(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013666
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230119BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230119BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230119BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
H01L21/205
C23C16/509
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118016
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】大友 洋
(72)【発明者】
【氏名】進藤 崇央
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD23
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
4K030FA03
4K030GA02
4K030KA17
4K030KA18
4K030KA19
4K030KA32
4K030KA46
5F004BB13
5F004BB28
5F004BD04
5F045AA08
5F045DP03
5F045EF05
5F045EH05
(57)【要約】
【課題】上部電極に入射するイオンのエネルギーを増加させることなく、下部電極に入射するイオンのエネルギーを低減させる。
【解決手段】処理容器と、処理容器の内部に設けられた下部電極と、下部電極に対向するよう配置された上部電極と、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するよう構成されたガス供給部と、上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するよう構成された高周波電源と、高周波電源及び前記上部電極の間に設けられ、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって該高周波電源から出力される高周波電圧の電圧波形を整形するよう構成された電圧波形整形部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器の内部に設けられた下部電極と、
前記下部電極に対向するよう配置された上部電極と、
前記上部電極及び前記下部電極の間に処理ガスを供給するよう構成されたガス供給部と、
前記上部電極に高周波電圧を印加することによって前記処理ガスのプラズマを生成するよう構成された高周波電源と、
前記高周波電源及び前記上部電極の間に設けられ、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって該高周波電源から出力される高周波電圧の電圧波形を整形するよう構成された電圧波形整形部と、
を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理ガスを前記処理容器の内部に導入するシャワーヘッドを更に備え、
前記シャワーヘッドは、前記上部電極である、
請求項1に記載されたプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記高周波電源及び前記電圧波形整形部の間に電気的に接続された整合器を更に備える、
請求項1~2の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記処理ガスは、膜の形成に用いられ該膜の原料を前記処理容器内に配置された基板に提供するガスを含む、
請求項1~3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記電圧波形整形部は、変圧器、第1の整流器、及び第2の整流器を有し、
前記変圧器は、一次コイル及び二次コイルを有し、
前記一次コイルの二つの端子の間には、前記高周波電源が電気的に接続され、
前記二次コイルは、直列接続された二つのコイルを有し、
前記二次コイルの二つの端子のそれぞれは、前記第1の整流器のカソード及び前記第2の整流器のカソードのそれぞれに電気的に接続され、
前記二次コイルの前記二つのコイルの接続点は、電気的に接地され、
前記第1の整流器のアノード及び前記第2の整流器のアノードは、前記上部電極に電気的に接続されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記電圧波形整形部は、変圧器及びダイオードブリッジ回路を有し、
前記変圧器は、一次コイル及び二次コイルを有し、
前記一次コイルの二つの端子の間には前記高周波電源が電気的に接続され、
前記ダイオードブリッジ回路は、第1の整流器、第2の整流器、第3の整流器、及び第4の整流器を有し、
前記第1の整流器のカソードは、前記第2の整流器のアノードに電気的に接続され、
前記第1の整流器のアノードは、前記第3の整流器のアノードに電気的に接続され、
前記第2の整流器のカソードは、前記第4の整流器のカソードに電気的に接続され、
前記第3の整流器のカソードは、前記第4の整流器のアノードに電気的に接続され、
前記第1の整流器のカソードは、前記二次コイルを介して、前記第3の整流器のカソードに電気的に接続され、
前記第1の整流器のアノード及び前記第3の整流器のアノードは、前記上部電極に電気的に接続され、
前記第2の整流器のカソード及び前記第4の整流器のカソードは、電気的に接地されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記電圧波形整形部は、ダイオードブリッジ回路を有し、
前記ダイオードブリッジ回路は、第1の整流器、第2の整流器、第3の整流器、及び第4の整流器を有し、
前記第1の整流器のカソードは、前記第2の整流器のアノードに電気的に接続され、
前記第1の整流器のアノードは、前記第3の整流器のアノードに電気的に接続され、
前記第2の整流器のカソードは、前記第4の整流器のカソードに電気的に接続され、
前記第3の整流器のカソードは、前記第4の整流器のアノードに電気的に接続され、
前記高周波電源の二つの端子のそれぞれは、前記第1の整流器のカソード及び前記第3の整流器のカソードのそれぞれに電気的に接続され、
前記第1の整流器のアノード及び前記第3の整流器のアノードは、前記上部電極に電気的に接続され、
前記第2の整流器のカソード及び前記第4の整流器のカソードは、前記下部電極に電気的に接地されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記電圧波形整形部は、変圧器、第1のスイッチング素子、及び第2のスイッチング素子を有し、
前記変圧器は、一次コイル及び二次コイルを有し、
前記一次コイルの二つの端子の間には、前記高周波電源が電気的に接続され、
前記二次コイルは、直列接続された二つのコイルを有し、
前記二次コイルの二つの端子のそれぞれは、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のそれぞれに電気的に接続され、
前記二次コイルの前記二つのコイルの接続点は、電気的に接地され、
前記二次コイルの二つの端子のそれぞれは、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のそれぞれを介して、前記上部電極に電気的に接続され、
前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子は、前記二次コイルから流れる電流を遮断するよう構成されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
処理容器の内部に設けられ、基板が載置される基板載置台を更に備え、
前記基板載置台は、前記下部電極であり、電気的に接地された導体である、
請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記処理容器の内部に設けられ、基板が載置される基板載置台と、
前記基板載置台の外側に設けられた接地電極と、
を更に備え、
前記基板載置台の原料は、絶縁体であり、
前記接地電極は、前記下部電極であり、電気的に接地された導体である、
請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記基板載置台の原料は、セラミックである、
請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
プラズマ処理装置の処理容器の内部に配置された基板にプラズマ処理を施す処理方法であって、
前記プラズマ処理装置の上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給する工程と、
正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって前記プラズマ処理装置の高周波電源から出力される高周波電圧の電圧波形を整形する工程と、
整形後の前記高周波電圧を前記上部電極に印加する工程と、
を有し、
前記処理ガスは、膜の形成に用いられ該膜の原料を前記基板に提供するガスを含む、
処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板に対する処理としてプラズマ処理が多用されている。特許文献1には、基本周波数の高周波の電圧波形の正の電圧成分を低減させたバイアス用の出力波を発生させて、プラズマ処理装置のチャンバ本体に照射されるイオンのエネルギーを低下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上部電極に入射するイオンのエネルギーを増加させることなく、下部電極に入射するイオンのエネルギーを低減させるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、処理容器、下部電極、上部電極、ガス供給部、高周波電源、電圧波形整形部を備える。下部電極は、処理容器の内部に設けられている。上部電極は、下部電極に対向するよう配置されている。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するよう構成されている。高周波電源は、上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するよう構成されている。電圧波形整形部は、高周波電源及び上部電極の間に設けられ、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって高周波電源から出力される高周波電圧の電圧波形を整形するよう構成されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、上部電極に入射するイオンのエネルギーを増加させることなく、下部電極に入射するイオンのエネルギーを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】一例に係る電圧波形整形部の構成を示す図である。
【
図3】上部電極に印加する電圧の整形を説明するための図である。
【
図4】上部電極に印加する電圧の整形を説明するための図である。
【
図5】上部電極に印加する電圧の整形を説明するための図である。
【
図6】他の一例に係る電圧波形整形部の構成を示す図である。
【
図7】他の一例に係る電圧波形整形部の構成を示す図である。
【
図8】他の一例に係る電圧波形整形部の構成を示す図である。
【
図9】他の一例に係る下部電極の構成を示す図である。
【
図10】一つの例示的実施形態に係る処理方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、処理容器、下部電極、上部電極、ガス供給部、高周波電源、電圧波形整形部を備える。下部電極は、処理容器の内部に設けられている。上部電極は、下部電極に対向するよう配置されている。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するよう構成されている。高周波電源は、上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するよう構成されている。電圧波形整形部は、高周波電源及び上部電極の間に設けられ、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって高周波電源から出力される高周波電圧の電圧波形を整形するよう構成されている。
【0010】
正の電圧成分を負の電圧成分に変換する全波整流による電圧波形の整形が行われるので、上部電極に印加する整形後の電圧の負の電圧成分のピークは、当該整形が施されていない電圧(高周波電源が出力する例えば正弦波の電圧)の負の電圧成分のピークと同様となる。このため、上部電極上のシース電圧の増加を抑制しつつ、且つ、下部電極上のシース電圧を低減できる。従って、上部電極を衝撃するイオンのエネルギーの増加の抑制、及び、下部電極に向かって入射するイオンのエネルギーの低減が実現される。
【0011】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、シャワーヘッドを更に備える。シャワーヘッドは、処理ガスを処理容器の内部に導入する。シャワーヘッドは、上部電極である。
【0012】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、整合器を更に備える。整合器は、高周波電源及び電圧波形整形部の間に電気的に接続されている。
【0013】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、膜の形成に用いられ膜の原料を処理容器内に配置された基板に提供するガスを含む。
【0014】
一つの例示的実施形態において、電圧波形整形部は、変圧器、第1の整流器、及び第2の整流器を有する。変圧器は、一次コイル及び二次コイルを有している。一次コイルの二つの端子の間には、高周波電源が電気的に接続されている。二次コイルは、直列接続された二つのコイルを有している。二次コイルの二つの端子のそれぞれは、第1の整流器のカソード及び第2の整流器のカソードのそれぞれに電気的に接続されている。二次コイルの二つのコイルの接続点は、電気的に接地されている。第1の整流器のアノード及び第2の整流器のアノードは、上部電極に電気的に接続されている。
【0015】
一つの例示的実施形態において、電圧波形整形部は、変圧器、及びダイオードブリッジ回路を有する。変圧器は、一次コイル及び二次コイルを有する。一次コイルの二つの端子の間には高周波電源が電気的に接続されている。ダイオードブリッジ回路は、第1の整流器、第2の整流器、第3の整流器及び第4の整流器を有する。第1の整流器のカソードは、第2の整流器のアノードに電気的に接続されている。第1の整流器のアノードは、第3の整流器のアノードに電気的に接続されている。第2の整流器のカソードは、第4の整流器のカソードに電気的に接続されている。第3の整流器のカソードは、第4の整流器のアノードに電気的に接続されている。第1の整流器のカソードは、二次コイルを介して、第3の整流器のカソードに電気的に接続されている。第1の整流器のアノード及び第3の整流器のアノードは、上部電極に電気的に接続されている。第2の整流器のカソード及び第4の整流器のカソードは、電気的に接地されている。
【0016】
一つの例示的実施形態において、電圧波形整形部は、ダイオードブリッジ回路を有する。ダイオードブリッジ回路は、第1の整流器、第2の整流器、第3の整流器、及び第4の整流器を有する。第1の整流器のカソードは、第2の整流器のアノードに電気的に接続されている。第1の整流器のアノードは、第3の整流器のアノードに電気的に接続されている。第2の整流器のカソードは、第4の整流器のカソードに電気的に接続されている。第3の整流器のカソードは、第4の整流器のアノードに電気的に接続されている。高周波電源の二つの端子のそれぞれは、第1の整流器のカソード及び第3の整流器のカソードのそれぞれに電気的に接続されている。第1の整流器のアノード及び第3の整流器のアノードは、上部電極に電気的に接続されている。第2の整流器のカソード及び第4の整流器のカソードは、下部電極に電気的に接地されている。
【0017】
一つの例示的実施形態において、電圧波形整形部は、変圧器、第1のスイッチング素子、及び第2のスイッチング素子を有する。変圧器は、一次コイル及び二次コイルを有する。一次コイルの二つの端子の間には、高周波電源が電気的に接続されている。二次コイルは、直列接続された二つのコイルを有する。二次コイルの二つの端子のそれぞれは、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子のそれぞれに電気的に接続されている。二次コイルの二つのコイルの接続点は、電気的に接地されている。二次コイルの二つの端子のそれぞれは、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子のそれぞれを介して、上部電極に電気的に接続されている。第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子は、二次コイルから流れる電流を遮断するよう構成されている。
【0018】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、基板載置台を更に備える。基板載置台は、処理容器の内部に設けられ、基板が載置される。基板載置台は、下部電極であり、電気的に接地された導体である。
【0019】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、基板載置台と接地電極とを更に備える。基板載置台は、処理容器の内部に設けられ、基板が載置される。接地電極2bは、基板載置台の外側に設けられている。基板載置台の原料は、絶縁体である。接地電極は、下部電極であり、電気的に接地された導体である。
【0020】
一つの例示的実施形態において、基板載置台の原料は、セラミックである。
【0021】
他の例示的実施形態では処理方法が提供される。処理方法は、プラズマ処理装置の処理容器の内部に配置された基板にプラズマ処理を施す処理方法である。処理方法は、工程a、工程b、及び工程cを有する。工程aは、プラズマ処理装置の上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給する。工程bは、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによってプラズマ処理装置の高周波電源から出力される高周波電圧の電圧波形を整形する。工程cは、整形後の高周波電圧を上部電極に印加する。処理ガスは、膜の形成に用いられ該膜の原料を基板に提供するガスを含む。
【0022】
正の電圧成分を負の電圧成分に変換する全波整流による電圧波形の整形が行われるので、上部電極に印加する整形後の電圧の負の電圧成分のピークは、当該整形が施されていない電圧(高周波電源が出力する例えば正弦波の電圧)の負の電圧成分のピークと同様となる。このため、上部電極上のシース電圧の増加を抑制しつつ、且つ、下部電極上のシース電圧を低減できる。従って、上部電極を衝撃するイオンのエネルギーの増加の抑制、及び、下部電極に向かって入射するイオンのエネルギーの低減が実現される。
【0023】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1は一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置100は、基板Wにプラズマ処理を施す。プラズマ処理装置100は、容量結合型のプラズマ処理装置であり得る。基板Wとしては、例えば半導体ウエハを挙げることができるが、これに限定されない。
【0025】
プラズマ処理装置100は、略円筒状の金属製の処理容器1を有している。処理容器1は電気的に接地されている。処理容器1の内部には、基板Wを水平に載置するための基板載置台2が設けられている。基板載置台2は電気的に接地された下部電極を含んでいる。この下部電極は、処理容器1の内部に設けられている。
図1に例示する基板載置台2は、電気的に接地された導体であり、下部電極である。
【0026】
基板載置台2には、プラズマ処理に応じて、加熱機構または冷却機構を有していてもよい。基板載置台2には、基板載置台2の上面に対し突没可能に複数の昇降ピン(図示せず)が挿通されている。昇降機構(図示せず)による複数の昇降ピンの昇降動作によって、基板載置台2に対する基板Wの授受が行われる。
【0027】
処理容器1の上部には、開口が設けられており、開口には絶縁部材9を介してシャワーヘッド10が下部電極である基板載置台2(以下、単に基板載置台2という。)に対向するよう嵌め込まれている。シャワーヘッド10は、導体である。シャワーヘッド10は、高周波電源30から高周波電圧が印加される上部電極であり得る。上部電極であるシャワーヘッド10(以下、単にシャワーヘッド10という。)の全体形状は、円筒状であり得る。シャワーヘッド10は、下部に開口を有する本体部11、及び、本体部11の開口を塞ぐよう設けられたシャワープレート12を有する。本体部11及びシャワープレート12の間の内部空間は、ガス拡散空間を提供する。シャワープレート12には複数のガス吐出孔13が設けられている。
【0028】
シャワーヘッド10にはガス導入孔14が設けられており、ガス供給部20から供給されたプラズマ処理のための処理ガスがガス導入孔14を介してシャワーヘッド10内に導入される。
【0029】
ガス供給部20は、シャワーヘッド10及び基板載置台2の間に処理ガスを供給するよう構成されている。シャワーヘッド10内に導入された処理ガスは、ガス吐出孔13から処理容器1内に導入され、シャワーヘッド10及び基板載置台2の間の空間に供給される。
【0030】
ガス供給部20は、プラズマ処理に必要な処理ガス、プラズマ生成ガス、パージガス等の複数のガスを供給する。処理ガスとしては、実施されるプラズマ処理に応じて適切なものが選択される。例えば、処理ガスは、膜の形成に用いられ膜の原料を基板Wに提供するガスを含み得る。ガス供給部20は、複数のガス供給源及びガス供給配管を有し、ガス供給配管には、バルブ類及びマスフローコントローラといった流量制御器が設けられている。
【0031】
シャワーヘッド10に高周波電源30が電気的に接続されている。高周波電源30は、10kHz~60MHzの高周波電圧を出力するよう構成されている。高周波電源30からシャワーヘッド10に高周波電圧が印加されることによって、シャワーヘッド10及び基板載置台2の間に容量結合プラズマが生成される。
【0032】
整合器32は、高周波電源30及び電圧波形整形部33の間に電気的に接続されている。整合器32は、高周波電源30及び電圧波形整形部33に電気的に接続されている。整合器32は、高周波電源30の内部インピーダンス(又は出力インピーダンス)に負荷インピーダンスを整合させるよう構成されている。
【0033】
電圧波形整形部33は、整合器32及びシャワーヘッド10の間に電気的に接続されている。電圧波形整形部33は、整合器32及びシャワーヘッド10に電気的に接続されている。電圧波形整形部33は、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって高周波電源30から出力される高周波電圧の電圧波形を整形するよう構成された全波整流器である。
【0034】
電圧波形整形部33の構成の一例が、
図2に示されている。なお、
図6~
図9のそれぞれには、電圧波形整形部33の他の構成例が示されている。
【0035】
図2に例示すように、電圧波形整形部33は、変圧器TR1、整流器RF1、及び整流器RF2を有する。変圧器TR1は、一次コイル及び二次コイルを有する。一次コイルは、コイルTRaを有する。二次コイルは、コイルTRb及びコイルTRcを有する。コイルTRaの二つの端子の間には、高周波電源30が電気的に接続されている。二次コイルの二つのコイル(コイルTRb、コイルTRc)は、直列接続されている。二次コイルの二つの端子のそれぞれは、整流器RF1のカソード及び整流器RF2のカソードのそれぞれに電気的に接続されている。換言すれば、整流器RF1のカソードには二次コイルに含まれるコイルTRbが電気的に接続され、整流器RF2のカソードには二次コイルに含まれるコイルTRcが電気的に接続されている。コイルTRb及びコイルTRcの接続点は、電気的に接地されている。整流器RF1のアノード及び整流器RF2のアノードは、シャワーヘッド10に電気的に接続されている。
【0036】
図2に例示する電圧波形整形部33が用いられる場合、プラズマが生成されている状態で、電圧波形整形部33によって高周波電源30から出力される高周波電圧が全波整流される。基板載置台2及びシャワーヘッド10の間を流れる電流は、基板載置台2からシャワーヘッド10に向かう方向AL1の放電パスのみに流れる直流電流となる。方向AL1は、基板載置台2からシャワーヘッド10に向かう方向を示している。
図6、
図7、及び
図8のそれぞれに例示する電圧波形整形部33が用いられる場合にも同様である。
【0037】
図1に戻って説明する。処理容器1の底壁には排気口41が設けられており、排気口41には排気管42を介して排気装置43が接続されている。排気装置43は自動圧力制御バルブ及び真空ポンプを有する。排気装置43によって処理容器1内が排気されるとともに、処理容器1内が予め設定された真空度に保持され得る。
【0038】
図示していないが、処理容器1の側壁には、処理容器1に対して基板Wを搬入出するための搬入出口が設けられている。この搬入出口は、ゲートバルブで開閉するよう構成されている。
【0039】
ガス供給部20のバルブ類及び流量制御器、並びに高周波電源等は、制御部50によって制御される。制御部50は、CPUを有する主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、及び記憶装置とを有している。記憶装置の記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいてプラズマ処理装置100によって行われる各種処理が制御される。特に、制御部50は、プラズマ処理装置100の各構成部を制御することによって、
図10に例示する処理方法MTの各工程を実行する。
【0040】
次に、
図10を参照して、プラズマ処理装置100の処理容器1の内部に配置された基板Wにプラズマ処理を施す処理方法MTについて説明する。まず、ゲートバルブを開にし、搬送装置(図示せず)によって基板Wを搬入出口を介して処理容器1内に搬入し、基板載置台2上に載置して、基板Wを準備する(工程ST1)。搬送装置を退避させた後、ゲートバルブを閉じる。
【0041】
工程ST1に続いて行われる工程ST2では、処理容器1を調圧した後に、プラズマ処理装置100の上部電極(例えばシャワーヘッド10)及び下部電極(例えば基板載置台2)の間に処理ガスを供給する(工程ST2)。
【0042】
工程ST3は、工程ST2に続いて行われる、又は工程ST2と共に行われる。工程ST3では、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって高周波電源30から出力される高周波電圧の電圧波形を整形する(工程ST3)。
【0043】
工程3に続いて行われる工程ST4では、整形後の高周波電圧を上部電極に印加する。
【0044】
従って、シャワーヘッド10及び基板載置台2の間に、高周波電界が形成され容量結合プラズマが生成される。
【0045】
一般的な容量結合型のプラズマ処理装置では、下部電極が電気的に接地されている場合に、プラズマ電位は、上部電極の電位に大きく依存する。上部電極が0Vの瞬間ではプラズマ電位がαVであったものが、上部電極が100Vの瞬間ではプラズマ電位は100+αV程度となり得る。プラズマ中のイオンは基板の表面上のシース電圧(プラズマ電位と基板電位の差分)によって加速され、基板に流入する。プラズマへの投入電力を高くするためには、高周波電源によって出力される正弦波の高周波電圧の振幅をより大きくすることが考えられる。この場合、高周波電源によって出力される高周波電圧のプラス側の部分によってプラズマ電位が引き上げられてシース電圧が高くなる。この結果、基板Wに向かうイオンの加速度が大きくなって基板Wへのイオン衝撃が強くなり得る。
【0046】
これに対し、上記説明したプラズマ処理装置100には整合器32の下流側に電圧波形整形部33が設けられている。電圧波形整形部33は、正の電圧成分を負の電圧成分に変換することによって高周波電源30から出力される高周波電圧の電圧波形を整形する全波整流を行う。電圧波形整形部33による全波整流によって、シャワーヘッド10に印加される高周波電圧において正の電圧成分が負の電圧成分となる。この場合、シャワーヘッド10に印加する整形後の電圧の負の電圧成分のピークは、当該整形が施されていない電圧(高周波電源30が出力する例えば正弦波の電圧)の負の電圧成分のピークと同様となる。このため、特に、プラズマ中のイオンがシャワーヘッド10を衝撃するエネルギーの増加が抑制されると共に、プラズマ中のイオンが基板載置台2及び基板Wを衝撃するエネルギーが低減される。
【0047】
図3、
図4、及び
図5を参照して、シャワーヘッド10に印加する高周波電圧の全波整流の整形による効果について説明する。以下の説明は、
図2、
図6~
図9のそれぞれに示す構成において、同様である。
【0048】
図3、
図4、及び
図5に示す横軸は、何れも、時間(us)を表している。
図3の縦軸は、シャワーヘッド10に印加される電圧(V)を表している。
図4の縦軸は、シャワーヘッド10の表面に形成される第1のシース電圧(V)を表している。
図5の縦軸は、基板Wの表面に形成される第2のシース電圧(V)を表している。
図3~
図5に示す結果はシミュレーションによって得られたものである。
【0049】
波形A1、波形A2、及び波形A3は、全波整流の整形が施されていない高周波電源30から出力される正弦波の高周波電圧がシャワーヘッド10に印加された場合の電圧波形をそれぞれ表している。波形B1、波形B2、及び波形B3は、高周波電源30から出力される正弦波の高周波電圧に電圧波形整形部33による全波整流の整形が施された後の高周波電圧の電圧波形をそれぞれ表している。波形C1、波形C2、及び波形C3は、高周波電源30から出力される正弦波の高周波電圧に半波整流の整形が施された後の高周波電圧の電圧波形をそれぞれ表している。
【0050】
図3を参照する。全波整流による整形後の高周波電圧(波形B1)の負の電圧成分のピークは、正弦波の高周波電圧(波形A1)の負の電圧成分のピークと同様であることがわかる。一方で、全波整流による整形後の高周波電圧(波形B1)の負の電圧成分のピークは、半波整流による整形後の高周波電圧(波形C1)の負の電圧成分のピークよりも低減されていることがわかる。
【0051】
更に、
図4を参照する。全波整流による整形後の波形B1の高周波電圧がシャワーヘッド10に印加された場合の第1のシース電圧(波形B2)のピークは、波形A1の高周波電圧がシャワーヘッド10に印加された場合の第1のシース電圧(波形A2)と同様であることがわかる。一方、波形B2の第1のシース電圧のピークは、半波整流による整形後の高周波電圧(波形C1)がシャワーヘッド10に印加された場合の第1のシース電圧(波形C2)のピークよりも低いことがわかる。
【0052】
更に、
図5を参照する。全波整流による整形後の波形B1の高周波電圧がシャワーヘッド10に印加された場合の第2のシース電圧(波形B3)のピークは、波形A1の高周波電圧がシャワーヘッド10に印加された場合の第2のシース電圧(波形A3)よりも低いことがわかる。一方、波形B3の第2のシース電圧のピークは、半波整流による整形後の高周波電圧(波形C1)がシャワーヘッド10に印加された場合の第2のシース電圧(波形C3)のピークよりも低いことがわかる。
【0053】
このように、高周波電源30から出力される正弦波の高周波電圧が電圧波形整形部33によって全波整流された後の高周波電圧がシャワーヘッド10に印加される。これにより、上部電極上(具体的に基板Wの表面上)のシース電圧の増加を抑制しつつ、且つ、下部電極上(具体的にシャワーヘッド10の表面上)のシース電圧を低減できる。従って、上部電極(シャワーヘッド10)を衝撃するイオンのエネルギーの増加の抑制、及び、下部電極(基板載置台2及び基板W)に向かって入射するイオンのエネルギーの低減が実現される。以上の説明は、
図2の電圧波形整形部33だけでなく、
図6~
図8の各電圧波形整形部33が用いられた場合に同様であり、
図9の基板載置台2及び接地電極2bが用いられた場合にも同様である。
【0054】
図6には、電圧波形整形部33の他の構成例が示されている。
図6に例示されている電圧波形整形部33は、変圧器TR2及びダイオードブリッジ回路DBを有する。変圧器TR2は、一次コイル及び二次コイルを有する。
【0055】
一次コイルは、コイルTRdを有する。コイルTRdの二つの端子の間には高周波電源30が電気的に接続されている。二次コイルは、コイルTReを有する。コイルTReの二つの端子の間にはダイオードブリッジ回路DBが電気的に接続されている。
【0056】
ダイオードブリッジ回路DBは、整流器DOa、整流器DOb、整流器DOc、及び整流器DOdを有する。整流器DOaのカソードは、整流器DObのアノードに電気的に接続されている。整流器DOaのアノードは、整流器DOcのアノードに電気的に接続されている。整流器DObのカソードは、整流器DOdのカソードに電気的に接続されている。整流器DOcのカソードは、整流器DOdのアノードに電気的に接続されている。
【0057】
整流器DOaのカソード及び整流器DObのアノードは、コイルTReを介して、整流器DOcのカソード及び整流器DOdのアノードに電気的に接続されている。整流器DOaのアノード及び整流器DOcのアノードは、シャワーヘッド10に電気的に接続されている。整流器DObのカソード及び整流器DOdのカソードは電気的に接地されている。
【0058】
図7に、電圧波形整形部33の他の構成例が示されている。
図7に例示されている電圧波形整形部33は、ダイオードブリッジ回路DBを有する。ダイオードブリッジ回路DBは、整流器DOa、整流器DOb、整流器DOc、及び整流器DOdを有する。整流器DOaのカソードは、整流器DObのアノードに電気的に接続されている。整流器DOaのアノードは、整流器DOcのアノードに電気的に接続されている。整流器DObのカソードは、整流器DOdのカソードに電気的に接続されている。整流器DOcのカソードは、整流器DOdのアノードに電気的に接続されている。高周波電源30の二つの端子のそれぞれは、整流器DOaのカソード及び整流器DOcのカソードのそれぞれに電気的に接続されている。換言すれば、高周波電源30の二つの端子のそれぞれは、整流器DObのアノード及び整流器DOdのアノードのそれぞれに電気的に接続されている。整流器DOaのアノード及び整流器DOcのアノードは、シャワーヘッド10に電気的に接続されている。整流器DObのカソード及び整流器DOdのカソードは、基板載置台2に電気的に接地されている。
【0059】
図8に、電圧波形整形部33の他の構成例が示されている。
図8に例示されている電圧波形整形部33は、変圧器TR1、スイッチング素子SW1、及びスイッチング素子SW2を有する。変圧器TR1は、一次コイル及び二次コイルを有する。一次コイルは、コイルTRaを有する。二次コイルは、コイルTRb及びコイルTRcを有する。コイルTRaの二つの端子の間には、高周波電源30が電気的に接続されている。二次コイルの二つのコイル(コイルTRb、コイルTRc)は、直列接続されている。二次コイルの二つの端子のそれぞれは、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2のそれぞれに電気的に接続されている。換言すれば、スイッチング素子SW1には二次コイルに含まれるコイルTRbが電気的に接続され、スイッチング素子SW2には二次コイルに含まれるコイルTRcが電気的に接続されている。コイルTRb及びコイルTRcの接続点は、電気的に接地されている。スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は、シャワーヘッド10に電気的に接続されている。二次コイルの二つの端子のそれぞれは、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2のそれぞれを介して、シャワーヘッド10に電気的に接続されている。
【0060】
スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は、電界効果トランジスタ(FET)等であり得る。スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は、二次コイルから流れる電流を遮断するよう構成されている。
【0061】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる例示的実施形態における要素を組み合わせて他の例示的実施形態を形成することが可能である。
【0062】
例えば、基板載置台が導体以外の原料を有する場合が考えられ得る。
図9に示す基板載置台2の原料は、セラミック等の絶縁体であり、例えばAlN等であり得る。基板載置台2は、電気的に接地された静電チャック2aを含む。基板載置台2の外側には接地電極2bが設けられている。接地電極2bは、電気的に接地されている。接地電極2bは、例えば、基板載置台2を囲むよう配置され得る。プラズマが生成されている状態で、電圧波形整形部33によって高周波電源30から出力される高周波電圧が全波整流されると、電流は基板載置台2からシャワーヘッド10に向かう方向AL1(
図2等)の放電パスにのみ流れる直流電流となる。このため、方向AL1の放電パスに絶縁体が存在する場合には方向AL1の放電パスに直流電流は流れない。これに対し、絶縁体の基板載置台2の外側に接地電極2bが設けられている場合には、基板載置台2が回避された方向AL2の新たな放電パスが形成され得る。方向AL2は、接地電極2bからシャワーヘッド10に向かう方向を示している。従って、絶縁体の基板載置台2であっても、プラズマが生成されている状態で接地電極2bからシャワーヘッド10に向かう方向AL2に直流電流を流すことができる。
【0063】
以上の説明から、本開示の種々の例示的実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の例示的実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0064】
100…プラズマ処理装置、10…シャワーヘッド、1…処理容器、2…基板載置台、2b…接地電極、30…高周波電源、32…整合器、33…電圧波形整形部、DB…ダイオードブリッジ回路、DOa…整流器、DOb…整流器、DOc…整流器、DOd…整流器、RF1…整流器、RF2…整流器、MT…処理方法、SW1…スイッチング素子、SW2…スイッチング素子、TR1…変圧器、TR2…変圧器、TRa…コイル、TRb…コイル、TRc…コイル、TRd…コイル、TRd…コイル。