(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136528
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】圧力センサ及び温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20230922BHJP
G01K 5/34 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01L1/24 A
G01K5/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042253
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
(57)【要約】
【課題】圧力を高い感度で検出できる圧力センサ1及び温度センサを提供すること。
【解決手段】圧力センサ1は、試験光を出力する光源10と、試験光が入力され、少なくとも1つの折り返し部24を有するセンサ光ファイバ20と、折り返し部24の曲げを保持する保持部50と、を有するセンサヘッド部60と、センサ光ファイバ20によって伝送された前記試験光を受光するPD30と、PD30により受光された試験光の強度に基づいて、センサヘッド部60に掛かる圧力を検出する処理装置40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験光を出力する光源と、
前記試験光が入力され、少なくとも1つの折り返し部を有するセンサ光ファイバと、前記折り返し部の曲げを保持する保持部と、を有するセンサヘッド部と、
前記センサ光ファイバによって伝送された前記試験光を受光する受光器と、
前記受光器により受光された前記試験光の強度に基づいて、前記センサヘッド部に掛かる圧力を検出する検出部と、を備える圧力センサ。
【請求項2】
前記折り返し部は、曲げ半径が5mm以下である請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記センサヘッド部の前記センサ光ファイバには、2~5つの前記折り返し部が形成される請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記保持部は、前記センサ光ファイバのうち少なくとも前記折り返し部をその内部に収容する管状部材である請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記保持部は、その両端が封止されている請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記保持部は、熱に応じて変形する材料で形成される請求項4又は5に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記保持部は、前記折り返し部を被覆する被覆部材で形成される請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
請求項6記載の圧力センサで検出される圧力から、温度を算出する温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサ及び温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを用いて圧力を検出する圧力センサが知られている。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1がある。特許文献1には、複数のループに配設された連続するマルチモードの光ファイバにより形成された環状構造と、光源と、受信機とを含み、環状構造内を通過する光の強度の変化を検知するように構成される圧力センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の圧力センサで光ファイバによって伝送される光の強度の変化から微動を検知することができるものの、圧力に対する光の強度の変化量が小さく、圧力の検出感度の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、圧力を高い感度で検出できる圧力センサ及び温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、試験光を出力する光源と、前記試験光が入力され、少なくとも1つの折り返し部を有するセンサ光ファイバと、前記折り返し部の曲げを保持する保持部と、を有するセンサヘッド部と、前記センサ光ファイバによって伝送された前記試験光を受光する受光器と、前記受光器により受光された前記試験光の強度に基づいて、前記センサヘッド部に掛かる圧力を検出する検出部と、を備える圧力センサに関する。
【0007】
前記折り返し部は、曲げ半径が5mm以下であってもよい。
【0008】
前記センサヘッド部の前記センサ光ファイバには、2~5つの前記折り返し部が形成されていてもよい。
【0009】
前記保持部は、前記センサ光ファイバのうち少なくとも前記折り返し部をその内部に収容する管状部材であってもよい。
【0010】
前記保持部は、その両端が封止されていてもよい。
【0011】
前記保持部は、熱に応じて変形する材料で形成されていてもよい。
【0012】
前記保持部は、前記折り返し部を被覆する被覆部材で形成されていてもよい。
【0013】
また本発明は、前記圧力センサで検出される圧力から、温度を算出する温度センサに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧力を高い感度で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る圧力センサを示す模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る圧力センサの折り返し部及びその周囲の拡大模式図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る圧力センサを示す模式図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る圧力センサを示す模式図である。
【
図5】本発明の第4実施形態に係る圧力センサを示す模式図である。
【
図6】本発明の実施例及び比較例の圧力センサに5Nの重力を印加した場合の圧力応答特性の比較結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0017】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る圧力センサ1について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、圧力センサ1を示す模式図である。
図2は、
図1に示す二点鎖線で囲まれた領域Aにおける圧力センサ1の折り返し部24の拡大模式図である。
【0018】
圧力センサ1は、光源10と、センサ光ファイバ20と、保持部50と、受光器であるPD(Photo Diode)30と、検出部である処理装置40と、を備える。圧力センサ1は、センサ光ファイバ20の曲げ損失の変化に基づいて圧力を検出する装置である。
【0019】
光源10は、LED11と、LED11に電力を供給する電源12と、を有する。LED11は、電源12から供給された電力を用いて試験光をセンサ光ファイバ20に出力する。LED11から出力される試験光は、波長は特に限定されない。本実施形態では、LED11から青色光がセンサ光ファイバ20に出力される。
【0020】
センサ光ファイバ20は、その一端がLED11に光学的に接続され、他端がPD30に光学的に接続される。センサ光ファイバ20は、LED11から入力された試験光をPD30に伝送する。
【0021】
本実施形態に係るセンサ光ファイバ20は、プラスチックファイバであり、コア(図示省略)と、コアの外周に形成されるクラッド(図示省略)と、を有する。また、センサ光ファイバ20は、少なくとも1つの折り返し部24を有する。
図1に示すように、本実施形態に係るセンサ光ファイバ20には、折り返し部24が1つ形成される。シングルコア以外にもマルチコアファイバ、中空コアファイバ、ホーリーファイバであっても良い。
【0022】
保持部50は、可撓性のあるチューブ(管状部材)であり、センサ光ファイバ20のうち少なくとも折り返し部24をその内部に収容する。保持部50とセンサ光ファイバ20のうち保持部50に収容された部分によってセンサヘッド部60が形成される。センサ光ファイバ20は、保持部50内に収容される部位である保持部側光ファイバ部21と、保持部50の軸方向Xの一端部51から延出し、光源10に接続される部位である光源側光ファイバ部22と、保持部50の一端部51から延出し、PD30に接続される部位であるPD側光ファイバ部23から形成される。即ち、センサヘッド部60は、保持部50と、保持部側光ファイバ部21によって形成される。センサヘッド部60の構成については後述する。
【0023】
PD30は、センサ光ファイバ20によって伝送された試験光を受光し、該試験光をその強度に応じた電流信号に変換し、処理装置40に出力する。
図1に示すように、本実施形態では、PD30と光源10はともに保持部50の一端部51側に配置される。これにより、光源10やPD30がセンサヘッド部60の一方の側に集約されるので、センサヘッド部60を圧力の検出対象物を保持部50の側面(外周面)に接触させることが容易になり、圧力の検出動作が容易になる。
【0024】
処理装置40は、圧力特定部41と、記憶部42と、出力部43と、を備える。圧力特定部41は、プロセッサによって構成され、処理装置40の動作に必要な演算及び制御等の処理を行うコンピュータ中枢部分に相当する。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、SoC(System on a Chip)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)などである。あるいは、プロセッサは、これらのうちの複数を組み合わせたものである。
【0025】
圧力特定部41は、PD30から入力される電流信号に基づいて、試験光の強度を取得する。そして、圧力特定部41は、取得した試験光の強度に基づいて、センサヘッド部60に掛かっている圧力を検出する。例えば圧力特定部41は、センサヘッド部60毎に予め定められたPD30に受光された試験光の強度と圧力の関係を示す情報を参照して、取得した試験光の強度から圧力を特定してもよい。
【0026】
記憶部42は、圧力特定部41が演算及び制御等の処理を行うための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードディスクドライブ(HDD)などで構成することができる。記憶部42は、例えばPD30から入力された電流信号の情報や該電流信号が入力された時間情報、該電流信号から算出された試験光の強度の情報、PD30に受光された試験光の強度と圧力の関係を示す情報、圧力特定部41によって算出された圧力の情報等を記憶する。
【0027】
出力部43は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。出力部43は、例えば圧力特定部41によって算出されたセンサヘッド部60に掛かっている圧力をディスプレイに表示する構成であってもよい。
【0028】
次に、センサヘッド部60の構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。センサヘッド部60は、保持部50と、少なくとも1つの折り返し部24を有する保持部側光ファイバ部21と、を有する。
【0029】
保持部50は、その軸方向Xに沿って延長する円筒状のチューブである。保持部50は、その内部に保持部側光ファイバ部21を収容した状態で軸方向Xの両端部が封止されている。保持部50の素材としては、例えばポリイミド、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
【0030】
センサ光ファイバ20の保持部側光ファイバ部21は、
図2に示すように、保持部50の一端部51から保持部50の軸方向Xの他端部52に向かって延び、他端部52側で折り返され、一端部51まで延びる。このとき、センサ光ファイバ20は、軸方向Xに直交する方向で対向する部位が互いに接触しないように折り返される。このように他端部52側でセンサ光ファイバ20が折り返されることによって折り返し部24が形成される。
【0031】
本実施形態の折り返し部24の曲げ半径Rは、センサヘッド部60に外力が加えられていない状態で約155μmである。この場合の曲げ損失は約3dBである。折り返し部24の曲げ半径Rは、圧力の検出感度の向上等の観点からセンサヘッド部60に外力が加えられていない状態で5mm以下であることが好ましい。
【0032】
また、保持部側光ファイバ部21は、少なくとも一部が保持部50の内周面53と接触している。折り返し部24の曲げは、保持部側光ファイバ部21と保持部50の内周面53との接触により、センサヘッド部60に外力が加わっていない状態の曲げ半径Rが変化しないように保持される。即ち、保持部50は、センサ光ファイバ20の折り返し部24の曲げを保持するように構成される。
【0033】
図1に示すように、軸方向Xに直交する方向に圧力が掛かると、可撓性を有する保持部50が軸方向Xに直交する方向に変形し、保持部50の内周面53と接触する保持部側光ファイバ部21から圧力が折り返し部24に伝わる。この結果、折り返し部24の曲げ半径Rが小さくなるように変形する。これにより、折り返し部24において曲げ損失が大きくなり、センサ光ファイバ20の光出力(PD30に受光された試験光の強度)が減少する。この光出力の減少量に基づいてセンサヘッド部60に掛かっている圧力が検出される。
【0034】
また保持部50の直径d1の長さは、例えばセンサ光ファイバ20の外径d2の2倍~3倍であることが好ましい。これにより、保持部50の内周面53と保持部側光ファイバ部21の接触面積を増加させることができる。即ち、センサヘッド部60に加わる圧力が保持部50から保持部側光ファイバ部21に伝達し易くなり、圧力の検出感度を向上させることができる。本実施形態では、保持部50の直径d1は250μm~310μmであり、センサ光ファイバ20の外径d2は約125μmである。本実施形態では、保持部側光ファイバ部21の一部が内周面53に接しているが、その全長に亘って内周面53に接する構成としてもよい。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る圧力センサ1Aについて
図3を参照しながら説明する。なお、以下の第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と対応する構成については同一の規則性を有して対応する符号を付す。その説明が省略されたり、援用されたりする場合がある。
【0036】
圧力センサ1Aは、光源10と、光源側光ファイバ部22と、PD側光ファイバ部23と、センサヘッド部60Aと,PD30と、処理装置40と、を備える。圧力センサ1Aは、第1実施形態に係る圧力センサ1とはセンサヘッド部の構成が主に異なる。
【0037】
センサヘッド部60Aは、センサ光ファイバ20Aの保持部側光ファイバ部21Aと保持部50を有する。
【0038】
保持部側光ファイバ部21Aは、3つの折り返し部24Aを有する。具体的には、
図3に示すように、保持部側光ファイバ部21Aは、保持部50の一端部51側に折り返し部242が形成され、他端部52側に折り返し部241,243が形成される。
【0039】
3つの折り返し部24Aは、一端部51にから延びるセンサ光ファイバ20Aが他端部52側で折り返され、一端部51側に向かって延び、一端部51側で折り返され、再び他端部52側に向かって延び、他端部52側で折り返されることによって形成される。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る圧力センサ1Bについて
図4を参照しながら説明する。
【0041】
圧力センサ1Bは、光源10と、光源側光ファイバ部22と、PD側光ファイバ部23と、センサヘッド部60Bと,PD30と、処理装置40と、を備える。圧力センサ1Bは、第1実施形態に係る圧力センサ1とはセンサヘッド部の構成が主に異なる。
【0042】
センサヘッド部60Bは、センサ光ファイバ20Bの保持部側光ファイバ21Bと保持部50を有する。
【0043】
保持部側光ファイバ21Bは、5つの折り返し部24Bを有する。具体的には、
図4に示すように、保持部側光ファイバ21Bは、保持部50の一端部51側に折り返し部242,244が形成され、保持部50の他端部52側に折り返し部241,243,245が形成される。
【0044】
5つの折り返し部24Bは、1本のセンサ光ファイバ20Bが一端部51側と他端部52側とで交互に折り返されることによって形成される。センサ光ファイバ20Bは、他端部52側で3回折り返され、一端部51側で2回折り返される。
【0045】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る圧力センサ1Cについて
図5を参照しながら説明する。
【0046】
圧力センサ1Cは、光源10と、光源側光ファイバ部22と、PD側光ファイバ部23と、センサヘッド部60Cと,PD30と、処理装置40と、を備える。圧力センサ1Cは、第1実施形態に係る圧力センサ1とはPD30の配置、PD側光ファイバ部及びセンサヘッド部の構成が主に異なる。
【0047】
図5に示すように、光源10とPD30はセンサヘッド部60Cを挟んで対向する位置に配置される。具体的には、光源10が保持部50の一端部51側に配置され、PD30が保持部50の他端部52側に配置される。センサ光ファイバ20Cは、LED11から延び一端部51から保持部50内に挿入され、保持部50内に延在し、他端部52から延出してPD30に接続される。
【0048】
センサヘッド部60Cは、センサ光ファイバ20Cの保持部側光ファイバ部21Cと保持部50を有する。
【0049】
保持部側光ファイバ部21Cは、2つの折り返し部24Cを有する。具体的には、
図5に示すように、保持部側光ファイバ部21Cは、保持部50の一端部51側に折り返し部242が形成され、保持部50の他端部52側に折り返し部241が形成される。
【0050】
2つの折り返し部24Cは、一端部51にから延びるセンサ光ファイバ20Cが他端部52側で折り返され、一端部51側に向かって延び、一端部51側で折り返され、再び他端部52側に向かって延びることによって形成される。
【0051】
センサヘッド部60A~60Cのように、保持部50内に複数の折り返し部24A~24Cを形成させることによって、センサヘッド部60A~60Cに掛かる外力が折り返し部24A~24Cに伝わり易くなり、圧力センサ1A~1Cの圧力の検出感度が向上する。一方で、センサ光ファイバ20の有する折り返し部24の数が増加するとともに、センサ光ファイバ20全体の曲げ損失が増加し、出力光の絶対量が低下する。このため、良好なSN比を維持しつつ、圧力の検出感度を向上させるという点から、センサヘッド部60のセンサ光ファイバ20の折り返し部24の数は2~5つであることが好ましい。
【実施例0052】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例>
実施例として、第2実施形態に係る圧力センサ1Aを用いた。実施例の保持部50としては、円筒状であり、その両端が封止され、内径直径が500μmであり、外径直径が550μmの軸方向Xの長さが3cmであるポリイミド製のチューブを用いた。センサ光ファイバ20Aとしては、外径が125μmのプラスチックファイバを用いた。センサ光ファイバ20Aの3つの折り返し部24Aの曲げ半径Rは、センサヘッド部60Aに外力が加えられていない状態でそれぞれ125μmである。
【0054】
<比較例>
比較例として、センサヘッド部の構成が実施例とは異なる圧力センサを用いた。具体的には、センサヘッド部は、保持部50を備えず、センサ光ファイバがコイル状に巻回されたものを用いた。センサ光ファイバは、外径が125μmのプラスチックファイバを用いた。
【0055】
<圧力応答特性の評価方法>
実施例及び比較例の圧力センサにつき、5Nの重力を印加した場合の光出力の変化を測定することでそれぞれの圧力応答特性を評価した。具体的には、LEDから波長470nmの試験光を入力し、5Nの重力の印加前後においてPDが受光した試験光の強度を測定した。5Nの重力は、500mlの水を入れた容器をセンサヘッド部に載置することによって印加した。
【0056】
<圧力応答特性の評価結果>
圧力応答特性の評価結果を説明する。
図6は、実施例及び比較例の圧力センサに5Nの重力を印加した場合の光出力の変化の比較結果を示すグラフである。
図6の横軸は時間(秒)であり、
図6の縦軸は光出力(規格値)である。光出力(規格値)とは、測定された光出力を圧力センサに重力を印加する前の光出力で除して得られる値である。実線部分は実施例の圧力センサによって測定された光出力の推移を示し、破線部分は比較例の圧力センサによって測定された光出力の推移を示している。一点鎖線Lは、実施例及び比較例のセンサヘッド部に500mlの水を入れた容器を載置したタイミングを示している。
【0057】
図6に示すように、比較例では、5Nの重力を印加すると、光出力が約1秒程度の時間をかけて1から0.95に低下する。これに対して、実施例では5Nの重力を印加すると光出力が1から0.8以下まで低下することが確認できる。即ち、実施例では比較例に比べて5Nの重力に対する検出感度が4倍程度向上することが確認できる。また実施例では比較例に比べて5Nの重力を印加した後に光出力が迅速に低下することが確認できる。
【0058】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0059】
本実施形態に係る圧力センサ1は、試験光を出力する光源10と、試験光が入力され、少なくとも1つの折り返し部24を有するセンサ光ファイバ20と、折り返し部24の曲げを保持する保持部50と、を有するセンサヘッド部60と、センサ光ファイバ20によって伝送された試験光を受光するPD30と、PD30により受光された試験光の強度に基づいて、センサヘッド部60に掛かる圧力を検出する処理装置40と、を備える。
【0060】
これにより、折り返し部24の曲げが保持部50によって保持されるので、センサヘッド部60に加えられた外力を、曲げ損失が発生し易い曲げ状態に保持された折り返し部24に保持部50を介して効率よく伝えることができる。このため、圧力を高い感度で検出できる。また、センサ光ファイバ20の巻回数等を増加させずに圧力の検出感度を向上させることができる。よって、短尺で小型な構成で圧力に対する高い検出感度を実現できる。
【0061】
本実施形態に係る圧力センサ1において、折り返し部24は、曲げ半径が5mm以下である。
【0062】
これにより、センサヘッド部60に加えた圧力に応じた曲げ損失の変化量がより大きい曲げ半径に保持されるので、圧力の検出感度をより向上させることができる。
【0063】
本実施形態に係る圧力センサ1A~1Cにおいて、センサヘッド部60A~60Cの保持部側光ファイバ部21A~21Cには、2~5つの折り返し部24A~24Cが形成される。
【0064】
これにより、良好なSN比を維持しつつ、高い検出感度で圧力を検出することができる。
【0065】
本実施形態に係る圧力センサ1において、保持部50は、センサ光ファイバ20のうち少なくとも折り返し部24をその内部に収容する管状部材である。
【0066】
これにより、簡素な構成で圧力の検出感度を向上させることができる。
【0067】
本実施形態に係る圧力センサ1において、保持部50は、その両端が封止されている。
【0068】
これにより、折り返し部24が収容された保持部50の両端が封止されているので、より正確に圧力を検出できる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0070】
上記実施形態では、保持部50が軸方向Xの両端部が封止されている円筒状のチューブであったが、その構成は特に限定されない。例えば角筒状のチューブであってもよい。また、軸方向Xの両端部が封止されていない構成であってもよく、両端部のうち一方のみが封止され、もう一方が開放されていない構成であってもよい。
【0071】
また例えば、保持部50は、熱に応じて変形する材料で形成されてもよい。熱に応じて変形する材料としては、例えばポリフッ化ビニリデンが挙げられる。この構成により、センサヘッド部60に接する物体の温度の変化に応じて保持部50を収縮又は膨張させ、保持部50内の折り返し部24の曲げ半径Rを変化させることができる。よって、圧力センサ1にセンサ光ファイバ20の曲げ損失に基づいて温度を検出する温度センサとしての機能を付与することができる。即ち、圧力センサ1で検出される圧力から、温度を算出する温度センサを構成してもよい。
【0072】
また例えば、保持部側光ファイバ部21は6つ以上の折り返し部24を有していてもよい。
【0073】
上記実施形態では、保持部50はその内部に折り返し部24を収容することで折り返し部24の曲げを保持する構成であったが、例えばチューブ等を用いずに折り返し部24の表面を被覆することで曲げを保持する構成であってもよい。即ち、保持部50は、折り返し部24を被覆する被覆部材で形成されてもよい。