(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138112
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】拡張方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01L21/78 W
H01L21/78 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044627
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 篤
(72)【発明者】
【氏名】政田 孝行
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA31
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA47
5F063CB02
5F063CB03
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB07
5F063CB29
5F063DD25
5F063DD68
5F063DD75
5F063DD85
5F063DG21
5F063EE07
5F063EE09
5F063EE13
5F063EE22
5F063EE48
5F063FF33
5F063FF42
5F063FF43
(57)【要約】
【課題】拡張後のシートを加熱収縮することができる拡張方法を提供すること。
【解決手段】拡張方法は、ウェーハユニットのウェーハの外周と環状フレームの内周との間のシートを拡張する拡張ステップ1001と、拡張ステップ1001を実施した後、シートを加熱する加熱ユニットでウェーハの外側と環状フレームの内周とのの該シートの領域を加熱して拡張ステップ1001で生成されたシートの弛みを収縮させる加熱ステップ1002と、を備え、シートの領域は、第1領域と、該第1領域よりも加熱によって収縮のしにくい第2領域とを含み、加熱ユニットからシートに放射される熱でシート上には周囲のシートよりも高温のヒートスポットが形成され、加熱ステップ1002では、少なくとも第2領域の全域にヒートスポットが位置づけられるように加熱ユニットを移動させる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハと、ウェーハが貼着されたシートと、該シートの外周縁が貼着されてウェーハを収容する開口を有した環状フレームと、を備えたウェーハユニットの該シートを拡張する拡張方法であって、
該ウェーハユニットのウェーハの外周と該環状フレームの内周との間の該シートを拡張する拡張ステップと、
該拡張ステップを実施した後、該シートを加熱する加熱ユニットで該ウェーハの外側と該環状フレームの内周との間の該シートの被加熱領域を加熱して該拡張ステップで生成された該シートの弛みを収縮させる加熱ステップと、を備え、
該シートの被加熱領域は、第1領域と、該第1領域よりも加熱によって収縮のしにくい第2領域とを含み、
該加熱ユニットから該シートに放射される熱で該シート上には周囲のシートよりも高温のヒートスポットが形成され、
該加熱ステップでは、少なくとも該第2領域の全域に該ヒートスポットが位置づけられるように該加熱ユニットを移動させる、拡張方法。
【請求項2】
該加熱ステップでは、該ヒートスポットが該被加熱領域において該ウェーハの外周に沿って円状に移動するとともに該第2領域では該ヒートスポットをウェーハの径方向に往復移動するよう該加熱ユニットを移動させる、請求項1に記載の拡張方法。
【請求項3】
該加熱ステップでは、該被加熱領域上で同心円状に該ヒートスポットが移動するよう該加熱ユニットを移動させることで、該シートの該被加熱領域の全体を加熱する、請求項1に記載の拡張方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハユニットのシートを拡張する拡張方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エキスパンドで生成されたシートの弛みを解消するためにシートを加熱し収縮させている。従来は、シートの被加熱領域に対面するヒータを被加熱領域に沿って回転移動させることでシートを加熱していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、シートにはMD(Machine direction)とTD(Transverse direction)があり、TD方向の両端がシートを加熱しても収縮されにくい。
【0005】
シートが充分に収縮されないとウェーハが分割して形成されたチップ間に充分な間隔が形成されず、ハンドリング時に隣接するチップ同士が接触して損傷するおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、拡張後のシートを加熱収縮することができる拡張方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の拡張方法は、ウェーハと、ウェーハが貼着されたシートと、該シートの外周縁が貼着されてウェーハを収容する開口を有した環状フレームと、を備えたウェーハユニットの該シートを拡張する拡張方法であって、該ウェーハユニットのウェーハの外周と該環状フレームの内周との間の該シートを拡張する拡張ステップと、該拡張ステップを実施した後、該シートを加熱する加熱ユニットで該ウェーハの外側と該環状フレームの内周との間の該シートの被加熱領域を加熱して該拡張ステップで生成された該シートの弛みを収縮させる加熱ステップと、を備え、該シートの被加熱領域は、第1領域と、該第1領域よりも加熱によって収縮のしにくい第2領域とを含み、該加熱ユニットから該シートに放射される熱で該シート上には周囲のシートよりも高温のヒートスポットが形成され、該加熱ステップでは、少なくとも該第2領域の全域に該ヒートスポットが位置づけられるように該加熱ユニットを移動させることを特徴とする。
【0008】
前記拡張方法において、該加熱ステップでは、該ヒートスポットが該被加熱領域において該ウェーハの外周に沿って円状に移動するとともに該第2領域では該ヒートスポットをウェーハの径方向に往復移動するよう該加熱ユニットを移動させても良い。
【0009】
前記拡張方法において、該加熱ステップでは、該被加熱領域上で同心円状に該ヒートスポットが移動するよう該加熱ユニットを移動させることで、該シートの該被加熱領域の全体を加熱しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、拡張後のシートを加熱収縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る拡張方法の拡張対象のシートを備えるウェーハユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたウェーハユニットの平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII部のシートの分子鎖を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図2中のIV部のシートの分子鎖を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る拡張方法を実施する拡張装置の構成例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された拡張装置の分割ユニットの構成例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示された拡張装置の加熱ユニットの構成例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示された加熱ユニットの加熱部とウェーハユニットとの位置関係を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る拡張方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図9に示された拡張方法の拡張ステップを模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいて加熱ユニットのフレーム固定ユニットがウェーハユニットのフレームを固定した状態の断面図である。
【
図12】
図12は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいてシートを拡張した状態の断面図である。
【
図13】
図13は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップの加熱ユニットの保持テーブルにウェーハユニットを吸引保持し、突き上げ部材及び保持テーブルを下降した状態の断面図である。
【
図14】
図14は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の弛みを加熱している状態の断面図である。
【
図15】
図15は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の弛みを加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図16】
図16は、
図15中のXVI部のヒートスポットの移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図17】
図17は、
図15中のXVII部のヒートスポットの移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図18】
図18は、比較例の第2領域のヒートスポットの移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図19】
図19は、実施形態2に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の弛みを加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図20】
図20は、実施形態3に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の再内周を加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図21】
図21は、実施形態3に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の径方向の中央を加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【
図22】
図22は、実施形態3に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の再外周を加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る拡張方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る拡張方法の拡張対象のシートを備えるウェーハユニットの構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたウェーハユニットの平面図である。
図3は、
図2中のIII部のシートの分子鎖を模式的に示す図である。
図4は、
図2中のIV部のシートの分子鎖を模式的に示す図である。
【0014】
(ウェーハユニット)
実施形態1に係る拡張方法は、
図1に示すウェーハユニット200のシート202を拡張する装置である。ウェーハユニット200は、
図1に示すように、ウェーハ201と、ウェーハ201が貼着されたシート202と、シート202の外周縁が貼着されてウェーハ201を収容する開口203を有した環状フレーム204とを備える。
【0015】
実施形態1では、ウェーハ201は、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素又はSiC(炭化ケイ素)などを基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等である。ウェーハ201は、
図1に示すように、表面205の互いに交差する複数の分割予定ライン206で区画された各領域にそれぞれデバイス207が形成されている。
【0016】
デバイス207は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又はメモリ(半導体記憶装置)等である。
【0017】
ウェーハ201は、表面205の裏側の裏面208側から基板に対して透過性を有する波長のレーザ光線が分割予定ライン206に沿って照射されて、基板の内部に分割予定ライン206に沿って分割起点である改質層209(
図1中に点線で示す)が形成されている。ウェーハ201は、改質層209を起点に個々のチップ210に分割される。なお、チップ210は、分割予定ライン206に沿って分割された基板の一部と、基板の表面に形成されたデバイス207とを備える。
【0018】
なお、改質層209とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。改質層209の機械的な強度は、基板の他の位置の機械的な強度よりも低い。
【0019】
シート202は、伸縮性を有する樹脂から構成され、加熱されると収縮する熱収縮性を有する。シート202は、ウェーハ201の直径よりもおおきい直径の円板状に形成され、実施形態1では、伸縮性及び熱収縮性を有する合成樹脂から構成された基材層と、基材層上に積層されかつウェーハ201に貼着するとともに伸縮性及び熱収縮性を有する合成樹脂から構成された粘着層とを備えている。シート202は、外周縁に環状フレーム204が貼着され、中央部にウェーハ201の裏面211が貼着されている。なお、本発明では、シート202は、熱可塑性樹脂であるポリオレフィンにより構成された基材層のみで構成され、粘着性を有する糊層を備えていなくても良い。
【0020】
シート202は、伸縮性を有し、例えば、加熱された合成樹脂が第1方向212に沿って伸長されながら、第1方向212に対して直交する第2方向213に延伸されて成形される。実施形態1では、第1方向212は、所謂流れ方向(MD:Machine Direction方向)であり、第2方向213は、所謂垂直方向(TD:Transverse Direction方向)である。実施形態1において、シート202は、
図3及び
図4に示すように、第1方向212に伸長した分子鎖214を含んでいる。
【0021】
実施形態1において、シート202は,第1方向212に伸長した分子鎖214を含んでいるために、加熱された際、第1方向212よりも第2方向213が収縮しにくい。即ち、加熱された際のシート202の第1方向212の収縮量よりも第2方向213の収縮量が小さい。このように、シート202は、環状フレーム204の内周とウェーハ201の外周との間の領域215(
図1及び
図2に示し、被加熱領域に相当する)に、第1方向212の両端部に位置する第1領域216と、第2方向213の両端に位置し第1領域216よりも加熱によって収縮しにくい第2領域217とを含んでいる。
【0022】
なお、
図2には、第1領域216と第2領域217との境界を示しているが、実際には、シート202は、第1領域216と第2領域217とを区分けする境界が形成されていない。また、
図2に示す例では、シート202の中心を中心とした90度毎に第1領域216と第2領域217とを交互に配置しているが、本発明では、第1領域216と第2領域217との配置は、
図2に示されたものに限定されずに、第1方向212の両端部に第1領域216が位置し、第2方向213の両端に第2領域217が位置していれば、シート202の種類、チップ210の大きさにより適宜定められるのが望ましい。
【0023】
環状フレーム204は、ウェーハ201の直径よりの内径が大きな円環状に形成されかつシート202の外周が貼着されている。
【0024】
前述した構成のウェーハユニット200は、シート202にウェーハ201の裏面208が貼着され、シート202の外周縁に環状フレーム204が貼着されるなどして構成される。
【0025】
(拡張装置)
実施形態1に係る拡張方法を実施する拡張装置1を説明する。
図5は、実施形態1に係る拡張方法を実施する拡張装置の構成例を示す斜視図である。
図6は、
図5に示された拡張装置の分割ユニットの構成例を模式的に示す断面図である。
図7は、
図5に示された拡張装置の加熱ユニットの構成例を模式的に示す断面図である。
図8は、
図7に示された加熱ユニットの加熱部とウェーハユニットとの位置関係を模式的に示す側面図である。
【0026】
図5に示された拡張装置1は、ウェーハユニット200のシート202を拡張して、分割起点として改質層209が形成されたウェーハ201を分割予定ライン206に沿って個々のチップ210に分割する装置である。拡張装置1は、
図5に示すように、装置本体2に設けられたカセットエレベータ3と、分割ユニット10と、加熱ユニット30と、洗浄ユニット40と、搬送ユニット50と、制御手段である制御ユニット100とを備える。
【0027】
カセットエレベータ3は、装置本体2の水平方向と平行なY軸方向の一端に配置され、ウェーハユニット200を複数収容するカセット4が着脱自在に載置される。カセット4は、複数のウェーハユニット200を鉛直方向と平行なZ軸方向に間隔をあけて収容する。カセット4は、ウェーハユニット200を出し入れ自在な開口5を装置本体2のY軸方向の中央部に向けてカセットエレベータ3上に載置される。カセットエレベータ3は、カセット4をZ軸方向に昇降させる。
【0028】
また、拡張装置1は、カセット4に出し入れされるウェーハユニット200が仮置きされる一対の第1ガイドレール6と、一対の第2ガイドレール7とを備える。一対の第1ガイドレール6は、Y軸方向と平行であるとともに、水平方向と平行でかつY軸方向と直交するX軸方向に互いに間隔をあけて配置される。一対の第1ガイドレール6は、カセットエレベータ3に載置されるカセット4の開口5のX軸方向の両端とY軸方向に並ぶように、装置本体2のY軸方向の中央に配置されている。一対の第1ガイドレール6は、図示しない駆動機構によりX軸方向に移動自在に設けられ、駆動機構により互いに近づいたり離れる。一対の第1ガイドレール6は、カセット4に出し入れされるウェーハユニット200が載置され、駆動機構により互いに近付くとウェーハユニット200をX軸方向に位置決めする。
【0029】
一対の第2ガイドレール7は、第1ガイドレール6から搬送ユニット50により搬送されてきたウェーハユニット200等が仮置きされるものである。一対の第2ガイドレール7は、Y軸方向と平行であるとともに、水平方向と平行でかつX軸方向に互いに間隔をあけて配置される。一対の第2ガイドレール7は、装置本体2のY軸方向の中央に配置され、第1ガイドレール6のX軸方向の隣りに配置されている。一対の第2ガイドレール7は、図示しない駆動機構によりX軸方向に移動自在に設けられ、駆動機構により互いに近づいたり離れる。一対の第2ガイドレール7は、第1ガイドレール6から搬送されてきたウェーハユニット200等が載置され、駆動機構により互いに近付くとウェーハユニット200をX軸方向に位置決めする。
【0030】
搬送ユニット50は、カセット4と第1ガイドレール6上との間でウェーハユニット200を搬送する第1搬送ユニット51と、第1ガイドレール6と第2ガイドレール7との間及び第2ガイドレール7と加熱ユニット30と、加熱ユニット30と洗浄ユニット40との間、洗浄ユニット40と第1ガイドレール6上との間でウェーハユニット200を搬送する第2搬送ユニット52と、第2ガイドレール7と分割ユニット10との間でウェーハユニット200を搬送する第3搬送ユニット53とを備える。
【0031】
分割ユニット10は、一対の第2ガイドレール7のY軸方向の一方側の隣に配置されている。分割ユニット10は、
図6に示すように、フレーム固定ユニット11と、押圧ユニット12とを備える。フレーム固定ユニット11と、押圧ユニット12と装置本体2の一対の第2ガイドレール7のY軸方向の一方側の隣に配置された内側が冷却される冷却チャンバー14(
図1に示す)内に収容されている。
【0032】
フレーム固定ユニット11は、ウェーハユニット200の環状フレーム204を固定するものであって、フレーム載置プレート15と、フレーム押さえプレート16とを備える。フレーム載置プレート15は、平面形状が円形の開口部151が設けられ、かつ上面152が水平方向と平行に平坦に形成された板状に形成されている。フレーム載置プレート15の開口部151の内径は、環状フレーム204の内径よりも若干小さくウェーハ201の直径よりも大きく形成されている。フレーム載置プレート15は、開口部151上にウェーハ201が位置する状態でウェーハユニット200の環状フレーム204が上面152に載置される。
【0033】
実施形態1では、フレーム載置プレート15は、上面152が第2ガイドレール7でX軸方向に位置決めされたウェーハユニット200の環状フレーム204の下面と同一平面上となる位置からシリンダ17によりZ軸方向に上昇する。即ち、フレーム載置プレート15は、シリンダ17の伸縮自在なロッド171の先端に取り付けられてシリンダ17のロッド171が伸縮することでZ軸方向に昇降自在に設けられている。
【0034】
フレーム押さえプレート16は、フレーム載置プレート15の上方に固定されている。フレーム押さえプレート16は、フレーム載置プレート15とほぼ同寸法の板状に形成され、中央に開口部151と同寸法の円形の開口部161が設けられている。フレーム押さえプレート16の開口部161は、フレーム載置プレート15の開口部151と同軸に配置されている。
【0035】
フレーム固定ユニット11は、ロッド171が縮小して下方に位置するフレーム載置プレート15の上面152に第3搬送ユニット53によりウェーハユニット200が搬送されてくる。フレーム固定ユニット11は、フレーム載置プレート15の上面152にウェーハユニット200の環状フレーム204が載置された後、シリンダ17のロッド171が伸張してフレーム載置プレート15が上昇する。フレーム固定ユニット11は、フレーム押さえプレート16と上昇したフレーム載置プレート15との間にウェーハユニット200の環状フレーム204を挟んで固定する。
【0036】
押圧ユニット12は、フレーム固定ユニット11で固定された環状フレーム204を含むウェーハユニット200のシート202の環状フレーム204の内周とウェーハ201の外周との間の領域215を押圧するものである。押圧ユニット12は、拡張ドラム121と、複数のコロ122とを備える。
【0037】
実施形態1において、拡張ドラム121は、下方が閉塞された円筒状に形成され、直径がフレーム載置プレート15の上面152に載置される環状フレーム204の内径よりも小さく、内径がシート202に貼着されるウェーハ201の直径よりも大きく形成されている。拡張ドラム121は、フレーム固定ユニット11の開口部151,161と同軸に配置されている。
【0038】
コロ122は、円柱状に形成され、拡張ドラム121の上端に軸心(以下回転軸と記す)回りに回転自在に支持されている。コロ122は、周方向に等間隔に配置されている。コロ122は、直径がフレーム載置プレート15の上面152に載置される環状フレーム204の内径よりも小さく内径がシート202に貼着されるウェーハ201の直径よりも大きな拡張ドラム121の上端に等間隔に配置されることで、平面視において、ウェーハ201を囲繞する環状に配置されている。
【0039】
コロ122は、回転軸が平面視における拡張ドラム121の接線と平行に配置されている。コロ122は、拡張ドラム121の上端に平面視における拡張ドラム121の接線と平行な回転軸回りに回転自在に支持されることにより、ウェーハ201の径方向への回転を許容する向きにそれぞれ配設されている。
【0040】
拡張ドラム121は、シリンダ18に取り付けられ、シリンダ18によりZ軸方向に昇降する。即ち、拡張ドラム121は、シリンダ18の伸縮自在なロッド181の先端に取り付けられてシリンダ18のロッド181が伸縮することでZ軸方向に昇降自在に設けられている。
【0041】
実施形態1では、拡張ドラム121は、シリンダ18によりコロ122の上端が環状フレーム204を固定したフレーム固定ユニット11のフレーム載置プレート15の上面152よりも下側に位置する位置と、コロ122の上端が環状フレーム204を固定したフレーム固定ユニット11のフレーム載置プレート15の上面152よりも上側に位置する位置とに亘ってZ軸方向に昇降する。
【0042】
シリンダ18により上昇するとコロ122の上端が環状フレーム204を固定したフレーム固定ユニット11のフレーム載置プレート15の上面152よりも上側に位置するので、コロ122は、フレーム固定ユニット11により固定されたウェーハユニット200のシート202の環状フレーム204の内周とウェーハ201の外周との間の領域215を押圧する。
【0043】
分割ユニット10は、フレーム固定ユニット11でウェーハユニット200の環状フレーム204を固定し、拡張ドラム121をコロ122の上端が環状フレーム204を固定したフレーム固定ユニット11のフレーム載置プレート15の上面152よりも下側に位置する位置から上昇させて、ウェーハユニット200のシート202の環状フレーム204の内周とウェーハ201の外周との間の領域215を押圧して、シート202を面方向に拡張する。また、分割ユニット10は、シート202を一旦拡張した後、拡張ドラム121を下降することで、ウェーハユニット200のシート202の環状フレーム204の内周とウェーハ201の外周との間の領域215に弛みを形成する。
【0044】
加熱ユニット30は、一対の第2ガイドレール7のY軸方向の他方側の隣に配置されている。加熱ユニット30は、
図7に示すように、保持テーブル32と、フレーム固定ユニット31と、シート拡張ユニット36と、加熱ユニット37とを備える。
【0045】
保持テーブル32は、シート202を介してウェーハユニット200のウェーハ201を吸引保持する保持面321を有するものである。保持テーブル32は、環状フレーム204の内径よりも直径が小径な円板形状であり、ステンレス鋼等の金属からなる円板状の枠体322と、ポーラスセラミック等の多孔質材で構成されかつ枠体322により囲繞された円板状の吸着部323とを備える。
【0046】
枠体322と吸着部323の上面は、同一平面上に配置されて、ウェーハ201を吸引保持する保持面321を構成している。吸着部323は、ウェーハ201と略同径である。吸着部323は、枠体322等に形成された吸引路324を介してエジェクタ等の吸引源325に接続されている。吸引路324は、開閉弁326が設けられている。
【0047】
保持テーブル32は、保持面321に第2搬送ユニット52により搬送されてきたウェーハユニット200のシート202を介してウェーハ201の裏面208側が載置される。保持テーブル32は、開閉弁326が開くことなどにより、吸引源325により保持面321の吸着部323が吸引されることで、ウェーハ201の裏面208側を保持面321に吸引保持する。
【0048】
フレーム固定ユニット31は、ウェーハユニット200の環状フレーム204を固定するものである。フレーム固定ユニット31は、フレーム載置プレート33と、フレーム押さえプレート34とを備える。フレーム載置プレート33は、平面形状が円形の開口部331が設けられ、かつ上面332が水平方向と平行に平坦に形成された板状に形成されている。フレーム載置プレート33の開口部331の内径は、環状フレーム204の内径よりも若干小さくウェーハ201の直径よりも大きく形成されている。フレーム載置プレート33は、開口部331内に保持テーブル32を配置し、開口部331が保持テーブル32と同軸に配置されている。フレーム載置プレート33は、
図5に示すように、上面332の四隅に水平方向に移動自在に設けられ、かつ水平方向に移動することにより環状フレーム204の位置を調整して、ウェーハ201を保持テーブル32の保持面321の吸着部323と同軸となる位置に位置決めするセンタリングガイド333が設けられている。
【0049】
また、フレーム載置プレート33は、シリンダ35によりZ軸方向に昇降自在に設けられている。即ち、フレーム載置プレート33は、シリンダ35の伸縮自在なロッド351の先端に取り付けられてシリンダ35のロッド351が伸縮することでZ軸方向に昇降自在に設けられている。
【0050】
フレーム押さえプレート34は、フレーム載置プレート33とほぼ同寸法の板状に形成され、中央に開口部331と同寸法の円形の開口部341が設けられている。フレーム押さえプレート34は、図示しないシリンダのピストンロッドの先端に取り付けられ、ピストンロッドがY軸方向に沿って伸縮することにより、フレーム載置プレート33の上方の位置と、フレーム載置プレート33の上方から退避した位置とに亘って移動自在である。フレーム押さえプレート34は、
図5に示すように、四隅にセンタリングガイド333が侵入可能な長孔342が設けられている。
【0051】
フレーム固定ユニット31は、フレーム押さえプレート34がフレーム載置プレート33の上方から退避した位置に位置付けられ、センタリングガイド333同士が互いに離れた状態で、フレーム載置プレート33の上面332に第2搬送ユニット52により搬送されてきたウェーハユニット200の環状フレーム204が載置される。フレーム固定ユニット31は、センタリングガイド333同士を近づけて、ウェーハユニット200のウェーハ201を位置決めする。フレーム固定ユニット31は、フレーム押さえプレート34をフレーム載置プレート33の上方に位置付け、フレーム載置プレート33がシリンダ35により上昇されて、ウェーハユニット200の環状フレーム204をフレーム載置プレート33とフレーム押さえプレート34との間に挟んで固定する。
【0052】
シート拡張ユニット36は、保持テーブル32とフレーム固定ユニット31とを鉛直方向に沿う軸心に沿って互いに離れる位置に相対的に移動させ、シート202を拡張するものである。シート拡張ユニット36は、
図7に示すように、突き上げ部材361と、突き上げ部材昇降ユニット362と、保持テーブル昇降ユニット363とを備える。
【0053】
突き上げ部材361は、円筒状に形成され、直径がフレーム載置プレート33の上面332に載置される環状フレーム204の内径よりも小さく、内径がシート202に貼着されるウェーハ201及び保持テーブル32の直径よりも大きく形成されている。突き上げ部材361は、内側に保持テーブル32を配置し、保持テーブル32と同軸に配置されている。突き上げ部材361の上端には、コロ364が回転自在に取り付けられている。
【0054】
突き上げ部材昇降ユニット362は、コロ364が下降したフレーム載置プレート33の上面332よりも下方に位置する位置と、上昇したフレーム載置プレート33の上面332よりも上方に位置する位置とに亘って、突き上げ部材361をZ軸方向に昇降させるものである。
【0055】
保持テーブル昇降ユニット363は、保持面321が下降したフレーム載置プレート33の上面332よりも下方に位置する位置と、上昇したフレーム載置プレート33の上面332よりも上方に位置する位置とに亘って、保持テーブル32をZ軸方向に昇降させるものである。
【0056】
加熱ユニット37は、分割ユニット10によりシート202が拡張されて形成されたシート202の環状フレーム204とウェーハ201との間の領域215の弛みを加熱して収縮させるものである。加熱ユニット37は、Z軸方向に移動自在でかつZ軸方向と平行な軸心回りに回転する円板状の円板部371と、複数の加熱部372とを備える。
【0057】
加熱部372は、円板部371にフレーム固定ユニット31で固定された環状フレーム204を含むウェーハユニット200のシート202の領域215の上方に周方向に等間隔に配置されて、シート202の領域215に対応した円上に配置されている。加熱部372は、円板部371の保持テーブル32及びフレーム固定ユニット31に保持されたウェーハユニット200のシート202の領域215とZ軸方向に対面する位置に配置されている。実施形態1において、加熱部372は、周方向に等間隔に四つ設けられているが、本発明では、四つに限定されない。
【0058】
加熱部372は、熱である赤外線373図を下方に照射して、シート202の領域215を加熱する形式のもの、例えば、電圧が印加されると加熱されて、赤外線373を放射する赤外線セラミックヒータである。加熱部372は、円板部371が保持テーブル32の軸心と同軸な軸心回りに回転することで、シート202の前述した領域215上を旋回する。また、加熱部372は、円板部371に図示しない駆動ユニットによりフレーム固定ユニット31に保持されたウェーハユニット200のシート202の径方向に移動自在に設けられている。
【0059】
加熱ユニット37は、円板部371が下降して、加熱部372が保持テーブル32及びフレーム固定ユニット31に保持されたウェーハユニット200のシート202の領域215と鉛直方向に対面し、円板部371が軸心回りに回転して、シート202の前述した領域215上を旋回することで、シート202の領域215の弛みを加熱、収縮させる。
【0060】
また、加熱ユニット37の加熱部372は、
図8に示すように、シート202に向けて放射する熱である赤外線373でシート202の領域215上に周囲のシート202よりも高温のヒートスポット374を形成する。このように、加熱ユニット37の加熱部372からシート202に放射される赤外線373で、シート202の領域215には周囲のシート202よりも高温のヒートスポット374が形成される。なお、実施形態1では、ヒートスポット374は、シート202の領域215の加熱部372のシート202の径方向の中央とZ軸方向に相対する位置(加熱部372の中央の直下)に形成される。
【0061】
洗浄ユニット40は、分割ユニット10によりシート202が拡張され、加熱ユニット30により弛みが加熱、収縮されたウェーハユニット200の主にウェーハ201を洗浄するものである。洗浄ユニット40は、一対の第1ガイドレール6の下方に配置されかつウェーハユニット200のシート202を介してウェーハ201を吸引保持するスピンナーテーブル41と、スピンナーテーブル41に吸引保持されたウェーハ201の表面205に洗浄水を供給する図示しない洗浄水供給ノズルとを備える。
【0062】
洗浄ユニット40は、一対の第1ガイドレール6同士が離れると、第2搬送ユニット52により加熱ユニット30により弛みが加熱され、収縮されたウェーハユニット200がスピンナーテーブル41上に載置される。洗浄ユニット40は、スピンナーテーブル41をZ軸方向と平行な軸心回りに回転しながら洗浄水供給ノズルから洗浄水をウェーハ201の表面205に供給して、ウェーハ201を洗浄する。
【0063】
制御ユニット100は、拡張装置1の上述した構成要素を制御して、ウェーハユニット200に対するシート202の拡張動作を拡張装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、拡張装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して拡張装置1の上述した構成要素に出力する。
【0064】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0065】
次に、実施形態1に係る拡張方法を説明する。
図9は、実施形態1に係る拡張方法の流れを示すフローチャートである。
【0066】
実施形態1に係る拡張方法は、ウェーハユニット200のシート202を拡張して、ウェーハ201を改質層209を起点に破断して、ウェーハ201を個々のチップ210に分割する方法である。拡張方法は、
図9に示すように、拡張ステップ1001と、加熱ステップ1002と、洗浄ステップ1003とを備える。
【0067】
(拡張ステップ)
図10は、
図9に示された拡張方法の拡張ステップを模式的に示す断面図である。拡張ステップ1001は、ウェーハユニット200のウェーハ201の外周と環状フレーム204の内周との間のシート202を拡張して、改質層209を起点にウェーハ201を個々のチップ210に分割するステップである。
【0068】
拡張ステップ1001では、シート202にウェーハ201の裏面208を貼着し、シート202の外周縁に環状フレーム204を貼着して、ウェーハユニット200を構成する。実施形態1において、拡張ステップ1001では、オペレータ等がウェーハユニット200をカセット4に収容し、拡張装置1は、複数のウェーハユニット200が収容されたカセット4がカセットエレベータ3上に載置される。
【0069】
また、実施形態1において、拡張ステップ1001では、入力ユニットを介して加工内容情報を制御ユニット100が受け付けて記憶装置に記憶する。実施形態1において、拡張ステップ1001では、制御ユニット100がオペレータからの加工開始指示を受け付けると、拡張装置1は、分割ユニット10の拡張ドラム121を下降した状態で、カセット4から第1搬送ユニット51でウェーハユニット200を1枚取り出し、ウェーハユニット200を一対の第1ガイドレール6上に仮置きした後、一対の第1ガイドレール6同士を近づけてウェーハユニット200をX軸方向に位置決めする。
【0070】
拡張ステップ1001では、拡張装置1は、第2搬送ユニット52で第1ガイドレール6上のウェーハユニット200を第2ガイドレール7上に搬送し、一対の第2ガイドレール7を互いに近づけてウェーハユニット200をX軸方向に位置決めする。フレーム固定ステップ302では、拡張装置1は、第3搬送ユニット53で一対の第2ガイドレール7上のウェーハユニット200を分割ユニット10の下降したフレーム載置プレート15の上面152上に搬送する。
【0071】
拡張ステップ1001では、拡張装置1は、分割ユニット10のフレーム載置プレート15を上昇して、環状フレーム204をフレーム押さえプレート16とフレーム載置プレート15との間で挟んでウェーハユニット200を固定する。拡張ステップ1001では、拡張装置1は、分割ユニット10の押さえドラム131を下降して、上側ローラー132の下端をフレーム固定ユニット11が固定した環状フレーム204を含むウェーハユニット200のシート202の領域215に当接させる。
【0072】
拡張ステップ1001では、拡張装置1は、
図10に示すように、拡張ドラム121を上昇させる。すると、シート202の領域215に拡張ドラム121の上端に設けられたコロ122が当接し、コロ122が領域215を下方から上方に向けて押圧し、シート202が面方向に拡張される。拡張ステップ1001では、シート202の拡張の結果、シート202に放射状に引張力が作用する。
【0073】
このようにウェーハ201の裏面208に貼着されたシート202に放射状に引張力が作用すると、ウェーハ201は、分割予定ライン206に沿って改質層209が形成されているので、改質層209を基点として、分割予定ライン206に沿って個々のチップ210に分割される。また、ウェーハ201は、チップ210間が広がり、チップ210間に間隔が形成される。
【0074】
拡張ステップ1001では、拡張装置1は、分割ユニット10の拡張ドラム121を下降させる。すると、ウェーハユニット200は、シート202が一旦拡張しているために、シート202の領域215に弛みが形成される。
【0075】
(加熱ステップ)
図11は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいて加熱ユニットのフレーム固定ユニットがウェーハユニットのフレームを固定した状態の断面図である。
図12は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいてシートを拡張した状態の断面図である。
図13は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップの加熱ユニットの保持テーブルにウェーハユニットを吸引保持し、突き上げ部材及び保持テーブルを下降した状態の断面図である。
図14は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の弛みを加熱している状態の断面図である。
図15は、
図9に示された拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の弛みを加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
図16は、
図15中のXVI部のヒートスポットの移動軌跡を模式的に示す平面図である。
図17は、
図15中のXVII部のヒートスポットの移動軌跡を模式的に示す平面図である。
図18は、比較例の第2領域のヒートスポットの移動軌跡を模式的に示す平面図である。
【0076】
加熱ステップ1002は、拡張ステップ1001を実施した後、シート202を加熱する加熱ユニット37の加熱部372でウェーハ201の外側と環状フレーム204の内周との間のシートの領域215を加熱して、拡張ステップ1001で生成されたシート202の領域215の弛みを収縮させるステップである。加熱ステップ1002では、拡張装置1は、分割ユニット10のフレーム固定ユニット11のフレーム載置プレート15を下降し、第3搬送ユニット53でフレーム載置プレート33上のウェーハユニット200を一対の第2ガイドレール7上に搬送する。
【0077】
加熱ステップ1002では、拡張装置1は、加熱ユニット30の突き上げ部材361及び保持テーブル32が下降し、フレーム固定ユニット31のフレーム押さえプレート34を退避位置に位置付けた状態で、第2搬送ユニット52で第2ガイドレール7上のウェーハユニット200を、フレーム載置プレート33の上面332上に搬送する。
【0078】
加熱ステップ1002では、拡張装置1は、フレーム固定ユニット31のセンタリングガイド333同士を近づけて、ウェーハユニット200のウェーハ201を位置決めする。加熱ステップ1002では、拡張装置1は、フレーム載置プレート33を上昇させて、
図11に示すように、環状フレーム204をフレーム載置プレート33とフレーム押さえプレート34との間に挟んでウェーハユニット200を固定する。
【0079】
加熱ステップ1002では、拡張装置1は、加熱ユニット30の突き上げ部材361及び保持テーブル32を上昇させて、
図12に示すように、拡張されたシート202の領域215を張り、チップ210間に間隔を形成する。加熱ステップ1002では、拡張装置1は、開閉弁326を開き、吸引源325により吸着部323を吸引して、ウェーハ201の裏面208側をシート202を介して保持面321に吸引保持して、チップ210間の間隔を維持する。
【0080】
加熱ステップ1002では、拡張装置1は、
図13に示すように、突き上げ部材361をフレーム載置プレート33の上面332よりも下方まで下降させ、保持テーブル32を保持面321がフレーム載置プレート33の上面332と同一平面上に位置するまで下降させる。すると、シート202の領域215に弛みが生じる。
【0081】
加熱ステップ1002では、拡張装置1は、加熱ユニット30の加熱ユニット37を下降させ、加熱部372をシート202の領域215に対面させる。実施形態1において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、加熱ユニット30が加熱ユニット37の全ての加熱部372を駆動し、全ての加熱部372から赤外線を放射させながら加熱部372を領域215の上方で所定回数、所定の回転速度で旋回させる。こうして、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、領域215の弛みを全周に亘って加熱し、収縮させる。
【0082】
実施形態1において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、第2領域217の直上に位置する加熱部372即ちヒートスポット374を
図15中の矢印218で示すようにウェーハ201の径方向に移動させるとともに、第1領域216の直上に位置する加熱部372即ちヒートスポット374を領域215の径方向の中央をウェーハ201の外周に沿って移動させる。こうして、実施形態1において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、第1領域216上ではヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に移動するとともに、第2領域217上ではヒートスポット374をウェーハ201の径方向に外周側の死点と内周側の死点との間で往復移動するよう加熱ユニット37の加熱部372を移動させる。こうして、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、
図16に示すように、第1領域216では、ヒートスポット374を複数の分子鎖214に対して交差するように移動させ、
図17に示すように、第2領域217では、ヒートスポット374を径方向に移動させることで、複数の分子鎖214に対して交差するように移動させて、複数の分子鎖214上を通過させる。
【0083】
このように、実施形態1において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、第2領域217ではヒートスポット374をウェーハ201の径方向に往復移動するよう加熱ユニット37の加熱部372を移動させることで、少なくとも第2領域217の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱ユニット37の加熱部372を移動させる。なお、本発明でいう第2領域217の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱ユニット37の加熱部372を移動させるとは、実施形態1では、第2領域217の複数の分子鎖214に対して交差するように径方向に移動させながらヒートスポット374を移動させて、複数の分子鎖214上を通過させることをいう。
【0084】
(洗浄ステップ)
洗浄ステップ1003は、加熱ステップ1002を実施した後、ウェーハ201を洗浄ユニット40で洗浄するステップである。洗浄ステップ1003では、拡張装置1は、加熱ユニット30の加熱ユニット37の加熱部372の回転及び加熱を停止し、加熱ユニット30のフレーム固定ユニット31のフレーム載置プレート33を下降し、保持テーブル32の吸引保持等を停止する。洗浄ステップ1003では、拡張装置1は、第2搬送ユニット52でウェーハユニット200を洗浄ユニット40まで搬送する。洗浄ステップ1003では、拡張装置1は、ウェーハユニット200を洗浄ユニット40で洗浄する。
【0085】
洗浄ステップ1003では、拡張装置1は、第2搬送ユニット52及び第1搬送ユニット51でウェーハユニット200を洗浄ユニット40からカセット4に搬送して、カセット4内に収容する。拡張装置1は、カセット4内のウェーハユニット200のシート202を順に拡張してウェーハ201を個々のチップ210に分割し、カセット4内の全てのウェーハユニット200のシート202を拡張してウェーハ201を個々のチップ210に分割すると、加工動作を終了する。
【0086】
加熱部372でシート202を加熱すると、加熱部372から放射された赤外線373が、加熱部372の径方向の中央の直下を局所的に加熱し、加熱部372の径方向の中央の直下に周囲のシート202よりも高温のヒートスポット374が形成される。
【0087】
しかしながら、実施形態1に係る拡張方法は、第2領域217上では加熱部372即ちヒートスポット374を周方向に移動させてヒートスポット374が通過する分子鎖214に沿って移動する
図18に示された比較例よりも、第2領域217上では加熱部372即ちヒートスポット374を径方向に移動させて多くの分子鎖214上を通過させる。このために、実施形態1に係る拡張方法は、少なくとも収縮しにくい第2領域217において領域215の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱するため、特に、第2領域217においてシート202を局所的に加熱することを抑制できる。その結果、実施形態1に係る拡張方法は、拡張後のシート202を加熱収縮することができるという効果を奏する。
【0088】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る拡張方法を図面に基づいて説明する。
図19は、実施形態2に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の弛みを加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。なお、
図19は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
実施形態2に係る拡張方法は、加熱ステップ1002が実施形態1と異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態2に係る拡張方法は、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、第1領域216及び第2領域217の直上に位置する加熱部372即ちヒートスポット374を
図19中の矢印218で示すようにウェーハ201の径方向に移動させる。こうして、実施形態2において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、第1領域216及び第2領域217上では、ヒートスポット374をウェーハ201の径方向に外周側の死点と内周側の死点との間で往復移動するよう加熱ユニット37の加熱部372を移動させる。
【0090】
このように、実施形態2において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、第1領域216及び第2領域217ではヒートスポット374をウェーハ201の径方向に往復移動するよう加熱ユニット37の加熱部372を移動させることで、少なくとも第2領域217の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱ユニット37の加熱部372を移動させる。なお、本発明でいう第2領域217の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱ユニット37の加熱部372を移動させるとは、実施形態2では、第2領域217の複数の分子鎖214に対して交差するようにヒートスポット374を径方向に移動させて、複数の分子鎖214上を通過させることをいう。
【0091】
実施形態2に係る拡張方法は、第2領域217上では加熱部372即ちヒートスポット374を径方向に移動させて複数の分子鎖214上を通過させるために、少なくとも収縮しにくい第2領域217において領域215の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱するため、拡張後のシート202を加熱収縮することができるという効果を奏する。
【0092】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る拡張方法を図面に基づいて説明する。
図20は、実施形態3に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の再内周を加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
図21は、実施形態3に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の径方向の中央を加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。
図22は、実施形態3に係る拡張方法の加熱ステップにおいてシートの領域の再外周を加熱する加熱部の移動軌跡を模式的に示す平面図である。なお、
図20、
図21及び
図22は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0093】
実施形態3に係る拡張方法は、加熱ステップ1002が実施形態1と異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態3に係る拡張方法は、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、領域215上で同心円状にヒートスポット374が移動するよう加熱ユニット37を移動させることで、シート202の領域215の全体を加熱する。実施形態3に係る拡張方法は、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、
図20に示すように、全ての加熱部372即ちヒートスポット374を領域215の径方向の最内周上に位置付けて、第1領域216及び第2領域217上でヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に所定回数移動する。
【0094】
その後、実施形態3に係る拡張方法は、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、
図21に示すように、全ての加熱部372即ちヒートスポット374を領域215の径方向の中央上に位置付けて、第1領域216及び第2領域217上でヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に所定回数移動する。実施形態3に係る拡張方法は、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、
図22に示すように、全ての加熱部372即ちヒートスポット374を領域215の径方向の最外周上に位置付けて、第1領域216及び第2領域217上でヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に所定回数移動する。
【0095】
こうして、実施形態3に係る拡張方法は、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、加熱部372即ちヒートスポット374の径方向の位置を複数の位置に順に位置付けて、各位置に位置付けられた加熱部372即ちヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に移動させることで、第2領域217上では複数の分子鎖214に沿って加熱部372即ちヒートスポット374を移動させる。なお、実施形態3において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、加熱部372即ちヒートスポット374の径方向の位置を3つの位置に順に位置付けて、加熱部372即ちヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に移動させたが、本発明では、2つの位置に順に位置付けても良く、4つ以上の位置に順に位置付けても良い。
【0096】
このように、実施形態3において、加熱ステップ1002では、拡張装置1は、加熱部372即ちヒートスポット374の径方向の位置を複数の位置に順に位置付けて、各位置に位置付けられた加熱部372即ちヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に移動させることで、少なくとも第2領域217の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱ユニット37の加熱部372を移動させる。なお、本発明でいう第2領域217の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱ユニット37の加熱部372を移動させるとは、実施形態3では、第2領域217の複数の分子鎖214に沿ってヒートスポット374を移動させることをいう。
【0097】
実施形態3に係る拡張方法は、加熱部372即ちヒートスポット374の径方向の位置を複数の位置に順に位置付けて、各位置に位置付けられた加熱部372即ちヒートスポット374をウェーハ201の外周に沿って円状に移動させるために、少なくとも収縮しにくい第2領域217において領域215の全域にヒートスポット374が位置づけられるように加熱するため、拡張後のシート202を加熱収縮することができるという効果を奏する。
【0098】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。実施形態1では、分割起点として改質層209を形成したが、本発明では、これに限定されることなく、分割起点としてレーザ加工溝又は切削溝を形成しても良い。
【0099】
また、実施形態1では、ウェーハユニット200のウェーハ201が分割予定ライン206に形成された分割溝により、分割予定ライン206に沿って個々のチップ210に分割されていても、本発明の拡張方法は、シート202を拡張して、チップ210間の間隔を拡げても良い。また、本発明では、ウェーハユニット200が、ウェーハ201の裏面211に貼着されてダイアタッチフィルム(以下、DAFと記す)を備えても良い。DAFは、個々に分割されたチップ210を他のチップ又は基板等に固定するためのダイボンディング用の接着フィルムである。
【符号の説明】
【0100】
37 加熱ユニット
200 ウェーハユニット
201 ウェーハ
202 シート
203 開口
204 環状フレーム
215 領域(被加熱領域)
216 第1領域
217 第2領域
373 赤外線(熱)
374 ヒートスポット
1001 拡張ステップ
1002 加熱ステップ