(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137773
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】光電変換素子、光電変換モジュール、電子機器、及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230922BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044140
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 智史
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA15
5F151FA06
5F151GA02
5F151GA03
(57)【要約】
【課題】折り曲げ試験後にも高出力を維持することができる光電変換素子の提供。
【解決手段】可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、前記支持体の平均厚みT
1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT
2(nm)が、次式、T
2/T
1≦6、を充たす光電変換素子である。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たすことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
酸化スズ及び酸化チタンの少なくともいずれかを含有する電子輸送層を更に有する請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記電子輸送層が、緻密層である請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記電子輸送層が、さらに多孔質層を有する請求項2から3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記ペロブスカイト層が、アルカリ金属及び遷移金属の少なくともいずれかを含有する請求項1から4のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記アルカリ金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビシウム、セシウム、及びフランシウムの少なくともいずれかであり、
前記遷移金属が、銅、銀、及び金の少なくともいずれかである請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記ペロブスカイト層が、1価の有機カチオン及び1価の無機カチオンの少なくともいずれかの1価のカチオンを2種以上含有する請求項1から6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、50nm以上400nm以下である請求項1から7のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記支持体の平均厚みT1(μm)が、0.03mm以上1.3mm以下である請求項1から8のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項10】
可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たすことを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の光電変換素子、及び請求項10に記載の光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子及び前記光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たす光電変換素子を直列又は並列に接続して有することを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光電変換モジュール、電子機器、及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換素子を利用する太陽電池は、化石燃料の代替や地球温暖化対策という観点のみならず、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても、幅広い応用が期待されている。また、自立型電源としての太陽電池は、IoT(Internet of Things)デバイスや人工衛星などで必要される環境発電(エナジーハーベスト)技術の一つとしても、大きな注目を集めている。
【0003】
太陽電池としては、従来から広く用いられているシリコンなどを用いた無機系太陽電池の他に、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などの有機系太陽電池がある。ペロブスカイト太陽電池は、有機溶媒などを含む電解液を用いることなく、従来の印刷手段を用いて製造できるため、安全性の向上及び製造コストの抑制などの点で有利である。
【0004】
また、近年では、基材にフレキシブルな材質を使用した光電変換素子として、第一導電層、ペロブスカイト層、第二導電層をこの順に備え、ペロブスカイト層の両側に隣接する層の少なくとも一方の層とペロブスカイト層とが接する面の最大高さ粗さ(Rz)が1nm以上である固体接合型光電変換素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、折り曲げ試験後にも高出力を維持することができる光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の光電変換素子は、
可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たす。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、折り曲げ試験後にも高出力を維持することができる光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてのマウスの一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、マウスに光電変換素子を実装した一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてパソコンに用いられるキーボードの一例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、キーボードに光電変換素子を実装した一例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、キーボードのキーの一部に小型の光電変換素子を実装した一例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてセンサの一例を示す概略図である。
【
図13】
図13は、本発明の光電変換モジュールを有する、本発明の電子機器としてターンテーブルを用いた一例を示す概略図である。
【
図14】
図14は、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、光電変換素子及び/又は光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器の一例を示す概略図である。
【
図15】
図15は、
図14において光電変換素子と機器の回路との間に光電変換素子用の電源ICを組み込んだ一例を示す概略図である。
【
図16】
図16は、
図15において、蓄電デバイスを電源ICと機器の回路との間に組み込んだ一例を示す概略図である。
【
図17】
図17は、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、電源ICとを有する電源モジュールの一例を示す概略図である。
【
図18】
図18は、
図17において電源ICに蓄電デバイスを追加した電源モジュールの一例を示す概略図である。
【
図19】
図19は、実施例1~31及び比較例1~13における、第2の耐久性試験後の光電変換効率の維持率と、T
2/T
1の値との関係をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
従来技術の光電変換素子の場合、フレキシブル性(可撓性)の高い支持体を用いているため、ペロブスカイト層にクラックが生じやすくなり、所望の出力特性を満足させることが難しくなる問題がある。
【0010】
本発明者らは、上記の問題点について、フレキシブルな支持体の厚みと、ペロブスカイト層の厚みとを調整する、即ち、「ペロブスカイト層の厚み/支持体の厚み≦6を充たす」こと、及び特定の組成を有するペロブスカイト層とすることによって、フレキシブル性を有する素子においてもクラックが生じにくく、高出力な光電変換素子とすることができることを見出した。
【0011】
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子は、可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、必要に応じて、第一の電極、ホールブロッキング層、電子輸送層、ホール輸送層、電極保護層、その他の層を有する。
【0012】
なお、本願明細書において、「光電変換素子」とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子、又は電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子を意味し、具体的には、太陽電池又はフォトダイオードなどが挙げられる。
なお、本発明において、前記層とは、単一の膜である場合(単層)であってもよく、複数の膜が重なった積層であってもよい。
また、積層方向とは、光電変換素子における各層の面方向に対して垂直な方向を意味する。また、接続とは、物理的な接触だけでなく、本発明の効果を奏することができる程度の電気的なつながりを意味する。
【0013】
<支持体>
本発明の光電変換素子は、可撓性の支持体を有する。
本発明において、可撓性を有するとは、支持体が外力によって、しなやかにたわむ性質のことで、少なくとも曲げ半径(R)15mmで曲げても折れないことを意味する。
【0014】
前記支持体としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材質としては、可撓性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック、金属などが挙げられる。これらの中でも、後述するように電子輸送層を形成する際に焼成する工程を含む場合は、焼成温度に対して耐熱性を有する材質のものが好ましい。なお、前記支持体に金属等の導電性を有する材質を用いる場合には、前記支持体は、第1の電極としての役割も兼ねることができる。
【0015】
前記支持体の平均厚みT1(μm)としては、可撓性を奏することができる程度の厚みであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記支持体の平均厚みT1(μm)は、30μm以上1300μm以下が好ましく、50μm以上125μm以下がより好ましい。前記支持体の平均厚みT1(μm)が30μm以上1300μm以下であると、可撓性を向上させることができる。
【0016】
本発明の光電変換素子においては、前記支持体の平均厚みT1(μm)及び後述するペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たす。
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記するペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たすことによって、可撓性を有する支持体を基材として用いた場合においても、光電変換素子を折り曲げたときの歪み、しなり、又は捻じれなどによってペロブスカイト層にクラックが生じるのを抑制することができ、長時間の折り曲げ試験後においても、高出力を維持することが可能であることを本発明者らは見出した。
【0017】
前記支持体の平均厚みT1(μm)と、前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)との比(T2/T1)が6以下であり、2以上6以下が好ましく、4以上6以下がより好ましい。
【0018】
なお、前記支持体と第1の電極を分けて設ける場合、前記支持体は、前記光電変換素子の第1の電極側の最外部、及び第2の電極側の最外部のどちらか一方、又は両方に設けてもよい。
以下、第1の電極側の最外部に設けられる支持体(基板)を第1の基板、第2の電極側の最外部に設けられる基板を第2の基板と称することがある。
【0019】
<第1の電極>
前記第1の電極は、可撓性及び導電性を有する支持体と兼ねてもよく、可撓性を有する支持体とは別途に設けてもよい。
前記支持体と前記第1の電極を分けて設ける場合、前記第1の電極としては、その形状、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の電極は、後述する第2の電極と前記ホール輸送層により隔てられていることが好ましい。
【0020】
前記第1の電極の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一層構造であってもよいし、複数の材料を積層する構造であってもよい。
【0021】
前記第1の電極の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明導電性金属酸化物、カーボン、金属などが挙げられる。
【0022】
前記透明導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、ニオブドープ酸化スズ(以下、「NTO」と称する)、アルミドープ酸化亜鉛(以下、「AZO」と称する)、インジウム及び亜鉛酸化物、ニオブ及びチタン酸化物などが挙げられる。
前記カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム、タンタル、チタンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性が高い透明導電性金属酸化物が好ましく、ITO、FTO、ATO、NTO、AZOがより好ましい。
【0023】
前記第1の電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上100μm以下が好ましく、50nm以上10μm以下がより好ましい。なお、前記第1の電極の材質がカーボンや金属の場合には、前記第1の電極の平均厚みとしては、透明性が得られる程度の平均厚みにすることが好ましい。
【0024】
前記第1の電極の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、スプレー法等の公知の方法などが挙げられる。
【0025】
また、前記第1の電極は、前記支持体(第1の基板)上に形成されることが好ましく、予め前記支持体(第1の基板)上に前記第1の電極が形成されている一体化された市販品を用いることができる。
前記一体化された市販品としては、例えば、FTOコート透明プラスチックフィルム、ITOコート透明プラスチックフィルムなどが挙げられる。
他の一体化された市販品としては、例えば、酸化スズ若しくは酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、又はメッシュ状やストライプ状等の光が透過できる構造にした金属電極を設けたガラス基板などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して混合又は積層したものでもよい。また、電気的抵抗値を下げる目的で、金属リード線などを併用してもよい。
【0026】
前記金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。
前記金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設けることにより併用することができる。
【0027】
<電子輸送層>
前記電子輸送層は、後述するペロブスカイト層で生成された電子を第1の電極まで輸送する層である。このため、前記電子輸送層は、第1の電極に隣接して配置されることが好ましい。
【0028】
前記電子輸送層としては、その形状、大きさについては、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における電子輸送層が、後述するホール輸送層により隔てられていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における電子輸送層が、ホール輸送層により隔てられていることにより、電子拡散が抑制されてリーク電流が低下するため、光耐久性を向上させることができる。
【0029】
また、前記電子輸送層の構造としては、単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよいが、多層であることが好ましく、緻密な構造を有する層(緻密層)と多孔質な構造を有する層(多孔質層)からなることがより好ましい。
また、緻密層は、多孔質層よりも第1の電極に近い側に配置されることが好ましい。
【0030】
<<緻密層>>
前記緻密層としては、電子輸送性材料を含み、後述する多孔質層よりも緻密であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。
【0031】
前記半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体を有する化合物などが挙げられる。
前記単体半導体としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
前記化合物半導体としては、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化ニオブを含有することがより好ましい。特に、酸化スズ及び酸化チタンの少なくともいずれかを含有すると、出力が向上する。これは、緻密層とペロブスカイト層との界面で再結合が起こりにくいためだと考えられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でもよい。
【0032】
前記緻密層は、前記ペロブスカイト層側の表面の前記電子輸送性材料上に、ホスホン酸化合物、ボロン酸化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化シリル化合物、及びアルコキシシリル化合物の少なくともいずれかの化合物を含有することが好ましい。前記緻密層は、前記ペロブスカイト層側の表面の前記電子輸送性材料上に、これらの化合物を含有することで、前記緻密層と前記ペロブスカイト層の界面の物性を制御することが期待できる。言い換えれば、前記緻密層の前記ペロブスカイト層側の表面において前記電子輸送性材料をこれら化合物で被覆することで、前記緻密層と前記ペロブスカイト層の界面抵抗を減少し、電子移動をスムースにする効果が期待できる。
これらの化合物は、前記電子輸送性材料と結合していてもよい。結合としては、例えば、共有結合、イオン結合などが挙げられる。
【0033】
前記化合物は、ホスホン酸化合物、ボロン酸化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化シリル化合物、及びアルコキシシリル化合物の少なくともいずれかである。
前記化合物は、後述するペロブスカイト層との相溶性の点から、窒素原子を有することが好ましい。
【0034】
前記ホスホン酸化合物としては、ホスホン酸基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0035】
前記ボロン酸化合物としては、ボロン酸基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0036】
前記スルホン酸化合物としては、スルホン酸基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0037】
前記ハロゲン化シリル化合物としては、ハロゲン化シリル基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0038】
前記アルコキシシリル化合物としては、アルコキシシリル基を含有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体例は後述する。
【0039】
前記化合物の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100以上500以下が挙げられる。
【0040】
前記化合物は、例えば、下記一般式(X)で表される。
【化1】
前記一般式(X)において、R
1、及びR
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環を表し、同一であっても異なっていてもよい。R
3は、2価のアルキレン基、2価のアリール基、又は2価のヘテロ環を表し、R
4は、ホスホン酸基、ボロン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化シリル基、又はアルコキシシリル基を表す。R
1又はR
2と、R
3と、Nとは、一緒になって環構造を形成していてもよい。
【0041】
前記化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化2】
【0042】
【0043】
前記緻密層上に、ホスホン酸やスルホン酸あるいはハロゲン化シリル基など、金属酸化物と反応する置換基を有する化合物を用いて金属酸化物表面を被覆することが好ましい。その表面を被覆する化合物の具体例としては、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェネチルホスホン酸、(1-アミノエチル)ホスホン酸、(2-アミノエチル)ホスホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-チエニルボロン酸、メチルトリクロロシラン、n-ヘキシルトリエトキシシランなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
前記緻密層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上1μm以下が好ましく、10nm以上700nm以下がより好ましい。
【0045】
前記緻密層の前記ペロブスカイト層側の表面は、なるべく平滑であることが好ましい。平滑性を表す一つの指標としてラフネスファクターは小さいほど好ましいが、緻密層の平均厚みとの関係から、前記緻密層の前記ペロブスカイト層側のラフネスファクターは、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。前記ラフネスファクターの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1以上が挙げられる。
前記ラフネスファクターとは、見かけの表面積に対する実際の表面積の割合のことで、Wenzelのラフネスファクターとも呼ばれている。実際の表面積は、例えばBET比表面積などを測定することで測定することができ、その値を見かけの表面積で割ればラフネスファクターを求めることができる。
【0046】
前記緻密層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。
前記真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
前記湿式製膜法としては、例えば、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0047】
<<多孔質層>>
前記多孔質層としては、電子輸送性材料を含み、緻密層よりも緻密ではない(多孔質である)層であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、緻密層よりも緻密でないとは、多孔質層の充填密度が、緻密層の充填密度よりも低密度であることを意味する。
【0048】
前記電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、緻密層の場合と同様に、半導体材料が好ましい。 半導体材料としては、緻密層で用いるものと同様のものを用いることができる。
【0049】
また、前記多孔質層を形成する電子輸送性材料は、粒子状の形状を有し、これらが接合することによって、多孔質状の膜が形成されることが好ましい。
前記電子輸送性材料の一次粒子の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましい。また、個数平均粒径よりも大きい半導体材料を混合あるいは積層させてもよく、入射光を散乱させる効果により、変換効率を向上できる場合がある。この場合の個数平均粒径は、50nm以上500nm以下が好ましい。
【0050】
前記多孔質層における電子輸送性材料としては、酸化チタン粒子を好適に用いることができる。
前記多孔質層における電子輸送性材料が酸化チタン粒子であると、伝導帯(Conduction Band)が高く、高い開放電圧が得られる。
また、多孔質層における電子輸送性材料が酸化チタン粒子であると、屈折率が高く、光閉じ込め効果により高い短絡電流が得られる。
更に、多孔質層における電子輸送性材料が酸化チタン粒子であると、多孔質層の誘電率が高くなり、電子の移動度が高くなることで、高い曲線因子(形状因子)が得られる点で有利である。
即ち、開放電圧及び曲線因子を向上させることができるため、電子輸送層が、酸化チタン粒子を含む多孔質層を有することが好ましい。
【0051】
前記多孔質層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30nm以上1μm以下が好ましく、100nm以上600nm以下がより好ましい。
また、前記多孔質層は、多層構造を有してもよい。多層構造を有する多孔質層は、粒径の異なる電子輸送性材料の粒子の分散液を複数回塗布すること、電子輸送性材料、樹脂、添加剤などの組成が異なる分散液を複数回塗布することなどにより、作製することができる。前記電子輸送性材料の粒子の分散液を複数回塗布することは、前記多孔質層の平均厚み(膜厚)を調整する際にも有効である。
【0052】
<ペロブスカイト層>
前記ペロブスカイト層は、ペロブスカイト化合物を含み、光を吸収して電子輸送層を増感する層である。そのため、前記ペロブスカイト層は、前記電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。
【0053】
また、本発明の光電変換素子において、前記ペロブスカイト層は、アルカリ金属及び遷移金属の少なくともいずれかを含有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
前記ペロブスカイト層がアルカリ金属及び遷移金属の少なくともいずれかを含有することによって、より長いキャリア寿命、より低い界面欠陥密度、より早い電荷移動速度が得られ、結果としてより高い光電変換特性や耐久性が達成できる。前記ペロブスカイト材料の格子内の原子価状態を考慮すると、一価のカチオンを有するアルカリ金属カチオンはいずれも上記の機能を発現可能と考えられる。
【0054】
前記アルカリ金属としては、国際純正・応用科学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry;IUPAC)により定義された周期表で第1族元素に属する元素であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムなどが挙げられる。これらの中でも、セシウム、ルビジウムが好ましい。
【0055】
前記遷移金属としては、IUPACにより定義された周期表で第3族元素から第11族元素に属する元素であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記遷移元素としては、例えば、銅、銀、金などが挙げられる。
【0056】
前記アルカリ金属及び前記遷移金属を合計した含有量としては、ペロブスカイト層の全量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0057】
前記ペロブスカイト層としては、その形状、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0058】
<<ペロブスカイト化合物>>
ペロブスカイト化合物は、有機化合物と無機化合物の複合物質であり、以下の一般式(3)で表わされる。
XαYβMγ ・・・一般式(3)
前記一般式(3)において、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表す。なお、結晶欠陥などにより上記比率と厳密に一致しなくても、ペロブスカイト層として機能できていれば構わない。
【0059】
前記一般式(3)中、Xは、ハロゲンイオンを表す。
前記ハロゲンイオンとしては、国際純正・応用科学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry;IUPAC)により定義された周期表で第17族に属する元素であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記一般式(3)中、Yとしては、アミノ基を有する1価のカチオンを表す。
前記アミノ基を有する1価のカチオンとしては、1価の有機カチオン、1価の無機カチオンなどが挙げられる。特に、1価の有機カチオン及び1価の無機カチオンの少なくともいずれかの1価のカチオンを2種以上含有することが好ましい。前記アミノ基を有する1価のカチオンが、1価の有機カチオン及び1価の無機カチオンの少なくともいずれかの1価のカチオンを2種以上含有すると、前記ペロブスカイト層の結晶構造を複雑化させることができるため、前記ペロブスカイト層を割れにくくし、耐久性を向上させることができる。
【0061】
前記1価の有機カチオンとしては、例えば、アルキルアミン化合物イオンなどが挙げられる。
前記アルキルアミン化合物イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3
+;MA)、エチルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム、ホルムアミジニウム(CH3(NH3)2
+;FA)などが挙げられる。
前記1価の無機カチオンとしては、例えば、セシウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオンなどが挙げられる。
また、ハロゲン化鉛-メチルアンモニウムのペロブスカイト化合物の場合、ハロゲンイオンが塩化物イオン(Cl-)のときは、光吸収スペクトルのピークλmaxは約350nm、臭化物イオン(Br-)のときは約410nm、ヨウ化物イオン(I-)のときは約540nmと、順に長波長側にシフトするため、利用できるスペクトル幅(バンド域)は異なる。
【0062】
前記一般式(3)中、Mは、鉛(Pb)を含む1つ以上の金属イオンを表す。
前記金属イオンの金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマスなどが挙げられる。
【0063】
また、前記ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を有することが好ましい。
【0064】
前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンやハロゲン化セシウムなどを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
また、前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
さらに、前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。
加えて、前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、メチルアミン(メチルアンモニウム;MA)などが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法などが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が好ましい。
【0065】
前記溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。
【0066】
また、前記ペロブスカイト層は、増感色素を含んでもよい。
前記増感色素を含む前記ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペロブスカイト化合物と増感色素を混合する方法、ペロブスカイト層を形成した後で、増感色素を吸着させる方法などが挙げられる。
【0067】
前記増感色素としては、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記増感色素としては、例えば、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、9-アリールキサンテン化合物、トリアリールメタン化合物、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
前記金属錯体化合物としては、例えば、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の化合物などが挙げられる。
前記クマリン化合物としては、例えば、特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載の化合物などが挙げられる。
前記ポリエン化合物としては、例えば、特開2004-95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載の化合物などが挙げられる。
前記インドリン化合物としては、例えば、特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号、特開2004-235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載の化合物などが挙げられる。
前記チオフェン化合物としては、例えば、J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載の化合物などが挙げられる。
前記シアニン色素としては、例えば、特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載の化合物などが挙げられる。
前記メロシアニン色素としては、例えば、特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号等に記載の化合物などが挙げられる。
前記9-アリールキサンテン化合物としては、例えば、特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号等に記載の化合物などが挙げられる。
前記トリアリールメタン化合物としては、例えば、特開平10-93118号公報、特開2003-31273号等に記載の化合物などが挙げられる。
前記フタロシアニン化合物としては、例えば、特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載の化合物などが挙げられる。
これらの中でも、金属錯体化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物、ポルフィリン化合物が好ましい。
【0068】
前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)は、50nm以上800nm以下が好ましく、50nm以上500nm以下がより好ましく、50nm以上400nm以下がさらに好ましい。前記平均厚みT2(nm)が、50nm以上であれば、ペロブスカイト層による光吸収が少なくてキャリア発生が不充分となることはなく、500nm以下であれば、光吸収により発生したキャリアの輸送効率が一段と低下するようなことはない。
前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)は、例えば、断面SEM測定により測定することができる。
【0069】
<一般式(2)で表される化合物を含有する膜>
本発明の光電変換素子は、前記光電変換層と前記ホール輸送層との間に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有していてもよい。
A-X・・・一般式(2)
ただし、前記一般式(2)中、Aは1価のカチオン、Xは1価のアニオンを表す。
【0070】
本発明の光電変換素子が、前記ペロブスカイト層と前記ホール輸送層の間に前記一般式(2)で表される化合物を含有する膜を有することで、界面の物性を制御することが期待できる。
なお、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)は、前記ペロブスカイト層を構成する塩と異なる塩であることが好ましい。
【0071】
前記塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ペロブスカイト化合物との相溶性の点で、ハロゲン原子を有することが好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、塩素、ヨウ素、臭素などが挙げられる。
【0072】
前記有機塩としては、ペロブスカイト化合物との相溶性の点から、アミンのハロゲン化水素酸塩であることが好ましい。
前記無機塩としては、ペロブスカイト化合物との相溶性の点から、アルカリ金属のハロゲン化物であることが好ましい。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられる。
【0073】
前記Aとしては、例えば、四級アミノカチオン化合物、ピリジニウムカチオン化合物、イミダゾリニウムカチオン化合物、ピロリジニウムカチオン化合物、ホスホニウムカチオン化合物などが挙げられる。
前記四級アミノカチオン化合物としては、例えば、モノアルキルアンモニウムカチオン、ジアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルアンモニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルアリールアンモニウムカチオン、ジアルキルジアリールアンモニウムカチオン、トリアリールメチルアンモニウムカチオン、フェネチルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ピリジニウムカチオン化合物としては、例えば、トリアリールベンジルピリジニウムカチオン、N-アルキルピリジニウムカチオン、N-ベンジルピリジニウムカチオンなどが挙げられる。
前記イミダゾリニウムカチオン化合物としては、例えば、N-メチルー2-イミダゾリニウムカチオン、N-n-プロピル-2-メチルイミダゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ピロリジニウムカチオン化合物としては、例えば、1-エチルー1-メチルピロリジニウムカチオン、1-n-ヘキシル-1-メチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ホスホニウムカチオンとしては、例えば、トリイソブチルメチルホスホニウムカチオン、テトラ-n-ヘキシルドデシルホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
これらの有機カチオンは置換基を有していてもよい。これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記Xとしては、例えば、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンなどのハロゲンアニオンなどが挙げられる。
【0075】
これらの中でも、前記Aが窒素を有するカチオン化合物であり、前記Xがハロゲンイオンであることが好ましい。
より具体的には、前記Aとしては、モノアルキルアンモニウムカチオン、ジアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルアンモニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、フェネチルアンモニウムカチオンがより好ましく、前記Xとしては、臭素アニオン、ヨウ素アニオンがより好ましい。
【0076】
前記光電変換層と前記ホール輸送層の間に、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)を含有する膜を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ペロブスカイト層上に、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)を含有する溶液を塗布した後に、乾燥し、更にその後、その上に、ホール輸送層する形成する方法が挙げられる。前記溶液としては、例えば、水溶液、アルコール溶液などが挙げられる。
塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、エアーナイフ法、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。また、この層に膜厚の制限はなく、単分子で吸着されていても、連続性を有していないアイランド状であっても構わない。
溶液を塗布した後の乾燥処理の際の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)の膜厚は、0.5nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上50nm以下がさらに好ましい。
また、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)は、前記光電変換層と前記ホール輸送層の界面において、均一に分布させる必要はなく、例えば、局所的に複数の領域に存在するようにしてもよい(アイランド状など)。また、前記ペロブスカイト化合物と、後述するホール輸送層のホール輸送性材料と反応させることでペロブスカイト層内やホール輸送層内に分布させるようにしてもよい。つまり、前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)が存在しないペロブスカイト層と、有機塩及び無機塩が存在しないホール輸送層と、の間に前記一般式(2)で表される化合物(有機塩又は無機塩)が存在する領域があればよい。
【0077】
<ホール輸送層>
前記ホール輸送層は、ペロブスカイト層で生成されたホール(正孔)を後述する第2の電極まで輸送する層である。このため、前記ホール輸送層は、前記ペロブスカイト層に隣接して配置されることが好ましい。前記電子輸送層が前記ペロブスカイト層と隣接する場合においては、前記ホール輸送層は、前記ペロブスカイト層の前記電子輸送層と隣接する面とは反対の面において、前記ペロブスカイト層と隣接することが好ましい。また、前記ペロブスカイト層上に前記一般式(2)で表される化合物からなる膜を有する場合においては、前記ホール輸送層は前記膜と隣接するように配置されることが好ましい。
【0078】
前記ホール輸送層は、固体のホール輸送性材料を含み、必要に応じてその他の材料を含む。
前記固体のホール輸送性材料(以下では、単に「ホール輸送性材料」と称することがある)としては、ホールを輸送できる性質を持つ材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機化合物などが挙げられる。
【0079】
前記有機化合物としては、例えば、高分子材料などが挙げられる。
前記高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物、ポリアリールアミン化合物、ポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。
前記ポリチオフェン化合物としては、例えば、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9’-ジオクチル-フルオレン-コ-ビチオフェン)、ポリ(3,3’’’-ジドデシル-クォーターチオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チオフェン)若しくはポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-ビチオフェン)等の化合物などが挙げられる。
前記ポリフェニレンビニレン化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]若しくはポリ[(2-メトキシ-5-(2-エチルフェキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-コ-(4,4’-ビフェニレン-ビニレン)]等の化合物などが挙げられる。
前記ポリフルオレン化合物としては、例えば、ポリ(9,9’-ジドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(4,4’-ビフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]若しくはポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジイル)-コ-(1,4-(2,5-ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]等の化合物などが挙げられる。
前記ポリフェニレン化合物としては、例えば、ポリ[2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレン]、ポリ[2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ-1,4-フェニレン]等の化合物などが挙げられる。
前記ポリアリールアミン化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ジフェニル)-N,N’-ジ(p-ヘキシルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[p-トリルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]若しくはポリ[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ-1,4-ビフェニレン]等の化合物などが挙げられる。
前記ポリチアジアゾール化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール]若しくはポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール)等の化合物などが挙げられる。
これらの中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルを考慮すると、ポリチオフェン化合物、ポリアリールアミン化合物が好ましい。
【0080】
前記ホール輸送性材料としては、下記一般式(1)で表す化合物などが挙げられる。
【0081】
ただし、前記一般式(1)中、Ar
1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい単環式、非縮合多環式又は縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表し、
Ar
4は置換基を有していてもよいベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセン、又はナフタレンの2価基を表し、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
nは2以上の整数を表す。
上記一般式(1)で表されるポリマーの重量平均分子量としては、2,000以上になる整数を示す。
【0082】
上記一般式(1)におけるAr1は芳香族炭化水素基であり、例えばアリール基を表す。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、9-アントラセニル基等が挙げられる。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に単環式、非縮合多環式、又は縮合多環式芳香族炭化水素基の2価基を表し、例えば、アリーレン基、2価のヘテロ環基などを表す。アリーレン基としては、例えば、1,4-フェニレン、1,1’-ビフェニレン、9,9’-ジ-n-ヘキシルフルオレン等が挙げられる。2価のヘテロ環基としては、例えば、2,5-チオフェン等が挙げられる。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
Ar4は、ベンゼン、チオフェン、ビフェニル、アントラセン、又はナフタレンの2価基を表し、これらは置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、2-ナフチル基などが挙げられる。前記アルキル基、及び前記アリール基は置換基を有していてもよい。
【0083】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】
・・・一般式(4)
ただし、前記一般式(4)中、R
5は、メチル基又はメトキシ基を表し、R
6及びR
7は、アルコキシ基を表し、nは2以上の整数を表す。
【0084】
上記一般式(1)で表される化合物(ポリマー)の重量平均分子量としては、2,000以上150,000以下であることが好ましい。
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0085】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、下記(A-1)~(A-22)を挙げられる。なお、前記一般式(1)で表される化合物としては、これらに限定されるものではない。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
前記一般式(1)で表される化合物に対して、更に一般式(5)で表される化合物を含有してもよい。
【0090】
【0091】
上記一般式(5)において、R5~R9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Xはカチオンを表す。R5及びR6、又はR6及びR7は、一緒になって環構造を形成していてもよい。
【0092】
前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基などが挙げられる。前記アルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基などが挙げられる。
【0093】
カチオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属カチオン、ホスホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、含窒素カチオン、スルホニウムカチオンなどが挙げられる。なお、ここでの含窒素カチオンとは、窒素原子上に陽電荷があるイオンを意味し、例えば、アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。
【0094】
前記一般式(5)で示される化合物の具体例としては、下記(B-01)~(B-28)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
前記ホール輸送層における、前記一般式(1)で表される化合物(ポリマー)Aと、前記一般式(5)で表される化合物Bとの質量比(A:B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ホール移動の点から、20:1~1:1が好ましく、10:1~1:1がより好ましい。
前記ホール輸送層の平均厚みは、10nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上100nm以下がより好ましい。
【0102】
前記ホール輸送層は、例えば、他の固体のホール輸送性材料を更に含み、必要に応じてその他の材料を含む。
他の固体のホール輸送性材料(以下では、単に「ホール輸送性材料」と称することがある)としては、ホールを輸送できる性質を持つ材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機化合物を含有することが好ましい。
【0103】
ホール輸送性材料として有機化合物を用いる場合、ホール輸送層は、例えば、複数の種類の有機化合物を含有する。
【0104】
更に、前記ホール輸送化合物は、有機化合物として高分子化合物を含有していてもよい。
ホール輸送層に用いる高分子材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物、ポリアリールアミン化合物、ポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。
前記ポリチオフェン化合物としては、例えば、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9’-ジオクチル-フルオレン-コ-ビチオフェン)、ポリ(3,3’’’-ジドデシル-クォーターチオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チオフェン)若しくはポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-ビチオフェン)等が挙げられる。
前記ポリフェニレンビニレン化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]若しくはポリ[(2-メトキシ-5-(2-エチルフェキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-コ-(4,4’-ビフェニレン-ビニレン)]等が挙げられる。
前記ポリフルオレン化合物としては、例えば、ポリ(9,9’-ジドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(4,4’-ビフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]若しくはポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジイル)-コ-(1,4-(2,5-ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]等が挙げられる。
前記ポリフェニレン化合物としては、例えば、ポリ[2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレン]、ポリ[2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ-1,4-フェニレン]等が挙げられる。
前記ポリアリールアミン化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ジフェニル)-N,N’-ジ(p-ヘキシルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[p-トリルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ-1,4-ビフェニレン]等が挙げられる。
前記ポリチアジアゾール化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール]、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール)等が挙げられる。
これらの中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルを考慮すると、ポリチオフェン化合物、ポリアリールアミン化合物が好ましい。
【0105】
前記ホール輸送層は、上記ポリマーだけでなく低分子化合物単独あるいは低分子と高分子の混合物を含有してもよい。
前記低分子ホール輸送性材料としては特に化学構造に制限はなく、例えば、オキサジアゾール化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、テトラアリールベンジジン化合物、スチルベン化合物、スピロビフルオレン化合物、チオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
前記オキサジアゾール化合物としては、例えば、特公昭34-5466号公報、特開昭56-123544号公報等に示されているオキサジアゾール化合物などが挙げられる。
前記トリフェニルメタン化合物としては、例えば、特公昭45-555号公報等に示されているトリフェニルメタン化合物などが挙げられる。
前記ピラゾリン化合物としては、例えば、特公昭52-4188号公報等に示されているピラゾリン化合物などが挙げられる。
前記ヒドラゾン化合物としては、例えば、特公昭55-42380号公報等に示されているヒドラゾン化合物などが挙げられる。
前記テトラアリールベンジジン化合物としては、例えば、特開昭54-58445号公報等に示されているテトラアリールベンジジン化合物などが挙げられる。
前記スチルベン化合物としては、例えば、特開昭58-65440号公報、特開昭60-98437号公報等に示されているスチルベン化合物などが挙げられる。
前記スピロビフルオレン化合物としては、例えば、特開2007-115665号公報、特開2014-72327号公報、特開2001-257012号公報、WO2004/063283号公報、WO2011/030450号公報、WO2011/45321号公報、WO2013/042699号公報、WO2013/121835号公報に示されているスピロビフルオレン化合物などが挙げられる。
前記チオフェンオリゴマーとしては、例えば、特開平2-250881号公報、特開2013-033868号公報に示されているチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
【0106】
前記ホール輸送層に含まれるその他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、添加剤、酸化剤などが挙げられる。
【0107】
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄若しくはヨウ化銀等の金属ヨウ化物、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム若しくはヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム若しくは臭化カルシウム等の金属臭化物、臭化テトラアルキルアンモニウム若しくは臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、塩化銅若しくは塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀若しくは酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、硫酸銅若しくは硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩若しくはフェロセン-フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム若しくはアルキルチオール-アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ピリジン、4-t-ブチルピリジン若しくはベンズイミダゾール等の塩基性化合物を挙げることができる。
【0108】
更に、酸化剤を加えることができる。
前記酸化剤の種類としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4-ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、コバルト錯体などが挙げられる。なお、酸化剤により、ホール輸送性材料の全体が酸化される必要はなく、一部が酸化されていれば有効である。また、酸化剤は、反応後に系外に取り出しても、取り出さなくてもよい。
前記ホール輸送層が酸化剤を含むことにより、ホール輸送性材料の一部又は全部をラジカルカチオンにすることができるため、導電性が向上し、出力特性の耐久性や安定性を高めることが可能になる。
【0109】
前記ホール輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ペロブスカイト層上においては、0.01μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましく、0.2μm以上2μm以下が更に好ましい。
【0110】
前記ホール輸送層は、ペロブスカイト層の上に直接形成することができる。ホール輸送層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストなどの点で、特に湿式製膜法が好ましく、ペロブスカイト層上に塗布する方法がより好ましい。
湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
【0111】
また、前記ホール輸送層は、例えば、超臨界流体又は臨界点より低い温度及び圧力の亜臨界流体中で製膜することにより作製してもよい。
前記超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度及び圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態である流体を意味する。超臨界流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
前記亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する流体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体として挙げられる流体は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
【0112】
前記超臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒などが挙げられる。
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。ハロゲン溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、二酸化炭素が、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易である点で好ましい。
【0113】
前記超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体の臨界温度としては、-273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下がより好ましい。
【0114】
さらに、前記超臨界流体及び前記亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。有機溶媒及びエントレーナーを添加することにより、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
前記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
前記アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
また、前記ペロブスカイト層上に、ホール輸送性材料を積層した後、プレス処理工程を施してもよい。前記プレス処理を施すことによって、ホール輸送性材料がペロブスカイト層とより密着するため、発電効率が改善できる場合がある。
前記プレス処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、IR(infrared spectroscopy)錠剤成形器に代表されるような平板を用いたプレス成形法、ローラー等を用いたロールプレス法などを挙げることができる。
前記プレス処理する際の圧力としては、10kgf/cm2以上が好ましく、30kgf/cm2以上がより好ましい。
前記プレス処理する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。また、プレス処理時に熱を加えてもよい。
【0116】
前記プレス処理の際、プレス機と電極との間に離型剤を挟んでもよい。
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0117】
前記プレス処理工程を行った後、第2の電極を設ける前に、ホール輸送層と第2の電極との間に金属酸化物を含む膜を設けてもよい。
前記金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化モリブデンが好ましい。
前記金属酸化物を含む膜をホール輸送層上に設ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法などが挙げられる。
【0118】
前記金属酸化物を含む膜を形成する際の湿式製膜法としては、金属酸化物の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。
前記湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
【0119】
前記金属酸化物を含む膜の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましい。
【0120】
<第2の電極>
本発明の光電変換素子は、第2の電極を有する。
前記第2の電極は、前記ホール輸送層上に、又は前記ホール輸送層における前記金属酸化物上に形成することができる。
また、前記第2の電極は、前記第1の電極と同様のものを用いることができる。
前記第2の電極の材質としては、例えば、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
前記炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。
前記導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0121】
前記第2の電極の形成については、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜、前記ホール輸送層上に塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせなどの手法により形成可能である。
本発明の光電変換素子においては、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくともいずれかは実質的に透明であることが好ましい。
前記第1の電極側が透明であり、入射光を前記第1の電極側から入射させる方法が好ましい。この場合、前記第2の電極側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、あるいは金属薄膜が好ましく用いられる。
また、入射光側に反射防止層を設けることも有効な手段である。
【0122】
<電極保護層(パッシベーション層)>
本発明の光電変換素子は、前記電極保護層(パッシベーション層と称することがある)を有していることが好ましい。
前記電極保護層は、後述する封止部と、前記第2の電極と、の間に配される層である。
前記電極保護層は、前記第2の電極が前記封止部によって剥離してしまうことを防止する層である。
前記電極保護層としては、前記第2の電極における前記封止部を設ける側の面に配されていれば特に制限はなく、前記第2の電極が前記封止部と完全に接触しないように配されていてもよく、本発明の効果を奏することができれば、前記第2の電極が前記封止部と部分的に接触するように配されていてもよい。
前記電極保護層の材質としては、例えば、酸化物、フッ素化合物などが挙げられる。
前記酸化物としては、例えば、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
前記フッ素化合物としては、窒化シリコン、酸化シリコンなどが挙げられる。これらの中でも、前記フッ素化合物としては、シラン構造を有するフッ素化合物である酸化シリコンが好ましい。
前記電極保護層の平均厚みとしては、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。
【0123】
<第2の基板>
本発明の光電変換素子は、第2の基板を有してもよい。
前記第2の基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記支持体(第1の基板)と同様のものを用いることができる。
前記第2の基板は、前記ペロブスカイト層を挟むように支持体(第1の基板)と対向して配置される。
前記第2の基板としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第2の基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記支持体(第1の基板)と同様のものを用いることができる。
前記第2の基板としては、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。第2の基板と封止部材との接合部は密着性を上げるため、凹凸部を形成してもよい。
凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。
第2の基板と後述する封止部材との密着性を上げる手段としては、例えば、表面の有機物を除去してもよく、親水性を向上させてもよい。前記第2の基板の表面の有機物を除去する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UVオゾン洗浄、酸素プラズマ処理などが挙げられる。
【0124】
本発明の光電変換素子においては、封止部材を有していてもよい。
【0125】
<封止部材>
本発明の光電変換素子は、少なくとも前記ペロブスカイト層及びホール輸送層を、光電変換素子の外部環境から遮蔽することが可能な封止部材を用いることが可能であり、有効である。言い換えると、本発明においては、ペロブスカイト層を光電変換素子の外部環境から遮蔽する封止部材を更に有することが好ましい。
前記封止部材としては、外部環境から封止部内部への過剰な水分や酸素などの侵入を低減できるものであれば、従来公知の部材を使用可能である。また、前記封止部材は、外部から押圧されることによる機械的な破壊を防止する効果もあり、これを実現可能なものであれば、従来公知の部材を使用可能である。
【0126】
前記封止部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂の硬化物、エポキシ樹脂の硬化物などが挙げられる。
前記アクリル樹脂の硬化物は、分子内にアクリル基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化したものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
前記エポキシ樹脂の硬化物は、分子内にエポキシ基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化したものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
【0127】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられる。これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。
【0128】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
前記エポキシ樹脂には、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。
【0130】
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系、その他の硬化剤などに分類される。
前記アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
前記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
前記その他の硬化剤としては、例えば、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0131】
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。
【0132】
前記添加剤として充填材を含むことにより、水分や酸素の浸入を抑制し、さらには硬化時の体積収縮の低減、硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御などの効果を得ることができる。そのため、添加剤として充填材を含むことは、様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。
【0133】
また、光電変換素子の出力特性やその耐久性に関しては、侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。
前記封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境で保存する際にも有効である。
【0134】
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性あるいは不定形のシリカ、タルク、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記充填材の平均一次粒径は、0.1μm以上10μmが好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性が向上し、封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
前記充填材の含有量としては、封止部材全体(100質量部)に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0135】
前記ギャップ剤は、ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。添加剤としてギャップ剤を含むことにより、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板又は第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、封止部材がギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
前記ギャップ剤としては、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ギャップ剤としては、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子などが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ギャップ剤の粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0136】
前記重合開始剤としては、熱や光を用いて重合を開始させるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0137】
前記熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物であり、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。
一方、前記光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0138】
前記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。
また、前記重合開始剤として、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、例えば、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0139】
前記重合開始剤の添加量としては、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体(100質量部)に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記の好ましい範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0140】
前記乾燥剤は、吸湿剤とも称され、水分を物理的あるいは化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高め、アウトガスの影響を低減できる。
前記乾燥剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子形状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0141】
前記硬化促進剤は、硬化触媒とも称され、硬化速度を速める材料であり、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。
前記硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0142】
前記カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられ、より具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
また、前記封止部材としては、封止材、シール材、又は接着剤などとして市販されているエポキシ樹脂組成物が知られており、本発明においても有効に使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本発明において特に有効に使用できる。市販されているエポキシ樹脂組成物としては、例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(スリーボンド社製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学社製)、WB90US(P)(モレスコ社製)等が挙げられる。
【0144】
前記封止部としてシート状封止材を用いることもできる。
前記シート状封止材とは、例えば、シート上に予めエポキシ樹脂などの封止部を形成したもので、シートはガラスやガスバリア性の高いフィルム等が用いられ、本発明における第2の基板、又は第2の基板と封止基材との組み合わせに該当する。
前記シート状封止材を、第2の電極上に貼り付け、その後加温しながら押圧することにより、封止基材及び第2の基板を一度に形成することができる。
シート上に形成する前記封止部の形成パターンにより、中空部を設けた構造にすることもでき、有効である。
シート上に形成する前記封止部が全面に形成されていれば、「面封止」になるが、前記封止部の形成パターンにより、光電変換素子の内部に中空部を設けるように前記封止部をパターン形成すれば「枠封止」とすることができる。
前記シート状封止材としては、例えば、ゴム系封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、商品名:61539)、オレフィン系封止部付きアルミペットシート(Moresco社製、商品名:S2191)、封止部付きアルミペットシート(味の素ファインテクノ社製、商品名:FD21)などが挙げられる。
【0145】
前記封止部としては、水分捕捉材を含有することが好ましい。
前記水分補足材としては、気体や液体の水分を補足することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吸水材、吸水性樹脂などが挙げられる。
前記水分補足材としては、測定した水分捕捉性が、20mg/100mm2以上であることが好ましく、70mg/100mm2以上であることがより好ましい。
前記吸水材としては、例えば、乾燥剤などが挙げられる。前記乾燥剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、シリカゲル、有機金属化合物などが挙げられる。なお、前記乾燥剤としては、前記エポキシ樹脂を粘着層の材料として用いる場合の添加剤として記載した乾燥剤と同様のものも用いることができる。
【0146】
前記封止部において中空部を設ける場合において、前記中空部には酸素を含有させることによって、ホール輸送層のホール輸送機能を長期にわたって安定に維持することが可能になり、光電変換素子の耐久性向上に対して有効な場合がある。
本発明において、前記中空部には酸素を含有することが好ましく、その酸素濃度は10.0体積%以上21.0体積%以下がより好ましい。
前記中空部の酸素濃度は、酸素濃度を調整したグローブボックス内で封止(封止部の形成)を行うことにより制御することができる。酸素濃度の調整は、特定の酸素濃度を有するガスボンベを使用する方法や、窒素ガス発生装置を用いる方法によって行うことができる。グローブボックス内の酸素濃度は、市販されている酸素濃度計又は酸素モニターを用いて測定できる。
封止によって形成された前記中空部内の酸素濃度の測定は、例えば、IVA(Internal Vapor Analysis)によって行うことができる。具体的には、光電変換素子を高真空中に装填し孔あけして発生したガスや水分について質量分析を行う方法である。この方法により、光電変換素子の前記中空部に含有する酸素濃度を明らかにすることができる。質量分析計としては、四重極型と飛行時間型があり、後者の方がより高感度の測定が可能である。
前記中空部に含有する酸素以外のガスとしては、不活性ガスが好ましく、窒素やアルゴンなどが好ましい。
封止を行う際、グローブボックス内は酸素濃度とともに、露点を制御することが好ましく、出力やその耐久性向上に有効である。露点とは、水蒸気を含む気体を冷却したとき、凝結が開始される温度として定義される。
前記露点としては、特に制限されるものではないが、0℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましい。下限としては、-50℃以上が好ましい。
【0147】
前記封止部材の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスペンス法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。また、封止部材の形成方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの方法を用いてもよい。
更に、前記封止部材と第2の電極との間にパッシベーション層を設けてもよい。
前記パッシベーション層としては、前記封止部材が第2の電極に接しないように配置されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化シリコンなどが挙げられる。
【0148】
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0149】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための一実施形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0150】
[実施形態]
以下に、本発明の光電変換素子の一例について、図面を用いて説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。
【0151】
図1Aは、光電変換素子の一実施形態としての太陽電池セルの一例の概略図である。
図1Aの太陽電池セル50は、第1の電極(支持体)2と、緻密な電子輸送層3と、光電変換層であるペロブスカイト層5と、ホール輸送層6と、第2の電極7とを有する。
第1の電極2は、緻密な電子輸送層3と接している。
緻密な電子輸送層3は、ペロブスカイト層5と接している。
ペロブスカイト層5は、ホール輸送層6と接している。ペロブスカイト層5とホール輸送層6との間に一般式(2)で表される化合物を含有する膜(層)21を有する。
ホール輸送層6は、第2の電極7と接している。
【0152】
(光電変換モジュール)
本発明の光電変換モジュールは、可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たし、必要に応じて、その他の層を有する。
各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0153】
本発明の光電変換モジュールにおいて、前記支持体、前記ペロブスカイト層、前記第二の電極、及びその他の層は、本発明の光電変換素子と同様である。
【0154】
本発明の光電変換モジュールは、本発明の光電変換素子が隣接して配置され、かつ直列又は並列に接続された光電変換素子配置領域を有することが好ましい。
【0155】
また、本発明の光電変換モジュールは、隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子を有する光電変換モジュールにおいて、一の前記光電変換素子における前記支持体(又は第1の電極)と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されていることが好ましい。
【0156】
光電変換モジュールは、一対の基板を有し、かつ直列又は並列に接続された光電変換素子配置領域を前記一対の基板の間に有し、前記封止部材が前記一対の基板に挟持された構成とすることができる。
【0157】
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュールは、可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たす光電変換素子を直列又は並列に接続して有し、さらに必要に応じてその他の層を有する。
【0158】
本発明の太陽電池モジュールにおける光電変換素子は、本発明の光電変換素子と同様である。
なお、直列又は並列に接続するとは、電気的な接続を意味する。
【0159】
<太陽電池モジュールの構成>
図2は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図2に示すように、太陽電池モジュール100は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極7を有する光電変換素子を、第1の基板(支持体)1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極7は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール100には、第2の基板10が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
【0160】
太陽電池モジュール100においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3、多孔質層4、ペロブスカイト層5が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるホール輸送層7で隔てられている。
【0161】
図3は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図3に示すように、太陽電池モジュール101は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板(支持体)1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極7は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール101には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール101においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3、ペロブスカイト層5が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるホール輸送層7で隔てられている。
【0162】
図4は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図4に示すように、太陽電池モジュール102は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板(支持体)1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極8は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール102には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール102においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層である多孔質層4、ペロブスカイト層5、ホール輸送層7で隔てられている。
【0163】
図5は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図5に示すように、太陽電池モジュール103は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、多孔質な電子輸送層(多孔質層)4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板(支持体)1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極8は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール103には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール103においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3、多孔質層4が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるペロブスカイト層5、ホール輸送層7で隔てられている。
【0164】
図6は、本発明の太陽電池モジュールにおける断面構造の一例を示す断面図である。
図6に示すように、太陽電池モジュール104は、第1の電極2、緻密な電子輸送層(緻密層)3、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8を有する光電変換素子を、第1の基板(支持体)1上に有する。なお、第1の電極2及び第2の電極8は、電極取出し端子まで導通する経路を有している。
さらに、太陽電池モジュール104には、第2の基板11が上記の光電変換素子を挟むように第1の基板1と対向して配置され、封止部材10が第1の基板1と第2の基板11の間に配置される。
太陽電池モジュール104においては、第1の電極2a及び第2の電極8aを有する光電変換素子a、及び第1の電極2b及び第2の電極8bを有する光電変換素子bにおける第1の電極2、緻密層3が、光電変換素子aと光電変換素子bとの間で互いに延設された連続層であるペロブスカイト層5、ホール輸送層7で隔てられている。
【0165】
太陽電池モジュール100~104は、第1の基板1と封止部材10と第2の基板11により封止されている。そのため、第2の電極8と第2の基板11との間に存在する中空部における水分量や酸素濃度を制御することが可能である。太陽電池モジュール100~104の中空部の水分量や酸素濃度を制御することにより、発電性能や耐久性を向上できる。すなわち、太陽電池モジュールが、光電変換素子を挟むように第1の基板と対向して配置される第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に配置され、光電変換素子を封止する封止部材とを更に有することにより、中空部の水分量や酸素濃度を制御ことができるため、発電性能や耐久性を向上できる。
なお、中空部内の酸素濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0%以上21%以下が好ましく、0.05%以上10%以下がより好ましく、0.1%以上5%以下が更に好ましい。
【0166】
また、太陽電池モジュール100~104においては、第2の電極8と第2の基板11が接触していないため、第2の電極8の剥離や破壊を防止することができる。
【0167】
さらに、太陽電池モジュール100~104は、光電変換素子aと光電変換素子bとを、電気的に接続する貫通部9を有する。太陽電池モジュール100~104においては、光電変換素子aの第2の電極8aと光電変換素子bの第1の電極2bとが、ホール輸送層7を貫通する貫通部8によって電気的に接続されることにより、光電変換素子aと光電変換素子bとが、直列に接続されている。このように、複数の光電変換素子が直列に接続されることにより、太陽電池モジュールの開放電圧を大きくすることができる。
【0168】
なお、貫通部9については、第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで達していてもよいし、第1の電極2の内部で加工をやめ、第1の基板1にまで達していなくてもよい。貫通部9の形状を第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで到達する微細孔とする場合、貫通部9の面積に対して微細孔の開口面積合計が大きくなりすぎると、第1の電極2の膜断面積が減少することで抵抗値が増大してしまい、光電変換効率の低下を引き起こす場合がある。そのため、貫通部9の面積に対する微細孔の開口面積合計の比率は、5/100以上60/100以下であることが好ましい。
【0169】
また、貫通部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、化学エッチング法、レーザー加工法、研磨紙を用いた方法などが挙げられる。これらの中でも、微細な孔をサンドやエッチング、レジスト等を使うことなく形成でき、これにより清浄に再現性よく加工することができるため、レーザー加工法が好ましい。また、レーザー加工法が好ましい理由としては、貫通部8を形成するとき、緻密層3、多孔質層4、ペロブスカイト層5、一般式(2)で表される化合物の層6、ホール輸送層7、第2の電極8のうち少なくとも一つを、レーザー加工法による衝撃剥離によって除去することが可能になることも挙げられる。これにより、積層時にマスクを設ける必要がなく、また、光電変換素子を形成する材料の除去と貫通部の形成とを、まとめて簡易に行うことができる。
【0170】
ここで、光電変換素子aにおけるペロブスカイト層と、光電変換素子bにおけるペロブスカイト層との間は、延設されていても区切られていてもよく、区切られた場合の距離としては、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。光電変換素子aにおけるペロブスカイト層と、光電変換素子bにおけるペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下であると、多孔質酸化チタン層やペロブスカイト層が切断されており、拡散による電子の再結合が少なくなっているため、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。すなわち、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、一の光電変換素子における 電子輸送層及びペロブスカイト層と、他の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層との間の距離が、1μm以上100μm以下であることにより、長時間にわたって高照度光に晒された後においても、発電効率を維持することが可能である。
なお、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子における、一の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層と、他の光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層との間の距離とは、それぞれの光電変換素子における電子輸送層及びペロブスカイト層の外周部(端部)どうしの距離の中で、最も短い部分の距離を意味する。
【0171】
本発明の太陽電池モジュールは、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置に応用できる。電源装置を利用している機器類として、例えば、電子卓上計算機や腕時計が挙げられる。また、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等に本発明の光電変換素子を有する電源装置を適用することもできる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源、2次電池などと組み合わせることにより夜間等でも利用できる電源などとしても、本発明の光電変換素子を有する電源装置を用いることができる。さらに、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源として、IoTデバイスや人工衛星などに用いることもできる。
【0172】
(電子機器)
本発明の電子機器は、本発明の光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかと、前記光電変換素子及び前記光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
また、本発明の電子機器は、本発明の光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかと、前記光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な畜電池と、前記畜電池に蓄電された前記電力によって動作する装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有していてもよい。
【0173】
(電源モジュール)
電源モジュールは、本発明の光電変換素子及び光電変換モジュールの少なくともいずれかと、電源集積回路(電源IC)と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
【0174】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の具体的な実施形態について説明する。
図7には、前記電子機器として、マウスを用いた一例を示す。
図7に示すように、光電変換素子201、及び光電変換モジュールと電源IC202、更に蓄電デバイス203とを組み合わせ、供給される電力をマウスの制御回路204の電源に接続する。これにより、マウスを使用していない時に蓄電デバイス203に充電し、その電力でマウスを動作させることができ、配線や電池交換が不要なマウスを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
図8には、マウスに光電変換素子201を実装させた概略図を示した。光電変換素子201及び電源IC202、蓄電デバイス203はマウス内部に実装されるが、光電変換素子201に光が当たるように光電変換素子201の上部は透明の筐体で覆われている。また、マウスの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子201の配置はこれに限られるものではなく、例えばマウスを手で覆っていても光が照射される位置に配置することも可能であり、好ましい場合がある。
【0175】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図9には、前記電子機器として、パソコンに用いられるキーボードを用いた一例を示す。
図9に示すように、光電変換素子201と電源IC202、蓄電デバイス203を組み合わせ、供給される電力をキーボードの制御回路205の電源に接続する。これにより、キーボードを使用していない時に蓄電デバイス203に充電し、その電力でキーボードを動作させることができ、配線や電池交換が不要なキーボードを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
図10には、キーボードに光電変換素子201を実装させた概略図を示した。光電変換素子201及び電源IC202、蓄電デバイス203はキーボード内部に実装されるが、光電変換素子201に光が当たるように光電変換素子201の上部は透明の筐体で覆われている。キーボードの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子201の配置はこれに限られるものではない。
光電変換素子を組み込むスペースが小さい小型のキーボードの場合には、
図11に示すように、キーの一部に小型の光電変換素子を埋め込むことも可能であり、有効である。
【0176】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図12には、前記電子機器として、センサを用いた一例を示す。
図12に示すように、光電変換素子201と電源IC202、蓄電デバイス203を組み合わせ、供給される電力をセンサ回路206の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、センサモジュールAを構成することが可能となる。センシング対象としては、温湿度、照度、人感、CO
2濃度、加速度、UV強度、騒音、地磁気、気圧など、様々なセンサに応用でき、有効である。センサモジュールは、
図12中に示すように、定期的に測定対象をセンシングし、読み取ったデータをPCやスマートフォンなどの機器207に無線通信で送信する構成になっている。
IoT社会の到来により、センサは急増することが予想されている。この無数のセンサの電池を一つ一つ交換するには大きな手間がかかり、現実的ではない。またセンサは、天井や壁など、電池交換しにくい場所にあることも作業性を悪くしている。光電変換素子により電力供給できることもメリットは非常に大きい。また、本発明の光電変換素子は、低照度でも高い出力を得ることができ、かつ出力の光入射角依存性が小さいことから、設置自由度が高いといったメリットも得られる。
【0177】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図13には、前記電子機器として、ターンテーブルを用いた一例を示す。
図13に示すように、光電変換素子201と電源IC202、蓄電デバイス203を組み合わせ、供給される電力をターンテーブル制御回路208の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、ターンテーブルを構成することが可能となる。
ターンテーブルは、例えば、商品を陳列するショーケースなどに用いられるが、電源の配線は見栄えが悪く、また電池交換の際には陳列物を撤去しなければならず、大きな手間がかかっていた。本発明の光電変換素子を用いることで、そのような不具合を解消でき、有効である。
【0178】
<用途>
以上、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器、及び電源モジュールについて説明したが、これらはごく一部であり、本発明の光電変換素子、あるいは光電変換モジュールが、これらの用途に限定されるものではない。
【0179】
光電変換素子、及び光電変換モジュールは、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより、例えば、電源装置に応用できる。
電源装置を利用している機器類としては、例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどが挙げられる。
また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として、光電変換素子を有する電源装置を用いることができる。
【0180】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、自立型電源として機能させることができ、光電変換によって発生した電力を用いて、装置を動作させることが可能である。本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、光が照射されることにより発電することが可能であるため、電子機器を電源に接続したり、あるいは電池交換したりする必要がない。そのため、電源設備がない場所でも電子機器を動作させたり、身に着けて持ち歩いたり、電池交換が困難な場所でも電池を交換することなく、電子機器を動作させたりすることが可能である。また、乾電池を用いる場合は、その分電子機器が重くなったり、サイズが大きくなったりするため、壁や天井への設置、あるいは持ち運びに支障を来すことがあるが、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、軽量で薄いため、設置自由度が高く、身に着けたり、持ち歩く上でもメリットが大きい。
このように、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、自立型電源として使用でき、様々な電子機器に組み合わせることができる。例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどの表示機器、マウスやキーボードなどのパソコンの付属機器、温湿度センサや人感センサなどの各種センサ機器、ビーコンやGPSなどの発信機、補助灯、リモコン等数多くの電子機器と組み合わせて使用することができる。
また、本願の光電変換素子及び光電変換モジュールは、折り曲げ後にも高出力を維持することができるため、フレキシブルデバイスにも好適に利用することができる。
【0181】
本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールは、特に低照度の光でも発電できるため、室内でも、更に薄暗い影のところでも発電することが可能であるため、適用範囲が広い。また、乾電池のように液漏れがなく、ボタン電池のように誤飲することもなく安全性が高い。更に、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることができる。このように、本発明の光電変換素子、及び光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせることで、軽量で使い勝手がよく、設置自由度が高く、交換が不要で、安全性に優れ、かつ環境負荷低減にも有効な電子機器に生まれ変わることができる。
【0182】
本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器の基本構成図を
図14に示す。これは、光電変換素子に光が照射されると発電し、電力を取り出すことができる。機器の回路は、その電力によって動作することが可能になる。
【0183】
しかし、光電変換素子は周囲の照度によって出力が変化するため、
図14に示す電子機器は安定に動作することができない場合がある。この場合、
図15に示すように、回路側に安定した電圧を供給するために、光電変換素子201と機器回路209の間に光電変換素子用の電源IC202を組み込むことが可能であり、有効である。
しかし、光電変換素子は十分な照度の光が照射されていれば発電できるが、発電するだけの照度が足りなくなると、所望の電力が得られなくなり、これが光電変換素子の欠点でもある。この場合には、
図16に示すように、キャパシタ等の蓄電デバイス203を電源IC202と機器回路209の間に搭載することによって、光電変換素子201からの余剰電力を蓄電デバイス203に充電することが可能となり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子201に光が当たらない場合でも、蓄電デバイス203に蓄えられた電力を機器回路209に供給することが可能になり、安定に動作させることが可能となる。
このように、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、機器回路とを組み合わせた電子機器において、電源ICや蓄電デバイスを組み合わせることで、電源のない環境でも動作可能であり、また電池交換が不要で、安定に駆動させることが可能になり、光電変換素子のメリットを最大限に活かすことができる。
【0184】
一方、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールは、電源モジュールとしても使用することが可能であり、有用である。例えば、
図17に示すように、本発明の光電変換素子及び/又は光電変換モジュールと、光電変換素子用の電源IC202を接続すると、光電変換素子201が光電変換することによって発生した電力を電源IC202にて一定の電圧レベルで供給することが可能な直流電源モジュールを構成することができる。
更に、
図18に示すように、電源IC202に蓄電デバイス203を追加することにより、光電変換素子201が発生させた電力を蓄電デバイス203に充電することが可能になり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子201に光が当たらない状態になっても、電力を供給することが可能な電源モジュールを構成することができる。
図17及び
図18に示した本発明の電源モジュールは、従来の一次電池のように電池交換をすることなく、電源モジュールとして使用することが可能である。
【実施例0185】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0186】
<ホール輸送性材料(A-05)の合成>
100ml四つ口フラスコに、下図中のジアルデヒド化合物0.66g(2.0mmol)及びジホスホネート1.02g(2.0mmol)を入れ、窒素置換してテトラヒドロフラン75mlを加えた。
この溶液にカリウムt-ブトキシドの1.0mol/dm-3テトラヒドロフラン溶液6.75ml(6.75mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した後、ベンジルホスホン酸ジエチル及びベンズアルデヒドを順次加え、更に2時間撹拌した。
酢酸を約1ml加えて反応を終了させ、溶液を水洗した。
溶媒を減圧留去した後、テトラヒドロフラン及びメタノールを用いて再沈澱による精製を行ない、高分子化合物(A-05)を0.95g得た。
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は8,500、重量平均分子量は20,000であった。
理研計器製光電子分光装置AC-2を用いて測定したイオン化ポテンシャルは5.20eVであった。
以下、記載されているイオン化ポテンシャルは全てAC-2にて測定した値である。
【0187】
【0188】
(実施例1)
<太陽電池モジュールの作製>
まず、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチルアセトン)イソプロピルアルコール溶液(75%)0.36gを、イソプロピルアルコール10mlに溶解して得た液を、スピンコート法を用いて、第1の電極を兼ねる支持体(第1の基板)としてのSUS(304)基板(オーステナイト系ステンレス鋼、鉄に約18%のクロムと約8%のニッケルを合金したもの、基板膜厚50μm)上に塗布し、120℃で3分間乾燥した後、450℃で30分間焼成することにより、緻密な電子輸送層(緻密層)を作製した。なお、緻密層の平均厚みは、10nm~40nmとなるようにした。
【0189】
次いで、ヨウ化鉛(II)(0.5306g)、臭化鉛(II)(0.0736g)、臭化メチルアミン(0.0224g)、ヨウ化ホルムアミジン(0.1876g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(0.8ml)、ジメチルスルホキシド(0.2ml)に加えた。この溶液に1.5Mに調整したヨウ化セシウムDMSO溶液を40μL加え、60℃で加熱攪拌して得た溶液を、電子輸送層(多孔質層)上にスピンコート法を用いて塗布しながらクロロベンゼン(0.3ml)を加えて、ペロブスカイト膜を形成し、150℃で30分間乾燥させることにより、ペロブスカイト層を作製した。
なお、ペロブスカイト層の平均厚みは、300nmとなるようにした。
更に、形成したペロブスカイト層上に、2-フェニルエチルアンモニウムブロミドを溶解したイソプロピルアルコール1mMの溶液を、スピンコートを用いて塗布した。
なお、下記表1中、ペロブスカイト層の組成において、メチルアンモニウムを「MA」と表記し、ホルムアミジニウムを「FA」と表記する。
【0190】
次いで、合成した(A-05)で表されるホール輸送性材料を73.6mg、添加剤として(B-14)で示される添加剤を7.4mg、計量し、クロロベンゼン3.0mlに溶解した。
得らえた溶液を、ペロブスカイト層上にスピンコート法を用いて塗布して、ホール輸送層を作製した。
なお、ホール輸送層の平均厚み(ペロブスカイト層上の部分)は、50nm~120nmとなるようにした。
さらに、ホール輸送層の上に、透明電極として銀ナノワイヤー(シグマアルドリッチ社製、直径60nm×長手方向の長さ10μm、0.5%イソプロピルアルコール分散液)を平均厚みが100nmとなるように塗布した。
次に、第2電極上に電極保護層としてシラン構造を有するフッ素化合物(株式会社ハーベス製、商品名:DURASURF DS-5935F130)をダイコートで平均厚みが10nmとなるように成膜した。
【0191】
第1の基板全面に対して、封止部、封止基材、及び第2の基板が一体となった封止部付きアルミペットシート(Tesa社製、感圧粘着剤A、剥離強度:5N/1cm以上、乾燥剤:酸化カルシウム)を真空貼り合わせ装置(常陽光学株式会社製、装置名:エアーバック式真空ラミネーター)を用いて貼り合わせ、貼り合わせたものを、加熱ラミネーターで70℃に加温しながら、圧着して、封止部、封止基材、及び第2の基板を形成し光電変換モジュールを作製した。
【0192】
次に、得られた太陽電池モジュール1について、太陽電池評価システム(株式会社エヌエフ回路設計ブロック製、商品名:As-510-PV03)を用いて、ソーラーシミュレーター(AM1.5、100mW/cm2)で光を照射しつつ、IV特性を測定し、太陽電池特性(初期特性)を評価した。
【0193】
次に、下記条件の折り曲げ試験を実施した後に、再度初期特性の測定条件と同様の条件で、太陽電池特性(試験後特性)を評価し、その変換効率の維持率(維持率1)を算出した。結果を表1に示す。
<折曲げ試験条件>
ユアサシステム機器株式会社の小型卓上耐久性試験機であるDMLHBを使用し、太陽電池モジュールの第2の電極側が谷となるようにセットし、曲げ直径が30mm、曲げ速度が60r/min、曲げ回数100回として実施した。
【0194】
次に、折り曲げ試験後の太陽電池モジュール1において、クラックの影響を評価するために60℃90%RHでの高温高湿試験を実施し、上述と同様の条件で太陽電池特性を評価し、その変換効率の維持率(維持率2)を算出した。結果を表1及び
図19に示す。
なお、高温高湿試験は、温度60℃、相対湿度90%に設定した恒温槽に太陽電池モジュール1を100時間静置して行った。
【0195】
(実施例2~6)
実施例1において、スピンコート条件変更しを、支持体の平均厚みT1(μm)及びペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)の比(T2/T1)が、表1に記載の値となるように、ペロブスカイト層の厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュール2~6を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0196】
(実施例7~18)
実施例1において、支持体を表1に記載の材料に変更し、スピンコート条件変更しを、支持体の平均厚みT1(μm)及びペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)の比(T2/T1)が、表1に記載の値となるように、ペロブスカイト層の厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュール7~18を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0197】
(実施例19~24)
実施例1において、ペロブスカイト層の組成と電子輸送層をSnO2に変更し、支持体を表1に記載の材料に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュール19~24を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0198】
(実施例25~27)
実施例1において、ペロブスカイト層の組成と、支持体を表1に記載の材料に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュール25~27を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0199】
(実施例28~31)
実施例1において、ペロブスカイト層の組成と、電子輸送層の材料、支持体を表1に記載の材料に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュール28~31を作製し、実施例1と同様の評価を行った。なお、多孔質層の作成は下記の通り行った。
【0200】
次に、酸化チタンペースト(グレートセルソーラー社製、商品名:MPT-20)を、αテルピネオールで薄めた分散液を、スピンコート法を用いて緻密層上に塗布し、120℃で3分間乾燥した後、550℃で30分間焼成した。
続いて、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学株式会社製、製品番号:38103)を溶解したアセトニトリル0.1M(なお、Mは、mol/dm3を意味する)の溶液を、スピンコート法を用いて上述の膜上に塗布し、450℃で30分間焼成し、多孔質な電子輸送層(多孔質層)を作製した。なお、多孔質層の平均厚みは、150nmとなるようにした。
【0201】
(比較例1~4)
実施例1において、スピンコート条件変更しを、支持体の平均厚みT1(μm)及びペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)の比(T2/T1)が、表2に記載の値となるように、ペロブスカイト層の厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュール32~35を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0202】
(比較例5~13)
実施例1において、支持体を表2に記載の材料に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュール36~44を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0203】
【0204】
【0205】
表1及び表2中、各符号の意味は以下の通りである。
「Voc」は、開放電圧を意味する。
「Jsc」は、短絡電流密度を意味する。
「FF」は、形状因子を意味する。
「PCE」は、光電変換効率を意味する。
【0206】
なお、下記表1中、ペロブスカイト層の組成において、メチルアンモニウムを「MA」と表記し、ホルムアミジニウムを「FA」と表記する。
【0207】
表1、表2及び
図1の結果から、支持体(第一の基板)の平均厚みT
1(μm)とペロブスカイト層の平均厚みT
2(nm)とが、T
2/T
1≦6、を充たすことにより、高温高湿試験後においても光電変換効率が維持できた。即ち、折り曲げ試験後において、クラックの発生をより促進させる試験を行った後においても、高出力を維持することができることが示された。
【0208】
本発明の態様としては、例えば、以下の通りである。
<1> 可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たすことを特徴とする光電変換素子である。
<2> 酸化スズ及び酸化チタンの少なくともいずれかを含有する電子輸送層を更に有する前記<1>に記載の光電変換素子である。
<3> 前記電子輸送層が、緻密層である前記<2>に記載の光電変換素子である。
<4> 前記電子輸送層が、さらに多孔質層を有する前記<2>から<3>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<5> 前記ペロブスカイト層が、アルカリ金属及び遷移金属の少なくともいずれかを含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<6> 前記アルカリ金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビシウム、セシウム、及びフランシウムの少なくともいずれかであり、
前記遷移金属が、銅、銀、及び金の少なくともいずれかである<5>に記載の光電変換素子である。
<7> 前記ペロブスカイト層が、1価の有機カチオン及び1価の無機カチオンの少なくともいずれかの1価のカチオンを2種以上含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<8> 前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、50nm以上400nm以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<9> 前記支持体の平均厚みT1(μm)が、0.03mm以上1.3mm以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<10> 可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たすことを特徴とする光電変換モジュールである。
<11> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の光電変換素子、及び前記<10>に記載の光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子及び前記光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器である。
<12> 可撓性を有する支持体と、ペロブスカイト層と、第二の電極と、を有し、
前記支持体の平均厚みT1(μm)及び前記ペロブスカイト層の平均厚みT2(nm)が、次式、T2/T1≦6、を充たす光電変換素子を直列又は並列に接続して有することを特徴とする太陽電池モジュールである。
<13> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の光電変換素子、及び前記<10>に記載の光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子及び前記光電変換モジュールの少なくともいずれかが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な畜電池と、
前記畜電池に蓄電された前記電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器である。
【0209】
前記<1>から<9>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<10>に記載の光電変換モジュール、前記<12>に記載の太陽電池モジュール、及び前記<11>及び<13>のいずれかに記載の電子機器によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。