(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136993
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042955
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知己
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC28
2C056EC29
2C056HA37
2C056HA38
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】大型の媒体に対応可能であり、かつ、液体インクの乾燥性を高める液体吐出装置を提供する。
【解決手段】媒体に対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドを備えるキャリッジと、キャリッジを媒体に対して主走査方向へと摺動可能に支持するガイドレールと、ガイドレールを副走査方向に移動可能に支持するレール保持部と、キャリッジに搭載され、液体が吐出される方向に送風する第一乾燥部と、ガイドレールに搭載され、液体が吐出される方向に送風する第二乾燥部と、を備える液体吐出装置
による。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを備えるキャリッジと、
前記キャリッジを前記媒体に対して主走査方向へと摺動可能に支持するガイドレールと、
前記ガイドレールを副走査方向に移動可能に保持するレール保持部と、
レール保持部を支持する支柱と、
前記キャリッジに搭載され、前記液体が吐出される方向に送風する第一乾燥部と、
前記ガイドレールに搭載され、前記液体が吐出される方向に送風する第二乾燥部と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第一乾燥部は、前記液体吐出ヘッドを挟んで、前記主走査方向の少なくとも一方に配置される、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第一乾燥部は、前記液体吐出ヘッドを挟んで、前記主走査方向の両方に配置される、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第二乾燥部は、前記ガイドレールの一方の端部に設置された熱源と、当該ガイドレールの内部に設置され前記主走査方向に配列された複数の送風口と、を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第二乾燥部は、前記ガイドレールとは別体の棒状部材に設けられていて、当該棒状部材の一方の端部に設置された熱源と、当該ガイドレールの内部に設置され前記主走査方向に配列された複数の送風口と、を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第一乾燥部は、前記液体吐出ヘッドが前記液体を吐出する画像形成領域の内側に前記キャリッジがあるときに前記媒体に向けて送風する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第二乾燥部は、前記液体吐出ヘッドが前記液体を吐出する画像形成領域の全幅において前記媒体に向けて送風する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第一乾燥部の前記媒体に向けた送風口は、前記媒体に近くなるほど狭まる形状からなる、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第二乾燥部の前記媒体に向けた送風口は、前記キャリッジによって遮蔽される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第一乾燥部からの送風の温度は、前記第二乾燥部からの送風の温度よりも高い、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に向けて液体を吐出し、付着させて画像を形成する液体吐出装置が知られている。車両の車体や建築物の壁面などを媒体として、これら大型の媒体に対して画像を形成する液体吐出装置も知られている。
【0003】
媒体に吐出された液体は乾燥によって媒体に固着することで画像の形成に供されることになる、液体吐出装置には、媒体に付着した液体インクを乾燥させる乾燥装置としてヒータを備えるものが知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている装置は、車両などの大型媒体への画像を形成への適用が想定されていない。また、車両などの大型の画像領域に画像を形成するときに用いられる液体インクは、従来、揮発性の化学成分を混在させたものを用いることが多く、これらに含まれる化学成分の環境負荷が高いことから、近年では同様の用途に水性液体インクを用いる要求が高まっている。
【0005】
しかし、水性インクは従来の揮発成分を含有する液体インクに比べて、乾燥までの時間を要するので、車両の筐体のような大型媒体の場合、乾燥が終わるまでに時間を要する。さらに、大型媒体の画像形成面は、水平面とは限らず、建築物の壁面のように垂直面の場合もあるので、より素早い乾燥をしなければ、画像形成面に着弾した液体インクが垂れてしまい画像の質が低下することになる。
【0006】
仮に、特許文献1に開示されているような従来技術を用いて、大型の媒体に画像を形成する液体インクに水性インクを用いた場合、従来の乾燥装置よりも高温のものが要求され、消費エネルギーが膨大になり、環境負荷への影響が大きくなる。
【0007】
そこで、大型の媒体に対応可能であり、かつ、液体インクの乾燥性を高める液体吐出装置が望まれている。
【0008】
本発明は、大型の媒体に対応可能であり、かつ、液体インクの乾燥性を高める液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、液体吐出装置に関し、媒体に対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを備えるキャリッジと、前記キャリッジを前記媒体に対して主走査方向へと摺動可能に支持するガイドレールと、前記ガイドレールを副走査方向に移動可能に支持するレール保持部と、前記キャリッジに搭載され、前記液体が吐出される方向に送風する第一乾燥部と、前記ガイドレールに搭載され、前記液体が吐出される方向に送風する第二乾燥部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型の媒体に対応可能であり、かつ、液体インクの乾燥性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る液体吐出装置の実施形態を示す全体概要図。
【
図2】上記実施形態に係る液体吐出機構の構成例を示す図。
【
図3】上記実施形態に係る液体吐出機構の構成例を示す図。
【
図4】上記実施形態に係る液体吐出機構の構成例を示す図。
【
図5】上記実施形態に係る第一乾燥部の構成例を示す図。
【
図6】上記実施形態に係る第二乾燥部の構成例を示す図。
【
図7】上記実施形態に係る第二乾燥部の別の構成例を示す図。
【
図8】上記実施形態に係る液体吐出ヘッドの例を示す図。
【
図9】上記実施形態に係る液体吐出ヘッドの別例を示す図。
【
図10】上記実施形態に係る制御部の例を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[液体吐出装置の実施形態]
以下、本発明に係る液体吐出装置の実施形態について、図を参照しながら説明する。
図1乃至3に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、大型の車両の車体CBのように大きな物体を媒体として、画像を形成できるインクジェット方式の画像形成装置として適用可能なものである。以下の説明は、
図2に示すように、車体CBの一つの側面壁を画像形成領域IAとして、画像を形成する場合を例示する。
【0013】
言い換えると、プリンタ1は、トラックなどの大型車両の筐体や建築物の壁面といった大きいエリアに、ラッピングメディアを介さずに、直接印字する方式のものである。
【0014】
なお、本実施形態に係る画像形成領域IAは、車体CBの側面壁のように、鉛直方向に立設している二次元的な領域を想定している。しかし、プリンタ1を適用可能な画像形成領域IAは、本実施形態の例示に限定されるものではない。例えば、プリンタ1と同様の構成を用いて、画像形成領域IAを水平面のような二次元的な領域を想定し、その水平の画像形成領域IAに画像を形成することもできる。この場合に想定される媒体(画像形成領域IA)は、例えば、道路や床などである。
【0015】
プリンタ1は、液体吐出ヘッド100を搭載したキャリッジ10と、キャリッジ10を摺動可能に支持するガイドレール40と、ガイドレール40をキャリッジの摺動方向と直交する方向に移動させる移動機構を介して支柱20に支持されるレール保持部30と、レール保持部30をキャリッジの摺動方向と直交する方向に移動させる移動機構を介して支持する支柱20と、を主に備える。
【0016】
支柱20は、媒体としての車体CBの近傍に立設可能な一対の柱状部材である。一対として構成される第一支柱21aと第二支柱21bは、車体CBの長さ方向において所定の間隔を持って設置される。この設置間隔は、画像形成領域IAの幅寸法よりも広い間隔である。支柱20は、その側面の一部において、媒体としての車体CBの方にガイドレール40を懸架するためのレール保持部30を備える。支柱20は、制御部150によってレール保持部30が高さ方向(支柱20の長手方向)に移動可能とするレール保持部移動機構21を備える。
【0017】
レール保持部30は、第一支柱21aに保持される第一レール保持部31aと、第二支柱21bに保持される第二レール保持部31bと、を有する。第一レール保持部31aと第二レール保持部31bの間に、ガイドレール40は懸架されている。
【0018】
レール保持部30は、ガイドレール40を支柱20に対して所定の高さ位置で保持するための部材である。そして、レール保持部30は、後述する制御部150の制御によって、支柱20に対する高さ位置を変更可能にするレール保持部移動機構21を介して支柱20に支持されている。レール保持部30は、キャリッジ10が副走査をするために、ガイドレール40を画像形成領域IAの副走査方向への移動可能にする副走査方向移動手段に相当する。
【0019】
ここで、本実施形態に係る主走査方向と副走査方向について説明する。画像形成を行うとき、画像形成領域IAから一定の処理を離れた位置においてキャリッジ10を二次元的に移動させながら、液体吐出ヘッド100から液体を吐出する。
図2に示すように、キャリッジ10の摺動方向は、支柱20の設置間隔の方向である。この方向の軸をX軸とすると、X方向が主走査方向となる。キャリッジ10が主走査方向において位置を変えながら、液体吐出ヘッド100が所定のタイミングで液体を画像形成領域IAに向けて吐出する。
【0020】
また、レール保持部30は、支柱20の長手方向に移動可能な機構を介して保持されているので、ガイドレール40の移動方向も支柱20の長手方向となる。この方向の軸をY軸とすると、Y方向が副走査方向となる。ガイドレール40が副走査方向において位置を変えて、その副走査方向の位置において、キャリッジ10はガイドレール40に沿って主走査を行う。したがって、ガイドレール40の移動によって主走査方向に直交する方向へキャリッジ10が移動をし、その移動先で液体吐出ヘッド100が主走査方向に移動しながら液体を吐出する。以上のように、液体吐出ヘッド100が画像形成領域IAに対して二次元的に移動しながら液体を吐出して画像を形成することができる。
【0021】
ガイドレール40は、キャリッジ10を移動可能に支持する柱状部材の一種であって、後述するように、中空の柱状部材である。ガイドレール40の長手方向の一方の端部には、第二乾燥部としての低温温風ヒータ410の一部が搭載されている。後述するように、ガイドレール40は低温温風ヒータ410の熱源が放出した熱を、低温温風として画像形成領域IA側に吹き出す構成を備える。低温温風ヒータ410は熱源と、温風を吹き出す構成と、によって構成されている。
【0022】
また、プリンタ1は、
図1に示すように、例えば、支柱20の近傍に制御部150を備える制御装置15と、制御装置15の操作をするための操作端末16と、を設置し、これらによって、画像形成処理を制御するように構成される。制御部150によって、副走査方向におけるレール保持部30の移動と、主走査方向におけるキャリッジ10の移動が制御される。また、これらの移動とタイミングを合わせて、液体吐出ヘッド100の吐出動作が制御される。さらに、後述する高温温風ヒータ110及び低温温風ヒータ410の動作も制御部150が制御する。制御部150の詳細は後述する。
【0023】
[キャリッジ10の詳細]
キャリッジ10は、
図3に示すように、レール保持部30に保持されているガイドレール40に支持されて、車体CBの所定の位置において液体を吐出する。レール保持部30に対してガイドレール40は画像形成領域IAとの距離を変更できる機構を備えている。すなわち、Z軸方向にキャリッジ10を移動可能に保持している。この機構によって、画像形成領域IAが凹凸を有するものであっても、液体の吐出距離を調整して、好適な画像形成環境を得ることができる。
【0024】
したがって、キャリッジ10は、画像形成領域IAに対して二次元的に自由に移動可能であって、レール保持部30に保持されているガイドレール40が画像形成領域IAとの距離を変更することで、液体の飛翔距離を調整でき、好適な吐出特性を維持できるように構成されている。
【0025】
図4は、キャリッジ10をY方向から見た平面図である。キャリッジ10には、液体を吐出する液体吐出ヘッド100が搭載されている。液体吐出ヘッド100の詳細は後述する。また、キャリッジ10には、第一乾燥部としての高温温風ヒータ110が搭載されている。高温温風ヒータ110は、キャリッジ10の主走査方向の移動に伴って移動する。高温温風ヒータ110は、液体の吐出方向に温風を送風するように構成されている。
【0026】
高温温風ヒータ110は、例えば、キャリッジ10において、液体吐出ヘッド100を挟んで主走査方向の両側に配置されていて、キャリッジ10を挟んで一方に第一高温温風ヒータ110aが搭載され、他方に第二高温温風ヒータ110bが搭載されている。
【0027】
キャリッジ10がX軸の矢印方向(
図4に正対した場合の左から右)に移動中と想定する。この場合、まず、第二高温温風ヒータ110bから画像形成領域IAに送風される高温の温風によって、画像形成領域IAが温められて、その温められた領域に液体吐出ヘッド100が液体を吐出する。その後、第一高温温風ヒータ110aが液体の吐出された領域に高温の温風を送風する。以上のように、キャリッジ10の移動に合わせて、液体インクがこれから着弾する画像形成領域IAの温度を上げて液体インクの付着性を向上させる。そして、液体インクが着弾した後の画像形成領域IAに対しては高温の温風を吹き付けて、液体インクの表面などを素早く乾燥させて、画像形成領域IAの鉛直方向へ垂れることを防止する。以上のように、液体インクの着弾前後で素早く温度を上げて着弾性と乾燥性を向上できる。
【0028】
したがって、高温温風ヒータ110は、液体吐出ヘッド100が吐出する液体が付着する予定の画像形成領域IAの位置を温める機能と、液体吐出ヘッド100が吐出した液体が付着した画像形成領域IAの位置を乾燥させる機能と、を備える。なお、高温温風ヒータ110は、事前に温めることなく液体インクの付着及び乾燥が好適な状態で行えるならば、一方のみ(第二高温温風ヒータ110b)を搭載すればよい。
【0029】
[第一乾燥部の詳細]
図5は、第一乾燥部としての高温温風ヒータ110を説明するための斜視図(a)、平面図(b)である。高温温風ヒータ110は、第一熱源111を筐体内に搭載し、この第一熱源111からの温風を所定の方向に絞って送出するための第一吹出口112を備えている。
【0030】
第一熱源111は、電熱線などを適用するヒータと、ヒータの熱を送出する送風機(ファン)とを備え、制御部150の制御によって発熱動作と送風動作が制御される。例えば、キャリッジ10の画像形成領域IAの外側(画像形成領域外)にあるとき、すなわち、主走査範囲を外れた位置にあるときには、発熱する必要がない。そこで、該当する位置にキャリッジ10が移動したときに、第一熱源111の動作をオフにする。そして、キャリッジ10が主走査動作によって画像形成領域IAに対向する位置にあるときを見計らって、第一熱源111の動作をオンにするように制御する。
【0031】
第一吹出口112は、
図5(b)に示すように、送出方向に向かってテーパー状になっている。この第一吹出口112は、画像形成領域IAに向けられている。すなわち、高温温風ヒータ110は、液体の吐出方向と同方向に高温の温風を吹き出すため構成であって、吐出された液体が画像形成領域IAに着弾するまでの飛翔空間に温風の気流が悪影響を与えないように、気流を絞る効果を有する。
【0032】
高温温風ヒータ110は、後述する低温温風ヒータ410よりも高温の温風を画像形成領域IAに向けて吹き出すように構成されていて、その温度は、吹き出し口付近において約150℃である。
【0033】
以上のような構成を有する高温温風ヒータ110を搭載することで、キャリッジ10の移動と連動して高温の温風の吹き出し位置も移動しながら、液体インクを素早く乾燥させることができる。また、キャリッジ10の位置と連動して、乾燥が不要な位置では第一熱源111をオフにできる。このような制御を行うことで、電力消費量を抑えながら、大型の画像形成領域IAに対する画像形成の質を維持することができる。
【0034】
[第二乾燥部の詳細]
図6は、第二乾燥部としての低温温風ヒータ410を説明するための斜視図である。
図6に示すように、低温温風ヒータ410は、第二熱源411と、ガイドレール40の長手方向において、複数の配列された低温の温風の送風口としての第二吹出口412と、を有して構成されている。
【0035】
第二熱源411は、電熱線などを適用するヒータと、ヒータの熱を送出する送風機(ファン)とを備え、制御部150の制御によって発熱動作と送風動作が制御される。第二熱源411は、ガイドレール40の長手方向の端部に設けられていて、ガイドレール40の内部空間に低温の温風を送風するように構成されている。
【0036】
第二吹出口412は、ガイドレール40の側面であって、画像形成領域IAに対向する面において、所定の間隔をもって複数設けられている。第二吹出口412は、第二熱源411からの温風を、画像形成領域IAに向けて送出する。第二吹出口412は、画像形成領域IAの幅寸法相当に渡って形成されているので、低温温風ヒータ410から吹き出された温風は、画像形成領域IAの全幅を温めることと、乾燥させることに寄与する。
【0037】
第二吹出口412は、ガイドレール40に保持されているキャリッジ10の位置が移動することで、吹き出し可能な位置が変化する。すなわち、キャリッジ10によって第二吹出口412の一部は塞がれるので、キャリッジ10が主走査方向に移動しながら、液体吐出ヘッド100が液体を吐出するとき、その周囲に位置する第二吹出口412からの温風は遮蔽される。
【0038】
キャリッジ10を低温温風ヒータ410の遮蔽部材として機能させることで、液体の吐出方向と同方向に低温の温風を吹き出す場合に、吐出された液体が画像形成領域IAに着弾するまでの飛翔空間に温風の気流が悪影響を与えない構成になる。
【0039】
低温温風ヒータ410は、高温温風ヒータ110よりも低温の温風を画像形成領域IAに向けて吹き出すように構成されていて、その温度は、吹き出し口付近において、約100℃である。
【0040】
図7は、低温温風ヒータ410の別の構成例である。
図7に示すように、低温温風ヒータ410は、ガイドレール40と別体の棒状部材41に設けられてもよい。棒状部材41はガイドレール40の底面側に固定されていて、ガイドレール40よりも副走査方向における下方に保持されている。
【0041】
棒状部材41に低温温風ヒータ410を設けた場合、例えば、画像形成領域IAにおいて上方から画像形成を始めたとする。この場合、主走査方向における液体インクの吐出動作をする前に、低温温風ヒータ410によって画像形成領域IAの温度が高くなる。したがって、ガイドレール40が副走査方向の下に移動し、その高さ位置でキャリッジ10が主走査方向に移動しながら、液体吐出ヘッド100が液体を吐出すると、さらに素早く乾燥させることができる。
【0042】
また、キャリッジ10の主走査方向における高さ位置と、低温温風ヒータ410による送風位置が高さ方向において相違するので、低温温風ヒータ410からの送風が液体の飛翔空間に悪影響を与える可能性をより低くできる。
【0043】
以上のような構成を有する低温温風ヒータ410を搭載することで、キャリッジ10の移動により液体の飛翔空間の気流を乱すことなく、画像形成領域IAの主走査方向において連続的に温風を吹き付け続けることができる。これによって、液体インクの乾燥を促進できる。また、高温温風ヒータ110によって素早く固着された液体インクをさらに乾燥させるために、乾燥を主走査方向において連続的に行うことができるように構成されているので、電力消費量を抑えながら、大型の画像形成領域IAを素早く乾燥させることができ、画像形成の質を維持することができる。
【0044】
[液体吐出ヘッド100の実施形態]
図8は、本実施形態に適用可能な液体吐出ヘッド100の例を吐出口側からみた図である。
図9は、本実施形態に適用可能な液体吐出ヘッド100の別例を吐出口側からみた図である。
【0045】
図8及び
図9に例示するように、液体吐出ヘッド100は、複数の吐出口が所定の方向に配列された吐出面を有している。複数の吐出口は、液体インクの色別に区別されていて、例えば、黄色の液体インクを吐出するための吐出口としてのノズル101Y、マゼンダ色の液体インクを吐出するための吐出口としてのノズル101M、シアン色の液体インクを吐出するための吐出口としてのノズル101C、黒色の液体インクを吐出するための吐出口としてのノズル101Bk、を有している。
【0046】
液体吐出ヘッド100は、例えば、
図8に例示するように、副走査方向に配列したノズル101の列(ノズル列)ごとに各色の液体インクを割り当てて、各色に対応するノズル列を主走査方向に並べて配置する。なお、
図8に例示するように、同色に対応するノズル列を複数配置して形成する画像の解像度を上げることができる。また、同様の配列を用いることで、一主走査当たりの液体の吐出量を増やすこともできる。また、一つのノズル列で一色の液体インクに対応するように設定することで、さらに異なる色の液体インク(例えば、白色インク)を用いることもでき、プレ印字をすることも可能になる。
【0047】
また、液体吐出ヘッド100は、例えば、
図9に例示するように、各色の液体インクに対応する各ノズル101を、主走査方向及び副走査方向の双方に対して傾斜するように配列する。この配列を採用することで、一主走査当たりでの解像度を高めることができる。いずれのようにノズル101を配置しても、キャリッジ10に搭載されて所定のタイミングで液体インクを吐出する動作は同様に行われる。
【0048】
[制御部150の機能ブロック]
ここで、制御装置15の構成例例について
図10を用いながら説明する。
図10に示すように、制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)151、RAM(Random Access Memory)152、ROM(Read Only Memory)153、HDD(Hard Disk Drive)154、及びI/F155が共通バス159を介して接続されている構成を備える。
【0049】
CPU151は演算手段であり、制御装置15及びプリンタ1の全体の動作を制御する。RAM152は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU151が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM153は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD154は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0050】
制御装置15は、ROM153に格納された制御プログラム、HDD154などの記憶媒体からRAM152にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU151が備える演算機能によって処理する。その処理によって、制御装置15の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、制御装置15に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、制御装置15の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU151、RAM152、ROM153、及びHDD154は、制御装置15及びプリンタ1の動作を制御するコントローラとしての制御部150を構成する。
【0051】
I/F155は、液体吐出ヘッド100、キャリッジ10、レール保持部移動機構21、高温温風ヒータ110、低温温風ヒータ410、操作端末16を、共通バス159に接続するインタフェースである。
【0052】
制御部150は、I/F155を通じて、液体吐出ヘッド100、キャリッジ10、レール保持部移動機構21、高温温風ヒータ110、低温温風ヒータ410、を動作させる。
【0053】
また、制御部150は、I/F155を通じて操作端末16からの入力を取得し、入力された設定値や、画像形成データに基づいて上記の各構成の動作を制御する。また、制御内容などの情報を操作端末16から出力させるように制御する。
【0054】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 :プリンタ
10 :キャリッジ
15 :制御装置
16 :操作端末
20 :支柱
21 :レール保持部移動機構
21a :第一支柱
21b :第二支柱
30 :レール保持部
31a :第一レール保持部
31b :第二レール保持部
40 :ガイドレール
41 :棒状部材
100 :液体吐出ヘッド
101 :ノズル
110 :高温温風ヒータ
110a :第一高温温風ヒータ
110b :第二高温温風ヒータ
111 :第一熱源
112 :第一吹出口
150 :制御部
151 :CPU
152 :RAM
153 :ROM
154 :HDD
155 :I/F
159 :共通バス
410 :低温温風ヒータ
411 :第二熱源
412 :第二吹出口
CB :車体
IA :画像形成領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】