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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136701
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】搬送装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/025 20060101AFI20230922BHJP
   B65H 20/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B65H23/025
B65H20/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042525
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】宮田 剛
【テーマコード(参考)】
3F103
3F104
【Fターム(参考)】
3F103AA01
3F103BA33
3F104AA01
3F104BA02
3F104BA05
3F104BA09
(57)【要約】
【課題】搬送するシートに十分な張力を付与することを課題とする。
【解決手段】ロール紙Rを繰り出して搬送する搬送装置10であって、回転可能および弾性変形可能に設けられた搬送ローラ21と、搬送ローラ21に当接し、搬送ローラ21との間に、ロール紙Rを挟持して搬送する搬送ニップNを形成する加圧ローラ23と、搬送ローラ21に当接する当接ローラ24A,24Bと、当接ローラ24A,24Bをロール紙Rの搬送ニップNにおける搬送方向へ移動させる移動機構30とを備え、当接ローラ24A,24Bの移動により、搬送ローラ21は弾性変形し、その軸方向中央側が端部側よりも変形量が大きくなることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能および弾性変形可能に設けられた搬送ローラと、
前記搬送ローラに当接し、前記搬送ローラとの間に、前記シートを挟持して搬送するニップ部を形成する加圧ローラと、
前記搬送ローラに当接する当接ローラと、
前記当接ローラを、前記シートの前記ニップ部における搬送方向に移動させる移動機構とを備えたシートを搬送する搬送装置であって、
前記当接ローラの前記シートの前記ニップ部における搬送方向への移動により、前記搬送ローラはその軸方向中央側が端部側よりも変形量が大きくなるように弾性変形することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記加圧ローラおよび前記当接ローラが、前記搬送ローラの軸方向に複数設けられる請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記加圧ローラおよび前記当接ローラが、前記搬送ローラの軸方向中央側に一つ設けられる請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
前記移動機構は、
前記当接ローラを保持する保持部材と、
前記保持部材を揺動させ、前記当接ローラを前記搬送方向へ移動させる移動部材とを備える請求項1から3いずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記移動部材は、前記保持部材に当接する偏心カムである請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
前記保持部材は歯部を有し、
前記移動部材は、前記保持部材の歯部と噛み合う歯部を有し、
前記移動部材の歯部の回転により、前記保持部材が揺動し、前記当接ローラを前記搬送方向へ移動させる請求項4記載の搬送装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記移動部材である操作可能なレバー部材と、前記保持部材を位置決めする複数の位置決め部とを有し、
前記レバー部材の操作により、前記保持部材が位置決めされる前記位置決め部を変更することで、前記当接ローラを前記搬送方向へ移動させる請求項4記載の搬送装置。
【請求項8】
前記搬送方向において、前記保持部材の揺動支点が前記搬送ローラと同じ位置に設けられる請求項4から7いずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項に記載の搬送装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙を繰り出して搬送し、その表面にインクを吐出して画像を形成する画像形成装置には、ローラ同士の間に形成されたニップ部により、繰り出したロール紙を挟持した状態でローラが回転し、ロール紙を搬送する搬送装置が設けられる。
【0003】
このような搬送装置では、搬送時のロール紙のシワや波打ちを抑制することが必要になる。また、印刷後のロール紙のカットや印刷ジョブ間のロール紙搬送方向の余白を最小にしたい場合等には、印刷時の搬送方向(以下、順送り方向)とは逆方向(以下、逆送り方向)へロール紙を送る場合もあり、逆送り方向の際にもロール紙のシワや波打ちを抑制することが必要になる。
【0004】
例えば特許文献1(特開2011-46519号公報)の搬送装置では、ロール紙を搬送するレジストローラを加圧するレジスト加圧ローラが設けられる。レジスト加圧ローラは、軸方向に複数の小径小寸のロールを有し、それぞれのロールが外側に傾き可能に設けられる。ロール紙搬送時にロールが外側へ傾くことで、ロール紙に幅方向外側への張力を付与し、順送り時と逆送り時の双方でロール紙のシワや波打ちを抑制する。
【0005】
しかし特許文献1の構成では、それぞれのレジスト加圧ローラに設けられたロールの傾き可能な角度でロール紙に付与する張力の上限値が決定されるため、張力付与の効果が十分でなかったり、張力の細かな調整ができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送するシートに十分な張力を付与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、回転可能および弾性変形可能に設けられた搬送ローラと、前記搬送ローラに当接し、前記搬送ローラとの間に、前記シートを挟持して搬送するニップ部を形成する加圧ローラと、前記搬送ローラに当接する当接ローラと、前記当接ローラを、前記シートの前記ニップ部における搬送方向に移動させる移動機構とを備えたシートを搬送する搬送装置であって、前記当接ローラの前記シートの前記ニップ部における搬送方向への移動により、前記搬送ローラはその軸方向中央側が端部側よりも変形量が大きくなるように弾性変形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送するシートに十分な張力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る搬送装置を示す図である。
図3】搬送ローラを順送り方向へ弾性変形させた状態の断面図である。
図4図3の状態での搬送ローラの弾性変形の様子を示す図である。
図5】搬送ローラを逆送り方向へ弾性変形させた状態の断面図である。
図6図5の状態での搬送ローラの弾性変形の様子を示す図である。
図7】加圧ローラおよび保持ローラの軸方向の配置を示す図である。
図8】単一の加圧ローラおよび保持ローラを配置した変形例を示す図である。
図9】ウォームギヤを用いた搬送装置の変形例を示す断面図である。
図10】レバーを用いた搬送装置の変形例を示す断面図である。
図11図10の実施形態の搬送ローラを順送り方向へ弾性変形させた状態の断面図である。
図12図10の実施形態の搬送ローラを逆送り方向へ弾性変形させた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である
【0012】
図1に示すように、画像形成装置1は、給紙部2と、搬送装置10と、画像形成部3と、巻き取り部4とを備える。
【0013】
給紙部2は給紙ローラ11を有する。給紙ローラ11は、回転により、自身の外周面側に保持するロール紙を下流側へ繰り出して給紙する。
【0014】
搬送装置10は、搬送ローラ21および駆動モータ22などを有する。搬送装置10は、搬送ローラ21の回転により、給紙部2から繰り出されて連続したシート状をなすロール紙Rを、さらに下流側へ搬送する。
【0015】
画像形成部3は、キャリッジ12と、ステー13とを有する。キャリッジ12は、キャリッジ12に設けられた液体吐出ヘッドからインクを吐出してロール紙R表面に画像を形成する。ステー13は、キャリッジ12をロール紙の幅方向に移動可能に保持する。
【0016】
巻き取り部4は巻き取りローラ14を有する。巻き取りローラ14は、回転により、自身の外周面側に画像が形成されたロール紙Rを巻き取っていく。
【0017】
以上の画像形成装置1による画像形成動作では、まず給紙部2から繰り出されたロール紙Rを搬送装置10によりさらに下流側の画像形成位置へ搬送する。画像形成位置において、キャリッジ12がロール紙Rの幅方向へ移動してロール紙Rのロール紙搬送方向の所定の位置に画像を形成し、搬送装置10によりロール紙Rが下流側へ搬送される。これを繰り返すことにより、ロール紙Rの所定の位置に画像が形成される。そして、画像が形成されたロール紙Rは、巻き取りローラ14により巻き取られる。画像形成位置と巻き取り部4との間に乾燥装置を設けてもよい。
【0018】
以上のように本実施形態の搬送装置は、ロール紙を繰り出してシート状の形態で搬送するものであり、このシート状の形態のロール紙が本実施形態の搬送装置における「シート」である。しかし本発明の「シート」はこれに限らない。つまり、本発明の「シート」は、裁断されたシートであってもよいし、他のロール状部材が繰り出されてシート状の形態をしたものであってもよい。このロール状部材の具体例として、塗工紙(コート紙やアート紙など)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、金属箔(銅箔など)、布などが含まれる。また裁断されたシートの具体例として、普通紙の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0019】
次に、上記の搬送装置10について、図2を用いてより詳細に説明する。図2図1の範囲Aの部分の断面図である。
【0020】
図2に示すように、搬送装置10は、搬送ローラ21と、加圧ローラ23と、当接ローラとしての保持ローラ24A、24Bと、移動機構30などを有する。移動機構30は、保持部材としての保持ブラケット25と、移動部材としての偏心カム26とを有する。加圧ローラ23と、保持ローラ24A、24Bと、移動機構30は、搬送ローラ21の軸方向である図2の紙面直交方向に複数設けられる。加圧ローラ23と保持ローラ24A、24Bとは、それぞれ軸方向に対応してそれぞれ同じ数だけ、軸方向の同じ位置に設けられる(図7参照)。この搬送ローラ21の軸方向は、搬送されるロール紙Rの幅方向でもある。
【0021】
加圧ローラ23は、加圧板27により加圧されて搬送ローラ21に押し当てられる。これにより、搬送ローラ21と加圧ローラ23との間に、ニップ部としての搬送ニップNが形成される。
【0022】
搬送ローラ21は弾性変形可能な材料により形成され、保持ローラ24A、24Bによる加圧により弾性変形する。搬送ローラ21は、駆動モータ22(図1参照)の駆動力により回転する。加圧ローラ23は搬送ローラ21の回転により従動回転する。
【0023】
給紙部2(図1参照)から繰り出されたロール紙Rは、ガイド板15によりガイドされて搬送ニップNへ搬送される。搬送装置10は、ロール紙Rを搬送ニップNで挟持して下流側である搬送方向B1へ搬送する。搬送装置10により搬送されるロール紙Rは、搬送ニップNの下流側に配置されたプラテン16に送り出され、キャリッジ1によりインクを吐出される。
【0024】
この搬送方向B1が搬送ニップNにおいてロール紙Rを画像形成工程の下流側へ送り出す順送り方向である。以下、この搬送方向を単に順送り方向とも呼ぶ。また、順送り方向B1と逆方向の矢印B2方向が、逆送り方向B2である。以下この搬送方向と逆方向を単に逆送り方向とも呼ぶ。印刷後のロール紙のカットや印刷ジョブ間の余白を最小にしたい場合に、ロール紙Rを逆送り方向B2へ搬送する。また、この順送り方向B1および逆送り方向B2が、搬送装置10の搬送ニップNにおけるロール紙R(シート)の搬送方向である。
【0025】
搬送ローラ21に対して、それぞれ異なる方向から保持ローラ24A、24Bが当接する。搬送ローラ21は、保持ローラ24A、24B、そして加圧ローラ23により3方向から当接され、その位置決めがなされている。
【0026】
保持ローラ24A、24Bは保持ブラケット25により保持される。保持ブラケット25は、揺動支点25aを中心に揺動可能なように、画像形成装置本体の筐体部17により支持される。筐体部17は搬送ローラ21の軸方向に延在する。特に本実施形態では、揺動支点25aが搬送ローラ21と搬送方向の同じ位置で搬送ローラ21の直下に設けられる。
【0027】
保持ブラケット25は孔部25bを有する。孔部25bには、筐体部17に回転可能に保持された偏心カム26が設けられる。偏心カム26の回転により、偏心カム26はその大径部を保持ブラケット25の内壁面に当接させ、保持ブラケット25を、揺動支点25aを中心に搬送方向へ揺動させる(図2の両矢印W方向参照)。偏心カム26が図2の位置では、偏心カム26は保持ブラケット25に接触しておらず、保持ブラケット25はいずれの方向へも揺動していない。
【0028】
以上の搬送装置10によりロール紙Rを搬送する様子について説明する。まず、順送り時の様子について、図3および図4を用いて説明する。図4は搬送ローラ21を上方から見た図である。
【0029】
図3に示すように、順送り時には、偏心カム26を矢印C1方向へ回転させ、偏心カム26の大径部を保持ブラケット25の図3の左側内壁面に当接させる。これにより、偏心カム26に押圧されて保持ブラケット25が揺動支点25aを中心に図3の左方向へ揺動する。これにより、保持ローラ24A,24Bが矢印D1方向へ移動する。この保持ローラ24A,24Bの移動により、図4に示すように、搬送ローラ21が順送り方向B1へ弾性変形する。保持ローラ24A,24Bは、搬送ローラ21の軸方向に複数設けられる。そして、それぞれの保持ローラ24A,24Bの移動量は異なっており、軸方向中央側の保持ローラ24A,24Bの移動量が、端部側の保持ローラ24A,24Bの移動量よりも大きくなっている。これにより、図4のように、搬送ローラ21はその軸方向Xの中央側が端部側に比べて矢印B1方向へ大きく弾性変形する。つまり、搬送ローラ21を、その軸方向Xの中央側を中心にして順送り方向B1へ大きく撓ませることができる。この搬送ローラ21の軸方向中央側とは、例えば搬送ローラ21の軸方向Xの通紙領域に対応する領域を3等分した際の中央の領域のことであり、軸方向端部側とは両端の領域のことである。
【0030】
この搬送ローラ21の弾性変形により、搬送ローラ21によって順送り方向B1へ搬送されるロール紙Rには、図4に矢印で示すようにその幅方向の外側に向かう張力が付与され、搬送されるロール紙Rの波打ちやシワを抑制できる。
【0031】
またロール紙Rを逆送りする際には、図5に示すように、偏心カム26を矢印C2方向へ回転させ、偏心カム26の大径部を保持ブラケット25の図5の右側内壁面に当接させる。これにより、偏心カム26に押圧されて保持ブラケット25が揺動支点25aを中心に図5の右方向へ揺動する。これにより、保持ローラ24A,24Bが矢印D2方向へ移動する。この保持ローラ24A,24Bの移動により、図6に示すように、搬送ローラ21が逆送り方向B2へ弾性変形する。これにより、搬送ローラ21の軸方向中央側を逆送り方向B2へ大きく撓ませることができる。
【0032】
この搬送ローラ21の弾性変形により、搬送ローラ21によって逆送り方向B1へ搬送されるロール紙Rには、図6に矢印で示すようにその幅方向の外側に向かう張力が付与され、搬送されるロール紙Rの波打ちやシワを抑制できる。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、保持ローラ24A,24Bの移動によって搬送ローラ21を弾性変形させることにより、搬送されるロール紙Rに幅方向外側へ向かう張力を付与し、搬送されるロール紙Rの波打ちやシワを抑制できる。特に本実施形態では、順送り時逆送り時の双方で、ロール紙Rに幅方向外側へ向かう張力を付与できる。
【0034】
また保持ローラ24A,24B、保持ブラケット25、偏心カム26を搬送ローラ21の軸方向に複数設けることにより、それぞれの保持ローラ24A,24Bに異なった量だけ移動させることができ、図4あるいは図6のように、搬送ローラ21が軸方向中央側に向かってその変形量が大きくなるようにすることができる。それぞれの保持ローラ24A,24Bの移動量を変更する方法としては、例えば、それぞれの偏心カム26を異なる駆動モータにより駆動させ、偏心カム26ごとに保持ブラケット25の移動量を調整してもよい。また、それぞれの偏心カム26を共通の駆動モータにより駆動させるとともに、それぞれの偏心カム26の大径部の径を異なった径にすることで、同一の偏心カム26の移動量でそれぞれの保持ブラケット25の移動量を変化させてもよい。
【0035】
またこのように、保持ローラ24A,24Bの移動により搬送ローラ21を弾性変形させる構成とすることで、搬送ローラ21の軸方向の各位置における変形量を細かく調整することが可能である。これにより、例えば部品ごとのばらつきや組みつけ誤差などにより搬送ローラ21の位置ズレが生じた場合でも、目視により保持ローラ24A、24Bを移動させて搬送ローラ21の位置ズレを補正することが可能である。
【0036】
さらに本実施形態では、保持ブラケット25の揺動支点25aが搬送ローラ21と搬送方向の同じ位置に設けられる。より詳しくは、揺動支点25aが搬送ローラ21の軸中心と搬送方向の同じ位置に設けられる。これにより、保持ブラケット25の揺動により保持ローラ24A,24Bが搬送ローラ21を加圧する方向は、搬送方向の成分が支配的になる。つまり、より搬送方向に近い方向へ搬送ローラ21を加圧することができる。従って、搬送ローラ21を搬送方向へ効率よく弾性変形させ、その変形量を精度良く設定できる。
【0037】
また搬送されるシートの種類に応じて搬送ローラ21の変形量を変化させてもよい。例えば薄紙などの剛性の小さいシートでは、搬送ローラ21の変形量を相対的に大きくし、厚紙などの剛性の大きいシートでは、搬送ローラ21の変形量を相対的に小さくする。これにより、シートの種類の特性に応じた適切な張力をシートに付与することができる。なおこの場合、シートの種類に応じて、偏心カム26が保持ブラケット25に当接する部分の径の異なる位置で停止するように構成する。
【0038】
また本実施形態では、図7に示すように、搬送ローラ21の軸方向に複数の加圧ローラ23および保持ローラ24A,24Bを設けるものとしたが、図8に示すように、搬送ローラ21の軸方向中央側に単一の加圧ローラ23および保持ローラ24A,24Bを設ける構成としてもよい。この保持ローラ24A,24Bの移動により、搬送ローラ21の軸方向中央部を弾性変形させ、図4図6のように撓ませることができる。このように単一の加圧ローラ23および保持ローラ24A,24Bを設ける構成とすることで、搬送装置10のコストダウンを図ることができる。一方、加圧ローラ23および保持ローラ24A,24Bを複数設けることで、搬送ローラ21の軸方向の各位置でその搬送方向の変形量を設定できるため、ロール紙Rに対してより適切な張力を付与できる。
【0039】
また、保持ローラ24A,24Bを移動させる移動機構は、本実施形態の構成に限らない。
【0040】
例えば図9に示す実施形態では、移動機構30は、保持ブラケット25と、移動部材としてのウォームギヤ31とを有する。ウォームギヤ31の外周面に設けられた歯部31aが保持ブラケット25の下部に設けられた歯部25cと噛み合っている。ウォームギヤ31の軸部32は筐体部17に固定されている。ウォームギヤ31が軸部32を中心に回転することにより、前述の実施形態と同様、保持ブラケット25をそれぞれの方向へ揺動させることができ、搬送ローラ21をそれぞれの方向へ弾性変形させることができる。従って、搬送するロール紙に適切な張力を付与できる。
【0041】
特に本実施形態では、ウォームギヤにより減速比を稼ぐことができるため、ウォームギヤ31を駆動させる駆動モータなどの駆動源を小型化できる。また歯部25cと歯部31aの噛み合いにより保持ブラケット25の位置を固定できるため、搬送ローラ21の変形量の精度を向上させることができる。
【0042】
また図10に示す実施形態では、移動機構30は、保持ブラケット25と、移動部材としてのレバー部材33とを有する。保持ブラケット25は位置決め部34と位置決め部34を付勢するバネ35とを有する。位置決め部34はバネ35により付勢され、装置本体の筐体部18に当接する。
【0043】
レバー部材33を図10の左方向へ移動させることにより、図11に示すように、位置決め部34を筐体部18の第1凹部18aに位置決めする。これにより、保持ブラケット25を図11の左方向へ移動させ、保持ローラ24A,24Bを矢印D1方向へ移動させる。また、レバー部材33を図10の右方向へ移動させることにより、図12に示すように、位置決め部34を筐体部18の第2凹部18bに位置決めする。これらにより、搬送ローラ21をそれぞれの方向へ弾性変形させることができる。従って、搬送するロール紙に適切な張力を付与できる。
【0044】
本実施形態では、レバー部材33を手動で移動させる。これにより、駆動モータなどの駆動源を省略することができる。ただし、駆動モータなどによりレバー部材33を駆動させてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0046】
本発明の搬送装置を有する画像形成装置は、以上で説明したシリアル型のインクジェットプリンタに限らず、ラインヘッド型であってもよいし、電子写真方式のプリンタであってもよい。また電子写真方式の画像形成装置であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 画像形成装置
10 搬送装置
21 搬送ローラ
23 加圧ローラ
24A、24B 保持ローラ(当接ローラ)
25 保持ブラケット(保持部材)
26 偏心カム(移動部材)
30 移動機構
B1、B2 ニップ部におけるロール紙の搬送方向
N 搬送ニップ(ニップ部)
R ロール紙(シート)
X 搬送ローラの軸方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開2011-46519号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12