Po)の中点(Pm)を連ねた軌跡(Tm)がスロットの中央線となる。
【0017】
スロットは、通常、磁極中心を取り囲むように弧状に設けられる。スロットがリブ等で分割されて、複数の小スロットが弧状に配設されているとき、各小スロットの内・外枠線(磁極中心に近い枠線と遠い枠線)をそれぞれ延長(外挿)して、仮想的な大スロット(リブ等を排除して連結したスロット)を考える。その大スロットの中央線と小スロットの枠端との交点(若しくはは線分)を枠端中央とする。
【0018】
本明細書でいう「周方向」は、ロータの回転中心(軸)周りの方向であり、「径方向」はロータの回転中心から放射状に延びる方向である。磁極中心に対する遠近の方向は、周方向、径方向、それらの複合方向等のいずれでもよい。また「ロータ」は、インナーロータでもアウターロータでもよい。さらにIPMモータの磁極数(ロータやステータに設けるスロット数等)は2以上であればよい。
【0019】
(3)特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ロータとステータの一磁極分を例示する部分断面図である。
【
図2A】そのロータのブリッジ周辺の磁束線(第1例)を示す模式図とコンター図である。
【
図2B】そのブリッジ周辺の磁束線(第2例)を示す模式図とコンター図である。
【
図2C】そのブリッジ周辺の磁束線(第3例)を示す模式図とコンター図である。
【
図2D】そのブリッジ周辺の磁束線(第4例)を示す模式図である。
【
図3A】そのブリッジ周辺の磁束線(第1変形例)を示す模式図である。
【
図3B】そのブリッジ周辺の磁束線(第2変形例)を示す模式図である。
【
図3C】形態を変更したブリッジ周辺の磁束線を示す模式図である。
【
図4】ブリッジとリブに非磁性域を設けたときの磁束線を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中に記載した事項から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を、上述した本発明の構成に付加し得る。方法に関する構成要素も物(ロータ等)に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0022】
《ロータコア》
ロータコアは、磁性材からなり、永久磁石を内包(埋設)するスロットを、磁極毎に少なくとも一つ以上備える。その少なくとも一つのスロットの枠端外側に非磁性域が形成される。さらに非磁性域は、その枠端外側の一方のみに設けられても両方に設けられてもよい。
【0023】
(1)スロット
スロットの形状、配置、層数等は、ロータ(IPMモータ)の仕様により異なる。各磁極のスロットは、通常、磁極中心を囲むように、磁極中心に関して対称的に設けられる。
【0024】
(2)枠端部
スロットの枠端外側にある部分・領域(枠端部)は、ロータコアの外周端側にあるブリッジ、略弧状の大スロットを補強して大スロットを小スロットに分割するリブ等である。ブリッジは、通常、磁極毎に少なくとも二つ以上ある。磁極毎に二層構造のスロット(
図1参照)を設ける場合なら、ブリッジは磁極毎に四つとなる。ブリッジの形態は、スロットや非磁性域の形態等に応じて変化し得る。例えば、ブリッジは、径方向の幅が略一定な円弧状でもよいし、径方向の幅が変化する山型状等でもよい。なお、敢えてブリッジやリブを区画するなら、スロットの枠端外側の領域が、スロットの内側枠線と外側枠線をそれぞれ外挿した延長線により切り取られる範囲とすればよい。
【0025】
(3)非磁性域と磁性域
非磁性域が枠端部の外側(磁極中心から遠い側)に偏って設けられるため、逆にみれば、枠端部の内側(磁極中心に近い側)に磁性域が偏って形成される。このような磁性域が磁極中心側に形成される限り、非磁性域を設ける範囲や形態は問わない。
【0026】
非磁性域は、例えば、上述したブリッジやリブの範囲を外側に越えて設けられてもよい。但し、非磁性域の外側への過度な越境は、IPMモータのリラクタンストルクの低下を招く。このため非磁性域の外縁は、枠端部の外縁に沿っている(略一致)しているとよい。
【0027】
非磁性域は、例えば、磁性域を構成する磁性材(電磁鋼板等)に対して、材質(成分組成や組織等)を変化(「非磁性改質」または単に「改質」という。)させたものでもよいし、磁性域に対して形態を変化させたものでもよい。後者の一例として、非磁性域の少なくとも一部を、磁性域に対して径方向の幅を狭くしてもよい。これにより非磁性域を通過する磁束が飽和し易くなる。勿論、磁性域に対して、材質と形態の両方を変化させてもよい。なお、非磁性域の狭小化は、改質域の縮小化ともなり得る。
【0028】
ちなみに、非磁性改質は、例えば、既述した特許文献3(WO2022/004672)等に記載された方法によりなされる。特に、高エネルギービーム(レーザ等)の照射を利用すれば、微小な領域を高精度に改質できる。その際、非磁性域が狭いほど、改質の効率化や歪みの抑制が図られる。
【0029】
《永久磁石》
スロットに内包される永久磁石は、磁石粒子の成形体を焼結した焼結磁石でも、磁石粒子をバインダ樹脂で結着(固定)したボンド磁石でもよい。ボンド磁石は形状自由度が大きく、複雑形状のスロットに適する。なお、磁石粒子は、その種類、形態(粒径等)、異方性の程度等を問わない。
【0030】
永久磁石は、スロット内において、磁極中心付近に向いて(半径方向から斜め方向に配向して)磁化しているとよい。これにより、枠端部の内側(磁性域)を通過する磁束が増加し得る。このような永久磁石は、スロット内での磁場中成形や着磁により実現される。ボンド磁石の場合なら、例えば、異方性(希土類)磁石粒子を用いて、ロータコアのスロット内で配向磁場中成形されるだけでもよい。このとき、ボンド磁石の成形前に非磁性域が予め形成されているとよい。
【実施例0031】
IPMモータ用ロータに設ける非磁性域の配置や形態が、ロータとステータの間の鎖交磁束へ及ぼす影響をシミュレーションした。このような具体例に基づいて、本発明を以下に詳しく説明する。
【0032】
《ベースモデル》
シミュレーションに用いたベースモデルM(単に「モデルM」という。)の平面図を
図1に示した。モデルMは、8磁極からなるIPMモータの1磁極分(1/8モデル)である。モデルMは、ロータコア1と、ステータコア2と、永久磁石3を備える。ロータコア1とステータコア2は、所望形状に打ち抜いた電磁鋼板の積層体からなる。
図1に示すように、モデルMは磁極中央(中心線)に関して線対称であり、周方向に関して、磁極中心Pcに近い方を内側、磁極中心Pcから遠い方を外側とする。また、ロータコア1の回転中心から遠い方を拡径側、ロータコア1の回転中心に近い方を縮径側という。
【0033】
ロータコア1は、磁極中央に対称的に設けられた2層の略U字状のスロット12、16を有する。ロータコア1の外側にあるスロット12は、回転中心側にある3つのリブ13(補強部)により4分割されている。ロータコア1の内側にあるスロット16は、1つのリブ17により2分割されている。
【0034】
スロット12、16の最外周端側にある枠辺がブリッジ11、15(枠端部)となる。ブリッジ11の範囲は、例えば、スロット12の内側枠線12aと外側枠線12bをそれぞれ外挿した延長線と、スロット12の枠端線12cとロータコア1の最外周線1aとで囲まれた領域(ハッチング部分)となる。これはブリッジ15の範囲についても同様である。なお、ブリッジ11、15(枠端部)とリブ13(補強部)は、スロット12、16の枠端外側に相当する。
【0035】
スロット12、16内はいずれも、ボンド磁石3により充塞される。スロット12、16以外の部分は、基本的に電磁鋼板からなる磁性域である。
【0036】
ステータコア2は、5つのティース21と、各ティース21の周方向両側にある6つのスロット22を有する。スロット22には、電機子巻線(コイル)が配設される。スロット22以外の部分は、基本的に電磁鋼板からなる磁性域である。
【0037】
永久磁石3は、例えば、ロータコア1の外周側から配向磁場を印加した状態で、スロット12、16内において成形されるボンド磁石である。ボンド磁石は、例えば、異方性希土類磁石粒子がバインダ樹脂で結着されてなる。成形方法は、射出成形でも圧縮成形でもよい。スロット12、16内で配向磁場中成形したボンド磁石は、後述する
図2A等に示すように、ほぼ磁極中心向きに磁化しており、その方向の磁束を生じる(つまり配向している)。なお、ボンド磁石は、その成形後(バインダ樹脂の固化後)に、ロータコア1の外周側から着磁されてもよい。
【0038】
《シミュレーション》
(1)モデル
ブリッジ11に設けた非磁性域が、ブリッジ11周辺の磁束に及ぼす影響を、次のようなモデルM1~M4を用いてシミュレーションにより評価した。
【0039】
モデルM1は、
図2Aに示すように、非磁性域110と、その内側にある磁性域111と、その外側にある磁性域112をブリッジ11に設定した。非磁性域110を枠端中央Psよりも外側に配置した。これにより磁性域111が、磁性域112よりも周方向に長くなっている。非磁性域110は、例えば、レーザー照射等による非磁性改質(ステンレス鋼化等)により形成される。
【0040】
モデルM2は、
図2Bに示すように、非磁性域110の中央を枠端中央Psに略一致させた。これにより磁性域111と磁性域112の周方向長を略同じにした。それ以外は、モデルM1と同じとした。
【0041】
モデルM3は、
図2Cに示すように、非磁性域110と、その外側にある磁性域112とをブリッジ11に設定した。つまり、非磁性域110を枠端中央Psより内側に配置して、その内側に磁性域111を設けなかった。それ以外は、モデルM1と同じとした。
【0042】
モデルM4は、
図2Dに示すように、非磁性域110を設けず、ブリッジ11全体を磁性域とした。
【0043】
(2)条件
解析条件は次のように設定した。ロータコア1およびステータコア2は無方向性電磁鋼板(50HXT780T)の積層体からなる。ロータコア1は、外径:φ80mm、中央穴径:φ45mmとした。ブリッジ11の周方向長:3mm、非磁性域110の周方向長:1mm、非磁性域110の幅(径方向長):0.5mm(ブリッジ11の幅と同じ)とした。ちなみに、ロータコア1とステータコア2の隙間(エアギャップ):0.5mmとした。なお、本実施例では、適宜、周方向長を「長さ」、径方向長を「幅」という。
【0044】
モデルM1では、磁性域111の長さ:1.5mm、磁性域112の長さ:0.5mmとした。モデルM2では、磁性域111の長さ:0.75mm、磁性域112の長さ:0.75mmとした。モデルM3では、磁性域112の長さ:1.5mmとした。
【0045】
(3)結果
モデルM1~M3に関する解析結果を、磁束線のコンター図に現して、
図2A~
図2Cの下方にそれぞれ併せて示した。また、コンター図に基づく磁束線の流れを、その上方にそれぞれ模式的に示した。モデルM4については、磁束線の流れを模式的に
図2Dに示した。
【0046】
《評価》
図2A~
図2Dから明らかなように、ブリッジに設ける非磁性域を外側寄りにする(換言すると、外側より内側へ磁性域を拡張する)ことにより、ロータ側の永久磁石から供給される磁束をブリッジ内で短絡させず、ステータ側へより有効に誘導できることがわかった。敢えていうと、内側の磁性域の長さを外側の磁性域の長さに対して、3/2倍以上、2倍以上さらには3倍以上とするとよい。
【0047】
《補足》
(1)
図3Aに示すように、ブリッジ11を非磁性域110と内側の磁性域111のみとしても(外側の磁性域112を無くしても)よい。さらに
図3Bに示すように、非磁性域110を、ブリッジ11の範囲を越えて外側へ拡張してもよい。
【0048】
非磁性域110は、磁性材の改質部とする他、
図3Cに示すように、磁性域111、112よりも径方向に狭い狭幅部113としてもよい。勿論、その狭幅部113をさらに非磁性改質してもよい。
【0049】
(2)非磁性域(改質域等)は、ブリッジのみならず、スロット間のリブに設けてもよい。非磁性域をブリッジ11とリブ13、17に設けたモデルを用いて、上述したシミュレーションを行った。その結果を
図4にまとめて示した。
図4に示したモデルM1~M3は、
図2A~
図2Cに示したモデルM1~M3に対応している。つまり、モデルM1は、非磁性域が枠端中央Psの外側(縮径側)にある。モデルM2は、非磁性域の中央が枠端中央Psと略一致している。モデルM3は、非磁性域が枠端中央Psの内側(拡径側)にある。
【0050】
図4から明らかなように、ブリッジのみならずリブにおいても、非磁性域を外側に配置することにより、無駄に迂回する磁束を低減して、ロータからステータ側へ至る鎖交磁束を増加させ得ることがわかった。