(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135953
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20230922BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20230922BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20230922BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20230922BHJP
B24B 41/047 20060101ALI20230922BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20230922BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20230922BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B49/16
B24B49/10
B24B7/04 A
B24B41/047
B23Q17/09 H
B23Q17/12
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041314
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛陽
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C029CC05
3C034AA08
3C034BB01
3C034BB42
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA13
3C034CA16
3C034CA24
3C034CB08
3C034CB14
3C034DD10
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA11
3C043BA14
3C043BA15
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043EE03
3C043EE04
5F057AA05
5F057AA19
5F057AA33
5F057AA41
5F057BA15
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA01
5F057DA11
5F057FA13
5F057FA28
5F057GA01
5F057GA27
5F057GB03
5F057GB04
5F057GB11
5F057GB22
5F057GB24
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】傾き変更機能と振動検知機能を備えつつ、構造単純化によるコストダウンと小型化を図ること。
【解決手段】保持面11でウェーハ100を保持するチャックテーブル10と、保持面11が保持したウェーハ100を研削砥石252で加工する加工機構20と、加工機構20を保持面11に垂直な方向に移動させる移動機構30と、制御部40と、を備える加工装置1であって、保持面11の傾きを変更する保持面傾き変更機構50と、保持面傾き変更機構50に配置され保持面11に垂直な方向の荷重を検知し、或いは保持面11に垂直な方向の高さを変更する圧電アクチュエータ52と、を備え、制御部40は、保持面11に垂直な方向の振動によって圧電アクチュエータ52が検知した電圧値が予め設定した閾値を超えると、ウェーハ100と研削砥石252との間に隙間δを形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、該保持面が保持した被加工物を加工具で加工する加工機構と、該加工機構を該保持面に垂直な方向に移動させる移動機構と、制御部と、を備える加工装置であって、
該保持面の傾きを変更する保持面傾き変更機構を備え、
該保持面傾き変更機構は、該チャックテーブルを支持するように配置され、該保持面に垂直方向に延在し、該保持面に垂直な方向の荷重を検知し、且つ該保持面に垂直な方向の長さを変更する圧電アクチュエータとを備え、
該制御部は、
該保持面に垂直な方向の荷重によって該圧電アクチュエータが検知した電圧値が予め設定した閾値を超えると、被加工物と該加工具との間に隙間を形成する加工装置。
【請求項2】
保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、加工具を装着したスピンドルを回転可能に支持するスピンドルユニットを有し該加工具で該保持面が保持した被加工物を加工する加工機構と、該加工機構を該保持面に垂直な方向に移動させる移動機構と、制御部と、を備える加工装置であって、
該スピンドルの傾きを変更するスピンドル傾き変更機構を備え、
該スピンドル傾き変更機構は、該スピンドルユニットを支持するように配置され、該スピンドルの回転中心軸に平行な方向に延在し、該回転中心軸に平行な方向の荷重を検知し、且つ該回転中心軸に平行な方向の長さを変更するスピンドル圧電アクチュエータとを備え、
該制御部は、
該加工面に垂直な方向の荷重によって該スピンドル圧電アクチュエータが検知した電圧値が予め設定した閾値を超えると、被加工物と該加工具との間に隙間を形成する加工装置。
【請求項3】
前記圧電アクチュエータまたは前記スピンドル圧電アクチュエータは、振動を検知する請求項1または2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの保持面の傾き或いは加工具を回転させるスピンドルの傾きを変更する傾き変更機構を備える加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハなどの被加工物を研削砥石で研削加工する研削装置においては、研削砥石に目詰まりや目潰れが発生すると、該研削砥石の研削力が低下して振動が発生するという問題がある。このため、例えば、特許文献1には、研削加工中の振動を検知する振動検知器を備えた研削装置が提案されている。
【0003】
また、研削装置には、例えば、研削した被加工物の厚さを均一にするため、被加工物を保持する保持面の研削砥石の研削面に対する傾きを変更する傾き変更機構を設けたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、特許文献3には、研削機構に圧電素子を設けて難研削材を研削する提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-051723号公報
【特許文献2】特開2020-196100号公報
【特許文献3】特開2012-086351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被加工物を保持する保持面の研削砥石の研削面に対する傾きを変更する傾き変更機構と振動を検知する振動検知器を備える加工装置においては、当該加工装置の構造が複雑化して大型化とコストアップを招くという問題がある。
【0007】
したがって、加工装置には、傾き変更機能と振動検知機能を備えつつ、コストダウンと小型化を図りたいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、該保持面が保持した被加工物を加工具で加工する加工機構と、該加工機構を該保持面に垂直な方向に移動させる移動機構と、制御部と、を備える加工装置であって、該保持面の傾きを変更する保持面傾き変更機構を備え、該保持面傾き変更機構は、該チャックテーブルを支持するように配置され、該保持面に垂直方向に延在し、該保持面に垂直な方向の荷重を検知し、かつ該保持面に垂直な方向の長さを変更する圧電アクチュエータとを備え、該制御部は、該保持面に垂直な方向の荷重によって該圧電アクチュエータが検知した電圧値が予め設定した閾値を超えると、被加工物と該加工具との間に隙間を形成する加工装置である。
【0009】
第2発明は、保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、加工具を装着したスピンドルを回転可能に支持するスピンドルユニットを有し該加工具で該保持面が保持した被加工物を加工する加工機構と、該加工機構を該保持面に垂直な方向に移動させる移動機構と、制御部と、を備える加工装置であって、該スピンドルの傾きを変更するスピンドル傾き変更機構を備え、該スピンドル傾き変更機構は、該スピンドルユニットを支持するように配置され、該スピンドルの回転中心軸に平行な方向に延在し、該回転中心軸に平行な方向の荷重を検知し、且つ該回転中心軸に平行な方向の長さを変更するスピンドル圧電アクチュエータとを備え、該制御部は、該加工面に垂直な方向の振動によって該スピンドル圧電アクチュエータが検知した電圧値が予め設定した閾値を超えると、被加工物と該加工具との間に隙間を形成する加工装置である。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、制御部は、保持面に垂直な方向の振動によって圧電アクチュエータが検知した電圧値が予め設定した閾値を超えると、第2発明によれば、加工面に垂直な方向の振動によってスピンドル圧電アクチュエータが検知した電圧値が予め設定した閾値を超えると、被加工物と該加工具との間に所定の隙間を形成するようにしたため、振動による加工具と被加工物との衝突による被加工物と加工具との破損が防がれる。
【0011】
また、第1及び第2発明によれば、圧電アクチュエータまたはスピンドル圧電アクチュエータが荷重センサまたは振動センサとしても機能するため、振動検知器を別途設けなくても、加工装置は、傾き変更機能と振動検知機能とを具備することとなり、当該加工装置の構造単純化による小型化とコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図2のIII部の研削加工時の状態を示す拡大詳細図である。
【
図4】
図2のIII部の振動発生時の状態を示す拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す加工装置1は、被加工物である円板状のウェーハ100を研削加工するものであって、上面の円形の保持面11でウェーハ100を保持するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10の保持面11に吸引保持されたウェーハ100を加工具である研削砥石252によって研削加工する加工機構20と、該加工機構20をチャックテーブル10の保持面11に垂直な方向(Z軸方向)に移動(昇降動)させる移動機構30と、制御部40とを備えている。
【0014】
ここで、ウェーハ100は、例えば単結晶のシリコン母材で構成されており、
図1に示す状態において下方を向いている表面101には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハ100の表面101に貼着された保護テープ103によって保護ざれている。そして、ウェーハ100は、その保護テープ103がチャックテーブル10の保持面11に吸引保持され、裏面102が加工機構20の研削砥石252によって研削加工される。なお、表面101に保護テープ103が貼着されない場合もある。
【0015】
チャックテーブル10は、枠体14の中央部に円形の凹部12に多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材13が収容されて構成されている。ここで、ポーラス部材13は、その上面が円板状のウェーハ100を吸引保持する保持面11を構成している。なお、図示しないが、ポーラス部材13は、真空ポンプなどの不図示の吸引源に接続されている。
【0016】
図2に示すように、チャックテーブル10からは下方にチャック回転軸15が延びており、その周囲には大径の円板状のテーブルベース16が同軸に配置されている。このテーブルベース16の内周面にはベアリング160が配設され、このベアリング160は、チャック回転軸15を回転可能に支持している。
そして、チャックテーブル10は、
図2に示すように、該チャックテーブル10の下方に配置されたモータ2によってチャック回転軸15の軸中心周りに所定の速度で回転駆動される。すなわち、モータ2からはモータ軸3が+Z方向に向かって延びており、このモータ軸3の上端部に駆動プーリ4が取り付けられ、駆動プーリ4と同じ高さ位置において、チャック回転軸15に従動プーリ5が取り付けられ、駆動プーリ4及び従動プーリ5には無端ベルト17が巻回されている。モータ2の駆動によってモータ軸3が回転すると、駆動プーリ4、無端ベルト17及び従動プーリ5を介してその回転力がチャック回転軸15に伝わってチャックテーブル10が回転する。
【0017】
チャックテーブル10の保持面11の傾きは、以下に説明する保持面傾き変更機構50によって変更(調整)される。
【0018】
上記保持面傾き変更機構50は、
図2に示すように、XY平面に対して傾動可能なテーブルベース16とXY平面に対して傾動不能なスライダ61との間に形成された高さ方向の隙間に介装された各3つのバネ部材51と3つの圧電アクチュエータ52(
図2には各2つのみ図示)とによって構成されている。なお、本実施の形態では、3つのバネ部材51と圧電アクチュエータ52とを周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配設したが、これらのバネ部材51及び圧電アクチュエータ52の数は、3つ以上であれば任意である。
【0019】
保持面傾き変更機構50を構成する3つの各バネ部材51は、スライダ61の上面に対するチャックベース16の下面の傾きの差を許容(吸収)する機能を果たすものである。また、3つの各圧電アクチュエータ52は、これに供給する電圧値を変更すると長さが変わってテーブルベース16の上面に対するチャックテーブル10の下面の傾き、つまり保持面の傾きを変更する機能を果たすものであって、これらの圧電アクチュエータ52は、制御部40にそれぞれ電気的に接続されている。
なお、バネ部材51は、カルダンジョイントのようなユニバーサルジョイントでもよい。
【0020】
ここで、本実施の形態に係る加工装置1は、
図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース6を備えており、このベース6の内部には、矩形ブロック状の内部ベース7が収容されている。そして、この内部ベース7上には、チャックテーブル10をY軸方向に沿って移動させるための水平移動機構60が設けられている。この水平移動機構60は、前記スライダ61を備えており、このスライダ61は、
図1に示すように、Y軸方向に沿って互いに平行に配置された左右一対のガイドレール62に沿ってY軸方向に摺動可能である。したがって、このスライダ61に保持面傾き変更機構50介して傾動可能に支持されたチャックテーブル10、テーブルベース16及びモータ2は、スライダ61と共にY軸方向に沿って摺動可能である。
【0021】
そして、内部ベース7上の左右一対のガイドレール62の間には、Y軸方向に延びる回転可能なボールネジ軸63が配設されており、該ボールネジ軸63のY軸方向一端は、駆動源である正逆転可能なモータ64に連結されている。また、ボールネジ軸63のY軸方向他端は、内部ベース7上に立設された軸受65によって回転可能に支持されている。そして、このボールネジ軸63には、
図2に示すように、スライダ61から下方に向かって突設されたナット部材66が螺合挿通している。
【0022】
したがって、モータ64を正逆転させてボールネジ軸63を正逆転させると、このボールネジ軸63に螺合挿通するナット部材66がスライダ61と共にボールネジ軸63に沿ってY軸方向に摺動するため、このスライダ61と共にテーブルベース16とチャックテーブル10もY軸方向に沿って一体的に摺動する。この結果、チャックテーブル10の保持面11に吸引保持された被加工物であるウェーハ100もY軸方向に沿って移動する。
【0023】
また、
図1に示すように、ベース6の上面には、Y軸方向に長い矩形の開口部8が形成されており、この開口部8にはチャックテーブル10が臨んでいる。そして、ベース6の上面に開口する開口部8のチャックテーブル10の周囲は、矩形プレート状のカバー9によって覆われており、開口部8のカバー9の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー9と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー19によってそれぞれ覆われている。したがって、チャックテーブル10がY軸方向に移動し、このチャックテーブル10がどの位置にあっても、ベース6の開口部8は、カバー9と伸縮カバー19によって常に覆われているため、ベース6内への異物の進入がカバー9と伸縮カバー19によって確実に防がれる。
【0024】
そして、
図1に示すように、ベース6の上面のチャックテーブル10の近傍には、チャックテーブル10の保持面11に吸引保持されたウェーハ100の厚さを測定するための厚さ測定手段70が設けられている。この厚さ測定手段70は、例えば、接触式のハイトゲージ71,72を備えており、チャックテーブル10の保持面11に吸引保持されたウェーハ100の上面と枠体14の上面とにハイトゲージ71,72をそれぞれ接触させ、両者の高さの差を求めることによってウェーハ100の厚さを測定することができる。
【0025】
また、
図1に示すように、ベース6の上面の+Y方向端部(後端部)上にはコラム18が垂直に立設されており、このコラム18の-Y方向端面(前面)には、加工機構20をZ軸方向(上下方向)に沿って昇降動させる移動機構30が設けられている。
【0026】
加工機構20は、Z軸方向の回転中心軸221を有するスピンドル21と、該スピンドル21を回転可能に支持するハウジング22と、スピンドル21を回転駆動するスピンドルモータ23と、スピンドル21の下端に接続されたマウント24と、を備えるスピンドルユニット220と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、ホイール基台251と、該ホイール基台251の下面に円環状に配列された略直方体状の複数の研削砥石252とを備えている。なお、各研削砥石252は、ウェーハ100を研削するための加工具であって、その下面は、ウェーハ100に接触する研削面を構成している。
【0027】
また、スピンドル21の中間高さ位置には円環状のフランジ部211が一体に形成されており、このフランジ部211とホルダ26の底壁との間の高さ方向の隙間には、各3つのバネ部材91と3つのスピンドル圧電アクチュエータ92(
図2には各2つのみ図示)が介設されており、これらのバネ部材91とスピンドル圧電アクチュエータ92によってスピンドル傾き変更機構90が構成されている。なお、本実施の形態では、各3つのバネ部材91とスピンドル圧電アクチュエータ92は、周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配設されているが、これらのバネ部材91とスピンドル圧電アクチュエータ92の数は3つ以上であれば任意である。
【0028】
スピンドル傾き変更機構90を構成する3つの各バネ部材91は、ホルダ26の上面に対するフランジの下面の傾きの差を許容(吸収)する機能を果たすものである。また、3つの各スピンドル圧電アクチュエータ92は、これに供給する電圧値を変更すると長さが変わってホルダ26の上面に対するフランジ211の下面の傾き、つまり、研削砥石252の下面の傾きを変更する機能を果たすものであって、これらのスピンドル圧電アクチュエータ92は、制御部40にそれぞれ電気的に接続されている。
なお、バネ部材91は、カルダンジョイントのようなユニバーサルジョイントでもよい。
【0029】
移動機構30は、加工機構20をチャックテーブル10の保持面11に対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降動させるものであって、矩形プレート状の昇降板31と、昇降板31に固定されハウジング22を支持するホルダ26とを昇降動させることにより、加工機構20を左右一対のガイドレール32に沿ってZ軸方向に昇降動させるものである。ここで、左右一対のガイドレール32は、コラム18の前面に垂直且つ互いに平行に配設されており、これらのガイドレール32には、上下方向に沿うガイド溝321(
図1には一方のみ図示)がそれぞれ形成されている。
【0030】
また、昇降板31の左右一対のガイドレール32のガイド溝321に対応する箇所の上下には、係合突起(
図2には一方のみ図示)33がそれぞれ後方(+Y方向)に向かって突設されており、これらの係合突起33は、左右一対の各ガイドレール32にそれぞれ形成されたガイド溝321に係合している。
【0031】
そして、
図1に示すように、左右一対のガイドレール32の間には、回転可能なボールネジ軸34がZ軸方向に沿って立設されており、該ボールネジ軸34の上端は、駆動源である正逆転可能なモータ35に連結されている。ここで、モータ35は、コラム18の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット36を介して縦置き状態で取り付けられている。このモータ35には、該モータ35の回転角度を検出するエンコーダ37が設けられており、このエンコーダ37及びモータ35は、
図1及び
図2に示すように、制御部40に電気的に接続されている。
【0032】
また、ボールネジ軸34の下端は、軸受38によってコラム18に回転可能に支持されている。そして、ボールネジ軸34には、
図2に示すように、昇降板31の背面に後方(+Y方向)に向かって水平に突設されたナット部材39が螺合挿通している。
【0033】
さらに、
図1に示すように、一方のガイドレール32の前面(-Y方向の面)には、スケール80が固設されており、昇降板31の+X方向側の側面には、読み取り部81が取り付けられている。この読み取り部81は、例えば、スケール80に刻設された目盛の値を光学的に読み取る認識機構などを備えており、スケール80の目盛を光学的に認識することによって加工機構20の研削砥石252の高さ位置を認識することができる。
【0034】
次に、以上のように構成された加工装置1によるウェーハ100の研削加工について説明する。
【0035】
ウェーハ100を研削加工する際には、
図1に示すように、ウェーハ100をチャックテーブル10の保持面11上に保護テープ103を下にして載置する。そして、チャックテーブル10のポーラス部材13に接続されている不図示の吸引源を駆動してポーラス部材13を真空引きする。すると、ポーラス部材13に負圧が発生し、保持面11上に載置されているウェーハ100が負圧によって吸引保持される。
【0036】
上記状態から水平移動機構60を駆動してチャックテーブル10を+Y方向(後方)に移動させ、該チャックテーブル10に吸引保持されているウェーハ100を加工機構20の研削ホイール25の下方に位置決めする。すなわち、モータ64が起動されてボールネジ軸63が回転すると、このボールネジ軸63に螺合挿通するナット部材66(
図2参照)が取り付けられたスライダ61がテーブルベース16やチャックテーブル10などと共に左右一対のガイドレール62に沿って+Y方向に摺動するため、チャックテーブル10の保持面11に保持されているウェーハ100が加工機構20の研削ホイール25の下方に位置決めされる。なお、このとき、研削砥石252の下面がウェーハ100の中心を通るように両者の水平位置関係が調整される。
【0037】
また、モータ2を駆動してチャックテーブル10を回転させ、該チャックテーブル10の保持面11に保持されているウェーハ100を回転させるとともに、スピンドルモータ23を駆動して研削ホイール25を回転させておく。
【0038】
上述のように、ウェーハ100と研削ホイール25が回転している状態で、移動機構30を駆動して研削ホイール25を-Z方向に下降させる。すなわち、モータ35が駆動されてボールネジ軸34が回転すると、このボールネジ軸34に螺合挿通するナット部材39(
図2参照)が設けられた昇降板31がハウジング22や研削ホイール25などと共に-Z方向に下降する。すると、
図3に詳細に示すように、研削ホイール25の研削砥石252の下面(加工面)がウェーハ100の裏面102に接触する。このように、研削砥石252の下面がウェーハ100の上面に接触している状態から、研削ホイール25をさらに-Z方向に所定量だけ下降させると、ウェーハ100の上面が研削砥石252によって所定量だけ研削される。なお、ウェーハ100の研削加工中には、
図1に示す厚さ測定手段70によってウェーハ100の厚さが測定される。
【0039】
以上のウェーハ100の研削加工においては、研削後のウェーハ100の厚さが均一であるためには、ウェーハ100の裏面102と研削砥石252の下面とは平行に保たれている必要があるが、両者の平行度に狂いが生じている場合には、保持面傾き変更機構50を構成する各3つの圧電アクチュエータ52への供給電圧の値を変更することによって研削砥石252の下面に対するチャックテーブル10の保持面11の傾きを調整する。すなわち、1つまたは2つの圧電アクチュエータ52への供給電圧を他の圧電アクチュエータ52への供給電圧よりも高く設定すれば、高い電圧の供給を受けた1つまたは2つの圧電アクチュエータ52が伸びて研削砥石252の下面に対するチャックテーブル10の保持面11の傾きを調整することができる。なお、このとき、バネ部材51は、スライダ61の上面に対するテーブルベース16の下面の傾きの差を許容(吸収)する。
【0040】
上述のように、圧電アクチュエータ52は、チャックテーブル10の保持面11の傾きを調整する機能を有しているとともに、荷重センサとして機能する。すなわち、圧電アクチュエータ52は、これに荷重が加わると電圧を発生する。また、圧電アクチュエータ52に荷重が加わり発生した電圧の変動によって振動していると判断し振動センサとして機能する。
【0041】
ウェーハ100の研削加工において、研削砥石252に目詰まりや目潰れが発生すると、該研削砥石252の研削力が低下して振動が発生する。このような振動が発生すると、テーブルベース16とスライダ61との間に介設された圧電アクチュエータ52に大きくなったり小さくなったりする荷重がかかる。その荷重が作用し、各圧電アクチュエータ52から出力される電圧値が高くなる。或いは、地震が発生すると、振動のときと同様に、圧電アクチュエータ52に大きくなったり小さくなったりする荷重がかかる。その荷重が作用し、各圧電アクチュエータ52から出力される電圧値が大きくなったり小さくなったりを繰り返す。
【0042】
したがって、制御部40は、各圧電アクチュエータ52から出力される電圧の合計値が予め設定された閾値を超えると、移動機構30のモータ35を駆動してボールネジ軸34を逆転させて研削ホイール25を+Z方向に上昇させ、
図4に示すように、研削砥石252を予め設定した設定値分だけ上昇させてウェーハ100と研削砥石252との間に所定の隙間δを形成する。このため、振動によって研削砥石252がウェーハ100に繰り返し衝突することによるウェーハ100や研削砥石252の破損が防がれる。
なお、閾値を各圧電アクチュエータ52に対して設定して、圧電アクチュエータ52から出力される電圧値が閾値を超えると、移動機構30によって研削ホイール25を+Z方向に上昇させ、所定の隙間δを形成してもよい。
【0043】
なお、移動機構30によらずに、保持面傾き変更機構50を構成する各圧電アクチュエータ52を収縮させてチャックテーブル10を下降させることによってウェーハ100と研削砥石252との間に所定の隙間δを形成してもよいし、スピンドル傾き変更機構90を構成する各スピンドル圧電アクチュエータ92を膨張させて研削機構20を上昇させることによってウェーハ100と研削砥石252との間に所定の隙間δを形成してもよい。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、チャックテーブル10の保持面11の傾きを調整する保持面傾き調整機構50を構成する圧電アクチュエータ52を荷重センサや振動センサとしても利用するため、振動検知器を別途設けなくても、加工装置1は、傾き変更機能と荷重検知機能と振動検知機能とを具備することとなり、当該加工装置1の構造単純化による小型化とコストダウンを図ることができる。
【0045】
ウェーハ100の裏面102と研削砥石252の下面との平行度に狂いが生じている場合には、スピンドル傾き変更機構90を構成する各3つのスピンドル圧電アクチュエータ92への供給電圧の値を変更することによってスピンドル21の傾き、つまりは、チャックテーブル10の保持面11に対する研削ホイール25の研削砥石252の加工面(下面)の傾きを調整することができる。すなわち、1つまたは2つのスピンドル圧電アクチュエータ92への供給電圧を他のスピンドル圧電アクチュエータ92への供給電圧よりも高く設定すれば、高い電圧の供給を受けた1つまたは2つのスピンドル圧電アクチュエータ92が伸びてスピンドル21の傾きを調整することができる。なお、このとき、バネ部材91は、弾性変形してホルダ26の上面に対するフランジの下面の傾きの差を許容(吸収)する。
【0046】
上述のように、スピンドル圧電アクチュエータ92は、研削テーブル25の研削砥石252の加工面の傾きを調整する機能を有しているとともに、荷重センサとして機能する。すなわち、スピンドル圧電アクチュエータ92は、これに荷重が加わると電圧を発生する。また、圧電アクチュエータ52に荷重が加わり発生した電圧の変動によって振動していると判断し振動センサとして機能する。
【0047】
ウェーハ100の研削加工において、研削砥石252に目詰まりや目潰れが発生すると、該研削砥石252の研削力が低下して振動が発生する。このような振動が発生すると、スピンドル21のフランジ部211とハウジング22の底壁との間に介設されたスピンドル圧電アクチュエータ92に大きくなったり小さくなったりする荷重がかかる。その荷重が作用し、各スピンドル圧電アクチュエータ92から出力される電圧値が大きくなったり小さくなったりを繰り返す。
【0048】
したがって、制御部40は、各スピンドル圧電アクチュエータ92から出力される電圧の合計値が予め設定された閾値を超えると、移動機構30のモータ35を駆動してボールネジ軸34を逆転させて研削ホイール25を+Z方向に上昇させ、
図4に示すように、研削砥石252を予め設定した設定値分だけ上昇させてウェーハ100と研削砥石252との間に所定の隙間δを形成する。このため、振動によって研削砥石252がウェーハ100に繰り返し衝突することによるウェーハ100や研削砥石252の破損が防がれる。
なお、閾値を各スピンドル圧電アクチュエータ92に対して設定して、スピンドル圧電アクチュエータ92から出力される電圧値が閾値を超えると、移動機構30によって研削ホイール25を+Z方向に上昇させ、所定の隙間δを形成してもよい。
【0049】
なお、移動機構30によらずに、保持面傾き変更機構50を構成する各圧電アクチュエータ52を収縮させてチャックテーブル10を下降させることによってウェーハ100と研削砥石252との間に所定の隙間δを形成してもよいし、スピンドル傾き変更機構90を構成する各スピンドル圧電アクチュエータ92を膨張させて研削機構20を上昇させることによってウェーハ100と研削砥石252との間に所定の隙間δを形成してもよい。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、研削ホイール25の研削砥石252の加工面の傾きを調整するスピンドル傾き調整機構90を構成するスピンドル圧電アクチュエータ92を荷重センサや振動センサとしても利用するため、振動検知器を別途設けなくても、加工装置1は、傾き変更機能と振動検知機能とを具備することとなり、当該加工装置1の構造単純化による小型化とコストダウンを図ることができる。
【0051】
なお、以上は、本発明をウェーハの研削装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、ウェーハ以外の他の任意の被加工物の研削加工、研削加工以外の研磨加工などの他の任意の加工を行う加工装置もその適用対象に含むものである。
【0052】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1:加工装置、2:モータ、3:モータ軸、
4:駆動プーリ、5:従動プーリ、6:ベース、7、内部ベース、
8:ベースの開口部、9:カバー、
10:チャックテーブル、11:チャックテーブルの保持面、13:ポーラス部材、
14:枠体 15:チャック回転軸 16:テーブルベース、160:ベアリング、
17:無端ベルト
18:コラム、19:伸縮カバー、
20:加工機構、21:スピンドル、22:ハウジング、23:スピンドルモータ、
24:マウント、25:研削ホイール、251:ホイール基台、
252:研削砥石(加工具)、
30:移動機構、31:昇降板、32:ガイドレール、321:ガイド溝、
33:係合突起、34:ボールネジ軸、35:モータ、36:ブラケット、
37:エンコーダ、38、軸受、39:ナット部材、
40:制御部、50:保持面傾き変更機構、51:バネ部材、52:圧電アクチュエータ、
60:ワーク水平移動機構、61:スライダ、611:スライダの円孔、
62:ガイドレール、63:ボールネジ軸、64:モータ、65:軸受、
66:ナット部材、70:厚さ測定手段、71,72:ハイトゲージ、
80:スケール、81:読み取り部、
90:スピンドル傾き変更機構、91:バネ部材、92:スピンドル圧電アクチュエータ、
100:ウェーハ(被加工物)、δ:隙間