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特開2023-137796液体組成物、導電膜、電子モジュール、及び電子モジュールの製造方法
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  • 特開-液体組成物、導電膜、電子モジュール、及び電子モジュールの製造方法 図1
  • 特開-液体組成物、導電膜、電子モジュール、及び電子モジュールの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137796
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】液体組成物、導電膜、電子モジュール、及び電子モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/14 20060101AFI20230922BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20230922BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20230922BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20230922BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H05K3/14
C09D11/52
C09D11/30
H05K9/00 Q
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044170
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】福田 智男
(72)【発明者】
【氏名】若林 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘司
(72)【発明者】
【氏名】志連 陽平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平塚 弘行
(72)【発明者】
【氏名】田村 麻人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】中森 英雄
【テーマコード(参考)】
2H186
4J039
5E321
5E343
【Fターム(参考)】
2H186FB01
2H186FB15
2H186FB20
2H186FB48
2H186FB56
4J039BA13
4J039BA20
4J039BA32
4J039BA33
4J039BA39
4J039BE23
4J039CA07
4J039EA24
4J039EA46
4J039FA07
4J039GA16
4J039GA24
5E321AA21
5E321BB35
5E321BB53
5E321GG05
5E343AA02
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343DD02
5E343DD15
5E343ER32
5E343FF02
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】電子部品の側面に導電膜を形成する際に、優れた吐出性を有し、かつ、たれが生じることなく良好な塗膜を形成することができる液体組成物の提供。
【解決手段】導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含み、剪断速度が1sec-1で剪断したときの25℃における粘度が100mPa・s以上であり、剪断速度が100sec-1で剪断したときの25℃における粘度が20mPa・s以上である液体組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含み、
剪断速度が1sec-1で剪断したときの25℃における粘度が100mPa・s以上であり、剪断速度が100sec-1で剪断したときの25℃における粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
前記レオロジーコントロール剤が層状粘土鉱物である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記レオロジーコントロール剤の含有量が、前記液体組成物に対して、3重量部以上5重量部以下である、請求項1から2のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項4】
導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含むことを特徴とする導電膜。
【請求項5】
導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含む導電膜を有する電子モジュール。
【請求項6】
前記導電膜の抵抗値が1mΩ・cm以下である、請求項5に記載の電子モジュール。
【請求項7】
請求項1から3に記載の液体組成物をインクジェット法により塗工して電磁波シールド膜を形成することを特徴とする電子モジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項1から3に記載の液体組成物の粘度が25℃で20mPa・s以下となるように前記液体組成物に剪断力を加えてインクジェット法により塗工する、請求項7に記載の電子モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物、導電膜、電子モジュール、及び電子モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板では、高集積化及び高速化に伴い電磁波ノイズが問題となっており、ノイズを抑制するための様々な方法が検討されている。例えば、シールドフィルム、金属シールド缶、導電性塗料、メッキ等を施したカバーなどの導電体又は電磁波吸収体で覆う技術が開示されている。
また、省スペース、軽量化、及び生産性を向上させるためにスパッタ等のドライ成膜による電磁波シールド又は導電性塗料を直接電子部品に塗布する電磁波シールドが知られている。
【0003】
しかし、今までのドライ成膜法を利用した成膜では真空下での成膜のためランニングコスト、材料利用効率が悪く、また、コストが高くなってしまうという問題があった。
一方、導電性塗料を塗布する成膜方法において、電子部品などの立体構造物に対して側面への被覆が十分でないという課題がある。
従来の導電性塗料としては、任意の場所に印刷でき、材料利用効率が高く、ランニングコストが低いインクジェットでの成膜方法を提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、スプレー塗布によって高粘度のインクを塗布する方法が提案されている。高粘度インクのため塗布したのちは粘度が高く側面でも垂れない膜が形成できる(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電子部品の側面に導電膜を形成する際に、優れた吐出性を有し、かつ、たれが生じることなく良好な塗膜を形成することができる液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物は、導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含み、
剪断速度が1sec-1で剪断したときの25℃における粘度が100mPa・s以上であり、剪断速度が100sec-1で剪断したときの25℃における粘度が20mPa・s以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、電子部品の側面に導電膜を形成する際に、優れた吐出性を有し、かつ、たれが生じることなく良好な塗膜を形成することができる液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、レオロジーコントロール剤を含まない液体組成物を基材に塗工したときの塗膜の一例を示す概略図である。
図2図2は、レオロジーコントロール剤を含む本発明の液体組成物を基材に塗工したときの塗膜の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤とを含み、更に必要に応じて、溶媒、結着剤などを含むことが好ましい。
また、本発明の液体組成物は、剪断速度が1sec-1で剪断したときの25℃における粘度が100mPa・s以上であり、剪断速度が100sec-1で剪断したときの25℃における粘度が20mPa・s以下である。
前記液体組成物の粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、JIS Z 8803に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)などが挙げられる。
【0009】
特許文献1(特開2021-72438号公報)に記載のインクは、インクジェットのインクは粘度が低く、側面への印刷では重力により垂れてしまい、側面上部と下部で膜厚勾配ができてしまう。特に上部角は薄くなり上面部との導通が途切れてしまう問題があった。
また、特許文献2(特開2020-139019号公報)に記載のインクは、スプレー塗布はマスクなどで不要部を覆い、全体に塗料を吹き付けるため材料利用効率が悪く、コストが増加するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明の液体組成物は、導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤とを含むことで、剪断速度が1sec-1で剪断したときの25℃における粘度が100mPa・s以上であり、剪断速度が100sec-1で剪断したときの25℃における粘度が20mPa・s以下となる(即ち、剪断力が加わっているときは粘度が低くなり、剪断力が加わっていないときは粘度が高くなる)ため、インクを機材へ印刷するためにインクを吐出する際には粘度が低下するため吐出性が高くなり、一方で、インクが印刷された後は、粘度が高くなるため、インクのたれや流動が抑制されて形状を維持できることを知見した。
【0011】
図1は、レオロジーコントロール剤を含まない液体組成物を基材に塗工したときの塗膜の概略図であり、図2は、レオロジーコントロール剤を含む本発明の液体組成物を基材に塗工したときの塗膜の概略図である。立体物の側面への印刷では、印刷した後に液体組成物の粘度が低い場合は、図1のように液体組成物のたれが起きる。一方で、図2に示すように、印刷した後の液体組成物の粘度が高い場合は、たれが起きない。
インクジェット印刷では、吐出性の観点から液体組成物の吐出の際に粘度が低い必要があり、一般的なニュートン流体のインクは印刷後の粘度が低いままなので、垂れが起きるという問題がある。
これに対して、本発明の液体組成物は、印刷後の液体組成物の粘度が高くなるため、たれを抑制することができる。
また粘度以外に、UV硬化樹脂を添加し即時硬化する方法が考えられるが、本発明における導電性粒子が着色されている場合は、UV光を通さないため用いることができない。
【0012】
<導電性ナノ粒子及び金属錯体>
前記導電性ナノ粒子及び金属錯体としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属粒子、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン等のカーボン性物質、ITO、ATO、Ab等の導電性酸化物などが挙げられる。これらの中でも、シールド特性の観点から、銀及びITOが好ましい。
【0013】
前記導電性ナノ粒子の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上1,000nm以下が好ましく、5nm以上500nm以下がより好ましい。
前記導電性ナノ粒子及び金属錯体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体組成物の全量に対して、5質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上60質量%以下がより好ましい。前記導電性ナノ粒子及び金属錯体の含有量が5質量%以上であると、導電性が向上する。これは、塗膜後ナノ粒子の粒子間距離が近づき、レオロジーコントロール剤が存在しても導電性が得られるためであると考えられる。前記導電性ナノ粒子及び金属錯体の含有量が80質量%以下であると、膜均一性が向上する。これは、前記液体組成物の流動性が高まるためであると考えられる。
【0014】
<レオロジーコントロール剤>
前記レオロジーコントロール剤とは、剪断力を加えた場合は粘度が下がり、剪断力を加えていない場合は粘度が上がる物質である。前記レオロジーコントロール剤を含有することで、液体組成物がチクソ性を有し、インクを機材へ印刷するためにインクを吐出する際には粘度が低下するため吐出が可能になり、一方で、インクが印刷された後は、粘度が高くなるため、インクのたれや流動が抑制されて形状を維持できる。
【0015】
前記レオロジーコントロール剤としては、剪断力を加えた場合は粘度が下がり、剪断力を加えていない場合は粘度が上がる公知の物質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、層状粘度鉱物、変性ウレア、アマイドワックス、ひまし油、シリカ粒子などが挙げられる。これらの中でも、層状粘度鉱物が好ましい。
【0016】
前記層状粘度鉱物としては、例えば、蛇紋石-カオリン族、タルクーパイロフィライト族、スメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族、脆雲母族、緑泥石族、混合層鉱物などが挙げられる。
前記層状粘度鉱物としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、クニピアーF、クニピアーG、クニピアーG4、スメクトンーSA、スメクトンーSWN、スメクトンーSWF、クニビスー110、クニビス-127、モイストナイトーQO、スメクトンーSA、スメクトンーSTN、スメクトンーSEN(クニミネ工業社)、CLAYTONE-3、CLAYTONE-34、CLAYTONE-40、CLAYTONE-AF、CLAYTONE-APA、CLAYTONE-EM、CLAYTONE-ER、CLAYTONE-HT、CLAYTONE-HY、CLAYTONE-II、CLAYTONE-IMG400、CLAYTONE-MPZ、CLAYTONE-PS3、CLAYTONE-SF、CLAYTONE-VP V、CLAYTONE-VZ(ビックケミージャパン)などが挙げられる。
【0017】
前記レオロジーコントロール剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体組成物の全量に対して、3重量部以上5重量部以下が好ましい。前記レオロジーコントロール剤の含有量が、前記液体組成物の全量に対して3重量部以上であると、膜均一性が向上する。また、前記レオロジーコントロール剤の含有量が、前記液体組成物の全量に対して5重量部以下であると、吐出性が向上する。なお、前記液体組成物を吐出する際のノズルに備えられているポンプの循環条件によっては、前記液体組成物が、レオロジーコントロール剤を5重量部以上含むことができる。
【0018】
<有機溶媒>
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、ブタノール等のアルコール類、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸ブチル、γ-ブチルラクトン等のエステル類などが挙げられる。
前記有機溶媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体組成物の全量に対して、20質量%以上95質量%以下が好ましく、40質量%以上90質量%以下がより好ましい。前記含有量が20質量%以上95質量%以下であると、流動性が確保され、インク吐出性が良好になる。
【0019】
<液体組成物の製造方法>
液体組成物は、上記各成分を上記有機溶剤中に溶解又は分散させることにより製造することができる。
具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と上記有機溶媒とを混合することにより、液体組成物を調製することができる。
【0020】
<結着剤>
前記結着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、オレフィン樹脂などが挙げられる。
【0021】
(導電膜)
本発明の導電膜は、導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含む。
前記導電性ナノ粒子、金属錯体、及びレオロジーコントロール剤としては、前記液体組成物と同じものを用いることができる。
【0022】
前記導電膜の膜厚としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レオロジーコントロール剤として金属粒子を用いるときは0.05μm以上50μm以下が好ましく、レオロジーコントロール剤としてカーボン性物質を用いる場合は1μm以上300μm以下が好ましい。
【0023】
前記導電膜の体積抵抗率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mΩ・cm以下が好ましく、0.1mΩ・cm以下がより好ましい。
【0024】
前記導電膜の製造方法としては、本発明の液体組成物を基材上に塗工することで形成することができる。
前記塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、ディスペンスコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット印刷法が好ましい。
特に、インクジェット印刷法での印刷では微細な場所へ多彩なパターンがオンデマンドで印刷が可能であり、電子部品又は電子モジュールへの印刷において材料効率が高く、様々なパターンに対応できる点で好ましい。
また、インクジェット印刷法ではヘッド内でのインクの停滞を防止するためにフロースルーヘッドと組み合わせることができる。フロースルーヘッドは、液体組成物が吐出ヘッド内を循環する構造になっている。その際に液体組成物はヘッド内にて剪断速度が加わるように流動させることで粘度を低下させ、インクの吐出が可能になる。
【0025】
前記フロースルーヘッドとしては、市販品を用いることができ、例えば、株式会社リコー製のMH5421Fなどを用いることができる。
【0026】
前記導電膜としては、表面処理層を形成することができる。
前記表面処理層は膜表面の濡れ性または表面エネルギーを調整する層として形成され、表面に親水性基または疎水性基を有する樹脂膜として形成される。
前記表面処理層の材料としては、樹脂構造中にカルボキシル基、アミノ基、ケト基、OH基、フッ素基、シラノール基などを有する材料を用いることができる。さらに、セラミック(SiO,Al,AlN,BNなど)、金属(Ag,Cu,Au,Alなど)、カーボンなどの無機粒子を混合することもできる。
前記表面処理層の厚さとしては、0.5μm以上10μm以下が好ましい。
表面処理層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、少なくとも反応基を有する有機モノマー材料及び開始剤を混合した樹脂材料や無機材料を混合したものを塗工し、UV照射、熱処理、脱水処理等の硬化処理を行うことにより形成することができる。
塗工方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、ディスペンスコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷法を用いることができる。
【0027】
前記導電膜としては、表面保護層を形成することができる。
前記表面保護層は、主に樹脂材料で形成される。
前記樹脂材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、これらに無機粒子を添加した材料などが挙げられる。
前記無機粒子としては、高温状態となった時の熱膨張を抑制する機能の付与としてSiO,Al,AlN,BNなどセラミック材料を用いることができる。
硬化樹脂材料の具体例としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、エステル系樹脂、ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、フッ素系樹脂、これらの複数種の混合物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性良好である点から、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂が好ましく、硬化収縮が小さい点から、エポキシ系樹脂がより好ましい。
また、表面保護層の材料としては、市販品を用いることができ、例えば、IJSR4000,IJSR9000:太陽インク社、PR1205:互応化学社、PA1210:JNC社などのインク材料が挙げられる。
【実施例0028】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
導電インクとしてのAgナノ粒子(FlowMetal SR7000、バンドー化学株式会社製、Agナノ粒子含有量50質量%)100重量部、レオロジーコントロール剤(スメクトン-SEN:クニミネ工業社)3重量部を混合し、ローラーミル(50rpm)にて3時間混合した。その後、2.5μmフィルターにて粗大粒子を取り除き、液体組成物を得た。得られた液体組成物を粘度計にて剪断速度を変えながら粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で210mPa・s、剪断速度が100sec-1で11mPa・sであった。
また、得られた液体組成物の体積抵抗値をロレスタGP(ダイヤインスツルメンツ製)を用いて測定し、シールド特性をWM7300 EMC NOISE SCANNER1(森田テック株式会社製)を用いて測定したところ、体積抵抗値が80μΩ・cmであり、シールド特性は48dBであった。
【0030】
(実施例2)
実施例1において、Agナノ粒子を、Ag錯体(TEC-IJ-010:InkTec社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして液体組成物を得た。実施例1と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で180mPa・s、剪断速度が100sec-1で10mPa・sであった。
また、得られた液体組成物の体積抵抗値とシールド特性を、実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗値が75μΩ・cmであり、シールド特性は45dBであった。
【0031】
(実施例3)
実施例1において、レオロジーコントロール剤の含有量を、3重量部から5重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして液体組成物を得た。実施例1と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で330mPa・s、剪断速度が100sec-1で18mPa・sであった。
また、得られた液体組成物の体積抵抗値とシールド特性を、実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗値が200μΩ・cmであり、シールド特性は40dBであった。
【0032】
(実施例4)
実施例1において、Agナノ粒子を、ITOナノインク(シグマアルドリッチ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして液体組成物を得た。実施例1と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で200mPa・s、剪断速度が100sec-1で10mPa・sであった。
また、得られた液体組成物の体積抵抗値とシールド特性を、実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗値が980μΩ・cmであり、シールド特性は30dBであった。
【0033】
(実施例5)
実施例1において、レオロジーコントロール剤を、スメクトン-SEN3重量部から変性ウレア(RHEOBYK-410:ビックケミー・ジャパン社製)5重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして液体組成物を得た。実施例1と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で180mPa・s、剪断速度が100sec-1で15mPa・sであった。
また、得られた液体組成物の体積抵抗値とシールド特性を、実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗値が230μΩ・cmであり、シールド特性は35dBであった。
【0034】
(実施例6)
実施例4において、レオロジーコントロール剤の含有量を、3重量部から5重量部に変更した以外は、実施例4と同様にして液体組成物を得た。実施例4と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で350mPa・s、剪断速度が100sec-1で20mPa・sであった。
また、得られた液体組成物の体積抵抗値とシールド特性を、実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗値が1,300μΩ・cmであり、シールド特性は20dBであった。
【0035】
(比較例1)
実施例1において、レオロジーコントロール剤の含有量を10重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1を作製した。実施例1と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で1,200mPa・s、剪断速度が100sec-1で60mPa・sであった。
また、インクジェット法での吐出を試みたが、吐出できなかった。
【0036】
(比較例2)
実施例1において、レオロジーコントロール剤の含有量を、3重量部から6重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして液体組成物を得た。実施例1と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で500mPa・s、剪断速度が100sec-1で24mPa・sであった。
また、インクジェット法での吐出を試みたが、吐出できなかった。
【0037】
(比較例3)
実施例1において、レオロジーコントロール剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして液体組成物を得た。実施例1と同様に粘度を測定したところ、剪断速度が1sec-1で5.6mPa・s、剪断速度が100sec-1で5.0mPa・sであった。
また、得られた液体組成物の体積抵抗値とシールド特性を、実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗値が8μΩ・cmであり、シールド特性は28dBであった。
【0038】
実施例1~6及び比較例1~3について、吐出性及び膜均一性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
<吐出性>
実施例1~6及び比較例1~3の液体組成物を、インクジェットヘッド(MH5421F、リコー株式会社製)とポンプ(CIMS HFR、Megnajet社製)を備えたインクジェット記録装置に装填し、450ml/minの循環条件にて液体組成物の循環を行いながら、インクジェットヘッドを45度に傾けて、導電膜の厚さが5μmとなるように液体組成物を塗布して導電膜を形成した。このときの吐出性について、下記評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
○:吐出可能
×:吐出不可
【0040】
<膜均一性>
実施例1~6及び比較例1~3の液体組成物を用いて、上記<吐出性>に記載の方法と同様にして導電膜を形成し、膜均一性を断面SEMにより膜厚を計測し、上面の膜厚の減少量から下記評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
膜均一性が良好であると、たれが生じていない良好な塗膜が形成されている。
[評価基準]
〇: 膜均一性良好(上面膜厚からの減少量10%未満)
×: 膜均一性不良(上面膜厚からの減少量10%以上)
【0041】
【表1】
【0042】
本発明の態様としては、以下のとおりである。
<1> 導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含み、
剪断速度が1sec-1で剪断したときの25℃における粘度が100mPa・s以上であり、剪断速度が100sec-1で剪断したときの25℃における粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする液体組成物である。
<2> 前記レオロジーコントロール剤が層状粘土鉱物である、前記<1>に記載の液体組成物である。
<3> 前記レオロジーコントロール剤の含有量が、前記液体組成物に対して、3重量部以上5重量部以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体組成物である。
<4> 導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含むことを特徴とする導電膜である。
<5> 導電性ナノ粒子及び金属錯体の少なくともいずれかと、レオロジーコントロール剤と、を含む導電膜を有する電子モジュールである。
<6> 前記導電膜の抵抗値が1mΩ・cm以下である、前記<5>に記載の電子モジュールである。
<7> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体組成物をインクジェット法により塗工して電磁波シールド膜を形成することを特徴とする電子モジュールの製造方法である。
<8> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体組成物の粘度が25℃で20mPa・s以下となるように前記液体組成物に剪断力を加えてインクジェット法により塗工する、前記<7>に記載の電子モジュールの製造方法である。
【0043】
前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体組成物、前記<4>に記載の導電膜、前記<5>に記載の電子モジュール、及び前記<7>から<8>のいずれかに記載の電子モジュールの製造方法によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2021-72438号公報
【特許文献2】特開2020-139019号公報
図1
図2