(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137088
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】スライドドア給電装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20230922BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230922BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 068
B60R16/02 620C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043105
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】竿谷 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 政宏
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DC12
5G357DD10
5G357DG04
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA03
(57)【要約】
【課題】電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できるスライドドア給電装置を提供する。
【解決手段】スライドドア給電装置1は、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が備えられ、ケーブル外装部材5には、ケーブル外装部材5の長手方向に対して垂直に交差する凹凸部50が設けられている。また、車体側保持部3には、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5が挿通されるケーブル挿通路31Pが設けられている。さらに、ケーブル挿通路31Pの内面には、ケーブル外装部材5における凹凸部50に嵌合する嵌合部35と、凹凸部50と嵌合部35との嵌合位置を規制する規制部36とが設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体からスライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置であって、
前記車体と前記スライドドアの間に架け渡される電気ケーブルと、
前記車体に固定されて前記電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、
前記スライドドアに固定されて前記電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とを有し、
前記電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が備えられ、
前記ケーブル外装部材には、当該ケーブル外装部材の長手方向に対して垂直に交差する凹凸部が設けられており、
前記車体側保持部及び前記スライドドア側保持部の少なくとも一方には、前記電気ケーブル及び前記ケーブル外装部材が挿通されるケーブル挿通路が設けられており、
前記ケーブル挿通路の内面には、前記ケーブル外装部材における前記凹凸部に嵌合する嵌合部と、前記凹凸部と前記嵌合部との嵌合位置を規制する規制部とが設けられた
スライドドア給電装置。
【請求項2】
前記ケーブル外装部材の末端部分に前記凹凸部の山形部分よりも前記長手方向の幅寸法が大きい台形部分が形成され、
前記嵌合部から前記規制部までの長さ寸法が前記台形部分における前記長手方向の幅寸法よりも大きい
請求項1に記載のスライドドア給電装置。
【請求項3】
前記凹凸部の互いに隣り合う山形部分同士又は谷形部分同士の前記長手方向の長さ寸法をピッチ長とし、
前記嵌合部から前記規制部までの長さ寸法が前記ピッチ長の整数倍の値と異なる
請求項1又は請求項2に記載のスライドドア給電装置。
【請求項4】
前記規制部における前記長手方向の厚さ寸法が前記凹凸部の谷形部分における前記長手方向の幅寸法よりも大きい
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項5】
前記規制部における前記長手方向に対して垂直方向の高さ寸法が前記凹凸部の谷形部分における前記長手方向に対して垂直方向の深さ寸法よりも大きい
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項6】
前記規制部が所定の嵌合位置にて嵌合された前記ケーブル外装部材の末端面から離間する位置に設けられた
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項7】
前記規制部が前記電気ケーブルを間に挟んだ両側に設けられた
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項8】
前記規制部が前記電気ケーブルを案内する案内面を有している
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項9】
前記電気ケーブルがフレキシブルフラットケーブルで構成された
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のスライドドアには、パワーウインドウ用モーターやオーディオ用スピーカー等の電装部品が組み込まれている。そのため、これらの電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置が存在している(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このようなスライドドア給電装置は、車体とスライドドアの間に架け渡される電気ケーブルと、車体に固定されて電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、スライドドアに固定されて電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とを有している。また、電気ケーブルには、ケーブル外装部材が外装されている。
【0004】
ところで、車体側保持部やスライドドア側保持部には、電気ケーブル及びケーブル外装部材が挿通されるケーブル挿通路が設けられている。そして、かかるケーブル挿通路にてケーブル外装部材が保持されている。そのため、ケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持され、電気ケーブルにおける車体とスライドドアの間の架け渡し部分が短くなると、スライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-158065号公報
【特許文献2】特開2020-137396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できるスライドドア給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、車体からスライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置であって、前記車体と前記スライドドアの間に架け渡される電気ケーブルと、前記車体に固定されて前記電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、前記スライドドアに固定されて前記電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とを有し、前記電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が備えられ、前記ケーブル外装部材には、当該ケーブル外装部材の長手方向に対して垂直に交差する凹凸部が設けられており、前記車体側保持部及び前記スライドドア側保持部の少なくとも一方には、前記電気ケーブル及び前記ケーブル外装部材が挿通されるケーブル挿通路が設けられており、前記ケーブル挿通路の内面には、前記ケーブル外装部材における前記凹凸部に嵌合する嵌合部と、前記凹凸部と前記嵌合部との嵌合位置を規制する規制部とが設けられたものである。
【0008】
この発明により、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0009】
詳述すると、本願発明に係るスライドドア給電装置は、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が備えられ、ケーブル外装部材には、ケーブル外装部材の長手方向に対して垂直に交差する凹凸部が設けられている。また、車体側保持部及びスライドドア側保持部の少なくとも一方には、電気ケーブル及びケーブル外装部材が挿通されるケーブル挿通路が設けられている。さらに、ケーブル挿通路の内面には、ケーブル外装部材における凹凸部に嵌合する嵌合部と、凹凸部と嵌合部との嵌合位置を規制する規制部とが設けられている。そのため、ケーブル挿通路に設けられた規制部を基準としてケーブル外装部材の位置を定め、ケーブル外装部材における凹凸部とケーブル挿通路における嵌合部とを嵌合させることにより、ケーブル外装部材を正規の位置にて保持することが可能となる。すなわち、規制部に対して当接又は僅かな隙間がひらいた状態となるようにケーブル外装部材の位置を定め、ケーブル外装部材における凹凸部とケーブル挿通路における嵌合部とを嵌合させることにより、ケーブル外装部材を正規の位置にて保持することが可能となる。したがって、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0010】
この発明の態様として、前記ケーブル外装部材の末端部分に前記凹凸部の山形部分よりも前記長手方向の幅寸法が大きい台形部分が形成され、前記嵌合部から前記規制部までの長さ寸法が前記台形部分における前記長手方向の幅寸法よりも大きくてもよい。
【0011】
この発明により、ケーブル挿通路における嵌合部から規制部までの間にケーブル外装部材における台形部分を位置させ、ケーブル外装部材における凹凸部とケーブル挿通路における嵌合部とを嵌合させることにより、ケーブル外装部材を正規の位置にて保持することが可能となる。つまりは、ケーブル挿通路における嵌合部から規制部までの間にケーブル外装部材における台形部分を位置させることにより、ケーブル外装部材の位置がケーブル挿通路の入口側へも出口側へもズレることを防ぎ、ケーブル外装部材を正規の位置にて保持することが可能となる。したがって、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記凹凸部の互いに隣り合う山形部分同士又は谷形部分同士の前記長手方向の長さ寸法をピッチ長とし、前記嵌合部から前記規制部までの長さ寸法が前記ピッチ長の整数倍の値と異なってもよい。
【0013】
この発明により、ケーブル外装部材における凹凸部とケーブル挿通路における規制部とを間違って嵌合させてしまうと、凹凸部の位相に対して嵌合部の位置がズレるため、これら凹凸部と嵌合部とを嵌合させることが不可能となる。つまりは、ケーブル挿通路に設けられた規制部を嵌合部であると誤認し、凹凸部と規制部とを間違って嵌合させたとしても、凹凸部の位相に対して嵌合部の位置がズレるため、これら凹凸部と嵌合部とを嵌合させることが不可能となる。したがって、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記規制部における前記長手方向の厚さ寸法が前記凹凸部の谷形部分における前記長手方向の幅寸法よりも大きくてもよい。
この発明により、ケーブル外装部材における凹凸部とケーブル挿通路における規制部とを嵌合させることが不可能となる。つまりは、ケーブル挿通路に設けられた規制部を嵌合部であると誤認しても、凹凸部の谷形部分に規制部が入らないため、これらを嵌合させることが不可能となる。したがって、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記規制部における前記長手方向に対して垂直方向の高さ寸法が前記凹凸部の谷形部分における前記長手方向に対して垂直方向の深さ寸法よりも大きくてもよい。
この発明により、ケーブル外装部材における凹凸部とケーブル挿通路における規制部とを嵌合させることが不可能となる。つまりは、ケーブル挿通路に設けられた規制部を嵌合部であると誤認しても、凹凸部の谷形部分に規制部が入らないため、これらを嵌合させることが不可能となる。したがって、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記規制部が所定の嵌合位置にて嵌合された前記ケーブル外装部材の末端面から離間する位置に設けられてもよい。
この発明により、ケーブル外装部材が長手方向に押圧されない状態で凹凸部と嵌合部とを嵌合させることができる。したがって、ケーブル挿通路に対してケーブル外装部材を容易に嵌め込むことが可能となる。また、ケーブル外装部材の末端部分が変形しないため、かかるケーブル外装部材から延出される電気ケーブルを所定の延出方向へ案内することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記規制部が前記電気ケーブルを間に挟んだ両側に設けられてもよい。
この発明により、それぞれの規制部によって所定の延出方向へ延出された電気ケーブルを安定させた状態で凹凸部と嵌合部とを嵌合させることができる。したがって、ケーブル挿通路に対してケーブル外装部材を容易に嵌め込むことが可能となる。また、ケーブル外装部材を嵌め込む際に電気ケーブルが折れ曲がったり捻じれたりすることを抑制できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記規制部が前記電気ケーブルを案内する案内面を有してもよい。
この発明により、ケーブル外装部材から延出される電気ケーブルを所定の延出方向へ案内することができる。したがって、電気ケーブルの延出方向が変化して電気ケーブルの曲げ部分に負荷が作用することを防止できる。また、ケーブル外装部材を嵌め込む際に電気ケーブルが折れ曲がったり捻じれたりすることを確実に抑制できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記電気ケーブルがフレキシブルフラットケーブルで構成されてもよい。
なお、フレキシブルフラットケーブルは、一枚又は複数枚を重ね合わせた態様で使用される。
この発明により、電気ケーブルの許容曲げ半径が小さくなる。したがって、電気ケーブルの曲げ部分に過大な負荷が作用することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によれば、電気ケーブルに外装されるケーブル外装部材が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドアの移動に伴って電気ケーブルに大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】車体側保持部を前方斜め上方側から視た斜視図。
【
図5】ケーブルホルダーを前方斜め上方側から視た斜視図。
【
図8】
図7におけるA-A断面図及びB-B断面図及びC-C断面図。
【
図10】他の実施形態に係るスライドドア給電装置の車体側保持部の拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。
本願においては、全ての図面で車体100の方向を示している。詳しくは、矢印Fが車体前側を示し、矢印Bが車体後側を示し、矢印Eが車体外側を示し、矢印Iが車体内側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。加えて、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0023】
図1はスライドドア給電装置1の斜視図である。
図1においては、電気ケーブル2が見えるようにケーブル外装部材5の一部を切り欠いた状態としている。
図2は車体側保持部3を前方斜め上方側から視た斜視図であり、
図3は
図2における矢印Vの方向から視た平面図であり、
図4は
図3における領域Rを拡大した拡大平面図である。また、
図5はケーブルホルダー30を前方斜め上方側から視た斜視図であり、
図6は
図5における矢印Vの方向から視た平面図であり、
図7は
図6における領域Rを拡大した拡大平面図である。さらに、
図8は
図7におけるA-A断面図及びB-B断面図及びC-C断面図であり、
図9は車体側保持部3の分解斜視図である。
【0024】
図1に示すように、本願発明に係るスライドドア給電装置1は、車体100からスライドドア200に組み込まれた電装部品に対して給電を行うものである。スライドドア給電装置1は、電気ケーブル2と、車体側保持部3と、スライドドア側保持部4とを有している。また、電気ケーブル2には、ケーブル外装部材5が外装されている。
【0025】
電気ケーブル2は、車体100とスライドドア200の間に架け渡される。電気ケーブル2は、複数枚のフレキシブルフラットケーブル(以降FFCという)を重ね合わせたものであり、それぞれのFFCは、平行に並べた帯状の導電体をシート状の絶縁体で挟み込んだ構造とされている。このようなFFCの束は、可撓性を有するケーブル外装部材5によって覆われている。ケーブル外装部材5については、後に詳しく説明する。
【0026】
車体側保持部3は、車体100に固定されて電気ケーブル2の一端側を保持する。車体側保持部3は、車体100のフロアパネル101に固定されるケーブルホルダー30を有している。ケーブルホルダー30には、電気ケーブル2と車体100側の電源ケーブルとを接続するコネクタユニット6が取り付けられている。本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、電源ケーブルがコネクタユニット6から延出した中継ケーブル71に接続される。なお、ケーブルホルダー30についても、後に詳しく説明する。
【0027】
スライドドア側保持部4は、スライドドア200に固定されて電気ケーブル2の他端側を保持する。スライドドア側保持部4は、スライドドア200のインナーパネル201に固定されるケーブルホルダー40を有している。ケーブルホルダー40には、電気ケーブル2とスライドドア200側の電装ケーブルとを接続するコネクタユニット(図示せず)が取り付けられている。本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、電装ケーブルがコネクタユニットから延出した中継ケーブル72に接続される。なお、ケーブルホルダー40については、以下に簡単に説明する。
【0028】
ケーブルホルダー40には、ケーブル挿通部41とコネクタユニット収容部42が車体100の前後方向Xに並べて設けられている(
図1参照)。また、ケーブルホルダー40には、ケーブル挿通部41に案内される電気ケーブル2等を挟み込むようにケーブル曲げ形状規制部43,44が設けられている(
図1参照)。
【0029】
ケーブル挿通部41は、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5が挿通されるケーブル挿通路が設けられた部位を指し、コネクタユニット収容部42は、コネクタユニットが収容されるコネクタユニット収容空間が設けられた部位を指す。また、ケーブル曲げ形状規制部43は、スライドドア200が全閉状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体前側Fに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指し、ケーブル曲げ形状規制部44は、スライドドア200が全開状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体後側Bに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。
【0030】
次に、ケーブル外装部材5について詳しく説明する。
図2から
図4に示すように、ケーブル外装部材5は、一体的に形成されたゴム板5a,5bが水平方向(前後方向X及び左右方向Yで規定される方向)に重なるように配置され、その下端縁に長手方向に沿ってスリットが形成された構造とされている。各ゴム板5a,5bには、長手方向に対して垂直に交差する凹凸部50が設けられている。より詳しくは、長手方向に対して垂直に交差する山形部分51と谷形部分52とが交互に設けられている。
【0031】
山形部分51は、ケーブル外装部材5における外側に向かって突出した部位を指す。山形部分51は、長手方向に対して垂直に延びており、高さ寸法が一定の凸条形状とされている。また、谷形部分52は、山形部分51と山形部分51の間の部位を指す。そのため、谷形部分52も、長手方向に対して垂直に延びており、深さ寸法Dv(
図4参照)が一定の凹溝形状とされている。さらに、ケーブル外装部材5の末端部分には、台形部分53が形成されている。台形部分53も、長手方向に対して垂直に延びており、高さ寸法が一定の凸条形状とされている。但し、台形部分53は、山形部分51よりも長手方向の幅寸法Wt(
図4参照)が大きく形成されている。
【0032】
次に、車体側保持部3のケーブルホルダー30について詳しく説明する。
図2から
図4に示すように、ケーブルホルダー30には、ケーブル挿通部31とコネクタユニット収容部32が車体100の左右方向Yに並べて設けられている。また、ケーブルホルダー30には、ケーブル挿通部31に案内される電気ケーブル2等を挟み込むようにケーブル曲げ形状規制部33,34が設けられている。
【0033】
ケーブル挿通部31は、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5が挿通される部位を指す。換言すると、ケーブル挿通部31は、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5が挿通されるケーブル挿通路31Pが設けられた部位を指す。ケーブル挿通路31Pは、上方側Uに向かって開放されており、組立作業においては、この開放端から電気ケーブル2及びケーブル外装部材5が嵌め込まれる(
図9参照)。
【0034】
図5から
図7に示すように、ケーブル挿通部31は、ケーブルホルダー30における左右方向Yの中央部分に設けられている。ケーブル挿通部31は、一対の側板部311と、各側板部311の下方側Dの端部同士をつなぐ底板部312とを有している。それぞれの側板部311には、対向する側板部311に向かって突出する嵌合部35が設けられている。また、車体後側Bの側板部311には、車体前側Fの側板部311に向かって突出する規制部36が設けられている。これらについては、後に詳しく説明する。
【0035】
加えて、ケーブル挿通部31には、一対の側板部311のそれぞれに沿うようにして車体100の上下方向Zに結束バンド91(
図2から
図4参照)を挿通する挿通孔31hが形成されている。そのため、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5は、ケーブル挿通路31Pに挿通された状態で、結束バンド91によって巻き留められる。こうして、ケーブルホルダー30は、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5がガタついたり位置がズレたり、あるいはケーブル挿通路31Pから引き出されたりすることを防止している。
【0036】
さらに加えて、ケーブル挿通部31には、ケーブル挿通路31Pよりも車体前側Fの上板部313ならびに前板部314を介してフロアパネル取付部315が設けられている。フロアパネル取付部315には、車体100の上下方向Zに固定用ボルト81(
図3及び
図4参照)を挿通する挿通孔31iが形成されている。また、ケーブル挿通部31には、ケーブル挿通路31Pよりも車体後側Bの上板部316ならびに後板部317を介してフロアパネル取付部318が設けられている。フロアパネル取付部318にも、車体100の上下方向Zに固定用ボルト82(
図3及び
図4参照)を挿通する挿通孔31jが形成されている。フロアパネル取付部318の先端部分には、別途のコネクタを係止するための係止構造319が設けられている。
【0037】
コネクタユニット収容部32は、コネクタユニット6が収容される部位を指す。換言すると、コネクタユニット収容部32は、コネクタユニット6が収容されるコネクタユニット収容空間32Sが設けられた部位を指す。コネクタユニット収容空間32Sは、上方側Uに向かって開放されており、組立作業においては、この開放端からコネクタユニット6が入れられ、車体外側Eの所定の位置に固定される(
図9参照)。
【0038】
図5から
図7に示すように、コネクタユニット収容部32は、ケーブルホルダー30における左右方向Yの車体内側Iに設けられている。コネクタユニット収容部32は、一対の側板部321と、各側板部321の下方側Dの端部同士をつなぐ底板部322とを有している。また、コネクタユニット収容部32は、前述の側板部311に対して垂直に交わり、側板部321及び底板部322につながる左壁部323と、この左壁部323に対向するとともに車体後側Bの側板部321及び底板部322につながる右壁部324とを有している。
【0039】
加えて、コネクタユニット収容部32には、底板部322を車体内側Iの端部から左右方向Yの中途部まで切り欠いたノッチ部32nが設けられている。また、コネクタユニット収容部32には、左壁部323に沿うようにして、車体100の上下方向Zに結束バンド92(
図2から
図4参照)を挿通する挿通孔32hが形成されている。そのため、コネクタユニット6は、コネクタユニット収容空間32Sに収められた状態で、結束バンド92によって巻き留められる。こうして、ケーブルホルダー30は、コネクタユニット6がガタついたり位置がズレたり、あるいはコネクタユニット収容空間32Sから外れ出たりすることを防止している。
【0040】
さらに加えて、コネクタユニット収容部32には、底板部322における車体前側Fの一部に車体内側Iに向かって延設されたケーブル支持部325が設けられている。ケーブル支持部325には、その先端部分(右端部分)に上方側Uへ変位する段差が形成されており、車体100の上下方向Zに結束バンド93(
図2から
図4参照)を挿通する挿通孔32iが形成されている。そのため、中継ケーブル71は、ケーブル支持部325に支持された状態で、結束バンド93によって巻き留められる。こうして、ケーブルホルダー30は、中継ケーブル71がガタついたり位置がズレたり、あるいはケーブル支持部325から外れ落ちたりすることを防止している。
【0041】
ケーブル曲げ形状規制部33,34は、スライドドア200の移動によって変形する電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。詳しく説明すると、ケーブル曲げ形状規制部33は、スライドドア200が全閉状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体前側Fに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。ケーブル曲げ形状規制部34は、スライドドア200が全開状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体後側Bに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。
【0042】
図5から
図7に示すように、ケーブル曲げ形状規制部33は、ケーブルホルダー30における左右方向Yの車体外側Eに設けられている。より詳しくは、ケーブル挿通部31に設けられたケーブル挿通路31Pよりも車体前側Fかつ車体外側Eの端部に設けられている。ケーブル曲げ形状規制部33は、上下方向Zに沿う中心軸に対して一定半径となる円弧状に形成されており、側板部311から車体前側Fに向かって湾曲する円弧面33sに沿って電気ケーブル2が巻き掛かることとなる。こうして、ケーブルホルダー30は、スライドドア200を全閉状態とした際に、電気ケーブル2が局所的に曲げられることを防止し、ひいては電気ケーブル2に大きな負荷が作用することを防止している。
【0043】
他方、
図5から
図7に示すように、ケーブル曲げ形状規制部34も、ケーブルホルダー30における左右方向Yの車体外側Eに設けられている。より詳しくは、ケーブル挿通部31に設けられたケーブル挿通路31Pよりも車体後側Bかつ車体外側Eの端部に設けられている。ケーブル曲げ形状規制部34は、上下方向Zに沿う中心軸に対して一定半径となる円弧状に形成されており、側板部311から車体後側Bに向かって湾曲する円弧面34sに沿って電気ケーブル2が巻き掛かることとなる。こうして、ケーブルホルダー30は、スライドドア200を全開状態とした際に、電気ケーブル2が局所的に曲げられることを防止し、ひいては電気ケーブル2に大きな負荷が作用することを防止している。
【0044】
次に、ケーブル挿通路31Pにおける嵌合部35と規制部36について詳しく説明する。
図6から
図8に示すように、ケーブル挿通路31Pを構成するそれぞれの側板部311には、対向する側板部311に向かって突出する計四つの嵌合部35が設けられている。また、車体後側Bの側板部311には、車体前側Fの側板部311に向かって突出する一つの規制部36が設けられている。
【0045】
嵌合部35は、それぞれの側板部311から対向する側板部311に向かって突出している。換言すると、嵌合部35は、それぞれの側板部311からケーブル挿通路31Pの中心線Lに向かって突出している。そのため、これら嵌合部35は、ケーブル挿通路31Pに挿通された電気ケーブル2及びケーブル外装部材5の長手方向に対して垂直に突出した部位ということができる(
図5及び
図8参照)。ここでは、ケーブル挿通路31Pの車体外側Eに設けられた一対の嵌合部35を第一嵌合部351とし、ケーブル挿通路31Pの車体内側Iに設けられた一対の嵌合部35を第二嵌合部352として説明する。
【0046】
第一嵌合部351においては、長手方向の厚さ寸法T1(
図7参照)及び長手方向に対して垂直方向の高さ寸法H1(
図8参照)が一定の凸条形状とされている。第一嵌合部351の厚さ寸法T1は、ケーブル外装部材5の谷形部分52における幅寸法Wv(
図4参照)よりも小さく、第一嵌合部351の高さ寸法H1は、谷形部分52における深さ寸法Dv(
図4参照)よりも小さく形成されている。そのため、ケーブル挿通路31Pに電気ケーブル2及びケーブル外装部材5を嵌め込んでいくと、第一嵌合部351がケーブル外装部材5の谷形部分52に入っていき、これらが嵌合することとなる。
【0047】
第二嵌合部352においても、長手方向の厚さ寸法T2(
図7参照)及び長手方向に対して垂直方向の高さ寸法H2(
図8参照)が一定の凸条形状とされている。第二嵌合部352の厚さ寸法T2は、第一嵌合部351の厚さ寸法T1に等しいものとされ、第二嵌合部352の高さ寸法H2も、第一嵌合部351の高さ寸法H1に等しいものとされている。つまりは、第一嵌合部351と同じ形状とされている。そのため、ケーブル挿通路31Pに電気ケーブル2及びケーブル外装部材5を嵌め込んでいくと、第二嵌合部352が第一嵌合部351と同様に谷形部分52に入っていき、これらが嵌合することとなる。
【0048】
さらに、第一嵌合部351に対する第二嵌合部352の位置について説明すると、第一嵌合部351から第二嵌合部352までの長さ寸法La(
図7参照)は、互いに隣り合う山形部分51同士又は谷形部分52同士の長さ寸法であるピッチ長Lp(
図4参照)の二倍の値とされている。つまりは、La=2Lpの関係が成立している。そのため、ケーブル挿通路31Pに電気ケーブル2及びケーブル外装部材5を嵌め込んでいくと、第一嵌合部351と第二嵌合部352が同時にそれぞれに対応する谷形部分52に入っていき、ケーブル外装部材5の長手方向の二箇所において、これらが嵌合することとなる。
【0049】
規制部36は、車体後側Bの側板部311から車体前側Fの側板部311に向かって突出している。換言すると、規制部36は、車体後側Bの側板部311からケーブル挿通路31Pの中心線Lに向かって突出している。そのため、これら規制部36も、嵌合部35と同じくケーブル挿通路31Pに挿通された電気ケーブル2及びケーブル外装部材5の長手方向に対して垂直に突出した部位ということができる(
図5及び
図8参照)。本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、車体後側Bの側板部311に規制部36が設けられているものの、車体前側Fの側板部311や底板部312に規制部36が設けられていてもよい。
【0050】
規制部36においては、長手方向の厚さ寸法T3(
図7参照)及び長手方向に対して垂直方向の高さ寸法H3(
図8参照)が一定の凸条形状とされている。規制部36の厚さ寸法T3は、ケーブル外装部材5の谷形部分52における幅寸法Wv(
図4参照)よりも大きく、規制部36の高さ寸法H3は、谷形部分52における深さ寸法Dv(
図4参照)よりも大きく形成されている。そのため、ケーブル挿通路31Pに電気ケーブル2及びケーブル外装部材5を嵌め込んでいく際に、規制部36を嵌合部35であると誤認しても、凹凸部50の谷形部分52に規制部36が入らないため、これらを嵌合させることが不可能となる。
【0051】
さらに、第二嵌合部352に対する規制部36の位置について説明すると、第二嵌合部352から規制部36までの長さ寸法Lb(
図7参照)は、ケーブル外装部材5の台形部分53における幅寸法Wt(
図4参照)よりも大きく形成されている。そのため、ケーブル挿通路31Pに電気ケーブル2及びケーブル外装部材5を嵌め込んでいく際に、第二嵌合部352から規制部36までの間に台形部分53を位置させることで、容易にケーブル外装部材5の位置を定めることが可能となる。また、第二嵌合部352から規制部36までの長さ寸法Lbは、前述したピッチ長Lpの2倍から3倍の間の値とされている。これにより、規制部36を嵌合部35であると誤認し、谷形部分52と規制部36とを間違って嵌合させたとしても、谷形部分52の位相に対して嵌合部35の位置がズレるため、これら谷形部分52と嵌合部35とを嵌合させることが不可能となる。
【0052】
なお、規制部36は、所定の嵌合位置にて嵌合されたケーブル外装部材5の末端面5s(
図4参照)から離間する位置に設けられている。つまりは、ケーブル外装部材5の末端面5sから隙間寸法Lc(
図4参照)を隔てた位置に設けられている。このようにしたのは、ケーブル外装部材5が長手方向に押圧されない状態で谷形部分52と嵌合部35とを嵌合させるためである。加えて、規制部36は、底板部312から上方側Uに向かって延設されているところ、その長さ寸法(上下方向Zの寸法)は、左右方向Yから視てケーブル外装部材5の末端面5sに対して重畳する程度であればよい。これは、ケーブル外装部材5が正規の位置から車体内側Iにズレた位置に嵌め込まれた際に、かかるケーブル外装部材5の末端部分に規制部36の先端部分(上端部分)が当接すればよいからである。
【0053】
以上のように、本実施形態に係るスライドドア給電装置1は、車体100からスライドドア200に組み込まれた電装部品に対して給電を行うものである。スライドドア給電装置1は、車体100とスライドドア200の間に架け渡される電気ケーブル2と、車体100に固定されて電気ケーブル2の一端側を保持する車体側保持部3と、スライドドア200に固定されて電気ケーブル2の他端側を保持するスライドドア側保持部4とを有している。そして、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が備えられ、ケーブル外装部材5には、ケーブル外装部材5の長手方向に対して垂直(上下方向Z)に交差する凹凸部50が設けられている。また、車体側保持部3には、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5が挿通されるケーブル挿通路31Pが設けられている。さらに、ケーブル挿通路31Pの内面には、ケーブル外装部材5における凹凸部50に嵌合する嵌合部35と、凹凸部50と嵌合部35との嵌合位置を規制する規制部36とが設けられている。
【0054】
このようなスライドドア給電装置1によれば、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が正規の位置からズレた位置(車体内側Iにズレた位置)に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドア200の移動に伴って電気ケーブル2に大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0055】
詳述すると、本願発明に係るスライドドア給電装置1は、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が備えられ、ケーブル外装部材5には、ケーブル外装部材5の長手方向に対して垂直(上下方向Z)に交差する凹凸部50が設けられている。また、車体側保持部3には、電気ケーブル2及びケーブル外装部材5が挿通されるケーブル挿通路31Pが設けられている。さらに、ケーブル挿通路31Pの内面には、ケーブル外装部材5における谷形部分52に嵌合する嵌合部35と、谷形部分52と嵌合部35との嵌合位置を規制する規制部36とが設けられている。そのため、ケーブル挿通路31Pに設けられた規制部36を基準としてケーブル外装部材5の位置を定め、ケーブル外装部材5における谷形部分52とケーブル挿通路31Pにおける嵌合部35とを嵌合させることにより、ケーブル外装部材5を正規の位置にて保持することが可能となる。すなわち、規制部36に対して当接又は僅かな隙間がひらいた状態となるようにケーブル外装部材5の位置を定め、ケーブル外装部材5における谷形部分52とケーブル挿通路31Pにおける嵌合部35とを嵌合させることにより、ケーブル外装部材5を正規の位置にて保持することが可能となる。したがって、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が正規の位置からズレた位置(車体内側Iにズレた位置)に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドア200の移動に伴って電気ケーブル2に大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0056】
また、本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、ケーブル外装部材5の末端部分に凹凸部50の山形部分51よりも長手方向の幅寸法Wtが大きい台形部分53が形成され、嵌合部35から規制部36までの長さ寸法Lbが台形部分53における長手方向の幅寸法Wtよりも大きい。
【0057】
このようなスライドドア給電装置1によれば、ケーブル挿通路31Pにおける嵌合部35から規制部36までの間にケーブル外装部材5における台形部分53を位置させ、ケーブル外装部材5における谷形部分52とケーブル挿通路31Pにおける嵌合部35とを嵌合させることにより、ケーブル外装部材5を正規の位置にて保持することが可能となる。つまりは、ケーブル挿通路31Pにおける嵌合部35から規制部36までの間にケーブル外装部材5における台形部分53を位置させることにより、ケーブル外装部材5の位置がケーブル挿通路31Pの車体外側Eへも車体内側Iへもズレることを防ぎ、ケーブル外装部材5を正規の位置にて保持することが可能となる。したがって、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が正規の位置からズレた位置(車体外側E又は車体内側Iにズレた位置)に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドア200の移動に伴って電気ケーブル2に大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0058】
また、本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、凹凸部50の互いに隣り合う山形部分51同士又は谷形部分52同士の長手方向の長さ寸法をピッチ長Lpとし、嵌合部35から規制部36までの長さ寸法Lbがピッチ長Lpの整数倍の値と異なっている。
【0059】
このようなスライドドア給電装置1によれば、ケーブル外装部材5における谷形部分52とケーブル挿通路31Pにおける規制部36とを間違って嵌合させてしまうと、谷形部分52の位相に対して嵌合部35の位置がズレるため、これら谷形部分52と嵌合部35とを嵌合させることが不可能となる。つまりは、ケーブル挿通路31Pに設けられた規制部36を嵌合部35であると誤認し、谷形部分52と規制部36とを間違って嵌合させたとしても、谷形部分52の位相に対して嵌合部35の位置がズレるため、これら谷形部分52と嵌合部35とを嵌合させることが不可能となる。したがって、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドア200の移動に伴って電気ケーブル2に大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0060】
また、本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、規制部36における長手方向の厚さ寸法T3が凹凸部50の谷形部分52における長手方向の幅寸法Wvよりも大きい。
【0061】
このようなスライドドア給電装置1によれば、ケーブル外装部材5における谷形部分52とケーブル挿通路31Pにおける規制部36とを嵌合させることが不可能となる。つまりは、ケーブル挿通路31Pに設けられた規制部36を嵌合部35であると誤認しても、凹凸部50の谷形部分52に規制部36が入らないため、これらを嵌合させることが不可能となる。したがって、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドア200の移動に伴って電気ケーブル2に大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0062】
また、本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、規制部36における長手方向に対して垂直方向の高さ寸法H3が凹凸部50の谷形部分52における長手方向に対して垂直方向の深さ寸法Dvよりも大きい。
【0063】
このようなスライドドア給電装置1によれば、ケーブル外装部材5における谷形部分52とケーブル挿通路31Pにおける規制部36とを嵌合させることが不可能となる。つまりは、ケーブル挿通路31Pに設けられた規制部36を嵌合部35であると誤認しても、凹凸部50の谷形部分52に規制部36が入らないため、これらを嵌合させることが不可能となる。したがって、電気ケーブル2に外装されるケーブル外装部材5が正規の位置からズレた位置に保持されることを防ぎ、ひいてはスライドドア200の移動に伴って電気ケーブル2に大きな引張荷重が作用してしまうことを防止できる。
【0064】
また、本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、規制部36が所定の嵌合位置にて嵌合されたケーブル外装部材5の末端面5sから離間する位置に設けられている。
このようなスライドドア給電装置1によれば、ケーブル外装部材5が長手方向に押圧されない状態で谷形部分52と嵌合部35とを嵌合させることができる。したがって、ケーブル挿通路31Pに対してケーブル外装部材5を容易に嵌め込むことが可能となる。また、ケーブル外装部材5の末端部分が変形しないため、かかるケーブル外装部材5から延出される電気ケーブル2を所定の延出方向へ案内することができる。
【0065】
また、本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、電気ケーブル2がFFCで構成されている。
このようなスライドドア給電装置1によれば、電気ケーブル2の許容曲げ半径が小さくなる。したがって、電気ケーブル2の曲げ部分に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0066】
本願発明の構成と前述の実施形態との対応において、
スライドドア給電装置はスライドドア給電装置1に対応し、
電気ケーブルは電気ケーブル2に対応し、
車体側保持部は車体側保持部3に対応し、
スライドドア側保持部はスライドドア側保持部4に対応し、
ケーブル外装部材はケーブル外装部材5に対応し、
嵌合部は嵌合部35に対応し、
規制部は規制部36に対応し、
凹凸部は凹凸部50に対応し、
山形部分は山形部分51に対応し、
谷形部分は谷形部分52に対応し、
台形部分は台形部分53に対応し、
車体は車体100に対応し、
スライドドアはスライドドア200に対応し、
ケーブル挿通路はケーブル挿通路31Pに対応し、
ピッチ長はピッチ長Lpに対応し、
谷形部分における幅寸法は幅寸法Wvに対応し、
谷形部分における深さ寸法は深さ寸法Dvに対応し、
台形部分における幅寸法は幅寸法Wtに対応し、
規制部における厚さ寸法は厚さ寸法T3に対応し、
規制部における高さ寸法は高さ寸法H3に対応し、
嵌合部から規制部までの長さ寸法は長さ寸法Lbに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0067】
例えば、
図10に示すように、規制部36が電気ケーブル2を間に挟んだ両側に設けられてもよい。
図10においては、規制部36が互いに対向するように配置されている。
このようなスライドドア給電装置1によれば、それぞれの規制部36によって所定の延出方向へ延出された電気ケーブル2を安定させた状態で谷形部分52と嵌合部35とを嵌合させることができる。したがって、ケーブル挿通路31Pに対してケーブル外装部材5を容易に嵌め込むことが可能となる。また、ケーブル外装部材5を嵌め込む際に電気ケーブル2が折れ曲がったり捻じれたりすることを抑制できる。
【0068】
また、
図10に示すように、規制部36が電気ケーブル2を案内する案内面36sを有してもよい。
図10においては、案内面36sが電気ケーブル2の曲げ部分に沿っている。
このようなスライドドア給電装置1によれば、ケーブル外装部材5から延出される電気ケーブル2を所定の延出方向へ案内することができる。したがって、電気ケーブル2の延出方向が変化して電気ケーブル2の曲げ部分に負荷が作用することを防止できる。また、ケーブル外装部材5を嵌め込む際に電気ケーブル2が折れ曲がったり捻じれたりすることを確実に抑制できる。
【0069】
加えて、前述の実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、嵌合部35が凸条形状とされ、かかる嵌合部35とケーブル外装部材の谷形部分52とが嵌合する構成とされている。しかしながら、嵌合部35が凹溝形状とされ、かかる嵌合部35とケーブル外装部材の山形部分51とが嵌合する構成としてもよい。
【0070】
さらに加えて、前述の実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、電気ケーブル2が複数枚のFFCを重ね合わせたものであるとされている。しかしながら、断面形状が丸い、いわゆる被覆電線を束ねたものであってもよい。あるいは、断面形状が扁平である、いわゆるリボン電線を重ね合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…スライドドア給電装置
2…電気ケーブル
3…車体側保持部
4…スライドドア側保持部
5…ケーブル外装部材
50…凹凸部
51…山形部分
52…谷形部分
53…台形部分
100…車体
200…スライドドア
31P…ケーブル挿通路
Lp…ピッチ長
Wv…谷形部分における幅寸法
Dv…谷形部分における深さ寸法
Wt…台形部分における幅寸法
T3…規制部における厚さ寸法
H3…規制部における高さ寸法
Lb…嵌合部から規制部までの長さ寸法