(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137733
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ダイシング溝の検査方法及びダイシング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044077
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】金城 裕介
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA02
5F063AA48
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB22
5F063CB25
5F063DD04
5F063DE12
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE33
(57)【要約】
【課題】 ステップカットを行う場合におけるカーフチェックを精度よくかつ容易に行うことが可能なダイシング溝の検査方法及びダイシング装置を提供する。
【解決手段】 ダイシング溝の検査方法は、第1切削部に取り付けられた第1ブレードを用いて、ワークの表面に第1ダイシング溝を形成し、第1切削部とは別の第2切削部に取り付けられた第2ブレードを用いて、第1ダイシング溝に沿って、第1ダイシング溝内に第2ダイシング溝を形成し、第2切削部に取り付けられた観察部を用いて、第1ダイシング溝と第2ダイシング溝との間のエッジ部を検出するステップであって、第2ブレードの回転数に応じて、観察部でエッジ部を撮影するタイミングを調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1切削部に取り付けられた第1ブレードを用いて、ワークの表面に第1ダイシング溝を形成するステップと、
前記第1切削部とは別の第2切削部に取り付けられた第2ブレードを用いて、前記第1ダイシング溝に沿って、前記第1ダイシング溝内に第2ダイシング溝を形成するステップと、
前記第2切削部に取り付けられた観察部を用いて、前記第1ダイシング溝と前記第2ダイシング溝との間のエッジ部を検出するステップであって、前記第2ブレードの回転数に応じて、前記観察部で前記エッジ部を撮影するタイミングを調整するステップと、
を備えるダイシング溝の検査方法。
【請求項2】
前記第2ブレードの回転の周期に同期させて前記観察部で撮影するタイミングを調整する、請求項1に記載のダイシング溝の検査方法。
【請求項3】
前記観察部で撮影するタイミングの間隔を前記第2ブレードの回転数の整数倍にする、請求項1又は2に記載のダイシング溝の検査方法。
【請求項4】
前記観察部が撮影実行位置に到達するタイミングを前記第2ブレードの回転の周期と同期させる、請求項1に記載のダイシング溝の検査方法。
【請求項5】
前記観察部が撮影実行位置に到達するタイミングの間隔を前記第2ブレードの回転数の整数倍にする、請求項1又は4に記載のダイシング溝の検査方法。
【請求項6】
ワークの表面に第1ダイシング溝を形成する第1ブレードを備える第1切削部と、
前記第1ダイシング溝に沿って、前記第1ダイシング溝内に第2ダイシング溝を形成する第2ブレードを備える第2切削部と、
前記第2切削部に取り付けられた観察部であって、前記第1ダイシング溝と前記第2ダイシング溝との間のエッジ部を検出する観察部と、
前記第2ブレードの回転数に応じて、前記観察部で前記エッジ部を撮影するタイミングを調整する制御部と、
を備えるダイシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイシング溝の検査方法及びダイシング装置に係り、半導体装置又は電子部品が形成されたウェーハ等のワークを個々のチップに分割するためのダイシング溝の検査方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置又は電子部品のデバイスパターンが形成されたウェーハ等のワークを個々のチップに分割するダイシング装置は、スピンドルによって高速に回転されるブレードと、ワークを吸着保持するワークテーブルと、ワークテーブルとブレードとの相対的位置を変化させるXYZθ駆動部とを備えている。このダイシング装置では、各駆動部によりブレードとワークとを相対的に移動させながら、ブレードによってワークを切り込むことによりダイシング加工(切削加工)を行う。
【0003】
ダイシング加工を行う際には、切削ラインの品質及びダイシング溝の位置精度を確認するため、加工領域の測定(カーフチェック)が行われる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
ところで、シリコン層と、シリコン層の表面に形成されたデバイス層(金属膜)からなるワークを1回の切削加工で分割すると(シングルカット)、デバイス層の影響等により、ワークの裏面側の加工品質が劣化する場合がある。
このため、ダイシング加工では、加工品質の改善のため、ワークの表面の金属を除去するための表面用ブレードと、ワークの内部のシリコン層を切削するためのシリコン用ブレードを用いて段階的に切削を行うステップカットが行われる。ステップカットでは、表面用ブレードとシリコン用ブレードとは、ワーク表面の同一の位置に切り込むため、ワーク表面の上方側から顕微鏡で後述するシリコン用ブレードで形成されたダイシング溝を観察することができない。
【0005】
図10は、ステップカットの例を示す断面図である。
図10に示すように、ワークは、表面側に形成されたデバイス層W1と、シリコン層W2からなり、シリコン層W2の裏面側には、ダイシングテープTが貼着されている。図中の符号g1は表面用ブレードによりデバイス層W1を除去するときに形成された溝であり、符号g2はシリコン用ブレードによりシリコン層W2を切断するための溝である。
図10に示すように、溝g2のエッジ部e2は、溝g1の内部にあるため、顕微鏡で観察することはできない。また、溝g1により傾斜があるため、測定器により位置を正確に測定することは困難であった。
【0006】
このため、ステップカットを行う場合、あらかじめシリコン用ブレードを用いて、ワークの表面にわずかにチェック用の切削加工を行って、ブレードの位置ずれ及びブレードの状態をチェックすることが考えられる。しかしながら、この場合、チェック用の切削加工により、シリコン用ブレードがダメージを受けてしまい、加工品質が劣化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-085397号公報
【特許文献2】特開2015-099026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような問題を解決するためには、光学顕微鏡の代わりに、レーザ顕微鏡又は干渉顕微鏡等で3次元的に観察する方法が考えられる。しかし、通常、レーザ顕微鏡又は干渉顕微鏡等も光学的な観点からも溝壁面のような垂直に近い面を安定的に測定することは困難である。
【0009】
また、溝の測定を行う場合には、ダイシング装置に固有の問題がある。すなわち、ブレードダイシング装置はスピンドルを有しており、スピンドル及びブレードの回転数に応じた振動が発生する。この振動はダイシング装置上での精密測定に対して、外乱となり、測定結果に影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
この振動の影響を抑制するためには、回転数を変更し、溝の測定精度への影響が小さくなる程度まで回転数を落とすか、回転を停止することが考えられる。しかしながら、この場合、溝の測定時に回転数を可変する時間が必要となるので、装置の生産性に影響を及ぼすことになる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ステップカットを行う場合におけるカーフチェックを精度よくかつ容易に行うことが可能なダイシング溝の検査方法及びダイシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るダイシング溝の検査方法は、第1切削部に取り付けられた第1ブレードを用いて、ワークの表面に第1ダイシング溝を形成するステップと、第1切削部とは別の第2切削部に取り付けられた第2ブレードを用いて、第1ダイシング溝に沿って、第1ダイシング溝内に第2ダイシング溝を形成するステップと、第2切削部に取り付けられた観察部を用いて、第1ダイシング溝と第2ダイシング溝との間のエッジ部を検出するステップであって、第2ブレードの回転数に応じて、観察部でエッジ部を撮影するタイミングを調整するステップとを備える。
【0013】
本発明の第2の態様に係るダイシング溝の検査方法は、第1の態様において、第2ブレードの回転の周期に同期させて観察部で撮影するタイミングを調整する。
【0014】
本発明の第3の態様に係るダイシング溝の検査方法は、第1又は第2の態様において、観察部で撮影するタイミングの間隔を第2ブレードの回転数の整数倍にする。
【0015】
本発明の第4の態様に係るダイシング溝の検査方法は、第1の態様において、観察部が撮影実行位置に到達するタイミングを第2ブレードの回転の周期と同期させる。
【0016】
本発明の第5の態様に係るダイシング溝の検査方法は、第1又は第4の態様において、観察部が撮影実行位置に到達するタイミングの間隔を第2ブレードの回転数の整数倍にする。
【0017】
本発明の第6の態様に係るダイシング装置は、ワークの表面に第1ダイシング溝を形成する第1ブレードを備える第1切削部と、第1ダイシング溝に沿って、第1ダイシング溝内に第2ダイシング溝を形成する第2ブレードを備える第2切削部と、第2切削部に取り付けられた観察部であって、第1ダイシング溝と第2ダイシング溝との間のエッジ部を検出する観察部と、第2ブレードの回転数に応じて、観察部でエッジ部を撮影するタイミングを調整する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステップカットを行う場合におけるカーフチェックを精度よくかつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係るダイシング装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ステップカットの例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ダイシング装置の観察部の概要図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るダイシング装置の制御系を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、ブレードの回転周波数とフレームレートとの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、ブレードの回転周波数と走査位置(撮影実行位置)との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、スキャン速度とフレームレート及び第2スピンドルの回転数との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態及び変形例1に係るダイシング溝の検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って実施形態に係るダイシング溝の検査方法及びダイシング装置について説明する。
【0021】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るダイシング装置を示す斜視図である。
図1には、X方向、Y方向、及びZ方向を示している。X方向及びY方向は、互いに交差している。例えば、X方向及びY方向は、互いに直交している。Z方向は、X方向及びY方向に交差している。例えば、Z方向は、X方向及びY方向に直行している。以下で、X方向及びY方向の長さを厚さ、若しくは幅と称する場合もある。Z方向の長さを厚さ、深さ、及び高さと称する場合もある。また、Z方向において、Z方向の矢印の先端側に向かう方向を上方向、上側、若しくは上と称し、上方向と反対方向を下方向、下側、若しくは下と称する場合もある。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るダイシング装置10は、ワークWのダイシング加工を行う切削部12(第1切削部12-1及び第2切削部12-2)と、テーブルCTとを有する。なお、以下の説明において、2つの切削部12-1及び12-2に共通する構成については、枝番を省略して説明する。
【0023】
テーブルCTは、XY平面に平行な保持面を有する。テーブルCTは、図示しない真空源(真空発生器。例えば、エジェクタ、ポンプ等)により、この保持面にワークWを吸着保持する。ワークWは、表面に粘着剤の粘着層が形成されたダイシングテープ(図示せず)を介してフレーム(図示せず)に貼着され、テーブルCTに吸着保持される。なお、ダイシングテープが貼着されたフレームは、テーブルCTに配設されたフレーム保持手段(図示せず)に保持される。なお、フレームを用いない搬送形態であってもよい。
【0024】
テーブルCTは、不図示のθテーブルに取り付けられており、θテーブルは、モータ等を含む回転駆動部によりθ方向(Z軸を中心とする回転軸周り)に回転可能となっている。θテーブルは、不図示のXテーブルに載置されている。Xテーブルは、例えば、モータ及びボールねじ等を含むX駆動部によりX方向に移動可能となっている。
【0025】
第1切削部12-1及び第2切削部12-2は、それぞれZ1テーブル及びZ2テーブルに取り付けられている。Z1テーブル及びZ2テーブルは、モータ及びボールねじ等を含むZ駆動部によりそれぞれ、Z1及びZ2方向に移動可能である。Z1テーブル及びZ2テーブルには、それぞれY1テーブル及びY2テーブルが取り付けられている。Y1テーブル及びY2テーブルは、モータ及びボールねじ等を含むY駆動部によりそれぞれ、Y1及びY2方向に移動可能である。
【0026】
なお、本実施形態では、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部としてモータ及びボールねじ等を含む構成を用いたが、本発明はこれに限定されない。X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部としては、例えば、ラックアンドピニオン機構等の往復直線運動のための機構を用いることが可能である。
【0027】
図1に示すように、第1切削部12-1は、第1スピンドル14-1及び第1ブレード16-1を含んでいる。第2切削部12-2は、第2スピンドル14-2及び第2ブレード16-2を含んでいる。
【0028】
第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、例えば、円盤状の切削刃である。第1ブレード16-1は、ワークWの表面の層(以下、上層と称する場合もある)、例えば、デバイス層を除去するためのブレード、例えば、表面用ブレードである。第2ブレード16-2は、ワークWの上層よりも下に位置する層(以下、下層と称する場合もある)、例えば、シリコン層を切断(分割)するためのブレード、例えば、シリコン用ブレードである。
図1に示す例では、第1ブレード16-1の厚さは、第2ブレード16-2の厚さよりも厚い。第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2としては、例えば、ダイヤモンド砥粒又はCBN(Cubic Boron Nitride)砥粒をニッケルで電着した電着ブレード、あるいは樹脂で結合したレジンブレード等を用いることが可能である。第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、加工対象のワークWの種類及びサイズ並びに加工内容等に応じて交換可能である。
【0029】
第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、それぞれ第1スピンドル14-1及び第2スピンドル14-2の先端に取り付けられる。第1スピンドル14-1及び第2スピンドル14-2は、それぞれ第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2を高速回転させるための高周波モータを含んでいる。
【0030】
前述した構成により、第1ブレード16-1及び第2ブレード16-2は、それぞれY方向においてY1方向及びY2方向にインデックス送りされるとともに、Z方向においてZ1方向及びZ2方向に切り込み送りされる。また、テーブルCTは、θ方向に回転されるとともにX方向に切削送りされる。
【0031】
図2は、ステップカットの例を示す斜視図である。
ダイシング装置10は、ダイシング方向(X方向)に沿ってステップカットを実行できる。例えば、
図2に示すように、ダイシング装置10は、第1ブレード16-1を用いて、ワークWの表面Waのデバイス層よりも深切りしてX方向に沿って溝(以下、第1ダイシング溝と称する)G1を形成する。そして、ダイシング装置10は、第2ブレード16-2を用いて、X方向に沿って溝(以下、第2ダイシング溝と称する)G2を形成する。
【0032】
図3は、ダイシング装置の観察部の概要図であり、
図4は、観察部の概要を示す断面図である。なお、
図3では、図面の簡略化のため、第2ブレード16-2等は省略する。
【0033】
観察部MSは、第2切削部12-2の側面に取り付けられており、第2切削部12-2と一体的に移動可能である。観察部MSは、テーブルCTに吸着保持されたワークWの表面の画像を撮影(観察)する。観察部MSは、例えば、白色干渉顕微鏡、アライメントに用いられるアライメント顕微鏡、又は形状検出に用いられる形状検出顕微鏡を含む。
【0034】
図3に示すように、観察部MSは、光源部200、干渉レンズ202、顕微鏡204及びカメラ206を有する。
【0035】
光源部200は、制御装置100の制御の下、平行光束の白色光(可干渉性の少ない低コヒーレンス光)を出射する。この光源部200は、例えば、発光ダイオード、半導体レーザ、ハロゲンランプ、及び高輝度放電ランプなどの白色光を出射可能な光源と、この光源から出射された白色光を平行光束に変換するコレクタレンズとを含む。
【0036】
干渉レンズ202は、ビームスプリッタ220、参照面222及び対物レンズ224を含む。なお、
図4では、ミラウ型の干渉光学系の例について説明したが、これに限定されない。例えば、マイケルソン型又はリニック型等のほかの干渉光学系を観察部MS(例えば、干渉レンズ202)に採用することも可能である。
【0037】
図4に示すように、被測定面であるワークの表面WaからZ方向上方側に沿ってビームスプリッタ220及び対物レンズ224が順に配置され、また、ビームスプリッタ220に対して対向する位置(ビームスプリッタ220と対物レンズ224との間の位置)に参照面222が配置されている。
【0038】
対物レンズ224は、集光作用を有しており、光源部200から入射した白色光L1を、ビームスプリッタ220を通して被測定面Waに集光させる。
【0039】
ビームスプリッタ220は、対物レンズ224から入射する白色光L1の一部を参照光L2bとして分割し、残りの測定光L2aを透過して被測定面Waに出射し且つ参照光L2bを参照面222に向けて反射する。ビームスプリッタ220を透過した測定光L1aは、被測定面Waに照射された後、被測定面Waにより反射されてビームスプリッタ220に戻る。
【0040】
参照面222は、例えば、反射ミラーが用いられ、ビームスプリッタ220から入射した参照光L2bをビームスプリッタ220に向けて反射する。この参照面222は、位置調整機構(例えば、ボールねじ機構、アクチュエータ等)によってX方向の位置を手動で調整可能である。これにより、ビームスプリッタ220と参照面222との間の参照光L2bの光路長(参照光路長)を調整することができる。この参照光路長は、ビームスプリッタ220と被測定面Waとの間の測定光L1の光路長(測定光路長)と一致(略一致を含む)するように調整される。
【0041】
被測定面Waから戻る測定光L2aと参照面222から戻る参照光L2bとはビームスプリッタ220で合波されて、合波光L3として対物レンズ224に到達する。
【0042】
合波光L3は、対物レンズ224を透過した後、顕微鏡204によりカメラ206の撮影面に結像される。具体的には、合波光L3は、対物レンズ224の焦点面上における点を、カメラ206の撮影面上の像点として結像する。
【0043】
カメラ206は、CCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮影素子を備える。カメラ206は、撮影面に結像された合波光L3を撮影し、この撮影により得られた合波光L3の撮影信号を信号処理して撮影画像を出力する。
【0044】
制御基板106は、カメラ206に対して撮影のタイミングを制御するためのトリガーを出力し、カメラ206は、制御基板106からのトリガーのタイミングに従って、撮影のタイミング(フレームレート)を調整する。ここで、制御装置100及び制御基板106は、本発明の制御部の一例である。
【0045】
図5は、実施形態に係るダイシング装置の制御系を示すブロック図である。
図5に示すように、ダイシング装置10の制御系は、制御装置100、入力部102、表示部104、第1切削部12-1、第2切削部12-2、第1駆動部50-1、第2駆動部50-2、テーブル駆動部54、及びテーブルCTを含んでいる。
【0046】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージデバイス(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)を有する。制御装置100は、ダイシング装置10の各部を制御する。なお、制御装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ又はマイクロコンピュータである。
【0047】
入力部102は、ユーザからの操作入力を受け付けるための操作部(例えば、キーボード、若しくはポインティングデバイス等)を含んでいる。
【0048】
表示部104は、ダイシング装置10の操作のためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。表示部104は、例えば、液晶ディスプレイを含む。
【0049】
第1駆動部50-1及び第2駆動部50-2は、第1切削部12-1及び第2切削部12-2をそれぞれYZ方向に沿って移動させるための動力源(例えば、リニアモータ又はモータ駆動機構等)を含んでいる。第1駆動部50-1及び第2駆動部50-2を移動させるための機構としては、例えば、ボールねじ又はラックアンドピニオン機構等の往復直線運動が可能な機構を用いることが可能である。
【0050】
観察部MSは、第2切削部12-2と一体的に移動可能となっており、第2駆動部50-2により走査方向であるZ方向に移動可能となっている。なお、観察部MSは、第2切削部12-2と独立に移動可能となっていてもよい。
【0051】
テーブル駆動部54は、テーブルCTを移動させるためのX駆動部及び回転駆動部を含んでいる。
【0052】
なお、本実施形態では、第1切削部12-1及び第2切削部12-2をYZ方向に移動させ、テーブルCTをXθ方向に移動させるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、テーブルCTをYZ方向に移動可能としてもよく、第1切削部12-1及び第2切削部12-2とテーブルCTとをXYZθ方向に相対的に移動可能な構成であればよい。
【0053】
観察部MSは、ワークWに近づく動作中、又はワークWから遠ざかる動作中に、一定のフレームレートで断続的に撮影することで、第1ダイシング溝G1及び第2ダイシング溝G2の3次元形状に関する情報を取得する。
【0054】
上記動作が行われる際、観察部MSにより撮影される画像は、第2スピンドル14-2の回転による影響を受ける。このため、本実施形態では、観察部MSは、カメラ206で撮影するタイミング、例えば、カメラ206で撮影する際のフレームレートを第2スピンドル14-2の回転周波数に合わせた状態、つまり、同期させた状態で画像を撮影する。制御基板106は、第2スピンドル14-2の回転周波数(例えば、エンコーダにより検出される単位時間当たりの回転数から求められる回転周波数)に基づいて、撮影実行のトリガーをカメラ206に入力する。
【0055】
図6は、ブレードの回転に起因する振動と撮影実行のタイミングとの関係を示す図である。
図6の横軸は時間Tを示しており、縦軸は振動による振幅を示している。
図6に示す曲線C1は、第2切削部12-2における第2スピンドル14-2の回転に起因する振動の経時変化を示しており、第2スピンドル14-2の回転周波数に応じて振幅が周期的に変化している。
【0056】
図6に示す例では、カメラ206による撮影実行のタイミングの間隔(T(i)-T(i-1)、T(i+1)-T(i))が第2スピンドル14-2の回転の周期と一致している。すなわち、カメラ206による撮影は、第2スピンドル14-2の回転の一周期ごとに実行される。
【0057】
第2スピンドル14-2の回転数をS回転毎分(rpm)とし、カメラ206のフレームレートをFフレーム毎秒(fps)とすると、下記の式(1)が得られる。なお、第2スピンドル14-2の回転数は既知とする。
【0058】
S=F/60・・・(1)
図6に示すように、カメラ206のフレームレートFを第2スピンドル14-2の回転数Sに合わせることで、第2スピンドル14-2の回転に起因する振動によるカメラ206の位置変化の影響が抑制された画像を取得することができる。これにより、第1ダイシング溝G1及び第2ダイシング溝G2の3次元形状に関する情報を安定的に取得することができる。
【0059】
なお、
図6に示す例では、カメラ206による撮影実行のタイミングの間隔(T(i)-T(i-1)、T(i+1)-T(i))と第2スピンドル14-2の回転数Fの周期とを一致させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、カメラ206による撮影実行のタイミングの間隔(T(i)-T(i-1)、T(i+1)-T(i))は、第2スピンドル14-2の回転数Fの周期の整数倍であってもよい。この場合、第2スピンドル14-2の回転数S(rpm)と、カメラ206のフレームレートF(fps)との関係は、下記の式(2)により表される。ここで、式(2)のNは1以上の整数である。
【0060】
N×S=F/60・・・(2)
式(2)の場合にも、第2スピンドル14-2の回転に起因する振動によるカメラ206の位置変化の影響が抑制された画像を取得することができる。
【0061】
また、式(2)において、Nは一定の値ではなく、1回の走査中にNを可変としてもよい。例えば、走査位置と走査速度Vとの関係から、
図10の溝g2のエッジ部e2付近でNの値を小さく、それ以外の場所ではNの値を大きくしてもよい。
【0062】
(変形例1)
変形例1では、カメラ206による撮影実行のタイミングの間隔(T(i)-T(i-1)、T(i+1)-T(i))は、第2スピンドル14-2の回転の周期に合わせることにより、第2スピンドル14-2の回転に起因する振動の影響を抑制した。
【0063】
これに対して、変形例1では、制御基板106からのトリガーにより、走査方向(Z2方向)の規定位置において撮影を実行する場合に、Z2方向の走査速度(スキャン速度)を回転周波数に合わせることにより、第2スピンドル14-2の回転に起因する振動の影響を抑制する。すなわち、変形例1では、制御基板106は、Z2テーブルのスケールにより検出されるZ2方向の走査位置に基づいて、撮影実行のトリガーをカメラ206に入力する。
【0064】
図7は、ブレードの回転に起因する振動と走査位置(撮影実行位置)との関係を示す図である。
図7の横軸は時間Tを示しており、縦軸は振動による振幅を示している。
図7に示す曲線C1は、第2切削部12-2における第2スピンドル14-2の回転に起因する振動の経時変化を示している。
【0065】
図7に示す例では、カメラ206による撮影は、第2スピンドル14-2の回転の一周期ごとに実行される。
図7に示すように、撮影実行のトリガーがカメラ206に入力される撮影実行位置(Z(i-1)、Z(i)、Z(i+1))にカメラ206が到達するタイミングを第2スピンドル14-2の回転の周期に同期させる。すなわち、第2スピンドル14-2の回転の一周期ごとに、カメラ206が撮影実行位置(Z(i-1)、Z(i)、Z(i+1))に到達するように、Z2ステージテーブルが制御(例えば、スキャン速度)される。
【0066】
なお、第2スピンドル14-2の回転の複数周期ごとに、カメラ206が撮影実行位置(Z(i-1)、Z(i)、Z(i+1))に到達するようにしてもよい。すなわち、カメラ206が撮影実行位置(Z(i-1)、Z(i)、Z(i+1))に到達するタイミングの間隔は、第2スピンドル14-2の回転数Fの周期の整数倍であってもよい。
【0067】
カメラ206によるスキャン撮影時のピッチをパルスピッチP(μm)とし、カメラ206のスキャン速度をV(μm/sec)とすると、フレームレートF(fps)は、下記の式(3)により表される。
【0068】
F=V/P・・・(3)
第2スピンドル14-2の回転数をS(rpm)とすると、下記の式(4)が得られる。
【0069】
S=F/60=V/(P×60)・・・(4)
図8は、スキャン速度V(Scanning speed (μm/sec))とフレームレートF(Frame rate (frame/sec))及び第2スピンドル14-2の回転数S(Spindle speed (rpm))との関係を示すグラフである。
図8における直線L1、L2及びL3は、パルスピッチP(μm)がそれぞれ0.02μm、0.04μm及び0.06μmの例を示している。
【0070】
一般的に、カメラのフレームレートFは2000fps程度が上限であり、スピンドルの回転数は60,000rpm以下となる。そして、
図8に示すグラフでは、第2スピンドル14-2の回転数Sの上限が60,000rpmとなっている。したがって、
図8に示すグラフから、動作条件(パルスピッチP、スキャン速度V、フレームレートF及び第2スピンドル14-2の回転数S)を決定することが可能となる。
【0071】
なお、
図7に示す例では、スキャン撮影時のピッチZ(i)-Z(i-1)、Z(i+1)-Z(i)が略同一となっているが、撮影実行位置のピッチPを可変として、ピッチごとにスキャン速度Vを変えることも可能である。
【0072】
ステップカットの加工では、上段の第1のダイシング溝G1と下段の第2のダイシング溝G2とを2passの加工で形成するので、本実施形態によれば、第1のダイシング溝G1及び第2のダイシング溝G2双方のカーフエッジを正確に測定することができる。
【0073】
図9は、実施形態及び変形例1に係るダイシング溝の検査方法を示すフローチャートである。
【0074】
上段の第1のダイシング溝G1に関しては、顕微鏡204を含む観察部MSをZ2方向に走査することによりカーフエッジ(エッジ部)を検出する(ステップS10)。
【0075】
一方、下段の第2のダイシング溝G2については、実施形態及び変形例1のように、第2スピンドル14-2の回転数S又はパルスピッチPに応じてフレームレートFを調整し、観察部MSをZ2方向に走査しながら(例えば、観察部MSをワークWに近づける動作中、又はワークWから遠ざける動作中に)、撮影することによりカーフエッジ(エッジ部)を検出する(ステップS12)。
【0076】
次に、上段のカーフエッジに対して、下段のカーフエッジの相対位置を検出することで、溝の3次元形状を算出する(ステップS14)。これにより、上下段のカーフエッジのズレ量を検出することができ、切削位置の補正に用いることが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態では、上段の第1のダイシング溝G1のカーフエッジに対する下段の第2のダイシング溝G2のカーフエッジの相対位置を検出したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上段の第1のダイシング溝G1のカーフエッジの代わりに、デバイスパターンの凹凸を利用し、デバイスパターンの凹凸と第2のダイシング溝G2のカーフエッジとの相対位置を検出することも可能である。
【0078】
なお、実施形態及び変形例1では、制御基板106は、エンコーダ又はスケールにより撮影実行のトリガーを生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ソフトウェア又はタイマー同期により撮影を実行するようにしてもよい。この場合、走査軸(Z2軸)からトリガー取得は行わず、ダイシング装置10又は外部機器のクロック又はソフトウェアで作成したトリガー等の外部で作成したトリガーでの撮影を実行する。
【0079】
その場合にも、実施形態及び変形例1と同様に、スキャン速度とスピンドル回転数の関係から(
図8参照)、フレームレートを外部トリガーとして与えることでノイズ除去測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
10…ダイシング装置、12-1…第1切削部、12-2…第2切削部、14-1…第1スピンドル、14-2…第2スピンドル、16-1…第1ブレード、16-2…第2ブレード、CT…テーブル、50-1…第1駆動部、50-2…第2駆動部、MS…観察部、54…テーブル駆動部、100…制御装置、102…入力部、104…表示部、106…制御基板