(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136574
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂前駆体組成物、電子部品用材料
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20230922BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08G59/24
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042321
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃史
(72)【発明者】
【氏名】田村 典央
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD031
4J002DK006
4J002FD016
4J002GJ01
4J002GQ05
4J036AJ01
4J036AJ14
4J036BA01
4J036DA05
4J036DB05
4J036FA06
4J036JA06
4J036JA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱伝導率の高いエポキシ樹脂材料を提供することである。また、そのための垂直配向性の高いエポキシ樹脂前駆体組成物を提供することである。
【解決手段】エポキシ化合物および硬化剤を含む組成物であり、エポキシ化合物として、式(1)で表される化合物を、エポキシ化合物全体に対し50モル%以上含み、硬化剤として、1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物を、硬化剤全体に対し50モル%以上含む、エポキシ樹脂前駆体組成物。
R
epはオキシラニルを有する炭素数2~12の基、Xは単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、Yは-CH
2-、または-O-、R
1は水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアルコキシ、またはR
ep、nは0~2の整数。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物および硬化剤を含む組成物であり、
エポキシ化合物として、式(1)で表される化合物を、エポキシ化合物全体に対し50モル%以上含み、
硬化剤として、1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物を、硬化剤全体に対し50モル%以上含む、
エポキシ樹脂前駆体組成物。
式(1)中、R
epは、それぞれ独立して、オキシラニルを有する炭素数2~12の基であり、Xは、それぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、Yは独立して、-CH
2-、または-O-であり、R
1は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアルコキシ、またはR
epであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH
2-は-CO-で置き換えられていてもよく、nは0~2の整数である。
【請求項2】
式(1)で表される化合物において、Yの少なくとも1つが-CH2-である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物において、エポキシと反応する置換基がOHである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物において、芳香環がベンゼンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物を、硬化剤全体に対し70モル%以上含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
硬化剤として、フェノール樹脂をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
式(1)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
界面活性剤をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
無機フィラーをさらに含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
無機フィラーが、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、または窒化アルミニウムである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化物を用いた電子部品用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の内部に生じた熱を効率よく伝導するエポキシ樹脂前駆体組成物、およびこれを用いた電子部品用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電力制御用の半導体素子や、高速コンピューター用のCPUなどにおいて、内部の半導体の温度が高くなり過ぎないように、パッケージ材料の高熱伝導化が望まれている。すなわち半導体チップから発生した熱を効率よく外部に放出させる能力が重要になっている。
【0003】
このような放熱問題を解決する方法としては、発熱部位に高熱伝導性材料(以下、放熱部材ということがある。)を接触させて熱を外部に導き、放熱する方法が挙げられる。熱伝導性が高い材料としては、金属や金属酸化物などの無機材料が挙げられる。しかし、このような無機材料は、加工性や絶縁性などに問題があり、単独で半導体パッケージの充填材に使用することは非常に難しい。そのため、これら無機材料と樹脂を複合化し、高熱伝導化した放熱部材の開発が行われている。
【0004】
複合材の高熱伝導化は、一般的に、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの汎用樹脂に、金属充填材などの無機充填材を多量に添加することにより行われてきた。しかし、無機充填材の熱伝導率は物質固有の値であり上限が決まっている。そのため、樹脂の熱伝導率を向上させることで、複合材のこれを行う方法が広く試みられている。これを実際に行う手段としては、例えば、液晶性を有するエポキシ化合物を用い、これを配向させる方法が知られている(非特許文献1)。
【0005】
非特許文献1では、ガラス基板の間に垂直配向した内部構造を持つエポキシ樹脂が開示されている。しかしながらこの場合、組成物の配向は両面のガラス基板で制御することができるため、比較的垂直配向しやすくなる。一方で、実用上、エポキシ樹脂は片面基板上に形成することが好ましい。
【0006】
また特許文献1には、片面ガラス基板上に、液晶性組成物が垂直配向することが記載されている。しかしながら、組成物がどの程度の膜厚まで垂直配向するかなど、配向をより誘起することのできる組成物の情報は、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ACS Omega,3, 3562(2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、熱伝導性が高いエポキシ樹脂材料を提供する事である。また該エポキシ樹脂材料を与える、エポキシ樹脂前駆体組成物を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の構造を有する液晶性エポキシ化合物と、エポキシ化合物と反応する置換基を有する特定の構造を有する化合物とを、一定の範囲で混合した液晶性組成物は、片面基板上でも、垂直配向を与え易いことを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
上記液晶性組成物は、比較的厚膜でも垂直配向した構造の硬化物を与えやすく、高い熱伝導性を有する。このような材料は、パワー半導体用などの放熱材料として、好適に使用する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。また、本発明は、実施の形態に制限されるものではない。
【0013】
本発明は下記の項などである。
【0014】
[1] エポキシ化合物および硬化剤を含む組成物であり、
エポキシ化合物として、式(1)で表される化合物を、エポキシ化合物全体に対し50モル%以上含み、
硬化剤として、1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する化合物を、硬化剤全体に対し50モル%以上含む、
エポキシ樹脂前駆体組成物。
式(1)中、R
epは、それぞれ独立して、オキシラニルを有する炭素数2~12の基であり、Xは、それぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、Yは独立して、-CH
2-、または-O-であり、R
1は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアルコキシ、またはR
epであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH
2-は-CO-で置き換えられていてもよく、nは0~2の整数である。
【0015】
[2] 式(1)で表される化合物において、Yの少なくとも1つが-CH2-である項[1]に記載の組成物。
【0016】
[3] 1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物において、エポキシと反応する置換基がOHである、項[1]または項[2]に記載の組成物。
【0017】
[4] 1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物において、芳香環がベンゼンである、項[1]~項[3]のいずれか1項に記載の組成物。
【0018】
[5] 1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物を、硬化剤全体に対し70モル%以上含む、項[1]~項[4]のいずれか1項に記載の組成物。
【0019】
[6] 硬化剤として、フェノール樹脂をさらに含む、項[1]~項[5]のいずれか1項に記載の組成物。
【0020】
[7] 式(1)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、項[1]~項[6]のいずれか1項に記載の組成物。
【0021】
[8] 硬化促進剤をさらに含む、項[1]~項[7]のいずれか1項に記載の組成物。
【0022】
[9] 界面活性剤をさらに含む、項[8]に記載の組成物。
【0023】
[10] 無機フィラーをさらに含む、項[8]または項[9]に記載の組成物。
【0024】
[11] 無機フィラーが、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、または窒化アルミニウムである、項[10]に記載の組成物。
【0025】
[12] 項[1]~項[11]のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【0026】
[13] 項[12]に記載の硬化物を用いた電子部品用材料。
【0027】
[液晶性エポキシ化合物]
より結晶性を抑えペースト化しやすい事から、該液晶性エポキシ化合物は、その化学構造が棒状である事が好ましい。このような棒状の液晶性化合物に関しては、液晶温度範囲を拡大するために、液晶のコアが芳香環を3~5個有する事が、好ましい。
【0028】
上記液晶のコアとは、芳香環や脂環が、比較的コンフォメーションが定まった結合基で連結された構造を示す。このとき、該結合基の例としては単結合、エチレン、オキシメチレン、二重結合、三重結合、またはエステル結合等が挙げられる。
【0029】
上記の棒状の液晶性化合物とは、液晶のコアとして、芳香環や脂環が直線状に連なり、そのコアの両端にアルキル等の柔軟性のある置換基が結合した構造である。このとき上記直線は、厳密な直線である必要はなく、45度程度の角度まで屈曲してもよい。
【0030】
このような棒状の液晶性化合物においては、200℃以上の温度での分解を防ぐために、その分子構造中にエステルを含有しない事が好ましい。
【0031】
上記の棒状の液晶化合物としては、液晶性を示す温度範囲が広く、製造が容易であり、これを硬化物とした際の耐熱性が高い事から、式(1)で表される化合物を選択する事が、より好ましい。
【0032】
式(1)中、R
epは、それぞれ独立して、オキシラニルを有する炭素数2~12の基であり、Xは、それぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、Yは独立して、-CH
2-、または-O-であり、R
1は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアルコキシ、またはR
epであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH
2-は-CO-で置き換えられていてもよく、nは0~2の整数である。
【0033】
式(1)の化合物において、Repは、それぞれ独立して、オキシラニルを有する炭素数2~12の基である。このとき、Repのオキシラニル以外の構造は特に制限が無いが、硬化物としたときに高い耐熱性を与えるためには、炭素数2~10のオキシラニルを有する基である事が好ましく、炭素数2~8のオキシラニルを有する基である事が特に好ましい。また、これらのオキシラニルを有する基の-CH2-は-O-で置き換えられてもよい。
【0034】
式(1)の化合物において、結合基Xは、それぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。これらの結合基において、結合の方向は任意である。このとき、硬化物の耐熱性を向上させるためには、Xとして単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、または-C≡C-を選択する事が好ましく、化合物に広い液晶温度範囲を付与するため、単結合、または-C≡C-を選択する事が特に好ましい。また合成上の容易さから、単結合を選択する事が最も好ましい。
【0035】
式(1)の化合物において、R1はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアルコキシ、またはRepである。またこれらのアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH2-は-CO-で置き換えられてもよい。このとき、化合物の液晶温度範囲を拡大する事が出来る事から、これらのR1として、アルキルまたはアルコキシを選択する事が好ましく、アルキルを選択する事が特に好ましい。またRepやXが同一の基でない場合、同様な理由から、水素を選択する事も好ましい。化合物の液晶温度範囲を拡大するためには、R1としてメチルを選択する事が最も好ましい。さらに硬化物の耐熱性を向上させるためには、R1としてRepを選択する事が好ましい。
【0036】
式(1)の化合物において、R1にメチルなどの有機基を選択する場合、組成物の垂直配向性を向上させるため、Yに隣接した位置とすることが好ましい。
【0037】
式(1)の化合物において、nは0~2の整数である。このとき、化合物の液晶温度範囲を拡大する事が出来る事から、nは1または2が好ましい。
【0038】
式(1)で表される液晶性エポキシ化合物の好適な例としては、式(1-1)~式(1-31)の化合物が挙げられる。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
式(1-1)~式(1-31)中、Rep1およびRep2は、オキシラニル以外はそれぞれ独立して、全て炭素-炭素単結合および炭素に結合する水素からなる、炭素数2~11の基を表す。
【0044】
上記式(1-1)~式(1-31)で表される化合物において、本発明の課題を解決するためには、式(1-6)、式(1-11)~式(1-18)、式(1-22)~式(1-23)、および式(1-30)で表される化合物の1つを選択する事が、好ましい。これらの化合物は、液晶温度範囲が広く、またそれが硬化に適した温度領域にある。さらに組成物に垂直配向性を付与するためには、式(1-6)、式(1-11)、式(1-13)、および式(1-30)を選択することが、最も好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、本発明に用いられる重合性化合物、硬化剤、および必要に応じて添加される硬化促進剤を含む事を特徴とする。このような本発明の組成物は液晶性を呈し易い。さらにこの状態を保ったまま硬化させる事により、硬化物中の分子骨格同士の絡みが緩和される。結果として、熱を効率よく伝導させる材料を与える。
【0046】
本発明の組成物は、上記式(1)で表される化合物を含む事を特徴とする。式(1)の化合物は1種類または複数を使用してもよい。また組成物の液晶性を喪失させない限りにおいては、その他の公知のエポキシ化合物を併用する事が出来る。このような化合物としては、式(o-1)~式(o-6)で表す液晶性エポキシ化合物を好ましく用いる事が出来る。
【0047】
【0048】
また上記他のエポキシ化合物としては、式(o-7)~式(o-21)で表される非液晶性エポキシ化合物も好ましく用いられる。
【0049】
【0050】
式(o-12)において、Z10は単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-SO2-、または-C(CF3)2-を表す。
【0051】
【0052】
式(o-13)および式(o-14)において、Z11は-CH-または-CCH3-を表す。
【0053】
【0054】
また上記他のエポキシ化合物としては、式(o-23)~式(o-27)で表される構造の樹脂も好ましく用いられる。
【0055】
【0056】
式(o-23)中、Z12およびZ13は独立して、単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-SO2-、または-C(CF3)2-であり、n21は1以上5000以下の整数である。
式(o-24)および式(o-25)中、n21は1以上5000以下の整数であり、n22およびn23は独立して、0または1であり、n21が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
R10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
またこれら式(o-24)~式(o-25)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0057】
【0058】
式(o-26)および式(o-27)中、Z14は独立して、単結合、-CH(CH3)-、または-C(CH3)2-であり、n21は1以上5000以下の整数を表す。
またこれら式(o-26)および式(o-27)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0059】
式(1)の化合物に対する、このような公知のエポキシ化合物の含有量は、組成物またはその硬化物が所望の特性を発現して本発明の効果を発現させる観点から決定することが出来る。すなわちエポキシ化合物全体に対し、式(1)の化合物を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上の割合で使用する。
【0060】
[硬化剤]
本発明の組成物に併用できる、硬化剤としては、上記エポキシ化合物の液晶性を阻害しないような硬化剤でなければならない。
【0061】
本発明の組成物からなる硬化物の厚み方向の熱伝導率を向上するためには、組成物が示す液晶相はネマチック相よりもスメクチック相であることが好ましい。そのためには、硬化剤として、1つの芳香環と、該芳香環に結合したエポキシと反応する置換基を2つ以上有する構造の化合物を、硬化剤全体に対し50モル%以上含む必要があり、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。上記化合物において、エポキシと反応する置換基がOHであるフェノール化合物、またはそのフェノール化合物中のOHの少なくとも1つが短鎖のエステルとなる化合物を、硬化剤全体に対し50モル%以上含むことが好ましい。
【0062】
それ以外には上記化合物を除く全てのフェノール、またはそのフェノール化合物中のOHの少なくとも1つが短鎖のエステルとなる短鎖エステルの化合物を、上記化合物に併用して使用する事が出来る。
【0063】
上記の1つの芳香環と該芳香環に結合した2つ以上のOHを有する化合物としては、組成物の液晶性を大きく損なう事がなく、容易に入手出来る事から、式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0064】
式(2)中、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、炭素数2~3のアルケニル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n21は2以上4以下の整数である。
【0065】
上記式(2)で表されるフェノール化合物の短鎖のエステルとは、フェノール化合物中のOHの少なくとも1つが短鎖のエステルとなり、以下の(3-E)で表される基が、OHのHに置換した構造である。
【0066】
式中R
13は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルを表し、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルは、分岐鎖であってもよい。これらR
13のうち、メチルを選択すると、化合物の結晶性が増大するため、組成物の液晶性を損なう場合がある。そのような場合には、より長鎖のアルキルを有する(3-E)を選択する事が好ましい。一方長鎖アルキルの場合、硬化物とした際の耐熱性が低下する場合がある。そのような場合には、より短鎖のアルキルを有する(3-E)を選択する事が好ましい。
【0067】
その他のフェノール系硬化剤としては、組成物の液晶性を大きく損なう事がなく、容易に入手出来る事から、下記式(3-1)~(3-7)で表される少なくとも1つのフェノール化合物、またはその短鎖のエステルである事が好ましい。
【0068】
【0069】
式(3-1)中、
環Bは、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9-ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
【0070】
式(3-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
Z30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-O-、-S-、または-SO2-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、炭素数2~3のアルケニルで置き換えられてもよく;
【0071】
式(3-3)および式(3-4)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
R10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
式(3-5)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、
式(3-6)中、
Z31は独立して単結合、-CH(CH3)-、または-C(CH3)2-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
式(3-7)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、R12は水素またはメチルである。
また、これら式(3-3)~式(3-7)中の芳香環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0072】
上記式(3-1)~(3-7)で表されるフェノール化合物の短鎖のエステルとは、フェノール化合物中のOHの少なくとも1つが短鎖のエステルとなり、以下の(3-E)で表される基が、OHのHに置換した構造である。
【0073】
式中R
13は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルを表し、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルは、分岐鎖であってもよい。これらR
13のうち、メチルを選択すると、化合物の結晶性が増大するため、組成物の液晶性を損なう場合がある。そのような場合には、より長鎖のアルキルを有する(3-E)を選択する事が好ましい。一方長鎖アルキルの場合、硬化物とした際の耐熱性が低下する場合がある。そのような場合には、より短鎖のアルキルを有する(3-E)を選択する事が好ましい。
【0074】
本発明の組成物に使用出来る硬化剤としては、上記したフェノール、カルボン酸エステルなどの公知化合物以外に、アミン、フェノール、シアネートエステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールなどの化合物を使用する事が出来る。
【0075】
アミン系硬化剤としては、組成物の液晶性を大きく損なう事がなく、容易に入手出来る事から、下記式(4-1)または(4-2)で表される少なくとも1つの化合物である事が好ましい。
E-Z20-(L-Z20)n-E (4-1)
L1-Z20-E (4-2)
前記式(4-1)および(4-2)中、
Lは、それぞれ独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
L1は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Z20は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO2-、-CO2-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
Eは、それぞれ独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、又はカルボキシであり、Eの少なくとも1つは、アミノまたは炭素数1~10のアルキルアミノであり、
nは、0~7の整数である。
【0076】
このような式(4-1)で表される化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミンなどの炭素数2~12の脂肪族多価アミン、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、o-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、m-トリジン、o-トリジンなどの芳香族多価アミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの、脂環式多価アミンが挙げられる。
これらの中でも、組成物にした際の相溶性が良好で、保存安定性に優れる事から、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが特に好適である。
【0077】
式(4-2)で表される化合物としては、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミンなどの炭素数2~12の脂肪族アミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリン、1-ナフチルアミン、1-アミノ-2-メチルナフタレンなどの芳香族アミン、シクロヘキシルアミン、2-メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式アミンが挙げられる。これらの中でも、組成物にした際の相溶性が良好で、保存安定性に優れる事から、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリンが特に好適である。
【0078】
本発明の組成物において、エポキシ化合物と硬化剤の比は、特に制限は無い。このとき耐熱性を向上させる目的で反応を効率的に進めるために、エポキシ化合物と硬化剤との反応基を当量とする事が好ましい。
【0079】
上記硬化剤は一種類を用いても、複数の種類を用いてもよい。
【0080】
[硬化促進剤]
本発明の組成物において、特にフェノール系の硬化剤を使用する場合、耐熱性を向上させる目的で反応を効率的に進めるために、硬化促進剤を組成物に添加する事が好ましい。このような硬化促進剤として、イミダゾール、2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、および1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール系硬化促進剤、トリフェニルフォスフィンなどのリン系硬化促進剤、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、などのアミン系硬化促進剤などが挙げられる。このような硬化促進剤のうち、硬化温度が200℃以下であり硬化性が高い事から、イミダゾール系の硬化促進剤を使用する事が好ましい。
【0081】
本発明の組成物における硬化促進剤の濃度は、耐熱性を向上させる目的で反応を効率的に進めるために、本発明に用いられる重合性化合物の重量に対し、0.1重量%以上である事が好ましく、0.5重量%以上である事がさらに好ましい。また硬化促進剤の昇華などによる信頼性などの悪化を避けるために、本発明に用いられる重合性化合物の重量に対し、5重量%以下である事が好ましく、3重量%以下である事がさらに好ましい。
【0082】
[無機フィラー]
本発明の組成物は、無機フィラーを含有してもよい。本発明の組成物は電子部品用途に好適に用いることが出来るので、電子部品用途に用いる本発明の組成物を、以下、電子部品用組成物ということがある。
電子部品用組成物が含有する無機フィラーとしては、高熱伝導性の充填材として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの窒化物が挙げられる。ダイアモンド、黒鉛、炭化珪素、珪素、ベリリア、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化銅、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、金、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの無機充填材や金属充填材であってもよい。好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムである。窒化ホウ素、窒化アルミニウムは平面方向の熱伝導率が非常に高く、誘電率が低く、絶縁性が高いため好ましい。特に六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)や窒化アルミニウムが好ましい。
【0083】
無機フィラーの形状としては、球状、無定形、繊維状、棒状、筒状、板状、四脚状などが挙げられる。無機フィラーの種類、形状、大きさ、添加量などは、目的に応じて適宜選択できる。例えば、電子部品用組成物から形成された硬化物(以下、電子部品用材料ということがある。)が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性が保たれれば導電性を有する無機フィラーであっても構わない。
【0084】
無機フィラーの平均粒径は、例えば、0.1~200μmであることが好ましい。より好ましくは、1~100μmである。0.1μm以上であると熱伝導率がよく、200μm以下であると充填率を上げられる。なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づく。すなわち、フランホーファー回折理論及びミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法により、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。
【0085】
無機フィラーの添加量は、例えば、放熱部材に用いる場合は、20~95重量%であることが好ましい。より好ましくは、50~95重量%である。20重量%以上であると熱伝導率が高くなり好ましい。95重量%以下であると放熱部材が脆くならず好ましい。
【0086】
無機フィラーは、未修飾のものをそのまま使用してもよい。又は、その表面をカップリング剤で処理したものを用いてもよい。例えば、窒化ホウ素(h-BN)をシランカップリング剤で処理する。窒化ホウ素の場合は粒子の平面に反応基がないため、その周囲のみにシランカップリング剤が結合する。カップリング剤で処理された窒化ホウ素は、電子部品用組成物中の重合性化合物との結合を形成でき、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。そのため、カップリング剤は、オキシラニル、オキセタニル、又は硬化剤の有する基と反応するものが好ましい。例えば、アミン系、又はオキシラニル、オキセタニルを有するものが好ましい。具体的には、JNC(株)製の商品名では、サイラエースS310、サイラエースS320、サイラエースS330、サイラエースS360、サイラエースS510、サイラエースS530が挙げられる。
【0087】
無機フィラーは、カップリング剤で処理した後さらにエポキシなどの重合性の基を有する化合物(重合性化合物)で表面修飾したものを用いてもよい。例えば、シランカップリング剤で処理された窒化ホウ素(h-BN)を重合性化合物で表面修飾する。重合性化合物で表面修飾された窒化ホウ素が、電子部品用組成物中の重合性化合物や硬化剤と結合を形成できると、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。例えば、重合性化合物は、式(1)で表される本発明に用いられる重合性化合物であってもよく、それ以外の重合性化合物であってもよい。
【0088】
[その他の構成要素]
本発明の組成物において、含有する事の出来るその他の構成要素としては、特に限定されない。例えばエポキシ以外の重合性基を有する重合性化合物、非重合性化合物、重合開始剤、溶媒が挙げられる。
【0089】
エポキシ以外の重合性基を有する重合性化合物としては、本発明の電子部品用材料の特性を低下させない限りにおいて、特に制限は無く、公知の重合性化合物を使用する事が出来る。その中でも、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物が好ましく使用出来、液晶性を有するようなこれら化合物が、より好適に使用する事が出来る。
重合開始剤としては、例えば熱重合開始剤、光カチオン重合開始剤、および光アニオン重合開始剤などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としてはスルホニウム塩系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンアジド、有機酸ヒドラジド、トルエンスルホン酸エステルなどが挙げられる。また光カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、非イオン系などが知られている。さらに光アニオン重合開始剤としては、オキシム系、カーバメート系、グアニジニウム-カルボン酸塩系、ニフェジピン系などが知られている。
【0090】
本発明の組成物に、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物を含む場合は、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0091】
本発明の組成物は溶媒を含有してもよい。好ましい溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-エチルヘキサノール、1-プロパノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、2-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールが挙げられる。溶媒は1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0092】
本発明の組成物は高い重合性を有するので、取扱いを容易にするために、安定剤を添加してもよい。このような安定剤としては、公知のものを制限なく使用できる。例えば、ハイドロキノン、4-エトキシフェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられる。
【0093】
さらに、電子部品用組成物の粘度や色相を調整するために添加剤(酸化物等)を添加してもよい。例えば、白色にするための酸化チタン、黒色にするためのカーボンブラック、粘度を調整するためのシリカの微粉末を挙げることができる。また、機械的強度をさらに増すために、例えば、ガラス、カーボンファイバーなどの無機繊維や、それらのクロス、又は、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの合成繊維、超分子を添加してもよい。
【0094】
材料の熱伝導率は、液晶の配向を制御する事で、より向上する事が知られている。このような目的で、液晶の配向を制御する、いわゆる配向制御剤を、本発明の組成物に添加する事も好ましい。液晶性を有する組成物を基板平面に対し垂直に配向させるような、垂直配向剤としての一例としては、例えば炭素数10以上50以下の炭化水素構造を有し、構造の片末端に水酸基、アミノ、またはカルボキシルを有する化合物が挙げられる。
【0095】
[電子部品用材料]
本発明の電子部品用材料は、上記本発明の組成物の好ましい用途に係る電子部品用組成物を硬化させた硬化物を用途に応じて成形したものである。例えば、電子部品用材料を放熱部材として適用できる。
【0096】
電子部品用材料は、本発明の組成物を重合(硬化)させることによって得られる重合体である。この重合体は、高い熱伝導性を有するとともに、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などに優れている。なお、前記機械的強度とは、ヤング率、引張強度、引裂強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などである。
【0097】
本発明の組成物は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、原料となる組成物を加熱する事で、組成物に含まれるモノマーを高分子化させ、さらに三次元架橋させる事等により、硬化する。この際の加熱温度は、本発明の組成物が液晶相を示す温度範囲である事が好ましい。また本発明の組成物は、硬化をある程度進める事により、液晶温度範囲が上昇する場合もある。このような場合は、上昇した液晶温度範囲において硬化させてもよい。
【0098】
硬化させる温度は、一定であってもよく、段階的に上昇または降下させてもよい。後者の場合、最初の硬化温度は、材料の放熱特性を向上させるため、組成物またはその硬化物が液晶相を示す温度が好ましい。また耐熱性を向上させるため、最初の硬化温度より高い温度で加熱する事が好ましい。
【0099】
熱重合による熱硬化温度は、好ましくは20℃~350℃、より好ましくは20℃~250℃、更に好ましくは50℃~200℃の範囲である。硬化時間は、好ましくは5秒~10時間、より好ましくは1分~8時間、更に好ましくは5分~5時間の範囲である。重合後は、応力ひずみなどを抑制するために徐冷することが好ましい。また、再加熱処理を行い、ひずみなどを緩和させてもよい。
【0100】
より架橋させるために架橋剤を添加してもよい。これにより、耐薬品性及び耐熱性に極めて優れた重合体(硬化物)を得られる。このような架橋剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0101】
本発明の電子部品用材料は、シート、フィルム、薄膜、繊維、成形体などの形状で使用できる。好ましい形状は、フィルム及び薄膜である。フィルム及び薄膜は、電子部品用組成物を基板に塗布した状態又は基板で挟んだ状態で重合させることによって得られる。また、溶媒を含有する電子部品用組成物を、基板に塗布し溶媒を除去することによっても得られる。さらに、フィルムについては、重合体をプレス成形することによっても得られる。なお、本明細書におけるシートの膜厚は好ましくは1mm以上であり、フィルムの膜厚は好ましくは5μm以上、より好ましくは10~900μmであり、更に好ましくは20~800μmであり、薄膜の膜厚は好ましくは5μm未満である。膜厚は用途に応じて適宜変更すればよい。
【0102】
本発明の電子部品用材料は、高熱伝導性に加え、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などの優れた特性をも有する。よって、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱塗膜、放熱接着材、放熱成形品などに有用である。
【0103】
本発明に用いられる重合性化合物から形成された電子部品用材料を上記では放熱材料として用いることを説明したが、電子部品用材料の用途は放熱材料に限られない。例えば、封止材や接着材料として用いてもよい。
【0104】
[電子部品用組成物の製造方法]
電子部品用組成物とは、本発明の組成物の好ましい形態である放熱材料を指し、熱伝導性を高めるため無機フィラーを含有してもよく、無機フィラーに対するカップリング処理の実施は問わない。電子部品用組成物の製造例として、無機フィラーにカップリング処理を施す場合の製造方法を以下に説明する。カップリング処理は公知の方法を適用できる。
【0105】
一例として、まず無機フィラー粒子とカップリング剤を溶媒に加える。スターラー等を用いて撹拌したのち、放置する。溶媒を室温で自然乾燥(風乾)後に真空乾燥機等を用いて真空条件下で加熱処理をする。この無機フィラー粒子に溶媒を加えて、超音波処理により粉砕する。遠心分離機を用いてこの溶液を分離精製する。上澄みを捨てたのち、溶媒を加えて同様の操作を数回行う。オーブンを用いて精製後の無機フィラー粒子を乾燥させる。
【0106】
次にカップリング処理された無機フィラー粒子と重合性化合物を、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。その後、超音波処理及び遠心分離によって分離精製する。
【0107】
さらにフェノール系硬化剤を加え、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。これにより、溶媒を含有しない電子部品用組成物を得られる。
【0108】
[電子部品用材料の製造方法]
一例として、溶媒を含有しない電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
【0109】
溶媒を含有しない電子部品用組成物を、圧縮成形機を用いて加熱板中にはさみ、圧縮成形法により成形する。重合性化合物が所定の温度、時間で重合し重合体を形成する。さらに適切な時間、温度で後硬化を施してもよい。なお、圧縮成形時の圧力は、50~500kgf/cm2(4.90~49.0MPa)が好ましく、より好ましくは70~250kgf/cm2(6.86~24.5MPa)である。硬化時の圧力は基本的には高い方が好ましい。しかし、金型の流動性や、目的とする物性(どちら向きの熱伝導率を重視するかなど)によって適宜変更し、適切な圧力を加えることが好ましい。
【0110】
なお、電子部品用組成物は一部を硬化させた状態(半硬化状態)とすると、扱い易くなる。例えば、半硬化状態の組成物をシート状に成形し、好みの形に切り取り、これを好適な部材と部材の間に配置し貼りあわせてもよい。
【0111】
溶媒を含有する電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
【0112】
基板上に電子部品用組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去して膜厚の均一な塗膜層を形成する。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、カテンコート法、フローコート法、プリント法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、デップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法が挙げられる。
【0113】
溶媒の乾燥除去は、例えば、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けにより実施できる。溶媒除去の条件は特に限定されず、溶媒がおおむね除去され、塗膜層の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。
【0114】
[電子部品]
電子部品としては、例えば発熱部を有する電子デバイスが挙げられる。本発明の電子部品用材料を放熱部材として用いる場合は、放熱部材を前記発熱部に接触するように電子デバイスに配置する。放熱部材の形状は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などのいずれであってもよい。このように、放熱部材により電子デバイスに生じた熱を放熱させ、熱による故障を回避することで、電子デバイスを備える電子機器の寿命を延ばせる。
【0115】
電子デバイスとしては、半導体素子を挙げることができる。放熱部材は、高熱伝導性に加えて、高耐熱性、高絶縁性を有する。そのため、半導体素子の中でも高電力のために、より効率的な放熱機構を必要とする絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)に特に有効である。IGBTは半導体素子のひとつで、MOSFETをゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタであり、電力制御の用途で使用される。IGBTを備えた電子機器には、大電力インバータの主変換素子、無停電電源装置、交流電動機の可変電圧可変周波数制御装置、鉄道車両の制御装置、ハイブリッドカー、エレクトリックカーなどの電動輸送機器、IH調理器などを挙げることができる。
【0116】
[式(1)で表される化合物の合成方法]
式(1)の化合物は、有機合成化学における公知の手法を組合せることにより合成できる。出発物質に目的の重合性基及び環構造を導入する方法は、例えば、ホーベン-ワイル(Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。また、特開2006-265527号公報を参照してもよい。
【実施例0117】
以下に、本発明に対して実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、実施例に記載された内容に限定されるものではない。なお温度の記載がない場合は、23℃で測定を行った。
【0118】
[NMR測定]
NMRは、VARIAN社製のVARIAN NMR SYSTEMで計測した。1H NMR測定での磁場強度は500MHzであり、試料はCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は室温で行った。この際、積算回数は8回である。内部標準は、テトラメチルシランである。NMRの符号のうち、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレット、brはブロードを意味する。
【0119】
[化合物の相転移点測定および液晶相の同定]
偏光顕微鏡および示差走査熱量計を使用して、測定した。偏光顕微鏡は(株)ニコン製、およびVHX5000デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス)に、偏光板を取り付けた構成であった。これにホットステージシステムHS1(メトラー・トレド(株)製)を用い、温度を調節した。偏光顕微鏡測定は、クロスニコル下で観察した。接眼および対物レンズの倍率は、それぞれ10x20倍であった。示差走査熱量計はPerkin Elmer社製、Diamond DSCを用いた。測定時、昇温または降温速度は、どちらも測定においても、3℃/minであった。実施例中、Cは結晶、Sはスメクチック相、Nはネマチック相、Iは等方性液体を示し、()はモノトロピック液晶相を示す。
【0120】
[硬化物の垂直配向の確認]
上記偏光顕微鏡および偏光板を2枚設置したバックライト上で観察した。どちらも、クロスニコル条件下で観察した。組成物が垂直配向している場合、偏光顕微鏡観察では暗視野となる。またバックライト上で、サンプルを鉛直上で観察した場合も、光は透過せず黒となる。一方サンプルをバックライトの面から傾けると、リターデーションの発生により、光が透過する。これにより、垂直配向を判断した。
【0121】
[膜厚測定]
硬化物の膜厚は、段差計接触式プロファイラP-17(KLA-TENCOR社製)を用いて測定した。
【0122】
[熱伝導率の測定1] 樹脂のみからなる薄膜サンプルの測定法
NETZSCH(株)製、ナノ秒サーモリフレクタンス法 薄膜熱物性測定装置を用い、サンプルの熱拡散率(α、m2/s)を求めた。測定時は、裏面加熱/表面測温法にて測定した。サンプルの比熱(c、J/(kg))と密度(ρ、g/m3)から、以下の式に従い、熱伝導率(κ、W/m・K)を求めた。
κ=α×c×ρ
このとき、比熱は(株)リガク製DSC型高感度示差走査熱量計Thermo Plus EVO2 DSC-8231で測定した。比重は、新光電子(株)製比電子はかり式比重計DME-220により測定した。
【0123】
[熱伝導率の測定2]
・樹脂のみからなるサンプル;NETZSCH(株)製、LFA467 HyperFlashを用い、サンプルの熱拡散率(α、m2/s)を求めた。熱拡散率は、サンプルの面内方向と厚み方向に対して、それぞれ測定した。
・フィラー入りサンプル;(株)アイフェイズ製、ai-Phase Mobile 1u熱拡散率測定装置により、サンプルの厚み方向の熱拡散率を測定した。また上記と同様にして、サンプルの比熱と密度を測定した。これらの値から、上記と同様にして、熱伝導率を求めた。
【0124】
[エポキシ化合物]
式(1)で表される重合性化合物として、下記式(1-6-1)、式(1-10-1)、および式(1-11-1)~式(1-11-3)、で表される化合物を実施例に使用した。式(1-6-1)は以下の合成例に記載の通り合成した。その他の化合物は、特開2022-8092号公報に従い合成した。比較化合物として、ビスフェノールF型エポキシ化合物の商品名:EPICLON(エピクロン) EXA-830LVP(DIC株式会社)を使用した。この化合物は、DIC株式会社から購入したものを、そのまま使用した。上記式(o-1)で表される化合物も使用した。化合物(o-1)は特許第5862479号公報に従い、合成した。
【0125】
【0126】
[硬化剤]
メチルヒドロキノン(MeHQ)および1,2,4-トリヒドロキシベンゼン(THB)は、東京化成工業(株)製を、精製せずにそのまま使用した。また式(3-2-1)で表される化合物は、特開2022-8092号公報に従い合成した。ビニルヒドロキノンは、J. Org. Chem.、63巻、7298(1998)に従って合成した。さらに、比較化合物であるビスフェノールEは、東京化成工業(株)製を、精製せずにそのまま使用した。
【0127】
[垂直配向剤]
式(p-1)で表される化合物は、特開2022-8092号公報に従い合成した。
【0128】
[合成例1]式(1-6-1)で表される化合物の合成
【0129】
市販の4-ブロモ-2-メチル安息香酸50.0g(233mmol)、塩化チオニル42ml(581mmol)、ジメチルホルムアミド2滴の混合物を、トルエン(230ml)中、3.5時間還流した。塩化チオニル、溶媒を減圧留去し、真空乾燥させることで4-ブロモ-2-メチルベンゾイルクロリドを得た。収量54.0g(収率99%)。
【0130】
4-ブロモ-1-ブテン37.5g(277mmol)をテトラヒドロフラン500mlに溶かしてマグネシウム7.30g(300mmol)の入ったフラスコに1時間かけて加え、4時間室温で撹拌した。4-ブロモ-2-メチルベンゾイルクロリド54.0g(231mmol)、ヨウ化銅(1)6.80g(35.7mmol)、テトラヒドロフラン400mlの混合物を-40℃に冷却し、調製したグリニャール試薬を1時間かけて加えた。その後室温に戻して一晩撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(1L)に加え、セライトろ過を行い、ろ液をトルエン(1L)で抽出した。有機層を純水(1L)で洗浄した後、無水MgSO4で乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた褐色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘプタン=4/1→2/1、容積比)で精製することにより、1-(4-ブロモ-2-メチルフェニル)-4-ペンテン-2―オンを得た。収量49.7g(収率85%)。
【0131】
1-(4-ブロモ-2-メチルフェニル)-ペント-4―エン-2―オン10.0g(39.5mmol)、トリフルオロ酢酸20ml(265mmol)の混合物に、0℃でトリエチルシラン14ml(86.9mmol)を加えた。反応混合物を室温に戻して4時間撹拌した後、ヘプタン(100ml)、純水(80ml)を加え、分液操作を行った。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(80ml)、飽和食塩水(80ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた褐色油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン)で精製することにより、4-ブロモ-1-(4-ブテニル)-2-メチルベンゼンを得た。収量6.32g(収率67%)。
【0132】
4-ブロモ-1-(4-ブテニル)-2-メチルベンゼン7.11g(29.7mmol)をテトラヒドロフラン30mlに溶かして-50℃に冷却し、1.56MのnBuLi-nヘキサン溶液19mlを加え1時間撹拌した。ホウ酸トリイソプロピル7.6ml(32.7mmol)を加えて室温に戻し2時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、2Mの塩酸を30ml加え30分撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(100ml)で抽出し、有機層を純水(80ml)、飽和食塩水(80ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=4/1、容積比)で精製することにより、4-(4-ブテニル)-3-メチルフェニルボロン酸を得た。収量4.10g(収率67%)。
【0133】
4-(4-ブテニル)-3-メチルフェニルボロン酸および化合物(1-6-1-a)を用い、特開2022-8092号公報に記載の実施例4と同様な方法で、化合物(1-6-1-b)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン/トルエン=1/1、体積比)および再結晶(トルエン/エタノール)で精製した。収量0.98g(収率39%)。
【0134】
式(1-6-1-b)で表される化合物を、特開2022-8092号公報と同様な方法で、mCPBA(メタクロロ過安息香酸)を用いて酸化した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=20/1、容積比)および再結晶(エタノール)で精製することにより、化合物(1-6-1)を得た。収量0.67g(収率64%)。
【0135】
相転移点(℃);C・78.9・Sm・108.3N・125.7・I
1H―NMR(ppm、CDCl3);7.61、7.58、7.37、7.30(AA’BB’,8H)、7.20(d,1H,J=8.50Hz)、6.85(d,1H,J=3.00Hz)、6.81(dd,1H,J=8.00,2.50Hz)、4.20-4.13、3.20-3.16、3.01-3.00、2.86-2.77、2.62-2.60、2.53-2.50(m,10H)、2.31(s,3H)、2.14-2.10、2.00-1.88(m,4H)。
【0136】
[実施例1] 組成物の調製および溶解性の確認
合成例1で合成した式(1-6-1)で表される化合物0.5000g(1.300mmol)、およびMeHQ 0.1614g(1.300mmol)をサンプル瓶に入れ、シクロペンタノン(2.78ml)を加え、固形分を溶解し、固形分濃度約20重量%の組成物(組成物1)を得た。この組成物1を0℃に設定した冷蔵庫に一晩静置したところ、沈殿は発生せず、そのままの状態を保っていた。
【0137】
[実施例2]~[実施例16]
エポキシ化合物および硬化剤を以下の表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な方法で、以下に示す固形分濃度約20重量%の組成物溶液(組成物2~組成物16)を調製し、溶解性を確認した。表1において、エポキシ化合物または硬化剤が2種類記載されている欄は、これらが混合されている事を示し、後ろにその割合を、それぞれの化合物のモル比で示した。また、各組成物中のエポキシ化合物と硬化剤とのモル比は、1/1とした。結果を実施例1の結果と併せて表1に示す。
【0138】
表1 組成物およびその溶解性(溶媒シクロペンタノン)
【0139】
[比較例1]~[比較例5]
エポキシ化合物および硬化剤を以下の表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様な方法で、以下に示す固形分濃度約20重量%の組成物溶液(組成物r1~組成物r5)を調製し、溶解性を確認した。表2において、硬化剤が2種類記載されている欄は、これらが混合されている事を示し、後ろにその割合を、それぞれの化合物のモル比で示した。また、各組成物中のエポキシ化合物と硬化剤とのモル比は、1/1とした。結果を表2に示す。
【0140】
表2 組成物およびその溶解性(溶媒シクロペンタノン)
【0141】
[実施17]片面ガラス基板上での垂直配向確認
上記実施例1で調製した組成物1に、硬化促進剤としてイミダゾールを添加した。このときイミダゾールは、固形分重量に対して1重量%の量を加えて硬化用組成物(硬化用組成物17)を得た。この硬化用組成物17をスライドガラスに数滴滴下し、115℃に設定したホットプレート上で、1時間焼成して硬化物(硬化物1)を得た。この硬化物1は、垂直配向している事を確かめた。また偏光顕微鏡観察の結果、観察領域には配向欠陥がないことが確かめられた。さらにこの硬化物1の膜厚を測定した結果、最も厚い領域で23μmであった。
【0142】
[実施18]~[実施例32]
上記実施例17と同様な方法で、組成物2~組成物16を用い、硬化用組成物18~硬化用組成物32を調製した。これら硬化用組成物18~硬化用組成物32を用い、実施例17と同様な方法で、片面ガラス基板上での垂直配向を確認した(硬化物2~硬化物16)。結果を実施例17の結果と併せて表3に示す。
【0143】
【0144】
[比較例6]~[比較例10]
上記実施例17と同様な方法で、組成物r1~組成物r5を用い、硬化用組成物r6~硬化用組成物r10を調製した。これら硬化用組成物r6~硬化用組成物r10を用い、実施例17と同様な方法で、片面ガラス基板上での垂直配向を確認した(硬化物r1~硬化物r5)。結果を表4に示す。
【0145】
【0146】
上記実施例17~実施例32の結果と、比較例6~比較例10の結果から、本願の組成物は、20μm程度の比較的厚い膜であっても非常に高い垂直配向性を有することが分かる。
【0147】
[実施例33] 組成物12から調製した硬化物の片面ガラス基板上での垂直配向確認及び熱伝導率の測定
上記実施例12で調製した組成物12に、硬化促進剤として2-メチルイミダゾールとレベリング剤としてTegоFlоw370を添加した。このとき2-メチルイミダゾールとTegоFlоw370は、固形分重量に対してそれぞれ1重量%、0.3重量%の量を加えて硬化用組成物(硬化用組成物33)を得た。アルミニウムを106nm蒸着した33×27×0.5mmのガラス基板の蒸着面側に、この硬化用組成物33を数滴滴下し、スピンコーターにて塗布した。スピンコートは600rpmで10秒の条件で行った。スピンコートしたガラス基板を115℃の温度に加温したホットプレート上にて120分間焼成し、ガラス基板の蒸着面側の全面に塗布された硬化物(硬化物17)を得た。アルミ面に光を反射させたとき、この硬化物17には白濁が見られなかった。さらにサンプル上部に1/4波長板を置き、同様に観察すると、鉛直方向の観察では光が透過せず、斜めからの観察では若干光が透過した。これらのことから、硬化物17の分子構造は垂直配向していると考えられる。
【0148】
この硬化膜(硬化物17)付き基板を室温まで冷却してから、硬化物17の塗布面にアルミニウムを106nm蒸着した。
【0149】
[比較例11]
上記比較例4で調製した組成物r4に、実施例33と同様に、2-メチルイミダゾールとTegоFlоw370を加えて硬化用組成物(硬化用組成物r11)を得た。この硬化用組成物r11を用い、実施例33と同様にして、硬化物サンプル(硬化物r6)を作製した。
【0150】
このとき、上部にアルミが未蒸着のサンプルを観察すると、アルミ面に光を反射させたとき、白濁は見られなかった。さらにサンプル上部に1/4波長板を置き、同様に観察すると、鉛直方向および斜めからの観察で光は透過しなかった。これらのことから、硬化物r6の分子構造は未配向(等方的)であると考えられる。
【0151】
実施例33および比較例11で作製した硬化物17および硬化物r6の、厚み方向の熱伝導率を、熱伝導率の測定1に記した方法に従って測定した結果を、表5に示す。
【0152】
【0153】
表5に示した通り、本発明の組成物から調製した垂直配向した構造を内部に有する硬化物17は、一般的なエポキシ樹脂を用いた硬化物r6に比べ、熱伝導率が1.7倍高くなることが分かる。
【0154】
[実施例34] 硬化用組成物17から調製した硬化物の熱伝導率の測定
上記硬化用組成物17を、φ2.4cmのアルミ製容器に入れ、115℃の温度に加温したホットプレート上にて120分間保持し、厚みが1.0mmの円形片を取り出して硬化物(硬化物18)を得た。熱伝導率の測定2の方法により測定した。この硬化物18の熱伝導率は、サンプルの面内方向と厚み方向で、それぞれ0.44W/m・Kおよび0.80W/m・Kであった。
【0155】
[実施例35]~[実施例49]
実施例34と同様な方法で、上記硬化用組成物18~硬化用組成物32を用い、硬化物(硬化物19~硬化物33)を得た。これら硬化物19~硬化物33の熱伝導率を測定した結果を、実施例34の結果と併せて表6に示す。
【0156】
【0157】
[比較例12]~[比較例15]
実施例34と同様な方法で、上記硬化用組成物r6~硬化用組成物r9を用い、硬化物(硬化物r7~硬化物r10)を得た。これら硬化物r7~硬化物r10の熱伝導率を測定した結果を、表7に示す。
【0158】
【0159】
実施例34~実施例49および比較例12~比較例15との比較により、本発明の組成物から調製した硬化物18~硬化物33は、サンプルの厚み方向に対して、特に高い熱伝導率を有する事が分かる。
【0160】
[実施例50] フィラー入りサンプルの作製
硬化用組成物17の0.4g、および窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製、商品名:PolarTherm、グレード名:PTX-25)0.92gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、80℃の温度に加温したホットプレート上にて5分間静置した後、このサンプルをステンレス製板中に挟み、150℃の温度に加温した圧縮成形機((株)井元製作所製IMC-19EC)にて20MPaの圧力をかけて45分間保持し、放熱部材としての厚みが523μmの四角片を取り出してフィラー入りサンプル17を得た。このサンプル(フィラー入りサンプル17)の熱伝導率は、20.4W/m・Kであった。
【0161】
[実施例51]および[実施例52]
硬化用組成物17に代え硬化用組成物22および硬化用組成物26を使用した以外は、上記実施例50に記載の方法と同様にして、フィラー入りサンプル22およびフィラー入りサンプル26を調製し、熱伝導率を測定した。結果を実施例50の結果と併せて表8に示す。
【0162】
【0163】
[実施例53]~[実施例55]
硬化用組成物17、硬化用組成物22、および硬化用組成物26の0.4gに対し、酸化アルミニウム粒子(デンカ(株)製、商品名:デンカ球状アルミナ、グレード名:DAW-10)0.92gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、上記実施例50に記載の方法と同様にして、フィラー入りサンプル17AO、フィラー入りサンプル22AO、およびフィラー入りサンプル26AOを調製し、熱伝導率を測定した。結果を表9に示す。
【0164】
【0165】
[実施例56]~[実施例58]
硬化用組成物17、硬化用組成物22、および硬化用組成物26の0.4gに対し、窒化アルミニウム粒子(Thrutek社製;商品名:窒化アルミ(ALN)パウダー、部品番号:AlN300RWおよび(株)トクヤマ製;商品名:高純度窒化アルミニウム(AlN)粉末、グレード名:Hグレードの68重量%対32重量%混合物)0.92gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、上記実施例50に記載の方法と同様にして、フィラー入りサンプル17ALN、フィラー入りサンプル22ALN、およびフィラー入りサンプル26ALNを調製し、熱伝導率を測定した。結果を表10に示す。
【0166】
【0167】
上記のように、本発明に開示された技術は、高い熱伝導率を与える事が分かる。