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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136636
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ワーク固定治具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/08 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B23Q3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042420
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】503234609
【氏名又は名称】佐々木工機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政仁
(72)【発明者】
【氏名】境 久嘉
(72)【発明者】
【氏名】植田 兼史
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016DA02
(57)【要約】
【課題】簡易かつ固定作業の自由度が高いワーク固定治具を提供する。
【解決手段】ワーク固定治具は、載置面92に対して移動可能なベース部10と、ベース部10内に長手方向に沿って形成され、外部から供給された圧縮空気が流れる第1流路部30と、第1流路部30に設けられ、圧縮空気の流れによってベース部10と載置面92の間の空気を吸引する負圧を発生させることでベース部10を載置面92に吸着させる負圧発生部35と、第1流路部30の負圧発生部35よりも下流側にて第1流路部30と接続し、短手方向に沿ってベース部10を貫通している第2流路部40と、ベース部10の第2流路部40が貫通している一対の側面15a、15bの各々に設けられている2つの排気口42a、42bを備える。
【選択図】図5


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置面に対して固定するためのワーク固定治具であって、
前記載置面に対して移動可能なベース部と、
前記ベース部内に第1方向に沿って形成され、外部から供給された圧縮空気が流れる第1流路部と、
前記第1流路部に設けられ、前記圧縮空気の流れによって前記ベース部と前記載置面の間の空気を吸引する負圧を発生させることで前記ベース部を前記載置面に吸着させる負圧発生部と、
前記第1流路部の前記負圧発生部よりも下流側にて前記第1流路部と接続し、前記第1方向と直交する第2方向に沿って前記ベース部を貫通している第2流路部と、
前記ベース部の前記第2流路部が貫通している一対の側面の各々に設けられている2つの排気口と、
を備える、ワーク固定治具。
【請求項2】
前記2つの排気口にそれぞれ設けられた第1吸音部材を更に備える、
請求項1に記載のワーク固定治具。
【請求項3】
前記第1流路部において前記負圧発生部の下流側に設けられた第2吸音部材を更に備える、
請求項1又は2に記載のワーク固定治具。
【請求項4】
前記ベース部の四方の側面において前記排気口が設けられていない側面は、所定曲率の湾曲面となっている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のワーク固定治具。
【請求項5】
前記ベース部から上方へ突出するように固定された軸部材と、
前記軸部材に連結され、前記ワークを押圧して固定する弾性ブレードと、を更に備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク固定治具。
【請求項6】
前記弾性ブレードは、前記載置面に載置された前記ワークを、前記負圧発生部の吸着力によって押圧して固定する、
請求項5に記載のワーク固定治具。
【請求項7】
前記ベース部から上方へ突出するように固定され、前記ワークを支持可能な支持部材を更に備え、
前記弾性ブレードは、前記支持部材とで前記ワークを挟んだ状態で押圧して固定する、
請求項5に記載のワーク固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
測定装置や工作機械等においては、ワークが定盤等の載置面に固定される。例えば、下記の特許文献1には、テーブルに固定された治具ベースにボルトで固定された治具ブロックを介して、ワークを固定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平02-4734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、治具ブロックの位置を調整する際に、ボルトの取り外し・取り付けを行う必要があり、作業者に煩雑で時間がかかる作業を強いることになる。また、治具ベースに対する治具ブロックの固定位置が制約されるため、固定作業の自由度も制限される。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡易かつ固定作業の自由度が高いワーク固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、ワークを載置面に対して固定するためのワーク固定治具であって、前記載置面に対して移動可能なベース部と、前記ベース部内に第1方向に沿って形成され、外部から供給された圧縮空気が流れる第1流路部と、前記第1流路部に設けられ、前記圧縮空気の流れによって前記ベース部と前記載置面の間の空気を吸引する負圧を発生させることで前記ベース部を前記載置面に吸着させる負圧発生部と、前記第1流路部の前記負圧発生部よりも下流側にて前記第1流路部と接続し、前記第1方向と直交する第2方向に沿って前記ベース部を貫通している第2流路部と、前記ベース部の前記第2流路部が貫通している一対の側面の各々に設けられている2つの排気口と、を備える、ワーク固定治具を提供する。
【0007】
また、前記2つの排気口にそれぞれ設けられた第1吸音部材を更に備えることとしてもよい。
【0008】
また、前記第1流路部において前記負圧発生部の下流側に設けられた第2吸音部材を更に備えることとしてもよい。
【0009】
また、前記ベース部の四方の側面において前記排気口が設けられていない側面は、所定曲率の湾曲面となっていることとしてもよい。
【0010】
また、前記ベース部から上方へ突出するように固定された軸部材と、前記軸部材に連結され、前記ワークを押圧して固定する弾性ブレードと、を更に備えることとしてもよい。
【0011】
また、前記弾性ブレードは、前記載置面に載置された前記ワークを、前記負圧発生部の吸着力によって押圧して固定することとしてもよい。
【0012】
また、前記ベース部から上方へ突出するように固定され、前記ワークを支持可能な支持部材を更に備え、前記弾性ブレードは、前記支持部材とで前記ワークを挟んだ状態で押圧して固定することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易かつ固定作業の自由度が高いワーク固定治具を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一の実施形態に係るワーク固定治具1の構成を説明するための模式図である。
図2】ベース部10を上面から見た模式図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5】空気の流れを説明するための模式図である。
図6】ベース部10の吸着状態を解除する操作例を説明するための模式図である。
図7】ワーク固定治具1の第1使用例を説明するための模式図である。
図8】ワーク固定治具1の第2使用例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ワーク固定治具の概要>
一の実施形態に係るワーク固定治具の概要について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一の実施形態に係るワーク固定治具1の構成を説明するための模式図である。図2は、ベース部10を上面から見た模式図である。なお、図2では、説明の便宜上、軸部材20及び弾性ブレード25が省略されている。
【0017】
ワーク固定治具1は、例えば測定装置の定盤等の載置台90の載置面92に載置された状態で利用される。ワーク固定治具1は、ワークWを載置面92に対して固定するための治具である。ここでは、ワーク固定治具1は、載置面92に吸着された状態で、載置面92に載置されたワークWを押圧して固定する。
【0018】
ワーク固定治具1は、載置台90の載置面92上で移動可能である。載置台90は、ここでは石の定盤が用いられるが、これに限定されず、ワーク固定治具1を使用する上で必要な平面度を有する板状の部材であれば、他の材料から成ってもよい。
【0019】
ワーク固定治具1は、載置面92に吸着されて固定されている吸着状態と、吸着状態が解除されて載置面92上を移動可能な吸着解除状態との間で切り替え可能である。吸着状態は、コンプレッサから供給される圧縮空気を利用して、ワーク固定治具1と載置面92の間の空気(以下、吸引空気とも呼ぶ)を吸引している真空吸着状態である。作業者は、吸着解除状態のワーク固定治具1を載置面92上の所望の位置へ移動後に吸着状態へ切り替えることで、ワーク固定治具1を所望の位置(ワークWを押圧する位置)に位置決めできる。
【0020】
ワーク固定治具1は、図1に示すように、ベース部10と、軸部材20と、スライド部材22と、弾性ブレード25を有する。
ベース部10は、載置面92に吸着可能であると共に、載置面92に対して移動可能な本体部である。ベース部10は、圧縮空気を供給するコンプレッサに供給路80を介して接続されている。ベース部10の内部には、供給されてきた圧縮空気が流れる流路部(後述)が形成されている。ベース部10を平面視した際の形状は、ここでは図2に示すように小判形であるが、これに限定されない。ベース部10は、例えば、円柱体又は直方体形状であってもよい。
【0021】
ベース部10の上面12には、図2に示すように、複数の固定穴13a~13eが形成されている。固定穴13a~13eは、軸部材20を固定するための穴である。一例として、固定穴13a~13eには、軸部材20の下部の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。作業者は、固定穴13a~13eのうちの任意の位置に軸部材20を固定可能である。図1では、軸部材20が固定穴13aに固定されている。
【0022】
ベース部10は、四方の側面として、側面14a、14b、15a、15bを有する。側面14a、14bは、図2に示すように、所定曲率の湾曲面となっている。側面14bには、供給路80が連結されている。側面15a、15bには、ベース部10内を流れる空気を排出させる排気口(図1に示す排気口42a)が形成されている。
【0023】
軸部材20は、ベース部10の上面12から上方へ突出している。軸部材20の下部は、ベース部10に固定されている。
スライド部材22は、軸部材20の軸方向(図1の上下方向)に沿ってスライド可能である。なお、スライド部材22は、軸部材20の周方向に回転可能である。
【0024】
弾性ブレード25は、弾性変形可能な板部材である。弾性ブレード25は、軸部材20にスライド部材22を介して連結されており、図1に示すように撓んだ状態で弾性力を発生させてワークWを押圧してワークWを固定させる。弾性ブレード25は、スライド部材22に固定されており、スライド部材22と共に軸部材20に対してスライド及び回転が可能である。
【0025】
<ベース部の内部構成>
ベース部10の内部構成について、図3図5を参照しながら説明する。
図3は、図1のA-A断面図である。図4は、図3のB-B断面図である。図5は、空気の流れを説明するための模式図である。なお、図5では、ベース部10が載置面92に吸着されている際の空気の流れが示されている。
【0026】
ベース部10の内部には、図3及び図4に示すように、第1流路部30と、凹部32と、連通路33と、負圧発生部35と、第2流路部40と、排気口42a、42bと、吸音部材50、55が設けられている。本実施形態では、吸音部材50が第1吸音部材に該当し、吸音部材55が第2吸音部材に該当する。
【0027】
第1流路部30は、外部から供給された圧縮空気が流れる流路を有する。具体的には、第1流路部30は、図3に示すように供給路80と接続されており、供給路80から流入した圧縮空気が第1流路部30を流れる。第1流路部30は、ベース部10内に長手方向に沿って形成されている。なお、第1流路部30において負圧発生部35の下流側の部分は、図3に示すように下流側に進むにつれてラッパのように直径が徐々に広がる形状となっており、ディフューザとして圧縮空気を拡散させる機能を有する。
【0028】
凹部32は、図4に示すように、ベース部10の載置面92に対向する下面16に形成されている。凹部32は、下面16から所定深さだけ凹んでいる。凹部32は、例えば、下面16の中央側に小判形に形成されている。
【0029】
連通路33は、図4に示すように、凹部32と第1流路部30を連通している孔である。連通路33は、ベース部10内を上下方向に沿って形成されている。連通路33は、凹部32と載置面92の間の空気を、上方の第1流路部30へ向かわせる。
【0030】
負圧発生部35は、図3に示すように、第1流路部30に設けられている。負圧発生部35は、第1流路部30を流れる圧縮空気の流れによって、ベース部10と載置面92の間の空気を吸引する負圧を発生させる。ベース部10と載置面92の間の空気が吸引されることで、吸着力が発生し、ベース部10(具体的には、下面16)が、当該吸着力によって載置面92に吸着される。
【0031】
負圧発生部35は、ここでは、供給路80とベース部10を連結している継手36の下流側に設けられている。継手36は、円筒形状を成しており、圧縮空気が内部を通過する構成となっている。
【0032】
継手36の下流側には、ノズル37が形成されている。ノズル37は、絞った径となっており、継手36内を通過する圧縮空気の流速を大きくする。ノズル37の先端で圧縮空気の流速が大きくなると、ノズル37の先端の周囲の圧力が小さくなって負圧になる。負圧は、ベルヌーイの負圧発生の原理に従い、ノズル37を通過する圧縮空気の流れと直交する方向に発生する。ここでは、ノズル37の出口が連通路33と連通しているため、連通路33からノズル37の出口へ向かう方向に、負圧が発生する。このように、負圧発生部35は、ノズル37の出口近傍で、かつ連通路33と連通している領域である。負圧が発生することで、図5(a)に示すように、凹部32の空気が連通路33を介して第1流路部30へ流れ込み、ベース部10と載置面92の間に吸着力が発生する。発生した吸着力によって、ベース部10が載置面92に吸着される。本実施形態においては、第1流路部30、負圧発生部35及びノズル37が、圧縮空気を利用して真空を発生させる真空エジェクタ38を構成する。
【0033】
第2流路部40は、図3に示すように、第1流路部30の負圧発生部35よりも下流側にて第1流路部30と接続している。第2流路部40は、ベース部10の短手方向に沿ってベース部10を貫通している。すなわち、第2流路部40は、ベース部10の一対の側面15a、15bの間を貫通している。第1流路部30及び第2流路部40は、所謂T字状の流路を成している。このため、第1流路部30を流れる空気は、図5(b)に示すように、第2流路部40の2方向に分かれて流れる。また、第1流路部30及び第2流路部40は、載置面92(ベース部10の下面16)と平行になるように形成されている。
【0034】
排気口42a、42bは、図5(b)に示すように、第2流路部40を流れる空気を外部へ排出させる開口である。排気口42aは、ベース部10の側面15aに設けられ、排気口42bは、ベース部10の側面15bに設けられている。なお、負圧発生部35が発生した負圧によって吸引された吸引空気も、第2流路部40を流れて排気口42a、42bから排出される。このように空気が排気口42a、42bから排出されている際に、ベース部10が載置面92に吸着されている。
【0035】
排気口42a、42bは、閉塞可能となっている。例えば、作業者は、2本の指で排気口42a、42bを閉塞しうる。排気口42a、42bが閉塞されると、空気が排気口42a、42bから排出されなくなり、連通路33を通って凹部32に流れ込む。従って、凹部32の空気も吸引されなくなるので、ベース部10の載置面92への吸着状態が解除される。これにより、作業者は、ベース部10を載置面92上で移動させることができる。
【0036】
図6は、ベース部10の吸着状態を解除する操作例を説明するための模式図である。ここでは、作業者が、ベース部10の側面15a、15bに対向する2本の指95の各々で、排気口42a、42bを閉塞している。これにより、ベース部10の吸着状態が解除される。そして、作業者は、指95で排気口42a、42bを閉塞した状態で、指95が側面15a、15bに接している手を動かすことで、ベース部10を載置面92上で移動させて位置を決めたり、位置を調整したりすることを容易に行える。このため、ベース部10の載置面92に対する移動を、指95を含む手の動きだけでスムーズに行いやすくなる。これにより、従来のワークWの固定作業等のいわゆる段取り作業に比べ、かかる時間が大幅に短縮される。
なおベース部10の側面15a、15bには、指95で把持しやすいように溝(具体的には、長手方向に沿った溝)が形成されていてもよい。この場合には、作業者は、溝に指95を添えてベース部10を把持した状態で持ち運びしやすくなる。また、作業者が、ベース部10の下面16に触れて汚すことを防止できる。
【0037】
吸音部材50は、図3に示すように、排気口42a、42bの各々に設けられている。吸音部材50は、ここでは樹脂製のサイレンサーである。ただし、これに限定されず、吸音部材50は、例えば銅と錫の合金である粒状のブロンズを焼結して固めたブロンズ焼結体であってもよい。このような吸音部材50を排気口42a、42bに設けることで、空気が排気口42a、42bから排出される際の排気音を抑制できる。
【0038】
吸音部材55は、第1流路部30において負圧発生部35の下流側に設けられている。吸音部材55は、吸音部材50と同一の材質から成る。吸音部材50及び吸音部材55を設けることで、第1流路部30及び第2流路部40が吸音部材50、55によって囲まれることなり、より優れた消音効果が発揮される。実験結果によれば、吸音部材50、55を設けない場合には排気音が60dBを超えていたが、吸音部材50、55を設けた場合には排気音が50dBに低下した。排気音を低下させることで、作業者が作業中に排気音により感じるストレスを低減できる。
【0039】
<ワーク固定治具の使用例>
ワーク固定治具1の使用例について、図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、ワーク固定治具1の第1使用例を説明するための模式図である。第1使用例では、載置面92上に大型のワークWが載置されており、複数のワーク固定治具1でワークWを固定している。
【0040】
ここでは、3つのワーク固定治具1が利用され、3つのワーク固定治具1に圧縮空気が供給されているものとする。まず、作業者は、指95で排気口42a、42bを閉塞した状態で、3つのワーク固定治具1のベース部10の側面14aをワークWに突き当て、位置が決まったところで排気口42a、42bの閉塞を解除する。これにより、3つのワーク固定治具1の湾曲面である側面14aがワークWに点接触又は線接触することで、ワークWを載置面92の所望の位置に位置決めできる。
【0041】
次に、作業者は、3つのワーク固定治具1の弾性ブレード25が固定されたスライド部材22を軸部材20に対してスライド及び回転させ、弾性ブレード25をワークWに押圧させる。この際、弾性ブレード25は、載置面92に載置されたワークWを、負圧発生部35による吸着力によって押圧して固定する。すなわち、吸着力が、弾性ブレード25によるワークWの固定をアシストする。この結果、ワークWも載置面92に所望の位置に固定される。
【0042】
なお、上記では、3つのワーク固定治具1の側面14aがワークWに接触していることとしたが、これに限定されず、例えば、一つのワーク固定治具1の長手方向に直線状の側面15a又は側面15bが、ワークWに接触してもよい。この場合にも、複数のワーク固定治具1によってワークWを所望の位置に固定できる。また、これらの固定方法を組み合わせてもよい。
【0043】
図8は、ワーク固定治具1の第2使用例を説明するための模式図である。第1使用例では、ワークWが載置面92に載置されていることとしたが、第2使用例では、複数のワーク固定治具1がワークWを支持しつつ固定している。なお、図8では、一つのワーク固定治具1のみが示されているが、実際には、複数のワーク固定治具1によってワークWを固定支持する。
【0044】
第2使用例において、ワーク固定治具1は、図8に示すように、ワークWを支持する支持部材27を有する。支持部材27は、ベース部10から上方へ突出するようにベース部10に固定されている。具体的には、支持部材27は、ベース部10の固定穴13a~13e(図2)のいずれかに固定されている。第2使用例においては、軸部材20及び支持部材27は、固定穴13a~13eの中からワークWの形状に適した位置の固定穴に固定される。
【0045】
第2使用例において、まず、作業者は、複数のワーク固定治具1の支持部材27によってワークWを支持させる。すなわち、ワークWは、載置面92から浮いた状態で支持されている。複数のワーク固定治具1は、内部で負圧発生部35によって発生した負圧によって、載置面92の所望の位置に吸着固定されている。
【0046】
次に、作業者は、3つのワーク固定治具1の弾性ブレード25が固定されたスライド部材22を軸部材20に対してスライド及び回転させ、弾性ブレード25をワークWに押圧させる。すなわち、弾性ブレード25は、支持部材27とでワークWを挟んだ状態で押圧して固定する。また、弾性ブレード25は、第1使用例とは異なり、ベース部10の上方でワークWを押圧して固定している。
【0047】
第2使用例においては、ベース部10を載置面92に吸着させる吸着力F1と、弾性ブレード25及び支持部材27によってワークWを固定する固定力F2とを、独立させることができる。すなわち、ワークWを、支持部材27、軸部材20及び弾性ブレード25の閉じた力のループの中で固定支持できる。また、弾性ブレード25の押圧位置がベース部10の上方であるため、仮に固定力F2が大きくなったとしても、固定力F2によって吸着状態が解除されることはない。
【0048】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態のワーク固定治具1は、継手36を介して圧縮空気を供給することによりベース部10の内部を流れる圧縮空気を利用して負圧を発生させ、ベース部10を載置面92の任意の位置に容易に吸着固定させることができる。このため、煩雑なボルトの固定作業等が不要となり、作業性が向上すると共に、ワークWの固定作業の自由度が高まる。また、第1流路部30と第2流路部40をT字型のチャンバにし、第2流路部40の両端に排気口42a、42bを設けることで、ベース部10を手に持ち指先で排気口42a、42bを塞ぐ操作がそのまま凹部32内部を負圧(真空圧)から正圧へと切り替えることになる。これにより、目的に応じたワーク固定治具1の移動もしくは離脱操作を容易に行うことができると共に、排気口42a、42bの出口部に設けた吸音部材50により、ノズル37で発生する騒音となる噴流音を静音化できる。
【0049】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0050】
1 ワーク固定治具
10 ベース部
14a、14b 側面
15a、15b 側面
20 軸部材
25 弾性ブレード
27 支持部材
30 第1流路部
35 負圧発生部
40 第2流路部
42a、42b 排気口
50 吸音部材
55 吸音部材
92 載置面
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8