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特開2023-137782冷却塔の運転管理方法、運転管理システム及び運転管理用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137782
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】冷却塔の運転管理方法、運転管理システム及び運転管理用プログラム
(51)【国際特許分類】
   F28G 13/00 20060101AFI20230922BHJP
   F28D 1/04 20060101ALI20230922BHJP
   F28G 9/00 20060101ALI20230922BHJP
   F28F 19/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F28G13/00 A
F28D1/04 B
F28G9/00 L
F28F19/00 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044153
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】宮原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA31
(57)【要約】
【課題】災害等によって上下水道や下水道に障害が生じた場合でも冷却塔の運転を継続することができる冷却塔の運転管理方法、運転管理システム及び運転管理用プログラムを提供する。
【解決手段】排水を排水設備に排出する冷却塔の運転管理方法であって、該排水設備の使用が不可となったときに、非常用水槽の設置可否を判断し、非常用水槽が設置不可の場合に、冷却塔をノンブロー運転に切り替え、非常用水槽が設置可能な場合に、水回収設備の有無を判断し、水回収設備が有る場合には水回収設備を高負荷運転とし、無い場合には冷却塔を高濃縮運転する冷却塔の運転管理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を排水設備に排出する冷却塔の運転管理方法であって、
該排水設備の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、非常用水槽の設置可否を判断し、
非常用水槽が設置不可の場合に、冷却塔をノンブロー運転に切り替え、
非常用水槽が設置可能な場合に、水回収設備の有無を判断し、
水回収設備が有る場合には水回収設備を高負荷運転とし、無い場合には冷却塔を高濃縮運転する冷却塔の運転管理方法。
【請求項2】
前記水回収設備を高負荷運転しているときに、前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる、請求項1の冷却塔の運転管理方法。
【請求項3】
前記ノンブロー運転しているとき又は前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する、請求項1の冷却塔の運転管理方法。
【請求項4】
前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水をpH調整する、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う、請求項1の冷却塔の運転管理方法。
【請求項5】
前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、前記ノンブロー運転を行う、請求項1の冷却塔の運転管理方法。
【請求項6】
前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、非常用水槽を追加設置するか、又は非常用水槽から貯水の一部を搬出する請求項1の冷却塔の運転管理方法。
【請求項7】
排水を排水設備に排出する冷却塔の運転管理装置であって、
該排水設備の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、非常用水槽の設置可否を判断する手段と、
非常用水槽が設置不可の場合に、冷却塔をノンブロー運転に切り替える手段と、
非常用水槽が設置可能な場合に、水回収設備の有無を判断する手段と、
水回収設備が有る場合には水回収設備を高負荷運転とし、無い場合には冷却塔を高濃縮運転する手段と
を有する冷却塔の運転管理装置。
【請求項8】
前記水回収設備を高負荷運転しているときに、前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる手段を有する請求項7の冷却塔の運転管理装置。
【請求項9】
前記ノンブロー運転又は前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する手段を有する請求項7の冷却塔の運転管理装置。
【請求項10】
前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水をpH調整する、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う手段を有する請求項7の冷却塔の運転管理装置。
【請求項11】
前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、前記ノンブロー運転を行う手段を有する請求項7の冷却塔の運転管理装置。
【請求項12】
前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、非常用水槽を追加設置するか、又は非常用水槽から貯水の一部を搬出する手段を有する請求項7の冷却塔の運転管理装置。
【請求項13】
排水を排水設備に排出する冷却塔の運転管理プログラムであって、
該排水設備の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、非常用水槽の設置可否を判断するステップと、
非常用水槽が設置不可の場合に、冷却塔をノンブロー運転に切り替えるステップと、
非常用水槽が設置可能な場合に、水回収設備の有無を判断するステップと、
水回収設備が有る場合には水回収設備を高負荷運転とし、無い場合には冷却塔を高濃縮運転するステップと
をコンピューターに実行させる冷却塔の運転管理プログラム。
【請求項14】
前記水回収設備を高負荷運転しているときに、前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させるステップを有する請求項13の冷却塔の運転管理プログラム。
【請求項15】
前記ノンブロー運転しているとき又は前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加するステップを有する請求項13の冷却塔の運転管理プログラム。
【請求項16】
前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水をpH調整する、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行うステップを有する請求項13の冷却塔の運転管理プログラム。
【請求項17】
前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、前記ノンブロー運転を行うステップを有する請求項13の冷却塔の運転管理プログラム。
【請求項18】
前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、非常用水槽を追加設置するか、又は非常用水槽から貯水の一部を搬出するステップを有する請求項13の冷却塔の運転管理プログラム。
【請求項19】
給水設備からの水を補給水として使用する冷却塔の運転管理方法であって、
該給水設備の一部又は全体の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、代替水源の有無を判断し、
代替水源が有る場合に補給水の少なくとも一部として代替水源を使用し、
代替水源の水質が基準範囲内であるか判断し、基準範囲外であるときには冷却塔の運転条件を調整し、
代替水源が無い場合に少なくとも一部の給水源を予備ダンクに切り替え、
水回収設備の有無を判断し、
水回収設備が有る場合、水回収設備を高負荷運転とし、
水回収設備が無い場合、冷却塔をノンブロー運転に切り替える
冷却塔の運転管理方法。
【請求項20】
前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる、請求項19の運転管理方法。
【請求項21】
前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する、請求項19の運転管理方法。
【請求項22】
前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水のpH調整、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う請求項19の運転管理方法。
【請求項23】
給水設備からの水を補給水として使用する冷却塔の運転管理装置であって、
該給水設備の一部又は全体の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、代替水源の有無を判断し、
代替水源が有る場合に補給水の少なくとも一部として代替水源を使用する手段と、
代替水源の水質が基準範囲内であるか判断し、基準範囲外であるときには冷却塔の運転条件を調整する手段と、
代替水源が無い場合に少なくとも一部の給水源を予備ダンクに切り替える手段と、
水回収設備の有無を判断する手段と、
水回収設備が有る場合、水回収設備を高負荷運転とする手段と、
水回収設備が無い場合、冷却塔をノンブロー運転に切り替える手段と
を有する冷却塔の運転管理装置。
【請求項24】
前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる手段を有する請求項23の運転管理装置。
【請求項25】
前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する手段を有する請求項23の運転管理装置。
【請求項26】
前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水のpH調整、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う手段を有する請求項23の運転管理装置。
【請求項27】
給水設備からの水を補給水として使用する冷却塔の運転管理プログラムであって、
該給水設備の一部又は全体の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、代替水源の有無を判断するステップと、
代替水源が有る場合に補給水の少なくとも一部として代替水源を使用するステップと、
代替水源の水質が基準範囲内であるか判断し、基準範囲外であるときには冷却塔の運転条件を調整するステップと、
代替水源が無い場合に少なくとも一部の給水源を予備ダンクに切り替えるステップと、
水回収設備の有無を判断するステップと、
水回収設備が有る場合、水回収設備を高負荷運転とするステップと、
水回収設備が無い場合、冷却塔をノンブロー運転に切り替えるステップと
をコンピューターに実行させる冷却塔の運転管理プログラム。
【請求項28】
前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に設備の運転負荷を低減させるステップを有する請求項27の運転管理プログラム。
【請求項29】
前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合に薬剤を高濃度添加するステップを有する請求項27の運転管理プログラム。
【請求項30】
前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水のpH調整、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行うステップを有する請求項27の運転管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模災害などによって上水道や下水道などに障害が生じた場合に冷却塔の運転管理を行うための方法、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模災害の発生時には、水道の断水が発生する可能性が高く、かつ断水の復旧まで相当の日数がかかるおそれがある。そのため、大量の水を必要とする冷却塔設備においては、断水時に設備が停止し、ひいては当該冷却塔設備を利用したシステム全体が停止するリスクがあり(例えば、一般工場や発電所、データセンターの停止)、当該冷却設備停止のリスクを可能な限り低減することが求められている。
【0003】
特許第6342204号では貯水システムに蓄えられた水を災害時に供給するようにしたり、特許第6463908号では乾式冷却塔を利用したりすることが検討されている。しかし、これらの文献においても、冷却塔の運転において、災害時の運転状態へとスムーズな移行を可能とするようなシステムは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6342204号公報
【特許文献2】特許6463908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、災害等によって上下水道や下水道に障害が生じた場合でも冷却塔の運転を継続することができる冷却塔の運転管理方法、運転管理システム及び運転管理用プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0007】
[1] 排水を排水設備に排出する冷却塔の運転管理方法であって、
該排水設備の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、非常用水槽の設置可否を判断し、
非常用水槽が設置不可の場合に、冷却塔をノンブロー運転に切り替え、
非常用水槽が設置可能な場合に、水回収設備の有無を判断し、
水回収設備が有る場合には水回収設備を高負荷運転とし、無い場合には冷却塔を高濃縮運転する冷却塔の運転管理方法。
【0008】
[2] 前記水回収設備を高負荷運転しているときに、前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる、[1]の冷却塔の運転管理方法。
【0009】
[3] 前記ノンブロー運転しているとき又は前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する、[1]の冷却塔の運転管理方法。
【0010】
[4] 前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水をpH調整する、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う、[1]の冷却塔の運転管理方法。
【0011】
[5] 前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、前記ノンブロー運転を行う、[1]の冷却塔の運転管理方法。
【0012】
[6] 前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、非常用水槽を追加設置するか、又は非常用水槽から貯水の一部を搬出する[1]の冷却塔の運転管理方法。
【0013】
[7] 排水を排水設備に排出する冷却塔の運転管理装置であって、
該排水設備の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、非常用水槽の設置可否を判断する手段と、
非常用水槽が設置不可の場合に、冷却塔をノンブロー運転に切り替える手段と、
非常用水槽が設置可能な場合に、水回収設備の有無を判断する手段と、
水回収設備が有る場合には水回収設備を高負荷運転とし、無い場合には冷却塔を高濃縮運転する手段と
を有する冷却塔の運転管理装置。
【0014】
[8] 前記水回収設備を高負荷運転しているときに、前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる手段を有する[7]の冷却塔の運転管理装置。
【0015】
[9] 前記ノンブロー運転又は前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する手段を有する[7]の冷却塔の運転管理装置。
【0016】
[10] 前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水をpH調整する、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う手段を有する[7]の冷却塔の運転管理装置。
【0017】
[11] 前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、前記ノンブロー運転を行う手段を有する[7]の冷却塔の運転管理装置。
【0018】
[12] 前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、非常用水槽を追加設置するか、又は非常用水槽から貯水の一部を搬出する手段を有する[7]の冷却塔の運転管理装置。
【0019】
[13] 排水を排水設備に排出する冷却塔の運転管理プログラムであって、
該排水設備の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、非常用水槽の設置可否を判断するステップと、
非常用水槽が設置不可の場合に、冷却塔をノンブロー運転に切り替えるステップと、
非常用水槽が設置可能な場合に、水回収設備の有無を判断するステップと、
水回収設備が有る場合には水回収設備を高負荷運転とし、無い場合には冷却塔を高濃縮運転するステップと
をコンピューターに実行させる冷却塔の運転管理プログラム。
【0020】
[14] 前記水回収設備を高負荷運転しているときに、前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させるステップを有する[13]の冷却塔の運転管理プログラム。
【0021】
[15] 前記ノンブロー運転しているとき又は前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加するステップを有する[13]の冷却塔の運転管理プログラム。
【0022】
[16] 前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水をpH調整する、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行うステップを有する[13]の冷却塔の運転管理プログラム。
【0023】
[17] 前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、前記ノンブロー運転を行うステップを有する[13]の冷却塔の運転管理プログラム。
【0024】
[18] 前記非常用水槽が設置可能な場合、非常用水槽を設置して運転を行い、該非常用水槽の貯水量が限界量に達したときに、非常用水槽を追加設置するか、又は非常用水槽から貯水の一部を搬出するステップを有する[13]の冷却塔の運転管理プログラム。
【0025】
[19] 給水設備からの水を補給水として使用する冷却塔の運転管理方法であって、
該給水設備の一部又は全体の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、代替水源の有無を判断し、
代替水源が有る場合に補給水の少なくとも一部として代替水源を使用し、
代替水源の水質が基準範囲内であるか判断し、基準範囲外であるときには冷却塔の運転条件を調整し、
代替水源が無い場合に少なくとも一部の給水源を予備ダンクに切り替え、
水回収設備の有無を判断し、
水回収設備が有る場合、水回収設備を高負荷運転とし、
水回収設備が無い場合、冷却塔をノンブロー運転又は高濃縮運転に切り替える
冷却塔の運転管理方法。
【0026】
[20] 前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる、[19]の運転管理方法。
【0027】
[21] 前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する、[19]の運転管理方法。
【0028】
[22] 前記ノンブロー運転又は高濃縮運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水のpH調整、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う[19]の運転管理方法。
【0029】
[23] 給水設備からの水を補給水として使用する冷却塔の運転管理装置であって、
該給水設備の一部又は全体の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、代替水源の有無を判断し、
代替水源が有る場合に補給水の少なくとも一部として代替水源を使用する手段と、
代替水源の水質が基準範囲内であるか判断し、基準範囲外であるときには冷却塔の運転条件を調整する手段と、
代替水源が無い場合に少なくとも一部の給水源を予備ダンクに切り替える手段と、
水回収設備の有無を判断する手段と、
水回収設備が有る場合、水回収設備を高負荷運転とする手段と、
水回収設備が無い場合、冷却塔をノンブロー運転又は高濃縮運転に切り替える手段と
を有する冷却塔の運転管理装置。
【0030】
[24] 前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に水回収設備の運転負荷を低減させる手段を有する[23]の運転管理装置。
【0031】
[25] 前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合にスケール防止剤の添加量を増加する手段を有する[23]の運転管理装置。
【0032】
[26] 前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水のpH調整、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行う手段を有する[23]の運転管理装置。
【0033】
[27] 給水設備からの水を補給水として使用する冷却塔の運転管理プログラムであって、
該給水設備の一部又は全体の使用が不可となったとき又は不可になると予測されるときに、代替水源の有無を判断するステップと、
代替水源が有る場合に補給水の少なくとも一部として代替水源を使用するステップと、
代替水源の水質が基準範囲内であるか判断し、基準範囲外であるときには冷却塔の運転条件を調整するステップと、
代替水源が無い場合に少なくとも一部の給水源を予備ダンクに切り替えるステップと、
水回収設備の有無を判断するステップと、
水回収設備が有る場合、水回収設備を高負荷運転とするステップと、
水回収設備が無い場合、冷却塔をノンブロー運転又は高濃縮運転に切り替えるステップとをコンピューターに実行させる冷却塔の運転管理プログラム。
【0034】
[28] 前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに前記水回収設備が所定の運転条件を逸脱した場合に設備の運転負荷を低減させるステップを有する[27]の運転管理プログラム。
【0035】
[29] 前記予備タンクを使用し、かつ前記水回収設備を高負荷運転しているときに、冷却塔の水質条件が所定の範囲を逸脱した場合に薬剤を高濃度添加するステップを有する[27]の運転管理プログラム。
【0036】
[30] 前記ノンブロー運転を行っているときに、LTD及び/又は、熱交換器の出口及び/又は入口温度、及び/又は冷却水ポンプ差圧の上昇を確認した場合に、冷却水のpH調整、スケール防止剤の添加量増加、又は別のスケール防止剤の追加添加を行うステップを有する[27]の運転管理プログラム。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、災害等によって上下水道や下水道に障害が生じた場合でも、障害が解消するまで冷却塔の運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】冷却塔設備の構成図である。
図2】冷却塔設備の構成図である。
図3】冷却塔設備の構成図である。
図4】冷却塔設備の構成図である。
図5】冷却塔設備の構成図である。
図6】実施の形態を示すフローチャートである。
図7】実施の形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0040】
図1は本発明の実施の形態が適用される冷却塔設備のフローを示したものである。
【0041】
冷却塔1の散水装置2からは冷凍機などの熱交換器12で昇温した冷却水(循環戻水)が充填材3に散水され、ファン5の駆動による取入れ外気と気液接触して冷却され、ピットすなわち下部水槽4に溜まる。下部水槽4内の冷却水は循環ポンプ10、循環往管11及び循環戻管13によって熱交換器12に循環される。
【0042】
冷却塔1における蒸発量及び飛沫の飛散損失量並びにブローライン7のブロー弁8からのブロー水量に見合う量の新たな水を補給水管路9から補給する。なお、どのように蒸発量や飛沫の飛散損失量が変動し、またブローが適宜行われたとしても、冷却塔の下部水槽4の水面を一定とするように補給水が供給され、冷却水系の水量はほぼ一定に保持される。この水面制御はボールタップ弁14等を用いて自動的に行われる。なお、ブローは冷却水系の水質が劣化(例えば電気伝導率が所定値以上に増加)した際に適宜行われる。
【0043】
ブロー排水は排水設備に送水される。
【0044】
補給水管路9に、スライム防止剤やスケール防止剤、酸、アルカリなどの薬剤を添加するための薬注装置15が設けられている。薬注装置は、薬注制御装置16によって制御される。
【0045】
〔排水設備の使用が不可となった場合又は不可になると予測される場合〕
災害等によって排水設備が使用できなくなった場合又は不可になると予測される場合、ブロー排水を排水設備に排出することができなくなる。
【0046】
そこで、排水設備が使用できなくなった場合又は不可になると予測される場合には、図6のステップS1のように、非常用水槽を設置可能か(すなわち、非常用水槽の設置スペースがあり、非常用水槽が入手可能か)判断する。
【0047】
<ノンブロー運転>
非常用水槽を設置できないと判断されるときには、ノンブロー運転を行う(ステップS2)。ノンブロー運転では、ブロー弁8を開弁せずに冷却塔の運転を継続する。
【0048】
ノンブロー運転の開始当初にあっては、冷却水の濃縮倍率が低い(例えば、冷却水の電気伝導率が規定値よりも低い)ので、平常時と同様に運転が行われる。ノンブロー運転を行いながら、濃縮倍率(電気伝導率)を測定し、監視する(ステップS3)。
【0049】
ノンブロー運転を継続すると、冷却水の濃縮倍率が次第に高くなり、規定値を上回るようになる。平常時であれば、ブローを行って濃縮倍率を規定値以下とするのであるが、排水設備を使用できず、ブローを行うことができないので、ステップS4に進み、スケール防止剤の薬注量を平常時の添加量よりも多くし、ブローを行わなくてもスケール析出が防止されるようにする。スケール防止剤としては、特に制限はなく使用することができる。例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸と共重合可能なビニルモノマーとの共重合体、ポリマレイン酸、マレイン酸や無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーとの共重合体、ポリイタコン酸、イタコン酸と共重合可能なビニルモノマーとの共重合体等の有機ポリマー、ニトリロトリメチレンホスホン酸やヒドロキシエチリデンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸やヘキサメタリン酸ソーダ等のりん系化合物等を用いることができる。
【0050】
このように濃縮倍率が高い高濃縮運転を継続しながら熱交換器12のLTD又は出入口水温、冷却水ポンプの差圧などを監視する(ステップS5)。LTDが所定値より大きくなったり、出入口水温が所定温度より高くなったり、ポンプの差圧が高くなるなど、冷却水の温度条件やポンプの状態が正常値ではないようになり、熱交換器12の冷水流路にスケール析出が生じているものと認められるときには、ステップS6に進み、補給水又は冷却水に酸を添加し、冷却水のpHを6.0~7.0程度に低下させ、スケールを溶解させる。排水設備が復旧するまでこの状態を維持する。
【0051】
なお、図6のように、ノンブロー運転の開始当初には、ステップS3、ステップS7を循環する制御が実行されている。ステップS7では、前記ステップS5と同様にLTD等の冷却水温度条件を判断し、正常値であるときにはステップS3に戻る。冷却水温度条件が非正常値となったときには、ステップS7からステップS6に進み、酸添加を行う。
【0052】
上記の運転の途中で排水設備が復旧したときには、平常運転に復帰する。
【0053】
[非常用水槽の設置が可能な場合]
ステップS1において、非常用水槽の設置が可能であると判断される場合は、ステップS10に進み、水回収設備(逆浸透(RO)装置)が存在するか判断する。水回収設備が存在する冷却塔設備にあっては、平常時でも、ブロー水を水回収設備に導入してRO処理し、RO透過水を補給水として再利用し、濃縮水のみを排水設備に排出することがある。
【0054】
なお、このステップ10の前又は後、もしくはそれ以降のステップの途中において適宜非常用水槽を設置する。
【0055】
<水回収設備がある場合>
水回収設備が図2のように存在すると判断されるときには、ステップ10からステップS11に進み、水回収設備のRO装置21における透過水採取量を多くする高負荷運転を行う。すなわち、水回収設備での水回収率を高くし、濃縮水を減少させる運転を行い、この濃縮水を非常用水槽22に排出し、この状態を維持する。また、この状態で、RO装置21の差圧を検出し、監視する(ステップS12)。
【0056】
RO装置21を高濃縮運転すると、RO膜の差圧が次第に高くなってくる。差圧が上昇して基準外となった場合は、RO給水にスケール分散剤や酸を添加するか、又はRO装置の回収率を低下させる(ステップS13)。なお、差圧を監視する代わりに流量や導電率などRO膜の性能低下がわかる他の指標で管理するようにしても良い。
【0057】
排水設備が復旧する前に非常用水槽22が満杯になりそうなときは、追加の非常用水槽を設置するか、又は非常用水槽22から少なくとも一部の水をバキュームカー等で搬出する。
【0058】
これらの対策を取れないときには、前述のノンブロー運転(ステップS2)に移行する。
【0059】
<水回収設備がない場合>
水回収設備が存在しない場合(例えば、図3)には、ステップS10からステップS14に進み、ブロー水量を少なくするように冷却塔設備を高濃縮運転する。すなわち、冷却水をブローする基準となる濃縮倍率(電気伝導率)の基準値を高くして運転を継続し、冷却水の水質を監視する(ステップS15)。
【0060】
この高濃縮運転を行っていると、次第に電気伝導率が高くなってくるので、電気伝導率が所定値を超えたときにはステップS15からステップS16に進み、スケール防止剤の添加量を多くする。
【0061】
この高濃縮運転では、ブロー水を非常用水槽に排出するが、ブロー水量が平常時よりも少ないので、非常用水槽に長期にわたって排出することができる。
【0062】
ただし、排水設備が復旧する前に非常用水槽22が満杯になりそうなときは、追加の非常用水槽を設置するか、又は非常用水槽22から少なくとも一部の水をバキュームカー等で搬出する。
【0063】
これらの対策を取れないときには、前述のノンブロー運転(ステップS2)に移行する。
【0064】
[上水又は工水(工業用水)設備の使用が不可となった場合又は不可になると予測される場合]
上水又は工水(工業用水)設備の使用が不可となった場合又は不可になると予測される場合、図7の通り、ステップS21にて、代替水源(地下水、雨水、河川水又は海水の改質水)の利用が可能か判断する。
【0065】
<代替水源を利用した運転>
代替水源の利用が可能と判断される場合は、ステップS22に進み、補給水の水源を代替水源に切り替える。次いでステップS23に進み、代替水源の水質が基準範囲内か否か判断する。代替水源の水質が基準範囲内であれば、代替水源を補給水として用いる(図4)。
【0066】
代替水源の水質が基準範囲外であるときには、ステップS24に進み、冷却水の濃縮倍率を調整する運転を行うか、又はスケール防止剤の薬注量を多くする。この状態で上水又は工水(工業用水)設備の復旧を待つ。
【0067】
<代替水源の利用ができない場合の運転>
代替水源を利用できないときには、ステップS21からステップS25に進み、図5のように予備タンク23内の水を補給水として用いる。
【0068】
ステップS25からステップS26に進み、水回収設備の有無を判断する。
【0069】
<水回収設備がない場合:予備タンクを用いたノンブロー運転>
ステップ26において、水回収設備が無いと判断されるときには、ステップS27に進み、冷却水の水質が基準外であるか基準内(例えば、冷却水の電気伝導率が規定値よりも低い)か判断する。基準内であるときには、ステップS28に進み、ノンブロー運転を行う。ノンブロー運転では、ブロー弁8を開弁せずに冷却塔の運転を継続する。
【0070】
ノンブロー運転を行いながら、熱交換器12のLTD又は出入口水温や冷却水ポンプの差圧などを監視する(ステップS29)。熱交換器12のLTDが所定値より大きくなったり、出入口水温が所定温度より高くなったり、ポンプの差圧が高くなるなど、冷却水の温度条件やポンプの状態が正常値ではないようになり、熱交換器12にスケール析出が生じているものと認められるときには、ステップS32に進み、補給水又は冷却水に酸を添加し、冷却水のpHを6.0~7.0程度に低下させ、スケールを溶解させる。上水又は工水設備が復旧するまでこの状態を維持する。
【0071】
ステップS27で冷却水の水質が基準外となった場合には、ステップS30に進み、スケール防止剤の薬注量を平常時の添加量よりも多くし、ブローを行わなくてもスケール析出が防止されるようにする。
【0072】
このように濃縮倍率が高い高濃縮運転を継続しながら熱交換器12のLTD又は出入口水温や冷却水ポンプの差圧などを監視する(ステップS31)。熱交換器12のLTDが所定値より大きくなったり、出入口水温が所定温度より高くなったり、ポンプの差圧が高くなるなど、冷却水の温度条件やポンプの状態が正常値ではないようになり、熱交換器12にスケール析出が生じているものと認められるときには、ステップS32に進み、補給水又は冷却水に酸を添加し、冷却水のpHを6.0~7.0程度に低下させ、スケールを溶解させる。上水又は工水設備が復旧するまでこの状態を維持する。
【0073】
上記の運転の途中で排水設備が復旧したときには、平常運転に復帰する。
【0074】
<水回収設備がある場合:予備タンクを用いた水回収設備高負荷運転>
予備タンク23を利用する場合であって、水回収設備が図5のように存在すると判断されるときには、ステップ26からステップS33に進み、水回収設備のRO装置21における透過水採取量を多くする高負荷運転を行う。すなわち、水回収設備での水回収率を高くし、透過水を予備タンク23に送水する運転を行う。そして、この状態で、RO装置21の差圧を検出し、監視する(ステップS34)。
【0075】
なお、RO装置21を高濃縮運転すると、RO膜の差圧が次第に高くなってくる。差圧が基準外となった場合は、RO給水にスケール分散剤や酸を添加するか、又はRO装置の回収率を低下させる(ステップS35)。なお、差圧を監視する代わりに流量や導電率などRO膜の性能低下がわかる他の指標で管理するようにしても良い。
【0076】
上記の運転途中で上水又は工水設備が復旧した場合には、平常運転に復帰する。
【符号の説明】
【0077】
1 冷却塔
2 散水装置
3 充填材
4 下部水槽
5 ファン
9 補給水管路
12 熱交換器
15 薬注装置
16 制御装置
21 RO装置
22 非常用水槽
23 予備タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7