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特開2023-136094フライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136094
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】フライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/007 20060101AFI20230922BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20230922BHJP
   A23D 9/013 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A23D9/007
A23D9/00 506
A23D9/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041527
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】辻野 祥伍
(72)【発明者】
【氏名】井阪 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青柳 寛司
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DG04
4B026DG05
4B026DK01
4B026DK02
4B026DK03
4B026DK04
4B026DK05
4B026DL01
4B026DL05
4B026DL10
4B026DP03
(57)【要約】
【課題】
フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制する方法を提供すること。
【解決手段】
フライ調理用油脂組成物に、乳化剤及び/又はりん酸を配合する、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライ調理用油脂組成物に、乳化剤及び/又はりん酸を配合する、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
【請求項2】
前記フライ調理用油脂組成物の品温20℃における接触角が、22°以下となるように、前記乳化剤を配合する、請求項1に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
【請求項3】
前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベート、及びレシチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
【請求項4】
前記フライ調理用油脂組成物における前記りん酸の含有量が、5~100質量ppmとなるように、前記りん酸を配合する、請求項1~3の何れか一項に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
【請求項5】
前記フライ調理用油脂組成物に、さらにトコフェロールを配合する、請求項1~4の何れか一項に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理の過程でフライ調理用油脂組成物が周囲に飛散して生成する飛沫固形物の生成を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品のフライ調理時には、フライ調理に用いている油脂がフライヤーの周囲に飛散する、いわゆる油はねが生じやすい。
飛散した油脂が、周囲の壁等に沿って流れることによりフライヤーに戻れば特に問題がないが、飛散後にフライヤーに戻らなかった油脂は、加熱酸化等により重合が進み、固形状の汚れ(以下、飛沫固形物という)になる。
この飛沫固形物は頑固な汚れであり、一度生成されてしまうと、落としにくいものであった。
【0003】
上記状況に鑑み、油はねを抑制する方法が種々開発されてきた。
例えば、特許文献1には、フライ用油脂組成物がシリコーン及び所定の乳化剤を0.005質量%以上3質量%未満含む、フライ調理時のフライ用油脂組成物の油はね低減方法が記載されている。
また特許文献2には、エステル置換度が4以上のショ糖脂肪酸エステルを5~30重量%含み、所定の組成を有するショ糖脂肪酸エステル混合物を組成中に0.01~5重量%含有されてなる油脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-149974号公報
【特許文献2】特開平7-000109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載され発明は、油はねの抑制を目的とするものであり、油はねにより生成される飛沫固形物の生成を抑制することは、検討されてこなかった。
【0006】
上記状況に鑑み、本発明は、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制する方法を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]フライ調理用油脂組成物に、乳化剤及び/又はりん酸を配合する、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
[2]前記フライ調理用油脂組成物の品温20℃における接触角が、22°以下となるように、前記乳化剤を配合する、[1]に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
[3]前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベート、及びレシチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[1]又は[2]に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
[4]前記フライ調理用油脂組成物における前記りん酸の含有量が、5~100質量ppmとなるように、前記りん酸を配合する、[1]~[3]の何れか一項に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
[5]前記フライ調理用油脂組成物に、さらにトコフェロールを配合する、[1]~[4]の何れか一項に記載のフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はフライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制方法であり、フライ調理用油脂組成物に、乳化剤及び/又はりん酸を配合することを特徴とする。
乳化剤及び/又はりん酸を配合したフライ調理用油脂組成物を用いてフライ調理を行うことで、調理の際に生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
【0010】
フライ調理用油脂組成物を構成する油脂は、フライ調理に通常用いられている油脂組成物であれば特に制限はなく、動物性油脂か植物性油脂かを問わない。
フライ調理用油脂組成物は、常温(25℃)で液体であることが好ましい。
【0011】
飛沫固形物は、飛散してフライヤーに戻らなかった油脂が、加熱酸化等により重合が進むことで生成する。フライ調理用油脂組成物に乳化剤を配合することで調理の際に生じる飛沫固形物の生成を抑制することができるが、その作用原理は油脂の重合抑制ではない。
フライ調理用油脂組成物に乳化剤を配合することによる飛沫固形物の生成抑制効果は、フライ調理用油脂組成物の接触角を低下させることによってもたらされる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、フライ調理用油脂組成物の品温20℃における接触角が、22°以下となるように、乳化剤を配合する。
フライ調理用油脂組成物の品温20℃における接触角は、20°以下となるように乳化剤を配合することがより好ましく、18°以下となるように乳化剤を配合することがさらに好ましく、16°以下となるように乳化剤を配合することがさらにより好ましく、13°以下となるように乳化剤を配合することがさらにより好ましい。
フライ調理用油脂組成物の接触角が上記数値となるように調整して乳化剤を配合することによって、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成をより効果的に抑制することができる。
【0013】
フライ調理用油脂組成物の品温20℃における接触角は、以下のようにして測定することができる。
<接触角の測定方法>
接触角計 DMo-502(協和界面科学株式会社製)
設定 「接触角測定[液滴法]」
固相 3cm角のガラス板(アズワン株式会社)
なお、接触角計における油の供給は「テフロン(登録商標)コート針」(協和界面科学株式会社製)を用い、一回の測定に使用するサンプル油脂量は2.0μLとする。
接触角は、接触角の値が一定程度安定となる着液後60秒の値を記録する。
解析には、θ/2法(画像処理により液滴の半径rと高さhを求め、θ=2arctan(h/r)で算出)を用いる。
【0014】
フライ調理用油脂組成物における乳化剤の含有量が、0.05~1質量%となるように乳化剤を配合することが好ましく、0.1~0.7質量%となるように乳化剤を配合することがより好ましく、0.3~0.6質量%となるように配合することがさらに好ましく、0.4~0.6質量%となるように配合することがことさらに好ましい。
フライ調理用油脂組成物における乳化剤の含有量が上記数値範囲内となるように配合することにより、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
なお、2種類以上の乳化剤を含むときは、これらの合計含有量が、上記数値範囲に含まれるように乳化剤を配合すればよい。
【0015】
フライ調理用油脂組成物に配合する乳化剤としては、食品に使用することができれば特に制限なく使用することができる。好ましくは、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベート、及びレシチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用し、より好ましくは、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、及びレシチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用する。
なお、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数8~22の脂肪酸が好ましい。炭素数8~22の脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸等、食品添加物としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、又はプロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸として使用されるものであれば、特に限定されない。
また有機酸モノグリセリドを構成する有機酸は、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸等、食品添加物としての有機酸モノグリセリドを構成する有機酸であれば、特に制限されない。
【0016】
本発明の好ましい形態では、フライ調理用油脂組成物におけるりん酸(オルトりん酸)の含有量が、5質量ppm以上となるように配合することが好ましく、10質量ppm以上となるように配合することがより好ましい。
また本発明の好ましい形態では、フライ調理用油脂組成物におけるりん酸(オルトりん酸)の含有量が、110質量ppm以下となるように配合することが好ましく、100質量ppm以下となるように配合するのがより好ましい。
フライ調理用油脂組成物におけるりん酸の含有量が上記数値範囲内となるようにりん酸を配合することにより、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、フライ調理用油脂組成物に、さらにトコフェロールを配合する。
本発明によれば、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、フライ調理用油脂組成物におけるトコフェロールの含有量が、12000質量ppm以下となるように配合することが好ましく、10000質量ppm以下となるように配合することがより好ましい。
また、本発明の好ましい形態では、フライ調理用油脂組成物におけるトコフェロールの含有量が、3000質量ppm以上となるように配合することが好ましく、4000質量ppm以上となるように配合することがより好ましい。
フライ調理用油脂組成物におけるトコフェロールの含有量が上記数値範囲内となるように配合することにより、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
【0019】
なおフライ調理用油脂組成物は、発明の効果を阻害しない範囲で、他の公知の成分を含んでいても良い。
また本発明に係る飛沫固形物の生成抑制方法は、必要に応じて、他の工程を含んでいてもよい。
【0020】
また本発明の好ましい形態では、フライ調理用油脂組成物に、乳化剤及びりん酸を配合する。
乳化剤を配合することにより、フライ調理用油脂組成物の品温20℃における接触角の大きさが低下し、これによりフライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
またりん酸は、フライ調理用油脂組成物の接触角には影響を与えず、また油脂組成物中の重合も抑制しないが、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。
よって本発明によれば、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制の作用原理が異なる2剤を配合することによって、これらの相乗効果により、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を効果的に抑制することができる。
【実施例0021】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0022】
<試験例1> 飛沫固形物生成抑制効果の検証1
本試験例では、フライ調理用油脂組成物に乳化剤を配合することによる、飛沫固形物生成抑制効果を検証した。
【0023】
<1>使用した油脂及び乳化剤
本試験例では、以下のフライ調理用油脂組成物及び乳化剤を使用し、サンプル油脂を調整した(実施例1~9)。また、乳化剤を添加しない大豆油を比較例1及び比較例3、乳化剤を添加しない菜種油を比較例2とした。
[フライ調理用油脂組成物]
大豆油:精製大豆油(日清大豆サラダ油:日清オイリオグループ(株)製)
菜種油:精製菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオグループ(株)製)
[乳化剤]
乳化剤1:ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(サンソフト818H:太陽化学(株)製、HLB1~2)
乳化剤2:ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(サンソフト818R:太陽化学(株)製、HLB1~2)
乳化剤3:ポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートーポリグリエステルO-50D:三菱ケミカルフーズ(株)製、HLB7.0)
乳化剤4:モノグリセリン脂肪酸エステル(サンソフトO-30V:太陽化学(株)製、HLB2.8)
乳化剤5:大豆由来レシチン(レシチンDX:日清オイリオグループ(株)製)
なお、乳化剤3、4における脂肪酸は、オレイン酸である。
【0024】
<2>各パラメータの測定
上記<1>で調製したサンプル油脂について、フライ試験により生じる飛沫固形物量、フライ試験後の油脂中重合物量、及び品温20℃における接触角の大きさを測定した。
各パラメータの測定方法を、以下に示す。
【0025】
<2-1>飛沫固形物量の測定(フライ試験)
本試験では、200mlガラスビーカー(AGCテクノグラス(株)製)及びステンレスビーカーを用いてフライ試験を行い、試験前後におけるビーカー重量から、フライ試験により生じた飛沫固形物量を算出した。また、比較例1、比較例2又は比較例3の飛沫固形物量に対する、各実施例に係るフライ調理用油脂組成物を使用した場合の飛沫固形物量の増減割合(%)を算出した。
(1)200mlビーカーを予め秤量・記録し、サンプル油脂を100.0g注いだ。
(2)サンプル油脂を注いだビーカーを、サンプル油脂の温度が180℃になるように加熱した。
(3)15mm角の冷凍ダイスポテト(ライフフーズ(株)製)を電子レンジで解凍した。
(4)上記(3)で解凍したダイスポテトを、180℃に加熱したサンプル油脂に投入した。
(5)投入から2分後にダイスポテトを引き上げ、5秒間保持して油をきった。
(6)上記(1)~(5)を1回のフライ操作とし、30分に1回、合計6回フライ操作を繰り返し実施した。
(7)6回のフライ操作の1時間後に加熱器具の電源を切った。
(8)同様のフライ操作を同じ油を用いて翌日も行い、合計4時間×2日間のフライ試験を実施した。
(9)フライ試験実施後の200mlビーカーからサンプル油脂を取り出し、空になった200mlビーカーを特級ヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)で洗浄した。洗浄後のビーカーには、フライ試験により生じた飛沫固形物が付着していた。
(10)特級ヘキサンをドライアップした後、200mlビーカーの重量を秤量し、フライ試験実施前の200mlビーカー重量との差分を飛沫固形物量として算出した。
(11)実施例1~5は比較例1の飛沫固形物量を、実施例6及び7は比較例2の飛沫固形物量を、実施例8は比較例3の飛沫固形物量を基準とし、実施例に係るサンプル油脂をフライ試験で使用した場合の飛沫固形物量の増減割合(%)を算出した。
【0026】
<2-2>油脂中重合物量の測定
上記<2-1>(9)で取り出したサンプル油脂(フライ試験実施後の油脂)中に含まれる重合物量を、基準油脂分析試験法「2.5.7-2013 油脂重合物(ゲル浸透クロマトグラフ法)」(日本油脂化学会制定)に従って測定した。
<2-3>接触角の測定
上記<1>で調整したサンプル油脂を、20℃に調温し、以下の測定条件で、接触角を測定した。
接触角計 DMo-502(協和界面科学株式会社製)
設定 「接触角測定[液滴法]」
固相 3cm角のガラス板(アズワン株式会社)
なお、接触角計における油の供給は「テフロン(登録商標)コート針」(協和界面科学株式会社製)を用い、一回の測定に使用するサンプル油脂量は2.0μLとした。
接触角は、接触角の値が一定程度安定となる着液後60秒の値を記録した。
解析には、θ/2法(画像処理により液滴の半径rと高さhを求め、θ=2arctan(h/r)で算出)を用いた。
【0027】
各実施例の組成及び各パラメータの測定結果を、表1~3に示す。
飛沫固形物重量の増減割合について、マイナスの数値は、基準とした比較例に係るフライ調理用油脂組成物を用いたフライ試験で生成した飛沫固形物量と比較して、実施例に係るフライ調理用油脂組成物を用いたフライ試験で生成した飛沫固形物量が減少していることを意味する。
油脂中重合物量の値は、数値が小さい程、フライ試験後のフライ調理用油脂組成物中の重合物の生成が抑制されていることを意味する。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
表1~3から明らかな通り、フライ調理用油脂組成物に乳化剤を配合した実施例1~9は、乳化剤を配合しない比較例1~3と比較して、フライ調理後に生じる飛沫固形物量が減少していた。またこの結果は、ビーカーの素材が異なっていても、同様だった。
以上より、フライ調理用油脂組成物に乳化剤を配合することにより、調理器具の素材を問わず、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができることが明らかになった。
また、表1、2から明らかな通り、フライ試験後のフライ調理用油脂組成物中の重合物は、比較例と同程度だった。
【0032】
また表1~3より、上記方法で測定した接触角が22°以下であれば、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成抑制効果を奏することが明らかになった。また上記方法で測定した接触角は、20°以下であることがより好ましく、18°以下であることがさらに好ましく、16°以下であることがさらにより好ましく、13°以下であることがさらにより好ましいことが明らかになった。
なお、表1、2から明らかな通り、実施例1~7のフライ試験後の油脂中重合物の量は、比較例のフライ試験後の油脂中重合物の量と同程度であり、飛沫固形物は、フライヤー中のフライ油の重合物の量とは相関しないことがわかる。
以上より、フライ調理用油脂組成物に乳化剤を配合することによる飛沫固形物の生成抑制効果は、フライ調理用油脂組成物の重合を抑制することによってもたらされたものではなく、フライ調理用油脂組成物の品温20℃における接触角を低下させることによりもたらされたものであることが示唆された。
【0033】
<試験例2> 飛沫固形物生成抑制効果の検証2
本試験例では、フライ調理用油脂組成物にりん酸を配合することによる、飛沫固形物生成抑制効果を検証した。
フライ調理用油脂組成物としては試験例1と同じ大豆油を使用し、添加剤1としてりん酸(富士フイルム和光純薬(株)製)を使用した。
試験例1と同様にして飛沫固形物量と油脂中重合物量を測定した。飛沫固形物量の増減割合(%)は試験例1の比較例1を基準として算出した。
結果を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
表4から明らかな通り、フライ調理用油脂組成物にりん酸を配合することにより、フライ試験後に生じる飛沫固形物量が減少していた。
すなわち、フライ調理用油脂組成物にりん酸を配合することにより、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができることが明らかになった。また、フライ調理用油脂組成物におけるりん酸の含有量が、0.0005質量%(5質量ppm)以上となるようにりん酸を配合することが好ましく、0.001質量%(10質量ppm)以上となるようにりん酸を配合することがより好ましいことが明らかになった。さらにまた、フライ調理用油脂組成物におけるりん酸の含有量が、0.011質量%(110質量ppm)以下となるように配合することが好ましく、0.01質量%(100質量ppm)以下となるように配合することがより好ましいことが明らかになった。
一方で、表4から、りん酸を配合することによる飛沫固形物の抑制効果は、フライ調理用油脂組成物の接触角を低下させることによりもたらされるものでも、油脂の重合を抑制することによりもたらされるものでもないことも、明らかになった。
【0036】
また試験例1及び試験例2の結果から、乳化剤の添加による飛沫固形物生成抑制効果の作用原理と、りん酸の添加による飛沫固形物生成抑制効果の作用原理とは、異なるものであることが明らかになった。
この結果から、フライ調理用油脂組成物に、作用原理の異なる乳化剤及びりん酸を配合することにより、これらの相乗効果によりフライ調理により生じる飛沫固形物の生成をさらに抑制することができることが示唆された。
【0037】
<試験例3> 抗酸化剤の添加による効果の検証
本試験例では、フライ調理用油脂組成物に乳化剤と抗酸化剤を配合することによる、飛沫固形物生成抑制効果を検証した。
フライ調理用油脂組成物としては試験例1と同じ大豆油を、乳化剤としては乳化剤2(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(サンソフト818R:太陽化学(株)製、HLB1~2))をそれぞれ使用した。また、抗酸化剤としては、以下の抗酸化剤を使用した。
[抗酸化剤]
抗酸化剤1:トコフェロール(ミックストコ80:日清オイリオグループ(株)製)
抗酸化剤2:アスコルビン酸パルミテート(L-Ascorbic Acid:東京化成工業(株)製)
抗酸化剤3:βカロテン(β-カロテン:富士フイルム和光純薬(株)製)
【0038】
試験例1と同様にして飛沫固形物量と油脂中重合物量を測定した。飛沫固形物量の増減割合(%)は試験例1の比較例1を基準として算出した。
結果を表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
表5から明らかなとおり、フライ調理用油脂組成物に乳化剤とトコフェロールを添加した実施例13は、フライ試験後に生成する飛沫固形物量が減少していた。
すなわち、フライ調理用油脂組成物に乳化剤とトコフェロールを添加することにより、飛沫固形物の生成が抑制されることが明らかになった。
参考例1、2によれば、トコフェロールを1質量%又は0.4質量%添加した場合でも、飛沫固形物量の生成抑制効果がみられることから、フライ調理用油脂組成物に、乳化剤とトコフェロールを添加することにより、飛沫固形物の生成が抑制されることが示唆された。
またトコフェロールの配合量は0.3質量%(3000質量ppm)以上であることが好ましく、0.4質量%(4000質量ppm)以上であることがより好ましいことが明らかになった。
さらにまたトコフェロールの配合量は、1.2質量%(12000質量ppm)以下であることが好ましく、1.0質量%(10000質量ppm)以下であることがより好ましいことが明らかになった。
加えて、試験例2の結果と合わせれば、フライ調理用油脂組成物に、りん酸とトコフェロールを配合することにより、あるいは、乳化剤とりん酸とトコフェロールを配合することにより、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成が抑制できることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、フライ調理により生じる飛沫固形物の生成を抑制することができる。