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特開2023-136822半導体装置、インバータ回路、駆動装置、車両、及び、昇降機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136822
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】半導体装置、インバータ回路、駆動装置、車両、及び、昇降機
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230922BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230922BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230922BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652C
H01L29/78 652H
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
H01L29/78 652S
H01L29/78 655A
H01L29/78 652E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042732
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】木本 真一
(72)【発明者】
【氏名】京極 真也
(72)【発明者】
【氏名】飯島 良介
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(57)【要約】
【課題】オン抵抗を低減することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、第1の方向及び第1の方向に垂直な第2の方向に平行な第1の面と第2の面を有する炭化珪素層、第1の方向に延伸する第1のトレンチと第2のトレンチと第3のトレンチ、炭化珪素層の中の、n型の第1の領域、n型の第1の領域と第1の面との間にあり、第1のトレンチと第2のトレンチとの間のp型の第2の領域と、第1のトレンチの底面のp型の第6の領域、第2のトレンチの底面のp型の第7の領域、第3のトレンチの底面のp型の第8の領域、第6の領域及び第2の領域に接するp型の第9の領域、第7の領域及び第2の領域に接するp型の第10の領域を備える。第1の方向に垂直で、第9の領域と第10の領域を含む断面において、第1の領域が、第1のトレンチの第3のトレンチ側の側面、及び、第3のトレンチの第1のトレンチ側の側面に接する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向及び前記第1の方向に垂直な第2の方向に平行な第1の面と、前記第1の面に平行な第2の面と、を有する炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の中に存在し、前記第1の面において前記第1の方向に延伸し、第1の側面と、第2の側面と、前記第1の側面と前記第2の側面との間の第1の底面とを有する第1のトレンチと、
前記第1のトレンチの中に位置する第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置する第1のゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の中に存在し、前記第1の面において前記第1の方向に延伸し、前記第2の側面に対向する第3の側面と、第4の側面と、前記第3の側面と前記第4の側面との間の第2の底面とを有する第2のトレンチと、
前記第2のトレンチの中に位置する第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置する第2のゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の中に存在し、前記第1の面において前記第1の方向に延伸し、前記第2のトレンチとの間に前記第1のトレンチが位置し、第5の側面と、前記第1の側面に対向する第6の側面と、前記第5の側面と前記第6の側面との間の第3の底面とを有する第3のトレンチと、
前記第3のトレンチの中に位置する第3のゲート電極と、
前記第3のゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置する第3のゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の中に位置するn型の第1の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置し、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置し、前記第1のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置するp型の第3の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第4の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第5の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の底面との間に位置するp型の第6の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第2の底面との間に位置するp型の第7の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第3の底面との間に位置するp型の第8の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第6の炭化珪素領域に接し、前記第2の炭化珪素領域に接し、前記第2の側面に接し、前記第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第9の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第7の炭化珪素領域に接し、前記第2の炭化珪素領域に接し、前記第3の側面に接し、前記第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第10の炭化珪素領域と、
を備え、
前記第1の面に垂直で、前記第1の方向に垂直で、前記第9の炭化珪素領域の中の一つ及び前記第10の炭化珪素領域の中の一つを含む第1の断面において、前記第1の炭化珪素領域は前記第1の側面及び前記第6の側面に接する、半導体装置。
【請求項2】
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第6の炭化珪素領域に接し、前記第3の炭化珪素領域に接し、前記第1の側面に接し、前記第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第11の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に位置し、前記第8の炭化珪素領域に接し、前記第3の炭化珪素領域に接し、前記第6の側面に接し、前記第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第12の炭化珪素領域と、を更に備え、
前記第1の断面に平行で、前記第1の断面に対し前記第1の方向に位置し、前記第11の炭化珪素領域の中の一つ及び前記第12の炭化珪素領域の中の一つを含む第2の断面において、
前記第1の炭化珪素領域は前記第2の側面及び前記第3の側面に接する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第9の炭化珪素領域と前記第11の炭化珪素領域は、前記第1の方向に交互に配置される請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の繰り返しピッチは、前記第11の炭化珪素領域の前記第1の方向の繰り返しピッチと等しい請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の断面において、前記第9の炭化珪素領域と前記第10の炭化珪素領域は接する請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の断面において、前記第6の炭化珪素領域は前記第1の側面に接し、前記第7の炭化珪素領域は前記第4の側面に接する請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1のトレンチの第2の方向の幅は、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間の距離よりも小さい、請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間の距離は2μm以下である、請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1のトレンチの第2の方向の幅は1μm以下である、請求項1ないし請求項8いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の繰り返しピッチは、前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の長さの50倍以下である請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の繰り返しピッチの2分の1は、前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の長さの50倍以下である請求項4記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の長さは、0.5μm以上3μm以下である請求項1ないし請求項11いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の繰り返しピッチは、5μm以上100μm以下である請求項1記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第9の炭化珪素領域の前記第1の方向の繰り返しピッチの2分の1は、5μm以上100μm以下である請求項4記載の半導体装置。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14いずれか一項記載の半導体装置を備えるインバータ回路。
【請求項16】
請求項1ないし請求項14いずれか一項記載の半導体装置を備える駆動装置。
【請求項17】
請求項1ないし請求項14いずれか一項記載の半導体装置を備える車両。
【請求項18】
請求項1ないし請求項14いずれか一項記載の半導体装置を備える昇降機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、インバータ回路、駆動装置、車両、及び、昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の半導体デバイス用の材料として炭化珪素(SiC)が期待されている。炭化珪素はシリコンと比較して、バンドギャップが約3倍、破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍と優れた物性を有する。この物性を活用すれば低損失かつ高温動作可能な半導体デバイスを実現することができる。
【0003】
炭化珪素を用いたMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)では、オン抵抗を低減することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-195081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、オン抵抗を低減することが可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、第1の方向及び前記第1の方向に垂直な第2の方向に平行な第1の面と、前記第1の面に平行な第2の面と、を有する炭化珪素層と、前記炭化珪素層の中に存在し、前記第1の面において前記第1の方向に延伸し、第1の側面と、第2の側面と、前記第1の側面と前記第2の側面との間の第1の底面とを有する第1のトレンチと、前記第1のトレンチの中に位置する第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置する第1のゲート絶縁層と、前記炭化珪素層の中に存在し、前記第1の面において前記第1の方向に延伸し、前記第2の側面に対向する第3の側面と、第4の側面と、前記第3の側面と前記第4の側面との間の第2の底面とを有する第2のトレンチと、前記第2のトレンチの中に位置する第2のゲート電極と、前記第2のゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置する第2のゲート絶縁層と、前記炭化珪素層の中に存在し、前記第1の面において前記第1の方向に延伸し、前記第2のトレンチとの間に前記第1のトレンチが位置し、第5の側面と、前記第1の側面に対向する第6の側面と、前記第5の側面と前記第6の側面との間の第3の底面とを有する第3のトレンチと、前記第3のトレンチの中に位置する第3のゲート電極と、前記第3のゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置する第3のゲート絶縁層と、前記炭化珪素層の中に位置するn型の第1の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置し、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置し、前記第1のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置するp型の第3の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第4の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第3の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第5の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の底面との間に位置するp型の第6の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第2の底面との間に位置するp型の第7の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第1の炭化珪素領域と前記第3の底面との間に位置するp型の第8の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第6の炭化珪素領域に接し、前記第2の炭化珪素領域に接し、前記第2の側面に接し、前記第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第9の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に位置し、前記第7の炭化珪素領域に接し、前記第2の炭化珪素領域に接し、前記第3の側面に接し、前記第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第10の炭化珪素領域と、を備え、前記第1の面に垂直で、前記第1の方向に垂直で、前記第9の炭化珪素領域の中の一つ及び前記第10の炭化珪素領域の中の一つを含む第1の断面において、前記第1の炭化珪素領域は前記第1の側面及び前記第6の側面に接する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図2】第1の実施形態の半導体装置の模式平面図。
図3】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図4】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図5】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図6】比較例の半導体装置の模式断面図。
図7】比較例の半導体装置の模式断面図。
図8】比較例の半導体装置における課題の説明図。
図9】第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図10】第1の実施形態の第1の変形例の半導体装置の模式断面図。
図11】第1の実施形態の第2の変形例の半導体装置の模式断面図。
図12】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図13】第3の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図14】第4の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図15】第5の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図16】第6の実施形態の駆動装置の模式図。
図17】第7の実施形態の車両の模式図。
図18】第8の実施形態の車両の模式図。
図19】第9の実施形態の昇降機の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0009】
また、以下の説明において、n、n、n及び、p、p、pの表記を用いる場合、これらの表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちnはnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、nはnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、pはpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、pはpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n型、n型を単にn型、p型、p型を単にp型と記載する場合もある。
【0010】
不純物濃度は、例えば、Secondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)により測定することが可能である。また、不純物濃度の相対的な高低は、例えば、Scanning Capacitance Microscopy(SCM)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SCM像から求めることが可能である。
【0011】
トレンチの幅、トレンチの間隔、トレンチの深さ、絶縁層の厚さ等は、例えば、SIMSや、Transmission Electron Microscope(TEM)の画像上で計測することが可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の方向及び第1の方向に垂直な第2の方向に平行な第1の面と、第1の面に平行な第2の面と、を有する炭化珪素層と、炭化珪素層の中に存在し、第1の面において第1の方向に延伸し、第1の側面と、第2の側面と、第1の側面と第2の側面との間の第1の底面とを有する第1のトレンチと、第1のトレンチの中に位置する第1のゲート電極と、第1のゲート電極と炭化珪素層との間に位置する第1のゲート絶縁層と、炭化珪素層の中に存在し、第1の面において第1の方向に延伸し、第2の側面に対向する第3の側面と、第4の側面と、第3の側面と第4の側面との間の第2の底面とを有する第2のトレンチと、第2のトレンチの中に位置する第2のゲート電極と、第2のゲート電極と炭化珪素層との間に位置する第2のゲート絶縁層と、炭化珪素層の中に存在し、第1の面において第1の方向に延伸し、第2のトレンチとの間に第1のトレンチが位置し、第5の側面と、第1の側面に対向する第6の側面と、第5の側面と第6の側面との間の第3の底面とを有する第3のトレンチと、第3のトレンチの中に位置する第3のゲート電極と、第3のゲート電極と炭化珪素層との間に位置する第3のゲート絶縁層と、炭化珪素層の中に位置するn型の第1の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第1の炭化珪素領域と第1の面との間に位置し、第1のトレンチと第2のトレンチとの間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第1の炭化珪素領域と第1の面との間に位置し、第1のトレンチと第3のトレンチとの間に位置するp型の第3の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第2の炭化珪素領域と第1の面との間に位置するn型の第4の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第3の炭化珪素領域と第1の面との間に位置するn型の第5の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第1の炭化珪素領域と第1の底面との間に位置するp型の第6の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第1の炭化珪素領域と第2の底面との間に位置するp型の第7の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第1の炭化珪素領域と第3の底面との間に位置するp型の第8の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第6の炭化珪素領域に接し、第2の炭化珪素領域に接し、第2の側面に接し、第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第9の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に位置し、第7の炭化珪素領域に接し、第2の炭化珪素領域に接し、第3の側面に接し、第1の方向に繰り返し配置された複数のp型の第10の炭化珪素領域と、を備える。第1の面に垂直で、第1の方向に垂直で、第9の炭化珪素領域の中の一つ及び第10の炭化珪素領域の中の一つを含む第1の断面において、第1の炭化珪素領域は第1の側面及び第6の側面に接する。
【0013】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。第1の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いたトレンチゲート型の縦型MOSFET100である。MOSFET100は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。
【0014】
図2は、第1の実施形態の半導体装置の模式平面図である。図2は、図1の第1の面(図1中のF1)における平面図である。第1の方向及び第2の方向は第1の面F1に対して平行な方向である。また、第2の方向は第1の方向に対して垂直な方向である。
【0015】
図3は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図3は、図1のFxに沿った断面である。図3は、第1の方向及び第2の方向に対し平行な断面である。図3は、第1の面F1に対して平行な断面である。図1は、図3のAA’断面である。AA’断面は、第1の断面の一例である。
【0016】
図4は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図4は、図3のBB’断面である。BB’断面は、第2の断面の一例である。
【0017】
図5は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図5は、図3のCC’断面である。
【0018】
MOSFET100は、炭化珪素層10、第1のトレンチ11、第1のゲート電極12、第1のゲート絶縁層13、第2のトレンチ21、第2のゲート電極22、第2のゲート絶縁層23、第3のトレンチ31、第3のゲート電極32、第3のゲート絶縁層33、ソース電極41、ドレイン電極42、層間絶縁層43を備える。
【0019】
以下、第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31を総称して、トレンチと記載する場合がある。また、第1のゲート電極12、第2のゲート電極22、及び第3のゲート電極32を総称して、ゲート電極と記載する場合がある。また、第1のゲート絶縁層13、第2のゲート絶縁層23、及び第3のゲート絶縁層33を総称して、ゲート絶縁層と記載する場合がある。
【0020】
炭化珪素層10の中には、n型のドレイン領域50、n型のドリフト領域51(第1の炭化珪素領域)、p型の第1のボディ領域52a(第2の炭化珪素領域)、p型の第2のボディ領域52b(第3の炭化珪素領域)、p型の第3のボディ領域52c、p型の第4のボディ領域52d、n型の第1のソース領域53a(第4の炭化珪素領域)、n型の第2のソース領域53b(第5の炭化珪素領域)、n型の第3のソース領域53c、n型の第4のソース領域53d、p型の第1の電界緩和領域54a(第6の炭化珪素領域)、p型の第2の電界緩和領域54b(第7の炭化珪素領域)、p型の第3の電界緩和領域54c(第8の炭化珪素領域)、p型の第1の接続領域55a(第9の炭化珪素領域)、p型の第2の接続領域55b(第10の炭化珪素領域)、p型の第3の接続領域55c(第11の炭化珪素領域)、p型の第4の接続領域55d(第12の炭化珪素領域)、p型の第5の接続領域55e、p型の第6の接続領域55f、及び、p型のコンタクト領域56が設けられる。
【0021】
以下、第1のボディ領域52a、第2のボディ領域52b、p型の第3のボディ領域52c、及び第4のボディ領域52dを総称して、ボディ領域52と記載する場合がある。また、第1のソース領域53a、第2のソース領域53b、第3のソース領域53c、及び第4のソース領域53dを総称して、ソース領域53と記載する場合がある。また、第1の電界緩和領域54a、第2の電界緩和領域54b、及び第3の電界緩和領域54cを総称して、電界緩和領域54と記載する場合がある。また、第1の接続領域55a、第2の接続領域55b、第3の接続領域55c、第4の接続領域55d、第5の接続領域55e、及び第6の接続領域55fを総称して、接続領域55と記載する場合がある。
【0022】
炭化珪素層10は、単結晶のSiCである。炭化珪素層10は、例えば、4H-SiCである。
【0023】
炭化珪素層10は、第1の面(図1中“F1”)と第2の面(図1中“F2”)とを備える。第1の面F1と第2の面F2は対向する。以下、第1の面F1を表面、第2の面F2を裏面とも称する。なお、以下、「深さ」とは、第1の面F1を基準とした第2の面F2に向かう方向の深さを意味する。
【0024】
図1ないし図5中、第1の方向及び第2の方向は、第1の面F1及び第2の面F2に平行である。第3の方向は、第1の面F1及び第2の面F2に垂直である。
【0025】
第1の面F1は、例えば、(0001)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。すなわち、法線が[0001]方向のc軸に対し0度以上8度以下傾斜した面である。言い換えれば、(0001)面に対するオフ角が0度以上8度以下である。また、第2の面F2は、例えば、(000-1)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。
【0026】
(0001)面はシリコン面と称される。(000-1)面はカーボン面と称される。第1の面F1及び第2の面F2の傾斜方向は、例えば、[11-20]方向である。[11-20]方向は、a軸方向である。図1では、例えば、図中に示す第2の方向がa軸方向である。
【0027】
第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31は、炭化珪素層10の中に存在する。第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31は、図2に示すように第1の方向に延伸する。
【0028】
第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31の第2の方向の幅(図2中のw)は、例えば、第1のトレンチ11と第2のトレンチ21との間の距離(図2中のd)及び第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間の距離(図2中のd)よりも小さい。
【0029】
第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31の第2の方向の幅(図2中のw)は、例えば、0.3μm以上1μm以下である。第1のトレンチ11と第2のトレンチ21との間の距離(図2中のd)及び第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間の距離(図2中のd)は、例えば、0.5μm以上2μm以下である。第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31の深さは、例えば、1μm以上2μm以下である。
【0030】
第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31を含む複数のトレンチが、第2の方向に繰り返し配置される。トレンチの第2の方向の繰り替えしピッチは、例えば、1μm以上5μm以下である。
【0031】
第2のトレンチ21と第3のトレンチ31との間に、第1のトレンチ11が位置する。
【0032】
第1のトレンチ11は、第1の側面11aと、第2の側面11bと、第1の底面11cを有する。第1の底面11cは、第1の側面11aと第2の側面11bの間に設けられる。
【0033】
第1のゲート電極12は、第1のトレンチ11の中に設けられる。第1のゲート電極12は、ソース電極41とドレイン電極42との間に設けられる。第1のゲート電極12は、第1の方向に延伸する。
【0034】
第1のゲート絶縁層13は、第1のゲート電極12と炭化珪素層10との間に設けられる。第1のゲート絶縁層13は、第1のソース領域53a、第2のソース領域53b、第1のボディ領域52a、第2のボディ領域52b、第1の電界緩和領域54a、第1の接続領域55a、及び、第3の接続領域55cの各領域と、第1のゲート電極12との間に設けられる。
【0035】
第2のトレンチ21は、第3の側面21aと、第4の側面21bと、第2の底面21cを有する。第2の底面21cは、第3の側面21aと第4の側面21bの間に設けられる。第3の側面21aは、第2の側面11bに対向する。
【0036】
第2のゲート電極22は、第2のトレンチ21の中に設けられる。第2のゲート電極22は、ソース電極41とドレイン電極42との間に設けられる。第2のゲート電極22は、第1の方向に延伸する。
【0037】
第2のゲート絶縁層23は、第2のゲート電極22と炭化珪素層10との間に設けられる。第2のゲート絶縁層23は、第1のソース領域53a、第3のソース領域53c、第1のボディ領域52a、第3のボディ領域52c、第2の電界緩和領域54b、第2の接続領域55b、及び、第5の接続領域55eの各領域と、第2のゲート電極22との間に設けられる。
【0038】
第3のトレンチ31は、第5の側面31aと、第6の側面31bと、第3の底面31cを有する。第3の底面31cは、第5の側面31aと第6の側面31bの間に設けられる。第6の側面31bは、第1の側面11aに対向する。
【0039】
第3のゲート電極32は、第3のトレンチ31の中に設けられる。第3のゲート電極32は、ソース電極41とドレイン電極42との間に設けられる。第3のゲート電極32は、第1の方向に延伸する。
【0040】
第3のゲート絶縁層33は、第3のゲート電極32と炭化珪素層10との間に設けられる。第3のゲート絶縁層33は、第2のソース領域53b、第4のソース領域53d、第2のボディ領域52b、第4のボディ領域52d、第3の電界緩和領域54c、第4の接続領域55d、及び、第6の接続領域55fの各領域と、第3のゲート電極32との間に設けられる。
【0041】
第1のゲート電極12、第2のゲート電極22、及び第3のゲート電極32は、導電層である。第1のゲート電極12、第2のゲート電極22、及び第3のゲート電極32は、例えば、p型不純物又はn型不純物を含む多結晶質シリコンである。
【0042】
第1のゲート絶縁層13、第2のゲート絶縁層23、及び第3のゲート絶縁層33は、例えば、シリコン酸化膜である。第1のゲート絶縁層13、第2のゲート絶縁層23、及び第3のゲート絶縁層33には、例えば、High-k絶縁膜(HfSiON,ZrSiON,AlONなどの高誘電率絶縁膜)が適用可能である。また、第1のゲート絶縁層13、第2のゲート絶縁層23、及び第3のゲート絶縁層33には、例えば、シリコン酸化膜(SiO)とHigh-K絶縁膜との積層膜も適用可能である。
【0043】
層間絶縁層43は、第1のゲート電極12の上、第2のゲート電極22の上、及び第3のゲート電極32の上に設けられる。層間絶縁層43は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0044】
ソース電極41は、炭化珪素層10の表面側に設けられる。ソース電極41は、炭化珪素層10の表面上に設けられる。ソース電極41は、ボディ領域52、ソース領域53、及びコンタクト領域56に電気的に接続される。ソース電極41は、ソース領域53、及びコンタクト領域56に接する。
【0045】
ソース電極41は、金属を含む。ソース電極41を形成する金属は、例えば、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層構造である。ソース電極41は、炭化珪素層10に接する金属シリサイドや金属カーバイドを含んでも構わない。
【0046】
ドレイン電極42は、炭化珪素層10の裏面側に設けられる。ドレイン電極42は、炭化珪素層10の裏面上に設けられる。ドレイン電極42は、ドレイン領域50に接する。
【0047】
ドレイン電極42は、例えば、金属又は金属半導体化合物である。ドレイン電極42は、例えば、ニッケルシリサイド(NiSi)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、及び、金(Au)から成る群から選ばれる材料を含む。
【0048】
型のドレイン領域50は、炭化珪素層10の裏面側に設けられる。ドレイン領域50は、例えば、窒素(N)をn型不純物として含む。ドレイン領域50のn型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0049】
型のドリフト領域51は、ドレイン領域50上に設けられる。ドリフト領域51は、ドレイン領域50と炭化珪素層10の表面との間に設けられる。
【0050】
ドリフト領域51は、例えば、窒素(N)をn型不純物として含む。ドリフト領域51のn型不純物濃度は、例えば、4×1014cm-3以上1×1018cm-3以下である。ドリフト領域51の第3の方向の厚さは、例えば、4μm以上150μm以下である。
【0051】
p型の第1のボディ領域52aは、ドリフト領域51と炭化珪素層10の表面との間に設けられる。第1のボディ領域52aは、第1のトレンチ11と第2のトレンチ21との間に設けられる。第1のボディ領域52aは、第2の側面11b及び第3の側面21aに接する。
【0052】
p型の第2のボディ領域52bは、ドリフト領域51と炭化珪素層10の表面との間に設けられる。第2のボディ領域52bは、第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間に設けられる。第2のボディ領域52bは、第1の側面11a及び第6の側面31bに接する。
【0053】
ボディ領域52はMOSFET100のチャネル領域として機能する。例えば、MOSFET100のオン動作時に、ボディ領域52のゲート絶縁層と接する領域に電子が流れるチャネルが形成される。
【0054】
ボディ領域52は、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。ボディ領域52のp型不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。ボディ領域52の深さは、例えば、0.2μm以上1.0μm以下である。
【0055】
型の第1のソース領域53aは、第1のボディ領域52aと炭化珪素層10の表面との間に設けられる。第1のソース領域53aは、ソース電極41と接する。第1のソース領域53aは、第1のゲート絶縁層13及び第2のゲート絶縁層23に接する。第1のソース領域53aは、第2の側面11b及び第3の側面21aに接する。
【0056】
型の第2のソース領域53bは、第2のボディ領域52bと炭化珪素層10の表面との間に設けられる。第2のソース領域53bは、ソース電極41と接する。第2のソース領域53bは、第1のゲート絶縁層13及び第3のゲート絶縁層33に接する。第2のソース領域53bは、第1の側面11a及び第6の側面31bに接する。
【0057】
ソース領域53のn型不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。ソース領域53の深さは、ボディ領域52の深さよりも浅く、例えば、0.1μm以上0.3μm以下である。ドリフト領域51とソース領域53との距離は、例えば、0.1μm以上0.9μm以下である。
【0058】
型のコンタクト領域56は、ボディ領域52と炭化珪素層10の表面との間に設けられる。コンタクト領域56は、ソース電極41と接する。コンタクト領域56は、第1の方向に繰り返し配置される。
【0059】
コンタクト領域56は、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。コンタクト領域56のp型不純物濃度は、例えば、ボディ領域52のp型不純物濃度よりも高い。
【0060】
コンタクト領域56のp型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下である。また、コンタクト領域56のソース電極41とのコンタクト部分は高濃度であることが好ましく、例えば、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0061】
型の第1の電界緩和領域54aは、ドリフト領域51と第1のトレンチ11との間に設けられる。第1の電界緩和領域54aは、ドリフト領域51と第1の底面11cとの間に設けられる。第1の電界緩和領域54aは、第1の底面11cに接する。
【0062】
型の第2の電界緩和領域54bは、ドリフト領域51と第2のトレンチ21との間に設けられる。第2の電界緩和領域54bは、ドリフト領域51と第2の底面21cとの間に設けられる。第2の電界緩和領域54bは、第2の底面21cに接する。
【0063】
型の第3の電界緩和領域54cは、ドリフト領域51と第3のトレンチ31との間に設けられる。第3の電界緩和領域54cは、ドリフト領域51と第3の底面31cとの間に設けられる。第3の電界緩和領域54cは、第3の底面31cに接する。
【0064】
電界緩和領域54は、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。電界緩和領域54のp型不純物濃度は、例えば、ボディ領域52のp型不純物濃度よりも高い。電界緩和領域54のp型不純物濃度は、例えば、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0065】
電界緩和領域54は、例えば、炭化珪素層10にトレンチを形成した後に、トレンチの底面からアルミニウム(Al)を炭化珪素層10にイオン注入することで形成できる。
【0066】
電界緩和領域54の電位は、ソース電極41の電位に固定される。電界緩和領域54の電位は、ソース電位に固定される。電界緩和領域54は、トレンチの底部のゲート絶縁層に印加される電界を緩和させる機能を有する。
【0067】
型の第1の接続領域55aは、第1の電界緩和領域54aに接する。また、第1の接続領域55aは、第1のボディ領域52aに接する。第1の接続領域55aは、第1のトレンチ11の第2の側面11bに接する。
【0068】
複数の第1の接続領域55aは、第1の方向に繰り返し配置される。第1の接続領域55aは、第1の方向に第1のピッチ(図3のP1)で繰り返し配置される。
【0069】
第1の接続領域55aの第1の方向の長さ(図3中のL1)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
【0070】
型の第2の接続領域55bは、第2の電界緩和領域54bに接する。また、第2の接続領域55bは、第1のボディ領域52aに接する。第2の接続領域55bは、第2のトレンチ21の第3の側面21aに接する。
【0071】
複数の第2の接続領域55bは、第1の方向に繰り返し配置される。第2の接続領域55bは、第1の方向に第1の繰り返しピッチ(図3のP1)で配置される。
【0072】
第2の接続領域55bは、第2の方向において、第1の接続領域55aと対向する。
【0073】
第1の面F1に垂直で、第1の方向に垂直で、第1の接続領域55aの中の一つ及び第2の接続領域55bの中の一つを含む第1の断面(図1)において、ドリフト領域51は第1のトレンチ11の第1の側面11a及び第3のトレンチ31の第6の側面31bに接する。第1の断面(図1)において、第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間には、p型の接続領域は設けられない。
【0074】
第2の接続領域55bの第1の方向の長さ(図3中のL1)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
【0075】
型の第3の接続領域55cは、第1の電界緩和領域54aに接する。また、第3の接続領域55cは、第2のボディ領域52bに接する。第3の接続領域55cは、第1のトレンチ11の第1の側面11aに接する。
【0076】
複数の第3の接続領域55cは、第1の方向に繰り返し配置される。第3の接続領域55cは、第1の方向に第2の繰り返しピッチ(図3のP2)で繰り返し配置される。
【0077】
第3の接続領域55cの第1の方向の長さ(図3中のL2)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
【0078】
型の第4の接続領域55dは、第3の電界緩和領域54cに接する。また、第4の接続領域55dは、第2のボディ領域52bに接する。第4の接続領域55dは、第3のトレンチ31の第6の側面31bに接する。
【0079】
複数の第4の接続領域55dは、第1の方向に繰り返し配置される。第4の接続領域55dは、第1の方向に第2の繰り返しピッチ(図3のP2)で配置される。
【0080】
第4の接続領域55dは、第2の方向において、第3の接続領域55cと対向する。
【0081】
第1の断面(図1)に平行で、第1の断面(図1)の第1の方向に位置し、第3の電界緩和領域54cの中の一つ及び第4の接続領域55dの中の一つを含む第2の断面(図4)において、ドリフト領域51は第1のトレンチ11の第2の側面11b及び第2のトレンチ21の第3の側面21aに接する。第2の断面(図4)において、第1のトレンチ11と第2のトレンチ21との間には、p型の接続領域は設けられない。
【0082】
第4の接続領域55dの第1の方向の長さ(図3中のL2)は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
【0083】
第1の接続領域55aと第3の接続領域55cは、第1の方向に交互に配置される。第1の繰り返しピッチP1は、例えば、第2の繰り返しピッチP2と等しい。
【0084】
第1の接続領域55aと第3の接続領域55cは、例えば、第1の方向に同一の繰り返しピッチで交互に配置される。第1の接続領域55aと第3の接続領域55cの第1の方向の繰り返しピッチは、例えば、第1の繰り返しピッチP1の2分の1である。第1の接続領域55aと第3の接続領域55cの第1の方向の繰り返しピッチは、例えば、第2の繰り返しピッチP2の2分の1である。
【0085】
第1の繰り返しピッチP1の2分の1は、例えば、5μm以上100μm以下である。第2の繰り返しピッチP2の2分の1は、例えば、5μm以上100μm以下である。
【0086】
第1の接続領域55aの第1の繰り返しピッチP1の2分の1は、例えば、第1の接続領域55aの第1の方向の長さ(図3中のL1)の50倍以下である。第3の接続領域55cの第2の繰り返しピッチP2の2分の1は、例えば、第3の接続領域55cの第1の方向の長さ(図3中のL2)の50倍以下である。
【0087】
接続領域55は、例えば、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。接続領域55のp型不純物濃度は、例えば、ボディ領域52のp型不純物濃度よりも高い。接続領域55のp型不純物濃度は、例えば、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0088】
接続領域55は、例えば、炭化珪素層10にトレンチを形成した後に、トレンチの側面から、斜めイオン注入法を用いてアルミニウム(Al)を炭化珪素層10にイオン注入することで形成できる。
【0089】
接続領域55は、電界緩和領域54とボディ領域52とを電気的に接続する機能を有する。接続領域55によって、電界緩和領域54はソース電極41の電位に固定される。接続領域55によって、電界緩和領域54はソース電位に固定される。
【0090】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0091】
第1の実施形態のMOSFET100によれば、オン抵抗の低減、ゲート絶縁層の信頼性の向上、及び、スイッチング損失の低減を同時に実現できる。以下、詳述する。
【0092】
MOSFET100は、トレンチの中にゲート電極が設けられたトレンチゲート構造が適用される。トレンチゲート構造を適用することで、単位面積あたりのチャネル面積が増加し、MOSFET100のオン抵抗が低減される。例えば、トレンチ幅やトレンチの繰り返しピッチを縮小してMOSFET100を微細化すれば、MOSFET100のオン抵抗は更に低減する。
【0093】
また、MOSFET100は、トレンチの底部に、電界緩和領域54を有する。電界緩和領域54を有することにより、MOSFET100のオフ動作時に、トレンチの底部のゲート絶縁層に印加される電界が緩和される。よって、ゲート絶縁層の信頼性が向上する。
【0094】
例えば、電界緩和領域54の電位がフローティング状態にあると、MOSFETのスイッチング損失が増大する。例えば、電界緩和領域54の電位がフローティング状態にあると、MOSFETのターンオフ動作の際に、電界緩和領域54からのホールの排出に時間を要することにより、スイッチング損失が増大する。
【0095】
MOSFET100は、電界緩和領域54とボディ領域52を電気的に接続する接続領域55を有する。MOSFET100は、接続領域55を有することにより、電界緩和領域54の電位がソース電極41の電位に固定される。したがって、例えば、MOSFETのターンオフ動作の際に、電界緩和領域54からのホールの排出が促進される。よって、MOSFET100のスイッチング損失を低減できる。
【0096】
図6は、比較例の半導体装置の模式断面図である。比較例の半導体装置は、炭化珪素を用いたトレンチゲート型の縦型MOSFET900である。MOSFET900は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。
【0097】
図7は、比較例の半導体装置の模式断面図である。図7は、図6のFyに沿った断面である。図7は、第1の方向及び第2の方向に対し平行な断面である。図7は、第1の面F1に対して平行な断面である。図6は、図7のDD’断面である。
【0098】
比較例のMOSFET900は、第1の接続領域55aと第2の接続領域55bが、第1のトレンチ11と第2のトレンチ21との間で、第1の方向に交互に配置される点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。第1の接続領域55aと第2の接続領域55bは、第2の方向において対向しない。
【0099】
また、第3の接続領域55cと第4の接続領域55dが、第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間で、第1の方向に交互に配置される点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。第3の接続領域55cと第4の接続領域55dは、第2の方向において対向しない。
【0100】
第1の実施形態のMOSFET100では、AA’断面において、第1のトレンチ11と第2のトレンチ21の間に2つの接続領域55が配置され、第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間には接続領域55が配置されない。一方、比較例のMOSFET900では、DD’断面において、第1のトレンチ11と第2のトレンチ21の間に一つの接続領域55が配置され、第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間にも一つの接続領域55が配置される。
【0101】
図3図7の比較から明らかなように、接続領域55の占有面積は、MOSFET100の場合とMOSFET900の場合で等しい。したがって、ソース電極41から電界緩和領域54までの電気抵抗は、MOSFET100の場合とMOSFET900の場合で等しい。
【0102】
図8は、比較例の半導体装置における課題の説明図である。図8は、図6に対応する断面図である。図8は、比較例のMOSFET900のオン動作時の電流経路を示す。
【0103】
比較例のMOSFET900では、第2のトレンチ21と第3のトレンチ31との間に2つの電流経路が存在する。2つの電流経路は、第1の電流経路X及び第2の電流経路Yである。
【0104】
第1の電流経路Xは第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間に存在する。第1の電流経路Xでは、第3のトレンチ31の第6の側面31bとボディ領域52が接する領域に形成されたチャネルを電流が流れる。
【0105】
第2の電流経路Yは第1のトレンチ11と第2のトレンチ21との間に存在する。第2の電流経路Yでは、第1のトレンチ11の第2の側面11bとボディ領域52が接する領域に形成されたチャネルを電流が流れる。
【0106】
一方、第1のトレンチ11の第1の側面11aに沿った領域は、ボディ領域52の下に接続領域55が存在するため電流は流れない。同様に、第2のトレンチ21の第3の側面21aに沿った領域は、ボディ領域52の下に接続領域55が存在するため電流は流れない。
【0107】
第1の電流経路Xでは、第3のトレンチ31と接続領域55との間で電流経路が狭窄される。さらに、第1の電流経路Xでは、電界緩和領域54と接続領域55との間で電流経路が狭窄される。
【0108】
第2の電流経路Yでは、第1のトレンチ11と接続領域55との間で電流経路が狭窄される。さらに、第2の電流経路Yでは、電界緩和領域54と接続領域55との間で電流経路が狭窄される。
【0109】
第1の電流経路X及び第2の電流経路Yが狭窄されることで、MOSFET900のオン抵抗が増大する。特に、MOSFET900が微細化するに伴って、トレンチとトレンチの間の第2の方向の距離が短くなると、電流経路の狭窄が強まる。したがって、微細化に伴うMOSFET900のオン抵抗の増大が顕著になる。
【0110】
図9は、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図9は、図1に対応する断面図である。図9は、第1の実施形態のMOSFET100のオン動作時の電流経路を示す。
【0111】
第1の実施形態のMOSFET100では、第2のトレンチ21と第3のトレンチ31との間に2つの電流経路が存在する。2つの電流経路は、第1の電流経路X及び第2の電流経路Yである。
【0112】
第1の電流経路Xは第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間に存在する。第1の電流経路Xでは、第3のトレンチ31の第6の側面31bとボディ領域52が接する領域に形成されたチャネルを電流が流れる。
【0113】
第2の電流経路Yは第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間に存在する。第2の電流経路Yでは、第1のトレンチ11の第1の側面11aとボディ領域52が接する領域に形成されたチャネルを電流が流れる。
【0114】
一方、第1のトレンチ11の第2の側面11bに沿った領域は、ボディ領域52の下に接続領域55が存在するため電流は流れない。同様に、第2のトレンチ21の第3の側面21aに沿った領域は、ボディ領域52の下に接続領域55が存在するため電流は流れない。
【0115】
第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間には、接続領域55が存在しない。したがって、第1の電流経路X及び第2の電流経路Yでは、トレンチと接続領域55、又は、電界緩和領域54と接続領域55との間で電流経路が狭窄されることはない。
【0116】
第1の電流経路X及び第2の電流経路Yは接続領域55で狭窄されることがないため、MOSFET100のオン抵抗の増大が抑制される。特に、MOSFET100が微細化され、トレンチとトレンチの間の第2の方向の距離が短くなった場合でも、オン抵抗の増大が抑制される。
【0117】
MOSFET100では、図3に示されるように、第1の接続領域55aと第3の接続領域55cが、第1の方向に交互に配置される。このため、電流経路が第1の方向に交互に形成されることになる。したがって、MOSFET100の中で発熱箇所が偏らずに分散される。よって、発熱によるMOSFET100の故障が抑制され、MOSFET100の信頼性が向上する。
【0118】
MOSFET100を微細化し、オン抵抗を低減する観点から、第1のトレンチ11と第2のトレンチ21との間の距離(図2中のd)及び第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間の距離(図2中のd)は、2μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。
【0119】
MOSFET100を微細化し、オン抵抗を低減する観点から、第1のトレンチ11、第2のトレンチ21、及び第3のトレンチ31の第2の方向の幅(図2中のw)は、1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましい。
【0120】
ソース電極41と電界緩和領域54との間の電気抵抗を低減する観点から、第1の接続領域55a及び第2の接続領域55bの第1の方向の長さ(図3中のL1)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましい。
【0121】
MOSFET100のオン抵抗を低減する観点から、第1の接続領域55aの第1の方向の長さ(図3中のL1)は、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。
【0122】
ソース電極41と電界緩和領域54との間の電気抵抗を低減する観点から、第3の接続領域55c及び第4の接続領域55dの第1の方向の長さ(図3中のL2)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましい。
【0123】
MOSFET100のオン抵抗を低減する観点から、第3の接続領域55c及び第4の接続領域55dの第1の方向の長さ(図3中のL2)は、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。
【0124】
ソース電極41と電界緩和領域54との間の電気抵抗を低減する観点から、第1の接続領域55a及び第2の接続領域55bの第1の方向の第1の繰り返しピッチP1の2分の1は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0125】
MOSFET100のオン抵抗を低減する観点から、第1の接続領域55a及び第2の接続領域55bの第1の方向の第1の繰り返しピッチP1の2分の1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましい。
【0126】
ソース電極41と電界緩和領域54との間の電気抵抗を低減する観点から、第3の接続領域55c及び第4の接続領域55dの第1の方向の第2の繰り返しピッチP2の2分の1は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0127】
MOSFET100のオン抵抗を低減する観点から、第3の接続領域55c及び第4の接続領域55dの第1の方向の第2の繰り返しピッチP2の2分の1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましい。
【0128】
ソース電極41と電界緩和領域54との間の電気抵抗を低減する観点から、第1の接続領域55aの第1の繰り返しピッチP1の2分の1は、第1の接続領域55aの第1の方向の長さ(図3中のL1)の50倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。第3の接続領域55cの第2の繰り返しピッチP2の2分の1は、第3の接続領域55cの第1の方向の長さ(図3中のL2)の50倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。
【0129】
(第1の変形例)
図10は、第1の実施形態の第1の変形例の半導体装置の模式断面図である。図10は、第1の実施形態の図3に対応する図である。
【0130】
第1の変形例のMOSFET101は、第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間に、第3の接続領域55c及び第4の接続領域55dを備えない点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。第1の変形例のMOSFET101は、第1のトレンチ11と第3のトレンチ31との間に、接続領域55が設けられない。
【0131】
第1の接続領域55a及び第2の接続領域55bの第1の方向の第1の繰り返しピッチP1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましい。
【0132】
第1の接続領域55aの第1の繰り返しピッチP1の2分の1は、第1の接続領域55aの第1の方向の長さの50倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。
【0133】
(第2の変形例)
図11は、第1の実施形態の第2の変形例の半導体装置の模式断面図である。図11は、第1の実施形態の図2に対応する図である。
【0134】
第2の変形例のMOSFET102は、p型のコンタクト領域56が第1の方向に延びるストライプ形状である点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。
【0135】
第2の変形例のMOSFET102によれば、ソース電極41と電界緩和領域54との間の電気抵抗を更に低減することができる。
【0136】
以上、第1の実施形態及び変形例のMOSFETによれば、オン抵抗の低減、ゲート絶縁層の信頼性の向上、及び、スイッチング損失の低減を同時に実現できる。
【0137】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第1の断面において、第9の炭化珪素領域と第10の炭化珪素領域は接する点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0138】
図12は、第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。第2の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いたトレンチゲート型の縦型MOSFET200である。MOSFET200は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。図12は、第1の実施形態の図1に対応する図である。
【0139】
第2の実施形態のMOSFET200は、第1の接続領域55a(第9の炭化珪素領域)と第2の接続領域55b(第10の炭化珪素領域)が第2の方向で接する。第2の実施形態のMOSFET200は、第3の接続領域55c(第11の炭化珪素領域)と第4の接続領域55d(第12の炭化珪素領域)が第2の方向で接する。
【0140】
第2の実施形態のMOSFET200によれば、第1の実施形態のMOSFET100と比較して、ソース電極41と電界緩和領域54との間の電気抵抗が更に低減される。したがって、MOSFET200のスイッチング損失が更に低減する。
【0141】
以上、第2の実施形態のMOSFETによれば、オン抵抗の低減、ゲート絶縁層の信頼性の向上、及び、スイッチング損失の低減を同時に実現できる。
【0142】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、第1の断面において、第6の炭化珪素領域は第1の側面に接し、第7の炭化珪素領域は第4の側面に接する点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0143】
図13は、第3の実施形態の半導体装置の模式断面図である。第3の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いたトレンチゲート型の縦型MOSFET300である。MOSFET300は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。図13は、第1の実施形態の図1に対応する図である。
【0144】
第3の実施形態のMOSFET300は、第1の電界緩和領域54a(第6の炭化珪素領域)が第1のトレンチ11の第1の側面11aに接する。また、第2の電界緩和領域54b(第7の炭化珪素領域)は第2のトレンチ21の第4の側面21bに接する。
【0145】
第1の電界緩和領域54aの第3のトレンチ31側の端部は、第1のトレンチ11の第1の側面11aよりも第3のトレンチ31側に位置する。
【0146】
第3の実施形態のMOSFET300では、トレンチの底部が電界緩和領域54と接続領域55とで覆われる。したがって、第1の実施形態のMOSFET100と比較して、ゲート絶縁層の信頼性が更に向上する。
【0147】
以上、第3の実施形態のMOSFETによれば、オン抵抗の低減、ゲート絶縁層の信頼性の向上、及び、スイッチング損失の低減を同時に実現できる。
【0148】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、第1の炭化珪素領域が、第1の領域と、第1の領域と第2の炭化珪素領域との間に設けられ、第1の領域よりもn型不純物濃度が高い第2の領域を含む点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0149】
図14は、第4の実施形態の半導体装置の模式断面図である。第4の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いたトレンチゲート型の縦型MOSFET400である。MOSFET400は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。図14は、第1の実施形態の図1に対応する図である。
【0150】
第4の実施形態のMOSFET400は、n型のドリフト領域51が、第1の領域51aと第2の領域51bを含む。第2の領域51bは、第1の領域51aとボディ領域52との間に設けられる。第2の領域51bは、例えば、第1の領域51aと第1のボディ領域52aとの間に設けられる。
【0151】
第2の領域51bのn型不純物濃度は、第1の領域51aのn型不純物濃度よりも高い。第2の領域51bのn型不純物濃度は、例えば、第1の領域51aのn型不純物濃度の2倍以上である。
【0152】
第4の実施形態のMOSFET400によれば、第1の実施形態のMOSFET100と比較して、ドリフト領域51の電気抵抗が低減される。したがって、MOSFET400のオン抵抗が低減される。
【0153】
以上、第4の実施形態のMOSFETによれば、オン抵抗の低減、ゲート絶縁層の信頼性の向上、及び、スイッチング損失の低減を同時に実現できる。
【0154】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体装置は、層間絶縁層43の上面がトレンチの中に設けられる点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0155】
図15は、第5の実施形態の半導体装置の模式断面図である。第5の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いたトレンチゲート型の縦型MOSFET500である。MOSFET500は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。図15は、第1の実施形態の図1に対応する図である。
【0156】
第5の実施形態のMOSFET500は、層間絶縁層43の上面がトレンチの中に設けられる。第5の実施形態のMOSFET500では、炭化珪素層10の表面における層間絶縁層43のパターニングが不要となる。したがって、したがって、第1の実施形態のMOSFET100と比較して、微細化が容易となる。よって、第5の実施形態のMOSFET500では、オン抵抗を更に低減させることが容易となる。
【0157】
以上、第5の実施形態のMOSFETによれば、オン抵抗の低減、ゲート絶縁層の信頼性の向上、及び、スイッチング損失の低減を同時に実現できる。
【0158】
(第6の実施形態)
第6の実施形態のインバータ回路及び駆動装置は、第1の実施形態の半導体装置を備える駆動装置である。
【0159】
図16は、第6の実施形態の駆動装置の模式図である。駆動装置1000は、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0160】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュール150a、150b、150cで構成される。3個の半導体モジュール150a、150b、150cを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。
【0161】
第6の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、インバータ回路150及び駆動装置1000の特性が向上する。
【0162】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の車両は、第1の実施形態の半導体装置を備える車両である。
【0163】
図17は、第7の実施形態の車両の模式図である。第7の実施形態の車両1100は、鉄道車両である。車両1100は、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0164】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュールで構成される。3個の半導体モジュールを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。モーター140により車両1100の車輪90が回転する。
【0165】
第7の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、車両1100の特性が向上する。
【0166】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の車両は、第1の実施形態の半導体装置を備える車両である。
【0167】
図18は、第8の実施形態の車両の模式図である。第8の実施形態の車両1200は、自動車である。車両1200は、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0168】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュールで構成される。3個の半導体モジュールを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。
【0169】
インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。モーター140により車両1200の車輪90が回転する。
【0170】
第8の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、車両1200の特性が向上する。
【0171】
(第9の実施形態)
第9の実施形態の昇降機は、第1の実施形態の半導体装置を備える昇降機である。
【0172】
図19は、第9の実施形態の昇降機(エレベータ)の模式図である。第9の実施形態の昇降機1300は、かご610、カウンターウエイト612、ワイヤロープ614、巻上機616、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0173】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュールで構成される。3個の半導体モジュールを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。
【0174】
インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。モーター140により巻上機616が回転し、かご610が昇降する。
【0175】
第9の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、昇降機1300の特性が向上する。
【0176】
以上、第1ないし第5の実施形態では、炭化珪素の結晶構造として4H-SiCの場合を例に説明したが、本発明は6H-SiC、3C-SiC等、その他の結晶構造の炭化珪素に適用することも可能である。
【0177】
第1ないし第5の実施形態では、半導体装置としてMOSFETを例に説明したが、本発明をInsulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)に適用することも可能である。例えば、MOSFET100のドレイン領域50に相当する領域を、n型からp型に置き換えることで、IGBTが実現できる。
【0178】
また、第6ないし第9の実施形態においては、第1の実施形態の半導体装置を備える場合を例に説明したが、第2の実施形態ないし第5の実施形態の半導体装置を適用することも可能である。
【0179】
また、第6ないし第9の実施形態において、本発明の半導体装置を車両やエレベータに適用する場合を例に説明したが、本発明の半導体装置を例えば、太陽光発電システムのパワーコンディショナー等に適用することも可能である。
【0180】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0181】
10 炭化珪素層
11 第1のトレンチ
11a 第1の側面
11b 第2の側面
11c 第1の底面
12 第1のゲート電極
13 第1のゲート絶縁層
21 第2のトレンチ
21a 第3の側面
21b 第4の側面
21c 第2の底面
22 第2のゲート電極
23 第2のゲート絶縁層
31 第3のトレンチ
31a 第5の側面
31b 第6の側面
31c 第3の底面
32 第3のゲート電極
33 第3のゲート絶縁層
51 ドリフト領域(第1の炭化珪素領域)
52a 第1のボディ領域(第2の炭化珪素領域)
52b 第2のボディ領域(第3の炭化珪素領域)
53a 第1のソース領域(第4の炭化珪素領域)
53b 第2のソース領域(第5の炭化珪素領域)
54a 第1の電界緩和領域(第6の炭化珪素領域)
54b 第2の電界緩和領域(第7の炭化珪素領域)
54c 第3の電界緩和領域(第8の炭化珪素領域)
55a 第1の接続領域(第9の炭化珪素領域)
55b 第2の接続領域(第10の炭化珪素領域)
55c 第3の接続領域(第11の炭化珪素領域)
55d 第4の接続領域(第12の炭化珪素領域)
100 MOSFET(半導体装置)
150 インバータ回路
200 MOSFET(半導体装置)
300 MOSFET(半導体装置)
400 MOSFET(半導体装置)
500 MOSFET(半導体装置)
1000 駆動装置
1100 車両
1200 車両
1300 昇降機
AA’断面 第1の断面
BB’断面 第2の断面
F1 第1の面
F2 第2の面
P1 第1の繰り返しピッチ
P2 第2の繰り返しピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19