(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135832
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ジョイントキャップ、及びジョイントキャップ付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/22 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01R4/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041121
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】富山 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】入江 信行
(72)【発明者】
【氏名】サツライ、エズラ マリア メイ
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085CC08
5E085DD19
5E085HH15
5E085HH34
5E085JJ13
5E085JJ17
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】結線部2cの数に対する必要数を低減できるジョイントキャップ10、及びジョイントキャップ付き電線1を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の電線2からそれぞれ露出させた導体2b同士を結線した結線部2cに対して装着される絶縁性を有するジョイントキャップ10であって、一端が閉口した略筒状で、他端の挿入口113から結線部2cが挿入されるキャップ本体11と、結線部2cが収容される複数の収容空間Sをキャップ本体11とで形成する隔壁部13とが設けられたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線からそれぞれ露出させた導体同士を結線した結線部に対して装着される絶縁性を有するジョイントキャップであって、
一端が閉口した略筒状で、他端の開口から前記結線部が挿入されるキャップ本体と、
前記結線部が収容される複数の収容空間を前記キャップ本体とで形成する隔壁部とが設けられた
ジョイントキャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体の一端から他端へ向かう方向へ延びるとともに、前記キャップ本体の外部で前記電線が固定される少なくとも1つの電線固定部が設けられた
請求項1に記載のジョイントキャップ。
【請求項3】
前記電線固定部が、前記隔壁部を延設して形成された
請求項2に記載のジョイントキャップ。
【請求項4】
前記隔壁部が、前記キャップ本体とは別体で構成された
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のジョイントキャップ。
【請求項5】
前記隔壁部を挟んで隣接する前記収容空間を連通させる連通孔が設けられた
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のジョイントキャップ。
【請求項6】
前記キャップ本体の一端から他端へ向かう方向に直交する方向に沿った断面において、前記キャップ本体の外形形状が、断面略多角形状である
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のジョイントキャップ。
【請求項7】
絶縁被覆の先端から導体を露出させた複数の電線と、
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のジョイントキャップとが設けられ、
前記導体同士を結線した結線部に前記ジョイントキャップが装着された
ジョイントキャップ付き電線。
【請求項8】
前記ジョイントキャップの内部に充填された絶縁性及び止水性を有する充填材が設けられた
請求項7に記載のジョイントキャップ付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば絶縁被覆の先端から露出させた電線の導体同士を結線した結線部に対して装着されるようなジョイントキャップ及びジョイントキャップ付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電線の径方向に並置された複数の電線を結線する場合、絶縁被覆の先端から露出させた電線の導体同士を、超音波溶接や抵抗溶接で接続することで導通可能にしている。
さらに、このような電線では、導体同士を結線した結線部を絶縁するため、絶縁性を有するジョイントキャップ(エンドキャップ、あるいは絶縁キャップともいう)を結線部に装着することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1のジョイントキャップは、1つの結線部を装着可能に形成されている。このため、例えば複数の電線を束ねたワイヤーハーネスにおいて、幹線から分岐した複数の枝線によって複数の結線部が構成された場合、ワイヤーハーネスには、結線部の数と同数のジョイントキャップが必要となる。
そうすると、特許文献1のジョイントキャップは、部品点数の増加要因となるおそれがあるため、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑み、結線部の数に対する必要数を低減できるジョイントキャップ、及びジョイントキャップ付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、複数の電線からそれぞれ露出させた導体同士を結線した結線部に対して装着される絶縁性を有するジョイントキャップであって、一端が閉口した略筒状で、他端の開口から前記結線部が挿入されるキャップ本体と、前記結線部が収容される複数の収容空間を前記キャップ本体とで形成する隔壁部とが設けられたことを特徴とする。
上記隔壁部は、キャップ本体と一体、またはキャップ本体とは別体のものをいう。
【0007】
この発明によれば、隔壁部によって複数の収容空間が形成されるため、ジョイントキャップは、1つのキャップ本体に対して複数の結線部を収容することができる。例えば隔壁部によってキャップ本体の内部に2つの収容空間が形成された場合、ジョイントキャップは、2つの結線部を収容することができる。
【0008】
この際、収容空間に収容された結線部同士の接触を隔壁部によって阻止できるため、ジョイントキャップは、キャップ本体に複数の結線部を収容しても、結線部を確実に絶縁することができる。
よって、ジョイントキャップは、結線部の数に対する必要数を低減することができる。
【0009】
この発明の態様として、前記キャップ本体の一端から他端へ向かう方向へ延びるとともに、前記キャップ本体の外部で前記電線が固定される少なくとも1つの電線固定部が設けられてもよい。
上記電線固定部は、収容空間の数に対して同数以下で、隔壁部から延設された電線固定部、またはキャップ本体から延設された電線固定部などのことをいう。
【0010】
この構成によれば、ジョイントキャップは、収容空間に結線部が収容された電線を電線固定部によって保持することができる。このため、例えば電線に意図しない引張荷重が加わった際、ジョイントキャップは、キャップ本体から結線部が脱落することを防止できる。
【0011】
またこの発明に態様として、前記電線固定部が、前記隔壁部を延設して形成されてもよい。
この構成によれば、ジョイントキャップは、キャップ本体の一端から他端へ向かう方向において、電線固定部を全ての収容空間に隣接させることができる。このため、ジョイントキャップは、隔壁部を延設した電線固定部で全ての電線を保持することができる。
【0012】
これにより、ジョイントキャップは、例えば収容空間の数と同数の電線固定部を設けた場合に比べて、電線を固定する作業工数を低減することができる。さらに、ジョイントキャップは、収容空間の数と同数の電線固定部を設けることを不要にできるため、その重量の軽量化を図ることができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記隔壁部が、前記キャップ本体とは別体で構成されてもよい。
この構成によれば、キャップ本体と隔壁部とが別体で構成されるため、ジョイントキャップは、隔壁部がキャップ本体に一体形成された場合に比べて、キャップ本体の内部と隔壁部とをそれぞれ精度よく形成することができる。
【0014】
これにより、ジョイントキャップは、キャップ本体の内部に所望される大きさの収容空間を形成することができる。このため、ジョイントキャップは、各収容空間に結線部を確実に収容して、結線部を絶縁することができる。
【0015】
加えて、隔壁部が別体で構成されているため、ジョイントキャップは、1つのキャップ本体に対して異なる形状の隔壁部を択一的に組み合わせることができる。このため、ジョイントキャップは、任意の数の収容空間を容易にできるとともに、キャップ本体の共通化を図ることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記隔壁部を挟んで隣接する前記収容空間を連通させる連通孔が設けられてもよい。
上記連通孔は、隔壁部に形成した開口、あるいはキャップ本体と隔壁部とで構成された隙間などのことをいう。
【0017】
この構成によれば、ジョイントキャップは、例えば1つの収容空間に注入された充填材、あるいは1つ収容空間内の空気を、連通孔を介して隣接する収容空間へ容易に移動させることができる。
【0018】
このため、例えば絶縁性及び止水性を確保するための合成樹脂製の充填材をキャップ本体に充填する場合、ジョイントキャップは、1つの収容空間に注入した充填材を、全ての収容空間に容易に行き渡らせることができる。
【0019】
これにより、ジョイントキャップは、例えばキャップ本体の内部に充填材を充填する場合であっても、連通孔を介して、充填材を全ての収容空間に均一、かつ効率よく充填させることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記キャップ本体の一端から他端へ向かう方向に直交する方向に沿った断面において、前記キャップ本体の外形形状が、略多角形状であってもよい。
この構成によれば、例えば複数のキャップ本体の外面同士を接触させて並置する場合、ジョイントキャップは、隣接する別のジョイントキャップに容易に面接触させることができる。
【0021】
このため、ジョイントキャップは、略円筒状のジョイントキャップの外面同士を接触させる場合に比べて、隣接するジョイントキャップとの接触状態を安定させることができる。
これにより、ジョイントキャップは、例えば並置した複数のジョイントキャップを粘着テープで連結する場合であっても、安定した連結状態を確保することができる。
【0022】
加えて、略円筒状のジョイントキャップの外面同士を接触させる場合に比べて、隣接するジョイントキャップとの間で生じる隙間を小さくできるため、ジョイントキャップは、複数のジョイントキャップをコンパクトに連結することができる。
【0023】
またこの発明は、絶縁被覆の先端から導体を露出させた複数の電線と、上述したジョイントキャップとが設けられ、前記導体同士を結線した結線部に前記ジョイントキャップが装着されたジョイントキャップ付き電線であることを特徴とする。
この発明によれば、ジョイントキャップ付き電線は、結線部の数に対するジョイントキャップの必要数を低減することができる。このため、ジョイントキャップ付き電線は、部品点数の削減、及び組付け性の向上を図ることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記ジョイントキャップの内部に充填された絶縁性及び止水性を有する充填材が設けられてもよい。
この構成によれば、ジョイントキャップ付き電線は、キャップ本体の内部への水分の侵入を充填材によって防止することができる。このため、ジョイントキャップ付き電線は、結線部の腐食などを防止できるとともに、安定した導電性を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、結線部の数に対する必要数を低減できるジョイントキャップ、及びジョイントキャップ付き電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ジョイントキャップ付き電線の外観を示す外観斜視図。
【
図3】分解状態におけるジョイントキャップ付き電線を示す分解斜視図。
【
図4】実施例2におけるジョイントキャップの概略を説明する説明図。
【
図5】実施例3におけるジョイントキャップ付き電線を示す分解斜視図。
【
図6】連結状態におけるジョイントキャップの外観を示す外観斜視図。
【
図7】別の実施形態におけるジョイントキャップの外観を示す外観斜視図。
【
図8】別の実施形態におけるジョイントキャップの概略を正面視で説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例0028】
実施例1では、絶縁被覆の先端から露出させた電線の導体同士を結線した結線部に対してジョイントキャップを装着したジョイントキャップ付き電線1について、
図1から
図3を用いて説明する。
【0029】
なお、
図1はジョイントキャップ付き電線1の外観斜視図を示し、
図2は
図1中のA-A矢視断面図を示し、
図3は分解状態におけるジョイントキャップ付き電線1の分解斜視図を示している。
【0030】
また、
図1中の上側をジョイントキャップ付き電線1の上方向、
図1中の下側をジョイントキャップ付き電線1の下方向として、図中の矢印Xはジョイントキャップ付き電線1の前後方向(以降、前後方向Xと呼ぶ)を示し、矢印Yは前後方向Xに平面視直交するジョイントキャップ付き電線1の幅方向(以降、幅方向Yと呼ぶ)を示している。
【0031】
実施例1のジョイントキャップ付き電線1は、
図1及び
図2に示すように、導体2b同士が結線された一対二組の電線2と、一対二組の電線2に装着される絶縁性を有するジョイントキャップ10と、電線2をジョイントキャップ10に固定する粘着テープ3と、ジョイントキャップ10の内部に充填された充填材4とを備えている。
【0032】
まず、一対二組の電線2は、
図3に示すように、例えばワイヤーハーネスの幹線から分岐した二組の枝線であって、一対の電線2を一組として、一組の電線2が幅方向Yで対向するように配置している。
なお、一組の電線2は、上下方向に並置された電線2を電気的に接続して導通可能にしている。
【0033】
具体的には、一対の電線2は、
図3に示すように、絶縁被覆2aの先端から露出させた導体2bを、例えば超音波溶接や抵抗溶接で結線して導通可能にしている。なお、導体2b同士を結線した部分を、以降、結線部2cと呼ぶ。
【0034】
また、ジョイントキャップ付き電線1のジョイントキャップ10は、
図1及び
図2に示すように、2つの結線部2cを装着可能な絶縁キャップである。
このジョイントキャップ10は、
図2及び
図3に示すように、前後方向Xの一方側が閉口した略円筒状のキャップ本体11と、キャップ本体11における幅方向Yの略中央に接着固定された略板状の平板部材12とを備えている。
【0035】
そして、ジョイントキャップ10には、
図2に示すように、2つの結線部2cがそれぞれ独立して収容される2つの収容空間Sと、2つの収容空間Sを連通させる連通孔10aとが、キャップ本体11の内部に形成されている。
【0036】
より詳しくは、ジョイントキャップ10のキャップ本体11は、
図2及び
図3に示すように、前後方向Xに延びる略円筒状の筒状部111と、筒状部111における前後方向Xの一方側の開口を閉塞する略ドーム状の半球部112とで一体形成されている。
なお、キャップ本体11は、
図3に示すように、筒状部111における前後方向Xの他方側の開口を、2つの結線部2cが挿入される挿入口113としている。
【0037】
このキャップ本体11の筒状部111は、結線部2cの先端から電線2の絶縁被覆2aの先端近傍に至る範囲を一体的に覆う前後方向Xの長さと、一対二組の電線2を内部に収容可能な内径とを有する形状に形成されている。
【0038】
さらに、キャップ本体11には、
図3に示すように、筒状部111における前後方向Xの他方側の縁端(キャップ本体11の挿入口113側の縁端)に、後述する隔壁部13が嵌合する一対の被嵌合部11aが形成されている。
【0039】
この一対の被嵌合部11aは、
図3に示すように、幅方向Yの略中央において、上下方向に対向するキャップ本体11の挿入口113側の縁端を、半球部112へ向けて平面視略矩形に切り欠いて形成している。
【0040】
また、ジョイントキャップ10の平板部材12は、
図2及び
図3に示すように、幅方向Yに厚みを有する板状であって、キャップ本体11とは別体で構成されている。
【0041】
この平板部材12は、
図2及び
図3に示すように、キャップ本体11の内部空間を2つの空間に隔てる隔壁部13と、キャップ本体11の被嵌合部11aに嵌合する一対の突起部14と、一対二組の電線2が固定される電線固定部15とで一体形成されている。
【0042】
より詳しくは、平板部材12の隔壁部13は、
図2及び
図3に示すように、キャップ本体11の内部に収容される部分であって、キャップ本体11よりも短い前後方向Xの長さに形成されている。
【0043】
具体的には、隔壁部13は、キャップ本体11の筒状部111に略同じ前後方向Xの長さと、筒状部111の内径に略同じ上下方向の長さとを有する側面視略矩形の板状に形成されている。
【0044】
この隔壁部13は、キャップ本体11に組付けられた状態において、キャップ本体11の内周面とで、2つの結線部2cがそれぞれ独立して収容される2つの収容空間Sを形成している。
【0045】
さらに、隔壁部13には、
図3に示すように、幅方向Yに貫通した貫通孔13aが、前後方向Xに所定間隔を隔てて2つ開口形成されている。この2つの貫通孔13aは、
図2に示すように、キャップ本体11に隔壁部13が組付けられた状態において、隔壁部13によって隔てられた2つの収容空間Sを連通させる連通孔として形成されている。
【0046】
また、平板部材12の突起部14は、
図1及び
図3に示すように、隔壁部13における前後方向Xの他方側から上方、及び下方へ向けて突出した側面視略矩形の板状に形成されている。この突起部14は、キャップ本体11の被嵌合部11aに嵌合する大きさで形成されている。
【0047】
また、平板部材12の電線固定部15は、
図3に示すように、隔壁部13を前後方向Xの他方側へ向けて延設した側面視略矩形の板状に形成されている。この電線固定部15には、
図1に示すように、二組の電線2が粘着テープ3を用いて固定されている。
【0048】
また、ジョイントキャップ10の2つの収容空間Sは、
図2に示すように、キャップ本体11の内面と隔壁部13とで形成された空間であって、正面視略半円状に形成されている。この2つの収容空間Sは、隔壁部13の貫通孔13a、及び後述する連通孔10aを介して連通している。
【0049】
また、ジョイントキャップ10の連通孔10aは、
図2に示すように、キャップ本体11に隔壁部13が組付けられた状態において、キャップ本体11の半球部112の内面と隔壁部13とで形成された隙間で構成されている。
【0050】
また、ジョイントキャップ付き電線1の充填材4は、絶縁性を有する合成樹脂であって、結線部2cを絶縁するとともに、キャップ本体11への水分の侵入を防止するために、キャップ本体11に充填している。つまり、充填材4は、充填状態において、絶縁性及び止水性を有するものである。
【0051】
この充填材4は、例えば絶縁被覆2aから露出した導体2bに浸透させる低粘度シリコン樹脂と、キャップ本体11の挿入口113を閉塞させる高粘度シリコン樹脂とで構成されている。
【0052】
次に、上述した構成のジョイントキャップ付き電線1の組付け工程について、簡単に説明する。
まず、作業者または組付け装置は、電線2の導体2bを絶縁被覆2aの先端から露出させたのち、一対の電線2の導体2b同士を結線して結線部2cを形成する。
その後、作業者または組付け装置は、平板部材12を挟んで対向配置した一対二組の電線2を、粘着テープ3を用いて電線固定部15に固定する。
【0053】
電線2を平板部材12に固定すると、作業者または組付け装置は、キャップ本体11の被嵌合部11a及び平板部材12の突起部14に接着剤を塗布したのち、平板部材12の隔壁部13をキャップ本体11の挿入口113から前後方向Xに沿って挿入する。
この際、一対二組の電線2が平板部材12に固定されているため、2つの結線部2cは、隔壁部13の組付けと同時にキャップ本体11の内部へ挿入される。
【0054】
そして、キャップ本体11の被嵌合部11aに平板部材12の突起部14を嵌合させると、作業者または組付け装置は、低粘度シリコン樹脂を一方の収容空間Sに注入開始する。この際、低粘度シリコン樹脂は、連通孔10a及び貫通孔13aを通って他方の収容空間Sに流入することで、2つの収容空間Sに充填される。
【0055】
低粘度シリコン樹脂の注入が完了すると、作業者または組付け装置は、2つの収容空間Sに充填された低粘度シリコン樹脂を覆うように、高粘度シリコン樹脂を2つの収容空間Sに注入して、低粘度シリコン樹脂及び高粘度シリコン樹脂からなる充填材4を形成する。
このようにして、実施例1は、一対二組の電線2に1つのジョイントキャップ10が装着されたジョイントキャップ付き電線1を構成する。
【0056】
以上のように、実施例1のジョイントキャップ10は、複数の電線2からそれぞれ露出させた導体2b同士を結線した結線部2cに対して装着される絶縁性のキャップである。
このジョイントキャップ10は、一端が閉口した略筒状で、他端の挿入口113から結線部2cが挿入されるキャップ本体11と、結線部2cが収容される2つの収容空間Sをキャップ本体11とで形成する隔壁部13とが設けられたものである。
【0057】
そして、実施例1のジョイントキャップ付き電線1は、導体2b同士を結線した結線部2cに、上述のジョイントキャップ10が装着されたものである。
この構成によれば、隔壁部13によって2つの収容空間Sが形成されるため、ジョイントキャップ10は、1つのキャップ本体11に対して2つの結線部2cを収容することができる。
【0058】
この際、収容空間Sに収容された結線部2c同士の接触を隔壁部13によって阻止できるため、ジョイントキャップ10は、キャップ本体11に2つの結線部2cを収容しても、結線部2cを確実に絶縁することができる。
よって、ジョイントキャップ付き電線1において、ジョイントキャップ10は、結線部2cの数に対するジョイントキャップ10の必要数を低減することができる。このため、ジョイントキャップ付き電線1は、部品点数の削減、及び組付け性の向上を図ることができる。
【0059】
また、ジョイントキャップ10は、前後方向Xへ延びるとともに、キャップ本体11の外部で電線2が固定される1つの電線固定部15が設けられたものである。
この構成によれば、ジョイントキャップ10は、収容空間Sに結線部2cが収容された電線2を電線固定部15によって保持することができる。このため、例えば電線2に意図しない引張荷重が加わった際、ジョイントキャップ10は、キャップ本体11から結線部2cが脱落することを防止できる。
【0060】
また、電線固定部15が、隔壁部13を延設して形成されたため、ジョイントキャップ10は、前後方向Xにおいて、電線固定部15を2つの収容空間Sに隣接させることができる。このため、ジョイントキャップ10は、隔壁部13を延設した電線固定部15で一対二組の電線2を保持することができる。
【0061】
これにより、ジョイントキャップ10は、例えば収容空間Sの数と同数の電線固定部を設けた場合に比べて、電線2を固定する作業工数を低減することができる。さらに、ジョイントキャップ10は、収容空間Sの数と同数の電線固定部15を設けることを不要にできるため、その重量の軽量化を図ることができる。
【0062】
また、隔壁部13が、キャップ本体11とは別体で構成されたため、ジョイントキャップ10は、隔壁部13がキャップ本体11に一体形成された場合に比べて、キャップ本体11の内部と隔壁部13とをそれぞれ精度よく形成することができる。
【0063】
これにより、ジョイントキャップ10は、キャップ本体11の内部に所望される大きさの収容空間Sを形成することができる。このため、ジョイントキャップ10は、各収容空間Sに結線部2cを確実に収容して、結線部2cを絶縁することができる。
【0064】
また、隔壁部13を挟んで隣接する収容空間Sを連通させる連通孔(連通孔10a、貫通孔13a)が設けられているため、ジョイントキャップ10は、例えば1つの収容空間Sに注入された充填材4、あるいは1つ収容空間S内の空気を、連通孔(連通孔10a、貫通孔13a)を介して隣接する収容空間Sへ容易に移動させることができる。
【0065】
このため、充填材4をキャップ本体11に充填する場合、ジョイントキャップ10は、1つの収容空間Sに注入した充填材4を、全ての収容空間Sに容易に行き渡らせることができる。
【0066】
これにより、ジョイントキャップ10は、連通孔(連通孔10a、貫通孔13a)を介して、充填材4を全ての収容空間Sに均一、かつ効率よく充填させることができる。
【0067】
さらに、キャップ本体11と隔壁部13とで形成された連通孔10aにより、ジョイントキャップ10は、一方の収容空間Sに充填材4を注入した際、キャップ本体11の半球部112の空気を充填材4とともに、他方の収容空間Sに流入させることができる。
【0068】
これにより、ジョイントキャップ10は、充填材4の内部に空気溜りが生じることを抑えられる。このため、ジョイントキャップ10は、連通孔10aによって充填材4をより均一に充填させることができる。
【0069】
また、ジョイントキャップ付き電線1は、ジョイントキャップ10の内部に充填された絶縁性及び止水性を有する充填材4が設けられたものである。
この構成によれば、ジョイントキャップ付き電線1は、キャップ本体11の内部への水分の侵入を充填材4によって防止することができる。このため、ジョイントキャップ付き電線1は、結線部2cの腐食などを防止できるとともに、安定した導電性を確保することができる。
より詳しくは、三方分岐部材22は、前後方向Xに延びる略柱状の軸部(符号省略)と、前後方向Xを軸中心とする回転方向に所定間隔を隔てた位置で、軸部から突設された平板状の板部(符号省略)とで、三方向に分岐した形状に形成されている。
以上のように、実施例2のジョイントキャップ20は、実施例1と同様に、一端が閉口した略筒状で、他端の挿入口211から結線部2cが挿入されるキャップ本体21と、結線部2cが収容される複数の収容空間Sをキャップ本体21とで形成する隔壁部23とが設けられたものである。
この構成によれば、ジョイントキャップ20は、実施例1と同様に、結線部2cの数に対する必要数を低減することができる。