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特開2023-136061電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物、及びこれを用いたベーカリー食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136061
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物、及びこれを用いたベーカリー食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/00 20060101AFI20230922BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20230922BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20230922BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20230922BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20230922BHJP
   A21D 13/32 20170101ALI20230922BHJP
【FI】
A21D2/00
A21D2/26
A21D2/16
A21D13/00
A21D13/31
A21D13/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041475
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貴島 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 敦子
(72)【発明者】
【氏名】木本 匡昭
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】▲塚▼本 一民
(72)【発明者】
【氏名】茂木 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊之
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩二
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DB40
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK09
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK54
4B032DL03
4B032DP08
4B032DP16
4B032DP25
4B032DP33
4B032DP40
4B032DP47
4B032DP66
4B032DP73
4B032DP80
(57)【要約】
【課題】電子レンジ再加熱しても良好な食感を有する、電子レンジ再加熱ベーカリー食品の提供。
【解決手段】コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上の高アミロース小麦粉を、穀粉類中に10~80質量%含有する、電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上の高アミロース小麦粉を、穀粉類中に10~80質量%含有する、電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物。
【請求項2】
前記高アミロース小麦粉がSBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項1記載の穀粉組成物。
【請求項3】
グリアジン又はプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、請求項1又は2記載の穀粉組成物。
【請求項4】
前記電子レンジ再加熱ベーカリーが電子レンジ再加熱される冷凍パン又は総菜パンである、請求項1~3のいずれか1項記載の穀粉組成物。
【請求項5】
コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上の高アミロース小麦粉を、穀粉類中に10~80質量%含有する原料粉を用いる、電子レンジ再加熱ベーカリー食品の製造方法。
【請求項6】
前記高アミロース小麦粉がSBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記原料粉がグリアジン又はプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記電子レンジ再加熱ベーカリー食品が電子レンジ再加熱される冷凍パン又は総菜パンである、請求項5~7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ再加熱して食されるベーカリー食品の製造方法、及びそのための穀粉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特にスーパーやコンビニエンスストアで、ハンバーガー、ホットドッグ、ホットサンドなどの、調理した状態のものを電子レンジで再加熱して食されるベーカリー食品が販売されている。しかし、電子レンジで再加熱したベーカリー食品は、硬くヒキのある、口溶けの悪い食感となる。特許文献1には、乳化剤1~6重量%を配合して焼成してなる電子レンジ加熱に適する冷凍パンが記載されている。特許文献2には、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びα化澱粉を特定量配合するイースト発酵食品用組成物が、レンジアップしたパンの欠点である、食感のヒキの強さ、及び表面のシワや収縮を改善することが記載されている。
【0003】
一方で近年、低糖質食品に対する需要が拡大しており、穀粉の代わりに食物繊維素材を配合した生地から製造される低糖質なベーカリー食品や麺類が提供されている。しかし、従来の食物繊維を多く含む生地は、作業性が低く、また該生地から得られた食品は食感が低下しがちである。特許文献3には、不溶性食物繊維(IDF)と水溶性高分子食物繊維(HSDF)の総量が5質量%以下であり、水溶性低分子食物繊維(LSDF)の量が25質量%以上である加工澱粉からなる水溶性食物繊維強化剤、これをベーカリー食品や麺に使用すること、及び該食物繊維強化剤を添加した食品の食感が良好であることが記載されている。特許文献4には、難消化性澱粉を含むパンの製造において、原料小麦粉の一部として超強力粉を使用し、また活性グルテン及びグリアジン、ならびに架橋澱粉及び/又は増粘剤含有油脂を添加することで、パン生地の伸展性、膨張性及び弾力性の低下によるパン形状の劣化を抑制することが記載されている。特許文献5には、小麦粉、ふすま等の不溶性食物繊維含有粉、融点の異なる2種類の油脂、及びグリアジンを所定量で配合した焼き菓子が、不溶性食物繊維を豊富に含有しながらも、ソフトでなめらかな食感を有し、風味と甘味のいずれにも優れていることが記載されている。
【0004】
穀物に含まれる澱粉にはアミロースとアミロペクチンが含まれる。アミロースは、消化酵素による消化性が悪く、そのため、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分、すなわち食物繊維として機能し得、難消化性澱粉に分類される。高アミロース澱粉としては、高アミロース型トウモロコシ由来の高アミロースコーンスターチがよく知られている。また近年、澱粉合成に関連する酵素に変異を有することでアミロース含量を増加させた高アミロース小麦が開発されている(非特許文献1、2)。特許文献6~9には、澱粉分枝酵素SBEIIaの遺伝子の点変異を有し、SBEIIaの活性が低下しており、穀粒に含まれる澱粉のアミロース含有量が高い高アミロース小麦が開示されている。しかし一方で、アミロースは食品がパサついたり硬くなったりする原因でもある。例えば、前述の非特許文献2には、高アミロース小麦から製造したパンが、通常の小麦を使用したものと比べて膨らみが悪く品質に劣っていたこと、麺類のアミロース含量が多くなると硬くなり粘りがなくなることが記載されている。そのため、ベーカリーや麺類では、食品の食感をソフトで口当たりのよいものにしたい場合、アミロース含量の低い澱粉が利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-222639号公報
【特許文献2】特開平11-26235号公報
【特許文献3】特開2009-95316号公報
【特許文献4】特開2007-124928号公報
【特許文献5】特開2014-140365号公報
【特許文献6】特表2007-504803号公報
【特許文献7】特表2008-526690号公報
【特許文献8】特表2015-504301号公報
【特許文献9】特表2019-527054号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Jpn Assoc Dietary Fiber Res, 2003, 7(1):20-25
【非特許文献2】Trends in Food Science and Technology, 2006, 17:448-456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子レンジ再加熱しても良好な食感を有する、電子レンジ再加熱ベーカリー食品を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上の高アミロース小麦粉を、穀粉類中に10~80質量%含有する、電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物を提供する。
また本発明は、コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が40質量%以上の高アミロース小麦粉を、穀粉類中に10~80質量%含有する原料粉を用いる、電子レンジ再加熱ベーカリー食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀粉組成物により製造したベーカリー食品は、電子レンジ再加熱しても良好な食感を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「ベーカリー食品」(又は単に「ベーカリー」と称することもある。)とは、一般に、穀粉と副材料を含む生地を、必要に応じて発酵させた後、加熱(例えば、焼成、蒸し、揚げ等)することで製造される食品である。
【0011】
本発明で提供される電子レンジ再加熱ベーカリー食品とは、ベーカリー食品として製造後に、常温、冷蔵又は冷凍下で保存された後、電子レンジ再加熱して食するためのものとして提供されるベーカリー食品である。該電子レンジ再加熱ベーカリー食品の例としては、冷凍パン類、電子レンジ再加熱用として提供される総菜パン類、などが挙げられる。当該冷凍パン類及び総菜パン類に使用されるパン類の種類は、特に限定されず、例えば、食パン(角型食パン、イギリスパン等)、ロールパン、ハード系のパン(フランスパン、ドイツパン等)、クロワッサン、デニッシュ、イタリアパン、ナン、ブリトー、ピタパン、ピザ、などが挙げられる。また該総菜パン類の種類も、特に限定されず、例えば、ハンバーガー、ホットドッグ、ホットサンド、パニーニ、焼きそばパン、その他サンドイッチ、カレーパン、ピロシキ、ピザなどが挙げられる。これらの中でも、食感において効果が奏されやすい点で、発酵させた生地から製造されるパン類が好ましい。好ましくは、該電子レンジ再加熱ベーカリー食品は中華まんではない。
【0012】
本発明は、電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物(以下、単に「本発明の穀粉組成物」ともいう)、及びそれを用いる電子レンジ再加熱ベーカリー食品の製造方法を提供する。本発明で製造される電子レンジ再加熱ベーカリー食品(以下、単に「本発明のベーカリー食品」ともいう)は、その原料穀粉中に高アミロース小麦粉を含有することを特徴とする。本発明で使用される高アミロース小麦粉は、アミロース含有量が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは43質量%以上である。
【0013】
小麦粉のアミロース含有量とは、該小麦粉に含まれる総澱粉中のアミロース含有量をいう。本明細書における小麦粉のアミロース含有量は、コンカナバリンA(ConA)法により分析された値として定義され、例えば、該小麦粉をMegazyme社のアミロース/アミロペクチン分析キット(AMYLOSE/AMYLOPECTIN ASSAY KIT)で分析することで測定することができる。従来一般的なアミロース含有量の分析方法としては、(1) アミロースのヨウ素に対する結合能の高さを利用した方法(ヨウ素親和力測定法;例えば電流滴定法、比色定量法、AACC61-03法など)、(2) アミロペクチンとConAが特異的に結合することを利用した方法(ConA法)が知られている。しかし(1)を利用した方法ではアミロース量がより高く算出される傾向がある。例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されるSGP-1遺伝子の機能欠失型変異(null変異)を有する高アミロース小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法では37質量%程度であるが、ConA法では31質量%程度である。なお、従来一般的な小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素法では32質量%未満、ConA法では28質量%未満である。
【0014】
本発明において使用され得る高アミロース小麦粉の例としては、澱粉分枝酵素SBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉が挙げられる。そのような改変小麦由来の小麦粉の例としては、特許文献6~9に記載される、SBEIIaの遺伝子の変異を有し、SBEIIaの活性が低下している高アミロース小麦由来の小麦粉が挙げられる。より具体的な例としては、穀粒中のSBEIIaタンパク質の量又は活性が野生型小麦穀粒中の量又は活性の2%よりも低い高アミロース小麦由来の小麦粉、1つ以上、例えば1つ又は2つのSBEIIa遺伝子のnull変異を有する高アミロース小麦由来の小麦粉、などが挙げられる。
【0015】
本発明で使用される高アミロース小麦粉は、前述した高アミロース小麦の穀粒を通常の手順で製粉することによって製造することができる。例えば、本発明で使用される高アミロース小麦粉は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分のみを実質的に含む小麦粉であってもよく、又は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分に加えてさらに胚芽やふすま画分を含む小麦粉(例えば全粒粉)であってもよい。
【0016】
本発明で使用される高アミロース小麦粉は、灰分が、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.2~0.8質量%である。本明細書における小麦粉の灰分は、直接灰化法(ISS Standard Methods No.104/1)に従って測定した値をいう。
【0017】
本発明において、前述した高アミロース小麦粉は、電子レンジ再加熱ベーカリー食品の原料穀粉として使用される。すなわち、該高アミロース小麦粉を含有する原料穀粉は、電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物として使用され、該穀粉組成物を用いて本発明の電子レンジ再加熱ベーカリー食品が製造される。当該原料穀粉のうち、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは40~60質量%が該高アミロース小麦粉である。したがって、本発明の穀粉組成物は、該高アミロース小麦粉を、該穀粉組成物に含まれる穀粉類の全質量中、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは40~60質量%含有し得る。
【0018】
本発明の穀粉組成物は、前述した高アミロース小麦粉以外の他の穀粉類を含有する。当該他の穀粉類の例としては、前述した高アミロース小麦粉以外の小麦粉(典型的にはアミロース含有量が28質量%未満の小麦粉)、ライ麦粉、大麦粉、モチ大麦粉、オーツ麦粉、コーンフラワー、米粉、そば粉、大豆粉、ふすま粉などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を使用することができる。好ましくは、該他の穀粉類は該高アミロース小麦粉以外の小麦粉であり、その例としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などから選択される1種又は2種以上が挙げられ、このうち、通常ベーカリー製造に使用される小麦粉、例えば強力粉、準強力粉、及びそれらの混合粉が好ましい。
【0019】
好ましくは、本発明の穀粉組成物はグリアジンを含有する。本発明で使用されるグリアジンは、グルテンから有機酸やエタノール水溶液を用いて抽出した可溶性画分を乾燥粉末化することで調製される、グリアジンを主体とするグリアジン製剤をいう。このようなグリアジン製剤の例としては、市販のグリアジン製剤(例えばグリアA;アサマ化成株式会社、など)が挙げられる。好適には、該グリアジン製剤における蛋白質の含有量は、該製剤の全質量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。本発明の穀粉組成物におけるグリアジンの含有量は、該組成物中の穀粉類及び添加剤であるグルテンに含有されている成分を含まないグリアジン製剤の量として、該穀粉組成物に含まれる穀粉類100質量部あたり、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.15~3.5質量部、さらに好ましくは0.2~2質量部である。
【0020】
好ましくは、本発明の穀粉組成物はプロピレングリコール脂肪酸エステル(以下「PGエステル」ともいう)を含有する。PGエステルとしては、プロピレングリコールと脂肪酸のモノエステル、ジエステルが挙げられる。該脂肪酸は、炭素数8~22のものが好ましく、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。ジエステルの場合は、上記の脂肪酸からなる群より選ばれるいずれか1種又は2種を含むことができる。あるいは、PGエステルは、本発明の穀粉組成物から調製するベーカリー食品用生地に添加することができる。例えば、前述のPGエステル又はそれを含有する乳化油脂を該ベーカリー食品用生地に添加することができる。該乳化油脂には、該PGエステル以外の乳化剤、例えばグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどが含まれていてもよい。PGエステル、及びそれを含有する乳化油脂は市販されている(例えば、フレンジーF(S);理研ビタミン株式会社)。本発明の穀粉組成物(又は該穀粉組成物から調製するベーカリー食品用生地)におけるプロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量は、該穀粉組成物(又は該生地に含まれる該穀粉組成物)に含まれる穀粉類100質量部あたり、好ましくは0.05~3質量部、より好ましくは0.1~2質量部である。本発明の穀粉組成物は、前述したグリアジン及びプロピレングリコール脂肪酸エステルの少なくとも一方を含有していることが好ましく、両方を含有していてもよい。
【0021】
本発明の穀粉組成物は、前記高アミロース小麦粉を含有する原料穀粉、グリアジン、及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外に、他の材料を含有することができる。当該他の材料としては、ベーカリー食品の製造に通常使用され得るもの、例えば、澱粉(未加工又は加工澱粉)、糖類;イーストや発酵種;イーストフード;重曹、ベーキングパウダー等の膨張剤;全卵粉、卵黄粉、卵白粉等の卵製品;グルテン、大豆粉等の蛋白質類;乳製品;油脂類;乳化剤、増粘剤、甘味料、香料、着色料、アスコルビン酸等の添加剤;食塩等の無機塩類;酵素類、などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を使用することができる。
【0022】
本発明の穀粉組成物における、穀粉類の総量、ならび他の材料の配合量は、製造する本発明のベーカリー食品の種類や所望される性質に応じて適宜変更することができる。好ましくは、該穀粉組成物における穀粉類(前記高アミロース小麦粉及び他の穀粉を含む)の総量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0023】
本発明においては、原料粉として前記本発明の電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物を用いる以外は、通常の手順に従ってベーカリー食品を製造する。具体的には、原料粉から生地を調製し、必要に応じて発酵させた後、加熱(例えば、焼成、蒸し、揚げ等)することにより、ベーカリー食品を製造することができる。該ベーカリー食品は、原料粉として該本発明の電子レンジ再加熱ベーカリー用穀粉組成物を用いる以外は、該ベーカリー食品の種類に応じた通常のレシピに従って製造することができる。好ましくは、該ベーカリー食品は発酵ベーカリー食品である。好ましくは、該発酵ベーカリー食品は、調製された生地を、一次発酵、成形、及び二次発酵させ、次いで焼成することで製造される。該発酵ベーカリー食品の製造は、ストレート法、中種法、速成法、液種法、冷凍生地法等の各種常法に従って行うことができる。必要に応じて、調製した生地を、そのまま、又は発酵もしくは成形した状態で冷蔵又は冷凍保存し、必要に応じて解凍した後、該生地を加熱してベーカリー食品を製造してもよい。製造したベーカリー食品は、必要に応じて冷蔵又は冷凍され、本発明の電子レンジ再加熱ベーカリー食品として提供される。例えば、本発明のベーカリー食品は、ベーカリー食品として製造された後、常温、冷蔵又は冷凍で保存された状態から、電子レンジ再加熱して食するものとして流通、又は販売され得る。
【実施例0024】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0025】
材料
・高アミロース小麦由来小麦粉(HAW):SBEIIa変異遺伝子を有する、SBEIIaの発現量の低い小麦穀粒から得られた高食物繊維小麦粉。アミロース含有量47.4質量%(総澱粉中)、灰分0.57質量%。
・強力粉:1CW(No.1 Canada Wheat)由来小麦粉。アミロース含量25.1質量%(総澱粉中)、灰分0.43質量%。
・グリアジン:グリアA(アサマ化成)、蛋白質含有量75質量%以上。
・PGエステル:フレンジーF(S);理研ビタミン株式会社、プロピレングリコール脂肪酸エステル0.15質量%含有。
アミロース含量はアミロース/アミロペクチン分析キット(Megazyme社)により測定した。
【0026】
試験例1 カレーパン
カレーパンを製造した。パン生地の配合、及び製造工程は下記のとおりとした。
〔生地配合:質量部〕
中種 本捏
小麦粉(HAWと強力粉、表1の配合) 70 30
グリアジン 表1 -
生地改良剤 0.08 -
(CアンティS;オリエンタル酵母工業(株))
膨張剤 - 0.5
(ベーキングパウダーO#1;オリエンタル酵母工業(株))
乳化剤 0.3 -
(パンマック200V;理研ビタミン(株))
パン酵母 3 -
(レギュラーイースト;オリエンタル酵母工業(株))
食塩 - 1.5
ブドウ糖 2 -
上白糖 - 12
脱脂粉乳 - 3
油脂(ショートニング) - 8
PGエステル(PGエステル換算量) - 表1
全卵 - 10
水 39.5~52.5 15~22.5
〔工程〕
(中種)
ミキシング 低速5分中低速2分
捏上温度 25℃
発酵時間(27℃・75%) 2時間
(本捏)
ミキシング (油脂添加)低速10分
→中低速5分→中高速1~3分
捏上温度 27℃
フロアタイム(27℃・75%) 15分
分割 50g
ベンチタイム 10分
成形 カレーフィリング35g
モルダーでガス抜きして包餡。
舟型に成形、水にくぐらせてパン粉を付ける。
ホイロ(40℃・60%) 40分
ラックタイム 5分
フライ(180℃) 3分
【0027】
製造したカレーパンはビニール袋に包装して24時間室温で保存した後、電子レンジ(600W)で品温が60℃になるまでで再加熱した。再加熱後のパンの食感を、訓練されたパネラー10名により下記基準で評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表1に示す。
<評価基準>
食感(ヒキ)
5点:対照よりもヒキが少ない
4点:対照よりもヒキがやや少ない
3点:対照と同等のヒキである
2点:対照よりもヒキがやや強い
1点:対照よりもヒキが強い
食感(口溶け)
5点:対照よりも口溶けが優れる
4点:対照よりも口溶けがやや優れる
3点:対照と同等の口溶けである
2点:対照よりも口溶けがやや劣る
1点:対照よりも口溶けが劣る
【0028】
【表1】
【0029】
試験例2 ホットドッグ
ホットドッグ用ロールパンを製造した。パン生地の配合、及び製造工程は下記のとおりとした。
〔生地配合:質量部〕
中種 本捏
小麦粉(HAWと強力粉、表2の配合) 70 30
グリアジン 表2 -
生地改良剤 0.15 -
(オリエンタルC;オリエンタル酵母工業(株))
乳化剤 0.3 -
(パンマック200V;理研ビタミン(株))
パン酵母 3 -
(レギュラーイースト;オリエンタル酵母工業(株))
食塩 - 1.8
ブドウ糖 2 -
上白糖 - 10
脱脂粉乳 - 2
油脂(ショートニング) - 5
PGエステル(PGエステル換算量) - 表2
全卵 - 10
水 39.5~52.5 15.5~22
〔工程〕
(中種)
ミキシング 低速5分中低速2分
捏上温度 25℃
発酵時間(27℃・75%) 2時間
(本捏)
ミキシング (油脂添加)低速10分
→中低速5分→中高速1~3分
捏上温度 27~28℃
フロアタイム(27℃・75%) 30分
分割 80g
ベンチタイム 15分
成形 モルダー使用(3.6-0.5mm)
18cm程度のロールに成形
ホイロ(38℃・85%) 60分
焼成(220℃・190℃: 10~12分
【0030】
製造したロールパンの中心温度が35℃以下になった後、パンに切れ目(スリット)を入れてソース類を塗布し、ウインナーを挟み込み、ホットドッグを製造した。製造したホットドッグはビニール袋に包装して冷蔵庫(4℃)で24時間保存した後、電子レンジ(600W)で品温が60℃になるまでで再加熱した。再加熱後のパンの食感を、試験例1と同様の手順で評価した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】