(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136645
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】軽質オレフィン含有ガスの製造装置及び軽質オレフィン含有ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20230922BHJP
C10G 9/00 20060101ALI20230922BHJP
C10B 53/07 20060101ALI20230922BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20230922BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20230922BHJP
C07C 4/22 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C10G1/10
C10G9/00
C10B53/07
C07C11/04
C07C11/06
C07C4/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042433
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 公太
(72)【発明者】
【氏名】半田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 義文
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 正夫
【テーマコード(参考)】
4H006
4H012
4H129
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC91
4H006AD11
4H012HB00
4H129AA03
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC33
4H129CA03
4H129DA03
4H129FA08
4H129NA20
4H129NA22
4H129NA26
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックから生成された熱分解ガスを有効利用すると共に、製造効率を向上させることができる軽質オレフィン含有ガスの製造装置を提供すること。
【解決手段】廃プラスチック熱分解ガスを生成する第1熱分解炉10と、炭化水素原料の熱分解生成物を生成する第2熱分解炉20と、熱分解生成物を熱分解生成ガスと燃料油とに分留する分留塔22と、分留された熱分解生成ガスを冷却する冷却塔24と、冷却された熱分解生成ガス及び廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する圧縮機26と、冷却塔24と圧縮機26とを接続する第2流路L2と、第1熱分解炉10と圧縮機26とを接続するか又は第1熱分解炉10と第2流路L2とを接続する第1流路L1と、生成した圧縮ガスを水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する蒸留塔28と、を備える軽質オレフィン含有ガスの製造装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを熱分解することで廃プラスチック熱分解ガスを生成する第1熱分解炉と、
炭化水素原料を熱分解することで熱分解生成物を生成する第2熱分解炉と、
前記熱分解生成物を、熱分解生成ガスと燃料油とに分留する分留塔と、
分留された前記熱分解生成ガスを冷却する冷却塔と、
冷却された前記熱分解生成ガス及び前記廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する圧縮機と、
前記冷却塔と前記圧縮機とを接続し、前記冷却塔から前記圧縮機まで前記熱分解生成ガスを供給する第2流路と、
前記第1熱分解炉と前記圧縮機とを接続するか、又は前記第1熱分解炉と前記第2流路とを接続し、前記第1熱分解炉から前記圧縮機又は前記第2流路まで前記廃プラスチック熱分解ガスを供給する第1流路と、
生成した前記圧縮ガスを、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する蒸留塔と、を備える、
軽質オレフィン含有ガスの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、
前記第1流路は、前記第1熱分解炉と前記第2流路とを接続し、前記第1熱分解炉から前記第2流路まで前記廃プラスチック熱分解ガスを供給する、
軽質オレフィン含有ガスの製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、
前記第1流路の途中に、前記第1熱分解炉の側から、冷却装置、除塵装置、及び洗浄装置がこの順で配置されている、
軽質オレフィン含有ガスの製造装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、
前記軽質オレフィンガスは、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を含む、
軽質オレフィン含有ガスの製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、
前記廃プラスチックは、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含む、
軽質オレフィン含有ガスの製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、
前記炭化水素原料は、ナフサ、エタン、プロパン、ブタン、灯油、及び軽油の少なくともいずれかを含む、
軽質オレフィン含有ガスの製造装置。
【請求項7】
廃プラスチックを熱分解することで廃プラスチック熱分解ガスを生成する第1工程と、
炭化水素原料を熱分解することで熱分解生成物を生成する第2工程と、
前記熱分解生成物を、熱分解生成ガスと燃料油とに分留する第3工程と、
分留された前記熱分解生成ガスを冷却する第4工程と、
冷却された前記熱分解生成ガス及び前記廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する第5工程と
生成した前記圧縮ガスを、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する第6工程と、を有する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記第1工程を実施した後、かつ前記第5工程を実施する前に、
前記廃プラスチック熱分解ガスを冷却する第7工程と、
前記廃プラスチック熱分解ガスを除塵する第8工程と、
前記廃プラスチック熱分解ガスを洗浄する第9工程と、を実施する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記第7工程と、前記第8工程と、前記第9工程と、をこの順に実施する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記第7工程と、前記第8工程と、を一つの工程でまとめて実施する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記第7工程と、前記第9工程と、を一つの工程でまとめて実施する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記第7工程と、前記第8工程と、前記第9工程と、を一つの工程でまとめて実施する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項13】
請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記軽質オレフィンガスは、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を含む、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項14】
請求項7から請求項13のいずれか一項に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記廃プラスチックは、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含む、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【請求項15】
請求項7から請求項14のいずれか一項に記載の軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、
前記第1工程は、
前記第2工程の実施前に行う、
前記第2工程と同時に実施する、又は
前記第2工程の後、かつ前記第5工程の前に実施する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽質オレフィン含有ガスの製造装置及び軽質オレフィン含有ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは頑丈で腐食性がないことから、投棄された廃プラスチックによる海洋汚染が世界的な課題となっている。品質が均一かつ単一のプラスチックからなる廃プラスチック(例えばペットボトル)については、マテリアルリサイクルが広く実用化されている。しかしながら、多くの廃プラスチックはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、及びポリ塩化ビニル(PVC)を主体として多様なプラスチックが混合した状態で排出されることから、マテリアルリサイクルは困難であるとされている。
また、ケミカルリサイクルを行う設備として、鉄鋼業の高炉及びコークス炉を活用することが検討されている。例えば、鉄鋼業の高炉及びコークス炉を用いて、石炭代替材をガス化する、又は油化する方法が実用化されている。しかしながら、これらの方法で生成される生成物(ガス及び油)は、プラスチック原料であるモノマーには直接リサイクルすることが困難であるとされている。
【0003】
また、ケミカルリサイクルを行う設備として、石油精製プロセス及び石油化学プロセスを活用することが検討されている。
例えば、特許文献1には、廃プラスチック等の原料中の炭素分を選択的に燃焼し、前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化し、前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物を石油精製プロセスおよび石油化学プロセスの少なくとも一方に供給する、リサイクル方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃プラスチックから生成した熱分解ガスを、石油化学プロセスに供給してオレフィン含有ガスを製造する場合、その供給先を最適化することで、廃プラスチックに由来するオレフィンガスの製造効率を向上できることが期待される。
特許文献1には、廃プラスチック等の原料から生成した熱分解ガスを石油化学プロセスに供給する方法が記載されているが、熱分解ガスの供給先について十分な検討が行われていない。
【0006】
本発明の目的は、廃プラスチックから生成された熱分解ガスを有効利用すると共に、製造効率を向上させることができる軽質オレフィン含有ガスの製造装置、及び軽質オレフィン含有ガスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、廃プラスチックを熱分解することで廃プラスチック熱分解ガスを生成する第1熱分解炉と、
炭化水素原料を熱分解することで熱分解生成物を生成する第2熱分解炉と、
前記熱分解生成物を、熱分解生成ガスと燃料油とに分留する分留塔と、
分留された前記熱分解生成ガスを冷却する冷却塔と、
冷却された前記熱分解生成ガス及び前記廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する圧縮機と、
前記冷却塔と前記圧縮機とを接続し、前記冷却塔から前記圧縮機まで前記熱分解生成ガスを供給する第2流路と、
前記第1熱分解炉と前記圧縮機とを接続するか、又は前記第1熱分解炉と前記第2流路とを接続し、前記第1熱分解炉から前記圧縮機又は前記第2流路まで前記廃プラスチック熱分解ガスを供給する第1流路と、
生成した前記圧縮ガスを、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する蒸留塔と、を備える、軽質オレフィン含有ガスの製造装置が提供される。
【0008】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、前記第1流路は、前記第1熱分解炉と前記第2流路とを接続し、前記第1熱分解炉から前記第2流路まで前記廃プラスチック熱分解ガスを供給することが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、前記第1流路の途中に、前記第1熱分解炉の側から、冷却装置、除塵装置、及び洗浄装置がこの順で配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、前記軽質オレフィンガスは、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、前記廃プラスチックは、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置において、前記炭化水素原料は、ナフサ、エタン、プロパン、ブタン、灯油、及び軽油の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の一態様によれば、廃プラスチックを熱分解することで廃プラスチック熱分解ガスを生成する第1工程と、
炭化水素原料を熱分解することで熱分解生成物を生成する第2工程と、
前記熱分解生成物を、熱分解生成ガスと燃料油とに分留する第3工程と、
分留された前記熱分解生成ガスを冷却する第4工程と、
冷却された前記熱分解生成ガス及び前記廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する第5工程と
生成した前記圧縮ガスを、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する第6工程と、を有する、
軽質オレフィン含有ガスの製造方法が提供される。
【0014】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記第1工程を実施した後、かつ前記第5工程を実施する前に、前記廃プラスチック熱分解ガスを冷却する第7工程と、前記廃プラスチック熱分解ガスを除塵する第8工程と、前記廃プラスチック熱分解ガスを洗浄する第9工程と、を実施することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記第7工程と、前記第8工程と、前記第9工程と、をこの順に実施することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記第7工程と、前記第8工程と、を一つの工程でまとめて実施することが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記第7工程と、前記第9工程と、を一つの工程でまとめて実施することが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記第7工程と、前記第8工程と、前記第9工程と、を一つの工程でまとめて実施することが好ましい。
【0019】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記軽質オレフィンガスは、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記廃プラスチックは、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の一態様に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法において、前記第1工程は、前記第2工程の実施前に行う、前記第2工程と同時に実施する、又は前記第2工程の後、かつ前記第5工程の前に実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、廃プラスチックから生成された熱分解ガスを有効利用すると共に、製造効率を向上させることができる軽質オレフィン含有ガスの製造装置、及び軽質オレフィン含有ガスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置の一例の概略図。
【
図2】第2実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置の一例の概略図。
【
図3】第3実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置の一例の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
〔オレフィン含有ガスの製造装置〕
第1実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置(以下、第1実施形態に係る製造装置とも称する)は、廃プラスチックを熱分解することで廃プラスチック熱分解ガスを生成する第1熱分解炉と、炭化水素原料を熱分解することで熱分解生成物を生成する第2熱分解炉と、前記熱分解生成物を、熱分解生成ガスと燃料油とに分留する分留塔と、分留された前記熱分解生成ガスを冷却する冷却塔と、冷却された前記熱分解生成ガス及び前記廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する圧縮機と、前記冷却塔と前記圧縮機とを接続し、前記冷却塔から前記圧縮機まで前記熱分解生成ガスを供給する第2流路と、前記第1熱分解炉と前記圧縮機とを接続するか、又は前記第1熱分解炉と前記第2流路とを接続し、前記第1熱分解炉から前記圧縮機又は前記第2流路まで前記廃プラスチック熱分解ガスを供給する第1流路と、生成した前記圧縮ガスを、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する蒸留塔と、を備える。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置の一例の概略図である。
軽質オレフィン含有ガスの製造装置100は、第1熱分解炉10と、第2熱分解炉20と、分留塔22と、冷却塔24と、圧縮機26と、蒸留塔28と、冷却塔24及び圧縮機26を接続する第2流路L2と、第1熱分解炉10及び第2流路L2を接続する第1流路L1と、備える。蒸留塔28は複数の蒸留塔から構成されている。
製造装置100は、第2熱分解炉20及び分留塔22を接続する流路L21と、分留塔22及び冷却塔24を接続する流路L22と、圧縮機26及び蒸留塔28を接続する流路L23と、を備える。
【0026】
本実施形態に係る製造装置は、例えば、
図1に示す構成を備えることにより、軽質オレフィン含有ガスの製造効率を向上させることができる。その理由は以下のように考えられる。
図1を参照して説明する。
図1に示す製造装置100においては、廃プラスチック熱分解ガスの供給先が、冷却塔24及び圧縮機26の間に配置された第2流路L2である。この第2流路L2の配置は、軽質オレフィンガス等に蒸留する蒸留塔28に近接しており、かつ第2熱分解炉20から離れている。
炭化水素原料の熱分解で生成した熱分解生成物は、第2熱分解炉20から排出された後、分留塔22、冷却塔24、圧縮機26及び蒸留塔28へ流通するところ、廃プラスチック熱分解ガスの供給先が、第2熱分解炉20から離れた位置、かつ蒸留塔28の直前であることで、第2熱分解炉20側にある分留塔22及び冷却塔24の負荷が軽減される。
前述の特許文献1に記載の製造装置の構成を
図1に当てはめると、特許文献1では、廃プラスチック等の熱分解ガスの供給先を、第2熱分解炉20に近接した流路L21としている。このような供給先の場合は、熱分解生成物が、廃プラスチック熱分解ガスと共に、分留塔22、冷却塔24及び圧縮機26を流通するため、第2熱分解炉20から圧縮機26までの区間の圧力損失が大きくなる。
よって、本実施形態に係る製造装置(例えば
図1)によれば、特許文献1に記載の製造装置に比べて、第2熱分解炉から圧縮機までの区間における圧力損失を小さくできる。
前記区間における圧力損失が小さいと、炭化水素原料を熱分解する第2熱分解炉20の輻射管入口圧力(炭化水素分圧)を小さくできるため、目的とするオレフィンの収率を向上させることができる。
また、既存のエチレン装置では、分解炉出口配管(
図1のL21に相当)が比較的高所に設置されているため、廃プラスチック熱分解ガスを分解炉出口配管につなぎこむ(供給する)場合、高所作業が必要となる。これに対し、本実施形態の製造装置100のように、廃プラスチック熱分解ガスを圧縮機26に近接する側につなぎこむ場合、分解炉出口配管よりは低い位置での作業が可能であり、施工が容易となるメリットもある。
【0027】
図1の製造装置100の構成について詳細に説明する。
【0028】
(第1熱分解炉10)
第1熱分解炉10は、廃プラスチックを熱分解することで廃プラスチック熱分解ガスを生成する。廃プラスチックの熱分解反応温度は、通常、580℃以上680℃以下である。炭化水素原料の滞留時間は、通常、15秒以下である。
廃プラスチックは、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0029】
(第1流路L1)
第1流路L1は、第1熱分解炉10と第2流路L2とを接続し、第1熱分解炉10から第2流路L2まで廃プラスチック熱分解ガスを供給する。
図1の場合、第1流路L1は、第1熱分解炉10と第2流路L2の合流部C1とを接続する。
【0030】
(第2熱分解炉20)
炭化水素原料を熱分解することで熱分解生成物を生成する。
炭化水素原料は、ナフサ、エタン、プロパン、ブタン、灯油、及び軽油の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
第2熱分解炉20の運転条件は特に限定されない。炭化水素原料は希釈水蒸気と共に分解される。炭化水素原料の熱分解反応温度は、通常、800℃以上865℃以下である。炭化水素原料の滞留時間は、通常、0.1秒以上0.7秒以下である。
熱分解生成物は、水素、エチレン、プロピレン、C4留分、ガソリン留分、及び燃料油(重質油)等である。
【0031】
(分留塔22)
分留塔22は、熱分解生成物を熱分解生成ガスと燃料油とに分留する。
熱分解生成ガスは、水素、エチレン、プロピレン、C4留分及びガソリン留分を含む。
燃料油は、必要に応じて、ガソリン留分等に分離される。
【0032】
(冷却塔24)
冷却塔24は、分留された熱分解生成ガスを冷却する。
冷却温度は、通常、10℃以上45℃以下である。
【0033】
(圧縮機26)
圧縮機26は、冷却された熱分解生成ガス及び廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する。
図1の場合、圧縮機26には、第2流路L2を流通する熱分解生成ガスと、第1流路L1から第2流路L2へ供給された廃プラスチック熱分解ガスとが供給される。
【0034】
(蒸留塔28)
蒸留塔28は、生成した圧縮ガスを、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する。蒸留塔28は、エチレンとエタンとを蒸留分離する蒸留塔、及びプロピレンとプロパンとを蒸留分離する蒸留塔等、複数の蒸留塔から構成される。
炭化水素留分は、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、C4留分、及びガソリン留分等である。軽質オレフィンガスは、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0035】
(第2流路L2)
第2流路L2は、冷却塔24と圧縮機26とを接続し、冷却塔24から圧縮機26まで熱分解生成ガスを供給する。
図1の場合、第2流路L2は、合流部C1で第1流路L1に接続されている。
【0036】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る製造装置100Aは、第1実施形態に係る製造装置100に対し、冷却装置12、除塵装置14、及び洗浄装置16をさらに備えること以外、第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
【0037】
図2は、第2実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置の一例の概略図である。
製造装置100Aは、第1流路L1の途中に、第1熱分解炉10の側から、冷却装置12、除塵装置14、及び洗浄装置16がこの順で配置されている。
製造装置100Aは、第1熱分解炉10及び冷却装置12を接続する流路L11と、冷却装置12及び除塵装置14を接続する流路L12と、除塵装置14及び洗浄装置16を接続する流路L13と、洗浄装置16及び第2流路L2を接続する流路L14と、を備える。すなわち、第2実施形態に係る第1流路L1は、流路L11、流路L12、流路L13及び流路L14で構成されている。
【0038】
第2実施形態に係る製造装置100Aでは、冷却装置12、除塵装置14、及び洗浄装置16を用いて、廃プラスチック熱分解ガスを冷却、除塵及び洗浄した後に第2流路L2へ供給する。すなわち、製造装置100Aでは、廃プラスチック熱分解ガスの前処理を実施する構成になっている。
廃プラスチック熱分解ガスを前処理すると、その過程で廃プラスチック熱分解ガスの温度が低下する。第1熱分解炉10の出口の廃プラスチック熱分解ガスの温度は約580℃以上680℃以下と高温であるが、圧縮機26は比較的常温に近い。そのため、廃プラスチック熱分解ガスを前処理すると、熱分解生成ガスとの合流部C1(
図2中、第1流路L1と第2流路L2との合流部C1)における温度差(ΔT℃)を小さくでき、熱疲労割れを抑制できる。
また、前処理を実施することで、廃プラスチック熱分解ガス中に含まれる不純物(塩化水素及び灰分(固形物))が低減される。
廃プラスチック熱分解ガス中に塩化水素が含まれると、製造装置100Aの設備の腐食を引き起こしやすい。また、廃プラスチック熱分解ガス中に灰分が含まれると、蒸留塔28の汚れや圧縮機26などの回転機の損傷、及び製造装置100Aの製品品質の悪化等を及ぼし易い。よって、廃プラスチック熱分解ガスの前処理を実施することで、製造装置100Aへの悪影響が生じにくくなる。
【0039】
(冷却装置12、除塵装置14及び洗浄装置16)
冷却装置12、除塵装置14及び洗浄装置16は公知の装置を使用できる。
冷却装置12は、冷却手段を備える。冷却手段としては、例えば冷却塔等が挙げられる。冷却温度は、通常、70℃以下である。
除塵装置14は、除塵手段を備える。除塵手段としては、例えば、ベンチュリ―スクラバー及びジェットスクラバー等が挙げられる。
洗浄装置16は、洗浄手段を備える。洗浄手段としては、例えば苛性ソーダ洗浄塔等が挙げられる。
【0040】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る製造装置100Bは、第1実施形態に係る製造装置100に対し、冷却洗浄装置をさらに備えること以外、第1実施形態と同様である。
第3実施形態では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
【0041】
図3は、第3実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造装置の一例の概略図である。
製造装置100Bは、第1流路L1の途中に、冷却洗浄装置としての冷却除塵塔13が配置されている。
製造装置100Bは、第1熱分解炉10及び冷却除塵塔13を接続する流路L15と、冷却除塵塔13及び第2流路L2を接続する流路L16と、を備える。第3実施形態に係る第1流路L1は、流路L15及び流路L16で構成されている。
【0042】
(冷却除塵塔13(冷却洗浄装置の一例))
冷却除塵塔13のオイルは、通常、ガソリンから重油相当の留分である。オイルの温度は、通常、70℃以下である。
【0043】
〔第4実施形態〕
〔軽質オレフィン含有ガスの製造方法〕
第4実施形態に係る軽質オレフィン含有ガスの製造方法(以下、第4実施形態に係る製造方法とも称する)は、廃プラスチックを熱分解することで廃プラスチック熱分解ガスを生成する第1工程と、炭化水素原料を熱分解することで熱分解生成物を生成する第2工程と、熱分解生成物を、熱分解生成ガスと燃料油とに分留する第3工程と分留された熱分解生成ガスを冷却する第4工程と、冷却された前記熱分解生成ガス及び前記廃プラスチック熱分解ガスを共に圧縮して圧縮ガスを生成する第5工程と生成した圧縮ガスを、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留する第6工程と、を有する。
【0044】
第4実施形態に係る製造方法において、第1工程は、第2工程の実施前に行ってもよいし、第2工程と同時に実施してもよいし、第2工程の後、かつ第5工程の前に実施してもよい。
【0045】
第1実施形態に係る製造装置100を用いた場合、第4実施形態に係る製造方法は、例えば、以下の工程を経て実施される。
【0046】
第1熱分解炉10に廃プラスチックが供給される。廃プラスチックは、所定の運転条件で、熱分解されて廃プラスチック熱分解ガスが生成する(第1工程)。廃プラスチック熱分解ガスは第1流路L1を流通する。
【0047】
第2熱分解炉20に炭化水素原料が供給される。炭化水素原料は、所定の運転条件で、熱分解されて熱分解生成物が生成する(第2工程)。熱分解生成物は流路L21を流通する。
分留塔22に熱分解生成物が供給される。熱分解生成物は、熱分解生成ガスと燃料油とに分留される(第3工程)。熱分解生成ガスは流路L22を流通する。燃料油は、分留塔22から排出される。
冷却塔24に熱分解生成ガスが供給されて冷却される(第4工程)。
冷却された熱分解生成ガスは、第2流路L2を流通し、第2流路L2の途中で第1流路L1から供給された廃プラスチック熱分解ガスと合流部C1で合流する。熱分解生成ガスは、廃プラスチック熱分解ガスととともに圧縮機26に供給される(第5工程)。
圧縮機26で生成した圧縮ガスは、水素及び軽質オレフィンガスを含む複数種の炭化水素留分に蒸留される(第6工程)。
【0048】
〔第5実施形態〕
第5実施形態に係る製造方法(以下、第5実施形態に係る製造方法とも称する)は、第1工程を実施した後、かつ第5工程を実施する前に、廃プラスチック熱分解ガスを冷却する第7工程と、廃プラスチック熱分解ガスを除塵する第8工程と、廃プラスチック熱分解ガスを洗浄する第9工程と、をさらに実施する。
図2の場合、第1工程を実施した後、かつ第5工程を実施する前に、第7工程と、前記第8工程と、前記第9工程と、をこの順に実施する。
【0049】
第2実施形態に係る製造装置100Aを用いた場合、第5実施形態に係る製造方法は、以下の工程以外、第4実施形態と同様に実施される。
【0050】
第1熱分解炉10から排出された廃プラスチック熱分解ガスは、冷却装置12で冷却され(第7工程)、除塵装置14で除塵され(第8工程)、さらに洗浄装置16で洗浄される(第9工程)。洗浄装置16から排出された廃プラスチック熱分解ガスは、流路L14を流通し、第2流路L2へ供給される。
【0051】
〔第6実施形態〕
第6実施形態に係る製造方法(以下、第6実施形態に係る製造方法とも称する)は、第1工程を実施した後、かつ第5工程を実施する前に、廃プラスチック熱分解ガスを冷却する第7工程と、廃プラスチック熱分解ガスを洗浄する第9工程と、を一つの工程でまとめて実施する。
「第7工程と第9工程とを一つの工程でまとめて実施する」とは、1つの装置で第7工程(冷却)及び第9工程(洗浄)を同時に実施することと、1つの装置で第7工程(冷却)と第9工程(洗浄)とを連続して実施することを含む。
図3の場合、冷却除塵塔13(冷却洗浄装置の一例)により廃プラスチック熱分解ガスの冷却及び洗浄を同時に行う。「第7工程と第8工程とを一つの工程でまとめて実施する」及び「第7工程と第8工程と第9工程とを一つの工程でまとめて実施する」についても同様である。
【0052】
第3実施形態に係る製造装置100Bを用いた場合、第6実施形態に係る製造方法は、以下の工程以外、第4実施形態と同様に実施される。
【0053】
第1熱分解炉10から排出された廃プラスチック熱分解ガスを70℃以下に冷却された冷却除塵塔13に通過させる(第7工程及び第9工程を一つの工程でまとめて実施)。これにより、廃プラスチック熱分解ガスから塩化水素等の酸性ガス成分及び灰分が除去される。
【0054】
〔実施形態の変形〕
第1実施形態から第3実施形態に係る製造装置において、第1流路L1が、第1熱分解炉10と第2流路L2とを接続する態様について説明したがこれに限定されない。
例えば、第1流路L1は、第1熱分解炉10と圧縮機26とを接続してもよい。この場合、廃プラスチック熱分解ガスは、第1流路L1から圧縮機26に直接供給される。
第6実施形態では、第7工程と第9工程とを一つの工程でまとめて実施する態様について説明したがこれに限定されない。
例えば、第7工程と第8工程とを一つの工程でまとめて実施してもよいし、第7工程と、第8工程と、第9工程とを一つの工程でまとめて実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の軽質オレフィン含有ガスの製造装置及び製造方法は、軽質オレフィン含有ガスをプラスチック原料として再生できる技術であるため、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…第1熱分解炉、12…冷却装置、13…冷却除塵塔、14…除塵装置、16…洗浄装置、20…第2熱分解炉、22…分留塔、24…冷却塔、26…圧縮機、28…蒸留塔、100,100A,100B…製造装置、C1…合流部、L1…第1流路、L2…第2流路。