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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136109
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20230922BHJP
   C08K 3/015 20180101ALI20230922BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20230922BHJP
   C08F 291/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08L51/04
C08K3/015
C08L33/12
C08F291/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041556
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】396021575
【氏名又は名称】テクノUMG株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小俣 有輝
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BG06X
4J002BN17W
4J002BN22W
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA106
4J002DA116
4J002DE096
4J002DE116
4J002DE146
4J002DE156
4J002DF026
4J002DF036
4J002EN136
4J002EU026
4J002EU046
4J002EU116
4J002EU186
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD186
4J026AA45
4J026AB44
4J026AC18
4J026AC32
4J026BA05
4J026BA31
4J026BB03
4J026DA04
4J026DA13
4J026DB04
4J026DB13
4J026FA07
(57)【要約】
【課題】抗菌性を有し、消毒液による拭き取り、深紫外線(UV-C)による殺菌法に適した熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】ポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートからなる複合ゴム(G)の存在下に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(C)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)と、抗菌剤(K)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートからなる複合ゴム(G)の存在下に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(C)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)と、抗菌剤(K)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物に関するものである。詳しくは本発明は抗菌性を有し、消毒液による拭き取り、深紫外線(UV-C)による殺菌法に適した熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルスの世界的な流行が問題となっており、このことが社会及び経済活動の大きな阻害要因となっている。特に、人々が密集する飲食店や各種イベント会場、交通機関などが大きな経済的打撃を受けている。
【0003】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への罹患を抑える手法として、消毒液や深紫外線(UV-C)照射による殺菌・除菌が行われている(特許文献1)。
【0004】
これら手法を行う装置は、その使用上、消毒液や深紫外線(UV-C)に暴露される。さらには、当該装置そのものにも付着することも考えられることから、その除菌・殺菌のために当該装置に対して消毒液による拭き取り、深紫外線(UV-C)照射による殺菌・除菌が行われる。このため、これら装置を構成する樹脂部品は、消毒液によるケミカルストレスクラックに起因する脆化や、UV-Cによる変色といった劣化を引き起こすこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-30889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するものであり、本発明の目的は、抗菌性を有し、消毒液による拭き取り、深紫外線(UV-C)による殺菌法に適した熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ね、特定の複合ゴム(G)の存在下に芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(C)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)と、抗菌剤(K)とを含む熱可塑性樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0008】
[1] ポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートからなる複合ゴム(G)の存在下に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(C)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)と、抗菌剤(K)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
【0009】
[2] 前記複合ゴム(G)中のポリオルガノシロキサンの含有量が1~25質量%で、ポリアルキルアクリレートの含有量が75~99質量%であり、該複合ゴム(G)の体積平均粒子径が0.08~0.16μmである、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0010】
[3] 前記単量体混合物(C)が、芳香族アルケニル化合物を65~85質量%、シアン化ビニル化合物を15~35質量%、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を0~15質量%を含み(ただし、これらの合計で100質量%)、グラフト共重合に用いられる該単量体混合物(C)の量が、前記複合ゴム(G)100質量部に対して80~140質量部である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0011】
[4] 前記グラフト共重合体(A)とポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の合計100質量部に対してグラフト共重合体(A)を90~20質量部、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)を10~80質量部含有する、[1]ないし[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
[5] 前記抗菌剤(K)を前記グラフト共重合体(A)とポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の合計100質量部に対して0.1~10質量部含む、[1]ないし[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0013】
[6] 熱可塑性樹脂組成物100質量%中にポリオルガノシロキサンを3~7質量%含む、[1]ないし[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
[7] [1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、抗菌性を有し、しかも、消毒液による拭き取り、深紫外線(UV-C)による殺菌に対しても、脆化、変色といった不具合を生じることがない。
このため、本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品は、それ自体が、その使用上、消毒液やUV-Cに暴露され、しかも、その消毒液による拭き取り、UV-C照射による殺菌・除菌が行われる殺菌・除菌装置の構成部材や、消毒液による拭き取り、UV-C照射による殺菌・除菌が行われる樹脂製品として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定はされない。
【0017】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートからなる複合ゴム(G)の存在下に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(C)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)と、抗菌剤(K)とを含むことを特徴とする。
【0018】
[複合ゴム(G)]
本願発明に用いる複合ゴム(G)はポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートからなるものである。
【0019】
<ポリオルガノシロキサン>
複合ゴム(G)を構成するポリオルガノシロキサンとしては特に限定されるものではないが、好ましくは、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンである。さらに好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3~3モル%とジメチルシロキサン単位97~99.7モル%とからなり、さらに3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対して1モル%以下であるポリオルガノシロキサンである。
【0020】
上記ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%未満では、ポリアルキルアクリレートとの複合化が不十分となり、得られる成形品の表面外観が悪くなる。また、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%を超える、または3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなりやすい。
熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観の両方を考慮すると、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位の含有量は0.5~2モル%、特に0.5~1モル%であることが好ましい。
【0021】
上記ポリオルガノシロキサンの製法としては、特に限定はされないが、乳化重合で製造することが好ましく、例えば、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物、またはさらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含むシロキサン混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和する方法が挙げられる。
【0022】
重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤及び水と共に混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等があるが、得られるポリオルガノシロキサンの粒子径の制御のしやすさを考慮するとシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
【0023】
ポリオルガノシロキサンの製造に用いるジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3~7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0024】
また、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有しかつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものである。ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β-メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン及びδ-メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p-ビニルフェニルジメトキシメチルシランさらにγ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。これらのビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
【0025】
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が用いられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0026】
また、本発明に係るポリオルガノシロキサン製造の際に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これらの乳化剤は、シロキサン混合物100質量部に対して通常0.05~5質量部程度の範囲で使用される。乳化剤の使用量が少なすぎると分散状態が不安定となり微小な粒子径の乳化状態を保てなくなる。また、乳化剤の使用量が多すぎるとこの乳化剤に起因して、得られる成形品が着色する。
【0027】
シロキサン混合物、乳化剤、水及び/または酸触媒を混合する方法は、高速撹拌による混合、ホモジナイザーなどの高圧乳化装置による混合などがあるが、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい方法である。
【0028】
ポリオルガノシロキサンの重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類及び硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は一種でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
ポリオルガノシロキサンの重合温度は、50℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上である。ポリオルガノシロキサンの重合時間は、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤及び水と共に混合、微粒子化させて重合する場合は2時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを低下する方法では、ラテックスの滴下終了後、1時間程度保持することが好ましい。
【0030】
重合の停止は、反応液を冷却し、さらにラテックスを苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で中和することによって行うことができる。
【0031】
このようにして製造されたポリオルガノシロキサンラテックスに、アルキルアクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとからなる成分を含浸させた後に重合させることによって、複合ゴムを得ることができる。本発明に係る複合ゴム(B)中のポリオルガノシロキサンの量は、特に限定はされないが1~25質量%が好ましい。複合ゴム(B)中のポリオルガノシロキサンの含有量が1質量%未満では樹脂組成物中に取り込めるポリオルガノシロキサン量が少なくなり耐UV-C性の発現が低くなる。複合ゴム(B)中のポリオルガノシロキサンの含有量が25質量%を超えるとグラフト重合体ラテックスの塩析、凝固によるグラフト共重合体の分離・回収の効率が低下する場合がある。この観点から、複合ゴム(B)中のポリオルガノシロキサンの含有量はより好ましくは6~20質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。
【0032】
<ポリアルキルアクリレート>
複合ゴム(G)を構成するポリアルキルアクリレートは、アルキルアクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとからなる。ここで「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を示す。
【0033】
アルキルアクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が例示され、これらを単独でまたは2種以上併用して用いることができる。これらの内、n-ブチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0034】
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上併用して用いることができる。好ましい多官能性アルキル(メタ)アクリレートの例としては、アリルメタクリレートと1,3-ブチレングリコールジメタクリレートとの併用である。
【0035】
多官能性アルキル(メタ)アクリレートの使用量は、アルキルアクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートからなる成分中0.1~20質量%が好ましく、より好ましくは0.2~5質量%、さらに好ましは0.2~1質量%である。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートの使用量が上記範囲内であると樹脂組成物の機械物性が良好となる。
【0036】
重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ハイドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0037】
<複合ゴム(G)の製造法>
本発明に係るポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートからなる複合ゴム(G)は、ポリオルガノシロキサンのラテックス中へ上記アルキルアクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートからなる混合物を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合することによって調製できる。該アクリレート成分を添加する方法としては、ポリオルガノシロキサンのラテックスと一括で混合する方法とポリオルガノシロキサンのラテックス中に一定速度で滴下する方法がある。得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を考慮すると、ポリオルガノシロキサンのラテックスと一括で混合する方法が好ましい。例えば、前述の方法で製造されたポリオルガノシロキサンラテックスに、アルキルアクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとからなる成分を含浸させた後に重合させることによって複合ゴム(G)を得る方法が挙げられる。
【0038】
<ポリオルガノシロキサン及びポリアルキルアクリレートの含有量>
本発明に係る複合ゴム(G)中のポリオルガノシロキサンの量は、特に限定はされないが1~25質量%が好ましい。複合ゴム(G)中のポリオルガノシロキサンの含有量が1質量%以上であれば、熱可塑性樹脂組成物中に取り込めるポリオルガノシロキサン量が多く、耐UV-C性の発現に優れる。複合ゴム(G)中のポリオルガノシロキサンの含有量が25質量%以下であればグラフト重合体ラテックスの塩析、凝固によるグラフト共重合体(A)の分離・回収の効率に優れる。複合ゴム(G)中のポリオルガノシロキサンの量はより好ましくは6~20質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。
【0039】
本発明に係る複合ゴム(G)中のポリアルキルアクリレートの量は、特に限定はされないが99~75質量%が好ましい。複合ゴム(G)中のポリアルキルアクリレートの含有量が75質量%以上であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性に優れる。複合ゴム(G)中のポリアルキルアクリレートの含有量が95質量%以下であれば得られる熱可塑性樹脂組成物の耐UV-C性に優れる。複合ゴム(G)中のポリアルキルアクリレートの量はより好ましくは94~80質量%、さらに好ましくは90~80質量%である。
【0040】
<複合ゴム(G)の質量平均粒子径>
複合ゴム(G)の質量平均粒子径は、0.08~0.16μmであることが好ましい。質量平均粒子径が0.08μm以上であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性に優れる。一方、質量平均粒子径が0.16μm以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐UV-C性に優れる。複合ゴム(G)のより好ましい質量平均粒子径は0.1~0.15μmである。
複合ゴム(G)の質量平均粒子径は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
【0041】
[グラフト共重合体(A)]
本発明に係るグラフト共重合体(A)は複合ゴム(G)に、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(C)をグラフト共重合することによって製造される。
【0042】
グラフト共重合に用いる芳香族アルケニル化合物としては、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、o-エチルスチレン、o-クロロスチレン、o,p-ジクロロスチレンが挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、エタアクリロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。シアン化ビニル化合物についても、1種のみで用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0044】
これらの内、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や熱安定性を考慮すると、スチレンとアクリロニトリルを使用することが好ましい。
【0045】
単量体混合物(C)は、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物以外に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を含んでいてもよい。これらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル系単量体、N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、アクリルアミド等の不飽和アミドなどの1種又は2種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸とメタクリル酸の一方又は双方を示す。
【0046】
単量体混合物(C)は、芳香族アルケニル化合物65~85質量%、シアン化ビニル化合物15~35質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0~15質量%を含む(ただしこれらの合計で100質量%)ことが好ましい。この範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性や耐UV-C性に優れる傾向がある。
【0047】
グラフト共重合において用いる単量体混合物(C)中には、得られるグラフト共重合体(A)の分子量やグラフト率を調整するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0048】
グラフト共重合は、複合ゴム(G)のラテックスに芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(C)を加え、ラジカル重合技術により一段であるいは多段で行うことができるが、グラフト組成や分子量調整などの操作面から二段以上で重合を行うことが好ましい。
【0049】
グラフト共重合に用いられる単量体混合物(C)の量は、複合ゴム(G)100質量部に対して好ましくは80~140質量部、より好ましくは100~120質量部である。この範囲内であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性がより良好となる。また、得られる熱可塑性樹脂組成物中に占めるポリオルガノシロキサンの含有量が好適な範囲とさせやすくなり、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐UV-C性がより良好となる。
【0050】
グラフト共重合の際、単量体混合物(C)中の全ての化合物がグラフト成分にならず、一部単独の共重合体として存在していても差し支えない。
【0051】
グラフト共重合には、重合ラテックスを安定化させるために乳化剤を添加することができる。用いる乳化剤としては、特に限定させるものではないが、好ましい例としてはカチオン系乳化剤、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤であり、さらに好ましい例としてはスルホン酸塩乳化剤あるいは硫酸塩乳化剤とカルボン酸塩乳化剤との併用である。
【0052】
グラフト重合が終了した後、ラテックスを酢酸カシウムまたは硫酸アルミニウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固することによりグラフト共重合体(A)を分離して、回収することができる。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量は、グラフト共重合体(A)とポリメチルメタクリレート系樹脂(M)との合計100質量部において、90~20質量部、90~30質量部、90~35質量部、80~20質量部、70~20質量部、60~20質量部の順で好ましい。この範囲内であると、得られる熱可塑性樹脂組成物中に占める複合ゴム(G)のポリオルガノシロキサン、ポリアルキルアクリレートの含有量が好適な範囲となりやすくなり、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐UV-C性、耐薬品性がより良好となる。
【0054】
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)の1種のみを含むものであってもよく、複合ゴム(G)や単量体混合物(C)組成等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
【0055】
[ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)]
本発明で用いられるポリメチルメタクリレート系樹脂(M)は、特に限定されるものではないが、好ましくはメチルメタクリレート単位を80質量%以上含有するものである。ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)は、20質量%以下の範囲でメチルメタクリレート以外のビニル系単量体単位を含むことができる。
メチルメタクリレート以外のビニル系単量体としては、メチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートやスチレン等が挙げることができる。得られる熱可塑性樹脂組成物の耐UV-C性の観点からメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0056】
本発明における熱可塑性樹脂組成物中のポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の含有量は、グラフト共重合体(A)とポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の合計100質量部において、10~80質量部、10~70質量部、10~65質量部、20~80質量部、30~80質量部、40~80質量部の順で好ましい。この範囲内であると得られる熱可塑性樹脂組成物中に占める複合ゴム(G)のポリオルガノシロキサン、ポリアルキルアクリレートの含有量が好適な範囲となりやすくなり、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐UV-C性、耐薬品性がより良好となる。
【0057】
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の1種のみを含むものであってもよく、単量体組成や物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
【0058】
[抗菌剤(K)]
本発明に用いる抗菌剤(K)は公知の抗菌剤を使用できる。
抗菌剤(K)の抗菌成分としては、例えば、銀を含む抗菌成分、銀を含まない無機系抗菌成分、有機系抗菌成分、ならびにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
銀を含む抗菌成分としては、銀(銀原子)が含まれていればよく、その種類は特に制限されない。また、銀の形態も特に制限されず、例えば、金属銀、銀イオン、銀塩など形態で含有され得る。
【0059】
銀塩としては、例えば、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ酸銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis-1,5-シクロオクタジエン)-1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7-ジメチル-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-4,6-オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロ硼酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀、テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p-トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀及びバナジン酸銀等が挙げられる。
【0060】
また、銀塩の一形態である銀錯体の一例としては、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体またはイミダゾール銀錯体などが挙げられる。
【0061】
銀を含まない無機系抗菌成分としては、例えば金属銅、酸化銅などの銅を含む化合物、金属金、酸化金などの金を含む化合物、金属鉛、酸化鉛などの鉛を含む化合物、金属白金、酸化白金などの白金を含む化合物、金属ニッケル、酸化ニッケルなどのニッケルを含む化合物、金属アルミニウム、酸化アルミニウムなどのアルミニウムを含む化合物、金属スズ、酸化スズなどのスズを含む化合物、金属亜鉛、酸化亜鉛などの亜鉛を含む化合物、金属鉄、酸化鉄などの鉄を含む化合物、金属ビスマス、酸化ビスマスなどのビスマスを含む化合物、などの銀以外の金属を含有する化合物やアンモニウム塩含有無機系化合物等が挙げられる。
【0062】
有機系抗菌成分としては、例えば、フェノールエーテル誘導体、イミダゾール誘導体、スルホン誘導体、N-ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール誘導体、アンモニウム塩含有有機系化合物、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイソチアゾリン系化合物及びイソチアゾリン系化合物等が挙げられる。
【0063】
アンモニウム塩含有無機系化合物及びアンモニウム塩含有有機系化合物の種類は特に制限されないが、第4級アンモニウム塩が特に好ましい。アンモニウム塩含有無機系化合物としては、例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。アンモニウム塩含有有機系化合物としては、例えば、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、及びアンモニウム塩含有ポリマー挙げられる。アンモニウム塩含有ポリマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合体に代表されるアミノ基含有樹脂の塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体に代表されるアンモニウム塩含有モノマーを構造単位に有する樹脂等が挙げられる。後述のキトサンの中和物もアミノ基含有樹脂の塩の一態様である。
【0064】
これら抗菌剤(K)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の抗菌剤(K)の含有量は、グラフト共重合体(A)とポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の合計100質量部に対して、0.1~10質量部、0.1~5.0質量部、0.1~3.0質量部、0.1~1.0質量部、0.2~0.6質量部の順で好ましい。抗菌剤(K)の含有量が上記範囲内であれば、抗菌剤(K)による抗菌活性を十分に得ることができる。
【0066】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記グラフト共重合体(A)、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)及び抗菌剤(K)以外の他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候性付与剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等の添加剤や、グラフト共重合体(A)、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)以外の他の樹脂が挙げられる。
【0067】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
【0068】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクタデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-クロロベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが例示できる。
【0069】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが例示できる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノールなどが例示できる。
【0070】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレートなどが例示できる。
【0071】
上記紫外線吸収剤は、1種のみを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、その含有量は、グラフト共重合体(A)とポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の合計100質量部に対して、好ましくは0.05~1.0質量部、より好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0073】
<光安定剤>
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を好適に用いることができる。
ヒンダードアミン系光安定剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。
【0074】
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル}イミノ}]、N,N′-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-tert-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)などが例示できる。
上記安定剤は、1種のみを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が光安定剤を含む場合、その含有量は、グラフト共重合体(A)とポリメチルメタクリレート系樹脂(M)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~1.0質量部、より好ましくは0.3~0.6質量部である。
【0076】
<その他の樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、グラフト共重合体(A)及びポリメチルメタクリレート系樹脂(M)以外のその他の樹脂を1種又は2種以上含有していてもよい。この場合、その他の樹脂はグラフト共重合体(A)、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)及びその他の樹脂の合計100質量部中に50質量部以下であることが好ましい。
【0077】
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前述のグラフト共重合体(A)、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)及び抗菌剤(K)と、更に必要に応じて用いられる上記添加剤やその他の樹脂を、バンバリーミキサー、ロール、及び単軸又は多軸押出機で溶融混練するなど種々の方法で製造することができる。
【0078】
[熱可塑性樹脂組成物中のポリオルガノシロキサン含有量]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物100質量%中のポリオルガノシロキサンの含有量が1~10質量%、特に3~7質量%となるように、前述の複合ゴム(G)、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)及び抗菌剤(K)、必要に応じて用いられるその他の成分を配合することが好ましい。熱可塑性樹脂組成物中のポリオルガノシロキサンの含有量がこの範囲内であれば耐UV-C性がより向上する。
【0079】
〔成形品〕
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
【0080】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、抗菌性を有し、しかも消毒液による拭き取り、深紫外線(UV-C)による殺菌に対しても、脆化、変色といった不具合を生じることがないため、それ自体が、その使用上、消毒液やUV-Cに暴露され、しかも、その消毒液による拭き取り、UV-C照射による殺菌・除菌が行われる。殺菌・除菌装置の構成部材、具体的には、滅菌ランプ周辺部材、医療防護服用ファン部材、ジェットタオル、便座、櫛、髭剃り等の衛生用品、車載装置、家電製品、家具・日用品等の手で触れる箇所等に有用である。
ただし、本発明の成形品の用途は、何ら殺菌・除菌装置の構成部材に限定されるものではなく、その他一般用途等にも有用である。
【実施例0081】
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例及び比較例を挙げて説明するが、これら実施例は本発明を制限するものではない。
尚、以下の参考例、実施例及び比較例において「部」及び「%」は特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0082】
<ポリオルガノシロキサンの平均粒子径の測定>
粒度分布計(MATEC APPLIED SCIENCES社製、「CHDF-2000」)を用い、キャリア液として2XGR500(商品名)を用いて、ポリオルガノシロキサンの質量基準の体積平均粒子径を測定した。
【0083】
<複合ゴムの平均粒子径の測定>
ナノトラック粒度分布計(日機装株式会社製、「UPA-EX150」)を用い、測定溶媒としてイオン交換水を用いて、複合ゴムラテックスの体積平均粒子径を測定した。これを複合ゴムの平均粒子径とする。
【0084】
<耐UV-C性の評価>
50mm×50mm×厚さ3mmの試験片に対して、岩崎電気社製UV-CランプGL15W(波長254nm、照度5.175mW/cm、照射距離80mm)を用いて紫外線照射による殺菌を1回あたり10分の照射を1日2回実施したとして、1年後の積算露光量を約21,900mW・sec/cmと仮定して以下の評価を行った。
(評価)
分光測色計(コニカミノルタオプティクス社製、CM-3500d)を用い、SCI方式(正反射光込み)にて未照射のサンプルを測色した値と、積算露光量が90000mW・sec/cm(約4年使用相当)に達した時点で測定した値の差ΔEを以下の基準で判断した。
○:目視による黄変が少なく、SCI法による色差ΔEが15未満。
△:目視による黄変がやや見られ、SCI法による色差ΔEが15以上、20未満。
×:目視による黄変が見られ、SCI法による色差ΔEが20以上。
【0085】
<耐薬品性の評価>
(Bending Form定歪法)
150mm×10mm~13mm、厚み2mmの試験片を用意し、これを0.7%定歪治具に固定した。試験片の中央部(両端から75mmの場所)に99.5%エタノールをしみこませた脱脂綿を置き、23℃環境下で24時間静置した後、以下の観点で評価した。
〇:治具取り付け状態では試験片の表面にクラックが発生せず、更に治具から取り外し後、過大歪をかけてもクラックが発生しない場合。
△:具取り付け状態では試験片の表面にクラックが発生しないが、治具から取り外し後、過大歪をかけるとクラックが発生する場合。
×:治具取り付け状態の試験片の表面にクラックが発生する場合。
【0086】
<抗菌性の評価>
50mm×50mm、厚さ3mmの試験片を用意し、JIS Z2801(2012)に準拠して以下の条件で抗菌性試験を行った。
試験菌株:黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus NBRC 12732
判定条件
〇:抗菌活性値が2.0以上で効果あり。
×:抗菌活性値が2.0未満で十分な効果が得られない。
【0087】
[参考例1:ポリオルガノシロキサンラテックスの調製]
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ-メクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.65部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて9000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノロキサンラテックスを得た。一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、上記予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液で中和してラテックスを得た。このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、18.0%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの体積平均粒子径は0.07μmであった。
【0088】
[参考例2:複合ゴム(G-1)ラテックスの調製]
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び撹拌装置を備えた反応器内に、上記参考例1で製造したポリオルガノシロキサンラテックス38.9部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート(「エマールNC-35」花王(株)社製)0.18部を採取し、蒸留水148.5部を添加混合した後、n-ブチルアクリレートが42部、アリルメタクリレートが0.3部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレートが0.1部及びt-ブチルハイドロパーオキサイドが0.11部の混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.000225部及びロンガリット0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始した。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させてポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴム(G-1)ラテックスを得た。ラテックスの一部をサンプリングし、得られた複合ゴム(G-1)の体積平均粒子径を測定した結果、0.13μmであった。
【0089】
[参考例3:グラフト共重合体(A-1)の調製]
上記複合ゴム(G-1)ラテックスの液温が反応器内部で70℃まで低下した後、ロンガリット0.25部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリルが2.5部、スチレンが7.5部及びt-ブチルハイドロパーオキサイドが0.05部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.2部及び「エマールNC-35」(花王(株)社製)0.18部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル10部、スチレン30部及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を0.5時間保持した後、キュメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、さらに温度60℃の状態を0.5時間保持した後冷却した。得られたグラフト共重合体ラテックスを、酢酸カルシウム水溶液で凝固、脱水、乾燥させることにより、グラフト共重合体(A-1)を得た。
【0090】
[参考例4:グラフト共重合体(a-2)の調製]
反応器に水150部、牛脂脂肪酸カリウム塩3.3部、水酸化カリウム0.14部、ピロリン酸ナトリウム0.3部、tert-ドデシルメルカプタン0.20部を仕込み、次いで、1,3-ブタジエン100部を仕込み、62℃に昇温した。次いで、過硫酸カリウム0.12部を圧入して重合を開始した。反応は10時間かけて75℃に到達させて行った。さらに、75℃で1時間反応させた後ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.08部を圧入した。残存する1,3-ブタジエンを除去した後、重合物を取り出し、ポリブタジエンのラテックス(固形分含量が35%)を得た。得られたポリブタジエンゴムの質量平均粒子径は0.08μmであった。
得られたポリブタジエンゴム100部(固形分換算)に、n-ブチルアクリレート単位85%及びメタクリル酸単位15%からなる体積平均粒子径0.11μmの共重合体ラテックス2部(固形分換算)を撹拌しながら添加し、30分間撹拌を続け、平均粒子径0.28μmの肥大化ポリブタジエンラテックスを得た。
続いて、試薬注入容器、冷却管、窒素置換装置、ジャケット加熱機及び撹拌装置を備えた密閉型反応器内に、水180部(肥大化ポリブタジエンラテックスのラテックス中の水を含む)、肥大化ポリブタジエンラテックスを固形分換算で70部、及び不均化ロジン酸カリウム0.13部を添加し、窒素置換しながら反応器内部の液温を55℃まで昇温して30分保持した後、ピロリン酸ナトリウム0.15部、硫酸第一鉄7水和物0.008部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。次いでアクリロニトリル7.5部、スチレン22.5部、及びクメンヒドロパーオキシド0.07部、tert-ドデシルメルカプタン0.09部の混合液を5時間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、内温を55℃に保持したまま30分間撹拌した後、冷却し、グラフト共重合体のラテックスを得た。
得られたグラフト共重合体のラテックスを蒸留水で1.25倍に希釈し、50℃の3%硫酸水溶液に徐々に滴下させた。全量滴下後、温度を90℃まで上昇させ5分保持して凝固させた。次いで凝固物を濾布で遠心分離後、湿粉状態のグラフト共重合体を乾燥してグラフト共重合体(a-2)を得た。
【0091】
[参考例5:グラフト共重合体(a-3)の調製]
リボン型撹拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体として、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=78/22(モル比)、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20、融点(Tm):40℃、ガラス転移温度(Tg):-50℃)22部、スチレン55部、アクリロニトリル23部、t-ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間撹拌して均一溶液とした。その後、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、撹拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)-プロピオネート0.2部、ジメチルシリコーンオイル;KF-96-100cSt(商品名:信越シリコーン株式会社製)0.02部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化しによりグラフト共重合体(a-3)を得た。
【0092】
[参考例6:グラフト共重合体(a-4)の調製]
グラフト共重合体(a-2)の調製過程で得たポリブタジエンラテックスと同様の手順で固形分濃度35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス(固形分として20部)に、n-ブチルアクリレート単位82%及びメタクリル酸単位18%からなる平均粒子径0.10μmの共重合ラテックス(固形分として0.4部)を撹拌しながら添加した。30分間撹拌を続けて、平均粒子径0.36μmの肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。
得られた肥大化ジエン系ゴムラテックス(固形分として20部)を反応器に仕込み、不均化ロジン酸カリウム1部、イオン交換水150部及び下記組成の単量体混合物を添加し、窒素置換し、50℃(内温)に昇温した。
(単量体混合物組成)
n-ブチルアクリレート:80部
アリルメタクリレート:0.32部
エチレングリコールジメタクリレート:0.16部
【0093】
さらに、反応器に、10部のイオン交換水に硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部を溶解した溶液を添加し、反応させた。反応終了時の内温は75℃であった。さらに、80℃に昇温し、1時間反応を続けて、肥大化ジエン系ゴムとポリブチルアクリレート系ゴムとの複合ゴム質重合体ラテックスを得た。重合率は98.8%であった。
肥大化ジエン系ゴムとポリブチルアクリレート系ゴムとの複合ゴム質重合体ラテックス(固形分として50部)を反応器に仕込み、イオン交換水140部を加えて希釈し、70℃に昇温した。
これとは別に、アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物50部に、ベンゾイルペルオキシド0.35部を溶解し、窒素置換した。単量体混合物を15部/時間の速度で、前記ゴム質重合体ラテックスが入った反応器に、定量ポンプにより添加した。単量体混合物の全てを添加した後、反応器内の温度を80℃に昇温し、30分間撹拌を続けて、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合率は99%であった。
得られたグラフト共重合体のラテックスを蒸留水で1.25倍に希釈し、50℃の3%硫酸水溶液に徐々に滴下させた。全量滴下後、温度を90℃まで上昇させ5分保持して凝固させた。次いで凝固物を濾布で遠心分離後、湿粉状態のグラフト共重合体を乾燥してグラフト共重合体(a-4)を得た。
【0094】
[参考例7:アクリロニトリル-スチレン共重合体の調製]
反応器に水125部、リン酸カルシウム0.4部、アルケニルコハク酸カリウム塩0.003部、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.05部、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン0.04部、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート0.04部、tert-ドデシルメルカプタン0.45部と、アクリロニトリル26部、スチレン74部からなる単量体混合物を仕込み、反応させた。反応は、水、アクリロニトリル、スチレンの一部を逐次添加しながら開始温度65℃から6.5時間昇温加熱後、125℃に到達させて行った。更に、125℃で1時間反応した後、アクリロニトリル-スチレン共重合体のスラリーを得た。冷却の後、このスラリーを遠心脱水してアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS共重合体)を得た。得られた共AS共重合体の質量平均分子量は114,000であった。
【0095】
[ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)]
ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)として以下のものを準備した。
MMA樹脂(M-1):三菱ケミカル(株)製「アクリペットVHS」(商品名)
MMA樹脂(M-2):三菱ケミカル(株)製「アクリペットSV」(商品名)
【0096】
[抗菌剤(K)]
抗菌剤(K)としては以下のものを用いた。
抗菌剤(K-1):富士ケミカル(株)製「バクテキラーBM-102TG」(商品名)
抗菌剤(K-2):(株)シナネンゼオミック社製「ゼオミックXAW50D-T」(商品名)
抗菌剤(K-3):東亜合成(株)製「ノバロンAGZ330」(商品名)
【0097】
[その他の添加剤]
光安定剤:ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)LA-77Y」
紫外線吸収剤:ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)LA-36」
【0098】
[実施例1~6及び比較例1~6]
表1に示す割合(質量部)で各原料を混合して、熱可塑性樹脂組成物を調製した。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、スクリュー直径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX30α」)を用いて、230℃の温度で溶融混練して、それぞれをペレット化し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。耐UV-C評価に用いる樹脂組成物はさらに酸化チタンとして石原産業(株)製CR-60-2を4質量部配合したものを用いて溶融混練してペレットを得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、前述の耐UV-C性、耐薬品性、抗菌性の評価を行い、結果を表1に示した。
なお、表1中には熱可塑性樹脂組成物中のポリオルガノシロキサンの含有率を併記した。
【0099】
【表1】
【0100】
表1より、グラフト共重合体(A)、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)及び抗菌剤(K)を含有する本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐UV-C性、耐薬品性及び抗菌性に優れることが分かる。
これに対して、抗菌剤(K)を含まない比較例1は抗菌性に劣る。
本発明に係るグラフト共重合体(A)とは異なるグラフト共重合体を用い、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)を含まない比較例2~5のうち、比較例2,3では耐UV-C性及び抗菌性に劣り、比較例4,5ではすべての項目において劣る結果となった。
比較例6は、グラフト共重合体(A)を含むが、ポリメチルメタクリレート系樹脂(M)を含まず、耐UV-C性に劣る。