(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138121
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】測定装置、血糖値測定装置、および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/552 20140101AFI20230922BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01N21/552
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044641
(22)【出願日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 義浩
(72)【発明者】
【氏名】笠原 亮介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊英
(72)【発明者】
【氏名】細野 信人
【テーマコード(参考)】
2G059
4C038
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB08
2G059BB12
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE01
2G059HH01
2G059JJ12
2G059MM01
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KY04
4C038KY11
(57)【要約】
【課題】測定信頼性に優れた測定装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る測定装置は、被測定物が接触する全反射面を有する全反射プリズムと、7[μm]以上12[μm]以下の波長を含む光を前記全反射面に入射させる光源部と、前記全反射面で反射された前記光の光強度を検出する検出部と、を備え、 10[μm]の波長の光に対する前記全反射プリズムの基材の屈折率をn1とし、10[μm]の波長の光に対する前記被測定物の屈折率n2を1.32または1.44とすると、前記光源部からの光束の中心の入射角度θcは、式(1)を満たす。
【数1】
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物が接触する全反射面を有する全反射プリズムと、
7[μm]以上12[μm]以下の波長を含む光を前記全反射面に入射させる光源部と、
前記全反射面で反射された前記光の光強度を検出する検出部と、を備え、
10[μm]の波長の光に対する前記全反射プリズムの基材の屈折率をn1とし、10[μm]の波長の光に対する前記被測定物の屈折率n2を1.32または1.44とすると、前記光源部からの光束の中心の入射角度θcは、式(1)を満たす、測定装置。
【数1】
【請求項2】
前記基材の屈折率n1は、1.32以上1.91以下であり、式(1-1)を満たす、請求項1の測定装置。
43.9<θc<90.0[度] ・・・(1-1)
【請求項3】
前記基材の屈折率n1は、1.32以上1.57以下であり、式(1-2)を満たす、請求項1の測定装置。
67.0<θc<90.0[度] ・・・(1-2)
【請求項4】
被測定物が接触する全反射面を有する全反射プリズムと、
7[μm]以上12[μm]以下の波長を含む光を前記全反射面に入射させる光源部と、
前記全反射面で反射された前記光の光強度を検出する検出部と、を備え、
10[μm]の波長の光に対する前記全反射プリズムの基材の屈折率n1は、1.32より大きく1.91以下である、測定装置。
【請求項5】
前記基材の屈折率n1は、1.32より大きく1.57以下である、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記基材は、塩化ナトリウムを含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記基材は、前記基材の表面を被覆する被覆層を備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記被覆層は、酸化アルミニウムを含む、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記全反射プリズムは、内部において前記光を複数回全反射する、請求項1から請求項8のいずれかに記載の測定装置。
【請求項10】
前記全反射プリズムは、前記全反射面における前記光の入射光線および反射光線を含む面である入射面に交差する方向へ前記光を反射する交差反射面を備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記被測定物は生体である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項12】
前記検出部により検出された前記光強度に基づき、前記被測定物における吸光度に関する情報である吸光度情報を出力する第1出力部と、
前記第1出力部からの前記吸光度情報に基づき、生体に関する情報である生体情報を出力する第2出力部と、をさらに備える、請求項1から請求項11のいずれかに記載の測定装置。
【請求項13】
前記生体情報は、前記生体に含まれる組成に関する情報である組成情報を含み、
前記組成情報は、グルコース、皮膚組織、コラーゲンおよび脂質の少なくとも1つに関する情報を含む、請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の測定装置を備える血糖値測定装置であって、
前記生体情報は、前記生体に含まれる血液の血糖値に関する情報を含む、血糖値測定装置。
【請求項15】
全反射面を有する全反射プリズムを備える測定装置による測定方法であって、前記測定装置が、
光源部により、被測定物が接触する前記全反射面に7[μm]以上12[μm]以下の波長を含む光を入射させ、
検出部により、前記全反射面で反射された前記光の光強度を検出し、
第1出力部により、前記検出部によって検出された前記光強度に基づき、前記被測定物における吸光度に関する情報である吸光度情報を出力し、
第2出力部により、前記吸光度情報に基づき、生体に関する情報である生体情報を出力し、
前記全反射プリズムの基材の前記光に対する屈折率をn1とし、前記被測定物の屈折率n2を1.32または1.44とすると、前記光源部からの光束の中心の入射角度θcは、式(1)を満たす、測定方法。
【数1】
【請求項16】
全反射面を有する全反射プリズムを備える測定装置による測定方法であって、前記測定装置が、
光源部により、被測定物が接触する前記全反射面に7[μm]以上12[μm]以下の波長を含む光を入射させ、
検出部により、前記全反射面で反射された前記光の光強度を検出し、
第1出力部により、前記検出部によって検出された前記光強度に基づき、前記被測定物における吸光度に関する情報である吸光度情報を出力し、
第2出力部により、前記吸光度情報に基づき、生体に関する情報である生体情報を出力し、
10[μm]の波長の光に対する前記全反射プリズムの基材の屈折率n1は、1.32より大きく1.91以下である、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、測定装置、血糖値測定装置、および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
10[μm]程度の波長を含む中赤外領域の光を用いて測定を行う測定装置が知られている。このような測定装置は、生体における血糖値の測定等において使用される。世界中で糖尿病患者が増加している昨今、血糖値の測定装置等では、採血を伴わない非侵襲的なものへのニーズが高まっている。
【0003】
中赤外光を用いる測定装置には、中赤外領域等の特定波長領域において全反射減衰(ATR:Attenuated Total Reflection)法によりグルコース濃度測定を精度良く行うために、グルコースの吸光ピークの波数(1035[cm-1]、1080[cm-1]、1110[cm-1])を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の測定装置では、測定信頼性に優れたものが求められる。
【0005】
本発明は、測定信頼性に優れた測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る測定装置は、被測定物が接触する全反射面を有する全反射プリズムと、7[μm]以上12[μm]以下の波長を含む光を前記全反射面に入射させる光源部と、前記全反射面で反射された前記光の光強度を検出する検出部と、を備え、 10[μm]の波長の光に対する前記全反射プリズムの基材の屈折率をn1とし、10[μm]の波長の光に対する前記被測定物の屈折率n2を1.32または1.44とすると、前記光源部からの光束の中心の入射角度θcは、式(1)を満たす。
【数1】
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、測定信頼性に優れた測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】潜り込み深さと入射角度との関係の第1例の図である。
【
図2】潜り込み深さと入射角度との関係の第2例の図である。
【
図3】臨界角法により屈折率を測定する構成を例示する図である。
【
図4】潜り込み深さと入射角度との関係の第3例の図である。
【
図5】第1実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
【
図6】全反射プリズムの唇への接触例を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る処理部の機能構成例のブロック図である。
【
図8】第1実施形態に係る潜り込み深さと入射角度との関係の第1例の図である。
【
図9】第1実施形態に係る潜り込み深さと入射角度との関係の第2例の図である。
【
図10】第1実施形態に係る潜り込み深さと入射角度との関係の第3例の図である。
【
図11】被測定物が指である場合を例示する図である。
【
図12】全反射プリズム内部において光を複数回全反射させる構成例の図である。
【
図13】第2実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
【
図14】第2実施形態に係る測定装置の全反射プリズムを示す正面図である。
【
図15】第2実施形態に係る測定装置の全反射プリズムを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。なお、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための測定装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0010】
以下、ATR法により測定した吸光度に基づき、生体情報としての血糖値を測定する測定装置を一例として実施形態を説明する。
【0011】
<実施形態における用語の説明>
(中赤外領域)
中赤外領域とは、2[μm]から14[μm]まで程度の波長領域をいう。
(ATR法)
ATR法とは、被測定物に接触して配置された全反射プリズムにおいて全反射が起きる際に、全反射面からしみ出したエバネッセント波を利用して被測定物の吸収スペクトル情報を取得する手法をいう。
(吸光度)
吸光度とは、光が物体を通過した際に光強度がどの程度低下するかを示す無次元量をいう。実施形態では、ATR法により、全反射面からしみ出したエバネッセント波の生体による減衰が吸光度として測定される。
(血糖値)
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度をいう。
(波数)
波長λ[μm]と波数k[cm-1]の関係は、k=10000/λである。
【0012】
<被測定物の屈折率の測定について>
まず、ATR法を用いた測定において、被測定物の中赤外領域における屈折率を明らかにすることの必要性、並びに、被測定物の中赤外領域における屈折率の測定方法および結果について説明する。ここでの被測定物は、唇や指などの生体である。
【0013】
潜り込み深さdpは、次の式(6)のように定義される。潜り込み深さdpとは、全反射プリズムの全反射面からしみ出したエバネッセント波が全反射面に接触する被測定物の内部に潜り込む深さをいう。潜り込み深さdpは、被測定物の内部に潜り込んだエバネッセント波の光強度が1/eに低下するまでの深さに対応する。
【数6】
式(6)において、θは全反射面への光の入射角度を表す。λは該光に含まれる波長を表す。πは円周率を表す。n1は全反射プリズムの基材の屈折率を表す。n2は被測定物の屈折率を表す。なお、以降で示す屈折率n1およびn2は、10[μm]の波長を含む光に対する屈折率を指すものとする。
【0014】
全反射プリズムの基材がゲルマニウム(Ge)を含む場合、並びに全反射プリズムの基材が硫化亜鉛(ZnS)を含む場合、のそれぞれの潜り込み深さdpと入射角度θとの関係は、式(6)に従うと
図1のようになる。
図1は、屈折率n2を従来の推定値である1.400とした場合の潜り込み深さdpと入射角度θとの関係を示す図である。
図1において、破線のグラフ11は屈折率n1がゲルマニウム(Ge)の4.00の場合、実線のグラフ12は屈折率n1が硫化亜鉛(ZnS)の2.20の場合をそれぞれ示している。
【0015】
唇や指等の生体の表面にはグルコースを含有しないとされる角質層が存在する。角質層の厚さは、部位によって異なるが、唇であれば2[μm]以上4[μm]以下程度、指であれば10[μm]以上20[μm]以下程度である。角質層よりも深い生体内の領域において吸光度を測定できるように、潜り込み深さdpは、角質層の厚さに対応する深さよりも深いことが望ましい。しかしながら従来は、10[μm]の波長を含む光に対する被測定物の屈折率n2は明らかではなく、最適な入射角度θcが不明であった。このため、角質層の厚さに対応する深さよりも深い潜り込み深さdpにおいて、ATR法を用いた測定を行うことが困難であった。
【0016】
図2は、潜り込み深さdpと入射角度θとの関係の第2例を示す図である。
図2は、全反射プリズムの基材の屈折率n1を2.20とし、被測定物の屈折率n2を変化させた場合の潜り込み深さdpを表している。各グラフは、入射角度θの最小値が小さい側から大きい側の順に、屈折率n2が1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45および1.50の各場合の潜り込み深さdpと入射角度θとの関係を示している。例えば入射角度θが40.0[度]である場合には、潜り込み深さdpは、被測定物の屈折率n2に応じて、約2[μm]から約7[μm]まで変化する。
【0017】
次式により定義される臨界角θ0に入射角度θが近づくほど、潜り込み深さdpは深くなる。
θ0=arcsin(n2/n1)
【0018】
しかしながら、入射角度θが臨界角θ0よりも小さくなると、全反射面に入射する光が全反射されず、全反射プリズムを透過したのち被測定物に吸収されるため、ATR法による測定ができなくなる。このため、屈折率n2が明らかでない被測定物をATR法により測定する場合には、潜り込み深さdpを最大化する入射角度θを明らかにすることが必要となる。
【0019】
一方、測定の信頼性を高めるためには、全反射プリズムの基材の屈折率n1を被測定物の屈折率n2に近くすることが好ましい。中赤外領域の光に対する生体の屈折率は、従来、正確な値は明らかになっていないが、およそ1.20から1.50の範囲であると予測される。屈折率n1が4.0であるゲルマニウム(Ge)、および屈折率n1が2.20である硫化亜鉛(ZnS)は、上記の1.20から1.50の範囲にある被測定物の屈折率n2に対して差が大きい。
【0020】
発明者は、臨界角法を用いて、10[μm]の波長を含む光に対する唇の屈折率が1.32であり、指の屈折率が1.44であることを明らかにした。
図3は、臨界角法により屈折率を測定する構成を例示する図である。
【0021】
図3において、臨界角法を用いて屈折率を測定する構成は、第1回転ステージ31、分布帰還型量子カスケードレーザ(DFB-QCL:Distributed Feedback Quantum Cascade Laser)32、LD(Laser Diode)33、光路切替ミラー34、第2回転ステージ35、並進ステージ36、折り返しミラー37、開口38、プリズム39、放物面ミラー対40およびサーモパイルセンサ50等を含む。Sは被測定物である。
【0022】
分布帰還型量子カスケードレーザ32は、波数1050[cm-1]の光を射出する光源である。分布帰還型量子カスケードレーザ32から射出された光は、折り返しミラー37により、開口38側に反射され、開口38を通ってプリズム39に入射する。プリズム39に入射した光は、被測定物Sが接触している面で反射された後、プリズム39から出射し、放物面ミラー対40によりサーモパイルセンサ50上に集光する。サーモパイルセンサ50は、集光された光の光量に関する情報である光量情報を出力する。
【0023】
プリズム39の屈折率n1が被測定物Sの屈折率n2よりも高い場合には、入射角度θが臨界角θ0に達するまで、プリズム39内に入射した光はプリズム39内において全反射する。このため、屈折率n1が既知であるプリズム39を用い、被測定物Sがプリズム39に接触した状態において臨界角θ0を求めることにより、被測定物Sの未知の屈折率n2を測定できる。従来、中赤外領域における被測定物Sの屈折率n2を明らかにした報告はなく、今回初めて中赤外領域における被測定物Sの屈折率n2を明らかにした。
【0024】
<被測定物の屈折率に近い全反射プリズムの基材について>
実施形態では、被測定物との屈折率差が小さい全反射プリズムの基材について鋭意検討した。まず、基材の屈折率n1が異なる複数の全反射プリズムを用いて、屈折率n2の被測定物に対する入射角度θと潜り込み深さdpとの関係を比較した。
【0025】
表1は、全反射プリズムの屈折率n1と被測定物の屈折率n2との様々な組合せにおける潜り込み深さdpと入射角度θとの関係の一例を示す表である。
【表1】
【0026】
図3の構成を用いて測定した生体の唇の屈折率は、1.28~1.36程度、指の屈折率は1.442~1.446程度であった。表1の計算では、波長λを10[μm]とし、被測定物の屈折率n2を1.32または1.44とした。
【0027】
表1より、プリズムの屈折率n1が被測定物の屈折率n2に近いほど、臨界角θ0近傍での潜り込み深さdpが大きくなり、且つ、潜り込み深さdpの大きい角度範囲が広くなることがわかった。例えば、屈折率n1が1.91、屈折率n2が1.32である例2の場合には、臨界角θ0(43.7[度])以上でθ0+10.0[度]以下においてdp≧2[μm]となった。また、屈折率n2が1.32である場合に、硫化亜鉛(ZnS)を基材に含む従来の全反射プリズムを用いた場合よりも大きな潜り込み深さdpが得られ、2[μm]程度の測定できない深さ領域よりも深い潜り込み深さdpを得られることが分かった。
【0028】
屈折率n1が1.51、屈折率n2が1.32である例1の場合には、入射角度θが臨界角θ0(60.9[度])以上でθ0+10.0[度]以下においてdp≧2[μm]となった。且つ、入射角度θが臨界角θ0以上でθ0+5.0[度]以下においてdp≧4[μm]となった。例えば屈折率n2が1.32である場合に、2[μm]程度の測定できない深さ領域よりも深い潜り込み深さdpを得られることが分かった。
【0029】
屈折率n1が1.57、屈折率n2が1.44である例5の場合には、入射角度θが臨界角θ0(67.0[度])以上でθ0+0.8[度]以下においてdp≧10[μm]となった。例えば屈折率n2が1.44である場合に、10[μm]程度の測定できない深さ領域よりも深い潜り込み深さdpを得られることが分かった。
【0030】
屈折率n1が1.53、屈折率n2が1.44である例4の場合には、入射角度θが臨界角θ0(70.8[度])以上でθ0+1.0[度]以下においてdp≧10[μm]となった。例えば屈折率n2が1.44である場合に、10[μm]程度の測定できない深さ領域よりも深い潜り込み深さdpを得られることが分かった。
【0031】
表1の結果に基づき、生体への安全性と中赤外領域での透過率の観点から、発明者は全反射プリズムの基材として塩化ナトリウム(NaCl)を含むものを決定した。塩化ナトリウム(NaCl)の中赤外領域における屈折率は1.49程度である。なお、屈折率n1と屈折率n2が非常に近い値になると、臨界角θ0が90[度]に近づき、90[度]に極めて近い角度でしか潜り込みが得られなくなってしまう問題がある。また、屈折率n2には多少の個人差があるため、屈折率n1が屈折率n2よりも小さくなってしまうおそれもある。このことから、プリズムの屈折率n1と被測定物の屈折率n2の間にはある程度の差があることが好ましい。この観点でも、1.49という屈折率を有するNaClは、生体を被測定物とする全反射プリズムの基材として好適である。
【0032】
以上のように、本実施形態では、被測定物Sの屈折率n2が1.32または1.44であることを明らかにした。また、全反射面への入射角度θが臨界角θ0に近いほど被測定物Sへの潜り込み深さdpが大きくなることから、光源部からの光束の中心の全反射面への入射角度θcは、次の式(1)を満たすことが好ましい。
【数1】
【0033】
また、本実施形態では、10[μm]の波長の光に対する被測定物Sの屈折率n2が1.32、10[μm]の波長の光が入射角度θで全反射面に入射すると仮定したとき、屈折率n1が次の式(2)および式(3)を満たすことが好ましい。
【数2】
【数3】
また、本実施形態では、10[μm]の波長の光に対する被測定物Sの屈折率n2が1.32、10[μm]の波長の光が入射角度θで全反射面に入射すると仮定したとき、屈折率n1が次の式(2)および式(3)を満たすことが好ましい。
【数2A】
【数3A】
【0034】
また、本実施形態では、10[μm]の波長の光に対する被測定物Sの屈折率n2が1.44、10[μm]の波長の光が入射角度θで全反射面に入射すると仮定したとき、屈折率n1が次の式(4)および式(5)を満たすことが好ましい。
【数4】
【数5】
【0035】
また、本実施形態では、全反射プリズムの基材の屈折率n1が、1.32より大きく1.91以下であることが好ましく、1.32より大きく1.57以下であることがより好ましい。上記の屈折率n1とすることで、被測定物Sの内部への潜り込み深さdpを深くすることができ、且つ、潜り込み深さdpの大きい角度範囲を広くすることができる。また、血糖値測定において、グルコースの吸収が大きくし、測定感度を高める観点では、光の波長は、7[μm]以上12[μm]以下であることが好ましい。
【0036】
図4は、潜り込み深さdpと入射角度θとの関係の第3例を示す図である。
図4は、全反射プリズムの基材の屈折率n1を塩化ナトリウム(NaCl)の1.49とし、被測定物の屈折率n2を変化させた場合における潜り込み深さdpを表している。各グラフは、入射角度θの最小値が小さい側から大きい側の順に、屈折率n2が1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45の各場合の潜り込み深さdpと入射角度θとの関係を示している。
【0037】
図4に示すように、屈折率n2がいずれの場合にも入射角度θが臨界角θ0に近づくにつれ、潜り込み深さdpは深くなった。また、塩化ナトリウム(NaCl)を含む基材を用いると、
図1に示したゲルマニウム(Ge)や硫化亜鉛(ZnS)等の屈折率が高い基材を用いた場合と比較して、入射角度範囲dθ1およびdθ2がそれぞれ深くなった。入射角度範囲dθ1は、屈折率n2が1.40である場合に、潜り込み深さdpが2[μm]以上となる入射角度θの範囲を示す。入射角度範囲dθ2は、屈折率n2が1.40である場合に、潜り込み深さdpが10[μm]以上である入射角度θの範囲を示す。入射角度範囲dθ1およびdθ2が深くなることは、所望の潜り込み深さdpを確保するための入射角度θの許容範囲が広いことを意味している。
【0038】
9[μm]から10[μm]程度の中赤外領域の光源としては、連続したスペクトルを含む多波長光源が用いられることが多い。一般的に、多波長光源は拡散性を有する非平行光を射出する。全反射面への入射角度θの許容範囲が広いことにより、広がりを有する非平行光を射出する多波長光源であっても、被測定物の内部に潜り込む光の光量を増加させることができる。
【0039】
例えば、全反射面への光の入射角度θの許容範囲が狭いと、入射角度θを狙いの角度に調整するためのアパーチャやレンズ等の光学素子を設ける必要がある。入射角度θの許容範囲が広いことにより、光学素子を用いずに許容範囲内の入射角度により全反射面に容易に光を入射させることができる。また、光学素子を用いて光の入射角度を調整する場合、入射角度θの許容範囲が狭いとアライメントのわずかなずれにより光量損失が大きくなる。入射角度θの許容範囲が広いことにより、光学素子を用いて光の入射角度を調整する場合にも、光量損失を抑制してATR法による測定を行うことができる。
【0040】
以上のように、微弱光であるエバネッセント波であっても、入射角度θの許容範囲を広げることにより、容易に光量を確保できる。これにより測定のSN比(Signal/noise)比を向上させ、測定信頼性に優れた測定装置を提供できる。また、光量の増加により、簡易な光検出器を使用可能となるため、測定装置の低コスト化、小型化、軽量化等においても有利となる。
【0041】
以下、実施形態に係る測定装置の詳細を説明する。
【0042】
[第1実施形態]
<測定装置100の構成例>
図5および
図6を参照して、第1実施形態に係る測定装置100の構成について説明する。
図5は、測定装置100の構成を例示する図である。
図6は、全反射プリズム2の唇への接触例を示す図である。唇は被測定物Sに対応する。測定装置100は血糖値測定装置の一例である。
【0043】
図5に示すように、測定装置100は、多波長光源1と、全反射プリズム2と、検出部3と、処理部4と、表示部5と、を備える。測定装置100は、多波長光源1から射出された光Lを光ファイバ10により全反射プリズム2に導光する。多波長光源1は、7[μm]以上12[μm]以下の波長を含む光を前記全反射面に光束の中心の入射角度θcで入射させる光源部の一例である。なお、測定装置100は、光ファイバ10以外の導光手段を備えてもよい。
【0044】
全反射プリズム2は、光入射部21と、被測定物Sが接触する全反射面22と、光出射部23と、を有する。光入射部21から入射した光Lは、全反射面22に入射し、全反射面22により全反射されつつ、全反射面22の外側、すなわち被測定物S側にエバネッセント波を生じさせる。
【0045】
エバネッセント波は、全反射面22に接触する被測定物Sの内部に潜り込み、被測定物の吸光スペクトルに応じた光減衰を受ける。全反射面22により全反射されつつ、エバネッセント波の光減衰を受けた光Lは、光出射部23を通って全反射プリズム2の外部に出射され、検出部3により受光される。なお、全反射プリズム2と検出部3との間に、光Lを導光するための光ファイバがさらに設けられていてもよい。
【0046】
検出部3は、全反射面22で反射された光Lの光強度を検出する。検出部3は、受光した光強度Dに応じた電気信号を処理部4に出力する。処理部4は、検出部3による光強度Dに基づき、被測定物Sにおける吸光度に関する情報である吸光度情報を演算により取得する。また、処理部4は、該吸光度情報に基づいて血糖値に関する情報である血糖値情報uを演算により取得し、この血糖値情報uを表示部5に出力する。
【0047】
表示部5は、処理部4から入力した血糖値情報uを表示する。なお、処理部4は、表示部5の他、血糖値情報uの記憶部や血糖値情報uの送信部に血糖値情報uを出力することもできる。
【0048】
全反射プリズム2は、塩化ナトリウム(NaCl)を含んで構成される。
図6に示すように、光入射部21を通って入射した光Lは、全反射面22において1回全反射する。ここでは、光Lの光束の中心の全反射面22への入射角度θcは、臨界角θ0(62.8[度])よりもわずかに大きい63.0[度]である。射出される光束の中心の入射角度θcは、臨界角θ0からθ0+5.0[度]の範囲内にあることが好ましい。ただし、光束の中心から外れた領域でも十分な光量を得られる場合には、入射角度θcが臨界角θ0からθ0+5.0[度]の範囲外にあっても、測定を行うことは可能である。測定装置100は、被測定物Sとしての上唇の内側が全反射面22に接触した状態において測定を行うことができる。
【0049】
<処理部4の機能構成例>
図7は、処理部4の機能構成を例示するブロック図である。処理部4は、入力部41と、第1出力部42と、第2出力部43と、を備える。処理部4は、これら各機能を電気回路で実現する他、これら各機能の少なくとも一部をソフトウェア(CPU:Central Processinng Unit)により実現してもよい。また処理部4は、複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能を実現することもできる。
【0050】
第1出力部42は、検出部3により検出された光強度Dに応じた電気信号を、入力部41を介して入力し、光強度Dに基づき、吸光度情報qを出力する。例えば、検出部3は波長ごとに光強度Dを処理部4に出力し、第1出力部42は波長ごとの光強度Dに基づいて演算により取得した吸光度情報qを出力できる。
【0051】
第2出力部43は、第1出力部42からの吸光度情報qに基づき、血糖値情報uを出力する。例えば、第2出力部43、吸光度情報qを解析することにより取得される血糖値情報uを表示部5に出力できる。
【0052】
なお、第2出力部43は、血糖値情報uに限らず、生体情報を出力することもできる。例えば生体情報は、生体に含まれる組成に関する情報である組成情報を含み、この組成情報は、グルコース、皮膚組織、コラーゲンおよび脂質の少なくとも1つに関する情報を含むものである。
【0053】
<第1実施形態に係る深さdpと入射角度θとの関係>
図8から
図10は、第1実施形態に係る潜り込み深さdpと入射角度θとの関係を例示する図である。
図8は第1例、
図9は第2例、
図10は第3例をそれぞれ示している。
【0054】
図8は、屈折率n1が1.490であり、屈折率n2が1.32および1.44である場合の潜り込み深さdpと入射角度θとの関係を示している。
図8における屈折率n1は、塩化ナトリウム(NaCl)を含む全反射プリズム2の基材の屈折率である。破線のグラフ81は屈折率n2が1.32である唇の場合、実線のグラフ82は屈折率n2が1.44である指の場合をそれぞれ示している。グラフ83は、屈折率n2が1.32の場合の臨界角θ0である62.8[度]を表している。グラフ84は、屈折率n2が1.44の場合の臨界角θ0である75.9[度]を表している。
【0055】
潜り込み深さdpは、臨界角θ0からのずれに応じて急速に減少するため、臨界角θ0から5.0[度]以下のずれの範囲内の入射角度θcで光Lを照射することが好ましい。このため、ここでは63.0[度]としている。
【0056】
図9は、屈折率n1が2.20であり、屈折率n2が1.32および1.44である場合の潜り込み深さdpと入射角度θとの関係を示している。
図9における屈折率n1は、硫化亜鉛(ZnS)を含む全反射プリズム2の基材の屈折率である。
【0057】
破線のグラフ91は屈折率n2が1.32である唇の場合、実線のグラフ92は屈折率n2が1.44である指の場合をそれぞれ示している。グラフ93は、屈折率n2が1.32の場合の臨界角θ0である37.0[度]を表している。グラフ94は、屈折率n2が1.44の場合の臨界角θ0である41.1[度]を表している。光源部からの光束の中心の入射角度θcは、唇を測定する場合には37.0[度]、指を測定する場合には42.0[度]等にすることができる。
【0058】
図10は、屈折率n1が4.00であり、屈折率n2が1.32および1.44である場合の潜り込み深さdpと入射角度θとの関係を示している。
図10における屈折率n1は、ゲルマニウム(Ge)を含む全反射プリズム2の基材の屈折率である。
【0059】
破線のグラフ101は屈折率n2が1.32である唇の場合、実線のグラフ102は屈折率n2が1.44である指の場合をそれぞれ示している。グラフ103は、屈折率n2が1.32の場合の臨界角θ0である19.3[度]を表している。グラフ104は、屈折率n2が1.44の場合の臨界角θ0である21.2[度]を表している。光源部からの光束の中心の入射角度θcは、唇を測定する場合には20.0[度]、指を測定する場合には22.0[度]等にすることができる。
【0060】
図11は、被測定物Sが指である場合を例示する図である。
図11に示すように、光入射部21を通って入射した光Lは、全反射面22において1回全反射する。ここでは、光Lの光束の中心の全反射面22への入射角度θcは、臨界角θ0よりもわずかに小さい76.0[度]である。測定装置100は、被測定物Sとしての指の腹が全反射面22に接触した状態において測定を行うことができる。
【0061】
ATR法では、被測定物Sにおける吸光成分が希薄であること等により、十分な測定感度が得られない場合には、全反射プリズム2の内部において光を複数回全反射させることにより測定感度を向上させることもできる。
【0062】
図12は、全反射プリズム2の内部において光を複数回全反射させる構成を例示する図である。例えば全反射プリズム2の厚みを薄くすること等により、光の反射回数を増やすことができる。
図12の例では、全反射面22において光は2回全反射している。全反射回数が増えるほど吸光量が増えるため、
図12の例では、1回全反射させる場合と比較して測定の信頼性が高めることができる。
【0063】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る測定装置について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0064】
図13から
図15を参照して、第2実施形態に係る測定装置100aの構成について説明する。
図13は、測定装置100aの構成を例示する図であり、
図13(a)は上面図、
図13(b)は
図13(a)のXIIIB-XIIIB断面図である。
図14および
図15は、測定装置100aが備える全反射プリズム2aを示す図である。
図14は正面図、
図15は側面図である。
【0065】
図13から
図15に示すように、測定装置100aは、全反射プリズム2aを備える。全反射プリズム2aは、全反射面22aにおける光Lの入射光線L1および反射光線L2を含む面である入射面140に交差する方向へ光Lを反射する交差反射面26を備える。本実施形態では、全反射プリズム2aは、交差反射面26-1、26-2、26-3、26-4、26-5および26-6を含む複数の交差反射面26を備える。
【0066】
図14および
図15に示すように、光入射部21aから入射した光Lは第1反射面24、全反射面22aおよび第2反射面25により、この順でそれぞれ反射された後、交差反射面26-1により入射面140に交差する方向へ反射される。入射面140に交差する方向は、ここではY軸を示す矢印が向く方向であるY軸正方向である。
【0067】
交差反射面26-1により反射された光Lは、交差反射面26-2、第1反射面24、全反射面22a、第2反射面25、交差反射面26-3、交差反射面26-4、第1反射面24、全反射面22a、第2反射面25、交差反射面26-5、交差反射面26-6、第1反射面24、全反射面22a、第2反射面25により、この順でそれぞれ反射される。その後、光出射部23aから出射される。ここでは、光Lは、全反射面22aにより4回全反射される。
【0068】
光入射部21aに入射した光Lが、入射した方向と平行であって、且つ反対方向へ反射されて出射されるという観点では、全反射プリズム2aは、リトロリフレクタ(再帰反射)構造を備えるということもできる。
【0069】
全反射プリズムの基材として塩化ナトリウム(NaCl)を用いると、全反射面により光Lを全反射させるための入射角度θは、ゲルマニウム(Ge)等を用いる場合と比較して大きくなる。このため、ゲルマニウム(Ge)等を用いる場合と比較して、測定感度を上げるために増加させる全反射回数が制限される。
【0070】
測定装置100aは、全反射プリズム2aを備えることにより、光源部からの光束の中心の入射角度θcを大きくする場合にも全反射面22aによる全反射回数を増やし、測定装置100aによる測定感度を向上させることができる。
【0071】
図14および
図15では、被測定物Sが指である場合を示したが、被測定物Sが唇である場合にも同様の効果が得られる。また
図14および
図15において、交差反射面26は、全反射プリズム2aに入射する光Lに対して45[度]傾斜しているが、これに限定されるものではない。全反射プリズム2aに入射する光Lに対する交差反射面26の傾斜角度は、塩化ナトリウム(NaCl)を基材に含む全反射プリズム2aの空気(屈折率1.0)に対する臨界角である約42[度]よりも、入射角度が小さくなる傾斜角度であればよい。
【0072】
[その他の好適な実施形態]
全反射プリズムの基材に塩化ナトリウム(NaCl)を含むと、全反射プリズムが潮解する場合がある。潮解とは、物質が空気中の水を吸収して水溶液となる現象をいう。基材に塩化ナトリウム(NaCl)を含む全反射プリズムは、潮解により変形または変質するため、従来、通常の温湿度環境下では使用が困難だった。通常の温湿度環境とは、温度が17[度]以上28[度]以下、相対湿度が40[%]以上70[%]以下である温湿度環境をいう。
【0073】
本実施形態では、潮解による変形または変質を防ぐために、基材に塩化ナトリウム(NaCl)を含む全反射プリズムの表面を被覆する被覆層を備えてもよい。例えば、酸化アルミニウム(Al203)を含む厚みが550[nm]程度の被覆層を、原子層堆積成膜技術を用いて全反射プリズムの表面に成膜することにより、被覆層を形成できる。
【0074】
原子層堆積技術は、気相の連続的な化学反応を利用した薄膜形成技術である。原子層堆積技術により原子層レベルで膜厚と材質のコントロールができ、極めて薄く緻密な成膜が可能となる。酸化アルミニウム(Al203)は、比較的低温での成膜も可能である。塩化ナトリウム(NaCl)は、熱耐性が低く脆い材料であるため、原子層堆積成膜技術を用いた成膜方法が適している。
【0075】
実施形態に係る測定装置は、表面に被覆層を備える全反射プリズムを用いることにより、通常の温湿度環境下において、基材に塩化ナトリウム(NaCl)を含む全反射プリズムを使用できる。また、全反射プリズムが被覆層を備えると、洗浄に伴う潮解を防ぐこともできる。このため、測定後に全反射プリズムを洗浄しつつ、全反射プリズムを繰り返し使用可能となる。測定ごとに全反射プリズムを使い捨てする必要がないため、コスト面において有利である。さらに測定ごとに全反射プリズムの取り外しと取り付けの作業を行う必要もないため、効率的に測定を行うことができる。
【0076】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0077】
また、実施形態は、測定方法を含む。例えば、測定方法は、光源部により、被測定物が接触する全反射面に10μmの波長を含む光を入射角度θcで入射させ、検出部により、前記全反射面で反射された前記光の光強度を検出し、第1出力部により、前記検出部によって検出された前記光強度に基づき、前記被検体における吸光度に関する情報である吸光度情報を出力し、第2出力部により、前記吸光度情報に基づき、生体に関する情報である生体情報を出力し、前記光に対する前記全反射プリズムの基材の屈折率をn1とし、前記被測定物の屈折率n2を1.32または1.44とすると、前記入射角度θcは、上述した式(1)により表される。このような測定方法により、上述した測定装置100と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0079】
1 多波長光源(光源部の一例)
2、2a 全反射プリズム
21、21a 光入射部
22、22a 全反射面
23、23a 光出射部
24 第1反射面
25 第2反射面
26、26-1~26-6 交差反射面
3 検出部
4 処理部
41 入力部
42 第1出力部
43 第2出力部
5 表示部
10 光ファイバ
11~12、81~84、91~94、101~104 グラフ
31 第1回転ステージ
32 分布帰還型量子カスケードレーザ
33 LD
34 光路切替ミラー
35 第2回転ステージ
36 並進ステージ
37 折り返しミラー
38 開口
39 プリズム
40 放物面ミラー対
50 サーモパイルセンサ50
140 入射面
dp 潜り込み深さ
dθ1、dθ2 入射角度範囲
L 光
D 光強度
n1、n2 屈折率
S 被測定物
u 血糖値情報
θc 入射角度
θ0 臨界角
λ 波長
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】