(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136707
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ニップ形成ユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G03G15/20 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042543
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩幸
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA16
2H033BA19
2H033BA20
2H033BA21
2H033BA22
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB35
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】分離部材が無端ベルトに接近する位置を確実に規制する。
【解決手段】可撓性の無端ベルト(定着ベルト20)と、無端ベルトの内周面に接触可能に設けられたニップ形成部材(ヒータ22)と、無端ベルトを介してニップ形成部材と圧接してニップを形成する加圧部材(加圧ローラ21)と、無端ベルトとニップ形成部材を有するベルトユニット及び加圧部材を支持する筐体と、を有し、被搬送体(用紙P)がニップを通過して搬送されるニップ形成ユニットにおいて、ニップ形成ユニットは、ニップを通過した被搬送体を無端ベルトから分離させる分離部材(分離板310)を備え、分離部材は無端ベルトに対して接近離反可能に配設され、分離部材の無端ベルトに接近する位置を規制する規制部321a、321bを備え、当該規制部は筐体に設けられている、ことを特徴とする。
【選択図】
図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な可撓性の無端ベルトと、
前記無端ベルトの内周面に接触可能に設けられたニップ形成部材と、
前記無端ベルトを介して前記ニップ形成部材と圧接してニップを形成する加圧部材と、
前記無端ベルトと前記ニップ形成部材を有するベルトユニット及び前記加圧部材を支持する筐体と、を有し、
被搬送体が前記ニップを通過して搬送されるニップ形成ユニットにおいて、
前記ニップを通過した前記被搬送体を前記無端ベルトから分離させる分離部材を備え、当該分離部材は前記無端ベルトに対して接近離反可能に配設され、
前記分離部材の前記無端ベルトに接近する位置を規制する規制部を備え、当該規制部は前記筐体に設けられている、
ことを特徴とするニップ形成ユニット。
【請求項2】
前記規制部は前記筐体と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1のニップ形成ユニット。
【請求項3】
前記筐体は、前記無端ベルトのベルト長手方向の両端部に配置された側板部と、前記ベルト長手方向に延在すると共に前記無端ベルト側に配置された後壁部とを含んで構成されており、
前記規制部は、前記側板部又は前記後壁部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2のニップ形成ユニット。
【請求項4】
前記ニップ形成部材が、前記無端ベルトを加熱するヒータを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項5】
前記無端ベルトが、前記加圧部材の回転により従動回転することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項6】
前記分離部材が、前記無端ベルトに接近する方向に付勢手段で付勢されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項7】
前記分離部材が、前記無端ベルトに接触しない非接触部と、前記無端ベルトに接触することにより前記非接触部と前記無端ベルトとの間隔を所定の大きさに保持する接触部とを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項8】
前記ニップ形成部材が、前記加圧部材に対して、前記ニップが前記加圧部材で加圧される接近位置と前記ニップが脱圧される離反位置との間を移動可能に配設され、前記分離部材が前記規制部で移動規制された状態で前記ニップ形成部材が前記離反位置に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項9】
前記無端ベルトが樹脂の基体を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項10】
前記接触部が弾性体を有することを特徴とする請求項7に記載のニップ形成ユニット。
【請求項11】
前記無端ベルトの径が前記加圧部材の径よりも大きいことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項12】
前記ニップ形成部材が位置固定されると共に、前記加圧部材が前記無端ベルトを介して前記ニップ形成部材と圧接して前記ニップを形成することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項13】
前記無端ベルトは、基材、接着層、表層から構成されており、前記基材と前記表層との間には前記接着層が1層のみであることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項14】
前記ヒータが、前記無端ベルトの両端部を加熱する端部ヒータと中央部を加熱する中央ヒータの少なくとも3つに分割されていることを特徴とする請求項4のニップ形成ユニット。
【請求項15】
前記接触部が前記被搬送体の通過領域外に設けられていることを特徴とする請求項7のニップ形成ユニット。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項のニップ形成ユニットを有し、当該ニップ形成ユニットの前記ニップに前記被搬送体としての記録媒体を通して画像を定着することを特徴とする定着装置。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか1項のニップ形成ユニット又は請求項16の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニップを通過した被搬送体を無端ベルトから分離させる分離部材を備えたニップ形成ユニットと、当該ニップ形成ユニットを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置において、用紙等の記録媒体に形成された画像を定着する定着装置として、無端状のベルトを用いたベルト方式の定着装置が知られている(例えば、特許文献1:特開2013-186394号公報)。
【0003】
特許文献1に開示された定着装置は、定着ベルトに近接配置した分離部材で定着ベルトから用紙を分離する。このような分離部材を使用する場合、定着ベルトと分離部材との間隔が小さ過ぎると、分離部材が定着ベルトに接触してベルトに傷が付きやすくなり、これが異常画像発生の原因になる。
【0004】
また定着ベルトと分離部材との間隔が大き過ぎると、この大きな間隔を用紙が通過して定着ベルトに巻付き、用紙ジャムが発生しやすくなる。したがって、分離部材を定着ベルトに接触しない範囲で、できるだけ定着ベルトに近付ける必要がある。
【0005】
特許文献1の定着装置では、分離部材と定着ベルトとの間に僅かな隙間を保持するため、分離部材の両端部であって被搬送体の通過領域外の位置に、定着ベルトの周面に接触する接触部を設けている。また、定着ベルトの両端部を摺動可能に支持するフランジの一部に、分離部材が定着ベルトに接近しすぎるのを規制する規制部を設けている。
【0006】
被搬送体のジャム処理等において、分離部材に作用する力で当該分離部材が前記隙間を越えて定着ベルト側にさらに接近しようとしても、分離部材が規制部に接触することで分離部材のさらなる接近が規制される。これにより、定着ベルトが分離部材で傷付く等の不具合発生を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被搬送体のジャム処理等においては分離部材に過剰な力が作用しやすい。この過剰な力は、分離部材の長手方向片側に非対称に作用することが多い。
【0008】
分離部材の片側に作用するこのような過剰な力が、いずれか一方の規制部を介して片側のフランジを内側に倒す(傾斜させる)方向に作用すると、フランジが大きく傾いて定着ベルトの片側端部が捻じれ、損傷するおそれがある。
【0009】
そこで本発明の目的は、分離部材の接触や無端ベルトの捻じれによるベルトの損傷を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明のニップ形成ユニットは、回転可能な可撓性の無端ベルトと、前記無端ベルトの内周面に接触可能に設けられたニップ形成部材と、前記無端ベルトを介して前記ニップ形成部材と圧接してニップを形成する加圧部材と、前記無端ベルトと前記ニップ形成部材を有するベルトユニット及び前記加圧部材を支持する筐体と、を有し、被搬送体が前記ニップを通過して搬送されるニップ形成ユニットにおいて、前記ニップを通過した前記被搬送体を前記無端ベルトから分離させる分離部材を備え、当該分離部材は前記無端ベルトに対して接近離反可能に配設され、前記分離部材の前記無端ベルトに接近する位置を規制する規制部を備え、当該規制部は前記筐体に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分離部材の接触や無端ベルトの捻じれによるベルトの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図3】ヒータ、ヒータホルダ及びガイド部の斜視図である。
【
図6】ヒータの制御動作を示すフローチャートである。
【
図7A】用紙分離機構を備えた定着装置の(a)断面図と(b)正面図である。
【
図7B】用紙分離機構の変形例の(a)断面図と(b)要部拡大断面図である。
【
図7C】用紙分離機構の変形例の(a)断面図と(b)正面図である。
【
図7D】定着装置の(a)斜視図と(b)分解斜視図である。
【
図7E】用紙分離性を高めたヒータホルダを有する定着装置の断面図である。
【
図9】グラファイトの原子結晶構造を示す図である。
【
図10】サーミスタの配置の変形例を示す定着装置の側面断面図である。
【
図11】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図12】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図13】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図14】
図1と異なる画像形成装置の概略構成図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図17】ヒータおよびヒータホルダの斜視図である。
【
図18】ヒータに対するコネクタの取付状態を示す斜視図である。
【
図19】サーミスタとサーモスタットの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0014】
(●画像形成装置)
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。
【0015】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5とを備える。
【0016】
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、被搬送体ないし記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着するニップ形成ユニットとしての定着装置9と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10とを備える。記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0017】
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。
【0018】
これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0019】
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0020】
次に、
図1を参照して前記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0021】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0022】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、
図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0023】
この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0024】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0025】
(●定着装置)
続いて、ニップ形成ユニットとしての定着装置の実施形態について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、無端状のベルトから成る定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触して定着ニップNを形成する加圧部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱部材としてのヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24と、定着ベルト20の温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ25等を備えている。定着ベルト20、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24によってベルトユニットが構成されている。
【0026】
なお、後述する
図7A~
図7Cの用紙分離機構300は、
図2では図示省略している。当該用紙分離機構300は、
図2の定着ニップNの下流側において、
図7A~
図7Cと同様に配設可能である。
【0027】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmの樹脂、たとえばポリイミド(PI)製の筒状基体20aを有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層(表層)20bが形成される。基体20aと離型層20bは接着層20cを介して接着されている。
【0028】
基体20aと離型層20bの間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体20aはポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0029】
また、定着ベルト20は基材20aと接着層20cと離型層20bのみで構成し、基材20aと離型層20bとの間に弾性層なしで構成することもできる(
図2の拡大図参照)。弾性層がないとベルト全体の剛性が低くなり、停止時に後述するように変形くせがつきやすい。
【0030】
しかしながら、本実施形態ではベルト表面の変動に対して後述する分離板310が追従して揺動するので、用紙分離性を安定させることができる。この定着ベルト20は、弾性層を有しないため、基材20aと離型層20bとの間には接着層20cが1層のみである。なお、接着層が1層のみとは、接着層が連続していれば2層以上である構成も含む。
【0031】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0032】
なお、定着ベルト20のベルト径を加圧ローラ21の径よりも大きくすることにより、ヒータ22幅を広くできるため高生産機に対応できる。また、ベルト径が大きいとニップ幅に対する定着ベルト20全体の変形が小さくなるので、変形くせを抑制して用紙分離性を安定化することもできる。
【0033】
但し、ヒータ22幅を広くし過ぎると変形くせも大きくなる。したがって、ヒータ22幅は適度の大きさにするのがよい。
【0034】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が
図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0035】
定着ベルト20が従動回転するため、定着ベルト20の径(ベルト径)は、ヒータ22やヒータホルダ23などの内側部材よりも大きさに余裕がある構成にする必要がある。ベルト径を大きくするとその分だけ定着ベルト20の軌道変動が大きくなるが、本実施形態ではベルト表面の変動に対して後述する分離板310が追従して揺動するので、用紙分離性を安定させることができる。
【0036】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられた面状の加熱部材であり、板状の基材30と、基材30上に設けられた抵抗発熱体31と、抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32等で構成されている。また、ヒータ22は、絶縁層32側で定着ベルト20の内周面に対して接触しており、抵抗発熱体31から発された熱は、絶縁層32を介して定着ベルト20へと伝達される。
【0037】
本実施形態では、抵抗発熱体31や絶縁層32が基材30の定着ベルト20側(定着ニップN側)に設けられているが、反対に、抵抗発熱体31や絶縁層32を基材30のヒータホルダ23側に設けてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材30を熱伝導率の良い材料で構成することで、抵抗発熱体31を基材30の定着ベルト20側とは反対側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。
【0038】
ヒータホルダ23及びステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板部に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23及びこれに保持されるヒータ22が支持されていることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめて定着ニップNを安定的に形成する。
【0039】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
【0040】
また、ヒータ22に対するヒータホルダ23の接触面積を少なくし、ヒータ22からヒータホルダ23へ伝わる熱量を低減するため、ヒータホルダ23はヒータ22の基材30に対して突起部23aを介して接触している。さらに、本実施形態のように、ヒータホルダ23の突起部23aを、基材30の抵抗発熱体31が配置されている箇所の裏側以外、すなわち基材30の温度が高くなりやすい箇所を避けて接触させることで、ヒータホルダ23へ伝わる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト20を加熱できる。
【0041】
また、ヒータホルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられている。ガイド部26は、ヒータ22のベルト回転方向の上流側(
図2におけるヒータ22の下側)と下流側(
図2におけるヒータ22の上側)とにそれぞれ設けられている。
【0042】
また、
図3に示すように、上流側と下流側のガイド部26は、ヒータ22の長手方向(ベルト幅方向)に渡って間隔をあけて複数配置されている。各ガイド部26は、略扇型に形成されており、定着ベルト20の内周面に対向するようにベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のベルト対向面260を有する(
図2参照)。また、
図3に示すように、本実施形態においては、ヒータ22の長手方向両端部に配置されたガイド部26の幅Wが他のガイド部26よりも大きく形成されている以外、各ガイド部26の幅W、ベルト周方向の長さ(周長)L、高さEは同じに形成されている。
【0043】
本実施形態に係る定着装置9において、印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。このとき、定着ベルト20の内周面がガイド部26のベルト対向面260に接触してガイドされることで、定着ベルト20は安定かつ円滑に回転する。
【0044】
また、ヒータ22の抵抗発熱体31に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
【0045】
(●ヒータの構成)
図4は、本実施形態に係るヒータの平面図である。
図4に示すように、本実施形態に係るヒータ22は、その長手方向(ベルト幅方向)に間隔をあけて配置された複数の抵抗発熱体31を有している。
【0046】
言い換えれば、複数の抵抗発熱体31によって、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部35が構成されている。当該発熱部35は、両端部を加熱する端部ヒータと中央部を加熱する中央ヒータの少なくとも3つ或いは4つ以上に分割することができる。
【0047】
ヒータを分割して構成する場合、通紙方向のヒータ幅を広くする必要がある。そうすると定着ニップNの幅が広くなり、それに伴ってベルトの変形くせが大きくなり、軌道変動も大きくなる。しかしながら、本実施形態ではベルト表面の変動に対して後述する分離板310が追従して揺動するので、分割ヒータを問題なく採用することができる。
【0048】
各抵抗発熱体31は、基材30の長手方向両端部に設けられた一対の電極部34に対して給電線33を介して電気的に並列に接続されている。給電線33は、抵抗発熱体31よりも抵抗値の小さい導体で構成されている。
【0049】
互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、大き過ぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなるため、長手方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0050】
抵抗発熱体31は、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成されており、温度が上昇すると抵抗値が上昇(ヒータ出力が低下)する特徴がある。この特徴により、例えば発熱部35の全体幅よりも幅の小さい用紙を通紙した場合、紙幅より外側の領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、その部分に相当する抵抗発熱体31の温度が上昇する。
【0051】
抵抗発熱体31にかかる電圧は一定なので、紙幅より外側の抵抗発熱体31の温度が上昇し、その抵抗値が上昇すると、反対に出力(発熱量)が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。また、複数の抵抗発熱体31が電気的に並列接続されていることで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。
【0052】
なお、発熱部35を構成する発熱体は、PTC特性を有する抵抗発熱体以外のものであってもよい。また、発熱体は、ヒータ22の短手方向に
図4のように単列でもよいし、複数列に配置されていてもよい。
【0053】
抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成することができる。本実施形態では、抵抗発熱体31の抵抗値を常温で80Ωとしている。
【0054】
抵抗発熱体31の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。給電線33や電極部34の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。
【0055】
基材30の材料としては、耐熱性及び絶縁性に優れるアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。
【0056】
他に、金属などの導電材料に絶縁性材料を積層したもので、基材30を構成してもよい。金属材料としては、アルミニウムやステンレスなどが低コストで好ましい。また、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。
【0057】
絶縁層32は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。絶縁層32によって抵抗発熱体31と給電線33とを被覆し、これらを絶縁・保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。
【0058】
図5は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0059】
図5に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体31に電力を供給するため電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極部34とを電気的に接続することで構成されている。また、電力供給回路には、供給電力量を制御するトライアック210が設けられている。
【0060】
各抵抗発熱体31への供給電力量は、温度検知手段としてのサーミスタ25の検知温度に基づいて制御部220がトライアック210を介して制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。
【0061】
本実施形態では、温度検知手段としてのサーミスタ25が、最小通紙幅内であるヒータ22の長手方向中央領域と、ヒータ22の長手方向一端部側とに、それぞれ配置されている。さらに、ヒータ22の長手方向一端部側には、抵抗発熱体31の温度が所定温度以上となった場合に、抵抗発熱体31への電力供給を遮断する電力遮断手段としてのサーモスタット27が配置されている。サーミスタ25及びサーモスタット27は、基材30の裏面(抵抗発熱体31を配置した側とは反対側)に接触して抵抗発熱体31の温度を検知する。
【0062】
続いて、
図6のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係るヒータの制御動作について説明する。まず、画像形成装置において印刷動作が開始されると(
図6のS1)、制御部220により交流電源200からヒータ22の各抵抗発熱体31への電力供給が開始される(
図6のS2)。
【0063】
これにより、各抵抗発熱体31が発熱を開始し、定着ベルト20が加熱される。このとき、ヒータ22の長手方向中央領域に配置されたサーミスタ(中央サーミスタ)25によって、ヒータ22の中央領域に位置する抵抗発熱体31の温度T4が検知される(
図6のS3)。そして、制御部220が、中央サーミスタ25から得られた温度T4に基づいて、各抵抗発熱体31が所定温度になるように、トライアック210により各抵抗発熱体31への供給電力量を制御する(
図6のS4)。
【0064】
また、同時にヒータ22の長手方向端部側に配置されたサーミスタ(端部サーミスタ)25によっても抵抗発熱体31の温度T8が検知される(
図6のS5)。そして、端部サーミスタ25によって検知された温度T8が所定温度TN以上(T8≧TN)か否かが判定され(
図6のS6)、所定温度TN未満であれば、異常低温発生(断線発生)としてヒータ22への電力供給が遮断され(
図6のS7)、画像形成装置の操作パネルにエラー表示が示される(
図6のS8)。一方、検知された温度T8が所定温度TN以上であれば、異常低温発生なしとして印刷動作が開始される(
図6のS9)。
【0065】
また、万が一、抵抗発熱体31が破損、断線するなどにより中央サーミスタ25の検知に基づく温度制御が不能になった場合は、長手方向端部の抵抗発熱体31を含む他の抵抗発熱体31が異常高温になる虞がある。その場合は、抵抗発熱体31が所定温度以上になったときにサーモスタット27が作動して抵抗発熱体31への電力供給を遮断することで、抵抗発熱体31が異常高温となるのを回避する。
【0066】
(●用紙分離機構)
図7Aは、定着ニップNを通過した用紙Pを定着ベルト20から分離する用紙分離機構300を備えた定着装置の概念図を示すものである。この用紙分離機構300は、定着ニップNの下流側(右側)に用紙分離部材としての分離板310を有し、当該分離板310によって定着ベルト20から用紙を分離する。
【0067】
分離板310は、耐熱性を有する金属や樹脂で構成することができる。耐熱性金属としては例えばステンレスを使用することができる。耐熱性樹脂としては例えばポリイミドやPEEKなどを使用することができる。分離板310は耐熱性を有する材料あれば金属や樹脂以外で構成してもよい。
【0068】
分離板310は、特許文献2(特開2011-028081号公報)の分離部材のように固定的に配置されるのではなく、定着ベルト20に対して近付く方向と遠ざかる方向に移動可能に配設されている。詳しくは、分離板310は、定着ベルト20の軸線方向と平行に、用紙サイズより大きい幅で延在し、その長手方向両端部が、左右一対の側板部320の内面に突設された分離軸322に回動可能に軸支されている。
【0069】
分離板310の非接触部としての先端部311は、分離軸322を中心として、定着ベルト20の外周面に対して、接近離反方向に揺動可能とされている。分離軸322に関して、分離板310の先端部311とは反対側の端部に付勢手段としての板バネ330が取付けられている。
【0070】
この板バネ330は、側板部320の内面に突設された板バネ支持部331に対して押圧付勢状態で当接している。これにより、分離板310は押圧付勢の反力により分離軸322を中心として
図7A(a)で時計方向に回転付勢されている。
【0071】
分離板310を回転付勢する機構は板バネ330に限られない。板バネ330に代えて、
図7B(a)のように付勢手段としての引張バネ340を分離板310の後端部と板バネ支持部331との間に張架してもよい。
【0072】
(●規制部)
側板部320の内面には、分離軸322の近くに規制部321aが突設されている。この規制部321aは、側板部320の一部を延長して側板部320と一体に形成することができる。側板部320は通常金属材で構成されているので、規制部321aを高剛性にすることができる。規制部321aを側板部320と一体形成ではなく、高強度の例えば金属製の別部品として側板部320に固定することも可能である。
【0073】
規制部321aを設けたことで、分離板310が時計方向(定着ベルト20に対する近接方向)に所定以上回動すると規制部321aに当接し、その回動位置が規制されるようになっている。このように分離板310の回動位置を規制するのは、用紙ジャム発生時に定着ベルト20に巻付いた用紙を除去する際、分離板310を過剰にベルト側に押し込むことで分離板310が定着ベルト20に接触してベルト表面を損傷するのを防止するためである。
【0074】
特許文献1(特開2013-186394号公報)のように分離板を規制する規制部をフランジに設けると、分離板に作用する過剰な力が規制部を介してフランジに作用し、当該フランジが内側に大きく傾くおそれがある。そうすると、定着ベルトの片側端部が捻じれて損傷するおそれがある。
【0075】
本実施形態では規制部321aを定着装置の筐体である側板部320に設けているので、長手方向片側に非対称な力が分離板310を介して規制部321aに作用したとしても、フランジを内側に大きく傾けるような作用は生じさせず、定着ベルト20の片側端部が捻じれて損傷することを抑制できる。
【0076】
規制部321aは
図7Aのように左右の側板部320の内面に配設する他に、
図7Cのようにフレーム29の長手方向中間の1箇所または複数個所に規制部321bとして配設してもよい。規制部321bはフレーム29の一部を延長して形成することができる。フレーム29と側板部320は、定着装置9の筐体の一部を構成する。
【0077】
規制部321aと規制部321bは、両方とも配設することも可能である。規制部321a、321bは側板部320やフレーム29に一体形成可能なので、部品点数を増大することなく低コストに形成できる。
【0078】
分離板310は細長であるため、薄板で構成した場合は捻りによる変形に弱い。分離板310の両端部を規制部321aだけで位置規制すると、分離板310の長手方向中間部の位置規制が安定しない可能性がある。フレーム29の長手方向中間の1箇所または複数個所に規制部321bを配設すると、分離板310の長手方向中間部の位置規制も安定する。
【0079】
(●接触部)
分離板310は、その先端部311に近接した位置に、定着ベルト20の軸線方向両端部における非通紙部の外周面に板バネ330の付勢力で当接する接触部313を有する。この接触部313が定着ベルト20の軸線方向両端部の非通紙部の外周面に当接することで、分離板310の非接触部である先端部311と、定着ベルト20との間の間隔δを
図7B(b)のように所定の大きさに規制する。接触部313は分離板310の一部で構成してもよいが、ベルト表面に接触するため耐熱性と耐摩耗性のある樹脂(例えばフッ素樹脂)や弾性体(例えばフッ素ゴム)等で構成してもよい。
【0080】
接触部313の形状は、表面が滑らかな例えば半球形状に形成することができる。表面が滑らかな半球形状にすることにより、定着ベルト20の両端部外周面に対する当りをソフトにして摺動抵抗を低減し、定着ベルト20の損傷を防止することができる。
【0081】
接触部313の位置は、定着ベルト20の半径方向で対向する位置にすることができる。こうすることで、定着ベルト20のガタつき量を最小化することができる。
【0082】
(●ニップ形成部材の接近位置・離反位置)
ニップ形成部材としてのヒータ22とヒータホルダ23は、加圧ローラ21に対して、定着ニップNが加圧ローラ21で加圧される接近位置と、定着ニップNが脱圧される離反位置との間を、
図7A(a)で上下方向に移動可能に配設されている。そして、分離板310が規制部321aで回動規制された状態で、ヒータ22とヒータホルダ23が前記離反位置に移動可能に構成されている。
【0083】
(●定着装置の筐体)
前述したヒータ22とヒータホルダ23の移動可能な構成を、定着装置9の筐体を示す
図7Dの(a)(b)を参照してさらに説明する。定着装置9の筐体を構成する装置フレーム440は、一対の側壁部428と前壁部427とから成る第1装置フレーム425と、後壁部429から成る第2装置フレーム426とを備えている。
【0084】
図7Dでは、ベルトユニットは、定着ベルト20、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24、支持部材432を備えて構成されている。そのベルトユニットと加圧ローラ21とを支持するものが筐体である。
【0085】
筐体を構成しているのは、第1装置フレーム425と第2装置フレーム426からなる装置フレーム440である。ベルトユニットと加圧ローラ21は、側壁部428(筐体の一部)で支持されている。
【0086】
さらに、側壁部428と一体に形成されている前壁部427も筐体の一部である。また、側壁部428に組付けられる後壁部429も筐体の一部を構成している。このように、筐体とは、直接的に加圧ローラ21とベルトユニットを支持しているフレームに限らず、当該フレームと一体的に形成されているフレームや、当該フレームと組みつけられて一体化されているフレームも含む。
【0087】
左右の側壁部428の間に、定着ベルト20と加圧ローラ21の間のニップ出口側に位置するようにして分離板310が配設されている。この分離板310の長手方向両端の分離軸322が、左右の側壁部428に回転可能に軸支されている。また、左右の側壁部428には前述の規制部321aが形成されている。
【0088】
側壁部428は前述の側板部320に対応し、後壁部429は前述のフレーム29に対応する。側壁部428の一部を延長して前記規制部321aを形成したり、後壁部429の中間部の一部を延長して前記規制部321bを形成したりすることができる。筐体を構成する側壁部428や後壁部429は一般に金属製であるから、規制部321a、321bをこれらに一体形成することで高強度の規制部321a、321bが得られる。
【0089】
規制部321a、321bは、側板部428や後壁部429に一体形成する他、別部品として側板部428や後壁部429に固定することも可能である。なお、後壁部429は定着ベルト20のベルト長手方向に延在しており、かつ加圧ローラ21側ではなく定着ベルト20側に設けられている。
【0090】
本実施形態では規制部321a、321bが筐体である装置フレーム440に設けられているので、分離板310に大きな力が作用しても、分離板310が定着ベルト20に接近する位置を確実に規制することができ、またフランジ(支持部材432)に無理な力が掛かるのを回避することができるので、分離板310の接触による定着ベルト20の損傷と、定着ベルト20の捻じれによる損傷を防止することができる。
【0091】
一対の側壁部428は、ベルト長手方向の一端部側と他端部側とに配置されており、両側壁部428によって、定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22及びヒータホルダ23の両端部側が支持される。各側壁部428には、複数の係合突起428aが設けられ、各係合突起428aが後壁部429に設けられた係合孔429aに係合することで、第1装置フレーム425と第2装置フレーム426とが組み付けられる。
【0092】
また、各側壁部428は、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝428bが設けられている。挿通溝428bは、後壁部429側で開口し、これとは反対側では開口しない突き当て部となっている。
【0093】
この突き当て部側の端部には、加圧ローラ21の回転軸を支持する軸受430が設けられている。加圧ローラ21は、その回転軸の両端部がそれぞれ軸受430に装着されることで、両側壁部428によって回転可能に支持される。
【0094】
また、加圧ローラ21の回転軸の一端部側には、駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ431が設けられている。駆動伝達ギヤ431は、加圧ローラ21が両側壁部428に支持された状態で、側壁部428よりも外側に露出した状態で配置される。
【0095】
これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載された際、駆動伝達ギヤ431が画像形成装置本体に設けられているギヤと連結し、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。なお、加圧ローラ21に駆動力を伝達する駆動伝達部材としては、駆動伝達ギヤ431のほか、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などであってもよい。
【0096】
ヒータ22の長手方向の両端部には、定着ベルト20やヒータホルダ23、ステー24などを支持する一対の支持部材432が設けられている。この支持部材432は耐熱性樹脂で構成され、その内側面に定着ベルト20の両端部内周面を摺動可能に支持する短筒状のフランジが形成される。
【0097】
各支持部材432にはガイド溝432aが設けられている。このガイド溝432aを側壁部428の挿通溝428bの縁に沿って進入させることで、支持部材432が側壁部428に対して組み付けられる。
【0098】
また、各支持部材432と後壁部429との間には、付勢部材としての一対のバネ433が設けられている。各バネ433によってステー24や支持部材432が加圧ローラ21側に付勢されることで、定着ベルト20が加圧ローラ21に押し当てられ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部が形成される。
【0099】
当該ニップ部を脱圧する場合は、支持部材432をバネ433に抗して
図7Dで右側に移動させる。これにより、ヒータ22とヒータホルダ23を離反位置に移動することができる。
【0100】
第2装置フレーム426を構成する後壁部429の長手方向の一端部側には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部429bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起401が設けられている。
【0101】
この突起401が、定着装置9の孔部429bに対して挿入されることで、突起401と孔部429bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体のベルト長手方向の位置決めがなされる。なお、後壁部429の孔部429bが設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。これにより、温度変化に伴う定着装置本体のベルト長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
【0102】
(●ヒータホルダによる用紙分離性の向上)
図7Eは、用紙分離性を高めたヒータホルダ23を有する定着装置9の断面図である。このヒータホルダ23のヒータ22は、ニップ部Nから所定深さでセットバックして配置されている。
【0103】
すなわち、ヒータ22のニップ形成面がヒータホルダ23の左右のガイド部26から所定深さD1、D2でセットバックして配置され、ニップ形成面が加圧ローラ22側とは反対側へ凹んだ凹形状になっている。ニップ部Nからの深さD1、D2は、等しくするか(D1=D2)出口側のD2の方をやや大きくするとよい(D1<D2)。
【0104】
これにより、定着ニップNの入口側と出口側で定着ベルト20の曲率が大きくなる。したがって、用紙Pの通紙経路が、定着ニップNの入口側と出口側で加圧ローラ21側に押込まれる。この結果、定着ニップNから出た用紙Pは定着ベルト20から離れる方向(加圧ローラ22寄り)に搬送され、定着ベルト20に巻付いて用紙ジャムが発生する可能性を低減することができる。
【0105】
前述のように、ヒータ22のセットバック(深さD1、D2)で用紙分離性を高めた場合、定着ベルト20の回転停止時に定着ニップNで平板状の変形くせ(フラットスポット)がより付きやすくなる。したがって、用紙分離機構300の分離板310が定着ベルト20に接触するのを防止する重要性がいっそう高まる。
【0106】
(●高熱伝導部材)
ヒータ22とヒータホルダ23との間に、高熱伝導部材28を配設することができる。この高熱伝導部材28の一方の面はヒータ22の裏面に当接され、他方の面はヒータホルダ23に当接されている。
【0107】
当該高熱伝導部材28によって、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めることができる。高熱伝導部材28は、グラフェンやグラファイトなど、ヒータ22の基材30よりも熱伝導率のよい材料で構成することができる。
【0108】
(●用紙分離機構の作用)
定着ベルト20は、前述したように耐熱性樹脂であるポリイミド等で構成することができるが、薄肉のために回転停止中に変形くせが付きやすい。この変形くせが付いた状態で定着ベルト20を回転すると、定着ベルト20の軌道が変動する。
【0109】
すなわち、回転停止中の定着ニップNにおいて、定着ベルト20が面状ヒータ22と加圧ローラ21に挟まれて平板状の変形くせ(
図7Aの太線)が発生する。定着ベルト20とヒータ22は冷却時間に大きな差異があるので、当該変形くせがいっそう発生しやすい。この変形くせが付いた状態で定着ベルトを回転し始めると、定着ベルト20の内側にベルト変形を規制する部材がないので、定着ベルトの回転軌道が破線で示すように縦長⇔横長のように不規則に変動する(バタつきの発生)。
【0110】
特許文献2(特開2011-028081号公報)の定着装置に固定的に配設された分離部材では、コロによって定着ベルト20の軌道変動を抑制しても、定着ベルト20の軸線方向中間部が分離部材に接触してベルトが損傷したり、反対に定着ベルト20が分離部材から離れすぎて用紙Pの分離不良(用紙ジャム)が発生したりする可能性があった。
【0111】
しかしながら、本実施形態では、定着ベルト20の軸線方向両端部における非通紙部の外周面に付勢手段としての板バネ330の付勢力で接触部313を当接させているので、変形した定着ベルト20の軌道変動に応じて分離板310を追従変動させることができる。これにより、分離板310の先端部311と定着ベルト20との間の間隔δを最適隙間で一定に維持でき、分離板310による用紙Pの分離性を安定化することができる。
【0112】
前記間隔δの大きさは、例えば0.2~2.0mmの範囲内で設定することができる。また分離板310の先端部311の位置は、定着ニップNの出口から接線方向で距離L1の範囲内で設定することができる。例えば、接線方向(X方向)の距離L1=5~10mm、Y方向の距離L2=2~7mmの範囲に設定することができる。勿論、当該距離L1、L2はこれら数値範囲に限定されることなく、適宜設定することが可能である。
【0113】
本実施形態では、分離板310の接触部313が定着ベルト20の軸線方向両端部のベルト変形に対して追従する。これに対して定着ベルト20は、その軸線方向全長にわたってベルト変形を規制する部材がないので、軸線方向全長にわたって同様なベルト変形状態となる。
【0114】
一方、分離板310は軸線方向で一端から他端まで一体であるから、
図7B(b)に示す間隔δの大きさを、定着ベルト20の両端部から中央部まで一定に維持することが可能になる。これにより、分離板310による用紙Pの分離性を安定化して安定した正常画像を出力することができる。
【0115】
(●定着ニップの加圧・脱圧の構成)
定着ニップNの加圧構成として、第1と第2の2つの加圧構成が可能である。第1の加圧構成は、定着ベルト20側(ヒータホルダ23)を固定し、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離可能にすると共に定着ベルト20側に付勢する構成である。
【0116】
この第1の加圧構成は、ヒータ22位置が固定されているのでベルト位置が安定し、分離板310の先端部311と定着ベルト20との距離も安定化する。このため用紙Pの分離性を安定化することができる。
【0117】
第2の加圧構成は、加圧ローラ21側(加圧ローラ21の芯金)を固定し、定着ベルト20側を加圧ローラ21に対して接離可能にすると共に加圧ローラ21側に付勢する構成である。第2の加圧構成の方が、用紙ジャムの処理時に用紙Pを引き抜く力をさらに小さくすることができるので望ましい。
【0118】
すなわち、第2の加圧構成であれば、脱圧すると定着ベルト20と加圧ローラ21が離れると共に、定着ベルト20と分離板310も離れる。したがって、ジャム処理時の分離板310の先端によるベルト破損を防止できる効果が高くなる。。
【0119】
加えて、規制部321aと分離板310の間のクリアランスを、脱圧量より小さくすることにより、脱圧時に分離板310の
図7A~
図7Cの時計方向の回転が規制される。この結果、定着ベルト20と分離板310の先端部311との間の間隔が広がるので、ジャム処理時の分離板310の先端によるベルト破損を防止できる効果が高くなる。
【0120】
また、用紙ジャムの際は定着ニップNから十分に紙が見えていないとユーザは用紙Pを引き抜きにくい。定着ベルト20と分離板310の先端部311との間の間隔を広げることができれば、加圧ローラ21と定着ベルト20を容易に逆回転させることができ、用紙Pを定着ニップN上流側(
図7A~
図7Cで左方)に向けて十分な長さで引き出すことができる。
【0121】
一方、用紙ジャム処理時における定着ベルト20の順回転と逆回転では、定着ベルト20の軌道が変わる。このため、定着ベルト20の軌道が変わっても、定着ベルト20と分離板310の先端部311とが接触しない第2の加圧構成の方が好ましい。
【0122】
(●グラフェンシート)
前記高熱伝導部材28は、グラフェンシートにより構成することができる。これにより、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく配列方向に熱伝導率の高い高熱伝導部材28を形成できる。従って、ヒータ22や定着ベルト20の配列方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0123】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、後述する
図8に示すように、炭素原子の平面状の六角形格子構造からなる。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。炭素の単一層に不純物を含んでいてもよい。
【0124】
またグラフェンはフラーレン構造を有したものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成してなる化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0125】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法で作製されうる。グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0126】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、後述する
図9に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。
【0127】
この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。
【0128】
つまり、高熱伝導部材28をグラファイトにより構成することで、高熱伝導部材28における配列方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ23への伝熱を抑制できる。従って、ヒータ22の配列方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ23側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また高熱伝導部材28をグラファイトにより構成することで、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を高熱伝導部材28に持たせることができる。
【0129】
グラファイトシートの物性や寸法は、高熱伝導部材28に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることで、その熱伝導の異方性を高めることができる。
【0130】
また、定着装置9を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置9の熱容量を小さくしてもよい。また、定着ニップNやヒータ22の幅が大きい場合には、それに合わせて高熱伝導部材28の配列方向の幅を大きくしてもよい。
【0131】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0132】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、
図8に示されるように、炭素原子の平面状の六角形格子構造から成る。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。
【0133】
また、グラフェンシートは、炭素の単一層に不純物を含んでいてもよいし、フラーレン構造を有するものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成して成る化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0134】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法により作製され得る。グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0135】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、
図9に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。
【0136】
この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。つまり、高熱伝導部材28をグラファイトにより構成することにより、高熱伝導部材28における長手方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ23への伝熱を抑制できる。
【0137】
従って、ヒータ22の長手方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ23側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また高熱伝導部材28をグラファイトにより構成することにより、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を高熱伝導部材28に持たせることができる。
【0138】
グラファイトシートの物性や寸法は、高熱伝導部材28に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることにより、その熱伝導の異方性を高めることができる。
【0139】
また、定着装置を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置の熱容量を小さくしてもよい。また、定着ニップN及びヒータ22の幅が大きい場合には、それに合わせて高熱伝導部材28の長手方向の幅を大きくしてもよい。
【0140】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0141】
以上の説明においては、本発明を、ベルト式加熱装置(回転体駆動装置)の一例である定着装置に適用する場合を例に説明した。しかしながら、本発明は、定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクなどの液体を乾燥させる乾燥装置、被覆部材としてのフィルムを用紙などのシートの表面に熱圧着させるラミネータ、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの加熱装置であってもよい。また、本発明は、ヒータなどの加熱源を有しない回転体駆動装置にも適用可能である。
【0142】
(●定着装置の変形実施形態)
次に、定着装置9の変形実施形態等について
図10~
図20を参照して説明する。なお、
図7A~
図7Cで前述した用紙分離機構300は、
図10以降では省略している。当該用紙分離機構300は、例えば
図10~
図13の定着ニップNの下流側において、
図7A~
図7Cと同様に配設可能である。
【0143】
図10はサーミスタの配置を変更したものである。本実施形態では、サーミスタ25が、配列交差方向において、定着ニップNの中央位置NAよりも定着ベルト20の回転方向上流側、言い換えると、定着ニップNの入口側に設けられる。定着ニップNの入口側は特に用紙Pによって熱を奪われやすい領域であるため、サーミスタ25がこの部分の温度を検知することで、定着装置9の定着性を確保し、前記定着オフセットを効果的に抑制できる。
【0144】
図11に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ44が配置されている。押圧ローラ44は、回転部材としての定着ベルト20に対向して回転する対向回転部材である。この押圧ローラ44とヒータ22とが定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。
【0145】
一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材45が配置されている。ニップ形成部材45は、ステー24によって支持されている。ニップ形成部材45と加圧ローラ21とによって、定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
【0146】
次に、
図12に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ44が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図11に示す定着装置9と同じ構成である。
【0147】
最後に、
図13に示す定着装置9について説明する。定着装置9は、加熱アセンブリ92、定着部材である定着ローラ93、加圧部材である加圧アセンブリ94からなる。
【0148】
加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24、回転部材としての加熱ベルト120等を有する。定着ローラ93は、回転部材としての加熱ベルト120に対向して回転する対向回転部材である。また、定着ローラ93は、中実の鉄製芯金93aと、この芯金93aの表面に形成された弾性層93bと、弾性層93bの外側に形成された離型層93cとで構成されている。
【0149】
また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト97と定着ローラ93との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。
【0150】
以上の
図11~
図13の定着装置においても、ヒータ22の抵抗発熱体31同士の分割領域Bにおいてヒータ22の発熱量が小さくなる点は同様である。従って、前述した実施形態と同様に、ヒータ22の分割領域Bに対応する位置に温度検知部材の温度検知素子を設けることにより、回転部材の分割領域に対応する部分を十分に加熱することができる。これにより、画像の定着性を十分に確保し、定着オフセットなどの不具合の発生を防止できる。
【0151】
また、本発明は、前記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置にも適用可能である。このような装置にも本発明を適用することで、回転部材の分割領域に対応する部分を十分に加熱することができる。
【0152】
本発明に係る画像形成装置は、
図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。例えば
図14に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、感光体ドラムなどからなる画像形成手段50と、一対のタイミングローラ15等からなる用紙搬送部と、給紙装置7と、定着装置9と、排紙装置10と、読取部51と、を備える。給紙装置7は複数の給紙トレイを備え、それぞれの給紙トレイが異なるサイズの用紙を収容する。
【0153】
読取部51は原稿Qの画像を読み取る。読取部51は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置7は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ15は搬送路上の用紙Pを画像形成手段50へ搬送する。
【0154】
画像形成手段50は、用紙Pにトナー像を形成する。具体的には、画像形成手段50は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置とを含む。トナー像は、例えば、原稿Qの画像を示す。
【0155】
定着装置9は、トナー像を加熱および加圧して、用紙Pにトナー像を定着させる。トナー像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置10へ搬送される。排紙装置10は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0156】
次に、本実施形態の定着装置9について説明する。前述の実施形態の定着装置と共通する構成については、適宜その記載を省略する。
【0157】
図15に示すように、定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、サーミスタ25等を備える。定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。定着ニップNのニップ幅は10mm、定着装置9の線速は240mm/sである。用紙分離機構300は、例えば
図15の定着ニップNの下流側において、
図7A~
図7Cと同様に配設可能である。
【0158】
定着ベルト20はポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂からなる耐熱性のフィルム材からなる。定着ベルト20の外径は約24mmである。
【0159】
加圧ローラ21は、芯金21aと弾性層21bと離型層21cとを含む。加圧ローラ21の外径は24~30mmで形成され、弾性層21bの厚みは3~4mmで形成される。
【0160】
ヒータ22は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmで形成される。また、ヒータ22の配列交差方向の幅Yは13mmである。
【0161】
図16に示すように、ヒータ22の導体層は、複数の抵抗発熱体31と、給電線33と、電極部34A~34Cとを備える。本実施形態においても、複数の抵抗発熱体31が配列方向に分割された分割領域Bが形成される(ただし、
図16では拡大図の範囲のみで分割領域Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体31同士の間に分割領域が設けられる)。
【0162】
抵抗発熱体31により、三つの発熱部35A~35Cが構成される。電極部34A、34Bに通電することにより、発熱部35A、35Cが発熱する。電極部34A、34Cに通電することにより、発熱部35Bが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合には発熱部35Bを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合には全ての発熱部に発熱させることができる。
【0163】
図17に示すように、ヒータホルダ23は、その凹部23bにヒータ22を保持する。凹部23bは、ヒータホルダ23のヒータ22側に設けられる。凹部23bは、ヒータ22のその他の面よりもステー24側に凹となった基材30に略平行な面23b3と、ヒータホルダ23の配列方向両側(一方側でもよい)でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23b1と、配列交差方向両側でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23b2とにより構成される。
【0164】
ヒータホルダ23はガイド部26を有する。ヒータホルダ23はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0165】
図18に示すように、コネクタ160は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子等を備える。コネクタ160は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。
【0166】
この状態で、各コンタクト端子が、ヒータ22の各電極部に接触(圧接)することで、コネクタ160を介して発熱部35と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部35へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部34は、コネクタ160との接続を確保するため、少なくとも一部が絶縁層に被覆されておらず露出した状態となっている。
【0167】
フランジ53は、定着ベルト20の配列方向の両側に設けられ、定着ベルト20の両端をベルトの内側から保持する。フランジ53は定着装置9の筐体に固定される。フランジ53はステー24の両端に挿入される(
図18のフランジ53からの矢印方向参照)。
【0168】
コネクタ160のヒータ22およびヒータホルダ23に対する取り付け方向はヒータの配列交差方向である(
図18のコネクタ160からの矢印方向参照)。コネクタ160のヒータホルダ23に対する取り付け時に、コネクタ160とヒータホルダ23との一方に設けた凸部が、他方に設けた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。またコネクタ160は、配列方向のいずれか一方側であって、加圧ローラ21の駆動モータが設けられる側とは反対側で、ヒータ22およびヒータホルダ23に取り付けられる。
【0169】
図19に示すように、定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーミスタ25が設けられる。サーミスタ25により検知された定着ベルト20の配列方向中央側と端部側のそれぞれの温度に基づいて、ヒータ22を制御する。なお、これらのサーミスタ25のうちいずれか一方は、前述の実施形態と同様、ヒータ22の抵抗発熱体同士の分割領域に対応する位置に設けられる。
【0170】
定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーモスタット27が設けられる。サーモスタット27により検知された定着ベルト20の温度が定められた閾値を超えた場合には、ヒータ22への通電を停止する。
【0171】
定着ベルト20の配列方向両端には、定着ベルト20の各端部を保持するフランジ53が設けられる。フランジ53はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0172】
図20に示すように、フランジ53にはスライド溝53aが設けられる。スライド溝53aは、定着ベルト20の加圧ローラ21に対する接離方向に延在する。スライド溝53aには定着装置9の筐体の係合部が係合する。この係合部がスライド溝53a内を相対移動することにより、定着ベルト20は加圧ローラ21に対する接離方向へ移動できる。
【0173】
以上の定着装置9においても、ヒータ22の分割領域Bに対応する位置にサーミスタ25の温度検知素子を設けることにより、定着ベルト20の分割領域に対応する部分を十分に加熱することができる。これにより、画像の定着性を十分に確保し、定着オフセットなどの不具合の発生を防止できる。
【0174】
特に単色のトナーにより画像形成動作を行う画像形成装置の場合、複数色のトナーにより画像形成動作を行う画像形成装置と比較して、相対的にホットオフセットが生じにくい。従って、本発明のように、分割領域に対応する位置に配置した温度検知素子の検知結果に基づいて加熱部材の制御を実施しても、単色のトナーを使用する画像形成装置ではホットオフセットが相対的に生じにくいという利点がある。
【0175】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であることは勿論である。例えば前記分離板310は、定着ベルト20に対して近付く方向と遠ざかる方向に移動可能に配設することができ、前述の実施形態のように分離板310を回動可能とする他、ヒータホルダ23と平行状態を維持した状態で定着ベルト20に対する接近離反方向で平行移動可能に構成してもよい。
【0176】
また、前記実施形態では無端ベルトとして定着装置9の定着ベルト20を例に説明したが、無端ベルトは感光体ベルトであってもよい。すなわち、像担持体としての感光体ベルトに担持されたトナー像を被搬送体としての用紙ないし記録媒体上に転写する画像形成装置において、前述した分離板によって記録媒体を感光体ベルトから分離する。
【0177】
また、無端ベルトは像担持体としての
図1の中間転写ベルト11であってもよい。すなわち、中間転写ベルト11と二次転写ローラ13の間のニップを通過して搬送される記録媒体を前述した分離板で中間転写ベルト11から分離する。
【0178】
同様に、無端ベルトはインクジェット方式の画像形成装置で使用される中間転写ベルトであってもよい。また、その他インクジェット方式の画像形成装置において、加圧部材が無端ベルトを介してニップ形成部材と圧接してニップを形成し、当該ニップを被搬送体が通過して搬送される構成に適用する場合も、ニップ通過後の被搬送体を前述した分離板で無端ベルトから分離することができる。
【符号の説明】
【0179】
1Y,1M,1C,1Bk:作像ユニット 2:感光体
3:帯電装置 4:現像装置
5:クリーニング装置 6:露光装置
7:給紙装置 8:転写装置
9:定着装置 10:排紙装置
11:中間転写ベルト 12:一次転写ローラ
13:二次転写ローラ 13:二次転写ニップ
14:用紙搬送路 15:タイミングローラ
20:定着ベルト 21:加圧ローラ
21:定着ベルト 21a:芯金
21b:弾性層 21c:離型層(表層)
22:ヒータ 23:ヒータホルダ
23a:突起部 23b:凹部
23b1~23b3:壁部 24:ステー
25:サーミスタ 26:ガイド部
27:サーモスタット 28:高熱伝導部材
29:フレーム(後壁部) 30:基材
31:抵抗発熱体 32:絶縁層
33:給電線 34:電極部
34A~34C:電極部 35:発熱部
35A~35C:発熱部 44:押圧ローラ
45:ニップ形成部材 50:画像形成手段
51:読取部 53:フランジ
53a:スライド溝 56:抵抗発熱体
92:加熱アセンブリ 93:定着ローラ
93a:芯金 93b:弾性層
93c:離型層 94:加圧アセンブリ
95:ニップ形成部材 96:ステー
97:加圧ベルト 100:画像形成装置
120:加熱ベルト 160:コネクタ
200:交流電源 210:トライアック
220:制御部 260:ベルト対向面
300:用紙分離機構 310:分離板(分離部材)
311:先端部 313:接触部
320:側板部 321a、321b:規制部
322:分離軸 330:板バネ(付勢手段)
331:板バネ支持部 340:引張バネ(付勢手段)
P:用紙(被搬送体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0180】
【特許文献1】特開2013-186394号公報
【特許文献2】特開2011-028081号公報