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特開2023-136729再加熱されずに喫食される冷蔵調理済み麺類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136729
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】再加熱されずに喫食される冷蔵調理済み麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20230922BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042576
(22)【出願日】2022-03-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 肇
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LB09
4B046LE06
4B046LG02
4B046LG04
4B046LG16
4B046LG20
4B046LG29
4B046LP03
4B046LP12
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP58
4B046LP71
4B046LQ02
4B046LQ03
(57)【要約】
【課題】冷蔵保存後に再加熱せずに喫食しても良好な食感を有する麺類の提供。
【解決手段】再加熱されずに喫食される冷蔵調理済み麺類の製造方法であって、生麺類を加熱調理する工程と、該加熱調理した麺類を冷蔵する工程を含み、該生麺は、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する多層麺であり、該A層の生地のpHが7.5~9.4であり、かつ該B層の生地のpHが該A層の生地のpHよりも高くかつpH10.3以下である、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再加熱されずに喫食される冷蔵調理済み麺類の製造方法であって、
生麺類を加熱調理する工程と、
該加熱調理した麺類を冷蔵する工程を含み、
該生麺は、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する多層麺であり、
該A層の生地のpHが7.5~9.4であり、かつ該B層の生地のpHが該A層の生地のpHよりも高くかつpH10.3以下である、方法。
【請求項2】
前記冷蔵された麺類のpHが7.9~9.5である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記A層及びB層の生地の原料粉が、小麦粉とタピオカ澱粉を、小麦粉:タピオカ澱粉=85:15~50:50の質量比で含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記A層及びB層の生地の原料粉が、小麦粉とタピオカ澱粉を合計で80質量%以上含有する、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記A層及び前記B層の生地がかんすい原料を含有する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記冷蔵調理済み麺類が冷やし中華、冷やしラーメン、又は冷やしつけ麺である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記多層麺が三層麺である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再加熱されずに喫食される冷蔵調理済み麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予め調理された状態で冷蔵流通され、再加熱せずにそのまま喫食される冷蔵調理済み麺類が、スーパーやコンビニエンスストアなどで販売されている。このような冷蔵調理済み麺類は、冷やし中華、冷やしラーメン、冷やしつけ麺などの中華麺が主である。一般的な中華麺には、独特の食感と風味を持たせるために、かんすい原料などのアルカリが添加されている。即席麺や乾麺としない通常の生中華麺の場合、かんすい原料の配合量は乾燥物換算で1質量%以上であり、麺のpHは10程度である。
【0003】
特許文献1には、α化した状態で常温で長期保存可能な麺、いわゆるロングライフ(LL)麺の製造に関して、原料粉にその重量の0.2%以下のかんすいを混ぜた麺生地から中華茹で麺を製造することが記載されている。ただしこの茹で麺は、長期保存可能な状態とするために、酸性領域に調整された後、密封包装して加熱殺菌される。
特許文献2には、冷蔵や冷凍せずに長期保存可能なウェットタイプの中華麺の製造に関して、生麺線を、湿熱処理した後、アルカリ剤で処理し、該アルカリ剤処理と同時又はその後に低酸素濃度下でかつ密封包装した状態で加熱処理して、包装体内の酸素量を麺重量100g当り常温で0.1mL以下、かつ麺線のpHを8.1~9.7とする、包装麺類の製造方法が記載されている。特許文献2の方法では、麺を冷蔵や冷凍せずに長期保存可能にするとともに中華麺らしい風味を維持するため、麺を密封包装して加熱処理したり、包装体内を低酸素に保つ必要がある。
特許文献3には、原料粉100重量部に、トランスグルタミナーゼ0.5~2.0重量部及びかんすい0.1~0.4重量部を添加して製麺し、α化処理して得られた中華麺が記載されている。
特許文献4には、小麦粉に対してかん粉0.08~0.8重量%を含有するマイクロ波加熱調理用生中華麺が記載されている。
特許文献5には、茹で湯をそのままスープ用に用いることができる生ラーメンとして、原料小麦粉に対し粉末かんすい0.1~0.4重量部が添加された麺生地を減圧乾熱下で熟成処理して得られた、麺水分20~40%、α化度80~60%、比容積75c以下の生ラーメンが記載されている。
特許文献6には、強力粉700に対して、かんすい2.1、添加剤としてグルコースオキシダーゼ0.1、小麦澱粉21及びタピオカ澱粉7を含有する原料から製造したチルド麺が記載されているが、これは冷蔵後の食感に劣るものであった。
特許文献7には、pHが7.2~9.4となる量のかん水を含む内層とpHが4.0~7.0の外層とからなる多層麺を、水分含量が55~70重量%となるように茹処理し、加圧加熱殺菌処理して加圧加熱殺菌処理ラーメンを製造することが記載されている。
特許文献8には、かん粉又は食塩の含有率が内層麺部と外層麺部で異なる三層麺をα化処理後冷凍することにより製造した三層冷凍麺が、解凍後の食感が良好であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-289190号公報
【特許文献2】特開2002-262795号公報
【特許文献3】特開平10-179066号公報
【特許文献4】特開昭61-170355号公報
【特許文献5】特開昭60-105466号公報
【特許文献6】特開2020-005533号公報
【特許文献7】特開平5-049425号公報
【特許文献8】特開平8-009909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生中華麺は、即席麺や乾麺と比べて食感や風味に優れ、特に茹でたては美味である。一方で、生中華麺を茹でた後冷蔵すると、かんすい原料の影響でぼそぼそして弾力のない食感になりやすい。特に、生中華麺を調理して冷蔵保存し、再加熱せずに喫食する場合、冷蔵した麺の低下した食感をそのまま感受することになるため、美味しく感じられなくなる。生麺から調理して冷蔵保存し、再加熱せずに喫食したときにも、良好な食感を有することができる中華麺が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定pHの弱アルカリの外層生地と、該外層生地より高pHの内層生地からなる多層麺から製造した調理済み中華麺が、冷蔵して再加熱せずに喫食したときにも良好な食感を有することを見出した。
【0007】
したがって本発明は、再加熱されずに喫食される冷蔵調理済み麺類の製造方法であって、
生麺類を加熱調理する工程と、
該加熱調理した麺類を冷蔵する工程を含み、
該生麺は、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する多層麺であり、
該A層の生地のpHが7.5~9.4であり、かつ該B層の生地のpHが該A層の生地のpHよりも高くかつpH10.3以下である、
方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中華麺を調理後に冷蔵保存したときに生じる麺の食感低下、例えば弾力が低下したりぼそついた食感になったりすることを抑制することができる。したがって本発明によれば、再加熱せずに喫食したときにも良好な食感を有する冷蔵調理済み麺類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の冷蔵調理済み麺類は、生麺を喫食可能に加熱調理し、次いで冷蔵保存することで製造される。当該生麺は、特定pHの弱アルカリの外層生地と、該外層生地より高pHの内層生地からなる多層麺である。該生麺は、全体としてアルカリ性に調整された麺類、いわゆる中華麺である。該麺類の種類や形状は特に限定されず、例えば麺線であっても麺皮であってもよい。
【0010】
本発明の冷蔵調理済み麺類の製造に用いられる生麺は、2つのA層の間にB層が配置された積層構造を有する多層麺である。当該多層麺は、三層以上の層からなる多層構造を有する。好ましくは、当該多層麺は、A層を外層とし、B層を内層とする三層麺、すなわち「A層/B層/A層」からなる三層構造を有する三層麺である。あるいは、当該多層麺において2枚のA層に挟まれる内層は、複数の層を有していてもよい。
【0011】
本発明で用いられる多層麺のA層及びB層の原料粉は、穀粉類を含有する。該穀粉類の例としては、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉、ふすま粉などが挙げられ、好ましくは小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、及びそば粉が挙げられる。これらの穀粉類は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0012】
好ましくは、前記A層及びB層の原料粉は小麦粉を含む。好ましくは、該A層及びB層の原料粉に使用される穀粉類の80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%が小麦粉である。該小麦粉は、麺類の製造に一般に使用されるものであればよく、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、熱処理小麦粉(例えばα化小麦粉、部分α化小麦粉、焙焼小麦粉)などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。ただし、該A層及びB層の原料粉に含まれる穀粉類中における熱処理小麦粉の量は20質量%以下であることが好ましい。
【0013】
前記A層及びB層の原料粉は、必要に応じてさらに澱粉類を含有していてもよい。好ましくは、少なくとも該A層は澱粉類を含有する。原料粉が澱粉を含有すると、冷蔵した麺類の食感が向上する。該澱粉類の例としては、特に限定されず、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及びそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。本発明において、これら未加工澱粉及び加工澱粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0014】
好ましくは、該澱粉類はタピオカ澱粉である。該タピオカ澱粉としては、未加工タピオカ澱粉及び加工タピオカ澱粉が挙げられ、該加工タピオカ澱粉としては、アセチル化、エーテル化及び架橋化からなる群より選択される1種以上の加工を行った加工タピオカ澱粉が挙げられる。上記に挙げたタピオカ澱粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。より好ましくは、前記澱粉類は加工タピオカ澱粉である。該加工タピオカ澱粉は、エーテル化タピオカ澱粉及びアセチル化タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上である。該エーテル化澱粉及びアセチル化澱粉は、架橋処理されていてもよい。
【0015】
前記A層及びB層の原料粉における前記穀粉類及び澱粉類の合計含有量は、それぞれ、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。好ましくは、該A層及びB層の原料粉は、小麦粉とタピオカ澱粉を合計で80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含有する。
【0016】
好ましくは、前記A層の原料粉は穀粉類及び澱粉類を含有する。より好ましくは、該A層及びB層の原料粉はいずれも穀粉類及び澱粉類を含有する。好ましくは、該穀粉類は小麦粉であり、該澱粉類はタピオカ澱粉である。該A層又はB層の原料粉が穀粉類及び澱粉類を含有する場合、該原料粉における穀粉類と澱粉類の質量比の範囲は、穀粉類:澱粉類=85:15~50:50である。例えば、該穀粉類が小麦粉であり、該澱粉類がタピオカ澱粉であれば、該A層又はB層の原料粉は、小麦粉とタピオカ澱粉を、小麦粉:タピオカ澱粉=85:15~50:50の質量比で含有する。
【0017】
前記A層及びB層の原料粉は、穀粉類、澱粉類に加えて、麺類の製造に従来用いられる他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分としては、例えば、小麦蛋白質(グルテン)、大豆蛋白質、乳蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材、油脂類、食塩、かんすい原料、糖類、甘味料、焼成カルシウム、食物繊維、香辛料、調味料、ビタミン、ミネラル、栄養強化剤、色素、香料、デキストリン(難消化性含む)、膨張剤、増粘剤、乳化剤、保水剤、保存剤、酵素剤、pH調整剤、酸化還元剤などが挙げられる。これらの他の材料は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。該A層及びB層の原料粉における該他の成分の合計含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。該原料粉中における該他の材料の各々の配合量は、目的とする麺類の種類に応じて適宜決定することができる。
【0018】
前記A層及びB層の原料粉の組成は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、該A層及びB層の原料粉に含まれる穀粉類、澱粉類及び他の材料の種類や量は、同じであっても異なっていてもよい。
【0019】
前記A層及びB層の原料粉のそれぞれに、常法に従って水分を添加し、混捏することによりA層用生地及びB層用生地を調製することができる。該A層用生地及びB層用生地の調製に用いられる水分としては、麺生地の製造に通常用いられる練水、例えば水、塩水、かん水、酸性溶液などを用いることができる。該A層用生地及びB層用生地の調製に用いられる練水の量は、練水の水分量として、原料粉100質量部あたり、好ましくは25~65質量部、より好ましくは30~50質量部である。
【0020】
調製されたA層用生地及びB層用生地は、好ましくはかんすい原料を含有する。かんすい原料としては、中華麺の製造に通常用いられるものを使用することができ、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのかんすい原料は、いずれか単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを主体とするかんすい原料が用いられる。該かんすい原料は市販品であってもよく、例えば、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムを含有する市販のかんすい原料(例えば、オリエンタル酵母工業株式会社製の商品名「粉末かんすい青」など)を好適に使用することができる。
【0021】
前記A層用生地及びB層用生地の調製の際に、かんすい原料は、原料粉に添加されてもよく、又は練水に添加されてもよい。A層用生地におけるかんすい原料の含有量は、原料粉中の穀粉類及び澱粉類の合計量100質量部に対して、好ましくは0.09~0.4質量部、より好ましくは0.1~0.4質量部、さらに好ましくは0.1~0.3質量部、なお好ましくは0.1~0.2質量部である。また、B層用生地におけるかんすい原料の含有量は、原料粉中の穀粉類及び澱粉類の合計量100質量部に対して、好ましくは0.2~1.5質量部、より好ましくは0.2~1.0質量部、さらに好ましくは0.2~0.6質量部である。好ましくは、B層用生地におけるかんすい原料の穀粉類及び澱粉類の合計量当たり含有量は、A層用生地よりも多く、より好ましくはA層用生地よりも穀粉類及び澱粉類の合計量100質量部あたり0.1質量部以上多い。
【0022】
本発明で用いられるA層用生地は、pH7.5~9.4、好ましくはpH7.5~9.2、より好ましくは7.5~8.8、さらに好ましくは7.5~8.0の麺生地である。A層用生地のpHが低すぎると、得られた麺類の弾性が低下し、一方、A層用生地のpHが高すぎると、得られた麺類がぼそついた食感となる。
一方、本発明で用いられるB層用生地は、pHが該A層用生地よりも高く、かつpH10.3以下である。好ましくは、該B層用生地はpH7.9~10.3、より好ましくはpH7.9~9.7の麺生地であり、かつ該A層用生地よりも0.2以上高いpHを有する。B層用生地のpHがA層用生地よりも低くなると、得られた麺類がぼそついた食感となり、一方、B層用生地のpHが高すぎると、得られた麺類の弾性が低下する。
本明細書において、麺生地のpHとは、麺生地(調製後、加熱調理又は乾燥していないもの)1gを水10mLに懸濁させた懸濁液のpH(25℃)をいう。
【0023】
該A層用生地及びB層用生地から多層麺の生麺が製造される。該多層麺は、その最外層の両側が該A層用生地から構成され、該最外層の内側の層が該B層用生地から構成されている。例えば、得られたA層用生地及びB層用生地をそれぞれ圧延すれば、A層麺帯及びB層麺帯を得ることができる。該B層麺帯を2枚の該A層麺帯で両側から挟み込んで、多層麺帯を作製し、圧延し、製麺することにより、多層麺の生麺を製造することができる。本発明で用いる多層麺は、その最外層の両側を該A層用生地から作製し、該最外層の内側の層を該B層用生地から作製すること以外は、従来の多層麺の製造方法と同様の手順で製造することができる。例えば、圧延と製麺の手段としては、押出し、ロールによる圧延と切出し、などが挙げられるが、特に限定されない。
【0024】
得られた多層麺は、二つの外層(A層)の間に、B層を含む一層以上の内層を有する、三層以上の層構造を有していればよい。例えば、該多層麺は、二つの外層と一つの内層を含む三層麺であってもよいが、二つの外層と二層以上の内層とを有する四層以上の麺であってもよい。好ましくは、該多層麺は三層麺である。該内層が二層以上である場合、各々の層は、前述したB層の原料粉の組成の範囲内において、組成の異なる生地から調製されていてもよい。
【0025】
前記多層麺は、生麺の状態で、全体の厚みが1~4mmであることが好ましい。該多層麺の各層の厚みは、麺の層数や求める食感に応じて適宜調整することができる。例えば、該多層麺における外層(A層)と内層の厚みの比は、外層/内層/外層=1~16:8:1~16である。
【0026】
得られた生麺を加熱調理し、得られた調理済みを冷蔵することで、本発明の冷蔵調理済み麺類を製造することができる。該生麺の加熱調理の手段としては、茹で、蒸しなどが挙げられる。該加熱調理により、麺類を喫食可能にα化する。該茹でや蒸しに用いる水としては、水、食塩水などが使用できる。基本的には、該生麺は、密封包装されることなく加熱調理され、好ましくは包装されることなく加熱調理される。例えば、該生麺は大量にまとめて茹で調理された後、水洗冷却し、小分けにされ、例えば1食ごとに分けられ、冷蔵保存用に包装される。
【0027】
加熱調理した麺類の冷蔵は、一般的な冷蔵調理済み麺類と同様に行うことができる。例えば、該加熱調理した麺類を1食~数食ごとに包装し、通常の冷蔵温度下(例えば約0℃~約10℃)で保存すればよい。基本的には、本発明の冷蔵調理済み麺類は、製造された後、必要に応じて保管や流通を経て、購買されるまで、冷蔵保存されるための食品として製造される。該調理済み麺類は、保管や流通の段階で一時的に冷凍保存されることは許容されるが、店頭で販売又は販売のために保管されているとき、あるいは最終消費者に提供されるときには冷蔵されている。したがって、本発明の冷蔵調理済み麺類は、製造から喫食されるまでの間に、少なくとも6時間、好ましくは12~120時間冷蔵保存されることが想定される。
【0028】
本発明において、該冷蔵された麺類のpHは、好ましくはpH7.9~9.5、より好ましくはpH7.9~9.3、さらに好ましくはpH7.9~9.0である。基本的には、前述のA層用生地及びB層用生地から製造した多層麺の生麺を加熱調理し、水洗冷却して冷蔵すれば、上記pHを有する冷蔵された麺類を得ることができる。必要に応じて、該冷蔵された麺類のpHを上記範囲にするために、生麺の茹で水のpH条件などを調整したり、加熱調理した麺類のpHを酸又はアルカリを用いて調整したりすることができる。例えば、該加熱調理した麺類を、冷蔵前に酸又はアルカリを用いてpH調整してもよい。該pH調整に用いる酸又はアルカリには、食品用のpH調整剤として通常使用されているもの(例えば有機酸、炭酸、リン酸の塩など)を用いることができる。
本明細書において、冷蔵された麺類のpHとは、加熱調理された後、少なくとも6時間冷蔵保存した麺類(外層と内層の比率が多層麺の厚み比と同じになるように切り出した断片)1gを水10mLに懸濁させた懸濁液のpH(25℃)をいう。
【0029】
本発明の冷蔵調理済み麺類は、冷蔵保存の後、再加熱されることなく喫食される。好ましくは、冷蔵保存の後、冷たい状態のまま喫食される。本発明の冷蔵調理済み麺類は、前述した調理済み麺類以外に、具材、スープ、調味料などを備えていてもよい。これらの具材、スープ、調味料などは、該麺類とともに包装され、冷蔵保存されていてもよく、又は別添えされていてもよい。このような本発明の冷蔵調理済み麺類の具体例としては、冷やし中華、冷やしラーメン、冷やしつけ麺などが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例0030】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0031】
1.生麺の製造
1)材料 小麦粉:中力粉(薫風、日清製粉(株))
加工澱粉:エーテル化リン酸架橋タピオカ澱粉(あさがお、松谷化学工業(株))
食塩:並塩
かんすい:粉末かんすい青、オリエンタル酵母工業(株)
グルテン:AグルG、グリコ栄養食品(株)
【0032】
2)単層麺(対照)の製造
表1及び2に示す組成の原料粉と練水を混合し、ミキシングして生地を調製した。該生地を製麺ロールで圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#18角)で切り出して麺線を製造した(麺厚1.7mm)。
【0033】
3)多層麺の製造
A層(外層):表1及び2に示す組成の原料粉と練水を混合し、減圧(-0.093MPa)下で混捏し、圧延して厚さ7mmのシート状の外層用生地を得た。得られた麺生地のpHを測定した。
B層(内層):表1及び2に示す組成の原料粉と練水を混合し、減圧(-0.093MPa)下で混捏し、圧延して厚さ7mmのシート状の内層用生地を得た。得られた麺生地のpHを測定した。
2枚の外層用生地の間に1枚の内層用生地を積層し、圧延して、三層麺帯を調製した。外層と内層の厚比は外層:内層:外層=1:1:1であった。得られた麺帯を切り刃(#18角)で切り出して三層の麺線(麺厚1.7mm)を製造した。
【0034】
4)冷蔵茹で中華麺の製造
得られた麺線を、歩留まりが175%程度となるように熱湯で茹で、水洗冷却した。得られた茹で麺にほぐれ剤を噴霧した後、個食に包装し、冷蔵庫(4℃)で24時間保存した。冷蔵保存後の麺の一部を取りpHを測定した。また冷蔵保存後の麺につゆをかけ、その食感を訓練したパネラー10人により下記評価基準で評価し、平均点を求めた。結果を表1及び2に示す。
【0035】
<評価基準>(弾性)
5点:対照と比べて非常に弾性が優れる
4点:対照と比べて弾性が優れる
3点:対照と比べて弾性がやや優れる
2点:対照と同等である
1点:対照と比べて弾性が劣る
(ぼそつき)
5点:対照と比べて非常にぼそつきが少ない
4点:対照と比べてぼそつきが少ない
3点:対照と比べてぼそつきがやや少ない
2点:対照と同等である
1点:対照と比べてぼそつきがある
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】