(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137352
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230922BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
H05H1/46 A
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043524
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】輿水 地塩
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084BB01
2G084CC03
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC15
2G084CC16
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD57
2G084FF15
2G084FF18
2G084HH02
2G084HH06
2G084HH16
2G084HH22
2G084HH27
5F004AA16
5F004BA09
5F004BA14
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BC02
5F004BC03
5F004BC08
5F004CA03
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】チャンバ内の処理空間からチャンバ内の排気空間への荷電粒子の拡散を抑制する技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置は、第1のバッフル板及び第2のバッフル板を備える。第1のバッフル板及び第2のバッフル板は、チャンバ内で処理空間と排気空間の間に配置される。第2のバッフル板は、第1のバッフル板に対してチャンバ内でのガスの流れにおける下流側に設けられている。チャンバ内の基板支持部に周期的に印加される電気バイアスエネルギーの波形周期内の少なくとも一部の期間において、第2のバッフル板に印加される電圧の値が、第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記チャンバ内でガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
波形周期を有する電気バイアスエネルギーを前記基板支持部に周期的に供給するように構成されたバイアス電源と、
前記チャンバ内に配置された第1のバッフル板及び第2のバッフル板と、
前記第1のバッフル板に電気的に接続された第1の電源と、
前記第2のバッフル板に電気的に接続された第2の電源と、
を備え、
前記第1のバッフル板は、前記基板支持部上に配置された基板がその中で処理される前記チャンバ内の処理空間と前記第2のバッフル板との間に配置されており、
前記第2のバッフル板は、排気システムが接続される前記チャンバ内の排気空間と前記第1のバッフル板との間に配置されており、
前記波形周期内の少なくとも一部の期間において、前記第2の電源によって前記第2のバッフル板に印加される電圧の値が、前記第1の電源によって前記第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高い、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記波形周期の全てにおいて、前記第2の電源によって前記第2のバッフル板に印加される前記電圧の値は、前記第1の電源によって前記第1のバッフル板に印加される前記電圧の値よりも高い、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記波形周期は、前記基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも高い正位相期間と該基板の電位が前記平均電位よりも低い負位相期間と、を含み、
前記負位相期間において、前記第2の電源によって前記第2のバッフル板に印加される前記電圧の値は、前記第1の電源によって前記第1のバッフル板に印加される前記電圧の値よりも高い、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第2の電源によって前記第2のバッフル板に印加される前記電圧の値は、一定である、請求項2又は3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記波形周期は、前記基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも高い正位相期間と該基板の電位が前記平均電位よりも低い負位相期間と、を含み、
前記正位相期間において、前記第2の電源によって前記第2のバッフル板に印加される前記電圧の値は、前記第1の電源によって前記第1のバッフル板に印加される前記電圧の値よりも高い、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の電源によって前記第1のバッフル板に印加される前記電圧の値は、一定である、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記チャンバは接地されており、
前記波形周期において、前記第2のバッフル板の電位は、前記チャンバの電位よりも高い、
請求項1~6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1のバッフル板及び前記第2のバッフル板は、前記基板支持部の外周と前記チャンバの側壁との間で延在している、請求項1~7の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1のバッフル板及び前記第2のバッフル板のうち少なくとも一方は、可動である、請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記電気バイアスエネルギーは、前記波形周期の時間長の逆数である周波数を有するバイアス高周波電力であるか、該波形周期の時間長と同じ時間間隔で周期的に前記基板支持部に印加される電圧のパルスである、請求項1~9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
プラズマ処理装置のチャンバ内でプラズマを生成する工程と、
前記チャンバ内に配置された基板支持部に波形周期を有する電気バイアスエネルギーを供給する工程と、
前記チャンバ内に配置された第1のバッフル板及び第2のバッフル板のそれぞれに電圧を印加する工程と、
を含み、
前記第1のバッフル板は、前記基板支持部上に配置された基板がその中で処理される前記チャンバ内の処理空間と前記第2のバッフル板との間に配置されており、
前記第2のバッフル板は、排気システムが接続される前記チャンバ内の排気空間と前記第1のバッフル板との間に配置されており、
前記波形周期内の少なくとも一部の期間において、前記第2のバッフル板に印加される電圧の値が、前記第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高い、
プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が基板に対するプラズマ処理で用いられている。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、及びバッフル板を備える。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。バッフル板は、基板支持部とチャンバの側壁との間に設けられている。バッフル板は、処理空間と排気空間との間に介在しており、複数の貫通孔を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、チャンバ内の処理空間からチャンバ内の排気空間への荷電粒子の拡散を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、プラズマ生成部、バイアス電源、第1のバッフル板及び第2のバッフル板、第1の電源、並びに第2の電源を備える。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。プラズマ生成部は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するように構成されている。バイアス電源は、波形周期を有する電気バイアスエネルギーを基板支持部に周期的に供給するように構成されている。第1のバッフル板及び第2のバッフル板は、チャンバ内に配置されている。第1の電源は、第1のバッフル板に電気的に接続されている。第2の電源は、第2のバッフル板に電気的に接続されている。第1のバッフル板は、基板支持部上に配置された基板がその中で処理されるチャンバ内の処理空間と第2のバッフル板との間に配置されている。第2のバッフル板は、排気システムが接続されるチャンバ内の排気空間と第1のバッフル板との間に配置されている。波形周期内の少なくとも一部の期間において、第2の電源によって第2のバッフル板に印加される電圧の値が、第1の電源によって第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高い。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、チャンバ内の処理空間からチャンバ内の排気空間への荷電粒子の拡散を抑制する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
【
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【
図3】第1の電源及び第2の電源の接続の例を示す図である。
【
図4】第1の電源及び第2の電源の別の例を示す図である。
【
図5】第1の電源及び第2の電源の別の例を示す図である。
【
図6】
図6の(a)、
図6の(b)、及び
図6の(c)の各々は、一つの例示的実施形態にかかるプラズマ処理装置に関連するタイミングチャートである。
【
図7】
図7の(a)、
図7の(b)、
図7の(c)、及び
図7の(d)の各々は、一つの例示的実施形態にかかるプラズマ処理装置に関連するタイミングチャートである。
【
図8】
図8の(a)及び
図8の(b)の各々は、一つの例示的実施形態にかかるプラズマ処理装置に関連するタイミングチャートである。
【
図9】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、プラズマ生成部、バイアス電源、第1のバッフル板及び第2のバッフル板、第1の電源、並びに第2の電源を備える。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。プラズマ生成部は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するように構成されている。バイアス電源は、波形周期を有する電気バイアスエネルギーを基板支持部に周期的に供給するように構成されている。第1のバッフル板及び第2のバッフル板は、チャンバ内に配置されている。第1の電源は、第1のバッフル板に電気的に接続されている。第2の電源は、第2のバッフル板に電気的に接続されている。第1のバッフル板は、基板支持部上に配置された基板がその中で処理されるチャンバ内の処理空間と第2のバッフル板との間に配置されている。第2のバッフル板は、排気システムが接続されるチャンバ内の排気空間と第1のバッフル板との間に配置されている。波形周期内の少なくとも一部の期間において、第2の電源によって第2のバッフル板に印加される電圧の値が、第1の電源によって第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高い。
【0010】
第2のバッフル板の電位が第1のバッフル板の電位よりも高い場合には、処理空間内のプラズマからの正イオンが第1のバッフル板から第2のバッフル板に向けて流れることが抑制される。したがって、上記実施形態によれば、チャンバ内の処理空間からチャンバ内の排気空間への荷電粒子の拡散を抑制することが可能となる。
【0011】
一つの例示的実施形態では、第2の電源によって第2のバッフル板に印加される電圧の値は、波形周期の全てにおいて、第1の電源によって第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高くてもよい。
【0012】
一つの例示的実施形態では、波形周期は、基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも高い正位相期間と該基板の電位が該平均電位よりも低い負位相期間と、を含んでいてもよい。負位相期間において、第2の電源によって第2のバッフル板に印加される電圧の値は、第1の電源によって第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高くてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第2の電源によって第2のバッフル板に印加される電圧の値は、一定であってもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、波形周期は、基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも高い正位相期間と該基板の電位が該平均電位よりも低い負位相期間と、を含んでいてもよい。正位相期間において、第2の電源によって第2のバッフル板に印加される電圧の値は、第1の電源によって第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高くてもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第1の電源によって第1のバッフル板に印加される電圧の値は、一定であってもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、チャンバは接地されていてもよい。波形周期において、第2のバッフル板の電位は、チャンバの電位よりも高くてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第1のバッフル板及び第2のバッフル板は、基板支持部の外周とチャンバの側壁との間で延在していてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第1のバッフル板及び第2のバッフル板のうち少なくとも一方は、可動であってもよい。
【0019】
一つの例示的実施形態において、電気バイアスエネルギーは、波形周期の時間長の逆数である周波数を有するバイアス高周波電力であるか、波形周期の時間長と同じ時間間隔で基板支持部に印加される電圧のパルスであってもよい。
【0020】
別の例示的実施形態において、プラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内でプラズマを生成する工程を含む。プラズマ処理方法は、チャンバ内に配置された基板支持部に波形周期を有する電気バイアスエネルギーを供給する工程を更に含む。プラズマ処理方法は、チャンバ内に配置された第1のバッフル板及び第2のバッフル板のそれぞれに電圧を印加する工程を更に含む。第1のバッフル板は、基板支持部上に配置された基板がその中で処理されるチャンバ内の処理空間と第2のバッフル板との間に配置されている。第2のバッフル板は、排気システムが接続されるチャンバ内の排気空間と第1のバッフル板との間に配置されている。波形周期内の少なくとも一部の期間において、第2のバッフル板に印加される電圧の値が、第1のバッフル板に印加される電圧の値よりも高い。
【0021】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0022】
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0023】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;CapacitivelyCoupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。
【0024】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0025】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。
図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0026】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定された内部空間10sを有する。内部空間10sは、処理空間10sp及び排気空間10seを含む。プラズマ処理チャンバ10は接地される。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0027】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0028】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。
【0029】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0030】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0031】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスを処理空間10sp内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cから処理空間10sp内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0032】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0033】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。ガス排出口10eは、排気空間10seに接続している。排気システム40は、排気空間10seを介して処理空間10spに接続している。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、内部空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0034】
プラズマ処理装置1は、高周波電源31及びバイアス電源32を更に備える。高周波電源31は、一実施形態のプラズマ生成部12を構成する。高周波電源31は、ソース高周波電力RFを発生するように構成されている。ソース高周波電力RFは、ソース周波数fRFを有する。ソース周波数fRFは、10MHz~150MHzの範囲内の周波数であり得る。高周波電源31は、整合器33を介して高周波電極に電気的に接続されており、ソース高周波電力RFを高周波電極に供給するように構成されている。高周波電極は、基台1110の導電性部材、セラミック部材1111a内に設けられた少なくとも一つの電極、又は上部電極であってもよい。ソース高周波電力RFが高周波電極に供給されると、チャンバ10内のガスからプラズマが生成される。
【0035】
整合器33は、可変インピーダンスを有する。整合器33の可変インピーダンスは、ソース高周波電力RFの負荷からの反射を低減するよう、設定される。整合器33は、例えば制御部2によって制御され得る。
【0036】
バイアス電源32は、電気バイアスエネルギーBEを発生するように構成されている。バイアス電源32は、基板支持部11に電気的に結合されている。バイアス電源32は、基板支持部11内のバイアス電極に電気的に接続されており、電気バイアスエネルギーBEをバイアス電極に供給するように構成されている。バイアス電極は、基台1110の導電性部材又はセラミック部材1111a内に設けられた少なくとも一つの電極であってもよい。電気バイアスエネルギーBEがバイアス電極に供給されると、プラズマからのイオンが基板Wに引き付けられる。
【0037】
電気バイアスエネルギーBEは、バイアス周波数を有する。バイアス周波数は、ソース周波数よりも低い。バイアス周波数は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数であってもよい。また、電気バイアスエネルギーBEは、波形周期CYを有する。波形周期CYは、バイアス周波数の逆数の時間長を有する。電気バイアスエネルギーBEは、波形周期CY(時間間隔)で周期的にバイアス電極に供給される。
【0038】
電気バイアスエネルギーBEは、バイアス周波数を有するバイアス高周波電力であってもよい(
図6の(a)及び
図7の(a)を参照)。即ち、電気バイアスエネルギーBEは、その周波数がバイアス周波数である正弦波状の波形を有していてもよい。この場合には、バイアス電源32は、整合器34を介して、バイアス電極に電気的に接続される。整合器34の可変インピーダンスは、バイアス高周波電力LFの負荷からの反射を低減するよう、設定される。
【0039】
或いは、電気バイアスエネルギーBEは、電圧のパルスを含んでいてもよい(
図8の(a)を参照)。電圧のパルスは、波形周期CY内においてバイアス電極に印加される。電圧のパルスは、波形周期CYの時間長と同じ長さの時間間隔で周期的にバイアス電極に印加される。電圧のパルスの波形は、矩形波、三角波、又は任意の波形であり得る。電圧のパルスの極性は、基板Wとプラズマとの間に電位差を生じさせてプラズマからのイオンを基板Wに引き込むことができるように設定される。電圧のパルスは、一例では、負の電圧のパルスであってもよい。なお、電気バイアスエネルギーBEが電圧のパルスである場合には、プラズマ処理装置1は整合器34を備えていなくてもよい。
【0040】
プラズマ処理装置1は、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42を更に備えている。第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42は、チャンバ10内に設けられている。第1のバッフル板41は、処理空間10spと第2のバッフル板42との間に配置されている。処理空間10spは、基板支持部11上に配置された基板Wがその中で処理されるチャンバ10内の空間である。第2のバッフル板42は、排気空間10seと第1のバッフル板41との間に配置されている。排気空間10seは、排気システム40が接続されるチャンバ10内の空間である。即ち、第1のバッフル板41は、チャンバ10内でのガスの流れにおいて、第2のバッフル板42に対して上流側に設けられている。第2のバッフル板42は、第1のバッフル板41の下流側に設けられている。
【0041】
一実施形態においては、
図2に示すように、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42は、基板支持部11の外周とチャンバ10の側壁との間で延在しており、基板支持部11の周りで周方向に延在している。第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42の各々の外縁は、絶縁性部材43によって支持されている。第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42の各々の内縁は、基板支持部11の絶縁性部材によって支持されている。
【0042】
一実施形態において、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42のうち少なくとも一方は、可動であってもよい。この実施形態において、プラズマ処理装置1は、駆動部44を更に備えている。駆動部44は、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42の相対的位置を変化させるために、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42のうち少なくとも一方を移動させる。駆動部44は、第1のバッフル板41と第2のバッフル板42との間の距離を変化させるように、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42のうち少なくとも一方を移動させてもよい。駆動部44は、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42のうち少なくとも一方を中心軸線周りで回転させてもよい。駆動部44は、モータ又は油圧式若しくは空気圧式のシリンダを含んでいてもよい。
【0043】
プラズマ処理装置1は、第1の電源51及び第2の電源52を更に備えている。第1の電源51及び第2の電源52は、例えば可変直流電源である。第1の電源51は、第1のバッフル板41に電気的に接続されている。第2の電源52は、第2のバッフル板42に電気的に接続されている。具体的には、第1の電源51の一方の極(例えば、負極)は、フィルタ51fを介して第1のバッフル板41に電気的に接続されている。第2の電源52の一方の極(例えば、負極)は、フィルタ52fを介して第2のバッフル板42に電気的に接続されている。フィルタ51f及びフィルタ52fの各々は、高周波電力を遮断するか低減させる電気フィルタである。第1の電源51及び第2の電源52の各々の他方の極(例えば、正極)は、グランドに接続されている。
【0044】
ここで、
図3を参照する。
図3は、第1の電源及び第2の電源の接続の例を示す図である。
図3に示すように、第2の電源52の他方の極(例えば、正極)は、第1の電源51の一方の極(例えば、負極)に接続されていてもよい。
【0045】
以下、
図4及び
図5を参照する。
図4及び
図5の各々は、第1の電源及び第2の電源の別の例を示す図である。
図4及び
図5に示す例では、第1の電源51は、電源511及び電源512を含んでいる。第2の電源52は、電源521及び電源522を含んでいる。電源511、電源512、電源521、及び電源522は、例えば可変直流電源である。電源511の負極は、スイッチを介して第1の電源51の出力51oに接続されている。電源511の正極はグランドに接続されている。電源512の正極は、スイッチを介して第1の電源51の出力51oに接続されている。電源512の負極はグランドに接続されている。第1の電源51の出力51oは、フィルタ51fを介して第1のバッフル板41に接続されている。電源521の負極は、スイッチを介して第2の電源52の出力52oに接続されている。電源522の正極は、スイッチを介して第2の電源52の出力52oに接続されている。第2の電源52の出力52oは、フィルタ52fを介して第2のバッフル板42に接続されている。
図4に示す例では、電源521の正極及び電源512の負極は、グランドに接続されている。
図5に示す例では、電源521の正極及び電源512の負極は、第1の電源51の出力51oに接続されている。
図4及び
図5に示す例では、第1の電源51及び第2の電源52は、出力する電圧の極性を切り替え可能な電源として構成されている。なお、第1の電源51及び第2の電源52の各々は、正電圧及び負電圧の何をも連続的に出力可能なバイポーラ電源であってもよい。
【0046】
以下、
図1と共に、
図6の(a)、
図6の(b)、
図6の(c)、
図7の(a)、
図7の(b)、
図7の(c)、
図7の(d)、
図8の(a)、及び
図8の(b)を参照する。これらの図は、一つの例示的実施形態にかかるプラズマ処理装置に関連するタイミングチャートである。具体的に、
図6の(a)、
図7の(a)、
図8の(a)の各々は、電気バイアスエネルギーの例示的なタイミングチャートを示している。
図6の(b)、
図6の(c)、
図7の(b)、
図7の(c)、及び
図7の(d)の各々は、第1の電極の電位P41、第2の電極の電位P42、及びプラズマポテンシャルPPの例示的なタイミングチャートを示している。
図8の(b)は、第1の電極の電位P41及び第2の電極の電位P42の例示的なタイミングチャートを示している。
【0047】
図6の(a)、
図7の(a)、
図8の(a)に示すように、波形周期CYは、正位相期間PI及び負位相期間NIを含む。正位相期間PIにおいては、基板Wの電位は波形周期CY内の基板Wの平均電位よりも高い。負位相期間NIにおいては、基板Wの電位は、波形周期CY内の基板Wの平均電位よりも低い。基板Wの電位は、主に電気バイアスエネルギーBEに応じて変化する。
【0048】
プラズマポテンシャルPPは、電気バイアスエネルギーBE又は基板Wの電位に応じて変化する。正位相期間PIにおいては、プラズマポテンシャルPPは高く、負位相期間NIにおいては、プラズマポテンシャルPPは低い。
【0049】
波形周期CY内の少なくとも一部の期間において、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも高い。したがって、図示するように、波形周期CY内の少なくとも一部の期間において、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも高くなる。
【0050】
第2のバッフル板42の電位P42が第1のバッフル板41の電位P41よりも高い場合には、処理空間10sp内のプラズマからの正イオンが第1のバッフル板41から第2のバッフル板42に向けて流れることが抑制される。したがって、処理空間10spから排気空間10seへの荷電粒子の拡散を抑制することが可能となる。
【0051】
第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の少なくとも一方は、プラズマポテンシャルPPの波形に追従する波形を有していてもよい。この場合には、第1の電源51及び第2の電源52のうち少なくとも一方は、同期信号によってバイアス電源32と同期され、プラズマポテンシャルPPの波形に追従する波形の電圧を出力する。或いは、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧のうち一方の値は、
図6の(b)、
図6の(c)、
図7の(d)、及び
図8の(b)に示すように、一定であってもよい。
【0052】
一実施形態においては、
図6の(b)及び
図8の(b)に示すように、負位相期間NIにおいて、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも高い。したがって、負位相期間NIにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも高い。正位相期間PIにおいては、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも低い。したがって、正位相期間PIにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも低い。波形周期CYの全てにおいて、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、正の値である。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、チャンバ10の接地電位よりも高い。第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧は、プラズマポテンシャルPPの波形に追従する波形を有する。第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、一定である。
【0053】
図6の(b)及び
図8の(b)の各々に示す実施形態では、負位相期間NIにおいて、処理空間10sp内のプラズマからの正イオンが第1のバッフル板41から第2のバッフル板42に向けて流れることが抑制される。また、負位相期間NIにおいて、第1のバッフル板41から放出され得る二次電子が第2のバッフル板42で捕捉されるので、二次電子が排気空間10seに流れることが抑制される。
【0054】
別の実施形態においては、
図6の(c)に示すように、波形周期CYの全てにおいて、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも高い。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも高い。波形周期CYの全てにおいて、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、正の値である。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、チャンバ10の接地電位よりも高い。第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧は、プラズマポテンシャルPPの波形に追従する波形を有する。第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、一定である。
【0055】
図6の(c)に示す実施形態では、波形周期CYの全てにおいて、処理空間10sp内のプラズマからの正イオンが第1のバッフル板41から第2のバッフル板42に向けて流れることが抑制される。また、波形周期CYの全てにおいて、第1のバッフル板41から放出され得る二次電子が第2のバッフル板42で捕捉されるので、二次電子が排気空間10seに流れることが抑制される。
【0056】
更に別の実施形態においては、
図7の(b)に示すように、波形周期CYの全てにおいて、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも高い。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも高い。波形周期CYの全てにおいて、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、正の値である。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、チャンバ10の接地電位よりも高い。第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値は、負位相期間NIでは負の値であり、正位相期間PIでは正の値である。第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧は、プラズマポテンシャルPPの波形に追従する波形を有する。
【0057】
図7の(b)に示す実施形態では、波形周期CYの全てにおいて、処理空間10sp内のプラズマからの正イオンが第1のバッフル板41から第2のバッフル板42に向けて流れることが抑制される。また、波形周期CYの全てにおいて、第1のバッフル板41から放出され得る二次電子が第2のバッフル板42で捕捉されるので、二次電子が排気空間10seに流れることが抑制される。
【0058】
更に別の実施形態においては、
図7の(c)に示すように、波形周期CYの全てにおいて、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも高い。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも高い。波形周期CYの全てにおいて、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、正の値である。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、チャンバ10の接地電位よりも高い。第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧は、プラズマポテンシャルPPの波形に追従する波形を有する。
【0059】
図7の(c)に示す実施形態では、波形周期CYの全てにおいて、処理空間10sp内のプラズマからの正イオンが第1のバッフル板41から第2のバッフル板42に向けて流れることが抑制される。また、波形周期CYの全てにおいて、第1のバッフル板41から放出され得る二次電子が第2のバッフル板42で捕捉されるので、二次電子が排気空間10seに流れることが抑制される。
【0060】
更に別の実施形態においては、
図7の(d)に示すように、正位相期間PIにおいて、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも高い。したがって、正位相期間PIにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも高い。負位相期間NIにおいては、第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも低い。したがって、負位相期間NIにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、第1のバッフル板41の電位P41よりも低い。波形周期CYの全てにおいて、第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値及び第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、正の値である。したがって、波形周期CYの全てにおいて、第2のバッフル板42の電位P42は、チャンバ10の接地電位よりも高い。第2の電源52によって第2のバッフル板42に印加される電圧は、プラズマポテンシャルPPの波形に追従する波形を有する。第1の電源51によって第1のバッフル板41に印加される電圧の値は、一定である。
【0061】
図7の(d)に示す実施形態では、正位相期間PIにおいて、処理空間10sp内のプラズマからの正イオンが第1のバッフル板41から第2のバッフル板42に向けて流れることが抑制される。また、正位相期間PIにおいて、第1のバッフル板41から放出され得る二次電子が第2のバッフル板42で捕捉されるので、二次電子が排気空間10seに流れることが抑制される。
【0062】
以下、
図9を参照する。
図9は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法の流れ図である。
図9に示すプラズマ処理方法(以下、「方法MT」という)は、プラズマ処理装置1に適用され得る。方法MTは、工程STa~工程STcを含む。
【0063】
工程STaでは、チャンバ10内でプラズマが生成される。工程STaでは、ガス供給部20からのガスが処理空間10spに供給される。工程STaでは、排気システム40により、チャンバ10内の圧力が指定された圧力に減圧される。工程STaでは、プラズマ生成部12により、処理空間10sp内のガスからプラズマが生成される。一実施形態では、高周波電源31からのソース高周波電力RFが高周波電極に供給される。
【0064】
工程STbは、工程STaにおいてプラズマが生成されているときに行われる。工程STbでは、基板支持部11に電気バイアスエネルギーBEが供給される。
【0065】
工程STcは、工程STbにおいて基板支持部11に電気バイアスエネルギーBEが供給されているときに行われる。工程STcでは、第1のバッフル板41及び第2のバッフル板42のそれぞれに、上述したように電圧が印加される。上述したように、波形周期CY内の少なくとも一部の期間において、第2のバッフル板42に印加される電圧の値は、第1のバッフル板41に印加される電圧の値よりも高い。
【0066】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0067】
例えば、排気空間10seは、処理空間10spに対して側方又は上方に設けられていてもよい。
【0068】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0069】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、11…基板支持部、12…プラズマ生成部、32…バイアス電源、41…第1のバッフル板、42…第2のバッフル板、51…第1の電源、52…第2の電源。