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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137851
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20230922BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20230922BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G15/20 510
G03G15/00 460
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044257
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
【テーマコード(参考)】
2H033
2H072
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BA10
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA29
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB12
2H033BE03
2H072JA06
2H270SA09
2H270SB12
2H270SB13
2H270SB15
2H270SB16
2H270SC14
(57)【要約】
【課題】定着処理後の記録媒体に対して、画像を荒らすことなく、迅速かつ効率的に冷却を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体Sに画像を形成する画像形成部と、記録媒体S上に担持された未定着画像を加熱定着させる定着装置200と、定着装置200を通過した記録媒体Sを搬送経路上で冷却する冷却装置100と、を備えた画像形成装置であって、冷却装置100は、定着装置200から送り出された記録媒体Sに対して、加圧挟持することなく当接する搬送ローラ部材80と、記録媒体Sの搬送経路を介して搬送ローラ部材80と対向して配置される搬送ガイド部材90と、搬送ローラ部材80へ向けて送風する送風手段95と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記記録媒体上に担持された未定着画像を加熱定着させる定着装置と、前記定着装置を通過した前記記録媒体を搬送経路上で冷却する冷却装置と、を備えた画像形成装置であって、
前記冷却装置は、
前記定着装置から送り出された前記記録媒体に対して、加圧挟持することなく当接する搬送ローラ部材と、
前記記録媒体の搬送経路を介して前記搬送ローラ部材と対向して配置される搬送ガイド部材と、
前記搬送ローラ部材へ向けて送風する送風手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送ローラ部材が、軸となる芯金の外周面にブラシ繊維を植毛したブラシローラであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ブラシローラの前記芯金の内部が中空であり、前記芯金の外周面に内部と連通する複数の通気孔を有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記送風手段が、前記ブラシローラの軸方向端部側から前記芯金の内部へ向けて送風することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ブラシローラの前記芯金の内周面と摺接し、一部の前記通気孔を閉塞して通気範囲を規制する規制部材を有することを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送ローラ部材を回転駆動する駆動手段を備え、
前記搬送ローラ部材が、前記記録媒体の搬送速度と同速度かそれ以上の速度で回転することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送ローラ部材が、前記記録媒体の搬送経路に沿って複数配設されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送ガイド部材が、前記記録媒体の画像が形成されていない非画像面側に配設される回転可能なガイドローラであることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ガイドローラの外径は、前記ブラシローラの外径よりも小さく、
前記記録媒体の搬送領域の外側において、前記ブラシローラと駆動伝達部材を介して駆動的に連結されていることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ガイドローラは、前記ブラシローラの前記ブラシ繊維と5mmよりも短い接触幅で当接するように配設されていることを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記ガイドローラは、前記ブラシローラと離間して配設されていることを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記搬送ガイド部材が、搬送される前記記録媒体のいずれか一方の面側に配設される板状のガイド板であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置では、電子写真記録・静電記録・磁気記録等の画像形成プロセスにより画像が形成され、画像転写方式又は直接方式により未定着トナー画像が記録媒体(例えば、用紙等)に形成される。未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、記録媒体に形成されたトナー像を、定着部材と加圧部材との間のニップ部において加熱及び加圧し、定着処理を実行するものが知られている。
【0003】
定着後の用紙は排紙ローラから排出され、排紙トレイに積載される。積載された用紙に定着時の熱が畜熱されていると、用紙上でトナーが溶融状態となり、隣接する用紙が溶融したトナーを媒介として貼りつくブロッキング現象(排紙接着)が発生することがある。
【0004】
このような問題に対し、搬送される用紙を冷却する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、トナー像が定着された定着用紙を冷却する冷却部としての冷却ローラが、本体部とコーティングにより形成された表面部とを含み、表面部の熱容量が、本体部の熱容量よりも低い画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、冷却ローラの表面部を用紙に圧接させることにより用紙の冷却が行われるが、用紙上の溶融状態のトナーに冷却ローラが圧接することで、画像が荒れてしまうおそれがある。
【0006】
また、冷却ローラと用紙との接触面積が小さく、充分な冷却が困難となるおそれがある。特に、生産速度が速くなったり連続プリント枚数が多くなったりする場合は、用紙の温度下げ幅を確保することができず、その結果としてブロッキング現象を有効に防止できないという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、定着処理後の記録媒体に対して、画像を荒らすことなく、迅速かつ効率的に冷却を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記記録媒体上に担持された未定着画像を加熱定着させる定着装置と、前記定着装置を通過した前記記録媒体を搬送経路上で冷却する冷却装置と、を備えた画像形成装置であって、前記冷却装置は、前記定着装置から送り出された前記記録媒体に対して、加圧挟持することなく当接する搬送ローラ部材と、前記記録媒体の搬送経路を介して前記搬送ローラ部材と対向して配置される搬送ガイド部材と、前記搬送ローラ部材へ向けて送風する送風手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、定着処理後の記録媒体に対して、画像を荒らすことなく、迅速かつ効率的に冷却を行うことができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の構成例を示す概略断面図である。
図3】第1の実施形態に係る画像形成装置の要部断面模式図である。
図4】第2の実施形態に係る画像形成装置の要部断面模式図である。
図5図4に示す構成の水平方向の断面模式図である。
図6】第3の実施形態に係る画像形成装置の要部断面模式図である。
図7】第4の実施形態に係る画像形成装置の要部断面模式図である。
図8】第5の実施形態に係る画像形成装置の要部断面模式図である。
図9】第6の実施形態に係る画像形成装置の要部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
[画像形成装置]
図1は、本発明の実施形態にかかる画像形成装置の概略構成を説明する図である。
図1に示した画像形成装置1は、複数の色画像を形成する画像形成部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式のカラープリンタある。なお、本発明はこの方式に限られず、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
【0013】
画像形成装置1は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
【0014】
画像形成装置1では、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、各感光体ドラムに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトである中間転写体(以下、「転写ベルト」という)11に対して1次転写される。この1次転写工程の実行によってそれぞれの色の画像が重畳転写され、その後、記録媒体(以下、単に「用紙」ともいう)Sに対して2次転写工程を実行することで一括転写される。
【0015】
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されている。ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを代表として説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像
装置40Bk、1次転写ローラ12Bkおよびクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込み光Lbを用いた書き込みには、光書き込み装置8が用いられる。
【0016】
転写ベルト11に対する重畳転写では、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写される。このために、転写は、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0017】
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0018】
画像形成装置1は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする2次転写ローラ5と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11をクリーニングするベルトクリーニング装置13と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置8とを有している。
【0019】
光書き込み装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏向手段としての回転多面鏡などを装備している。光書き込み装置8は、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lbを出射して感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに静電潜像を形成するよう構成されている。書き込み光Lbは、図1では、便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である。
【0020】
画像形成装置1には、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間に向けて搬送される記録媒体Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61が設けられている。また、シート給送装置61から搬送されてきた記録媒体Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラムと転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4が設けられている。また、記録媒体Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知するセンサが設けられている。
【0021】
画像形成装置1には、トナー像が転写された記録媒体Sにトナー像を定着させるための定着装置200と、定着装置を通過した記録媒体Sを搬送経路上で冷却する冷却装置100と、定着装置200の下流側に配設された搬送ローラ対6と、記録媒体Sを画像形成装置1の本体外部に排出する排出ローラ対7と、が備えられている。
【0022】
また、画像形成装置1の本体上部には、排出ローラ対7により画像形成装置1の本体外部に排出された記録媒体Sを積載する排紙トレイ17が備えられている。また、排紙トレイ17の下側には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkが備えられている。
【0023】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkの他に、転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkと、2次転写ローラ5と、クリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
【0024】
シート給送装置61は、画像形成装置1の本体下部に配設されており、最上位の記録媒体Sの上面に当接する給送ローラ3を有している。給送ローラ3が図中反時計回りに回転駆動されることにより、最上位の記録媒体Sをレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。
【0025】
転写装置71に装備されているクリーニング装置13は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。クリーニング装置13は、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
クリーニング装置13はまた、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段を有している。
【0026】
[定着装置]
図2は、本発明の画像形成装置に搭載される定着装置の一例を示す概略構成図である。
なお、本実施形態の画像形成装置に搭載される定着装置の方式は、以下に示すベルト定着方式に限定されず、ローラ定着方式であってもよい。
図2に示した定着装置200は、回動可能な無端ベルト状の定着部材(以下、「定着ベルト」ともいう)201と、定着部材201を加熱する熱源202と、定着部材201の内側に配置される非回転のニップ形成部材206と、定着部材201の熱移動を補助する熱移動補助部材216と、定着部材201の外側で、ニップ形成部材206と対向して配置され、該定着部材201との間にニップ部Nを形成する加圧部材(加圧ローラ)203と、を備え、未定着画像を担持した記録媒体Sをニップ部Nに通して定着を行う。
【0027】
定着ベルト201は、複数の熱源(ハロゲンヒータ)202A,202Bにより内周側から輻射熱で直接加熱される。
また、定着ベルト201の温度を検知するため、温度センサ230A,230Bが取り付けられ、非接触で定着ベルト201の温度を検知し、その検知温度によってそれぞれの熱源202A,202Bの点灯率を制御し、定着ベルト201の温度を所望の温度に制御している。すなわち、温度センサ230A,230Bによる検知温度がそれぞれ所定の検知目標温度となるように、制御手段がそれぞれの熱源202A,202Bの発熱(熱源への通電)を制御する。
以下、複数の熱源を区別しないときは、単に「熱源202」と表す。
【0028】
図2の定着ベルト201の内側には、加圧ローラ203に対向して配置されたニップ形成部材206と、ニップ形成部材206の定着ベルト201の内面に対向する面を覆う熱移動補助部材216と、ニップ形成部材206を加圧ローラ203からの加圧力に対抗して保持するステー部材207とを有している。
ニップ形成部材206は、定着ベルト201を介して加圧ローラ203との間でニップ部Nを形成し、定着ベルト内面と熱移動補助部材216を介して間接的に摺動するようになっている。ニップ部Nにトナー像が担持された記録媒体Sを通過させることにより記録媒体上のトナーを熱により溶融させ加圧により記録媒体に定着させる。
【0029】
熱移動補助部材216の定着ベルト201との接触面には、摩擦係数の低い摺動コーティングが施されている。摺動コーティングとしては、例えば、フッ素コーティングや、耐摩耗性の高いDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等のガラスコーティング等が挙げられる。
【0030】
また、熱移動補助部材216の定着ベルト201との接触面には潤滑剤が塗布される。潤滑剤としては、耐熱温度の高いフッ素グリスもしくはシリコーンオイルが適当である。フッ素グリスは基油となるフッ素オイルに増ちょう剤を分散させてゲル状にした潤滑剤であり、粘度がオイルより高いため摺動部からの流出対策として有効である。
【0031】
熱移動補助部材216は、熱が局所的に留まることを防止し、積極的に長手方向に熱を移動させて長手方向の温度不均一性を低減するために設けられている。
このため、熱移動補助部材216の材料としては、短時間で熱移動が可能な材料が好ましく、例えば、熱伝導率の高い銅、アルミニウム、銀等が挙げられる。これらのうち、コスト面、入手性、熱伝導率特性、加工性を総合的に考慮すると、銅が最も好ましい。
本実施形態では、熱移動補助部材216の定着ベルト201に直接接触する面がニップ形成面となる。
【0032】
定着ベルト201は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルトまたはフィルムで構成される。ベルトの表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。ベルトの基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成された弾性層があっても良い。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じ得る。これを改善するにはシリコーンゴム層を100[μm]以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0033】
定着ベルト201の熱移動補助部材216と摺動する面には、上述のように摺動コーティングを施すことができるが、この場合耐熱性や耐摩耗性を考慮し、ポリイミドやポリアミドイミドなどの材料を選択することができる。
【0034】
ステー部材207はニップ部N側と反対側が起立した起立部を有した形状となっており、起立部を隔て、熱源202A、202Bが配置され、定着ベルト201は熱源202によりニップ部以外の領域で内面側から輻射熱で直接加熱される。
【0035】
定着ベルト201の内部にはニップ形成部材206とニップ部Nを支持するための支持部材としてのステー部材207を設け、加圧ローラ203により圧力を受けるニップ形成部材206の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。このステー部材207は両端部で保持部材としてのフランジに保持固定され位置決めされている。
【0036】
また、熱源202とステー部材207の間に反射部材209を備え、熱源202からの輻射熱などによりステー部材207が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。
【0037】
また、反射部材209を設けることで、お互いのヒータが相手のガラス管を加熱しないようにすることで、効率的に定着ベルト201を加熱することができる。反射部材209は、熱源202の熱を吸収しないように、放射率が低い材料で形成されている。
なお、反射部材209を備える代わりに、ステー部材207表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることが可能となる。
【0038】
加圧ローラ203は芯金205に弾性ゴム層204があり、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。加圧ローラ203は、画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧ローラ203は、スプリングなどにより定着ベルト201側に押し付けられており、弾性ゴム層204が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ203は中空のローラであっても良く、加圧ローラ203にハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。弾性ゴム層204はソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ203内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いても良い。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0039】
定着ベルト201は加圧ローラ203により連れ回り回転する。図2の場合は加圧ローラ203が駆動源により回転し、ニップ部Nでベルトに駆動力が伝達されることにより定着ベルト201が回転する。定着ベルト201はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部以外では両端部でフランジにガイドされ、走行する。
上記のような構成により安価で、ウォームアップが速い定着装置を実現することが可能となる。
【0040】
[冷却装置]
本発明に係る画像形成装置1は、記録媒体Sに画像を形成する画像形成部と、記録媒体S上に担持された未定着画像を加熱定着させる定着装置200と、定着装置200を通過した記録媒体Sを搬送経路上で冷却する冷却装置100と、を備えている。
冷却装置100は、定着装置200から送り出された記録媒体Sに対して、加圧挟持することなく当接する搬送ローラ部材80と、記録媒体Sの搬送経路を介して搬送ローラ部材80と対向して配置される搬送ガイド部材90と、搬送ローラ部材80へ向けて送風する送風手段95と、を備えている。
【0041】
冷却装置100は、定着装置200と下流側に配設された搬送ローラ対6との間に配設されており、定着装置200から送り出された記録媒体Sを直ちに冷却することができる。定着処理による熱が記録媒体Sの厚み方向に伝達される前、すなわち内部に蓄熱される前に冷却を行うことができるため、高速かつ大量に搬送される記録媒体Sを効率的に冷却することができ、排紙された記録媒体Sの接着(ブロッキング現象)を防止することができる。また、熱を帯びた記録媒体Sが搬送されることによる周辺部材の温度上昇や、これに起因した不具合等も防止することができる。
【0042】
搬送ローラ部材80は記録媒体Sに対して加圧されず、搬送ローラ部材80の圧接により対向する部材との間で記録媒体Sが挟持される構成ではないため、定着処理直後の柔らかい状態のトナーが圧接により荒らされることがない。また、コシの弱い薄い記録媒体Sの搬送にも適している。さらに、搬送ローラ部材80を記録媒体Sに対して加圧する機構(例えば、スプリング等の押圧部材)が不要となるため、省スペース化を実現することができるとともに、簡単な構成で搬送ローラ部材80を保持することができる。
【0043】
なお、冷却装置100は、搬送ローラ部材80を回転駆動する駆動手段を備え、搬送ローラ部材80が、記録媒体Sの搬送速度と同速度かそれ以上の速度で回転することが好ましい。これにより、搬送ローラ部材80が搬送負荷となることなく、記録媒体Sを効率よく搬送することができる。
【0044】
<第1の実施形態>
図3は、第1の実施形態に係る画像形成装置1の要部の断面模式図であって、定着装置200の下流側に配設された冷却装置100、搬送ローラ対6及び排出ローラ対7を示している。また、記録媒体Sの搬送方向を矢印Dで示している。
本実施形態において、冷却装置を構成する搬送ローラ部材80は、軸となる芯金82の外周面にブラシ繊維81を植毛したブラシローラである。以下、搬送ローラ部材を「ブラシローラ」という。
【0045】
ブラシローラ80は、芯金82上にブラシ繊維81を直接植毛して構成することができる。ブラシ繊維81の植毛密度や植毛領域、ブラシ繊維81の径、ブラシ繊維81の種類、及びブラシ繊維81の喰込量等は特に限定されず、適宜選択することができる。
また、ブラシローラ80は、ブラシ繊維81が植毛された搬送コロ状のローラが複数連なった構成であってもよい。
【0046】
ブラシ繊維81に使用する繊維の種類としては、例えばナイロン、アクリル、ポリエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。ブラシ繊維81として耐熱性を有するポリイミド樹脂やアラミド樹脂等を使用することも可能である。
ブラシローラ80は、芯金82上にポリイミド繊維やアラミド繊維等を植毛したブラシ布等を螺旋状に巻回して構成することもできる。巻回されるブラシ布の帯幅や形態は特に限定されず、ブラシ繊維81がローラ幅全体に広がるように構成しても良い。
【0047】
ブラシローラ80は記録媒体Sの搬送速度と同速またはそれ以上の速さで、図中Rで示す方向に回転駆動される。ブラシ繊維81は、前述したポリイミド樹脂やアラミド樹脂等の他、例えば低摩耗のフッ素樹脂で構成することもできる。また、耐熱性の樹脂または金属でブラシ繊維81の本体を構成し、当該樹脂または金属の表面における記録媒体Sとの接触面に、フッ素樹脂など低摩耗化のコーティングを施しても同等の低摩耗効果を発揮できる。
【0048】
ブラシローラ80に植毛されるブラシ繊維81は、搬送される記録媒体Sとの接触により変形(湾曲)するものであっても、しないものであってもよい。ブラシ繊維81の剛性は、ブラシローラ80と記録媒体Sとが接触する際の搬送方向の幅(ニップ幅)が3mm以下となるように選択されることが好ましい。これにより、ブラシ繊維81と記録媒体Sとの接触幅を冷却の効果が得られる範囲において最小とすることができ、接触により画像が荒れるのを防止することができる。
【0049】
ブラシローラ80は、記録媒体Sの搬送負荷とならないように、搬送速度と同速で回転駆動されるか、或いは搬送速度よりもやや高速(例えば、1~10%の増速)で回転駆動されることが好ましい。
【0050】
ブラシローラ80の芯金82の内部は中空であり、芯金82の外周面には内部と連通する複数の通気孔83が形成されている。なお、ブラシ繊維81は、通気孔83を避けた位置に植毛されている。
通気孔83から熱を逃すことができ、また通気孔83の形成された部分がブラシ繊維の間隙となるため、冷却効果を向上させることができる。
【0051】
搬送ガイド部材90としては、搬送される記録媒体Sのいずれか一方の面側(トナーTを有する画像面側、または画像が形成されていない非画像面側)に配設される板状のガイド板90aとすることができる。
図3に示す本実施形態の構成において、搬送ガイド部材90は、記録媒体Sの画像が形成されていない非画像面側に配設されたガイド板90aである。
【0052】
ガイド板90aは、記録媒体Sの冷却効果を高めるため熱容量の大きな熱伝導性金属で構成することができる。例えば、SECC(ボンデ鋼板)やアルミ、ステンレス材でガイド板90aを構成することができる。
【0053】
ガイド板90aは、記録媒体Sの搬送経路に向かって通気可能な開口部91を有している。開口部91はルーバー窓であってもよい。
【0054】
本実施形態の画像形成装置は、ブラシローラ80を記録媒体Sに対して加圧する機構を備えていないため、送風ファン等の送風手段95を配設しても、省スペースを実現することができる。図3中、送風手段95による送風方向を矢印96で模式的に示している。
送風手段95を設けることで、蓄熱で高温になったガイド板90aを速やかに冷却することができる。これにより、効率良く記録媒体Sを継続して冷却可能になる。
【0055】
本実施形態の画像形成装置は、以上の構成により、定着処理後の記録媒体Sに対して、画像を荒らすことなく、迅速かつ効率的に冷却を行うことができる。
また、ブラシローラ80が記録媒体Sを加圧挟持せず搬送負荷とならないため、記録媒体Sがコシの弱い薄い用紙等であっても、冷却しながら円滑に搬送することができる。
【0056】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態に係る画像形成装置1の要部の断面模式図であって、定着装置200の下流側に配設された冷却装置100、及び搬送ローラ対6を示している。図5は、図4の水平方向の要部断面図である。なお、図5ではブラシローラ80の芯金82部分のみを表し、ブラシ繊維81を省略している。
本実施形態の構成において、冷却装置を構成する送風手段95は、記録媒体Sの搬送領域Wの外側に配設されており、ブラシローラ80の軸方向端部側から芯金82の内部へ向けて送風を行う。送風手段95は、例えば、送風ファン等が挙げられる。
【0057】
本実施形態において、ブラシローラ80の芯金82の中空部分は送風路となっている。送風手段95によって芯金82の軸方向端部側から芯金82の内部へ向けて(矢印96)送りこまれた空気は、中空の送風路に連通した通気孔83から記録媒体Sに向かって(矢印96a)吹き出して記録媒体Sを冷却する。
【0058】
また、本実施形態において、ブラシローラ80は、芯金82の内周面と摺接し、一部の通気孔83を閉塞して通気範囲を規制する規制部材84を有している。規制部材84は、例えば、断面U字形または馬蹄形の部材であり、芯金82の内周面のうち、記録媒体Sの搬送経路から離れた側の領域と摺接する。
複数の通気孔83のうち、規制部材84と重なって閉塞されたものは、空気の吹出しが停止される。芯金82が回転し、規制部材84から離れて開放された通気孔83は空気の吹出しを再開する。このように、記録媒体Sの搬送経路と対向しない領域への空気の吹き出しを防止することで、冷却効果を高めることができる。
【0059】
このような構成により、記録媒体SのトナーTを有する画像が形成された面(画像面側)を高速冷却することができる。また、記録媒体Sの画像が形成されていない面(非画像面側)との水分含有量の差異を低減することができるため、記録媒体Sのカールの低減効果も得ることができる。
【0060】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係る画像形成装置1の要部の断面模式図であって、定着装置200の下流側に配設された冷却装置100、及び搬送ローラ対6を示している。
本実施形態では、搬送ローラ部材であるブラシローラ80が、記録媒体Sの搬送経路に沿って複数配設されている。
複数のブラシローラ80はいずれも、搬送負荷にならないように記録媒体Sの搬送速度と同速、または高速で回転駆動されることが好ましい。
【0061】
本実施形態の構成により、記録媒体Sが冷却される区間を長くすることができる。これにより、定着処理後の高温となった記録媒体Sを迅速に冷却することができ、冷却効率が向上する。記録媒体S上のトナーTの熱が厚み方向に伝わる前に放熱されるため、特に、記録媒体Sが高速で搬送される態様において効果的な冷却が可能となる。
【0062】
<第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態に係る画像形成装置1の要部の断面模式図であって、定着装置200の下流側に配設された冷却装置100、及び搬送ローラ対6を示している。
本実施形態では、搬送ローラ部材であるブラシローラ80、搬送ガイド部材であるガイド板90a及び送風手段95が、記録媒体Sの搬送経路を介して反対の配置となっている。すなわち、記録媒体Sの画像面側にガイド板90a及び送風手段95、非画像面側にブラシローラ80が配設されている。
【0063】
送風手段95を記録媒体Sの画像面側に配設し、画像面側に向けて送風することにより、記録媒体S上のトナーTを有する画像面がガイド板90aに対して圧接して画像が摺擦されるのを防止することができる。
また、ブラシローラ80は、上述の他の実施形態と同様、搬送負荷にならないように記録媒体Sの搬送速度と同速、または高速で図中Rで示す方向に回転駆動される。
この構成により、定着処理後の記録媒体Sを迅速に冷却することができる。
【0064】
<第5の実施形態>
図8は、第5の実施形態に係る画像形成装置1の要部の断面模式図であって、定着装置200の下流側に配設された冷却装置100、及び搬送ローラ対6を示している。
図8(A)に示す本実施形態において、搬送ガイド部材90は、記録媒体Sの画像が形成されていない非画像面側に配設される回転可能なガイドローラ90bである。
ガイドローラ90bは、搬送ローラ部材であるブラシローラ80とローラ対を構成するため、記録媒体Sの搬送効率が向上する。
【0065】
なお、ガイドローラ90bの外径は、ブラシローラ80の外径よりも小さいことが好ましい。小径のローラ部材とすることで、省スペース化を実現することができる。
ガイドローラ90bは、分割された複数のコロ状の部材が回転軸で一体に連結された構成であってもよい。
【0066】
ガイドローラ90bは、ブラシローラ80と同様、搬送負荷にならないように記録媒体Sの搬送速度と同速、または高速で図中Rで示す方向に回転駆動される。
ブラシローラ80とガイドローラ90bとは圧接しないため、加圧による連れ回りする構成とすることができない。そこで、ガイドローラ90bは、記録媒体Sの搬送領域の外側において、ブラシローラ80と駆動伝達部材を介して駆動的に連結された構成とすることができる。例えば、ブラシローラ80の回転軸と、ブラシローラ80の回転軸とが、ギヤ等を介して連結駆動される態様が挙げられる。
【0067】
ガイドローラ90bは、ブラシローラ80のブラシ繊維81と5mmよりも短い接触幅(ニップ幅)で当接するように配設されていてもよい。
ガイドローラ90bは、上記のニップ幅を維持する目的で、スプリング等によって加圧される構成とすることができるが、当該加圧によりブラシローラ80に対して圧接することはない。ガイドローラ90bとブラシローラ80との当接は、記録媒体Sを加圧挟持するような圧接とは異なるため、ニップ部の通過により記録媒体S上の画像が荒れるようなことはない。
また、上述のとおり、ガイドローラ90bとブラシローラ80とは、それぞれ回転駆動されているため、両者が上記ニップ幅で当接する配置であっても、そのニップ部を通過する記録媒体Sの搬送の妨げとなることはない。
【0068】
ガイドローラ90bは、ブラシローラ80と離間して配設されていてもよい。なお、離間距離は微小であることが好ましい。
ガイドローラ90bは、ブラシローラ80のブラシ繊維81と当接しないため、対向する領域を通過する記録媒体S上の画像が荒れるようなことはない。
また、上述のとおり、ガイドローラ90bとブラシローラ80とは、それぞれ回転駆動されているため、ニップ部を通過する記録媒体Sの搬送の妨げとなることはない。
【0069】
なお、図8(B)に示すように、搬送ガイド部材90として、ガイドローラ90bの搬送経路上流側および/または下流側に、第1の実施形態と同様のガイド板90aを備えていてもよい。例えば、ガイドローラ90bの搬送経路上流側にガイド板90aを配設することによって、記録媒体Sの先端をガイドローラ90bに導きやすくすることができる。
【0070】
<第6の実施形態>
図9は、第6の実施形態に係る画像形成装置1の要部の断面模式図であって、定着装置200の下流側に配設された冷却装置100、及び搬送ローラ対6を示している。
図9(A)に示す本実施形態は、上述の第5の実施例と同様に搬送ガイド部材90としてガイドローラ90bを備える構成である。
また、上述の第2の実施形態(図4及び図5)と同様、冷却装置を構成する送風手段95が、ブラシローラ80の軸方向端部側から芯金82の内部へ向けて送風する構成である。ブラシローラ80は、芯金82の内周面と摺接する規制部材84を有している。
【0071】
ガイドローラ90bを備えることで記録媒体Sの搬送効率が向上するとともに、省スペース化を実現することができる。また、定着処理後の記録媒体Sに対して、画像を荒らすことなく、迅速かつ効率的に冷却を行うことができる。
【0072】
なお、図9(B)に示すように、搬送ガイド部材90として、ガイドローラ90bの搬送経路上流側および/または下流側に、第2の実施形態と同様のガイド板90aを備えていてもよい。例えば、ガイドローラ90bの搬送経路上流側にガイド板90aを配設することによって、記録媒体Sの先端をガイドローラ90bに導きやすくすることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
6 搬送ローラ対
7 排紙ローラ対
80 搬送ローラ部材(ブラシローラ)
81 ブラシ繊維
82 芯金
83 通気孔
84 規制部材
90 搬送ガイド部材
90a ガイド板
90b ガイドローラ
95 送風手段(送風ファン)
100 冷却装置
200 定着装置
201 定着ベルト
203 加圧ローラ
S 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2019-101360号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9