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特開2023-137739情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137739
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230922BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044088
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】木村 輔宏
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
5H301KK08
5H301KK18
5H301KK19
(57)【要約】
【課題】 情報処理システムを提供すること。
【解決手段】 移動体10に設けられた撮像装置20を用いて地図情報を作成するための情報処理システム1が提供される。情報処理システム1は、撮像装置20の所定の開始位置Aおよび終了位置B間の経路で撮像装置20により撮像された複数の画像に基づいて地図情報を生成する地図情報生成部60を備える。情報処理システム1は、また、地図情報上の開始位置Aに対応する開始点および終了位置Bに対応する終了点間の仮想距離と、撮像装置20の開始位置Aおよび終了位置Aの組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて、縮尺が補正された地図情報を生成する地図補正部61を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた撮像装置を用いて地図情報を作成するための情報処理システムであって、
前記撮像装置の所定の開始位置および終了位置間の経路で前記撮像装置により撮像された複数の画像に基づいて地図情報を生成する地図情報生成部と、
前記地図情報上の前記開始位置に対応する開始点および前記終了位置に対応する終了点間の仮想距離と、前記撮像装置の前記開始位置および前記終了位置の組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて、縮尺が補正された地図情報を生成する地図補正部と
を含む、情報処理システム。
【請求項2】
前記縮尺が補正された地図情報を表示する表示装置をさらに含む、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記縮尺が補正された地図情報を前記表示装置に表示することに際して、表示上の縮尺を表示する図形表示を付属することを特徴する、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記表示装置は、前記移動体に設けられており、
前記縮尺が補正された地図情報は、該地図情報上での前記開始位置に対応する補正後開始点および前記終了位置に対応する補正後終了点と、前記移動体の事前定義された移動エリアの設計地図情報における前記開始位置に対応する設計上の開始点および設計上の終了点とが互いに一致するように拡大または縮小させられ、前記移動体の位置を前記設計地図地図上に示すよう構成される、請求項2または3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記地図情報生成部により生成される地図情報は、距離単位が不定の3次元座標上の点の集合を含み、前記地図補正部は、前記3次元座標上の点の集合の各々に対し、前記地図情報上の前記開始点および前記終了点の距離を前記実測距離に換算する縮尺係数を適用する、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記撮像装置が、前記移動体に位置固定で設けられ、かつ、前記撮像装置の所定の開始位置および終了位置が、前記移動体が移動可能な領域内の異なる地点に対応しているか、または、
前記撮像装置が、前記移動体に相対的に移動可能に設けられ、かつ、前記撮像装置の所定の開始位置および終了位置が、前記撮像装置の前記移動体に対する移動量を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記情報処理システムは、
移動体と、
前記移動体に設けられた前記撮像装置として、前記移動体の移動方向の風景および前記移動体の鉛直上方向の風景を撮像する広角カメラと、
前記移動体が、前記撮像装置が前記開始位置にあるように所定の位置に所定の姿勢で配置されていることを検知する開始側検知部と、
前記移動体が、前記撮像装置が前記開始位置にあるように所定の位置に所定の姿勢で配置されていることを検知する終了側検知部と
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
移動体に設けられた撮像装置を用いて地図情報を作成するための情報処理装置であって、
前記撮像装置の所定の開始位置および終了位置間の経路で前記撮像装置により撮像された複数の画像に基づいて地図情報を生成する地図情報生成部と、
前記地図情報上の前記開始位置に対応する開始点および前記終了位置に対応する終了点との仮想距離と、前記撮像装置の前記開始位置および前記終了位置の組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて、縮尺が補正された地図情報を生成する地図補正部と
を含む、情報処理装置。
【請求項9】
移動体に設けられた撮像装置を用いて地図情報を作成する情報処理方法であって、
前記撮像装置の所定の開始位置および終了位置間の経路で前記撮像装置により撮像された複数の画像を取得するステップと、
前記複数の画像に基づいて地図情報を生成するステップと、
前記地図情報上の前記開始位置に対応する開始点および前記終了位置に対応する終了点との仮想距離と、前記移動体の前記開始位置および前記終了位置の組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて、縮尺が補正された地図情報を生成するステップと
を含む、情報処理方法。
【請求項10】
移動体に設けられた撮像装置を用いて地図情報を生成するための情報処理装置を実現するためのプログラムであって、コンピュータを、
前記撮像装置の所定の開始位置および終了位置間の経路で前記撮像装置により撮像された複数の画像に基づいて地図情報を生成する地図情報生成部、および、
前記地図情報上の前記開始位置に対応する開始点および前記終了位置に対応する終了点との仮想距離と、前記撮像装置の前記開始位置および前記終了位置の組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて、縮尺が補正された地図情報を生成する地図補正部と
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理技術に関し、より詳細には、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の自己位置推定および環境地図生成を同時並行的に行う技術(SLAM,Simultaneous Localization and Mapping)が知られている。中でも、撮像装置により撮像された画像を入力として自己位置推定および環境地図生成を行う技術は、VLSAM(Visual SLAM)として参照される。
【0003】
VLSAMには、カメラと深度センサを組み合わせたり、またはステレオカメラを用いたりするもののほか、単眼画像のみを入力とする技術が存在する。単眼画像のみを入力とする場合、VSLAMで生成された地図では、距離単位が不明となり、実空間上の位置や距離に換算するためには、別途スケーリングが必要となる。このため、一般には、スケーリングのためのホイールオドメトリなどの撮像装置以外の補助センサが必要となる。
【0004】
上記自己位置推定に関連して、特開2021-092465号公報(特許文献1)に開示される技術が知られている。特許文献1は、上方を撮像可能な撮像装置を備え、撮像装置により取得された画像から特徴点を抽出し、該特徴点に基づいて自己位置推定しながら飛行する無人航空機が所定の飛行計画経路に基づいて、橋梁を橋梁の下方から撮像しながら飛行するときに、無人航空機の推定位置を修正するシステムを開示する。特許文献1が開示する従来技術では、連結経路は、無人航空機の飛行順に第1の端部、第2の端部を有し、飛行計画経路において、第1の端部は、ウェイポイントして設定され、無人航空機が横断経路を飛行中に、自己位置推定により推定された無人航空機の推定位置がウェイポイントに到達する前に、特徴点が分布する領域が、画像において、第1の所定の程度以上、無人航空機の進行方向とは反対側に偏って存在することに対応することを検知したとき、そのときの無人航空機の推定位置が、ウェイポイントに対応するように、無人航空機の推定位置を修正する。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される従来技術は、画像特徴量分布によって移動体がウェイポイントに達したと判断しており、不確かさがあった。また、上記特許文献1に開示される従来技術では、アルゴリズムがウェイポイントに到達したと判断しても必ずしも実際に移動体の現在地がウェイポイントであるとは限らず、正確な位置を特定することが困難であった。特に、このような誤差は、荷物やパレット同士の間隔がないような状態での仕分けをしたり、ピッキング作業をする現場において、正確な作業位置を特定したりすることを困難とする。したがって、依然として、正確な位置特定が困難という問題は十分に解消されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記点に鑑みてなされたものであり、本開示は、撮像装置で撮像された画像を入力として作成される地図情報の縮尺補正を簡便かつ正確に実現することを可能とする情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、上記課題を解決するために、移動体に設けられた撮像装置を用いて地図情報を作成するための情報処理システムであって、下記特徴を有する情報処理システムを提供する。本情報処理システムは、撮像装置の所定の開始位置および終了位置間の経路で撮像装置により撮像された複数の画像に基づいて地図情報を生成する地図情報生成部を含む。本情報処理システムは、さらに、地図情報上の開始位置に対応する開始点および終了位置に対応する終了点との仮想距離と、撮像装置の開始位置および終了位置の組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて、縮尺が補正された地図情報を生成する地図補正部を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、撮像装置で撮像された画像を入力として作成される地図情報の縮尺補正を簡便かつ正確に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】倉庫内における地図情報の作成の一例を説明する図である。
図2】本実施形態による地図作成システムの全体構成例を示す図である。
図3】本実施形態による地図作成システムを構成するサーバ装置のハードウェア構成例のブロック図である。
図4】本実施形態による地図作成システムの機能構成例のブロック図である。
図5】本実施形態による地図作成システムにおける移動体位置取得部の周りの詳細な機能構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態による地図作成システムにおける地図情報に対する縮尺補正処理を説明する図である。
図7】本実施形態による地図作成システムを構成するサーバ装置による地図作成処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態による地図作成システムにおいて、フォークリフトが備える表示部に表示される地図表示画面を例示する。
図9】本実施形態による地図作成システムにおいて、サーバ装置のディスプレイ上でブラウザ画面に表示される地図表示画面を例示する。
図10】本実施形態による地図作成システムにおいて、サーバ装置のディスプレイ上でブラウザ画面に表示される、フォークリフトによる物体の搬送先を示す地図表示画面を例示する。
図11】本実施形態による地図作成システムにおいて、全天球カメラの計測の開始位置および終了位置を設定するやり方を説明する。
図12】本実施形態による地図作成システムにおいて、全天球カメラの計測の開始位置および終了位置を設定する別のやり方を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の実施形態は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に説明する実施形態では、情報処理システムおよび情報処理装置の一例として、それぞれ、移動体としてのフォークリフト10と、撮像装置としての全天球カメラ20と、情報処理装置としてのサーバ装置50とを備える地図作成システム1、および、情報処理装置としての該サーバ装置50を参照しながら説明する。なお、各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
本実施形態による情報処理装置は、撮像装置が設けられた移動体を移動しながら、撮像装置により撮像される画像に基づいて、移動体(撮像装置)の位置を推定するとともに、環境地図情報を生成するものである。特に限定されるものではないが、特定の実施形態において、移動体は、フォークリフトであってもよく、撮像装置は、全天球カメラなどの広角カメラであってもよい。特定の実施形態による情報処理装置は、フォークリフト10が所定の経路に沿って移動している間にフォークリフト10に設けられた全天球カメラ20により撮像された画像に基づいて、フォークリフト10(全天球カメラ20)の位置を推定するとともに、フォークリフト10が移動するロケーションの環境地図を生成する。
【0012】
ここで図1は、倉庫内における地図情報の作成の一例を説明する図である。図1は、倉庫100の内部および倉庫100の周辺を上方(天井側)から視た様子を示している。
【0013】
倉庫100は、ターミナル倉庫(輸送の中継地において設置される倉庫)である。このターミナル倉庫には、クロスドッキング型と呼ばれる倉庫の形態がある。クロスドッキング型の倉庫では、商品ごとに複数のパレットが工場または卸売業者等から入荷され、倉庫内に一時仮置きされる。その後、出荷の際に同じパレットの荷姿のまま、複数の種類のパレットが組み合わされ、小売店の方面別に出荷される。
【0014】
図1において、倉庫100の周囲にはトラックヤード200がある。図1は、トラックヤード200にはトレーラーによって運ばれ、切り離されたコンテナ300や、トラックの荷台を倉庫に接続している様子を示している。フォークリフト10は、トラックヤード200に到着したトラックの荷台、あるいはトレーラーによって運ばれたコンテナ300の少なくとも一方からパレット31を取出す。
【0015】
その後、フォークリフト10は、仮置き場所40にパレット31を運び、仮置きする。その後、出荷の際には、フォークリフト10は、倉庫100内のトラックヤード200に近い場所にパレット31を運んで荷揃えした後、トラックの荷台またはコンテナ300にパレット31を積込む。
【0016】
仮置き場所40では、出入りする商品の種類や量が日々変動することに対して柔軟にスペースを確保するために、商品ごとの区画が定められていないことが多い。一方で、複数の作業者が任意の場所にパレット31を仮置きするため、出荷の際には、仮置きされた複数のパレットの中から所望のパレットを探索する必要がある。
【0017】
この探索作業を効率的に行うために、パレット31の仮置き場所を定めないことでスペースを有効活用しながら、倉庫100内でのパレット31の移動を認識し、また追跡することで視覚化することが求められる。さらに、倉庫100内でのパレット31の移動を認識し、また追跡するためには、フォークリフト10の位置を正確に推定するとともに倉庫内の地図情報を精度高く作成する技術が求められる。特に、地図情報の作成には、撮像画像に基づいて自己位置の推定および環境地図情報の作成を同時に実施するVSLAM技術が利用されることが多い。本実施形態による地図作成システム1は、図1に示すような環境で、フォークリフト10などの移動体に撮像装置を設け、撮像装置からの画像に基づいて、VSLAM技術を適用し、自己位置推定および環境地図生成を同時に行うものである。
【0018】
なお、VSLAMの一般的な技術内容としては、例えば、「解説 SLAMの現状と今後の展望」、友納正裕等,システム/制御/情報、2020年、64巻、2号、p.45-50、(https://www.jstage.jst.go.jp/article/isciesci/64/2/64_45/_article/-char/ja/)や、Sumikura, S, et. al、”OpenVSLAM: A Versatile Visual SLAM Framework”、MM '19: Proceedings of the 27th ACM International Conference on Multimedia、October 2019、Pages 2292-2295(https://dl.acm.org/doi/10.1145/3343031.3350539)を参照することができる。
【0019】
以下、本実施形態による地図作成システム1について説明する。
【0020】
(地図作成システム1の全体構成例)
図2は、本実施形態による地図作成システム1の全体構成の一例を示す図である。図2に示すように、地図作成システム1は、移動体としてのフォークリフト10と、撮像装置としての全天球カメラ20と、情報処理装置としてのサーバ装置50と、移動体に設けられる表示装置としてのタッチパネル情報端末23とを有する。これらは、LAN(Local Area Network)などのネットワーク400を介して通信可能に接続されている。なお、ネットワーク400には、外部サーバまたは画像形成装置等の上記以外の装置が通信可能に接続されていてもよい。
【0021】
フォークリフト10は、パレット31に載置された貨物32を保持し、保持した状態で搬送することで、パレット31および貨物32を搬送する移動体の一例である。なお、移動体による搬送は、移動体による移動の一例である。またパレット31および貨物32は、それぞれ物体の一例である。なお、以下では、パレット31および貨物32を特に区別しない場合には、物体30と総称する。また、フォークリフト10は、複数のフォークリフトの総称表記であり、パレット31は、複数のパレットの総称表記であり、貨物32は、複数の貨物の総称表記である。
【0022】
フォークリフト10は、作業者の運転操作に応じて物体30を搬送するものであってもよいし、作業者を介さず自動運転により物体30を搬送するものであってもよい。
【0023】
全天球カメラ20は、フォークリフト10に設けられた撮像装置の一例である。全天球カメラ20は、全天球カメラ20の周囲における360度の全方位を撮像可能なカメラである。方位20aは、全天球カメラ20が撮像可能な方位を示している。
【0024】
全天球カメラ20が撮像する全天球画像(全方位画像)は、撮像画像の一例である。ただし、撮像装置は、全天球カメラ20に限定されるものではなく、他の広角カメラでもよいし、通常の画角を有するカメラであってもよいし、フォークリフト10の周囲を撮像できるものであれば如何なるものであってもよい。また撮像画像も必ずしも全天球画像でなくてもよい。
【0025】
全天球画像は、フォークリフト10から視た物体30の搬送方向11側の風景と、フォークリフト10から視た鉛直上方向12側の風景とが撮像された画像を含む。言い換えると、搬送方向11は、フォークリフト10の前方であり、鉛直上方向12は、フォークリフト10の上方である。全天球カメラ20は全方位を撮像できるため、フォークリフト10の前方および上方を1枚の画像に含んで撮像できる。なお、搬送方向11は移動方向の一例である。
【0026】
全天球カメラ20は、フォークリフト10の屋根上、またはフォーク21を支持する支持部材22上に取り付けることが好ましい。これにより、フォークリフト10の前方および上方を撮像するための視界を好適に確保できる。
【0027】
全天球カメラ20は、無線による通信機能を有し、撮像した全天球画像を、ネットワーク400を介してサーバ装置50に送信する。
【0028】
タッチパネル情報端末23は、移動体側に設けられる表示装置を備える端末装置であり、地図作成システム1により作成した地図情報をタッチパネル上に表示することできる。タッチパネル情報端末23は、無線による通信機能を有し、ネットワーク400を介して、サーバ装置50から地図情報を受信し、自身が備える表示装置に画像として出力する。タッチパネル情報端末23としては、タブレット端末やタッチスクリーンセンサが搭載された小型液晶ディスプレイなどを挙げることができる。なお、タッチパネル情報端末23は、端末としての計算および表示機能を有するものとして説明するが、これに限定されず、各機能を別々の装置として構成されてもよく、具体的な実装は、特に限定されるものではない。
【0029】
また、地図情報は、サーバ装置50が備える、またはサーバ装置50に接続された液晶ディスプレイ506に表示させることもできる。
【0030】
また、説明する実施形態では、全天球カメラ20およびタッチパネル情報端末23は、それぞれ通信機能を有し、ネットワーク400を介してサーバ装置50と通信するものとして説明する。しかしながら、このような態様に限定されるものではない。他の実施形態では、全天球カメラ20が、タッチパネル情報端末23と有線または無線で通信し、タッチパネル情報端末23を経由して、ネットワーク400を介して、サーバ装置50と通信してもよい。他の実施形態では、タッチパネル情報端末23が、全天球カメラ20を経由して、ネットワーク400を介して、サーバ装置50と通信してもよい。
【0031】
貨物32には、貨物32を示す識別情報の一例であるバーコード33が設けられている。このようなバーコードは、パレット31に設けられ、パレット31を示す識別情報として利用されてもよい。バーコード33は、バーコードリーダなどの読取器により読み取られ、読み取られた結果である識別情報は、ネットワーク400を介してサーバ装置50に送信される。なお、識別情報はバーコードに限らず、QRコード(登録商標)またはID(Identifier)番号などであってもよい。
【0032】
サーバ装置50は、フォークリフト10の位置情報を推定するとともに、倉庫100内の地図情報を作成する情報処理装置の一例である。サーバ装置50は、また、倉庫100内に設置され、フォークリフト10により搬送される物体30の位置情報を処理してもよい。サーバ装置50は、ネットワーク400を介して受信した全天球画像および物体30を示す識別情報に基づき、物体30の位置情報を処理することができる。また、サーバ装置50は、複数の全天球カメラ20がそれぞれ撮像した全天球画像を用いることで、複数のフォークリフト10が保持する物体30の位置情報を取得することができる。
【0033】
(サーバ装置50のハードウェア構成例)
次に図3は、サーバ装置50のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。サーバ装置50はコンピュータにより構築される。
【0034】
図3に示すように、サーバ装置50は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、HD(Hard Disk)504と、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505と、ディスプレイ506とを有する。またサーバ装置50は、外部機器接続I/F(Interface)508と、ネットワークI/F509と、データバス510と、キーボード511と、ポインティングデバイス512と、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ514と、メディアI/F516とを有する。
【0035】
これらのうち、CPU501は、サーバ装置50全体の動作を制御する。ROM502は、IPLなどのCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。
【0036】
HD504は、プログラムなどの各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御に従ってHD504に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、または画像などの各種情報を表示する。ディスプレイ506は、上述したように地図情報を表示することができる。
【0037】
外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタなどである。ネットワークI/F509は、ネットワーク400を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン510は、図3に示されているCPU501などの各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバスなどである。
【0038】
キーボード511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ514は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW513に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-Rなどであってもよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリなどの記録メディア515に対するデータの読み出しまたは書き込み(記憶)を制御する。
【0039】
なお、上記では、サーバ装置50のハードウェア構成について説明したが、フォークリフト10に備えられるタッチパネル情報端末23のハードウェア構成についても、必要に応じて、追加または削除を行うことによって、図3に記載された構成と同様の構成で実装することができる。
【0040】
(地図作成システム1の機能構成例)
図4は、地図作成システム1の機能構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、サーバ装置50は、通信部51と、移動体位置取得部52と、保持情報取得部53と、識別情報取得部54と、時刻取得部55と、物体位置取得部56と、出力部57と、格納部58と、入力部59とを有する。
【0041】
これら各部は、図3に示した各構成要素のいずれかが、HD504からRAM503上に展開されたプログラムに従ったCPU501からの命令によって動作することで実現される機能、または機能する手段である。また、格納部58は、HD504からRAM503などが提供する記憶領域を含んで構成される。
【0042】
また、フォークリフト10には、全天球カメラ20と、通信部101と、表示部102とが設けられている。通信部101の機能は、フォークリフト10、全天球カメラ20またはタッチパネル情報端末23のいずれか一方に設けられた電気回路で実現される他、ソフトウェア(CPU)によって実現することもできる。また複数の回路または複数のソフトウェアによって実現されてもよい。表示部102の機能は、図2に示したタッチパネル情報端末23に設けられたLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(electroluminescence)パネル、電気回路で実現される。
【0043】
サーバ装置50は、全天球カメラ20により撮像された全天球画像に基づいて、フォークリフト10の位置情報を推定するとともに、環境地図情報を生成する。サーバ装置50は、また、フォークリフト10の位置情報と、フォークリフト10による物体30の保持または非保持のいずれか一方の状態を示す保持情報とに基づいて、物体30の位置情報を取得することもできる。そして、サーバ装置50は、推定したフォークリフト10の位置情報、生成した地図情報および取得した物体30の位置情報を、出力部57を介して外部に出力できる。
【0044】
通信部51は、フォークリフト10側において、全天球カメラ20が撮像し、通信部101を介して送信した全天球画像を、ネットワーク400を介して受信し、移動体位置取得部52および保持情報取得部53のそれぞれに出力する。また通信部51は、バーコードリーダなどの読取器により読み取られた識別情報を、ネットワーク400を介して受信し、識別情報取得部54に出力する。
【0045】
移動体位置取得部52は、連続的に入力される複数の全天球画像に基づき、フォークリフト10(全天球カメラ20)の位置を推定するとともに地図情報を作成し、作成された地図情報および位置情報を格納部58に格納する。ここで、入力部59は、地図作成する際に用いられるパラメータとして、事前に測定された2点(距離実測区間の開始位置および終了位置)間の実測距離の入力を受けて、格納部58に格納する。
【0046】
生成された地図情報および推定された位置情報は、出力部57を介して出力してもよい。出力部57の出力先は、PC(Personal Computer)などの外部装置、ディスプレイ506などの表示装置、またはHD504などの記憶装置などである。また、生成された地図情報および推定された位置情報は、通信部51により、ネットワーク400を介して、フォークリフト10側のタッチパネル情報端末23へ送信され、タッチパネル情報端末23に表示されてもよい。また、移動体位置取得部52は、演算により取得したフォークリフト10の位置情報を物体位置取得部56にも出力する。
【0047】
保持情報取得部53は、入力した全天球画像に基づき、フォークリフト10による物体30の保持または非保持のいずれか一方の状態を示す保持情報を演算により取得し、物体位置取得部56に出力することができる。
【0048】
識別情報取得部54は、通信部51から識別情報を入力することで該識別情報を取得し、物体位置取得部56に出力する。ただし、識別情報取得部54による識別情報の取得は、ネットワーク400を経由するものに限定されない。例えば、識別情報取得部54は、図3のキーボード511またはポインティングデバイス512を用いて管理者などのユーザが入力した識別情報を取得してもよいし、格納部58に予め格納された識別情報を取得してもよいし、外部機器接続I/F508を介して識別情報を取得してもよい。なお、管理者は地図作成システム1または倉庫100の管理者である。
【0049】
時刻取得部55は、通信部51が全天球画像および識別情報を受信した時刻を示す情報を取得し、物体位置取得部56に出力する。
【0050】
物体位置取得部56は、フォークリフト10の位置情報と、保持情報とに基づいて、物体30の位置情報を取得することができる。また、物体位置取得部56は、物体30の位置情報と、物体30を示す識別情報と、時刻情報とを相互に対応付けて出力部57を介して出力してもよい。
【0051】
格納部58は、地図作成する際に用いられるパラメータを格納するほか、推定されたフォークリフト10の位置情報、生成された地図情報、パレット31または貨物32などの物体30を示す識別情報を格納することができる。
【0052】
(地図作成システム1の地図作成機能の詳細)
図5は、地図作成システム1における移動体位置取得部52の周りのより詳細な機能構成を示すブロック図である。
【0053】
移動体位置取得部52は、通信部51から連続的に入力される複数の全天球画像および格納部58から読み出さられるパラメータに基づき、フォークリフト10(全天球カメラ20)の位置を推定するとともに地図情報を作成する。
【0054】
ここで、推定される位置は、全天球カメラ20がフォークリフト10に固定されているとして、全天球カメラ20の位置(フォークリフト10の位置)を推定するものとして説明する。しかしながら、全天球カメラ20は、必ずしもフォークリフト10に位置が固定される必要はない。他の実施形態では、全天球カメラ20がフォークリフト10に対して相対的に変位可能であってもよい。全天球カメラ20が相対的に変位可能な実施形態では、移動体位置取得部52は、直接的には、全天球カメラ20の位置を推定するが、フォークリフト10の位置は、既知の変位に基づいて全天球カメラ20の位置から求められる。
【0055】
移動体位置取得部52は、より具体的には、地図情報生成部60および地図補正部61を含み構成される。
【0056】
地図情報生成部60は、フォークリフト10が所定の経路を移動する間に全天球カメラ20により撮像され、その間に連続して入力される複数の画像に基づいて、地図情報を生成する。フォークリフト10の経路は、典型的には、所定の開始位置から、複数の訪問点を経由して、所定の終了位置へ移動する経路である。フォークリフト10の経路には、複数回訪問する再訪点が含まれてもよく、複数の訪問点を結ぶ経路部分が一周したループ閉鎖の部分を含んでもよい。
【0057】
地図情報生成部60は、より詳細には、トラッキング部64と、ローカル最適化部65と、グローバル最適化部66とを含み構成される。
【0058】
トラッキング部64は、連続的に入力される全てのフレームについて、キーポイントを検出し、キーポイント・マッチングおよび姿勢最適化を行い、全天球カメラ20の姿勢を推定する。トラッキング部64は、また、新しいキーフレームを挿入するかどうかを決定するキーフレーム決定する。トラッキング部64は、新しいキーフレームとして適切なフレームを登録する場合、登録するキーフレームをローカル最適化部65およびグローバル最適化部66に出力する。自己位置推定結果は、地図補正部61に出力される。
【0059】
ローカル最適化部65は、最新のフレームの近傍のフレームに対して最適化を行う。ローカル最適化部65は、挿入されたキーフレームを用いて3次元座標上における点を三角測量し、これによって、地図を作成し、拡張して行く。ローカル最適化部65は、加えて、ローカル・バンドル調整を行う。キーフレーム周辺の部分的な地図は、ローカルマップ67と参照される。
【0060】
地図作成の対象となる移動エリアで、ループ閉塞が可能であれば、フォークリフト10の経路において地図の歪解消のため再訪点を設けてループ閉塞が行われることが好ましい。グローバル最適化部66は、ループ閉塞を利用して全体最適化を行う。グローバル最適化部66は、ループ検出、姿勢グラフ最適化およびグローバル・バンドル調整を実行する。この最適化によって全体的な地図の歪が可能な限り解消される。これまで得られた全体的な地図は、グローバルマップ68と参照される。
【0061】
全天球カメラ20は、複数の光学系を有し、全方位を視野に有するものであるが、ステレオカメラとは異なり、生成される画像は、単眼で撮像された画像と同等である。したがって、地図情報生成部60により生成される地図情報(ローカルマップ67およびグローバルマップ68)では、距離単位が不明となり、実空間上の位置や距離に換算するためにスケーリング(縮尺補正)が必要となる。地図補正部61は、所定のパラメータに基づいて、地図情報67,68の縮尺を補正し、縮尺が補正された地図情報を生成する。この、縮尺の補正は、本実施形態においては、全天球カメラ20(上記フォークリフト10)の開始位置および終了位置に対応する地図情報67、68上の開始点および終了点の仮想距離と、上記開始位置および終了位置の組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて実行される。
【0062】
(地図補正処理)
以下、図6を参照しながら、距離単位不明の地図情報に対し縮尺を補正することによって、所定の距離単位の地図情報を生成する処理について説明する。
【0063】
上述したように、単眼カメラで生成されたVSLAMシステム(地図)上の距離は、距離単位が不明であるため、実距離との乖離がある。これを解消するためにはスケーリングを行う必要がある。本実施形態においては、少なくともスケーリング以前に、図6(A)に示すように、フォークリフト10が計測開始地点および計測終了地点の各地点で所定の姿勢で停車している状態(例えば所定の位置に設けられた車止めに向かって所定の姿勢で停車している状態)での対応する全天球カメラ20の開始位置Aおよび終了位置Bの間の距離が、実測されて、既知であり、格納部58に格納されるものとする。
【0064】
地図情報生成部60により生成される地図情報67、68では、距離単位が不明であるが、上記開始位置および終了位置にそれぞれ対応する全天球カメラ20の地図情報67、68上の開始点および終了点間には、何らかの距離が定義される。地図補正部61は、地図情報67、68上の全天球カメラ20の開始点および終了点間の任意単位の仮想的な距離(仮想距離)を、全天球カメラ20の開始位置Aおよび終了位置B間の実測距離となるように換算するための補正係数を算出する。
【0065】
上述した地図情報生成部60により生成(VLSAM生成された)される地図情報は、距離単位が不定の3次元座標上の点の集合を含む。図6(B)に模式的に示すように、地図補正部61は、この補正係数を、包含される3次元座標上の点の集合(キーフレームの座標を含む。)の各々に対し縮尺係数を適用することで、実距離に対応した地図情報を生成する。
【0066】
なお、上述した説明では、例えば、フォークリフト10が計測開始地点および計測終了地点に設けられた車止めに、例えば車止めに向かって突き当たって停車することで、全天球カメラ20が開始位置Aおよび終了位置Bに位置するものとして説明した。
【0067】
しかしながら、全天球カメラ20が開始位置Aおよび終了位置Bに位置することを確実にする方法は、これに限定されず、フォークリフト10が各地点にあること、各地点間の3次元距離が正確に測定できるという条件を満たす限り、その形態は、特に限定されない。例えば、フォークリフト10が、全天球カメラ20が開始位置Aまたは終了位置Bに位置するように所定の位置に所定の姿勢で配置されていることを検知する手段(開始側検知部や終了側検知部)を備えてもよい。例えば、特定の実施形態では、路面上へのマーキングや旗を設けて、開始側検知部や終了側検知部が、全天球カメラ20によりマーキングや旗を視野に含めて撮像された画像に対し画像認識を施すことによってフォークリフト10が各地点にあることを検知および確認してもよい。その他、他のセンサを車止めに設けるなどすることによって、フォークリフト10または全天球カメラ20が所定の位置に存在することを検知してもよい。
【0068】
また、2地点間の距離の測定方法は、特に限定されるものではない。レーザ距離センサ、超音波距離センサなど任意の距離測定方法によって測定されて、センサから入力された測定値を格納部58に格納することとしてもよい。あるいは、任意の方法で測定された距離の値を人手で格納部58に格納することとしてもよい。
【0069】
(サーバ装置50による地図作成処理)
図7は、サーバ装置50による地図作成処理の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理は、サーバ装置50が、地図作成開始の指示を受け付けたことに応答して実行される。地図作成開始の指示は、例えば、図3におけるポインティングデバイス512等を用いて管理者等のユーザが行ってもよい。例えば、地図作成に使用するフォークリフト10の運転者から、開始地点で待機し、準備が完了した旨の連絡を受けて、管理者のユーザが指示を行ってもよい。あるいは、地図作成で使用するフォークリフト10の運転者のユーザが、タッチパネル情報端末23上で、自身が準備完了したことを通知し、その通知を、ネットワーク400を介して受信することによって、地図作成開始をトリガしてもよい。
【0070】
まず、図7に示す処理の事前準備として、地図作成対象エリアの計測開始地点および計測終了地点となる位置に車止めを設置する。この2地点に設置された車止めに突き当たる形でフォークリフト10が停車しているときに、フォークリフト10に設置された全天球カメラ20の位置(開始位置Aおよび終了位置B)が適切な位置となり、2点間の距離が既知となるように、当該車止めが設置されるもとする。また、開始位置Aおよび終了位置Bは、作業エリアの設計図上で容易に図示できる場所であることが望ましい。
【0071】
図7に示す処理は、ステップS100で開始し、ステップS101で、サーバ装置50は、格納部58から開始位置Aおよび終了位置Bの組に対して事前に定義された実測距離を補正のパラメータとして読み出す。
【0072】
ステップS102では、サーバ装置50は、全天球カメラ20が開始位置Aに位置した状態であるとして地図作成を開始する。地図作成は、開始地点の車止めに突き当たる形でフォークリフト10が停車され、例えば、地図作成開始の準備が完了した旨のフォークリフト10の運転者からの通知に応答して開始されてもよい。地図作成開始後、例えば運転者は、フォークリフト10を、所定の経路にそって走行を開始させる。
【0073】
ステップS103では、フォークリフト10による経路全体の走行終了に応答して、サーバ装置50は、地図情報生成部60により地図生成を行う。なお、この段階で得られる地図は、距離単位不定のものである。ここでは、作業エリア内でフォークリフト10が移動する可能性のあるルートを網羅して走行し、これに伴って全天球カメラ20により撮像されて連続して全天球画像がサーバ装置50に入力される。このステップS103にて、ローカル最適化部65によって、最新のフレームを付近のキーフレームに対して最適化がされる。
【0074】
ステップS104では、フォークリフト10による閉鎖ループ走行の完了に応答して、サーバ装置50は、地図更新を行う。なお、この段階で得られる地図も、距離単位不定のものである。ここでは、ループ閉塞が可能であるロケーションであれば、地図の歪解消のため再訪点が設けられ、ループの閉塞が行われ、グローバル最適化部66は、このループを検出し、全体最適化によって地図の歪を可能な限り解消する。
【0075】
ステップS105では、終了地点の車止めに突き当たる形でフォークリフト10が停車され、例えば、地図作成が完了した旨のフォークリフト10の運転者からの通知に応答して、サーバ装置50は、全天球カメラ20が終了位置Bに位置した状態であるとして地図生成を完了させる。このとき、フォークリフト10の運転者は、終了地点に設けた車止めに想定通りのアプローチでフォークリフト10を停車させ、停車完了後にタッチパネル情報端末23などで、サーバ装置50に終了位置で停車したことを通知するものとする。
【0076】
ステップS106では、サーバ装置50は、地図補正部61により、距離単位不定で生成された地図情報上の開始位置に対応する開始点および終了位置に対応する終了点との仮想距離と、ステップ101で準備された全天球カメラ20の開始位置および終了位置の組に対して事前に与えられた実測距離とに基づいて、縮尺補正を施し、縮尺係数を算出する。開始位置Aから終了位置Bまでの距離を実空間上における距離単位(ここでは簡単のためメートル単位とする)に換算できる係数が算出される。
【0077】
ステップS107では、サーバ装置50は、地図補正部61により、上記算出された縮尺係数を用いてスケーリングし、縮尺が補正された地図情報を生成する。ステップS107では、より具体的には、ステップS106で求めた縮尺係数を、地図情報に含まれる座標情報にそれぞれ適用する。点群の座標情報およびキーフレームが含有する座標情報に対してスケーリング係数をそれぞれ乗じることにより、システム上の座標値がメートル単位に換算され、以降その地図を用いる自己位置推定結果もメートル単位に換算される。
【0078】
(縮尺補正済みの地図の視覚化)
以下、縮尺補正済み地図情報を設計図上で視覚化する方法について説明する。縮尺補正済みの地図情報は、3次元座標上の点の集合である。ここで、2次元の地図上で視覚化するためには、点群地図から俯瞰図となるように点群をカメラ座標系におけるXZ平面(水平面)に射影し、点群ベースのオルソ図となる画像データを生成する。ここで、オルソ画像は、各点が、真上から見たような、傾きがなく、適正な位置に(2地点の距離が正しい距離で)位置する画像に正射変換したものを参照する。
【0079】
上記で生成されたオルソ図を、作業エリアの設計地図情報に合わせこむ。この際に、縮尺補正済みの地図情報は、該地図情報上での開始位置Aに対応する補正後開始点および終了位置Bに対応する補正後終了点と、事前定義された移動エリアの設計地図情報における開始位置に対応する設計上の開始点および設計上の終了点とが互いに一致するように拡大または縮小させられ、また、回転移動または平行移動またはこれらの両方がなされて、自己位置推定結果が設計図上に重ね合わせられて視覚化される。
【0080】
なお、フォークリフト10の位置を設計地図上に示す出力先は、好ましくは、フォークリフト10に設けられる表示部102(タッチパネルなどの表示装置)である。あるいは、出力部57の出力先である、PCなどの外部装置、ディスプレイ506などの表示装置であってもよい。
【0081】
図8は、フォークリフト10の表示部102に表示される地図表示画面90を例示する。図8に示す地図表示画面では、設計地図91上にフォークリフト10の位置92や荷物およびパレットなどの物体30の位置が示されている。
【0082】
図9は、サーバ装置50のディスプレイ506上でブラウザ画面に表示される地図表示画面93を例示する。図9に示す地図表示画面93でも、設計地図94上にフォークリフトの自己位置95や荷物およびパレットなどの物体30の位置が示されている。
【0083】
上記では、図8および図9を参照して、縮尺補正処理された地図を設計図上で視覚化する方法について説明した。しかしながら、縮尺補正処理された地図情報の表示方法は、特に限定されるものではない。
【0084】
例えば、縮尺補正処理された地図情報を、点群ベースのオルソ図となる画像データとして表示することもでき、この場合において、スケールバー(距離の単位表示)を目盛り付属して表示させることができる。図10は、サーバ装置50のディスプレイ506上でブラウザ画面に表示される、フォークリフト10による物体30の搬送先を示す地図表示画面96を例示する。表示画面96は、位置マップ97を表示している。位置マップ97は、搬送元位置98Aと、搬送先位置08Bとを含む。搬送元位置98Aは搬送元の位置を示し、搬送先位置98Bは搬送先の位置を示す。予め登録した仮置き場所等の位置を画面に表示することで、より作業しやすい情報を提供できる。また、図10には、スケールバー99が示されている。スケールバー99は、縮尺が補正された地図情報を表示するのに際して付属される、表示上の縮尺を表示するGUI部品(図形表示)の一例である。
【0085】
なお、図10に示す位置マップ97は、全天球カメラ20が撮像した全天球画像に基づいて、移動体位置取得部52が作成したものである。取得された3次元座標情報を含む点群を2次元平面に投影することによって位置マップ97が作成される。なお、複数のフォークリフト10が存在する場合想定されるが、位置マップ97は、例えば1台のフォークリフト10の移動に応じて作成され、全てのフォークリフト10の位置情報の取得(自己位置認識)において使用されてもよい。これにより、同一座標系において複数のフォークリフト10の各位置を表現できる。
【0086】
なお、図8および図9に示す地図表示画面上でスケールバー99を表示してもよい。
【0087】
(開始位置および終了位置の設定方法)
上述した説明では、全天球カメラ20の開始位置Aおよび終了位置Bは、作業エリアの設計図上で容易に図示できる場所に設定されるものと単に説明した。以下、開始位置Aおよび終了位置Bの設定方法について、より詳細に説明する。
【0088】
計測開始地点および計測終了地点にフォークリフト10の車輪止めを使用する場合、車輪の輪留めは前輪および後輪のいずれを対象としたものでもよい。所定の開始地点および終了地点にフォークリフト10が、所定の姿勢(向き)で存在するとき、全天球カメラ20(その中心)が確実に開始位置Aおよび終了位置Bにあることが求められる。すなわち、フォークリフト10が所定の位置に所定の姿勢で停車していることであり、開始・終了の状態が既知である限りにおいてその形態を問わない。
【0089】
一方で、開始位置および終了位置間の距離は、開けた場所の直線で、可能な限り長い距離であることが望ましい。これは自己位置推定にループ閉塞を伴う全体最適化後の地図を使用することを前提としており、推定誤差は、地図上のどこであっても理論上均等に分散することから、計測距離に対して誤差が占める割合が少ないほどスケーリング係数の誤差もまた少なくなるためである。
【0090】
たとえば、図11に示すように、倉庫100内でフォークリフト10の移動可能領域の設計図面上既知の距離(倉庫100の一方の壁から対向する他方の壁までの距離Hと、これらの壁に平行な方向の開始位置Aと終了位置B間の変位W)を利用することも可能である。その場合、図12(A)に示すように、フォークリフト10のタイヤを後輪(別の例では前輪でもよい)の車止めSに接触した状態で壁Wと全天球カメラ20との距離Dを計測(車止めとタイヤとの接触点とカメラとの水平距離と車止め接触点と壁との水平距離とをそれぞれ計測して足し合わせたもの)し、壁間距離Hから距離Dの分(2D)差し引くことで開始状態および終了状態のカメラ間の実測距離(L=(H-2D)+W)を求めることができる。
【0091】
(開始位置および終了位置の設定方法の変形例)
また、上述した実施形態では、フォークリフト10に全天球カメラ20が位置固定されており、かつ、全天球カメラ20の所定の開始位置および終了位置が、フォークリフト10が移動可能な領域内の異なる地点に停車した状態に対応しているものとして説明した。しかしながら、これに限定されるものでなく、他の実施形態においては、図12(B)に示すように、全天球カメラ20をフォークリフト10に固定される1軸直動機構13に全天球カメラ20を搭載することができる。この場合、計測の開始と終了とで1軸直動機構の移動量を変更することで、同一の地点にフォークリフト10を停車することとしながらも、全天球カメラ20の開始位置Aおよび終了位置Bを異ならせることが可能となる。この場合、設定した移動量(パルスモータのパルス数)から換算される物理的な距離が、パラメータとして格納部58に格納される。
【0092】
1軸直動機構13は、例えば、直進式のはしご車のような機構のほか、レール上をスライドするステージであってもよい。上記例では、1軸直動機構として説明したが、実空間上における距離が既知である2点間を指定して全天球カメラ20が移動可能であれば、その様態は任意である。
【0093】
その他、開始位置Aおよび終了位置Bの間の距離は、レーザ距離センサ、超音波センサなど別の装置を用いて測定するものとして説明したが、ビーコンおよび受信装置を用いて全天球カメラ20の位置(開始位置および終了位置)の座標を測位し、2点間の距離を既知としてスケール測定を行うってもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、実測距離は、計測の開始位置Aおよび計測の終了位置Bの2点間に対して設定されるが、直線距離でない場合などに、一旦停止させるための中継地点Cを途中に設けて、計測開始位置Aと計測終了位置Bとの間の実測距離を、計測開始位置Aと中継地点Cとの間の実測距離と、中継地点Cと計測終了位置Bとの間の実測距離とに分割して定義してもよい。ただし、誤差要因を削減する観点からは、計測開始位置Aおよび計測終了位置Bの2点間で直接測定される実測距離を用いることが好ましい。
【0095】
また、開始位置Aおよび終了位置Bは、実測された2点に対応付けるという意味で、仮想的な距離を測定する地点であるが、必ずしも地図作成の開始地点および終了地点と一致しなくてもよい。例えば、開始位置Aに停車状態から出発する前に地図作成が開始されていてもよいし、終了位置に停車した後、さらに移動を継続し、地図作成を継続してもよい。
【0096】
(機能部の配置の変形例)
なお、説明する実施形態では、移動体位置取得部52が、サーバ装置50に設けられるものとして説明した。しかしながら、移動体位置取得部52は、サーバ装置50以外に設けられてもよい。他の実施形態では、移動体位置取得部52は、フォークリフト10側の装置、例えば、タッチパネル情報端末23や全天球カメラ20や、フォークリフト10に搭載される別のコンピュータ装置に設けられてもよい。この場合、生成された地図情報は、フォークリフト10の自動運転や自立走行のために使用されてもよい。
【0097】
さらに他の実施形態では、クラウド上(その物理または仮想サーバ)に移動体位置取得部52が設けられてもよく、全天球カメラ20からの全天球画像の連続的な入力(動画データとしてまたは静止画のシーケンスとして、および、ファイルとしてまたはストリームデータとして)を受けて生成した地図情報を提供するクラウドサービスとして提供されてもよい。
【0098】
(利点)
以上説明したように、本実施形態によれば、撮像装置で撮像された画像を入力として作成される地図情報の縮尺補正を簡便かつ正確に実現することが可能な情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することができる。
【0099】
特に、撮像画像に基づいて自己位置の推定および環境地図情報の作成を同時に実施する構成において、単位不定の地図情報を、所定の単位の長さを有する地図情報に縮尺を補正することが可能となる。その際には、既知の距離区間の開始位置および終了位置が指定され、地図作成終了時(または実測距離区間の終了地点到達時)に、システム上の移動距離を既知の実測距離に換算することで正確な地図のスケーリング処理を自動的に行うことが可能となる。
【0100】
スケーリングには、その他、サイズが既知のオブジェクトを用いるやり方も想定されるが、そのやり方では、オブジェクトの認識および再投影誤差が生じ、必ずしも正確ではない。またカメラの画素サイズおよび解像度が推定精度に影響を及ぼすため、カメラごとに計測真値が含む誤差にぶれがある。これに対し、上述した実施形態による縮尺補正によれば、同一の測定手法を使う限りにおいてカメラの機種によらず計測真値が含み得る誤差が一定であるため、カメラの解像度および画素サイズが真値の測定誤差に影響を及ぼさないという利点もある。
【0101】
上記で説明した実施形態の各機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0102】
実施形態に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、情報処理装置は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。
【0103】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明してきたが、本発明の実施形態および実施例は上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、他の実施形態、他の実施例、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
1…地図作成システム、10…フォークリフト(移動体の一例)、11…搬送方向(移動方向の一例)、12…鉛直上方向、20…全天球カメラ(撮像装置の一例)、20a…方位、21…フォーク、22…支持部材、30…物体、31…パレット、32…貨物、33…バーコード、40…仮置き場所、50…サーバ装置(情報処理装置の一例)、51…通信部、52…移動体位置取得部、53…保持情報取得部、54…識別情報取得部、55…時刻取得部、56…物体位置取得部、57…出力部、58…格納部、59…入力部、60…地図情報生成部、61…地図補正部、62…全天球画像(画像の一例)、63…パラメータ、64…トラッキング部、65…ローカル最適化部、66…グローバル最適化部、67…ローカルマップ、68…グローバルマップ、100…倉庫、101…通信部、102…表示部、200…トラックヤード、300…コンテナ、400…ネットワーク、500…パーソナルコンピュータ、501…CPU、502…ROM、503…RAM、504…HDD、505…HDDコントローラ、506…ディスプレイ、508…外部機器接続I/F、509…ネットワークI/F、511…キーボード、512…ポインティングデバイス、514…DVD-RWドライブ、513…DVD-RWメディア、516…メディアI/F、515…記録メディア
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特開2021-092465号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12