(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137961
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型液体組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、組成物収容容器、組成物吐出装置及び組成物吐出装置
(51)【国際特許分類】
C08L 57/00 20060101AFI20230922BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230922BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20230922BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230922BHJP
【FI】
C08L57/00
C08K3/013
C08F292/00
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044424
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜輝
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J039
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BF041
4J002BF051
4J002BG041
4J002BG051
4J002CD201
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4J026BA27
4J026BA28
4J026BA50
4J026CA07
4J026DB06
4J026FA09
4J026GA07
4J026GA10
4J039BA13
4J039BE23
4J039CA07
4J039EA04
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】硬化物の厚膜化が可能であるとともに、高い吐出安定性を有する活性エネルギー線硬化型液体組成物の提供。
【解決手段】光透過性フィラー、及びチクソトロピー性付与剤を含み、前記光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が、10μm以下である活性エネルギー線硬化型液体組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性フィラー、及びチクソトロピー性付与剤を含み、
前記光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が、10μm以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型液体組成物。
【請求項2】
前記チクソトロピー性付与剤の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型液体組成物の全量に対して、0.1質量%以上3.0質量%以下である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物。
【請求項3】
前記光透過性フィラーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化型液体組成物の全量に対して5.0質量%以上30質量%以下である請求項1から2のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物。
【請求項4】
前記光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が、5μm以下である請求項1から3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物。
【請求項5】
前記光透過性フィラーが、SiO2を主成分とする粒子である、請求項1から4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物、請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の少なくともいずれかを収容することを特徴とする組成物収容容器。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物収容容器と、
液膜を形成する液膜形成手段と、
前記液膜を硬化させるための活性エネルギー線照射手段と、を有することを特徴とする組成物吐出装置。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物、請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の少なくともいずれかを吐出して、液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜を硬化させるための活性エネルギー線照射工程と、を有することを特徴とする組成物吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型液体組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、組成物収容容器、組成物吐出装置及び組成物吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路面への塗装では、乾燥が速く、塗膜への高い耐久性が求められる。また、屋外での作業では揮発成分となる溶剤を含まない無溶剤タイプが望まれており、この中でも無溶剤タイプとして知られる活性エネルギー線硬化型組成物は、溶媒の蒸発が必要な溶剤系インクと比べて環境にやさしく、硬化プロセスも簡便であるため乾燥性に優れている。
【0003】
しかし、従来の活性エネルギー線硬化型液体組成物は顔料を含むため、活性エネルギー線硬化型液体組成物を硬化させる際に照射した照射光は吸収又は反射し、塗膜の深部に到達する光のエネルギーは減衰する。このため活性エネルギー線硬化型液体組成物の膜厚が増すと硬化性が急激に低下して塗膜の深部の硬化不良が発生し、塗膜の厚膜化が困難であるという問題があった。
【0004】
従来の活性エネルギー線硬化型液体組成物としては、例えば、硬化性向上の目的で、光反応開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む導電性フィラー含有紫外線硬化型塗料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記塗料は、開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド化合物を使用したときのみ十分硬化することができ、さらに、着色顔料を除く塗料のクリア塗膜との屈折率差が0.3以内のガラスビーズを塗料中に含有させることにより厚膜形成と塗膜強度が向上する。
しかし、活性エネルギー線硬化型液体組成物中にガラスビーズなどの粒径の大きなフィラーを添加することで照射光の透過性を向上させて厚膜化させることもできるが、フィラーのノズル詰まりなどが発生して吐出安定性が低下するため、インクジェット法によるインクの吐出には用いることができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬化物の厚膜化が可能であるとともに、高い吐出安定性を有する活性エネルギー線硬化型液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物は、光透過性フィラー、及びチクソトロピー性付与剤を含み、前記光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が、10μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、硬化物の厚膜化が可能であるとともに、高い吐出安定性を有する活性エネルギー線硬化型液体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(活性エネルギー線硬化型液体組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物は、光透過性フィラー、及びチクソトロピー性付与剤を含み、モノマー、及びオリゴマーを含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
また、本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物は、前記光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が、10μm以下であり、5μm以下が好ましい。
従来のインクでは、インク中に小粒径のフィラーのみを添加した場合、照射光がフィラーの表面で散乱又は反射して塗膜の深部に照射光が到達しないため厚膜化しにくいという問題があった。
本発明者らは、インク中に1次粒子のモード径x(μm)が10μm以下の光透過性フィラー及びチクソトロピー性付与剤を添加することにより、光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が小粒径であったとしても照射光が透過する隙間ができ、塗膜の深部まで硬化反応を行うことができることを発見した。これは、光透過性フィラーがチクソトロピー性付与剤によって繋がるため、せん断力を掛けていない状態において光透過性フィラーが集まった状態になるためだと推測される。
【0009】
<光透過性フィラー>
前記光透過性フィラーにおける「光透過性」とは、屈折率が、1.4以上1.65以下である粒子を意味する。
前記屈折率の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、25℃においてアッベ屈折率計を用いて測定することができる。
【0010】
前記光透過性フィラーとしては、屈折率が、1.4以上1.65以下である粒子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、SiO2を主成分とする粒子が好ましい。
【0011】
前記光透過性フィラーの1次粒子径のモード径x(μm)としては、10μm以下であり、5μm以下が好ましい。前記モード径x(μm)が10μm以下であると、前記光透過性フィラーが小粒径であるため、優れた吐出安定性が得られる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物は、前記光透過性フィラーの1次粒子径のモード径x(μm)が10μm以下であっても、後述するチクソトロピー性調整剤を含有するため、光透過性フィラーがチクソトロピー性付与剤によって繋がるため、せん断力を掛けていない状態では光透過性フィラーが集まった状態となり、照射光が透過する隙間ができて塗膜の深部まで硬化反応を行うことができる。
前記1次粒子径のモード径x(μm)の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0012】
前記光透過性フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、活性エネルギー線硬化型液体組成物の全量に対して5.0質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が特に好ましい。前記含有量が、5質量%以上40質量%以下であると、より塗膜の膜厚化をすることができる。
【0013】
前記光透過性フィラーとしては、市販品を用いることができる。
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、UBS-0005E、UBS-0010Eなどを用いることができる。
【0014】
<チクソトロピー性調整剤>
前記チクソトロピー性調整剤とは、一般的には塗料に添加することでレオロジーをコントロールする作用を有する添加剤であり、チクソトロピック剤、沈降防止剤、タレ止め剤、増粘剤などの名称で称されることがあるが、本発明における前記チクソトロピー性調整剤とは、前記光透過性フィラーに吸着する吸着基を有する物質を意味する。
前記吸着基としては、例えば、リン酸基、カルボン酸基等の酸性官能基などが挙げられる。前記チクソトロピー性調整剤が前記吸着基を有することで、前記光透過性フィラーがチクソトロピー性付与剤によって繋がるため、せん断力を掛けていない状態では光透過性フィラーが集まった状態となり、照射光が透過する隙間ができて塗膜の深部まで硬化反応を行うことができる。
【0015】
前記チクソトロピー性調整剤としては、例えば、脂肪族エステル、芳香族エステルなどが挙げられる。
【0016】
前記チクソトロピー性調製剤としては、市販品を用いることができ、例えば、ディスパロン3500(成分:ポリエーテルリン酸エステル)、フローノンRCM-100、ANTI-TERRA204、ANTI-TERRA205などが挙げられる。
【0017】
前記チクソトロピー性調製剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性エネルギー線硬化型液体組成物の全量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。
【0018】
<多官能モノマー>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、多官能モノマーを含有する。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物が、前記多官能モノマーを含有することにより、強固な架橋構造を有する硬化物を得ることができる。
前記多官能モノマーとしては、2官能モノマー及び3官能モノマーを少なくとも含み、必要に応じて、4官能以上の官能基数のモノマーを含んでいてもよい。
前記多官能モノマーは、官能基として(メタ)アクリロイル基由来の不飽和結合を含有することが好ましい。
【0019】
前記多官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。
本発明において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0020】
前記多官能モノマーは1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。前記多官能モノマーとしては、2官能モノマー及び3官能モノマーを1種ずつ併用することが好ましい。
【0021】
<色材>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。
前記色材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン(TiO2)などの無機顔料などが挙げられる。これらの中でも、酸化チタン(TiO2)が好ましい。
【0022】
前記色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、活性エネルギー線硬化型液体組成物の全量に対して、20質量%以上であることが好ましい。
【0023】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
【0024】
-重合開始剤-
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。
前記重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであれば特に制限はない。
前記重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、塩基発生剤などが挙げられる。これらの中でも、材料の選択性が高いという観点から、ラジカル重合開始剤が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0026】
前記ラジカル重合開始剤の具体例として、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、4-ベンジルオキシアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン、4-ベンゾイル 4‘-メチルジフェニルスルフィド、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル2-ヒドロキシ-1-(4-イソプロペニルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オンのオリゴマー[ベンゼン,(1-メチルエチニル)-,ホモポリマー,ar-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)誘導体](IGM社製、「Esacure ONE」)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名「イルガキュア369」)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名「イルガキュア819」)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(商品名「イルガキュアTPO」)、ポリエチレングリコール200-ジ(β-4(4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノニルフェニル)ピペラジン)(IGM社製、「Omnipol 910」)、1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパン(Lambson社製、「Speedcure7010」)、ポリブチレングリコールビス(9-オキソ-9H-チオキサンチニルオキシ)アセテート(IGM社製、「Omnipol TX」)、高分子型チオキサンテン化合物(Lahn AG社製、「Genepol TX-2」)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記ラジカル重合開始剤は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0027】
前記重合開始剤の含有量としては、十分な硬化速度が得られるという観点から、活性エネルギー線硬化型組成全量に対して、5質量%以上20質量%以下含まれることが好ましい。
【0028】
また、前記重合開始剤に加え、増感剤を併用してもよい。
前記増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミン、及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物などが挙げられる。
前記増感剤の含有量は、使用する重合開始剤の種類や量に応じて適宜設定することができる。
【0029】
-重合禁止剤-
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4-メトキシフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、フェノチアジンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物は、硬化物の厚膜化が可能であるとともに、高い吐出安定性を有するため、道路標示用のインクとして好適である。その他には、コンクリート及びモルタル等の外壁への塗装や、金属製構造物への塗装、立体造形物の製造にも使用することができる。
【0030】
(活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物を含む。
【0031】
(組成物収容容器)
本発明の組成物収容容器は、本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物のいずれかを収容する。
【0032】
(組成物吐出装置、組成物吐出方法)
本発明の組成物吐出方法は、本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物のいずれかを吐出して液膜を形成する液膜形成工程と、前記液膜を硬化させるための活性エネルギー線照射工程と、を有する。
本発明の組成物収容容器と、液膜を形成する液膜形成手段と、前記液膜を硬化させるための活性エネルギー線照射手段と、を有する。
前記液膜形成工程は、液膜形成手段によって行うことができ、活性エネルギー線照射工程は、活性エネルギー線照射手段によって行うことができる。
【0033】
<液膜形成手段>
前記液膜形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、インクジェット法によって、本発明の活性エネルギー線硬化型液体組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物のいずれかを吐出して液膜を形成することができる。
【0034】
<活性エネルギー線照射手段>
前記活性エネルギー線照射手段は、活性エネルギー線硬化型液体組成物の液膜の所定の領域に、活性エネルギー線を照射して硬化させる工程であり、活性エネルギー線照射手段により実施することができる。
【0035】
前記活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に制限はなく、高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0036】
前記活性エネルギー線照射手段としては、例えば、紫外線(UV)照射ランプ、電子線などが挙げられる。また、オゾンを除去する機構が具備されていることが好ましい。
前記紫外線(UV)照射ランプの種類としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド、紫外線発光ダイオード(UV-LED)などが挙げられる。
前記超高圧水銀灯は、点光源であるが、光学系と組み合わせて光利用効率を高くしたDeepUVタイプは、短波長領域の照射が可能である。
【0037】
前記メタルハライドは、波長領域が広いため着色物に有効であり、Pb、Sn、Fe等の金属のハロゲン化物が用いられ、光重合開始剤の吸収スペクトルに合わせて選択できる。硬化に用いられるランプとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、又はVランプ等のような市販されているものを使用することができる。
【0038】
前記紫外線発光ダイオードの発光波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般的には365nm、375nm、385nm、395nm、405nmのものがあるが、立体造形物への色の影響を考慮すると、重合開始剤の吸収が大きくなるように、短波長発光の方が有利である。これらの中でも、熱エネルギーの影響を受けやすいハイドロゲルである本発明の立体造形物にも用いる点から、紫外線(UV)照射ランプとして熱の発生が少ない紫外線発光ダイオード(UV-LED)を用いることが好ましい。
【0039】
前記活性エネルギー線硬化型液体組成物を硬化させることにより、硬化物を得る。前記硬化物を得るには、例えば、LEDランプにより、1,500mJ/cm2の光量を照射して硬化することが好ましい。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1~7及び比較例1~8)
表1及び表2に示す各材料及び含有量に基づき、各材料を撹拌しながら添加した後に、1時間撹拌し、孔径10μmのフィルターを用いて濾過を行って活性エネルギー線硬化型液体組成物を得た。比較例3~7は、添加している粒径が大きいので孔径10μmのフィルターには通過しないため、濾過を行わずに活性エネルギー線硬化型液体組成物を得た。
【0042】
【0043】
【0044】
前記実施例及び比較例で使用した各材料の製品名、及び製造元を下記に示す。
<モノマー>
・IBXA:イソボルニルアクリレート 大阪有機化学工業社製
・CTFA:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート 大阪有機化学工業社製
・R684:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート 日本化薬社製
<オリゴマー>
・CN963J85:ウレタンアクリレートオリゴマー サートマー社製
上記のほかに、重合開始剤としてTPO(製品名:Omnirad TPO,IGM社製)、重合禁止剤としてMEHQ(製品名:メトキノン、精工化学社製)を使用した。
<無機フィラー>
・UBS-0005E モード径:5μm
・UBS-0010E モード径:10μm
・UBS-0020E モード径:20μm
・ASGB-320 モード径:50μm
・ASGB-240 モード径:70μm
・ASGB-180 モード径:100μm
【0045】
実施例1~7及び比較例1~8について、以下のとおり「膜厚化」及び「吐出安定性」の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0046】
<膜厚化>
前記活性エネルギー線硬化型液体組成物を、アプリケーターを用いてPET基材上に任意の膜厚で塗布し、照度3.0W/cm2、積算光量1,500mJ/cm2の条件で紫外線を照射して、前記活性エネルギー線硬化型液体組成物を硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物をPET基材上から剥離し、基材界面まで硬化している箇所の膜厚をマイクロメーターによって計測し、硬化可能な最大膜厚を測定した。測定した最大膜厚について、下記評価基準に基づき、「膜厚化」を評価した。
[評価基準]
○:最大膜厚が100μm以上
△:最大膜厚が80μm以上100μm未満
×:最大膜厚が80μm未満
【0047】
<吐出安定性>
前記活性エネルギー線硬化型液体組成物を、レタロボ用ヘッド(リコーデジタルペインティング製)に充填してセットし、吐出圧力0.4MPa~0.5MPaにて30秒間連続で吐出した際のインクの吐出をインクジェット吐出簡易装置(株式会社リコー製、駆動源:エヌエフ回路設計ブロック社製マルチファンクションジェネレーター)を用いて確認し、下記評価基準に基づき、「吐出安定性」を評価した。
[評価基準]
○:30秒間吐出不良なし
△:15秒以上30秒未満で吐出不良となる
×:15秒未満で吐出不良となる
【0048】
【0049】
【0050】
本発明の態様としては、以下のとおりである。
<1> 光透過性フィラー、及びチクソトロピー性付与剤を含み、
前記光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が、10μm以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型液体組成物である。
<2> 前記チクソトロピー性付与剤の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型液体組成物の全量に対して、0.1質量%以上3.0質量%以下である前記<1>に記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物である。
<3> 前記光透過性フィラーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化型液体組成物の全量に対して5.0質量%以上30質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物である。
<4> 前記光透過性フィラーの1次粒子のモード径x(μm)が、5μm以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物である。
<5> 前記光透過性フィラーが、SiO2を主成分とする粒子である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク組成物である。
<7> 前記<6>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物である。
<8> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物、前記<6>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び前記<7>に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の少なくともいずれかを収容することを特徴とする組成物収容容器である。
<9> 前記<8>に記載の組成物収容容器と、
液膜を形成する液膜形成手段と、
前記液膜を硬化させるための活性エネルギー線照射手段と、を有することを特徴とする組成物吐出装置である。
<10> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物、前記<6>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び前記<7>に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の少なくともいずれかを吐出して、液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜を硬化させるための活性エネルギー線照射工程と、を有することを特徴とする組成物吐出方法である。
【0051】
前記<1>から<5>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型液体組成物、前記<6>に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物、前記<7>に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、前記<8>に記載の組成物収容容器、前記<9>に記載の組成物吐出装置、及び前記<10>に記載の組成物吐出方法によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。