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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136579
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/04 20060101AFI20230922BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230922BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230922BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230922BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C23C16/04
C23C16/455
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042331
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】東雲 秀司
(72)【発明者】
【氏名】河野 有美子
(72)【発明者】
【氏名】布瀬 暁志
(72)【発明者】
【氏名】池 進一
(72)【発明者】
【氏名】中川 智裕
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030AA24
4K030BA01
4K030BA20
4K030BA38
4K030BA40
4K030BA43
4K030BA44
4K030BB14
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA04
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030JA16
4K030JA18
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AD05
5F045AD06
5F045AE21
5F045AE23
5F045BB08
5F045DC70
5F045DP03
5F045EB08
5F045EE19
5F045EF05
5F045EH14
5F045EH20
5F045EM09
5F045EN04
5F058BA20
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BF07
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BG04
(57)【要約】
【課題】対象膜の形成を阻害するSAMのブロック性能が不十分な場合であっても、対象膜を所望の領域に選択的に形成することが可能な、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、下記(A)~(E)を含む。(A)第1膜と第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備する。(B)対象膜の形成を阻害する、フッ素を含む自己組織化単分子膜を、前記第2膜の表面に形成する。(C)前記(B)の後に、前記対象膜の前駆体ガスを供給する。(D)前記(C)の後に、前記前駆体ガスと反応する反応ガスを前記基板の表面に対して供給することで、前記第1膜の表面に前記対象膜を形成する。(E)前記(C)の後であって前記(D)の前または後に、プラズマ化したガスで、前記自己組織化単分子膜を除去する。前記(B)と前記(C)と前記(D)と前記(E)を1回ずつ含む第1サイクルを複数回繰り返し実施する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、
(B)対象膜の形成を阻害する、フッ素を含む自己組織化単分子膜を、前記第1膜の表面に対して前記第2膜の表面に選択的に形成することと、
(C)前記(B)の後に、前記対象膜の前駆体ガスを前記基板の表面に対して供給することと、
(D)前記(C)の後に、前記前駆体ガスと反応する反応ガスを前記基板の表面に対して供給することで、前記第2膜の表面に対して前記第1膜の表面に選択的に前記対象膜を形成することと、
(E)前記(C)の後であって前記(D)の前または後に、プラズマ化したガスを前記基板の表面に対して供給することで、前記自己組織化単分子膜を除去することと、
を有し、
前記(B)と前記(C)と前記(D)と前記(E)を1回ずつ含む第1サイクルを、複数回繰り返し実施する、成膜方法。
【請求項2】
1回の前記第1サイクルで前記第1膜の表面に形成される前記対象膜の膜厚は1nm以下である、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記(E)は、Hガス、NHガス、Nガス及びArガスから選ばれる少なくとも1つをプラズマ化した状態で前記基板の表面に供給することを含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記(E)を前記(D)の前に実施する場合、前記(D)はプラズマ化した前記反応ガスを前記基板の表面に対して供給することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
(A)第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、
(B)対象膜の形成を阻害する、フッ素を含む自己組織化単分子膜を、前記第1膜の表面に対して前記第2膜の表面に選択的に形成することと、
(C)前記(B)の後に、前記対象膜の前駆体ガスを前記基板の表面に対して供給することと、
(F)前記(C)の後に、前記前駆体ガスと反応する反応ガスをプラズマ化した状態で前記基板の表面に対して供給することで、前記対象膜を形成すると共に前記自己組織化単分子膜を除去することと、
を有し、
前記(B)と前記(C)と前記(F)を1回ずつ含む第2サイクルを、複数回繰り返し実施する、成膜方法。
【請求項6】
1回の前記第2サイクルで前記第1膜の表面に形成される前記対象膜の膜厚は1nm以下である、請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記(F)は、前記反応ガスとして、Hガス、NHガス、及びNガスから選ばれる少なくとも1つをプラズマ化した状態で前記基板の表面に供給することを含む、請求項5又は6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第1膜と前記第2膜は、一方が絶縁膜であり、他方が導電膜である、請求項1~7のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記自己組織化単分子膜の前駆体として、チオール系化合物、有機シラン系化合物、ホスホン酸系化合物、又はイソシアナート系化合物が用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給機構と、
前記処理容器の内部からガスを排出するガス排出機構と、
前記処理容器に対して前記基板を搬入出する搬送機構と、
前記ガス供給機構、前記ガス排出機構及び前記搬送機構を制御し、請求項1~9のいずれか1項に記載の成膜方法を実施する制御部と、
を備える、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)を用いて基板表面の一部における対象膜(第3の膜)の形成を阻害しつつ、基板表面の別の一部に対象膜(第3の膜)を形成する成膜方法が記載されている。特許文献1では、SAMの前駆体としてフッ素を含む有機化合物を用いる。対象膜の形成後に、イオンおよび活性種の少なくともいずれかを照射することで、SAMが励起され、フッ素と炭素を有する活性種が生成される。そして、フッ素と炭素を有する活性種と、SAMに隣接する対象膜の側部とが反応する。これにより、対象膜の側部が揮発性の化合物となって除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-44534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、対象膜の形成を阻害するSAMのブロック性能が不十分な場合であっても、対象膜を所望の領域に選択的に形成することが可能な、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、下記(A)~(E)を含む。(A)第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備する。(B)対象膜の形成を阻害する、フッ素を含む自己組織化単分子膜を、前記第1膜の表面に対して前記第2膜の表面に選択的に形成する。(C)前記(B)の後に、前記対象膜の前駆体ガスを前記基板の表面に対して供給する。(D)前記(C)の後に、前記前駆体ガスと反応する反応ガスを前記基板の表面に対して供給することで、前記第2膜の表面に対して前記第1膜の表面に選択的に前記対象膜を形成する。(E)前記(C)の後であって前記(D)の前または後に、プラズマ化したガスを前記基板の表面に対して供給することで、前記自己組織化単分子膜を除去する。前記(B)と前記(C)と前記(D)と前記(E)を1回ずつ含む第1サイクルを複数回繰り返し実施する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、対象膜の形成を阻害するSAMのブロック性能が不十分な場合であっても、対象膜を所望の領域に選択的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図2図2(A)はステップS101の第1例を示す図であり、図2(B)はステップS102の第1例を示す図であり、図2(C)はステップS103の第1例を示す図であり、図2(D)はステップS104の第1例を示す図である。
図3図3(A)はステップS105の第1例を示す図であり、図3(B)はステップS106の第1例を示す図であり、図3(C)はステップS107の第1例を示す図である。
図4図4は、ステップS104のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図1の第1変形例を示すフローチャートである。
図6図6は、図1の第2変形例を示すフローチャートである。
図7図7(A)はステップS101の第2例を示す図であり、図7(B)はステップS102の第2例を示す図であり、図7(C)はステップS103の第2例を示す図であり、図7(D)はステップS104の第2例を示す図である。
図8図8(A)はステップS105の第2例を示す図であり、図8(B)はステップS106の第2例を示す図であり、図8(C)はステップS107の第2例を示す図である。
図9図9(A)はステップS101の第3例を示す図であり、図9(B)はステップS102の第3例を示す図であり、図9(C)はステップS103の第3例を示す図であり、図9(D)はステップS104の第3例を示す図である。
図10図10(A)はステップS105の第3例を示す図であり、図10(B)はステップS106の第3例を示す図であり、図10(C)はステップS107の第3例を示す図である。
図11図11は、一実施形態に係る成膜装置を示す平面図である。
図12図12は、図11の第1処理部の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
図1図3を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば図1に示すステップS101~S108を有する。なお、成膜方法は、少なくともステップS101、S104~S108を有すればよい。例えば、成膜方法は、ステップS102~S103を有しなくてもよい。また、成膜方法は、図1に示すステップS101~S108以外のステップを有してもよい。
【0010】
図1のステップS101は、図2(A)に示すように、基板1を準備することを含む。基板1は、下地基板10を有する。下地基板10は、例えば、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハ、又はガラス基板である。基板1は、基板表面1aの異なる領域に、絶縁膜11と導電膜12を有する。基板表面1aは、例えば基板1の上面である。絶縁膜11と導電膜12は、下地基板10の上に形成される。下地基板10と絶縁膜11との間、または下地基板10と導電膜12との間には、別の機能膜が形成されてもよい。絶縁膜11は第1膜の一例であり、導電膜12は第2膜の一例である。なお、第1膜の材質と第2膜の材質は、特に限定されない。第1膜が導電膜であって第2膜が絶縁膜であってもよい。
【0011】
絶縁膜11は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。絶縁膜11は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiC膜、SiOC膜、SiCN膜、SiON膜、又はSiOCN膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は通常1:2であるが、本願におけるSiO膜のSiとOの原子比は1:2には限定されない。SiN膜、SiC膜、SiOC膜、SiCN膜、SiON膜、及びSiOCN膜について同様である。絶縁膜11は、基板表面1aに、凹部を有する。凹部は、トレンチ、コンタクトホール又はビアホールである。
【0012】
導電膜12は、例えば絶縁膜11の凹部に充填される。導電膜12は、例えば金属膜である。金属膜は、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、W膜、又はMo膜である。なお、導電膜12は、キャップ膜であってもよい。つまり、図9(A)に示すように、絶縁膜11の凹部には第2導電膜15が埋め込まれ、第2導電膜15を導電膜12が覆ってもよい。第2導電膜15は導電膜12とは異なる金属で形成される。
【0013】
基板1は、基板表面1aに第3膜をさらに有してもよい。第3膜は、例えばバリア膜13である。バリア膜13は、絶縁膜11と導電膜12の間に形成され、導電膜12から絶縁膜11への金属拡散を抑制する。バリア膜13は、特に限定されないが、例えば、TaN膜、又はTiN膜である。ここで、TaN膜とは、タンタル(Ta)と窒素(N)を含む膜という意味である。TaN膜におけるTaとNの原子比は1:1には限定されない。TiN膜について同様である。
【0014】
表1に、絶縁膜11と、導電膜12と、バリア膜13との具体例をまとめて示す。
【0015】
【表1】
【0016】
なお、絶縁膜11と、導電膜12と、バリア膜13との組み合わせは、特に限定されない。
【0017】
図1のステップS102は、図2(B)に示すように、基板表面1aを洗浄することを含む。基板表面1aに存在する汚染物22(図2(A)参照)を除去できる。汚染物22は、例えば金属酸化物と有機物の少なくとも1つを含む。金属酸化物は、例えば導電膜12と大気との反応によって形成される酸化物であり、いわゆる自然酸化膜である。有機物は、例えば炭素を含む堆積物であり、基板1の処理過程で付着する。
【0018】
例えば、ステップS102は、基板表面1aに対して洗浄ガスを供給することを含む。洗浄ガスは、汚染物22の除去効率を向上すべく、プラズマ化してもよい。洗浄ガスは、例えばHガスなどの還元性ガスを含む。還元性ガスは、汚染物22を除去する。ステップS102は、ドライ処理であるが、ウエット処理であってもよい。
【0019】
ステップS102の処理条件の一例を下記に示す。
ガスの流量:200sccm~3000sccm
プラズマ生成用の電源周波数:400kHz~40MHz
プラズマ生成用の電力:50W~1000W
処理時間:1秒~60秒
処理温度:50℃~300℃
処理圧力:10Pa~7000Pa。
【0020】
図1のステップS103は、図2(C)に示すように、導電膜12の表面を酸化することで、酸化膜32を形成することを含む。例えば、ステップS103は、基板表面1aに対して酸素含有ガスを供給することで、酸化膜32を形成することを含む。酸素含有ガスは、Oガス、Oガス、HOガス、NOガス、NOガス及びNOガスから選ばれる少なくとも1つを含む。ステップS103は、ドライ処理であるが、ウエット処理であってもよい。
【0021】
ステップS103の前に汚染物22が除去済みであるので、ステップS103によって所望の膜厚および所望の膜質を有する酸化膜32が得られる。膜質は、膜の表面状態を含む。酸化膜32は、自然酸化膜とは異なり、原料ガスおよび成膜条件によって膜厚および膜質を制御可能である。所望の膜厚および所望の膜質を有する酸化膜32を形成することで、後述のステップS104において導電膜12の表面に緻密な自己組織化単分子膜(SAM)を形成できる。
【0022】
ステップS103の処理条件の一例を下記に示す。
ガスの流量:100sccm~2000sccm
処理時間:10秒~300秒
処理温度:100℃~250℃
処理圧力:200Pa~1200Pa。
【0023】
図1のステップS104は、図2(D)に示すように、フッ素を含むSAM17を、絶縁膜11の表面に対して導電膜12の表面に選択的に形成することを含む。SAM17は、基板1を収容する処理容器内に有機化合物のガスを供給することで形成される。有機化合物は、SAM17の前駆体である。
【0024】
例えばフッ素を含む有機化合物をSAM17の前駆体として用いることで、フッ素を含むSAM17が形成される。なお、図4に示すように、SAM17の前駆体としてフッ素を含まない有機化合物を基板表面1aに供給すること(ステップS104a)と、SAM17をフッ化すること(ステップS104b)と、を実施してもよい。
【0025】
SAM17の前駆体としてフッ素を含まない有機化合物を用いることで、環境保全に貢献できる。フッ素を含まない有機化合物は、フッ素を含む有機化合物に比べて、基板1を収容する処理容器内にほとんど残留しないので、基板1の処理品質の安定性(再現性)を高めることもできる。
【0026】
有機化合物は、例えば、第1官能基と、第1官能基の一端に設けられる第2官能基と、を含む。第1官能基は、炭化水素基または炭化水素基の水素の少なくとも一部をフッ素に置換化したものである。第1官能基は、直鎖であることが好ましい。第1官能基は、アルキル基またはアルキル基の少なくとも一部をフッ素に置換したものであることが好ましい。なお、第1官能基は、二重結合などの不飽和結合を有してもよい。第2官能基は、導電膜12の表面に化学吸着する。
【0027】
SAM17の前駆体としての有機化合物は、特に限定されないが、例えばチオール系化合物である。チオール系化合物は、一般式「R-SH」で表される。Rは、例えば炭化水素基または炭化水素基の水素の少なくとも一部をフッ素に置換したものであり、第1官能基に相当する。SH基が第2官能基に相当する。チオール系化合物の具体例として、CF(CFCFSH(Xは1~16の整数)と、CH(CHCHSH(Xは1~16の整数)が挙げられる。
【0028】
チオール系化合物は、絶縁膜11の表面に比べて、導電膜12の表面に化学吸着しやすい。それゆえ、SAM17は、絶縁膜11の表面に対して、導電膜12の表面に選択的に形成される。SAM17は、絶縁膜11の表面には形成されず、バリア膜13の表面にもほとんど形成されない。
【0029】
SAM17の形成前に酸化膜32が形成される場合、酸化膜32が形成されていない場合に比べて、SAM17の密度を向上でき、後述のステップS105においてSAM17のブロック性能を向上できる。チオール系化合物は酸化膜32を還元しながら化学吸着するので、ステップS104の後に酸化膜32は残っていなくてもよい(図2(D)、図7(D)、図9(D)参照)。
【0030】
なお、SAM17の前駆体は、チオール系化合物には限定されない。例えば、SAM17の前駆体は、有機シラン系化合物、ホスホン酸系化合物またはイソシアナート系化合物であってもよい。有機シラン系化合物は、一般式「R-Si(OCH」または「R-SiCl」で表される。ホスホン酸系化合物は、一般式「R-P(=O)(OH)」で表される。イソシアナート系化合物は、一般式「R-N=C=O」で表される。これらの一般式において、Rは、例えば、炭化水素基または炭化水素基の水素の少なくとも一部をフッ素に置換したものである。
【0031】
ステップS104の処理条件の一例を下記に示す。
有機化合物のガスの流量:50sccm~500sccm
処理時間:10秒~1800秒
処理温度:100℃~350℃
処理圧力:100Pa~14000Pa。
【0032】
図1のステップS105~S106は、図3(A)~図3(B)に示すように、SAM17を用い導電膜12の表面における対象膜18の形成を阻害しつつ、絶縁膜11の表面に対象膜18を形成することを含む。対象膜18は、例えば絶縁膜である。なお、SAM17のブロック性能は完全ではなく、対象膜18の核18BがSAM17の上に堆積することがある。
【0033】
対象膜18は、特に限定されないが、例えばAlO膜、SiO膜、SiN膜、ZrO膜、又はHfO膜等である。ここで、AlO膜とは、アルミニウム(Al)と酸素(O)を含む膜という意味である。AlO膜におけるAlとOの原子比は通常2:3であるが、本願におけるAlO膜のAlとOの原子比は2:3には限定されない。SiO膜、SiN膜、ZrO膜、及びHfO膜について同様である。
【0034】
対象膜18は、例えばALD(Atomoic Layer Deposition)法で形成される。対象膜18をALD法で形成する場合、対象膜18の前駆体ガスと、反応ガスとを基板表面1aに対して交互に供給する。対象膜18の前駆体ガスは、例えば金属元素または半金属元素を含有する。
【0035】
反応ガスは、対象膜18の前駆体ガスと反応することで、対象膜18を形成する。反応ガスは、例えば酸化ガスまたは窒化ガスである。酸化ガスは、前駆体ガスに含まれる金属元素または半金属元素の酸化膜を形成する。窒化ガスは、前駆体ガスに含まれる金属元素または半金属元素の窒化膜を形成する。
【0036】
なお、反応ガスは、還元性ガスであってもよい。還元性ガスは、前駆体ガスに含まれる金属元素または半金属元素を用いて、金属膜または半導体膜を形成する。対象膜18は、金属膜または半導体膜であってもよい。
【0037】
図1のステップS105は、対象膜18の前駆体ガスを基板表面1aに対して供給することを含む。図3(A)に示すように、導電膜12の表面にはSAM17が形成されているので、絶縁膜11の表面に選択的に前駆体ガス18Aが吸着する。
【0038】
ステップS105の処理条件の一例を下記に示す。なお、下記の処理条件において、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスは、AlO膜の前駆体ガスである。
TMAガスの流量:1sccm~300sccm(好ましくは50sccm)
処理時間:0.1秒~2秒
処理温度:100℃~250℃
処理圧力:133Pa~1200Pa。
【0039】
図1のステップS106は、ステップS105(前駆体ガスの供給)の後に、反応ガスを基板表面1aに対して供給することを含む。反応ガスは、対象膜18の前駆体ガス18Aと反応することで、図3(B)に示すように対象膜18を形成する。
【0040】
ステップS106の処理条件の一例を下記に示す。なお、下記の処理条件において、HOガスは、TMAガスと反応することで、AlO膜を形成する。
Oガスの流量:10sccm~200sccm
処理時間:0.1秒~2秒
処理温度:100℃~250℃
処理圧力:133Pa~1200Pa。
【0041】
ところで、図3(A)~図3(B)に示すように、SAM17は対象膜18の形成を阻害するが、SAM17のブロック性能は完全ではなく、対象膜18の核18BはSAM17の上にも堆積しうる。後述するステップS107を挟むことなくステップS105~S106を複数回繰り返し実施すると、対象膜18の核18Bが成長し、対象膜18が導電膜12の上にも形成されてしまう。
【0042】
図1のステップS107は、ステップS105の後に、プラズマ化したガスを基板表面1aに対して供給することで、図3(C)に示すように、SAM17を除去することを含む。プラズマ化するガスは、特に限定されないが、例えばHガス、NHガス、Nガス及びArガスから選ばれる少なくとも1つを含む。プラズマ化したガスは、SAM17を励起させ、SAM17を分解除去する。
【0043】
SAM17がフッ素と炭素を含む場合、SAM17が励起されることで、フッ素と炭素を有する活性種が生成する。SAM17から生成した活性種と、SAM17の上に堆積した対象膜18の核18Bとが反応する。これにより、核18Bが揮発性の化合物となって除去される。核18Bが成長する前に、核18Bを導電膜12の上から除去できる。絶縁膜11の上には、対象膜18が残る。活性種は、SAM17の近傍でのみ生成するからである。
【0044】
ステップS107の処理条件の一例を下記に示す。
ガスの流量:200sccm~3000sccm
プラズマ生成用の電源周波数:400kHz~40MHz
プラズマ生成用の電力:50W~1000W
処理時間:1秒~60秒
処理温度:50℃~300℃
処理圧力:10Pa~7000Pa。
【0045】
図1のステップS108は、第1サイクルC1を設定回数(N回)実施したか否かをチェックすることを含む。第1サイクルC1は、ステップS104(SAMの形成)と、ステップS105(前駆体ガスの供給)と、ステップS106(反応ガスの供給)と、ステップS107(プラズマ化したガスの供給)とを1回ずつ含む。第1サイクルC1は、ステップS103(導電膜の酸化)をも含んでもよい。
【0046】
第1サイクルC1は、例えば同一の処理容器内で複数回繰り返し実施される。同一の処理容器内に各種のガスを所望の順番で供給することで、第1サイクルC1が複数回繰り返し実施される。隣り合うステップの間には、アルゴンガスなどの不活性ガスを処理容器内に供給することで、処理容器内に残存する各種のガスを排出するステップがあってもよい。
【0047】
第1サイクルC1は、ステップS107を、ステップS105の後に含めばよく、図1に示すようにステップS106の後に含んでもよいし、図5に示すようにステップS106の前に含んでもよい。
【0048】
後者の場合(図5の方法の場合)も、前者の場合(図1の方法の場合)と同様に、ステップS107において、プラズマ化したガスがSAM17を励起させることで、フッ素と炭素を有する活性種が生成する。活性種は、SAM17の近傍でのみ生成する。SAM17から生成した活性種と、SAM17に吸着した前駆体ガス18Aとが反応することで、導電膜12の上から前駆体ガス18Aが除去される。活性種はSAM17の近傍で生成するので、絶縁膜11の上には前駆体ガス18Aが吸着したまま残る。その後のステップS106において、反応ガスが前駆体ガス18Aと反応することで、対象膜18が絶縁膜11の表面に選択的に形成される。図5の方法の場合、ステップS106は、好ましくはプラズマ化した反応ガスを基板表面1aに対して供給することを含む。反応ガスは、使用するガス種、使用する条件によって、プラズマ化してもよいし、プラズマ化しなくてもよい。
【0049】
ステップS108の設定回数(N回)は、対象膜18の目標膜厚に応じて設定されるが、例えば20回~80回である。1回の第1サイクルC1で形成される対象膜18の厚みは、1原子レベル~数原子レベルであり、1nm未満である。第1サイクルC1の実施回数が設定回数(N回)に達していない場合(ステップS108、NO)、対象膜18の膜厚が目標膜厚に達していないので、第1サイクルC1が再度実施される。一方、第1サイクルC1の実施回数が設定回数(N回)に達している場合(ステップS108、YES)、対象膜18の膜厚が目標膜厚に達しているので、今回の処理が終了する。
【0050】
本実施形態によれば、第1サイクルC1を複数回繰り返し実施する。第1サイクルC1は、ステップS104(SAMの形成)と、ステップS105(前駆体ガスの供給)と、ステップS106(反応ガスの供給)と、ステップS107(プラズマ化したガスの供給)とを1回ずつ含む。対象膜18を少しずつ積み重ねながら、SAM17の上に堆積する対象膜18の核18Bを、核18Bが成長する前に除去できる。なお、ステップS106とステップS107の順番は逆でもよい(図5参照)。ステップS107の後でステップS106を実施する場合、SAM17の上に吸着した前駆体ガス18Aを、核18Bが生じる前に除去できる。
【0051】
よって、SAM17のブロック性能が不十分な場合であっても、対象膜18を所望の領域に選択的に形成することができる。この効果は、導電膜12がRu膜である場合に顕著に得られる。導電膜12がRu膜である場合、導電膜12がCu膜である場合に比べて、導電膜12の上に形成されるSAM17の密度が低くなりやすく、SAM17のブロック性能が低くなりやすいからである。
【0052】
次に、図6を参照して、図1の変形例について説明する。以下、相違点について説明する。本変形例の成膜方法は、ステップS106~S107に代えて、ステップS109を有する。ステップS109は、ステップS105(前駆体ガスの供給)の後に、前駆体ガス18Aと反応する反応ガスをプラズマ化した状態で基板表面1aに対して供給することで、対象膜18を形成すると共にSAM17を除去することを含む。対象膜18の形成と、SAM17の除去とが同時に進む。よって、スループットを向上できる。
【0053】
ステップS109では、反応ガスとして、例えばHガス、NHガス、及びNガスから選ばれる少なくとも1つを用いる。Hガスが単独で用いられる場合、対象膜18である金属膜または半導体膜の形成と、SAM17の除去とが同時に進む。NHガスまたはNガスが用いられる場合、対象膜18である窒化膜の形成と、SAM17の除去とが同時に進む。プラズマ化した反応ガスは、SAM17を励起させ、SAM17を分解除去する。
【0054】
SAM17がフッ素と炭素を含む場合、SAM17が励起されることで、フッ素と炭素を有する活性種が生成する。SAM17から生成した活性種と、SAM17に吸着した前駆体ガス18Aとが反応することで、導電膜12の表面から前駆体ガス18Aが除去される。活性種はSAM17の近傍で生成するので、絶縁膜11の表面には前駆体ガス18Aが吸着したまま残っており、残っている前駆体ガス18Aと反応ガスが反応することで、対象膜18が絶縁膜11の表面に選択的に形成される。
【0055】
図6のステップS108は、第2サイクルC2を設定回数(N回)実施したか否かをチェックすることを含む。第2サイクルC2は、ステップS104(SAMの形成)と、ステップS105(前駆体ガスの供給)と、ステップS109(プラズマ化した反応ガスの供給)とを1回ずつ含む。第2サイクルC2は、ステップS103(導電膜の酸化)をも含んでもよい。
【0056】
第2サイクルC2は、例えば同一の処理容器内で複数回繰り返し実施される。同一の処理容器内に各種のガスを所望の順番で供給することで、第2サイクルC2が複数回繰り返し実施される。隣り合うステップの間には、アルゴンガスなどの不活性ガスを処理容器内に供給することで、処理容器内に残存する各種のガスを排出するステップがあってもよい。
【0057】
本変形例によれば、第2サイクルC2を複数回繰り返し実施する。第2サイクルC2は、ステップS104(SAMの形成)と、ステップS105(前駆体ガスの供給)と、ステップS109(プラズマ化した反応ガスの供給)とを1回ずつ含む。対象膜18を少しずつ積み重ねながら、SAM17の上に吸着した前駆体ガス18Aを、核18Bが成長する前に除去できる。
【0058】
よって、SAM17のブロック性能が不十分な場合であっても、対象膜18を所望の領域に選択的に形成することができる。この効果は、導電膜12がRu膜である場合に顕著に得られる。導電膜12がRu膜である場合、導電膜12がCu膜である場合に比べて、導電膜12の上に形成されるSAM17の密度が低くなりやすく、SAM17のブロック性能が低くなりやすいからである。
【0059】
次に、図7及び図8を参照して、第1変形例に係る基板1を、図1の方法で処理する場合について説明する。なお、図7(A)に示す基板1を、図5又は図6の方法で処理してもよい。以下、相違点について主に説明する。
【0060】
図7(A)に示すように、基板1は、基板表面1aに、絶縁膜11と導電膜12とバリア膜13に加えて、ライナー膜14を有してもよい。ライナー膜14は、導電膜12とバリア膜13の間に形成される。ライナー膜14は、バリア膜13の上に形成され、導電膜12の形成を支援する。導電膜12は、ライナー膜14の上に形成される。ライナー膜14は、特に限定されないが、例えば、Co膜、又はRu膜である。
【0061】
表2に、絶縁膜11と、導電膜12と、バリア膜13と、ライナー膜14との具体例をまとめて示す。
【0062】
【表2】
【0063】
なお、絶縁膜11と、導電膜12と、バリア膜13と、ライナー膜14との組み合わせは、特に限定されない。
【0064】
本変形例のステップS102は、図7(B)に示すように、汚染物22(図7(A)参照)を除去することを含む。汚染物22は、例えば導電膜12の表面とライナー膜14の表面に存在する。ステップS102によって、導電膜12の表面とライナー膜14の表面が露出する。
【0065】
本変形例のステップS103は、図7(C)に示すように、導電膜12の表面とライナー膜14の表面とを酸化することで、酸化膜32を形成することを含む。これにより、後述のステップS104において導電膜12の表面とライナー膜14の表面とに緻密なSAM17を形成できる。
【0066】
本変形例のステップS104は、図7(D)に示すように、絶縁膜11の表面に対して、導電膜12の表面とライナー膜14の表面とに選択的にSAM17を形成することを含む。SAM17は、絶縁膜11の表面には形成されず、バリア膜13の表面にもほとんど形成されない。
【0067】
本変形例のステップS105~S106は、図8(A)~図8(B)に示すように、SAM17を用い導電膜12の表面とライナー膜14の表面とにおける対象膜18の形成を阻害しつつ、絶縁膜11の表面に対象膜18を形成することを含む。なお、SAM17のブロック性能は完全ではなく、対象膜18の核18BがSAM17の上に堆積することがある。
【0068】
本変形例でも、上記実施形態と同様に、ステップS107を実施することで、図8(C)に示すように、SAM17の上に堆積した対象膜18の核18Bを、核18Bが成長する前に除去できる。
【0069】
次に、図9及び図10を参照して、第2変形例に係る基板1を、図1の方法で処理する場合について説明する。なお、図9(A)に示す基板1を、図5又は図6の方法で処理してもよい。以下、相違点について主に説明する。
【0070】
図9(A)に示すように、基板1は、導電膜12がキャップ膜であってもよい。つまり、図9(A)に示すように、絶縁膜11の凹部には第2導電膜15が埋め込まれ、第2導電膜15を導電膜12が覆ってもよい。第2導電膜15は導電膜12とは異なる金属で形成される。
【0071】
表3に、導電膜(キャップ膜)12と、バリア膜13と、ライナー膜14と、第2導電膜15との具体例をまとめて示す。
【0072】
【表3】
【0073】
なお、絶縁膜11と、導電膜12と、バリア膜13と、ライナー膜14と、第2導電膜15との組み合わせは、特に限定されない。
【0074】
本変形例のステップS102~S107(図9(B)~図9(D)及び図10(A)~図10(C)参照)は、上記第1変形例のステップS102~S107(図7(B)~図7(D)及び図9(A)~図9(C)参照)と同様に行われる。
【0075】
なお、上記実施形態、上記第1変形例、及び上記第2変形例では、絶縁膜11が第1膜に相当し、導電膜12が第2膜に相当するが、第1膜と第2膜の組み合わせは特に限定されない。
【0076】
表4に、SAM17の前駆体がチオール系化合物である場合の、第1膜と第2膜と対象膜18の組み合わせの候補を示す。
【0077】
【表4】
表4に記載の候補は、任意の組み合わせで用いられる。第1膜は絶縁膜であり、第2膜は導電膜であり、第1膜の表面に形成される対象膜18は絶縁膜であることが好ましい。
【0078】
表5に、SAM17の前駆体がホスホン酸系化合物である場合の、第1膜と第2膜と対象膜18の組み合わせの候補を示す。
【0079】
【表5】
表5に記載の候補は、任意の組み合わせで用いられる。第1膜は絶縁膜であり、第2膜は導電膜であり、第1膜の表面に形成される対象膜18は絶縁膜であることが好ましい。
【0080】
次に、図11を参照して、上記の成膜方法を実施する成膜装置100について説明する。図11に示すように、成膜装置100は、第1処理部200Aと、第2処理部200Bと、制御部500とを有する。第1処理部200Aは、図1図5又は図6のステップS102~S103を実施する。第2処理部200Bは、図1又は図5のステップS104~S107(第1サイクルC1)を実施するか、図6のステップS104、S105及びS109(第2サイクルC2)を実施する。第1処理部200Aと、第2処理部200Bとは、同様の構造を有する。従って、第1処理部200Aのみで、図1又は図5のステップS102~S107の全てを実施するか、図6のステップS102~S105及びS109の全てを実施することも可能である。搬送部400は、第1処理部200A、及び第2処理部200Bに対して、基板1を搬送する。制御部500は、第1処理部200A、第2処理部200B及び搬送部400を制御する。
【0081】
搬送部400は、第1搬送室401と、第1搬送機構402とを有する。第1搬送室401の内部雰囲気は、大気雰囲気である。第1搬送室401の内部に、第1搬送機構402が設けられる。第1搬送機構402は、基板1を保持するアーム403を含み、レール404に沿って走行する。レール404は、キャリアCの配列方向に延びている。
【0082】
また、搬送部400は、第2搬送室411と、第2搬送機構412とを有する。第2搬送室411の内部雰囲気は、真空雰囲気である。第2搬送室411の内部に、第2搬送機構412が設けられる。第2搬送機構412は、基板1を保持するアーム413を含み、アーム413は、鉛直方向及び水平方向に移動可能に、且つ鉛直軸周りに回転可能に配置される。第2搬送室411には、異なるゲートバルブGを介して第1処理部200Aと第2処理部200Bとが接続される。
【0083】
更に、搬送部400は、第1搬送室401と第2搬送室411の間に、ロードロック室421を有する。ロードロック室421の内部雰囲気は、図示しない調圧機構により真空雰囲気と大気雰囲気との間で切り換えられる。これにより、第2搬送室411の内部を常に真空雰囲気に維持できる。また、第1搬送室401から第2搬送室411にガスが流れ込むのを抑制できる。第1搬送室401とロードロック室421の間、及び第2搬送室411とロードロック室421の間には、ゲートバルブGが設けられる。
【0084】
制御部500は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)501と、メモリ等の記憶媒体502とを有する。記憶媒体502には、成膜装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部500は、記憶媒体502に記憶されたプログラムをCPU501に実行させることにより、成膜装置100の動作を制御する。制御部500は、第1処理部200Aと第2処理部200Bと搬送部400とを制御し、上記の成膜方法を実施する。
【0085】
次に、成膜装置100の動作について説明する。先ず、第1搬送機構402が、キャリアCから基板1を取り出し、取り出した基板1をロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。次に、ロードロック室421の内部雰囲気が大気雰囲気から真空雰囲気に切り換えられる。その後、第2搬送機構412が、ロードロック室421から基板1を取り出し、取り出した基板1を第1処理部200Aに搬送する。
【0086】
次に、第1処理部200Aが、図1図5又は図6のステップS102~S103を実施する。その後、第2搬送機構412が、第1処理部200Aから基板1を取り出し、取り出した基板1を第2処理部200Bに搬送する。この間、基板1の周辺雰囲気を真空雰囲気に維持できる。
【0087】
次に、第2処理部200Bが、図1又は図5の第1サイクルC1を実施するか、図6の第2サイクルC2を実施する。続いて、制御部500は、第1サイクルC1または第2サイクルC2を設定回数(N回)実施したか否かをチェックする(ステップS108)。第1サイクルC1または第2サイクルC2の実施回数が設定回数(N回)に達していない場合、第2処理部200Bが第1サイクルC1または第2サイクルC2を再度実施する。第1サイクルC1または第2サイクルC2は、同じ処理容器内で複数回繰り返し実施される。
【0088】
一方、第1サイクルC1または第2サイクルC2の実施回数が設定回数(N回)に達している場合、第2搬送機構412が、第2処理部200Bから基板1を取り出し、取り出した基板1をロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。続いて、ロードロック室421の内部雰囲気が真空雰囲気から大気雰囲気に切り換えられる。その後、第1搬送機構402が、ロードロック室421から基板1を取り出し、取り出した基板1をキャリアCに収容する。そして、基板1の処理が終了する。
【0089】
次に、図12を参照して、第1処理部200Aについて説明する。なお、第2処理部200Bは、第1処理部200Aと同様に構成されるので、図示及び説明を省略する。
【0090】
第1処理部200Aは、略円筒状の気密な処理容器210を備える。処理容器210の底壁の中央部には、排気室211が設けられている。排気室211は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室211には、例えば排気室211の側面において、排気配管212が接続されている。
【0091】
排気配管212には、圧力制御器271を介して排気源272が接続されている。圧力制御器271は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管212は、排気源272によって処理容器210内を減圧できるように構成されている。圧力制御器271と、排気源272とで、処理容器210内のガスを排出するガス排出機構270が構成される。
【0092】
処理容器210の側面には、搬送口215が設けられている。搬送口215は、ゲートバルブGによって開閉される。処理容器210内と第2搬送室411(図11参照)との間における基板1の搬入出は、搬送口215を介して行われる。
【0093】
処理容器210内には、基板1を保持する保持部であるステージ220が設けられている。ステージ220は、基板表面1aを上に向けて、基板1を水平に保持する。ステージ220は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材221によって支持されている。ステージ220の表面には、例えば直径が300mmの基板1を載置するための略円形状の凹部222が形成されている。凹部222は、基板1の直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部222の深さは、例えば基板1の厚さと略同一に構成される。ステージ220は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ220は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部222の代わりにステージ220の表面の周縁部に基板1をガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0094】
ステージ220には、例えば接地された下部電極223が埋設される。下部電極223の下方には、加熱機構224が埋設される。加熱機構224は、制御部500(図11参照)からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ220に載置された基板1を設定温度に加熱する。ステージ220の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ220の全体が下部電極として機能するので、下部電極223をステージ220に埋設しなくてよい。ステージ220には、ステージ220に載置された基板1を保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン231が設けられている。昇降ピン231の材料は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン231の下端は、支持板232に取り付けられている。支持板232は、昇降軸233を介して処理容器210の外部に設けられた昇降機構234に接続されている。
【0095】
昇降機構234は、例えば排気室211の下部に設置されている。ベローズ235は、排気室211の下面に形成された昇降軸233用の開口部219と昇降機構234との間に設けられている。支持板232の形状は、ステージ220の支持部材221と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン231は、昇降機構234によって、ステージ220の表面の上方と、ステージ220の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0096】
処理容器210の天壁217には、絶縁部材218を介してガス供給部240が設けられている。ガス供給部240は、上部電極を成しており、下部電極223に対向している。ガス供給部240には、整合器251を介して高周波電源252が接続されている。高周波電源252から上部電極(ガス供給部240)に400kHz~40MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部240)と下部電極223との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマを生成するプラズマ生成部250は、整合器251と、高周波電源252と、を含む。なお、プラズマ生成部250は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。
【0097】
ガス供給部240は、中空状のガス供給室241を備える。ガス供給室241の下面には、処理容器210内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔242が例えば均等に配置されている。ガス供給部240における例えばガス供給室241の上方には、加熱機構243が埋設されている。加熱機構243は、制御部500からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0098】
ガス供給室241には、ガス供給路261を介して、ガス供給機構260が接続される。ガス供給機構260は、ガス供給路261を介してガス供給室241に、図1又は図5のステップS102~S107の少なくとも1つで用いられるガスを供給するか、図6のステップS102~S105及びS109の少なくとも1つで用いられるガスを供給する。ガス供給機構260は、図示しないが、ガスの種類毎に、個別配管と、個別配管の途中に設けられる開閉バルブと、個別配管の途中に設けられる流量制御器とを含む。開閉バルブが個別配管を開くと、供給源からガス供給路261にガスが供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが個別配管を閉じると、供給源からガス供給路261へのガスの供給が停止される。
【0099】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0100】
1 基板
1a 基板表面
11 絶縁膜(第1膜)
12 導電膜(第2膜)
17 SAM(自己組織化単分子膜)
18 対象膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12