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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136461
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】予測方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230922BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042143
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 圭太
(72)【発明者】
【氏名】高良 穣二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】竹田 諒平
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 颯哉
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】齋野 高遥
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB11
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC08
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084FF15
2G084FF27
2G084FF29
2G084FF39
2G084HH03
2G084HH12
2G084HH19
2G084HH21
2G084HH30
2G084HH53
2G084HH55
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CB05
(57)【要約】
【課題】プラズマエッチング処理の処理結果を予測すること。
【解決手段】予測方法は、算出工程と、予測工程とを有する。算出工程は、チャンバ内に配置された基板にプラズマエッチング処理を実施した際のチャンバ内の磁場の空間分布値と、基板に対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する。予測工程は、算出した相関関係に基づいて、チャンバ内の磁場の空間分布値から、基板に対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に配置された基板にプラズマエッチング処理を実施した際の前記チャンバ内の磁場の空間分布値と、前記基板に対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する算出工程と、
算出した相関関係に基づいて、前記チャンバ内の磁場の空間分布値から、前記基板に対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する予測工程と、
を有する予測方法。
【請求項2】
前記磁場の空間分布値は、前記チャンバに設けられた電磁石の設定電流値から計算する
請求項1に記載の予測方法。
【請求項3】
前記磁場の空間分布値は、主成分分析によってえられた主成分の主成分得点である
請求項1又は2に記載の予測方法。
【請求項4】
前記主成分の数は、前記チャンバに設けられた電磁石のコイルの数以下である
請求項3に記載の予測方法。
【請求項5】
前記処理結果は、プラズマエッチング処理により形成される穴の傾きの基板面内の分布である
請求項1~4の何れか1つに記載の予測方法。
【請求項6】
前記穴の傾きの基板面内の分布は、X線計測技術により計測された
請求項5に記載の予測方法。
【請求項7】
前記処理結果は、プラズマエッチング処理のエッチングレートの基板面内の分布であり、
前記予測工程は、エッチングレートの基板面内の分布を予測し、予測したエッチングレートの基板面内の分布を基板の中心からの距離で微分することで、プラズマエッチング処理により形成される穴の傾きの基板面内の分布を予測する
請求項1~4の何れか1つに記載の予測方法。
【請求項8】
前記相関関係は、多変量解析モデルを用いて算出される
請求項1~7の何れか1つに記載の予測方法。
【請求項9】
前記多変量解析モデルは、重回帰モデル、ガウスプロセス回帰モデルである
請求項8に記載の予測方法。
【請求項10】
前記基板のプラズマエッチング処理は、複数のステップを有する
請求項1~7の何れか1つに記載の予測方法。
【請求項11】
チャンバ内に配置された基板にプラズマエッチング処理を実施した際の前記チャンバ内の磁場の空間分布値と、前記基板に対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する算出部と、
算出した相関関係に基づいて、前記チャンバ内の磁場の空間分布値から、プラズマエッチング処理の処理結果を予測する予測部と、
を有する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、処理容器の上部に設けた複数の環状コイルに通電して電磁石として機能させ、磁界を発生させることにより、処理容器内に生成されるプラズマのイオンシースとバルクプラズマとの界面の勾配を制御する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-201552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマエッチング処理の処理結果を予測する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による予測方法は、算出工程と、予測工程とを有する。算出工程は、チャンバ内に配置された基板にプラズマエッチング処理を実施した際のチャンバ内の磁場の空間分布値と、基板に対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する。予測工程は、算出した相関関係に基づいて、チャンバ内の磁場の空間分布値から、基板に対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマエッチング処理の処理結果を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るプラズマ処理システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る電磁石の概略的な構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るチルティングの一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る情報処理装置の概略的な構成の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る相関関係を算出する流れを説明する図である。
図6図6は、実施形態に係るプラズマ処理チャンバ内の磁場の空間分布の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るプラズマエッチング処理の処理結果を予測する流れを説明する図である。
図8図8は、実施形態に係るエッチングレートの検証結果の一例を示した図である。
図9図9は、実施形態に係るエッチングレートの検証結果の他の一例を示した図である。
図10図10は、実施形態に係るチルティングの検証結果の一例を示した図である。
図11図11は、実施形態に係る算出処理の処理順序の一例を説明する図である。
図12A図12Aは、実施形態に係る算出処理に用いるデータの一例を示す図である。
図12B図12Bは、実施形態に係る算出処理に用いるデータの一例を示す図である。
図12C図12Cは、実施形態に係る算出処理に用いるデータの一例を示す図である。
図12D図12Dは、実施形態に係る算出処理に用いるデータの一例を示す図である。
図12E図12Eは、実施形態に係る算出処理に用いるデータの一例を示す図である。
図12F図12Fは、実施形態に係る算出処理に用いるデータの一例を示す図である。
図13図13は、実施形態に係る予測処理の処理順序の一例を説明する図である。
図14A図14Aは、実施形態に係る予測処理に用いるデータの一例を示す図である。
図14B図14Bは、実施形態に係る予測処理に用いるデータの一例を示す図である。
図14C図14Cは、実施形態に係る予測処理に用いるデータの一例を示す図である。
図14D図14Dは、実施形態に係る予測処理に用いるデータの一例を示す図である。
図14E図14Eは、実施形態に係る予測処理に用いるデータの一例を示す図である。
図15図15は、実施形態に係るプラズマ処理システムの概略的な構成の他の一例を示す図である。
図16図16は、実施形態に係る予測誤差の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示する予測方法及び情報処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示する予測方法及び情報処理装置が限定されるものではない。
【0009】
ところで、半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、半導体ウェーハに形成されるパターンの高アスペクト比化が進み、パターンの凹部が深くなっている。例えば、3D NANDを製造するピラー(Pillar)工程では、高アスペクト比のホールを垂直にプラズマエッチングし、下層の所定位置にコンタクトすることが求められる。しかし、ホールが斜めに進行するチルティング(Tilting)といった現象が発生する場合がある。チルティングは、コンタクト不良の原因となるため抑制する必要がある。
【0010】
チルティングは、エッチングイオンの入射方向がウェーハ面に対して斜めになることで引き起こされる。プラズマエッチング処理では、バルクプラズマとシースの境界面(以下「シース面」と呼称)をウェーハ面に対して平行にすることで、エッチングイオンの入射方向をウェーハ面に対して垂直にすることができる。そこで、処理容器の上部に、複数の環状コイルを設け、環状コイルに通電し、電磁石による磁場を用いてプラズマ密度分布を制御し、シース面を調整する手法が有効であることが知られている。
【0011】
しかし、従来の手法では、プラズマエッチング処理の処理結果を予測することが困難であった。例えば、従来の手法では、経験則に基づいて電磁石に供給する電流を調整するに留まっており、電磁石に供給する電流をどのように制御したらチルティングがどう変化するかを精度良く予測することが困難であった。そこで、プラズマエッチング処理の処理結果を予測する技術が期待されている。
【0012】
[実施形態]
[プラズマ処理装置の装置構成]
最初に、プラズマエッチング処理を実施するプラズマ処理装置の一例について説明する。以下に説明する実施形態では、プラズマ処理装置をシステム構成のプラズマ処理システムとした場合を例に説明する。図1は、実施形態に係るプラズマ処理システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0013】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。プラズマ処理システムは、容量結合プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0014】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェーハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0019】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0020】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0021】
プラズマ処理チャンバ10の上面には、電磁石50が配設されている。電磁石50は、シャワーヘッド13の上部に配設されている。電磁石50は、複数のコイル51を有している。複数のコイル51は、同心円状に配置されている。
【0022】
図2は、実施形態に係る電磁石50の概略的な構成の一例を示す図である。本実施形態に係る電磁石50は、5つのコイル51(51a、51b、51c、51d、51e)を有している。コイル51a、51b、51c、51d、51eは、それぞれ所定の半径で
環状に形成され、同心円状に配置されている。電磁石50は、軟磁性体により構成された保持部材52により、コイル51a、51b、51c、51d、51eを同心円状に保持しており、一体形成された構造とされている。電磁石50は、同心円状に配置した複数のコイル51の中心軸線Zが基板支持部11の中心と合うにように配置される。電磁石50は、コイル51に電流が流れることで磁場が発生する。図2では、各コイル51に流れる電流の方向がそれぞれ矢印により示されている。
【0023】
図1に戻る。電磁石50は、外側のコイル51eが基板Wの半径よりも大きい半径で形成されており、リングアセンブリ112の外側まで覆うように上方に配設されている。また、電磁石50は、最内周のコイル51aが、基板Wの中心部の上方に位置するように配設されている。
【0024】
コイル51a、51b、51c、51d、51eの各々の両端は、電磁石励起回路56に電気的に接続されている。電磁石励起回路56は、制御部2の制御の下でコイル51a、51b、51c、51d、51eのそれぞれに任意の電流値の電流を通電させることができる。電磁石50は、コイル51a、51b、51c、51d、51eに電流が流れることにより、プラズマ処理空間10sに磁界を形成することができる。
【0025】
制御部2は、例えば、コンピュータなどの情報処理装置である。制御部2は、プラズマ処理装置1の各部を制御する。プラズマ処理装置1は、制御部2によって、その動作が統括的に制御される。
【0026】
制御部2は、プラズマエッチング処理を制御する。例えば、制御部2は、排気システム40を制御して、プラズマ処理チャンバ10内を所定の真空度まで排気する。制御部2は、ガス供給部20を制御し、ガス供給部20から処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入する。制御部2は、電源30を制御し、処理ガスの導入に合わせて、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号を供給してプラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成してプラズマエッチング処理を実施する。また、制御部2は、プラズマエッチング処理の際に、電磁石励起回路56からコイル51a、51b、51c、51d、51eに供給する電流の電流値、及び、電流を流す向きを制御することにより、プラズマ処理空間10sに形成される磁界を制御する。
【0027】
ところで、上述のように、半導体デバイスの高集積化、微細化に伴い、基板Wに形成されるパターンの高アスペクト比化が進み、パターンの凹部が深くなっている。プラズマ処理装置1では、基板Wに対してプラズマエッチング処理を実施した際に、基板Wにホールが斜めに進行するチルティングが発生する場合がある。
【0028】
図3は、実施形態に係るチルティングの一例を示す図である。図3には、基板Wに対してプラズマエッチング処理を実施している際のプラズマの状態を模式的に示している。図3には、電子密度nが高いプラズマのバルク領域60と、電子密度nが低いシース領域61が示されている。また、図3には、バルク領域60とシース領域61の境界面であるシース面62が示されている。バルク領域60のイオンは、シース領域61で加速され、基板Wをエッチングする。図3に示すように、基板Wに対してシース面62が斜めになると、イオンの入射方向が基板Wに対して斜めになり、基板Wにホール63が斜めに進行するチルティングが発生する。チルティングの方向は、シース領域61の厚さが薄い方から厚い方向に発生する。シース面62を基板Wに対して平行にすることで、イオンの入射方向を基板Wに対して垂直にすることができる。
【0029】
実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10の上部に設けた電磁石50のコイル51に通電し、電磁石50による磁場を用いてプラズマ密度分布を制御することで、シース面62を調整することができる。
【0030】
しかし、従来、プラズマ処理装置1では、経験則に基づいて電磁石50の各コイル51に供給する電流を調整するに留まっており、各コイル51に供給する電流をどのように制御したらチルティングがどう変化するかを精度良く予測することが困難であった。
【0031】
そこで、実施形態では、以下に説明する情報処理装置200によりプラズマエッチング処理を実施した際のプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値と、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する。そして、情報処理装置200により、算出した相関関係に基づいて、プラズマエッチング処理の処理結果を予測する。
【0032】
[情報処理装置の装置構成]
次に、実施形態に係る情報処理装置200の一例について説明する。図4は、実施形態に係る情報処理装置200の概略的な構成の一例を示す図である。情報処理装置200は、例えば、コンピュータなどの情報処理装置である。本実施形態では、情報処理装置200が本開示の情報処理装置に対応する。
【0033】
情報処理装置200は、外部I/F(interface)部210と、表示部211と、入力部212と、記憶部213と、コントローラ214とを有する。なお、情報処理装置200は、図4に示した機能部以外にも既知のコンピュータが有する各種の機能部を有してもよい。
【0034】
外部I/F部210は、他の装置と情報を入出力するインタフェースである。例えば、外部I/F部210は、他の装置との間で通信制御を行うインタフェースである。かかる外部I/F部210の一態様としては、LANカードなどのネットワークインタフェースカードを採用できる。例えば、外部I/F部210は、ネットワークを介して、プラズマ処理装置1や他の情報処理装置と各種のデータを送受信する。なお、外部I/F部210は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポートなどのインタフェースであってもよい。
【0035】
表示部211は、各種情報を表示する表示デバイスである。表示部211としては、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などの表示デバイスが挙げられる。表示部211は、各種情報を表示する。
【0036】
入力部212は、各種の情報を入力する入力デバイスである。例えば、入力部212としては、マウスやキーボードなどの入力デバイスが挙げられる。入力部212は、管理者などからの操作入力を受付け、受付けた操作内容を示す操作情報をコントローラ214に入力する。
【0037】
記憶部213は、各種のデータを記憶する記憶デバイスである。例えば、記憶部213は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部213は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)などのデータを書き換え可能な半導体メモリであってもよい。
【0038】
記憶部213は、コントローラ214で実行されるOS(Operating System)や各種プログラムを記憶する。例えば、記憶部213は、後述する算出処理や予測処理を実行する予測プログラムを含む各種のプログラムを記憶する。さらに、記憶部213は、コントローラ214で実行されるプログラムで用いられる各種データを記憶する。例えば、記憶部213は、処理条件データ221と、処理結果データ222と、予測モデルデータ223と、磁場算出モデルデータ224とを記憶する。なお、記憶部213は、上記に例示したデータ以外にも、他のデータを併せて記憶することもできる。また、各種のプログラムやデータは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、DVDなどの光ディスク、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用してもよい。また、各種のプログラムやデータは、他の装置から随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0039】
処理条件データ221は、プラズマエッチング処理を実施した処理条件を記憶したデータである。処理条件には、コイル51ごとに、コイル51に供給する電流の電流値、及び、電流を流す向きを示した設定電流値が含まれる。処理結果データ222は、処理条件ごとのプラズマエッチング処理の処理結果を記憶したデータである。予測モデルデータ223は、プラズマエッチング処理の処理結果を予測する予測モデルのデータである。処理条件データ221、処理結果データ222及び予測モデルデータ223の詳細は、後述する。
【0040】
磁場算出モデルデータ224は、プラズマ処理チャンバ10内の磁場を算出する磁場算出モデルのデータである。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10の形状や各コイル51の配置位置などの装置構成が定まっており、装置の電気的な特性も定まっている。このため、プラズマ処理装置1は、装置構成を加味して、各コイル51の設定電流値からプラズマ処理チャンバ10内の磁場を算出する磁場算出モデルを定めることができる。例えば、プラズマ処理装置1は、各コイル51の設定電流値からプラズマ処理チャンバ10内の磁場を算出する演算式が定まる。例えば、磁場算出モデルデータ224には、磁場算出モデルとして、各コイル51の設定電流値からプラズマ処理チャンバ10内の磁場を算出する演算式が記憶される。
【0041】
コントローラ214は、情報処理装置200を制御するデバイスである。コントローラ214としては、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路を採用できる。コントローラ214は、プログラムやデータを格納するための内部メモリを有する。コントローラ214は、記憶部213に記憶された予測プログラムを含む各種のプログラムを読み出し、読み出したプログラムの処理を実行する。コントローラ214は、プログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。例えば、コントローラ214は、算出部231と、予測部232と、表示制御部233とを有する。なお、本実施形態では、コントローラ214が、算出部231、予測部232及び表示制御部233を有する場合を例に説明する。しかし、算出部231、予測部232及び表示制御部233の機能は、複数のコントローラで分散して実現してもよい。
【0042】
情報処理装置200では、相関関係を算出する場合、処理条件データ221及び処理結果データ222が用意されて記憶部213に格納される。処理条件データ221には、プラズマ処理装置1により、基板Wにプラズマエッチング処理を実施した複数の処理条件が記憶されている。処理結果データ222には、処理条件ごとの基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果が記憶されている。
【0043】
処理条件データ221及び処理結果データ222を生成するため、プラズマ処理装置1により、複数の処理条件でそれぞれ基板Wにプラズマエッチング処理を実施し、それぞれ処理条件の基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果を測定する。例えば、プラズマエッチング処理の際の処理ガスの流量、プラズマ処理空間10s内の圧力、電源30から供給するRF電力を同じとし、電磁石50の各コイル51の設定電流値のみを変えた複数の処理条件でそれぞれ基板Wにプラズマエッチング処理を実施する。そして、それぞれ処理条件の基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果を測定する。例えば、実験計画法により電磁石50の各コイル51に流す電流の電流値及び向きの何れかを変えた10~20パターン程度の複数の処理条件を作成する。そして、作成した各処理条件の設定電流値でそれぞれ基板Wに形成されたフォトレジストのプラズマエッチング処理を実施し、それぞれ処理条件の処理結果として、基板W上でのエッチングレートの分布を測定する。基板Wは、円形である。このため、基板W上でのエッチングレートの分布は、基板Wの中心に対して径方向に対称性がある。基板Wの径方向の各位置でのエッチングレートを測定することで、エッチングレートの分布を測定する。例えば、処理条件ごとに、基板Wの中心から径方向に一定間隔の26ポイントの各位置でエッチングレートを測定する。エッチングレートは、測定値を規格化した値としてもよい。例えば、エッチングレートの分布は、ベースライン条件を1として規格化した値の分布と求めてもよい。
【0044】
処理条件データ221には、このように実施された複数の処理条件が記憶される。例えば、処理条件データ221には、処理条件ごとに、各コイル51の設定電流値が記憶される。例えば、処理条件データ221には、実験計画法により作成された処理条件ごとに、各コイル51の設定電流値が記憶される。
【0045】
処理結果データ222には、処理条件ごとの基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果が記憶される。例えば、処理条件データ221には、処理条件ごとに、エッチングレートの分布のデータが記憶される。例えば、処理条件データ221には、処理条件ごとに、基板Wの中心から径方向に一定間隔の26ポイントの各位置でエッチングレートのデータが記憶される。
【0046】
算出部231は、処理条件データ221及び処理結果データ222からプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値と、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する。
【0047】
図5は、実施形態に係る相関関係を算出する流れを説明する図である。
【0048】
算出部231は、処理結果データ222に記憶された処理条件ごとに、磁場算出モデルデータ224の磁場算出モデルを用いて、各コイル51の設定電流値から、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布を算出する。例えば、算出部231は、処理条件ごとに、磁場算出モデルの演算式を用いて、各コイル51の設定電流値から、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布を算出する。
【0049】
図6は、実施形態に係るプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布の一例を示す図である。図6には、プラズマ処理チャンバ10の概略的な断面が示されており、磁場の強弱がパターンにより概略的に示されている。プラズマ処理チャンバ10は、円筒形に形成されている。このため、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布は、中心軸に対して径方向に対称性がある。算出部231は、処理条件ごとに、各コイル51の設定電流値から、磁場算出モデルの演算式を用いてプラズマ処理チャンバ10の断面での磁場の空間分布を算出する。例えば、算出部231は、プラズマ処理チャンバ10内の中心軸からの半径rとし、高さzとして、半径r及び高さzを一定間隔とした位置毎に磁場を算出することで、磁場の空間分布を算出する。例えば、算出部231は、処理条件ごとに、各コイル51の設定電流値から、磁場算出モデルの演算式を用いて、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置での磁場を算出する。磁場は、磁場ベクトルの絶対値を用いてもよく、径方向成分、高さ方向成分、あるいはそれらの組合せを算出してもよく、算出した算出値を規格化した値としてもよい。
【0050】
算出部231は、複数の処理条件全てを含んだプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータに対して主成分分析を行い、磁場の主成分を算出する。例えば、算出部231は、複数の処理条件全てを含んだプラズマ処理チャンバ10内の各位置での磁場のデータに対して主成分分析を行い、電磁石50のコイル51の数以下の主成分を算出する。例えば、第1主成分から第5主成分の5つの主成分を算出する。算出する主成分の数は、電磁石50のコイル51の数以下であればよく、例えば、第1主成分から第3主成分など特定の主成分までであってもよく、動的に変化してもよい。例えば、第1主成分から順に主成分の寄与率を累積した累積寄与率を求め、累積寄与率が所定値(例えば、80%)を超えるまでの主成分を算出するようにしてもよい。
【0051】
そして、算出部231は、処理条件ごとに、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータを、磁場の各主成分の得点のデータに変換する。例えば、算出部231は、処理条件ごとに、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置での磁場のデータを、第1主成分から第5主成分の得点のデータに変換する。これにより、磁場の空間分布のデータを大幅に圧縮することができる。
【0052】
また、算出部231は、処理結果データ222に記憶された複数の処理条件に対応する全てのエッチングレートの分布のデータに対して主成分分析を行い、エッチングレートの主成分を算出する。例えば、算出部231は、複数の処理条件に対応する基板Wの中心から径方向の各位置でエッチングレートのデータに対して主成分分析を行う。例えば、第1主成分から第5主成分の5つの主成分を算出する。算出する主成分の数は、電磁石50のコイル51の数以上であってもよく、例えば、第1主成分から第3主成分など特定の主成分までであってもよく、動的に変化してもよい。例えば、第1主成分から順に主成分の寄与率を累積した累積寄与率を求め、累積寄与率が所定値(例えば、80%)を超えるまでの主成分を算出するようにしてもよい
【0053】
そして、算出部231は、処理条件ごとに、エッチングレートの分布のデータを、エッチングレートの各主成分の得点のデータに変換する。例えば、処理条件ごとに、基板Wの中心から径方向に26ポイントの各位置でエッチングレートのデータを、第1主成分から第5主成分の得点のデータに変換する。これにより、エッチングレートの分布のデータを大幅に圧縮することができる。
【0054】
算出部231は、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板Wにプラズマエッチング処理を実施した際のプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値と、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する。例えば、算出部231は、処理条件ごとの磁場の各主成分の得点のデータと、エッチングレートの各主成分の得点のデータとの相関関係を算出する。例えば、算出部231は、多変量解析モデルを用いて、処理条件ごとの磁場の各主成分の得点のデータと、エッチングレートの各主成分の得点のデータとの相関関係を示す関係式を算出する。この場合、磁場の各主成分を説明変数とし、エッチングレートの各主成分を目的変数とする。多変量解析モデルとしては、例えば、重回帰モデル、ガウスプロセス回帰モデルが挙げられる。例えば、算出部231は、重回帰モデルを用いて、磁場の各主成分の得点から、エッチングレートの各主成分の得点をそれぞれ算出する回帰式を算出する。
【0055】
算出部231は、算出した相関関係のデータを予測モデルとして、予測モデルデータ223に格納する。例えば、算出部231は、算出した回帰式を予測モデルデータ223に格納する。
【0056】
情報処理装置200では、予測を行う場合、予測を行うプラズマ処理装置1の処理条件が予測条件として入力される。予測条件は、入力部212から入力されてもよく、ネットワークを介して外部I/F部210からデータとして入力されてもよい。例えば、情報処理装置200には、予測条件として、各コイル51の設定電流値が入力される。
【0057】
予測部232は、予測条件から、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する。
【0058】
図7は、実施形態に係るプラズマエッチング処理の処理結果を予測する流れを説明する図である。
【0059】
予測部232は、磁場算出モデルデータ224の磁場算出モデルを用いて、予測条件とされた処理条件からプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布を算出する。例えば、予測部232は、磁場算出モデルの演算式を用いて、予測条件とされた各コイル51の設定電流値から、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布を算出する。例えば、予測部232は、相関関係を算出した際の同様に、プラズマ処理チャンバ10内の中心軸からの半径rとし、高さzとして、半径r及び高さzを一定間隔とした位置毎に磁場を算出することで、磁場の空間分布を算出する。例えば、予測部232は、処理条件ごとに、各コイル51の設定電流値から、磁場算出モデルの演算式を用いて、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置での磁場を算出する。磁場は、算出した算出値を規格化した値としてもよい。
【0060】
予測部232は、算出したプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータを、相関関係を算出した際の磁場の各主成分を用いて、各主成分の得点のデータに変換する。例えば、予測部232は、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置での磁場のデータを、磁場の第1主成分から第5主成分の得点のデータに変換する。
【0061】
予測部232は、予測モデルデータ223に記憶された予測モデルを用いて、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値から、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する。例えば、予測部232は、予測モデルデータ223に記憶された回帰式を用いて、磁場の各主成分の得点から、エッチングレートの各主成分の得点を算出する。例えば、予測部232は、エッチングレートの第1主成分から第5主成分の得点を算出する。
【0062】
予測部232は、算出したエッチングレートの各主成分の得点を、逆変換して、エッチングレートの分布のデータに変換する。例えば、予測部232は、エッチングレートの各主成分の得点を、相関関係を算出した際のエッチングレートの各主成分を用いて逆変換し、エッチングレートの分布のデータに変換する。例えば、予測部232は、エッチングレートの第1主成分から第5主成分の得点のデータを、基板Wの中心から径方向に26ポイントの各位置でエッチングレートのデータに変換する。
【0063】
予測部232は、基板Wのエッチングレートの分布から、基板Wのチルティングの分布を予測する。例えば、予測部232は、基板Wのエッチングレートの値を基板Wの径方向の各位置で微分した微分値を算出する。例えば、予測部232は、基板Wの中心から径方向に26ポイントの各位置について、径方向に1つ内側の位置とエッチングレートの差を算出する。チルティングは、エッチングレートが変化する部分で発生する。このため、エッチングレートの微分値は、チルティング角に対応する。
【0064】
表示制御部233は、予測部232により予測されたプラズマエッチング処理の処理結果を表示部211に表示する表示制御を行う。例えば、表示制御部233は、予測されたエッチングレートの分布やチルティングの分布を表示部211に表示する表示制御を行う。
【0065】
なお、情報処理装置200は、予測部232により予測されたプラズマエッチング処理の処理結果のデータを外部I/F部210を介して他の装置へ出力してもよい。
【0066】
次に、情報処理装置200による予測結果の一例を説明する。まず、エッチングレートについて、予測結果と実際の処理結果を検証した例を説明する。図8は、実施形態に係るエッチングレートの検証結果の一例を示した図である。図8は、予測モデルの算出に用いた処理条件データ221の各処理条件について、エッチングレートの予測結果と実際の処理結果を検証したものである。横軸は、実測した実際のエッチングレートを規格化した軸である。縦軸は、予測されたエッチングレートを規格化した軸である。図8には、予測モデルの算出に用いた処理条件データ221の処理条件ごとに、横軸が実際のエッチングレートとなり、縦軸が予測されたエッチングレートとなる位置に点がプロットされている。また、図8には、各処理条件の実際のエッチングレートと予測されたエッチングレートの相関を求めた結果が示されている。相関係数Rは、0.9876と高い値となっている。よって、情報処理装置200は、処理条件データ221の各処理条件のエッチングレートを高い精度で予測できる。
【0067】
図9は、実施形態に係るエッチングレートの検証結果の他の一例を示した図である。図9は、処理条件データ221の処理条件以外の処理条件について、エッチングレートの予測結果と実際の処理結果を検証したものである。横軸は、実際のエッチングレートを規格化した軸である。縦軸は、予測されたエッチングレートを規格化した軸である。図9には、処理条件ごとに、横軸が実際のエッチングレートとなり、横軸が予測されたエッチングレートとなる位置に点がプロットされている。図9には、各処理条件の実際のエッチングレートと予測されたエッチングレートの相関を求めた結果が示されている。相関係数Rは、0.9831と高い値となっている。よって、情報処理装置200は、処理条件データ221の処理条件以外の処理条件についても、エッチングレートを高い精度で予測できる。このことから、情報処理装置200は、エッチングレートを高い精度で予測できる。
【0068】
次に、チルティングについて、予測結果と実際の処理結果を検証した例を説明する。図10は、実施形態に係るチルティングの検証結果の一例を示した図である。図10には、基板Wの中心から距離Rに対するチルティング角の変化が示されている。線L1は、予測したチルティング角を示している。線L2は、実測した実際のチルティング角を示している。線L1と線L2は、概ね形状が一致している。このことから、情報処理装置200は、チルティング角を高い精度で予測できる。
【0069】
次に、実施形態に係る情報処理装置200が実施する予測方法の処理の流れについて説明する。最初に、相関関係を算出する算出処理の流れについて説明する。図11は、実施形態に係る算出処理の処理順序の一例を説明する図である。図11に示す算出処理は、処理条件データ221及び処理結果データ222が記憶部213に格納され、所定の処理開始の指示が行われた場合に実行される。図12A図12Fは、実施形態に係る算出処理に用いるデータの一例を示す図である。
【0070】
算出部231は、処理条件データ221に記憶された複数の処理条件ごとに、磁場算出モデルデータ224の磁場算出モデルを用いて、各コイル51の設定電流値から、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布を算出する(ステップS10)。図12Aには、処理条件1~20として、C1~C5に5つのコイル51の設定電流値が示されている。例えば、算出部231は、処理条件1~20ごとに、C1~C5の設定電流値から、磁場算出モデルの演算式を用いて、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置での磁場を算出する。図12Bには、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置の磁場のデータが示されている。
【0071】
算出部231は、複数の処理条件全てを含んだプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータに対して主成分分析を行い、磁場の主成分を算出する(ステップS11)。そして、算出部231は、処理条件ごとに、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータを、磁場の各主成分の得点のデータに変換する(ステップS12)。例えば、算出部231は、処理条件1~20の4000ポイントの磁場のデータに対して主成分分析を行い、磁場の第1主成分から第5主成分を算出する。そして、算出部231は、処理条件1~20の4000ポイントの磁場のデータを、第1主成分から第5主成分の得点のデータに変換する。図12Cには、処理条件1~20についての第1主成分から第5主成分の得点のデータが示されている。
【0072】
また、算出部231は、処理結果データ222に記憶された複数の処理条件を全てを含んだエッチングレートの分布のデータについて、エッチングレートの主成分分析を行い、主成分を算出する(ステップS13)。そして、算出部231は、処理条件ごとに、エッチングレートの分布のデータを、エッチングレートの各主成分の得点のデータに変換する(ステップS14)。図12Dには、処理条件1~20について、基板Wの中心から径方向に26ポイントの基板位置1~26でのエッチングレートが示されている。例えば、算出部231は、処理条件1~20の基板位置1~26のエッチングレートのデータに対して主成分分析を行い、エッチングレートの第1主成分から第5主成分を算出する。そして、算出部231は、処理条件1~20の基板位置1~26のエッチングレートのデータに対して主成分分析を行い、エッチングレートの第1主成分から第5主成分を算出する。そして、算出部231は、処理条件1~20の基板位置1~26のエッチングレートのデータを、第1主成分から第5主成分の得点のデータに変換する。図12Eには、処理条件1~20についての第1主成分から第5主成分の得点のデータが示されている。
【0073】
算出部231は、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板Wにプラズマエッチング処理を実施した際のプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値と、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する(ステップS15)。例えば、算出部231は、処理条件ごとの磁場の各主成分の得点のデータと、エッチングレートの各主成分の得点のデータとの相関関係を示す回帰式を算出する。例えば、算出部231は、図12Fに示すように、処理条件1~20の磁場の第1主成分から第5主成分の得点のデータを説明変数とし、処理条件1~20のエッチングレートの第1主成分から第5主成分の得点を目的変数とする相関関係を表す回帰モデルを算出する。
【0074】
算出部231は、算出した相関関係のデータを予測モデルとして、予測モデルデータ223に格納する。例えば、算出部231は、算出した回帰式を予測モデルデータ223に格納し(ステップS16)、処理を終了する。
【0075】
なお、算出処理は、ステップS10~S12と、ステップS13、S14の順序が逆であってもよく、並列に実行されてもよい。
【0076】
次に、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する予測処理の流れについて説明する。図13は、実施形態に係る予測処理の処理順序の一例を説明する図である。図13に示す予測処理は、予測条件とされた処理条件が入力され、所定の処理開始の指示が行われた場合に実行される。図14A図14Eは、実施形態に係る予測処理に用いるデータの一例を示す図である。
【0077】
予測部232は、磁場算出モデルデータ224の磁場算出モデルを用いて、予測条件とされた処理条件からプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布を算出する(ステップS20)。予測部232は、算出したプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータを、相関関係を算出した際の磁場の各主成分を用いて、磁場の各主成分の得点のデータに変換する(ステップS21)。図14Aには、予測条件とされた処理条件として、C1~C5に5つのコイル51の設定電流値が示されている。例えば、予測部232は、予測条件とされた処理条件のC1~C5の設定電流値から、磁場算出モデルの演算式を用いて、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置での磁場を算出する。図14Bには、プラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置の磁場のデータが示されている。予測部232は、磁場の第1主成分から第5主成分を用いて、4000ポイントの磁場のデータを第1主成分から第5主成分の得点のデータに変換する。図14Cには、磁場の第1主成分から第5主成分の得点のデータが示されている。
【0078】
予測部232は、予測モデルデータ223に記憶された予測モデルを用いて、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値から、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する(ステップS22)。例えば、予測部232は、予測モデルデータ223に記憶された回帰式を用いて、磁場の各主成分の得点から、エッチングレートの各主成分の得点を算出する。例えば、予測部232は、相関関係を表す回帰モデルを用いて、磁場の第1主成分から第5主成分の得点のデータから、エッチングレートの第1主成分から第5主成分の得点のデータを算出する。図14Dには、エッチングレートの第1主成分から第5主成分の得点のデータが示されている。
【0079】
予測部232は、算出したエッチングレートの各主成分の得点を、主成分分析の逆変換によって、エッチングレートの分布のデータに変換する(ステップS23)。例えば、予測部232は、エッチングレートの第1主成分から第5主成分の得点に対して、ステップS13で計算したエッチングレートの主成分分析の逆変換を行い、基板位置1~26のエッチングレートの予測値を算出する。図14Eには、基板位置1~26のエッチングレートの予測値が示されている。
【0080】
予測部232は、基板Wのエッチングレートの分布から、基板Wのチルティングの分布を予測し(ステップS24)、処理を終了する。例えば、予測部232は、チルティングの分布として、基板Wのエッチングレートの値を基板Wの径方向の各位置で微分した微分値を算出する。
【0081】
このように、情報処理装置200は、プラズマエッチング処理の処理結果を予測できる。例えば、情報処理装置200は、プラズマ処理装置1が予測条件で基板Wにプラズマエッチング処理を実施した場合の基板Wのエッチングレートの分布を予測できる。また、情報処理装置200は、プラズマ処理装置1が予測条件で基板Wにプラズマエッチング処理を実施した場合の基板Wのチルティングの分布を予測できる。
【0082】
なお、上記の実施形態では、処理条件ごとの磁場の各主成分の得点のデータと、エッチングレートの各主成分の得点のデータとの相関関係を算出する場合を例に説明した。しかしこれに限定されるものではない。算出部231は、処理条件ごとの磁場の空間分布のデータとエッチングレートの分布のデータとの相関関係を算出してもよい。例えば、算出部231は、処理条件ごとのプラズマ処理チャンバ10内の4000ポイントの各位置での磁場のデータと基板Wの中心から径方向に26ポイントの各位置でエッチングレートのデータとの相関関係を算出して、回帰式を算出してもよい。この場合、磁場の空間分布(4000ポイント)を説明変数とし、エッチングレート(26ポイント)が目的変数となる。この場合、予測部232は、算出された回帰式を用いて、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータからエッチングレートの分布のデータを直接算出できる。
【0083】
また、上記の実施形態では、情報処理装置200において、磁場算出モデルデータ224の磁場算出モデルを用いて、処理条件からプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布を算出する場合を例に説明した。しかしこれに限定されるものではない。プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータは、他の装置で算出して情報処理装置200に送信してもよい。算出部231は、他の装置から受信したプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布のデータを用いて相関関係を算出してもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、情報処理装置200において、複数の処理条件全てを含んだ磁場の空間分布のデータとエッチングレートの分布のデータの主成分分析を行う場合を例に説明した。しかしこれに限定されるものではない。主成分分析は、他の装置で実施してもよい。例えば、処理条件ごとの磁場の各主成分の得点のデータは、他の装置で算出して情報処理装置200に送信してもよい。また、処理条件ごとのエッチングレートの各主成分の得点のデータは、他の装置で算出して情報処理装置200に送信してもよい。算出部231は、他の装置から受信した、処理条件ごとの磁場の各主成分の得点のデータと、エッチングレートの各主成分の得点のデータを用いて相関関係を算出してもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、予測において、エッチングレートの分布を算出し、エッチングレートの分布から、チルティングの分布を算出する場合を例に説明した。しかしこれに限定されるものではない。予測部232は、予測モデルを用いて、チルティングの分布を直接算出してもよい。この場合、例えば、処理条件データ221に、処理条件ごとに、プラズマエッチング処理の処理結果として、チルティングの分布のデータを記憶する。チルティングは、プラズマエッチング処理された基板Wの穴の傾きをX線計測技術により計測することで求めることができる。例えば、X線計測装置により、基板Wの穴の傾きの基板面内の分布を計測して基板Wのチルティングの分布のデータを処理条件データ221に格納する。算出部231は、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板Wにプラズマエッチング処理を実施した際のプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値と、基板Wのチルティングの分布との相関関係を算出する。これにより、予測部232は、算出した相関関係に基づいて、予測条件から、基板Wのチルティングの分布を直接算出できる。
【0086】
また、上記の実施形態では、プラズマ処理システムとは別の情報処理装置200により、プラズマエッチング処理の処理結果を予測する場合を例に説明した。しかしこれに限定されるものではない。プラズマ処理システムは、情報処理装置200を含んだ構成としてもよい。プラズマ処理システムは、制御部2と共に情報処理装置200を運用してもよい。また、制御部2と情報処理装置200を一体として構成してもよい。例えば、制御部2に、上記の算出部231と予測部232の機能を組み込んでもよい。図15は、実施形態に係るプラズマ処理システムの概略的な構成の他の一例を示す図である。図15は、制御部2と情報処理装置200を一体として構成した場合を示しており、制御部2が情報処理装置200を含んでいる。この場合、プラズマ処理システムは、制御部2において、プラズマエッチング処理の処理結果を予測できる。
【0087】
また、基板Wに対するプラズマエッチング処理は、複数のステップを有してもよい。例えば、プラズマエッチング処理は、RF電力をパルス状に繰り返し印加するサイクルエッチングであってもよい。また、プラズマエッチング処理は、複数のエッチングプロセスを順に実施してもよい。情報処理装置200は、複数のステップの処理結果をまとめて予測してもよい。また、情報処理装置200は、各ステップの処理結果を予測し、各ステップの予測した処理結果を統合することで最終的な処理結果を予測してもよい。
【0088】
ここで、本実施形態では、コイル51の設定電流値から磁場の空間分布値を算出し、算出した磁場の空間分布値と、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出している。磁場の空間分布は、コイル51の設定電流値から算出できる。このため、コイル51の設定電流値と、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出して予測を行うことが考えられる。しかし、相関関係を示す関係式の説明変数を設定電流値から磁場に変えることで予測誤差が小さくすることができる。
【0089】
図16は、実施形態に係る予測誤差の一例を示す図である。横軸は、相関関係を示す関係式の説明変数を、コイル51の設定電流値とした場合と、磁場の空間分布とした場合と、磁場の空間分布の主成分とした場合を示している。縦軸は、相関関係を示す関係式の目的変数を、エッチングレートとした場合と、エッチングレートの主成分とした場合を示している。図16には、説明変数、目的変数をそれぞれとした相関関係を示す関係式での予測誤差が示されている。予測誤差は、最小値を1として規格化して示している。説明変数を磁場の空間分布又は磁場の空間分布の主成分とし、目的変数をエッチングレートとした場合、予測誤差が最も小さく1となっており、高い精度が得られている。また、説明変数を磁場の空間分布又は磁場の空間分布の主成分とし、目的変数をエッチングレートの主成分とした場合でも、予測誤差が十分に小さく、高い精度が得られている。一方、説明変数をコイル51の設定電流値とした場合、予測誤差が1.16程度と16%程度低下している。この理由は、次のように考えられる。磁場は、プラズマ処理チャンバ10内のプラズマに直接影響を及ぼす。このため、目的変数に磁場を間接的に算出するコイル51の設定電流値を用いるよりも、目的変数に磁場を直接用いる方が、精度が良くなっていると考えられる。
【0090】
以上のように、実施形態に係る予測方法は、算出工程(ステップS10~S15)と、予測工程(ステップS20~S24)とを有する。算出工程は、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板Wにプラズマエッチング処理を実施した際のプラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値と、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果との相関関係を算出する。予測工程は、算出した相関関係に基づいて、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値から、基板Wに対するプラズマエッチング処理の処理結果を予測する。これにより、実施形態に係る予測方法は、プラズマエッチング処理の処理結果を予測できる。
【0091】
また、磁場の空間分布値は、プラズマ処理チャンバ10に設けられた電磁石50の設定電流値から計算する。これにより、実施形態に係る予測方法は、電磁石50の設定電流値からプラズマエッチング処理の処理結果を予測できる。
【0092】
また、磁場の空間分布値は、主成分分析によってえられた主成分の得点(主成分得点)である。これにより、実施形態に係る予測方法は、磁場の空間分布値のデータ量を減らすことができ、相関関係を算出する際や、処理結果を予測する際に演算負荷を減らすことができる。
【0093】
また、主成分の数は、プラズマ処理チャンバ10に設けられた電磁石50のコイル51の数以下である。これにより、実施形態に係る予測方法は、磁場の空間分布値のデータ量を減らすことができる。
【0094】
また、処理結果は、プラズマエッチング処理により形成される穴の傾きの基板面内の分布である。これにより、実施形態に係る予測方法は、チルティングの基板面内の分布を予測できる。
【0095】
また、穴の傾きの基板面内の分布は、X線計測技術により計測された。これにより、基板Wに形成された微細な穴についても穴の傾きの基板面内の分布を計測できる。
【0096】
また、処理結果は、プラズマエッチング処理のエッチングレートの基板面内の分布とする。予測工程は、エッチングレートの基板面内の分布を予測し、予測したエッチングレートの基板面内の分布を基板Wの中心からの距離で微分することで、プラズマエッチング処理により形成される穴の傾きの基板面内の分布を予測する。これにより、実施形態に係る予測方法は、処理結果としてエッチングレートの基板面内の分布を用いた場合でも、チルティングの基板面内の分布を予測できる。
【0097】
また、相関関係は、多変量解析モデルを用いて算出される。また、多変量解析モデルは、重回帰モデル、ガウスプロセス回帰モデルである。これにより、実施形態に係る予測方法は、プラズマ処理チャンバ10内の磁場の空間分布値と、処理結果との相関関係を精度良く求めることができる。
【0098】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0099】
例えば、上記の実施形態では、基板Wとして半導体ウェーハにプラズマ処理を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。基板Wは、何れであってもよい。
【0100】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
50 電磁石
51、51a~51e コイル
56 電磁石励起回路
60 バルク領域
61 シース領域
62 シース面
63 ホール
200 情報処理装置
211 表示部
212 入力部
213 記憶部
214 コントローラ
221 処理条件データ
222 処理結果データ
223 予測モデルデータ
224 磁場算出モデルデータ
231 算出部
232 予測部
233 表示制御部
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図12A
図12B
図12C
図12D
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図12F
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図14D
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図15
図16