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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137161
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20230922BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20230922BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B05C9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043220
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】池田 淳
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA08
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA32
4F041BA38
4F041BA60
4F042AA16
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
4F042CA01
4F042CB02
4F042CC03
4F042CC04
4F042CC08
4F042CC15
4F042DB17
4F042DB26
4F042DB41
4F042DH09
4F042ED09
(57)【要約】
【課題】被印刷面に良好に画像を形成することができる装置を提供する。
【解決手段】被印刷面上を走行する走行体120には、被印刷面に画像を形成する画像形成部110が搭載されている。この画像形成部110には、被印刷面に向けて液体たる塗料を吐出する液体吐出ヘッドを有している。また、この走行体120には、液体吐出ヘッドの吐出性能の維持や回復を図るためのヘッド維持部106を有している。ヘッド維持部106には、液体吐出ヘッドのノズル面を洗浄する洗浄手段たる洗浄部を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷面上を走行する走行体と、
前記走行体に搭載され、前記被印刷面に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドのノズル面を洗浄する洗浄手段とを有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体を吐出する装置において、
前記洗浄手段は、前記ノズル面を洗浄液に浸漬させて前記ノズル面を洗浄することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体を吐出する装置において、
前記液体吐出ヘッドをカバーするカバー部材を有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記液体吐出ヘッドの吐出状態を維持する維持手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体を吐出する装置において、
少なくとも前記維持手段と前記洗浄手段とを有し、前記ノズル面に対向する手段を選択的に切り替える切替手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体を吐出する装置において、
前記切替手段が、前記液体吐出ヘッドをカバーするカバー部材であることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記被印刷面に吐出した液体を前記被印刷面に定着させる定着手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記走行体を自走させる自走手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
撮像手段を備え、
前記撮像手段により前記走行体の走行先の被印刷面を撮像した画像に基づいて、前記液体吐出ヘッドから前記被印刷面に形成された既存画像部に対して消去用の液体を吐出することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記液体は、水性塗料であることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれか一項に記載の液体を吐出する装置において、
前記被印刷面が路面であることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駐車場の路面や建物の床面などの被印刷面上を走行体が走行しながら、ピエゾ方式で走行体に搭載された噴射手段のノズル孔から液体を噴射し、被印刷面に画像を形成するものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、屋外での使用時に砂や埃がノズル面に付着し、このノズル面に付着した砂や埃がノズル孔の一部を塞ぐなどして液体の吐出性能に影響を及ぼし被印刷面に良好に画像を形成できないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、被印刷面上を走行する走行体と、前記走行体に搭載され、前記被印刷面に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドのノズル面を洗浄する洗浄手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、被印刷面に良好に画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態の自走式印刷装置の概略構成図。
図2】同自走式印刷装置と外部端末との通信について説明する図。
図3】同自走式印刷装置のヘッドアレイの概略構成図。
図4】同自走式印刷装置の制御ブロック図。
図5】同自走式印刷装置のヘッド維持部の概略構成図。
図6】印刷動作時のヘッド維持部の状態について説明する図。
図7】待機時のヘッド維持部の状態について説明する図。
図8】洗浄時のヘッド維持部の状態について説明する図。
図9】ワイピング時のヘッド維持部の状態について説明する図。
図10】同自走式印刷装置による既存の路面標示の消去について説明する図。
図11】同自走式印刷装置に反射材散布装置を設けた概略構成図。
図12】変形例のヘッド維持部を搭載した自走式印刷装置の概略構成図。
図13】変形例のヘッド維持部の概略構成図。
図14】印刷動作時の変形例のヘッド維持部の状態について説明する図。
図15】待機時の変形例のヘッド維持部の状態について説明する図。
図16】空吐出時の変形例のヘッド維持部の状態について説明する図。
図17】洗浄時の変形例のヘッド維持部の状態について説明する図。
図18】ワイピング時の変形例のヘッド維持部の状態について説明する図。
図19】各部にカバー部材を設けた変形例のヘッド維持部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を、液体を吐出する装置である自走式印刷装置に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0008】
図1は、本実施形態の自走式印刷装置100の概略構成図である。
自走式印刷装置100は、被印刷面たる路面上を走行する走行体120を備えており、前後の移動および左右方向への移動が可能となっている。走行体120は、動力源たるモータにより自走する。本実施形態では、車輪を4つ備える4輪の走行体120であるが、3輪の走行体でもよく、また、無限軌道(クローラー)を備えた走行体でもよい。また、走行体120を駆動する駆動源は、内燃機関であってもよい。また、本実施形態では、被印刷面の一例として路面に画像を形成する場合について説明するが、被印刷面としては、建物の内外のコンクリートの床面や壁面等でもよい。
【0009】
走行体120には、走行体120の動きを制御する自走手段たる走行制御装置101、外部端末と通信を行う通信手段102、被印刷面上に標識などの画像を形成する画像形成部110、バッテリー等を有する電源ユニット109などが搭載されている。
【0010】
通信手段102は、図2に示すようにタブレット等の外部端末114との無線通信が可能であり、走行体120の走行パターンおよび画像データ等を外部端末114から受信する。また、通信手段102は、塗料残量やバッテリー残量などの装置の情報を外部端末114に送信する。
【0011】
図2に示すように、走行体120には、走行体120の前方を撮影するステレオカメラ等の撮像手段としての撮像素子112が設けられおり、この撮像素子112が撮像した映像に基づいて、走行体120の走行等が制御される。また、走行体120には、装置の動作状態を報知するための報知ランプ121なども搭載されている。
【0012】
画像形成部110は、図1に示すように塗料タンク103、路面上に塗料を吐出するヘッドアレイ104、塗料タンク103に接続しタンク内の塗料をヘッドアレイ104へ供給するポンプ等の塗料供給部105を備えている。また、画像形成部110は、ヘッドアレイ104の液体吐出ヘッド104a(図3参照)を最適な状態に維持するヘッド維持部106、それらを制御するプリンター制御部107などを有している。
【0013】
塗料タンク103は、液状の塗料を少なくとも1色を保持する。塗料の色数に応じて塗料タンクは追加される。また、塗料タンク内に塗料を攪拌する攪拌部材を設け、塗料の種類によっては、攪拌部材により塗料タンク内の塗料を攪拌して塗料内の成分分離を防止できるようにしてもよい。
【0014】
本実施形態の自走式印刷装置100で用いる塗料としては、水を主な揮発成分とする水性塗料が好ましく、被印刷面が路面の場合は、例えば、日本工業規格(JIS K 5665)によって規格された1種A,2種A等の路面用水性塗料を用いることができる。2種の路面用塗料を用いる場合は、塗料タンク103に塗料を50~80℃に加熱する加熱手段設ける。また、自走式印刷装置100で用いる塗料としては、日本工業規格(JIS K 5665)によって規格された1種B,2種B等の有機溶剤を揮発成分とする溶剤型塗料も用いることもできる。
【0015】
ヘッドアレイ104は、図3に示すように、液状の塗料を吐出する複数の液体吐出ヘッド104aが千鳥状に並べて配置されている。なお、上記液状とは、少なくとも上記液体吐出ヘッドで吐出する時点で粘度を有する流動性のある液体を意味する。また、千鳥状に並べて配置された液体吐出ヘッドの群を走行体の進行方向に複数配置したり、図3に示すヘッドアレイ104を、走行体の進行方向に複数配置したりしてもよい。
【0016】
ヘッドアレイ104の液体吐出の範囲は1200mmとしている。液体吐出範囲を1200mmとすることで、速度制限等のほとんどの路面標示を一回の移動で印刷することが可能となる。液体吐出ヘッド104aの液体吐出方式としては、ピエゾ方式、サーマル(バブル)方式、バルブ方式、静電吸引方式等の公知の吐出方式を用いることができる。
【0017】
ガラスビーズを含有した反射塗料など、粒径の大きな材料が含有された塗料を用いる場合は、塗料を吐出するためのノズル径が大きくなる。そのため、液体吐出方式としては、ノズルにメニスカスを形成する必要がないバルブ方式が好ましい。
【0018】
また、各液体吐出ヘッドには、複数のノズル列を有しており、各ノズル列で同一色の塗料を吐出してもよいし、各ノズル列で異なる色の塗料を吐出するようにしてもよい。各ノズル列で異なる色の塗料を吐出する場合は、塗料タンク103は塗料の色毎に複数設ける。
【0019】
ヘッド維持部106は、ヘッドアレイ104の液体吐出ヘッド104aのノズル面の状態を最適に維持するものであり、ノズルの保湿する機能や、液体吐出性能を回復する機能を有している。なお、ヘッド維持部106の詳細については、後述する。
【0020】
定着手段108は、例えばヒータ、送風ファンおよび送風ダクトから構成され、被印刷面に吐出した塗料を加熱・乾燥させることで、路面に塗料を定着させる。定着手段108としては、マイクロ波を照射して塗料の溶剤を加熱・揮発させるようにしてもよい。また、定着手段108は、用いる塗料により適宜変更してもよい。例えば、用いる塗料がUV硬化型の塗料の場合は、定着手段108として、UV照射装置を用いる。定着手段108を備えることで、養生時間を短縮することができ、短時間で通行を可能にすることができる、
【0021】
図4は、自走式印刷装置100の制御ブロック図である。
自走式印刷装置100は、走行制御装置101、通信手段102、プリンター制御部107等、装置全体の制御を司る中央演算処理装置200を有している。
【0022】
走行制御装置101は、動力制御部101a、操舵制御部101b、移動距離計測部101c、移動速度計測部101dを有している。走行制御装置101は、CPU、ROM、RAMを備えており、CPUがROMに記憶された制御プログラム101eを実行することにより、動力制御部101a、操舵制御部101b、移動距離計測部101cおよび移動速度計測部101dの機能が実現される。
また、走行体120が制動装置(ブレーキ装置)を備え、走行制御装置101は、この制動装置を制御する制動制御部を有してもよい。
【0023】
動力制御部101aは、走行体120を走行させるモータ111の回転方向や回転速度を制御して、走行体120の加減速制御、等速制御、停止制御等を行うものである。操舵制御部101bは、走行体120の前輪または後輪、あるいはその両方を操舵して、任意の方向に走行体120を移動させる制御を行うものである。例えば、操舵制御部101bは、移動中(印刷時)の直進走行性を維持するための方向補正を行う。なお、走行体120が車輪ではなくクローラを備える構成の場合は、操舵制御部101bは、各クローラの送り量を調整することで操舵制御を行う。
【0024】
方向補正は、走行体120の前方(印刷時の進行方向の後側)に設けられた撮像素子112が撮像した映像情報と、走行体120の車輪の回転数を検出するロータリーエンコーダ等のエンコーダ113からの回転数(エンコーダ信号)とを取得する。そして、映像情報と回転数情報とから走行体120の進行方向ズレを検出する。そして、検出したズレに基づいて、ズレ補正するように車輪の操舵を行う。
【0025】
エンコーダ113の回転板(ディスク)は、車輪または車輪のシャフト等に設けられている。なお、エンコーダ113は、必ずしも走行用(動力用または操舵用)の車輪等に取り付ける必要はなく、測定用の車輪を別途設け、この測定用の車輪に取り付ける構成でもよい。
【0026】
方向補正の別制御としては、走行体120の前方に基準となるマーカーを設置する。次に、撮像素子112でこのマーカーの位置を検知しながら、マーカーの位置が左右方向にずれないように車輪の操舵を行うことで、直進走行性を維持する。なお、この場合は、撮像素子112でなく、赤外線センサなど、マーカーを検出できるものであればよい。また、マーカーは、単数でも複数でもよく、また、装置が点として認識するマーカー、ラインとして認識するマーカーでもよい。
また、仮設可能なレールを路面等の被印刷面上に敷き、レール上を走行体が移動するようにし、操舵制御を不要としてもよい。
【0027】
移動距離計測部101cは、エンコーダ113からの回転数(エンコーダ信号)と、車輪の外径とから移動距離を計測する。
移動速度計測部101dは、時間計測手段を備え、移動距離計測部101cで得られた移動距離情報から速度を計測する。計測した速度情報は、動力制御部101aへフィードバックされ、走行体120の加減速制御、等速制御、停止制御に用いられる。
【0028】
走行制御装置101のROMに記憶されている制御プログラム101eは、通信手段102で受信した走行モードに従って実行される。走行モードには、1.イニシャル動作、2.印刷時動作、3.マニュアル動作(前進、行進、左右操舵、停止)などの種類がある。これらの走行モードは、外部端末114を用いてプログラマブルに(あるいはシーケンシャルに)作業者が設定操作できることが望ましい。
【0029】
上記イニシャル動作は、走行体120の動作チェック、エンコーダ113や撮像素子112の動作チェックなどを自動で行う走行モードである。上述したように、方向補正を、マーカーを用いて行う場合は、上記イニシャル動作として、撮像素子112によりマーカー位置検出(位置情報のイニシャル)も行う。
【0030】
上記印刷時動作は、被印刷面に画像形成を行うときの一連の走行体120の走行制御である。印刷時動作には、走行体120の印刷開始位置までの移動制御、印刷時の走行体120の等速制御、印刷時の走行体の直進走行(方向補正)制御、印刷終了後の停止制御を自動で行う走行モードである。
【0031】
上記マニュアル動作は、外部端末114上で走行体120の操作を行うモードで、作業者が外部端末114を操作して任意に走行体を操作する走行モードである。
【0032】
通信手段102は、無線アンテナ102aを用いて、外部端末114との間でデータの送受信を行う送受信部102bと、送受信部102bの制御を行う通信制御部102cとを有している。用いる無線通信方式は、作業者の外部端末114の操作が施工現場で行われる場合は、近距離無線通信方式(Bluetooth(登録商標),ZigBee(登録商標)など)を用いるのが望ましい。通信制御部102cは、送受信データをデコード/エンコードするデータ変換部と、また送受信データを一時記憶するバッファメモリとを備えている。なお、本実施形態では、外部端末114との通信は、無線通信であるが、外部端末114との通信は有線でもよいし、無線通信手段と有線通信手段の両方を備えてもよい。
【0033】
外部端末114との間で受信する通信データには、走行体120の走行制御コマンドと、画像形成用の制御コマンド、画像データを含む。外部端末114から受信した走行制御コマンドは、通信制御部102cにより所定の形式へ変換して、中央演算処理装置200に渡される。そして、中央演算処理装置200から走行制御装置101の制御プログラム101eに渡されて、各走行モードが実行される。
【0034】
外部端末114から受信した画像形成用の制御コマンドおよび画像データは、通信制御部102cにより所定の形式へ変換して、中央演算処理装置200に渡される。そして、中央演算処理装置200からプリンター制御部107の制御プログラム107eに渡されて、画像形成制御が行われる。
【0035】
プリンター制御部107は、ヘッド駆動制御部107a、塗料供給制御部107b、維持部制御部107c、および定着制御部107dを有している。プリンター制御部107は、CPU、ROM、RAMを備えており、CPUがROMに記憶された制御プログラム107eを実行することで、ヘッド駆動制御部107a、塗料供給制御部107b、維持部制御部107cおよび定着制御部107dの機能が実現される。
【0036】
ヘッド駆動制御部107aは、ヘッドアレイ104の駆動制御を行う。具体的には、液体吐出ヘッド104aのノズルの駆動チャンネル切り替え、画像データに基づく液体吐出ヘッドの駆動波形の生成、出力を行う。
【0037】
塗料供給制御部107bは、塗料供給部105を制御して、ヘッドアレイ104への塗料の送液制御、液体吐出ヘッドの塗料流路の負圧制御等を行う。また、塗料タンク103に塗料を攪拌する攪拌部材を有する場合、塗料供給制御部107bは、この攪拌部材の攪拌制御も行う。
【0038】
維持部制御部107cは、後述するヘッド維持部106を制御して、液体吐出ヘッド104aのノズル面の洗浄、ワイピング、空吐出等を行う。例えば、作業者が、外部端末114を操作して、ヘッド回復モードを実行すると、外部端末114から画像形成用の制御コマンドとして回復モード実行指示信号が送信される。通信手段102が受信した回復モード実行指示信号は、中央演算処理装置200を介してプリンター制御部107の制御プログラム107eに渡され、ヘッド回復モードが実行され、ヘッド面の洗浄等の所定の回復動作が実行される。
【0039】
定着制御部107dは、定着手段108の制御を行う。例えば、定着手段として被印刷面に吐出した塗料の加熱・乾燥を行うものであれば、ヒータの発熱量や、送風ファンの回転数などが制御される。
【0040】
作業者は、外部端末114を操作して、路面に印刷する画像の位置や画像サイズ、塗装膜厚を設定する。具体的な一例としては、まず、路面の画像の印刷を行う領域が撮像素子112の撮像範囲に入るようにマニュアル動作によって自走式印刷装置100を移動させる。このとき、撮像素子112が撮像した映像を、外部端末114に送信し、撮像素子112が撮像した映像を外部端末114に表示するようにしてもよい。これにより、作業者は、外部端末114に表示された撮像素子112が撮像した映像を確認しながら、自走式印刷装置100をマニュアル動作で画像の印刷を行う路面が撮像素子112の撮像範囲に入る位置に移動させることができる。また、外部端末114に表示された撮像素子112の映像に、液体吐出の幅方向の範囲を示すガイドラインを表示するようにしてもよい。
【0041】
次に、路面の画像の印刷を行う領域が撮像素子112の撮像範囲に入る位置に自走式印刷装置100を移動させたら、外部端末114に表示された撮像素子112の画像に、路面に印刷する画像を合成し路面に印刷する画像サイズや画像の位置などを設定する。
【0042】
このようにして、設定された路面に印刷する画像の位置(自走式印刷装置100から画像印刷位置までの距離)、画像サイズおよび塗装膜厚などに基づいて、外部端末114は、走行制御コマンドと、画像形成用の制御コマンドを生成する。そして、画像データとともに、自走式印刷装置100へ送信する。通信手段102が外部端末114から受信した画像形成用の制御コマンドとしての画像のサイズ情報や、位置情報、塗装膜厚情報および画像データは、中央演算処理装置200を介してプリンター制御部107に渡される。プリンター制御部107は、画像のサイズ情報や、位置情報、塗装膜厚情報および画像データに基づいて、液体吐出ヘッド104aのノズルの駆動チャンネル切り替えや液体吐出ヘッドの駆動波形の生成を行う。また、塗装膜厚情報に基づいて、定着手段108のヒータの熱量や送風ファンの送風量が設定される。また、画像のサイズ情報および塗装膜厚情報などから、ヘッドアレイ104への塗料の送液制御が行われる。
【0043】
走行制御装置101は、中央演算処理装置200を介して渡された走行制御コマンドとしての印刷動作実行指示に基づいて、走行モードとしての印刷時動作が実行される。印刷時動作が実行されると、報知ランプ121が点灯し印刷動作中であることを報知する。また、走行体120にスピーカを搭載し、音により印刷動作中であることを報知するようにしてもよい。
【0044】
外部端末114から受信した画像位置情報と、移動距離計測部101cで計測された移動距離とに基づいて移動制御および操舵制御が行われる。また、移動距離計測部101cで計測された移動距離情報は、中央演算処理装置200を介してヘッド駆動制御部107aに渡される。そして、移動距離情報に基づいて、自走式印刷装置100が印刷開始位置に到達したタイミングで、塗料の吐出が開始され、路面の狙いの位置に画像が形成される。路面への印刷中は、動力制御部101aにて自走式印刷装置100が一定速度で移動するように等速制御が行われる。また、操舵制御部101bにて、方向補正が行われ自走式印刷装置100を直進させる。
【0045】
ヘッド駆動制御部107aは、移動距離計測部101cで計測された移動距離情報、または時間に基づいて、各ノズル列の吐出周期(駆動波形の周期)あるいは吐出タイミングを制御する。具体的には、塗料吐出後から画像の解像度に基づいて設定された移動距離あるいは時間になったタイミングで、各ノズル列のノズルから液状の塗料が吐出される。
【0046】
そして、路面への画像印刷が終了したら、動力制御部101aにて停止制御が行われるとともに報知ランプ121を消灯して印刷動作が終了したことを報知する。なお、上記印刷制御は、一例であり、これに限られるものではない。
【0047】
従来は、一般的にラインマーカーあるいはライナーと呼ばれる一定幅の直線が引かれる施工機械を用いて路面標示を形成している。数字や文字、記号など直線と曲線が組み合わさった路面標示を施工する場合には、作業者は上記施工機械を巧みに操り、直線と曲線を組み合わせて描いている。したがって、路面標示を施工するには一定のスキルを有した作業者が実施する必要がある。
【0048】
一方、本実施形態では、液体吐出ヘッド104aを用いることで、自走式印刷装置100(走行体120)を直進させるだけで直線と曲線が組み合わさった路面標示を施工することができる。これにより、作業者のスキルに頼らずに、数字や文字、記号など直線と曲線が組み合わさった路面標示を精度よく施工することができる。さらに、自走して路面標示が形成されるため、走行体120を直進させるための作業者の操作も不要となり、より一層、作業者のスキルに頼らずに、直線と曲線が組み合わさった路面標示を精度よく施工することができる。
【0049】
また、自走式印刷装置100(走行体120)を直進させるだけで記号や文字などの路面標示を施工することができるため、狭い路面であっても、自動で記号や文字などの路面標示を施工することができ、作業の効率化、省人化を図ることができる。
【0050】
次に、本実施形態のヘッド維持部106について説明する。
図5は、本実施形態のヘッド維持部106の概略構成図である。
図5に示すように、ヘッド維持部106は、ヘッドアレイ104を覆い、屋外での使用時に不用意な風による影響を抑制するカバー部材としての風防カバー106aを有している。この風防カバー106aの内周面に、維持手段としての保湿・吸引キャップ106b、清掃手段としてのウェブワイピング部106c、洗浄手段としての洗浄部106dが設けられている。また、風防カバー106aには、液体吐出ヘッド104aから吐出した塗料が、通過するためのスリット116が設けられている。また、印刷動作時以外は、このスリット116を塞いで、風防カバー内への埃、ゴミなどの侵入を防止するスリットカバー106eを有している。
【0051】
ヘッドアレイ104は、中空状の支持アーム14に支持されており、支持アーム14内に塗料をヘッドアレイ104へ供給するための供給チューブが配置されている。また、この支持アーム14は、アーム支持部材15に上下方向に移動可能に支持されている。また、このアーム支持部材15には、風防カバー106aが回動自在に支持されている。風防カバー106aが回動することで、保湿・吸引キャップ106b、ウェブワイピング部106cおよび洗浄部106dの間で、液体吐出ヘッドに対向させる手段の切り替えを行う。すなわち、風防カバー106aが、切替手段として機能する。
【0052】
維持手段としての保湿・吸引キャップ106bは、待機時に液体吐出ヘッド104aをキャッピングしてノズルを保湿して吐出性能の維持を図る。また、保湿・吸引キャップ106bは、キャッピングした状態でノズルから塗料の吸引を行い、吐出性能の回復を図る。保湿・吸引キャップ106bは、スプリング106b1を介して風防カバー106aの内周面に保持されている。
【0053】
保湿・吸引キャップ106bは吸引チューブを介して吸引手段としての吸引ポンプに接続されており、キャッピングした状態で吸引ポンプを駆動し、ノズルから粘度が上昇した塗料を排出させ、液体吐出ヘッド104aの吐出性能の回復を図る。吸引ポンプにより吸引された塗料は、廃液タンクに送られる。
【0054】
また、本実施形態の保湿・吸引キャップ106bは、印刷動作開始時等に行わる空吐出された塗料を受ける空吐出受けとして機能する。この空吐出により保湿・吸引キャップ106bに溜まった塗料は、吸引ポンプにより吸引され廃液タンクへ送られる。また、風防カバー106aの内部に空吐出受けを設けて、この空吐出受けに空吐出を行うようにしてもよい。
【0055】
洗浄部106dは、洗浄液が貯められる凹形状であり、この洗浄部106dに貯められた洗浄液に液体吐出ヘッド104aのノズル面を浸漬してノズル面を洗浄するものである。また、洗浄部106dには、洗浄液を供給するための洗浄液供給チューブ、洗浄部106dから洗浄液を排出するための排出チューブが接続されている。
【0056】
洗浄液が貯留された洗浄液タンクから送液ポンプにより洗浄液供給チューブを介して洗浄液が洗浄部106dに供給される。ノズル面洗浄後の汚れた洗浄液は、上記吸引ポンプにより排出チューブから排出される。排出された洗浄液は、上記廃液タンクに排出される。
【0057】
例えば、保湿・吸引キャップ106bと洗浄部106dとの間で吸引ポンプの吸引先を選択的に切り替える切り替え手段を設けることで、吸引ポンプにより洗浄部106dからの洗浄液の吸引と、保湿・吸引キャップ106bからの塗料の吸引とを行うことができる。洗浄液としては、水を用いることができる。
【0058】
本自走式印刷装置100の屋外で使用時に例えば車輪により弾き飛ばされた砂、泥、埃などが液体吐出ヘッド104aのノズル面に付着するおそれがある。また、風により路面から舞い上がった砂や埃などがノズル面に付着するおそれもある。このノズル面に付着した砂、泥および埃などがノズル孔の一部を塞ぐなどして塗料の吐出性能に影響を及ぼすおそれがある。ノズル面に付着した砂や埃などをウェブで拭き取ったりワイパー部材により除去したりすると、ノズル面を傷つけるおそれがある。
【0059】
これに対し、本実施形態では、洗浄部106dを設け、洗浄部106dでノズル面を洗浄することで、ノズル面を傷つけることなく、ノズル面に付着した砂や埃などを除去することができる。これにより、ノズル面に付着した砂や埃などにより吐出不良などが発生するのを抑制することができる。
【0060】
路面が洗浄液で濡れてしまうと、塗料が路面に定着しないおそれがあるため、路面が乾くまで画像形成が行えなくなる。しかし、本実施形態では、ノズル面を洗浄液に浸漬してノズル面を洗浄することで、洗浄液の路面への付着を抑制できる。これにより、路面が洗浄液で濡れてしまうのを防止でき、路面が乾くまで画像形成が行えない事態が生じるのを防止できる。
【0061】
また、ノズル面に洗浄液を吹き付けて、ノズル面を洗浄してもよい。この場合は、液体吐出ヘッドを洗浄キャップによりキャッピングした状態で、ノズル面に洗浄液を吹き付けてノズル面の洗浄を行うようにする。これにより、洗浄液が、路面に付着しないようにできる。
【0062】
ウェブワイピング部106cは、ワイパー部材106c1と、交換可能なウェブローラ106c2とを有している。ウェブワイピング部106cは、洗浄部106dで洗浄後のノズル面に付着した洗浄液を、ウェブローラ106c2のウェブで拭き取る。駆動機構により一方のローラに巻き付いている汚れていないウェブを他方のローラに巻き取ることで、ノズル面をウェブが移動し、ノズル面に付着した洗浄液が拭き取られる。ワイパー部材106c1は、ノズル面をワイピングして拭き残した洗浄液を除去する。
【0063】
また、保湿・吸引キャップ106bによりノズルから塗料の吸引を行った後、ノズル面に塗料が付着するおそれがある。そのため、吸引動作後に洗浄液の除去と同様にしてウェブワイピング部106cでノズル面に付着した塗料の除去を行うようにしてもよい。
【0064】
図6は、印刷動作時のヘッド維持部106の状態について説明する図である。
図6に示すように、印刷動作時は、風防カバー106aのスリット116がヘッドアレイ104の液体吐出ヘッドに対向する位置に位置する。また、図6に示すように、スリットカバー106eが開かれる。
【0065】
また、図中矢印Aに示すように支持アーム14を下降させ、退避位置から路面とのギャップが画像形成に最適な最適ギャップDとなる画像形成位置へヘッドアレイ104を移動させる。そして、液体吐出ヘッド104aから路面へ向けて塗料が吐出され、定着手段108により路面上の塗料に温風を吹き付けて塗料の溶剤を揮発させて、塗料を路面に定着させる。
【0066】
図6に示すように、印刷動作時には、ヘッドアレイ104が風防カバー106aに覆われた状態で、塗料の吐出を行うことができ、風などの影響を抑えることができ、良好に路面に画像を形成することができる。
【0067】
図7は、待機時のヘッド維持部106の状態について説明する図である。
印刷動作が終了して、装置が待機状態となると、支持アーム14を上昇させ、ヘッドアレイ104を退避位置へ移動させる。ヘッドアレイ104が退避位置へ移動したら、スリットカバー106eを閉じて風防カバー106aのスリット116を塞ぐ。これにより、スリット116を通って、砂や埃などが風防カバー内に入り込むのを抑制できる。
【0068】
次に、図中矢印Bに示すように風防カバー106aを図中反時計回りに回動させ、保湿・吸引キャップ106bをヘッドアレイ104の液体吐出ヘッドに対向する位置に移動させる。保湿・吸引キャップ106bが液体吐出ヘッドに対向する位置に移動したら、支持アーム14を下降させ、保湿・吸引キャップ106bにヘッドアレイ104の下面を当接させる。これにより、液体吐出ヘッド104aが保湿・吸引キャップ106bによりキャッピングされ、液体吐出ヘッド104aのノズルが保湿される。なお、ノズルから塗料を吸引するときも、上述と同様の動作を行って、液体吐出ヘッド104aを保湿・吸引キャップ106bによりキャッピングする。
【0069】
図8は、洗浄時のヘッド維持部106の状態について説明する図である。
まず、支持アーム14を上昇させ、ヘッドアレイ104を退避位置へ移動させる。次に、風防カバー106aを図中時計回りに回動させ、洗浄部106dをヘッドアレイ104の液体吐出ヘッド104aに対向する位置に移動させる。次に、洗浄部106dに洗浄液が貯まったら、支持アーム14を下降させ、図8に示すように、洗浄部106dに貯まった洗浄液に液体吐出ヘッドのノズル面を浸漬させる。洗浄後は、支持アーム14を上昇させてヘッドアレイ104を退避位置へ移動させる。
【0070】
図9は、ワイピング時のヘッド維持部106の状態について説明する図である。
ヘッドアレイ104が退避位置に位置した状態で、風防カバー106aを回動させ、ウェブワイピング部106cをヘッドアレイ104の液体吐出ヘッドに対向する位置に移動させる。次に、支持アーム14を下降させ、ノズル面をウェブに接触させたのち、ウェブを巻き取りノズル面に付着した洗浄液や塗料をウェブで拭き取る。次に、支持アーム14をノズル面がワイパー部材106c1の先端部分に当接する位置まで上昇させる。そして、風防カバー106aを図中反時計回りに回動させ、ワイパー部材106c1をノズル面に摺動させて、拭き残りの洗浄液や塗料を掻き取る。
【0071】
また、本実施形態の自走式印刷装置100は、ヘッドアレイ104から、標示消去用塗料を、路面に形成された既存の路面標示上に吐出して、既存の路面標示を消去する消去モードを有している。
【0072】
図10は、本自走式印刷装置100による既存の路面標示の消去について説明する図である。
まず、図10に示すように、既存の路面標示が撮像素子112の撮像範囲に入る位置にマニュアル動作によって自走式印刷装置100を移動させる。次に、作業者は、外部端末114を操作して、消去モードの実行を指示する。通信手段102が外部端末114から消去モード実行指示を受信したら、撮像素子112の撮像した画像を解析する。そして、路面上の既存の路面標示Kの位置、形状、サイズ、自走式印刷装置100からの距離Lを求める。なお、外部端末114に撮像素子112の撮像した画像を表示し、外部端末114により作業者が消去する路面標示を指定するようにしてもよい。
【0073】
次に、この求めた既存の路面標示の形状やサイズの情報を、プリンター制御部107の制御プログラム107eに渡し、ヘッド駆動制御部107aにて液体吐出ヘッド104aのノズルの駆動チャンネル切り替えや液体吐出ヘッド104aの駆動波形の生成を行う。また、求めた既存の路面標示の位置情報や自走式印刷装置100と既存標示との距離情報が走行制御装置101の制御プログラムに渡され、動力制御部101aによって、加減速制御、等速制御、停止制御に用いられる。なお、プリンター制御部107の制御プログラム107eに渡すサイズ情報を、求めた既存の路面標示のサイズに対して一回り大きなサイズとしてもよい。これにより、既存の路面標示消去の確実性を高めることができる。また、このときは、求めた既存の路面標示の位置情報や自走式印刷装置100と既存標示との距離情報を、サイズアップに応じて補正して、走行制御装置101に渡す。
【0074】
その後は、上述した印刷動作と同様な動作により、既存の路面標示に重なるように標示消去用塗料として、路面と同一色の塗料が吐出され、既存の標示が消される。例えば、路面がアスファルトの場合は、標示消去用塗料として黒色塗料が用いられる。また、例えば、地下駐車場、屋内や船内駐車場などコンクリートの路面には標示消去用塗料としてグレーの塗料を用い、グリーンの路面の場合は、標示消去用塗料としてグリーンの塗料を用いる。
【0075】
既存の標示を消去した箇所に新たな路面標示を形成する場合は、自走式印刷装置100を自動後退させて、図10に示す位置へ戻すようにしてもよい。また、この戻る際にも、定着手段108により、路面上の標示消去用塗料に対して温風を吹き付けて、標示消去用塗料の定着性を高めるようにするのが好ましい。
【0076】
図11は、自走式印刷装置100に反射材散布装置130を設けた概略構成図である。
反射材散布装置130は、反射材としてのガラスビーズが収納された反射材収容部131と、路面に対してガラスビーズを散布する散布部132と、反射材収容部131内のガラスビーズを散布部132へ搬送する搬送部133とを有している。散布部132は、ヘッドアレイ104と、定着手段108との間に配置されている。
【0077】
散布部132は、ガラスビーズを路面に向けて散布する複数のノズルまたはスリット状の開口が、装置の幅方向(左右方向)に並べて設けられている。各開口には、開口を開閉する開閉部材が設けられている。この開閉部材の開閉は、路面に形成する画像データに基づいて行われ、図11(b)に示すように、ヘッドアレイ104により路面に形成された画像(塗料)上にガラスビーズGを散布する。すなわち、ヘッドアレイ104により路面に形成された画像が、散布部132を通過する際に、この画像に対向する開口が開かれ、開口から路面の画像上にガラスビーズGが散布されるのである。
【0078】
そして、ガラスビーズGが散布された路面上画像を定着手段108により加熱・乾燥することで、ガラスビーズGが画像に定着するとともに、画像が路面に定着する。これにより、視認性の高い路面標示を形成することができる。
【0079】
また、反射材散布装置130を用いず、ガラスビーズを含有した反射塗料を吐出して視認性の高い路面標示を形成するようにしてもよい。この場合は、粒径が大きなガラスビーズとともに塗料が吐出可能なようにノズル径を大きくする必要があるため、液体吐出方式としては、ノズルにメニスカスを形成する必要がないバルブ方式が好ましい。また、ガラスビーズを含有した反射塗料を用いる場合は、攪拌部材により塗料タンク内の塗料を攪拌して塗料内のガラスビーズが沈殿しないようにするのが好ましい。
【0080】
ガラスビーズを含有した反射塗料を吐出して視認性の高い路面標示を形成することで、反射材散布装置130を用いて路面に形成された画像(塗料)上にガラスビーズGを散布する場合に比べて、以下の利点を有する。すなわち、路面標示の表面だけではなく、内部にもガラスビーズが分散されるため、路面摩耗等経時で路面標示が削れていっても、反射特性を維持することができ、経時にわたり高い視認性を維持できるという利点である。
【0081】
図12は、変形例のヘッド維持部160を搭載した自走式印刷装置100の概略構成図であり、図13は、変形例のヘッド維持部160の概略構成図である。
この変形例のヘッド維持部160は、円周方向に90°間隔で凹部を有する切替手段としての円柱部材164を備えている。円柱部材164の各凹部に、保湿・吸引キャップ部164b、ウェブワイピング部164c、洗浄部164dおよび空吐出部164fが形成されている。この円柱部材164は、支持軸162に回転自在に支持されており、支持軸162は、図12の矢印C方向に移動可能に保持アーム161に取り付けられている。この変形例では、風防カバー163は、ヘッドアレイ104を支持する支持アーム14に取り付けられており、ヘッドアレイ104とともに昇降する。
【0082】
路面に画像を形成する際は、図12に示す退避位置にヘッド維持部160(円柱部材164)を位置させる。そして、図14の矢印Aに示すように、風防カバー163とともにヘッドアレイを、路面とのギャップが画像形成に最適な最適ギャップDとなる画像形成位置までヘッドアレイ104を下降させる。このように、変形例では、風防カバー163を、ヘッドアレイ104とともに昇降させることで、画像形成時に液体吐出ヘッドを風防カバー163で覆うことができ、風などの影響を抑えることができ、良好に路面に画像を形成することができる。
【0083】
変形例のヘッド維持部160により維持・回復を行うときは、図12に示す退避位置に風防カバー163とヘッドアレイ104を位置させた状態で、図中矢印C方向にヘッド維持部160を移動させる。そして、円柱部材164の保湿・吸引キャップ部164b、ウェブワイピング部164c、洗浄部164dおよび空吐出部164fのいずれかを、ヘッドアレイ104の液体吐出ヘッド104aに対向させる。このとき、風防カバー163がヘッドアレイ104のともに退避位置に退避するため、ヘッド維持部160(円柱部材164)を液体吐出ヘッド104aと対向する位置に移動させることができる。
【0084】
図13に示すように保湿・吸引キャップ部164bは、円柱部材164の凹部内に保湿・吸引キャップ106bがスプリング106b1を介して支持されてる。また、保湿・吸引キャップ106bの底面には、吸引ポンプに接続された吸引チューブ106b2が接続されている。
【0085】
ウェブワイピング部106cは、ワイパー部材106c1と、ウェブローラ106c2とを有している。ウェブローラ106c2は、汚れていないウェブ171が巻き付いている巻き付きローラ172と、汚れたウェブ171を巻き取る巻き取りローラ173と、ウェブ171の内周面に当接し、図中矢印W方向に往復移動する移動ローラ174とを有している。ワイパー部材106c1は、この移動ローラ174と共に移動するように、例えば、移動ローラ174の軸に軸受を介して取り付けられている。
【0086】
洗浄部164dは、円柱部材164の凹部が、洗浄液を貯留する貯留部となっており、この凹部に洗浄液供給チューブ106d1や排出チューブが接続されている。
空吐出部164fには、液体吐出ヘッド104aから空吐出された塗料を吸収するスポンジ等からなる吸収部材164f1が設けられている。
【0087】
図15は、待機時の変形例のヘッド維持部160の状態について説明する図である。
図15に示すように、装置の待機時やノズルから塗料を吸引するときは、円柱部材164を回転させて、保湿・吸引キャップ部164bを、液体吐出ヘッドに対向させる。そして、ヘッドアレイ104を退避位置から下降させ、保湿・吸引キャップ106bにヘッドアレイ104の下面を当接させる。円柱部材164の回転は、円柱部材164をヘッドアレイ104に対向する位置へ移動させてから行ってもよいし、対向する位置へ移動させる前に行ってもよい。
【0088】
図16は、空吐出時の変形例のヘッド維持部160の状態について説明する図である。
空吐出を行うときは、円柱部材164を回転させて、空吐出部164fを液体吐出ヘッド104aに対向させる。そして、ヘッドアレイ104が退避位置に位置した状態で、空吐出部164fの吸収部材164f1に向けて塗料が空吐出される。
【0089】
図17は、洗浄時の変形例のヘッド維持部160の状態について説明する図である。
ノズル面の洗浄を行うときは、円柱部材164を回転させて、洗浄部164dを液体吐出ヘッド104aに対向させる。そして、洗浄液タンクから送液ポンプにより洗浄液供給チューブ106d1を介して洗浄液を洗浄部164dに供給し、洗浄部164dに洗浄液を貯める。
【0090】
洗浄部164dに洗浄液が貯まったら、退避位置に位置するヘッドアレイ104を下降させて、ノズル面を洗浄液に浸漬し、ノズル面を洗浄する。洗浄後は、ヘッドアレイを上昇させて退避位置に位置させたら、洗浄部164dから汚れた洗浄液を、排出チューブを介して廃液タンクへ排出する。
【0091】
図18は、ワイピング時の変形例のヘッド維持部160の状態について説明する図である。
円柱部材164を回転させて、ウェブワイピング部164cを液体吐出ヘッド104aに対向させる。次に、退避位置に位置するヘッドアレイ104を下降させて、ウェブ171にノズル面を当接させる。次に、移動ローラ174とワイパー部材106c1とを共に図中右側へ移動させて、ノズル面に付着した洗浄液または塗料をウェブ171で拭き取とるとともに、ワイパー部材106c1により拭き残しを掻き取る。そして、移動ローラ174とワイパー部材106c1がウェブワイピング部164cの図中右端まで移動したら退避位置へヘッドアレイ104を上昇させる。また、巻き取りローラ173により汚れたウェブ171を巻き取った後、移動ローラ174とワイパー部材106c1を、ウェブワイピング部164cの図中左端へ移動させる。
【0092】
この変形例では、円柱部材164の円周方向にヘッドの維持・回復を行うための複数の手段(保湿・吸引キャップ部、空吐出部、洗浄部およびウェブワイピング部)を設け、円柱部材164を回転させることで、複数の手段のうちの一つを液体吐出ヘッド104aに対向させ、所定の維持回復を行うことができる。これにより、ヘッド維持部160の小型化を図ることができ、装置の大型化を抑制することができる。
【0093】
また、図19に示すようにヘッド維持部160の各部(保湿・吸引キャップ部、空吐出部、洗浄部およびウェブワイピング部)に、カバー部材164eを設け、各部に砂や埃などが侵入しないようにしてもよい。これにより、ヘッド維持部の各部が、砂や埃などによって汚れるのを抑制することができる。
【0094】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
路面などの被印刷面上を走行する走行体120と、走行体120に搭載され、被印刷面に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッド104aと、液体吐出ヘッド104aのノズル面を洗浄する洗浄部106dなどの洗浄手段とを有する。
これによれば、実施形態で説明したように、洗浄手段によりノズル面を洗浄することができ、ノズル面に付着した砂や埃を除去することができる。これにより、ノズル面に付着した砂や埃により液体の吐出性能が低下するのを抑制することができ、被印刷面に良好に画像を形成することができる。
【0095】
(態様2)
態様1において、洗浄部106dなどの洗浄手段は、ノズル面を洗浄液に浸漬させてノズル面を洗浄する。
これによれば、実施形態で説明したように、ノズル面の洗浄時に洗浄液が路面などの被印刷面に付着するのを抑制することができる。
【0096】
(態様3)
態様1または2において、液体吐出ヘッド104aをカバーする風防カバー106aなどのカバー部材を有する。
これによれば、実施形態で説明したように、屋外での使用時に、液体吐出ヘッドから吐出された塗料などの液体が風の影響を受けるのを抑制することができる。
【0097】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、液体吐出ヘッド104aの吐出状態を維持する保湿・吸引キャップ106bなどの維持手段を備える。
これにより、液体吐出ヘッドの吐出状態を良好に維持することができる。
【0098】
(態様5)
態様4において、少なくとも湿・吸引キャップ106bなどの維持手段と洗浄部106dなど洗浄手段とを有し、ノズル面に対向する手段を選択的に切り替える風防カバー106aなどの切替手段を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、ヘッド維持部の小型化を図ることができる。
【0099】
(態様6)
態様5において、切替手段が、液体吐出ヘッド104aをカバーする風防カバーなどのカバー部材である。
これによれば、液体吐出ヘッド104aをカバーする風防カバー106aなどのカバー部材と、切り替え手段とを別々に設けるものに比べて、部品点数を削減することができ、装置のコストダウンを図ることができる。
【0100】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、路面などの被印刷面に吐出した液体を被印刷面に定着させる定着手段108を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、養生時間を短縮することができる。
【0101】
(態様8)
態様1乃至7いずれかにおいて、走行体を自走させる走行制御装置101などの自走手段を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、自動的に路面などの被印刷面に路面標示などの画像を形成することが可能となり、印刷時に作業者のスキルに頼らずに、精度よく被印刷面に画像を形成することができる。
【0102】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、撮像素子112などの撮像手段を備え、撮像手段により走行体120の走行先の路面などの被印刷面を撮像した画像に基づいて、液体吐出ヘッド104aから被印刷面に形成された既存の路面標示Kなどの既存画像部に対して消去用の液体を吐出する。
これによれば、実施形態で説明したように、路面などの被印刷面上の既存の路面標示Kなどの既存画像部を自動的に消去することができる。
【0103】
(態様10)
態様1乃至9いずれかにおいて、液体は、水性塗料である。
これによれば、液体吐出ヘッドによって、被印刷面に塗料を吐出することができ、被印刷面に画像を形成することができる。
【0104】
(態様11)
態様1乃至10いずれかにおいて、被印刷面が路面である。
これによれば、実施形態で説明したように、狭い路面であっても、自動で記号や文字などの路面標示を施工することができ、作業の効率化、省人化を図ることができる。
【符号の説明】
【0105】
14 :支持アーム
15 :アーム支持部材
100 :自走式印刷装置
101 :走行制御装置
101a :動力制御部
101b :操舵制御部
101c :移動距離計測部
101d :移動速度計測部
101e :制御プログラム
102 :通信手段
102a :無線アンテナ
102b :送受信部
102c :通信制御部
103 :塗料タンク
104 :ヘッドアレイ
104a :液体吐出ヘッド
105 :塗料供給部
106 :ヘッド維持部
106a :風防カバー
106b :吸引キャップ
106b1 :スプリング
106b2 :吸引チューブ
106c :ウェブワイピング部
106c1 :ワイパー部材
106c2 :ウェブローラ
106d :洗浄部
106d1 :洗浄液供給チューブ
106e :スリットカバー
107 :プリンター制御部
107a :ヘッド駆動制御部
107b :塗料供給制御部
107c :維持部制御部
107d :定着制御部
107e :制御プログラム
108 :定着手段
109 :電源ユニット
110 :画像形成部
111 :モータ
112 :撮像素子
113 :エンコーダ
114 :外部端末
116 :スリット
120 :走行体
121 :報知ランプ
130 :反射材散布装置
131 :反射材収容部
132 :散布部
133 :搬送部
160 :ヘッド維持部
161 :保持アーム
162 :支持軸
163 :風防カバー
164 :円柱部材
164b :吸引キャップ部
164c :ウェブワイピング部
164d :洗浄部
164e :カバー部材
164f :空吐出部
164f1 :吸収部材
171 :ウェブ
172 :巻き付きローラ
173 :巻き取りローラ
174 :移動ローラ
200 :中央演算処理装置
D :最適ギャップ
G :ガラスビーズ
K :既存の路面標示
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特表2018-519440号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19