(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137325
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】2-アセチル-1-ピロリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/20 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
C07D207/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043475
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤永 叔基
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2-アセチル-1-ピロリンの新たな製造方法を開発する。
【解決手段】N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンとN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応工程を経ることによって、2-アセチル-1-ピロリンを好適に製造することができる。また、上記反応工程をN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンと、1,1-カルボニルジイミダゾール及びN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩との反応工程により行うことが好ましい。本発明の製造方法よって、2-アセチル-1-ピロリンを簡便に製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンとN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応工程を含む2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。
【請求項2】
前記反応工程をN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンと、1,1-カルボニルジイミダゾール及びN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩との反応工程により行う請求項1に記載の2-アセチル-1-ピロリンを製造方法。
【請求項3】
前記N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンとN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応工程後において、グリニャール反応によってN-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンを得る反応工程を含む、請求項1又は2に記載の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。
【請求項4】
前記グリニャール反応をメチルマグネシウムブロマイドとの反応工程により行う請求項3に記載の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。
【請求項5】
前記N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンについて脱保護及び酸化によって、2-アセチル-1-ピロリンを得る反応工程を含む請求項3又は4に記載の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。
【請求項6】
次の工程(A)~(D)を含む2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。
・工程(A):N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンをアミド化して、N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミンを得る工程
・工程(B):N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミンをグリニャール反応によりN-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンを得る工程
・工程(C):N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンの脱保護基を行い2-アセチル-ピロリジンを得る工程。
・工程(D):2-アセチル-ピロリジンを酸化して2-アセチル-1-ピロリンを得る工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2-アセチル-1-ピロリンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2-アセチル-1-ピロリンは米やパン等の各種の有用な香気成分として知られており、食品産業において重要な化合物である。2-アセチル-1-ピロリンについては従来まで種々の合成方法が開示されている。例えば、以下の2件が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-153785
【特許文献2】特開2014-073999
【0004】
上記の先行技術文献には2-アセチル-1-ピロリンの有効な製造方法が開示されている。
一方、特許文献1の先行技術では、当該特許文献に記載の工程(C)において、2-(メトキシカルボニル)-1-ピロリンをハロゲン化マグネシウムメチルにより処理するが、当該グリニャール反応の際に-45℃という低温条件が必要となっている。
次に、特許文献2の先行技術では、Step Aの2-アセチルピロールを還元(水素化)し、1-(ピロリジン-2-イル)エタノールを得る還元反応の工程において高圧状態にする必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは2-アセチル-1-ピロリンの新たな合成方法を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの鋭意研究の結果、BOC-L-プロリン(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリン)を利用し、当該BOC-L-プロリンをN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応によって得られる反応物を利用することによって好適に2-アセチル-1-ピロリンを製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
すなわち、本願第一の発明は、
“N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンとN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応工程を含む2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。”、である。
【0008】
次に、前記の反応は、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンと、1,1-カルボニルジイミダゾール及びN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩により行うことが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記反応工程をN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンと、1,1-カルボニルジイミダゾール及びN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩との反応工程により行う請求項1に記載の2-アセチル-1-ピロリンを製造方法。”、である。
【0009】
次に、上記N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンとN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応後において、グリニャール反応によってN-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンを得ることが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
“前記N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンとN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応工程後において、グリニャール反応によってN-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンを得る反応工程を含む、請求項1又は2に記載の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。”、である。
【0010】
次に、上記グリニャール反応は、メチルマグネシウムブロマイドにより行うことが好適である。
すなわち、本願第四の発明は、
“前記グリニャール反応をメチルマグネシウムブロマイドとの反応工程により行う請求項3に記載の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。”、である。
【0011】
次に、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンについては、脱保護及び酸化によって2-アセチル-1-ピロリンを得ることが好ましい。
すなわち、本願第五の発明は、
“前記N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンについて脱保護及び酸化によって、2-アセチル-1-ピロリンを得る反応工程を含む請求項3又は4に記載の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。”、である。
【0012】
次に、本発明は上記の一連の製造ステップによることが可能である。
すなわち、本願第六の発明は、
“次の工程(A)~(D)を含む2-アセチル-1-ピロリンの製造方法。
・工程(A):N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンをアミド化して、N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミンを得る工程
・工程(B):N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミンをグリニャール反応によりN-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンを得る工程
・工程(C):N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジンの脱保護基を行い2-アセチル-ピロリジンを得る工程。
・工程(D):2-アセチル-ピロリジンを酸化して2-アセチル-1-ピロリンを得る工程“、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法よって、2-アセチル-1-ピロリンを極低温条件や高圧条件を必要とすることなく簡便に製造することができる。これによって食品産業を含み、種々の産業分野において、2-アセチル-1-ピロリンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法の全体の工程を示した図である。
【
図2】本発明の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法の第一工程を示した図である。
【
図3】本発明の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法の第二工程を示した図である。
【
図4】本発明の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法の第三及び第四工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の2-アセチル-1-ピロリンの製造方法は、例えば
図1に記載する各工程を経る製造方法が例示される。尚、上記各工程においては、化合物1~5は以下を示す。
【0016】
化合物1:N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリン
N-(tert-butoxycarbonyl)-L-proline
別名 :2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニル] シクロペンタン-1-カルボン酸
2-[(2-methylpropan-2-yl)oxycarbonyl]cyclopentane-1-carboxylic acid
化合物2:N-メチル-N-[N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)]-O-メチルヒドロキルアミン
N-methyl-N-(N-(tert-butoxycarbonyl)-L-prolyl)-O-methylhydroxylamine
別名 :tert-ブチル-2-[メトキシ (メチル)カルバモイル]ピロリジン-1-カルボキシレート
tert-butyl 2-[methoxy(methyl)carbamoyl]pyrrolidine-1-carboxylate
化合物3:N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチルピロリジン
N-(tert- butoxycarbonyl)-2- acetylpyrrolidine
別名 :tert-ブチル 2-アセチルピロリジン-1-カルボキシレート
tert-butyl 2-acetylpyrrolidine-1-carboxylate
化合物4:2-アセチル-ピロリジン
2-acetylpyrrolidine
別名 :1-(ピロリジン-2-イル)エタノン
1-(pyrrolidin-2-yl)ethanone
化合物5:2-アセチル-1-ピロリン
2-acetyl-1-pyrroline
別名 :1-(3,4-ジヒドロ-2H-ピロール-5-イル)エタノン
1-(3,4-dihydro-2H-pyrrol-5-yl)ethenone
【0017】
以下、各工程について説明する。
・第一工程(アミド化反応)
本工程は、化合物1:BOC-L-プロリンに対してこれを、アミド化する工程である。本願発明は、本ステップを特徴とする。L-プロリンに保護基であるtert-ブトキシカルボニル保護基を結合した状態でL-プロリンのカルボキシル基とN,O-ジメチルヒドロキシルアミンを反応させてアミドを形成させる。
【0018】
尚、BOC-プロリンについては、L-プロリン出発原料として二炭酸ジ-tert-ブチル(Boc2O)等によって処理することによって製造することも勿論可能である。
また、本アミド化においては、カルボキシイミダゾールや塩化チオニル等を利用して、BOC- L-プロリンのカルボキシ基についてアシル基をアミンに移動させることができる。尚、アミンには、N,O-ジメチルヒドロキルアミンを利用する。
また、カルボキシイミダゾールの場合は室温、塩化チオニルの場合には5~10℃程度で実施することが好ましい。尚、N,O-ジメチルヒドロキシルアミンのアミドのことを、ワインレブアミド (Weinreb amide) と称する場合もある。
【0019】
具体的な例として、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリンをN,O-ジメチルヒドロキルアミンと反応させて、化合物2(N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミン)を調製する方法が挙げられる。
尚、基質当量については、概ねBOCプロリンを1とした時、カルボキシイミダゾールおよびN,O-ジメチルヒドロキルアミンは1.2当量程度とすることが好適である。
【0020】
・第二工程(Grignard反応)
本工程は、第一工程で得られた化合物2(N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミン)に対して、グリニャール反応において当該化合物2とグリニャール試薬を反応させることによってアミドを分解させてケトンを製造するステップである。
【0021】
尚、この反応においては、通常生じたケトンが再度グリニャール試薬と反応することによってアルコールが生成する副反応を抑えることができる。
具体的には、グリニャール反応においては、グリニャール試薬をハロゲン化したメチルと金属マグネシウムから調製しておき、当該グリニャール試薬を第一工程で得られた化合物2(N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミン)に添加する。添加の方法としては、グリニャール試薬を第一工程で得られた化合物に滴下する方法が挙げられる。
【0022】
具体的な例として、第一工程で得られ化合物2(N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミン)に対してメチルマグネシウムブロマイドやメチルマグネシウムクロライドを反応させる方法が挙げられる。これによってアミドを分解させて、化合物3(N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジン)を調製することができる。
【0023】
尚、前記のメチルマグネシウムブロマイドに代えてエチルマグネシウムブロマイドを利用することによってN-(tert-ブトキシカルボニル)-2-プロピオニル-ピロリジンとすることもでき、これから2-プロピオニル-1-ピロリンを製造することもできる。
このように本発明を応用することで2-アセチル-1-ピロリンの類縁化合物の合成を可能とすることができる。尚、基質当量としては、概ね化合物2((N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミン)を1とした時、メチルマグネシウムブロマイドは2.1当量程度とすることが好ましい。
【0024】
・第三工程(脱保護反応)
次に、第二工程で得られたピロリジンの窒素の保護基であるN-(tert-ブトキシカルボニル)について脱保護を行う。脱保護はトリフルオロ酢酸や、塩酸を加える方法や、塩化水素/酢酸エチル溶液や塩化水素/ジオキサン溶液、塩化水素/シクロペンチルメチルエーテル溶液等を利用することができる。
具体的な例として、化合物3(N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジン)に対して、トリフルオロ酢酸を滴下等することによって脱保護反応を行い、2-アセチル-ピロリジンを調製する方法が挙げられる。
【0025】
・第四工程(酸化反応)
第三工程で得られた2-アセチル-ピロリジンを酸化することによって2-アセチル-1-ピロリンを調製することができる。酸化の工程については種々の方法を選択することができるが、例えば、酸素を酸化剤として使用することが可能である。
さらに、別の方法として、クロム酸酸化、TEMPO酸化、Dess-Martin酸化、Oppenauer酸化等が挙げられる
【実施例0026】
以下、本発明について実施例を用いて説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]2-アセチル-1-ピロリンの製造方法
─第一工程─(BOCプロリンのアミド化)
窒素雰囲気下、化合物1(BOCプロリン)(20g)をジクロロメタン(160ml)に溶解し、撹拌しながら1,1-カルボキシイミダゾール(18.1g)を添加し、室温下一時間攪拌を継続した。その後N,O-ジヒドロキシルアミン塩酸塩(10.9g)を攪拌中の反応液に添加し、さらに三時間攪拌を継続した。GCにて反応の終了を確認したのち、蒸留水を(240ml)を室温下で滴下ししばらく攪拌した。反応液を分液し、得られた有機層に1%希塩酸(60ml)及び蒸留水(80ml)を用いて洗浄および分液し、有機層を得た。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、化合物2(N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミン)(21.0g,87.5%)を得た。
図2に第一工程を示す。
【0028】
─第二工程─(Grignard反応)
窒素雰囲気下、化合物2(N-メチル-N-(N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル)-O-メチルヒドロキルアミン)(20g)を乾燥ジエチルエーテル(120ml)に溶解し、反応液を-10℃~0℃まで冷却し、撹拌した。3.0Mのメチルマグネシウムブロマイドジエチルエーテル溶液(54.2ml)を-10℃から0℃の条件下で一時間かけて滴下した。滴下後、反応液を室温に戻しさらに一時間攪拌を継続した。GCにて反応の終了を確認したのち、飽和塩化ナトリウム水溶液240ml)を氷浴下にて滴下し、しばらく攪拌を継続した。反応液を分液し、得られた水層を酢酸エチルを用いて抽出を実施したのち、有機層を混合させ、飽和食塩水で洗浄後および分液後、有機層を得た。得られた有機層を硫酸ナトリウムで洗浄後及び分液後、有機層を得た。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、化合物3(N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジン)(14.3g,82.3%)を得た。
図3に第二工程を示す。
【0029】
─第三工程及び第四工程─(脱保護~酸化)
窒素雰囲気下、化合物3(N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-アセチル-ピロリジン)(5g)をジクロロメタン(14ml)に溶解し、室温下攪拌した。トリフルオロ酢酸(16.6ml)を30分かけて滴下しさらに一時間攪拌を継続した。TLCを用いて原料の消失を確認したのち、ジクロロメタンを留去し、化合物4(2-アセチル-ピロリジン)の反応クルードを得た。
【0030】
得られた化合物4の反応クルードに、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応液が中性になるように調製した。反応液を、酸素雰囲気化、一時間攪拌させた。
GCを用いて原料の消失を確認したのち、反応液を室温に戻し、反応液を、ジエチルエーテル(20ml)を用いて3回抽出を実施した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、減圧下、氷浴を用いて反応液を濃縮した。この際における濃縮時点の化合物5(2-アセチル-1-ピロリン)のGC純度は89%であった。
【0031】
さらに、得られた濃縮物(1.8g)にエタノール(30ml)を添加し、このエタノール溶液を減圧蒸留した。蒸留物として、化合物5(2-アセチル-1-ピロリン)を含有するエタノール溶液が得られた。蒸留後の化合物5(2-アセチル-1-ピロリン)のエタノール溶液には化合物5(2-アセチル-1-ピロリン)以外の成分は見受けられなかった。
また、減圧蒸留条件としては、化合物5(2-アセチル-1-ピロリン)のエタノール溶液を室温で大気圧から400torrまで減圧し、続いて室温から40℃まで徐々に加熱し留分を得た。さらに40℃から60℃まで徐々に加熱し留分を得た。
図4に本第三工程及び第四工程を示す。
【0032】
また、ここで得られた2-アセチル-1-ピロリンのマススペクトル及びGCの保持指標は、構造既知の2-アセチル-1-ピロリンのものと完全に一致した。