(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138234
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】樹脂粒子、トナー、現像剤、樹脂粒子の製造方法、及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20230922BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20230922BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/08 381
G03G9/097 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117347
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2022041557
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 甲介
(72)【発明者】
【氏名】長友 庸泰
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA09
2H500BA09
2H500CA06
2H500CA44
2H500EA39B
2H500EA42B
2H500EA44B
2H500FA17
(57)【要約】
【課題】定着性、保存性等を維持しつつ、優れた画像品質が得られる、環境に優しいトナーに適した樹脂粒子を提供することである。
【解決手段】樹脂粒子が、バイオマス由来成分と、リサイクル由来成分とを含有する結着樹脂を含み、前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス由来成分と、リサイクル由来成分とを含有する結着樹脂を含み、
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である、樹脂粒子。
【請求項2】
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が20質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が30質量%以上50質量%以下である、請求項2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記結着樹脂中の前記バイオマス由来成分の含有率が、前記結着樹脂中の前記リサイクル由来成分の含有率を上回る、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記結着樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含む、請求項1又は4に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
さらに、着色剤と離型剤とを含有する、請求項1又は4に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1又は4に記載の樹脂粒子に外添剤が添加されてなる、トナー。
【請求項8】
請求項7に記載のトナーを含む現像剤。
【請求項9】
バイオマス由来成分とリサイクル由来成分とを含有する結着樹脂及び/又は当該結着樹脂の前駆体を用いた、樹脂粒子の製造方法であって、
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である、樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
(a)結着樹脂及び/又は当該結着樹脂の前駆体を、有機溶媒に溶解させて溶解液を作製し、
(b)前記溶解液に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させ、
(c)前記水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得て、
(d)前記微粒子分散液の微粒子を凝集させて凝集粒子を得ることを含む、請求項9に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の樹脂粒子の製造方法によって得られた樹脂粒子に外添剤を添加することを含む、トナーの製造方法。
【請求項12】
バイオマス由来成分とリサイクル由来成分とを含有する結着樹脂及び/又は当該結着樹脂の前駆体を用いて製造された、樹脂粒子であって、
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である、樹脂粒子。
【請求項13】
前記結着樹脂及び/又は前記結着樹脂の前駆体と、着色剤と、離型剤とを、有機溶媒に溶解させて溶解液を調製し、
前記溶解液に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させ、
前記水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得て、
前記微粒子分散液の微粒子を凝集させることによって製造された、請求項12に記載の樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、トナー、現像剤、樹脂粒子の製造方法、及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル等の樹脂容器のリサイクルが各自治体で進められており、リサイクル樹脂材料を利用する新規用途開発の要望が高い。そのような観点から、トナーの原料としても、回収されたポリエチレンテレフタレートを利用することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、環境への配慮から、カーボンニュートラルな材料を利用することも知られている。カーボンニュートラルは、例えばバイオマス由来の物質を利用することで、全体として見れば大気中の二酸化炭素を増加させてないとする考え方である。例えば、トナーにおいては、離型剤にカルナウバワックス、キャンデリラワックス等を用いることが知られている。しかしながら、カーボンニュートラルを十分に満足させるために、トナー中で比較的大きな割合を占める結着樹脂にも、バイオマス由来の樹脂を使用することが求められている。
【0004】
上述のようなリサイクル樹脂やバイオマス由来の樹脂を使用してトナーの結着樹脂を構成した場合、定着性、保存性等を適切に備えていても、画像品質が十分でない場合があり、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑みて、本発明の一態様の課題は、定着性、保存性等を維持しつつ、優れた画像品質が得られる、環境に優しいトナーに適した樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による樹脂粒子は、バイオマス由来成分と、リサイクル由来成分とを含有する結着樹脂を含み、前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、定着性、保存性等を維持しつつ、優れた画像品質が得られる、環境に優しいトナーに適した樹脂粒子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施態様について説明する。
【0009】
[樹脂粒子]
本実施形態に係る樹脂粒子は結着樹脂を含み、当該結着樹脂は、バイオマス由来成分とリサイクル由来成分とを含有する。そして、結着樹脂中の、バイオマス由来成分とリサイクル由来成分との合計量が、結着樹脂全量に対して50質量%以下である。また、本実施形態に係る樹脂粒子は、トナーに適したものである。トナーは、樹脂粒子からなるトナー母体粒子に外添剤を添加すること(後に詳述)によって得られる。
【0010】
本明細書では、バイオマス由来成分及びリサイクル由来成分(それぞれ後に詳述)を合わせて環境対応成分と呼ぶ場合がある。環境対応成分の割合を向上させることで、環境への配慮を高めた製品(環境対応性の高い製品)を得ることができる。その一方で、用いる環境対応成分の種類、組合せ、用途等に応じ、定着性、保存性、耐久性等のトナーとしての性質が良好になるよう調整した場合、印刷時の画像の品質が十分でない場合があった。発明者らは、結着樹脂中の環境対応樹脂の合計を所定の割合とすることで、定着性、保存性等も良好に維持しつつ、画像品質を向上できることを見出した。画像品質は、主として、トナーが適切な粒径、円形度等を有することで向上できる。
【0011】
バイオマス由来成分及びリサイクル由来成分の合計の含有率(例えばバイオマス由来のモノマー構成単位及びリサイクル由来のモノマー構成単位を合わせた含有率)が、結着樹脂の全量に対して、50質量%以下であり、好ましくは50質量%未満であってよい。バイオマス由来成分及びリサイクル由来成分の合計が、50質量%以下であることで、画像品質を向上できる。より具体的には、適切な平均粒径及び平均円形度を有する樹脂粒子を提供でき、ひいては適切な平均粒径及び平均円形度を有するトナーを提供できる。また、バイオマス由来成分及びリサイクル由来成分の合計の含有率は、結着樹脂の全量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であってよい。バイオマス由来成分及びリサイクル由来成分の合計が、上記範囲であることで、環境により優しい製品(環境対応性の高い製品)を提供でき、特に30質量%以上とすることで、環境対応性が高いと認知されやすい。
【0012】
本実施形態によれば4.5μm以上6.0μm未満の好ましい体積平均粒径(Dv)を有するトナー粒子が得られる。体積平均粒径は、コールターカウンター等を用いて測定することができる。また、平均円形度0.950以上のトナー粒子を得ることができる。平均円形度は、フロー式粒子像分析装置等を用いて測定することができる。上記の体積平均粒径及び平均円形度を有するトナーによって、高品質の画像が得られる。
【0013】
(バイオマス由来成分)
バイオマス由来成分とは、生物由来(植物由来又は動物由来)の化合物を原料とする成分であり、例えば、樹脂中のモノマー単位であってよい。バイオマス由来成分は、樹脂粒子中の後述する結晶性樹脂に含有されていてもよく、非晶性樹脂に含有されていてもよく、離型剤等のその他の成分に含まれていてもよい。例えば、結着樹脂を構成するポリエステル樹脂にバイオマス由来成分が含まれている場合、ポリエステルを合成する際に、ポリエステルを構成するアルコール成分及び酸成分のそれぞれにおいてバイオマス由来のものと石油由来のものとの比率を調整することで、環境対応性(環境への配慮の高さ)とトナー品質とを調整できる。
【0014】
本明細書において、バイオマス由来成分は、放射性炭素同位体14C濃度(以下、単に「14C濃度」と称することもある)が10.8pMC以上、好ましくは20pMC以上である成分であってよい。14C濃度が10.8pMC以上であることで、環境へより配慮した(環境対応性の高い)樹脂粒子、ひいては環境へより配慮した(環境対応性の高い)トナーを得ることができ、環境への負担軽減を促進できる。なお、「pMC」とは、パーセントモダンカーボン(percent Modern Carbon)の略であり、1950年のバイオマス中の14Cと12Cとの比(14C/12C)を100pMCと定義したものである。
【0015】
14Cは自然界(大気中)に存在し、植物が活動している間は光合成によって植物内に取り込まれ、植物内の14C濃度は大気中に存在する14C濃度と平衡な濃度(107.5pMC)となっている。しかしながら、植物が生命活動を停止した段階から光合成による14Cの取り込みは停止して、14Cの半減期5730年に従い14C濃度は減少する。生物を源とする化石資源は生命活動停止から数万年~数億年を経過しているため、14C濃度は殆ど検出されない。
【0016】
14C濃度は、下記式のバイオマス度で表すこともできる:
バイオマス度(%)=14C濃度(pMC)×0.935
【0017】
なお、14C濃度が10.8pMC以上である場合、上記バイオマス度が10%以上であることを意味する。これは、カーボンニュートラルの観点から好ましい濃度である。
【0018】
14C濃度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、放射性炭素年代測定法が特に好ましい。その測定手順は次のとおりである。まず、トナーを燃焼させ、そのCO2(二酸化炭素)を還元し、C(グラファイト)を得る。次いで、該グラファイト中の14C濃度をAMS(Accelerator Mass Spectroscopy)によって計測する。このAMSによる測定は、例えば特許第4050051号公報等に開示されている。
【0019】
なお、本実施形態による樹脂粒子若しくはトナーの自体の放射性炭素同位体14C濃度は、好ましくは10.8pMC以上、より好ましくは20pMC以上であってよい。
【0020】
本実施形態では、バイオマス由来成分は、トナーの結着樹脂を構成する構成単位の一部として組み込まれていてよい。例えば、ポリエステル樹脂のアルコール単位を構成していてよい。ポリエステル樹脂を合成する際には、バイオマス由来成分は、多価アルコール(ポリオール)として添加することができる。
【0021】
本実施形態による樹脂粒子において、バイオマス由来成分は、結着樹脂の全量に対して、好ましくは5質量%以上35質量以下、より好ましくは8質量%以上30質量%以下であってよい。上記範囲とすることで、よりトナーのバイオマス化を進めることができ、また低温定着性を向上できるとともに、画像品質の向上を図ることができる。樹脂粒子における結着樹脂中のバイオマス由来成分の比率は、製造に使用される原料から算出することができる。
【0022】
(リサイクル由来成分)
リサイクル由来成分は、リサイクル材料、すなわち廃棄され、回収された材料に由来する成分である。リサイクル由来成分も、後述する結晶性樹脂に含有されていてもよく、非晶性樹脂(プレポリマーを含む)に含有されていてもよく、その他の成分に含まれていてもよい。
【0023】
リサイクル由来成分の原料となるリサイクル材料は、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等であってよい。このうち、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステルが、トナーの材料として特に好ましい。
【0024】
リサイクル由来成分の材料(リサイクル材料)は、フレーク状に加工したものが一般的である。また、リサイクル材料がPETを含む場合、PET中のジエチレングリコールの含有量は3質量%以下であり、好ましくは0.5~3重量%、より好ましくは1.0~2.5重量%である。このジエチレングリコールはPETの製造過程でエチレングリコールが脱水して二量体化し、PET中に残存したものである。また、リサイクルPET材料の重量平均分子量(Mw)は、30,000~100,000であると好ましい。リサイクルPET材料の固有粘度数[-]は、好ましくは0.70以上0.90以下、より好ましくは0.80以上0.85以下である。なお、リサイクル材料には、回収された材料でない材料(非リサイクル材料)、例えばオフスペックの繊維クズ、ペレット等が含まれていてもよい。
【0025】
リサイクル由来成分は、結着樹脂の全量に対して、好ましくは10質量%以上35質量以下、より好ましくは15質量%以上30質量%以下であってよい。上記範囲とすることで、リサイクル原料の利用促進を図ることができる。樹脂粒子における結着樹脂中のリサイクル由来成分の比率は、製造に使用される原料から算出することができる。
【0026】
なお、結着樹脂中のバイオマス由来成分の含有率Rbの、結着樹脂中のリサイクル由来成分の含有率Rrに対する比の値(Rb/Rr)は、好ましくは0.1以上5以下、より好ましくは0.3以上3以下であってよい。さらに、トナーの低温定着性を向上させるという観点からは、結着樹脂中のバイオマス由来成分の含有率は、結着樹脂中のリサイクル由来成分の含有率を上回ることが好ましい。すなわち、上記比の値(Rb/Rr)が1超であると好ましい。
【0027】
(非晶性樹脂)
本実施形態における結着樹脂は、非晶性樹脂を含むことが好ましい。また、結着樹脂中の非晶性樹脂が、ポリエステル樹脂であると好ましい。特に、電子写真における静電潜像現像用トナーとして用いる場合には、結着樹脂がポリエステル樹脂を含むことにより、良好な定着性が得られる。本明細書では、上記のポリエステル骨格を含む樹脂には、本実施形態による作用・効果を妨げるものでなければ、例えば、ポリエステル樹脂とポリエステル骨格以外の骨格を有する樹脂とのブロックポリマー等も含み得る。但し、ポリエステル樹脂を用いることで、得られる着色樹脂粒子の均一性が高くなる。
【0028】
非晶性ポリエステル樹脂としては、ラクトン類の開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の縮重合物、多価アルコールと多価カルボン酸との縮重合物等が挙げられ、設計の自由度の観点から多価アルコールと多価カルボン酸との縮重合物が好ましい。
【0029】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、通常1,000~30,000、好ましくは3,000~15,000、さらに好ましくは5,000~12,000である。重量平均分子量を1,000以上とすることで耐熱保存性が向上し、30,000以下とすることで、静電潜像現像用トナーの低温定着性を向上できる。
【0030】
また、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は35℃以上80℃以下、好ましくは40℃以上70℃以下、より好ましくは45℃以上65℃以下であってよい。ガラス転移温度を35℃以上とすることで、高温環境下、例えば真夏の使用環境下でのトナーの変形を防止したり、トナー粒子同士がくっつくことを防止したりできる。また、ガラス転移移温度を80℃以下とすることで、静電潜像現像用トナーとして用いた場合の定着性を向上できる。
【0031】
非晶性ポリエステル樹脂は、トナー100質量部に対して、好ましくは50質量部以上90質量部以下、より好ましくは60質量部以上80質量部以下含まれていてよい。上記範囲とすることで、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化することを抑制でき、低温定着性低下を抑制できる。
【0032】
<多価アルコール>
非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールとしては、ジオール(1-1)と3価以上の多価アルコール(1-2)が挙げられ、(1-1)単独、又は(1-1)と少量の(1-2)の混合物が好ましい。
【0033】
ジオール(1-1)としては以下のものを挙げることができる:
アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等);
アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);
ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等);
上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物;3,3′-ジフルオロ-4,4′-ジヒドロキシビフェニル、等の4,4′-ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-フェニル-1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;
ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類;
上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキ
サイド、ブチレンオキサイド等)付加物。
【0034】
上記のうち好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2~12のアルキレングリコールとの併用である。
【0035】
3価以上の多価アルコール(1-2)としては、3~8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0036】
<多価カルボン酸>
非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸としては、ジカルボン酸(2-1)及び3価以上の多価カルボン酸(2-2)が挙げられ、ジカルボン酸(2-1)単独、又はジカルボン酸(2-1)と少量の3価以上の多価カルボン酸(2-2)との混合物が好ましい。
【0037】
ジカルボン酸(2-1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸等);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、3-フルオロイソフタル酸、2-フルオロイソフタル酸、2-フルオロテレフタル酸、2,4,5,6-テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6-テトラフルオロテレフタル酸、5-トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4′-ビフェニルジカルボン酸、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4′-ビフェニルジカルボン酸、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3′-ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸、及び炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸である。
【0038】
3価以上の多価カルボン酸(2-2)としては、炭素数9~20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)等が挙げられる。なお、多価カルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いて多価アルコール(1)と反応させてもよい。
【0039】
多価アルコールと多価カルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1~1/2、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.3/1~1/1.3である。
【0040】
(着色剤)
本実施形態による樹脂粒子は、さらに着色剤を含有し得る。着色剤としては、公知の染料及び顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
【0041】
(離型剤)
本実施形態による樹脂粒子は、さらに離型剤も含有し得る。離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、樹脂中に分散されることにより、定着ローラとトナー界面との間で離型作用を発揮し、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好となる。
【0042】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;等の天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;等が挙げられる。さらに、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、等を用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上120℃以下が好ましく、60℃以上90℃以下がより好ましい。融点が、50℃以上であれば、離型剤が耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止でき、120℃以下であれば、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。
【0044】
離型剤の溶融粘度としては、該離型剤の融点より20℃高い温度での測定値として、5cps以上1,000cps以下が好ましく、10cps以上100cps以下がより好ましい。溶融粘度が、5cps以上であれば、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であれば、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。
【0045】
トナーにおける離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%以上40質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましい。含有量が、40質量%以下であれば、トナーの流動性悪化を防止することができる。
【0046】
離型剤として、生物由来若しくは天然由来の化合物を用いることで、トナー全体のバイオマス化を向上させることができる。
【0047】
(結晶性樹脂)
本実施形態による樹脂粒子における結着樹脂は、上述の非晶性樹脂以外に、結晶性樹脂を含有していてよい。結晶性樹脂を含有することで、トナーの低温定着性を向上させることができる。
【0048】
結晶性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、及び変性結晶性樹脂の1以上が挙げられるが、このうち、ポリエステル樹脂が好ましい。上述の非晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを併用することで、耐熱保存性及び低温定着性が共に優れたトナーを提供できる。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体から得られる。なお、本実施形態において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えばプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0050】
<多価アルコール>
結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオール等が挙げられる。飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0051】
飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0052】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<多価カルボン酸>
非晶性ポリエステルを構成する多価カルボン酸としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。さらに、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
【0053】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性及び軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステル等を設計、使用する等の方法が挙げられる。
【0055】
本実施形態における結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定等により確認することができるが、簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1若しくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例としてあげることができる。
【0056】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量については、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、鋭意検討した結果、o-ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3,000~30,000、数平均分子量(Mn)で1,000~10,000、Mw/Mnが1~10であることが好ましい。さらには、重量平均分子量(Mw)で5,000~15,000、数平均分子量(Mn)で2,000~10,000、Mw/Mnが1~5であることが好ましい。
【0057】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上、転相乳化法による微粒子の作製のためには、7mgKOH/g以上であることがより好ましく、一方、ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。また、結晶性高分子の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下がより好ましい。
【0058】
(プレポリマー)
本実施形態による樹脂粒子の製造においては、重合度の低いポリマー、すなわちプレポリマー(反応性前駆体)を用いてもよい。プレポリマーを用いることで、トナーの低温定着性を向上させることができる。プレポリマーは、後述の油相調製工程(a)にて、添加することができる。プレポリマーとしては、活性水素基と反応可能な基を持つポリエステルが挙げられる。活性水素基と反応可能な基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基等が挙げられる。これらの中でも、非晶性ポリエステル樹脂にウレタン結合又はウレア結合を導入可能な点で、イソシアネート基が好ましい。
【0059】
プレポリマーは、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有していてもよい。
【0060】
イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物等が挙げられる。活性水素基を有するポリエステル樹脂は、例えば、ジオールと、ジカルボン酸と、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかと縮重合することにより得られる。3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸は、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0061】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂のガラス転移点を20℃以下に制御する観点から、例えば、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素数3以上10以下の脂肪族ジオールを使用することが好ましく、樹脂中のアルコール成分の50mol%以上使用することがより好ましい。これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
プレポリマーにおけるポリエステル樹脂は非晶性樹脂であることが望ましく、また、樹脂鎖に立体障害を持たせることで定着時の溶融粘度が低下し、低温定着性がより発現しやすくなる。このため、脂肪族ジオールの主鎖は下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0063】
【化1】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、nは3~9の奇数を表す。但し、n個の繰り返し単位において、R
1及びR
2はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。]
【0064】
ここで、本実施形態における脂肪族ジオールの主鎖とは、脂肪族ジオールが有する2つのヒドロキシル基間を最短数で結ばれた炭素鎖のことである。主鎖の炭素数は奇数である場合、偶奇性により結晶性が低下するので好ましい。また、少なくとも1つ以上の炭素数1~3のアルキル基を側鎖に有する場合、立体性により主鎖分子間の相互作用エネルギーが低下するのでより好ましい。
【0065】
ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの無水物や低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。これらの中でも、ポリエステル樹脂のTgを20℃以下に制御する観点から、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、樹脂中のカルボン酸成分の50質量%以上使用することがより好ましい。これらのジカルボン酸は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0066】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の脂肪族アルコール;トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0067】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸等が挙げられ、特にはトリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。また、これらの無水物や、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。
【0068】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネート等が挙げられる。
【0069】
ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4'-及び/又は4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5~20質量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4',4"-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-及び2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;m-及びp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族ジイソシアネート;リジントリイソシアネート、3価以上のアルコールのジイソシアネート変性物等の3価以上のポリイソシアネート;これらのイソシアネートの変性物が挙げられ、これらの2種以上の混合物であっても良い。イソシアネートの変性物としては、例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物等が挙げられる。
【0070】
(帯電制御剤)
本実施形態によるトナーには、帯電制御剤が添加されていてもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット株式会社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。帯電制御剤は性能を発現し定着性等への阻害がない範囲の量で用いられればよく、トナー中に0.5~5質量%、好ましくは0.8~3質量%含まれるのが良い。
【0071】
[樹脂粒子の製造方法]
本実施形態による樹脂粒子の製造方法は、少なくとも、(a)油相調製工程、(b)転相乳化工程、(c)脱溶媒工程、及び(d)凝集工程を含んでいる。さらに、必要に応じて、水相作製工程、融着工程、シェル化工程、洗浄工程、乾燥工程、アニーリング工程等のその他の工程を任意のタイミングで含み得る。
【0072】
<工程a:油相調製工程>
工程aは、結着樹脂及び/又は結着樹脂の前駆体(結着樹脂となるモノマー若しくはププレポリマー等)と着色剤と離型剤とを有機溶媒に溶解又は分散させた溶解液を作製する工程である。まず、有機溶媒中に樹脂、着色剤、プレポリマー等を溶解あるいは分散させた油相を作製する。油相を作製するには、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤等を徐々に添加していき、溶解又は分散させればよい。溶解又は分散手段としては公知のものが使用でき、例えばビーズミルやディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0073】
工程aにて用いられる結着樹脂又は結着樹脂の前駆体は、バイオマス由来成分とリサイクル由来成分とを合わせて50質量%以下で含有するものである。よって、例えば、バイオマス由来材料(バイオマス由来樹脂、バイオマス由来モノマー等)及びリサイクル由来材料(リサイクル由来樹脂等)を50質量%以下で含む材料から合成された樹脂を利用できる。別の言い方をすると、石油由来材料を50質量%超で含む材料から合成された樹脂を利用できる。
【0074】
工程aにおいて用いられる有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であるものが、後に除去が容易になることから好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。有機溶媒中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系の溶媒若しくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒を用いた方が溶解性が高く好ましい。上記のうち、特に溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0075】
工程a(油相作成工程)の後、水相調製工程を含んでいてもよい。水相調製工程は、水相(水系媒体)を調製する工程である。水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、又はこれらの混合物が挙げられる。水と混和可能な溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、又は低級ケトン類が挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、又はエチレングリコール等が挙げられる。低級ケトン類としては、例えば、アセトン、又はメチルエチルケトンが挙げられる。また、エステル類である酢酸エチルが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
<工程b:転相乳化工程>
工程bは、工程aで得られた溶解液に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程である。本実施形態では、油相をアンモニア水等で中和した後、それにイオン交換水を添加していき、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化によって微粒子分散液を得る。
【0077】
<工程c:脱溶剤工程>
工程cは、工程bで得られた水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得る工程である。微粒子分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、得られた微粒子分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去することも可能である。若しくは、微粒子分散体を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去しても良い。後の2つの手段は、最初の手段と併用することも可能である。
【0078】
微粒子分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルン等の短時間の処理で十分に目的とする品質が得られる。
【0079】
<工程d:凝集工程>
工程dは、工程cで得られた微粒子分散液の微粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程である。凝集工程においては、離型剤としてワックスを添加したり、低温定着性のために結晶性樹脂を添加したりしてもよい。その場合、ワックスを水系媒体に分散させた分散液や、同様に結晶性樹脂の分散液を用意し、微粒子分散液と混合した上で凝集させていくことで、均一にワックスや結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることが出来る。
【0080】
微粒子分散液を攪拌しながら任意の粒径になるまで凝集させる。凝集させるためには、凝集剤を添加する方法、pHを調整する方法等、既存の方法が使用できる。凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、凝集剤の水溶液にしたほうが局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は凝集粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0081】
凝集時の分散液の温度は、使用する樹脂のTg付近であることが好ましい。液温が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪く、液温が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生する等粒径分布が悪化する。
【0082】
狙いの粒径に達したら、凝集を停止させる。凝集を停止させる方法としては、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法や、pHを調整する方法、分散液の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法等が使用できる。
【0083】
なお、工程dで用いられる凝集剤としては、公知ものが使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩や、カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩等が使用できる。
【0084】
金属塩を凝集剤として添加することにより、金属イオンが金属架橋剤として作用し、金属イオンを介してポリマー鎖が架橋し、凝集する。金属架橋剤による金属架橋によって、ホットオフセット性、保存性、耐久性の向上が見込まれる。
【0085】
<融着工程>
本実施形態による製造方法は、工程dにより得られた凝集粒子を熱処理によって融着させ、凹凸を減らす工程を含んでいてよい。融着は、凝集粒子の分散液を攪拌しながら加熱すればよい。液の温度は、使用している樹脂のガラス転移温度(Tg)を超えた温度付近が好ましい。
【0086】
<洗浄・乾燥工程>
上記の方法で得られた樹脂粒子分散液には、樹脂粒子のほかに凝集塩等の副材料が含まれている。よって、本実施形態による製造方法は、分散液から樹脂粒子のみを取り出すための洗浄工程を含むと好ましい。樹脂粒子の洗浄方法としては、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法等の方法があるが、本実施形態においては特に限定されるものではない。いずれの方法によっても樹脂粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法で樹脂粒子(トナー母体粒子)を取り出す工程を繰り返しても良いし、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採っても良い。
【0087】
この洗浄に用いる水系溶媒は水あるいは水にメタノール、エタノール等のアルコールを混合した混合溶媒を用いるが、コストや排水処理等による環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
【0088】
洗浄された樹脂粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行い、水系媒体を除去することでトナー粒子のみを得ることができる。乾燥方法としては、スプレイドライアー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機等の乾燥機を使用することができる。乾燥された樹脂粒子は最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。また、乾燥後の樹脂粒子は軟凝集をしており使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサー等の装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしても良い。
【0089】
<アニーリング工程>
結晶性樹脂を添加した場合、乾燥後にアニーリング処理を行うことで、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とが相分離し、定着性が向上する。具体的には、Tg付近の温度で10時間以上保管すればよい。
【0090】
<外添工程>
本実施形態で得られた樹脂粒子(トナー母体粒子)には、流動性、帯電性、クリーニング性等を持たせるために、外添剤を添加して、混合してもよい。これにより、樹脂粒子と外添剤とを含むトナーを得ることができる。外添剤は、無機微粒子や高分子系微粒子、クリーニング助剤等であってよい。上記混合のための手段の具体例としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等がある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック工業株式会社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(株式会社奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢等があげられる。
【0091】
外添剤としての無機微粒子の一次粒子径は、5nm以上2μm以下であることが好ましく、特に5nm以上500nm以下であることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20m2/g以上500m2/g以下であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01~5質量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができる。
【0092】
高分子系微粒子としては、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコン、ベンゾグアナミン、ナイロン等の重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0093】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイル等が好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0094】
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合等によって製造された、ポリマー微粒子等を挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01~1μmのものが好ましい。
【0095】
[現像剤]
本発明の別の形態は、上述のトナーを含有する現像剤であってよい。現像剤は、一成分現像剤として使用してもよく、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。中でも、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命向上等の点で二成分現像剤が好ましい。
【0096】
トナーを用いた一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の層厚規制部材へのトナーの融着がなく、現像手段の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0097】
また、トナーを用いた二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像手段における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0098】
なお、上記現像剤は補給用現像剤として使用することも可能である。
【実施例0099】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において単に「部」及び「%」と記載されている場合、それぞれ「質量部」及び「質量%」を指す。
【0100】
<ケチミン化合物の合成>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部、及びメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物]を得た。[ケチミン化合物]のアミン価は418mgKOH/gであった。
【0101】
<プレポリマーAの合成>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、及び植物由来のセバシン酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比(OHのmol%/COOHのmol%)が1であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸66mol%及びセバシン酸34mol%であり、全モノマー中におけるトリメチロールプロパンの量が1.5mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後さらに、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルa]を得た。
【0102】
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、得られた[中間体ポリエステルa]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマーA]を得た。
【0103】
<非晶性ポリエステル樹脂B-1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、フレーク状のリサイクルPET及び各種成分を、以下の比率になるよう仕込んだ。すなわち、フレーク状のリサイクルPET中のエチレングリコールユニット単位と、植物由来のプロピレングリコールと、石油由来のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(BPA-PO)と、石油由来のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(BPA-EO)とのモル比が18/22/30/30となるように、上記のフレーク状のリサイクルPET中のテレフタル酸ユニット単位と、石油由来のアジピン酸とのモル比が20/80となるように、カルボキシル基に対する水酸基のモル比の値(OHのmol%/COOHのmol%)が1.3となるように仕込んだ。そして、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、常圧、230℃で8時間反応させ、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、常圧、180℃、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]を得た。
【0104】
<非晶性ポリエステル樹脂B-2の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、フレーク状のリサイクルPET及び各種成分を、以下の比率になるように仕込んだ。すなわち、フレーク状のリサイクルPET中のエチレングリコールユニット単位と。植物由来のプロピレングリコールと、石油由来のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と、石油由来のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とのモル比が22/34/22/22となるよう、フレーク状のリサイクルPET中のテレフタル酸ユニット単位と、石油由来のアジピン酸とのモル比が26/74となるよう、水酸基とカルボキシル基とのモル比の値(OHのmol%/COOHのmol%)が1.3となるように仕込んだ。そして、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、常圧、180℃、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂B-2]を得た。
【0105】
<非晶性ポリエステル樹脂B-3の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、フレーク状のリサイクルPET及び各種成分を、以下の比率になるように仕込んだ。すなわち、フレーク状のリサイクルPET中のエチレングリコールユニット単位と、植物由来のプロピレングリコールと、石油由来のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と、石油由来のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とのモル比が28/42/15/15となるよう、フレーク状のリサイクルPET中のテレフタル酸ユニット単位と、石油由来のアジピン酸とのモル比が32/68となるよう、水酸基とカルボキシル基とのモル比の値(OHのmol%/COOHのmol%)が1.3となるように仕込んだ。そして、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、常圧、180℃、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂B-3]を得た。
【0106】
<非晶性ポリエステル樹脂B-4の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、フレーク状のリサイクルPET及び各種成分を、以下の比率になるように仕込んだ。すなわち、フレーク状のリサイクルPET中のエチレングリコールユニット単位と、植物由来のプロピレングリコールと、石油由来のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と、石油由来のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とのモル比が18/60/11/11となるように、フレーク状のリサイクルPET中のテレフタル酸ユニット単位と、石油由来のアジピン酸とのモル比が24/76となるように、水酸基とカルボキシル基とのモル比の値(OHのmol%/COOHのmol%)が1.3となるように仕込んだ。そして、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、常圧、180℃、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂B-4]を得た。
【0107】
<非晶性ポリエステル樹脂B-5の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、フレーク状のリサイクルPET及び各種成分を、以下の比率になるように仕込んだ。すなわち、フレーク状のリサイクルPET中のエチレングリコールユニット単位と、植物由来のプロピレングリコールと、石油由来のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と、石油由来のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とのモル比が14/64/11/11となるよう、フレーク状のリサイクルPET中のテレフタル酸ユニット単位と、石油由来のアジピン酸とのモル比が32/68となるよう、水酸基とカルボキシル基とのモル比の値(OHのmol%/COOHのmol%)が1.3となるように仕込んだ。そして、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、常圧、180℃、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂B-5]を得た。
【0108】
<非晶性ポリエステル樹脂B-6の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、フレーク状のリサイクルPET及び各種成分を、以下の比率になるように仕込んだ。すなわち、フレーク状のリサイクルPET中のエチレングリコールユニット単位と、植物由来のプロピレングリコールと、石油由来のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と、石油由来のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とのモル比が25/70/0/5となるよう、フレーク状のリサイクルPET中のテレフタル酸ユニット単位と、石油由来のアジピン酸とのモル比が25/75となるよう、水酸基とカルボキシル基とのモル比の値(OHのmol%/COOHのmol%)が1.3となるように仕込んだ。そして、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、常圧、180℃、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂B-6]を得た。
【0109】
<非晶性ポリエステル樹脂B-7の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、フレーク状のリサイクルPET及び各種成分を、以下の比率になるように仕込んだ。すなわち、フレーク状のリサイクルPET中のエチレングリコールユニット単位と、植物由来のプロピレングリコールと、石油由来のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と、石油由来のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とのモル比が35/50/5/10となるよう、フレーク状のリサイクルPET(中のテレフタル酸ユニット単位)と石油由来のアジピン酸とのモル比が35/65となるよう、水酸基とカルボキシル基とのモル比の値(OHのmol%/COOHのmol%)が1.3となるように仕込んだ。そして、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、常圧、180℃、3時間で反応させ、[非晶性ポリエステル樹脂B-7]を得た。
【0110】
表1に、非晶性ポリエステル樹脂B-1~B-7における、成分(ポリマーを構成するモノマー単位)の種類及びその含有率(mol%)を示す。さらに、非晶性ポリエステル樹脂全体におけるバイオマス由来成分の比率、リサイクル由来成分の比率、及び石油由来成分の比率も示す。
【0111】
【0112】
<結晶性ポリエステル樹脂Cの合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、植物由来のセバシン酸、及び1,6-ヘキサンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比の値(OH/COOH)が0.9となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaの圧力にて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂C]を得た。
【0113】
<ビニル系樹脂分散液の作製>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS-30(三洋化成工業株式会社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部及び過硫酸アンモニウム1部を仕込んだ後、400rpmで15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。次に、系内の温度を75℃まで昇温し、5時間反応させた後、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加して、75℃で5時間熟成し、[ビニル系樹脂分散液]を得た。
【0114】
<マスターバッチ(MB)の作製>
水1,200部、カーボンブラック(Printex35、デグサ社製)(DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5)500部、及び[非晶性ポリエステル樹脂B-1]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、得られた混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ]を得た。
【0115】
<WAX分散液の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に、離型剤としてカルナウバワックス42部(セラリカ野田製、RN-5、植物系ワックス、融点82℃)、及び酢酸エチル420部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、株式会社アイメックス製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い[WAX分散液]を得た。
【0116】
<結晶性ポリエステル分散液の作製>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、308部の[結晶性ポリエステルC]及び酢酸エチル1900部を仕込んだ。次に、撹拌しながら、80℃まで昇温し、5時間保持した後、1時間で30℃まで冷却した。さらに、ビーズミルのウルトラビスコミル(株式会社アイメックス製)を用いて、直径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填し、3パスの条件で分散させ、[結晶性ポリエステル分散液]を得た。
【0117】
(実施例1)
<油相1の作製>
[プレポリマーA]50部、[WAX分散液]170部、[非晶性ポリエステル樹脂B-1]235部、酢酸エチル260部、[マスターバッチ]75部を容器に仕込んだ後、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、7000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
【0118】
<水相1の作製>
水600部、[ビニル系樹脂分散液]50部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液エレミノールMON-7(三洋化成工業株式会社製)235部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の[水相1]を得た。
【0119】
<乳化・脱溶剤>
[油相1]が入った容器に、0.2部の[ケチミン化合物]及び2000部の[水相1]を添加した後、TKホモミキサーを用いて、13000rpmで20分間混合し、[乳化スラリー1]を得た。
【0120】
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を仕込み、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成し、[分散スラリー1]を得た。
【0121】
<洗浄・加熱処理・乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した。次に、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した(以下、洗浄工程(1)という)。さらに、濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した(以下、洗浄工程(2)という)。次に、濾過ケーキに10%塩酸100部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した(以下、洗浄工程(3)という)。さらに、濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した(以下、洗浄工程(4)という)。このとき、洗浄工程(1)~(4)の操作を2回繰り返した。
【0122】
濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合し、50℃で4時間加熱処理した後、濾過した。さらに、循風乾燥機を用いて、45℃で48時間濾過ケーキを乾燥させた後、目開きが75μmのメッシュで篩い、[トナー母体粒子1]を得た。
【0123】
<外添剤処理工程>
[トナー母体粒子1]100部に対して、疎水性シリカ(HDK-2000、クラリアント株式会社製)2.0部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、[トナー1]を得た。
【0124】
(実施例2)
実施例1の[非晶性ポリエステルB-1]を[非晶性ポリエステルB-2]に変更した以外は、実施例1と同様にして[乳化スラリー2]、[分散スラリー2]、[トナー母体粒子2]を得て、[トナー2]を得た。
【0125】
(実施例3)
実施例1の[非晶性ポリエステルB-1]を[非晶性ポリエステルB-3]に変更した以外は、実施例1と同様にして[乳化スラリー3]、[分散スラリー3]、[トナー母体粒子3]を得て、[トナー3]を得た。
【0126】
(実施例4)
実施例1の[非晶性ポリエステルB-1]を[非晶性ポリエステルB-4]に変更した以外は、実施例1と同様にして[乳化スラリー4]、[分散スラリー4]、[トナー母体粒子4]を得て、[トナー4]を得た。
【0127】
(実施例5)
実施例1における[油相1]を下記[油相5]に変更した以外は、実施例1と同様にして、[乳化スラリー5]、[分散スラリー5]、[トナー母体粒子5]を得て、[トナー5]を得た。
【0128】
<油相5の作製>
[WAX分散液]170部、[結晶性ポリエステル分散液]160部、[非晶性ポリエステル樹脂B-5]180部、酢酸エチル160部、[マスターバッチ]75部を容器に仕込んだ後、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、7000rpmで60分間混合し、[油相5]を得た。
【0129】
(実施例6)
<油相6の作製>
四つ口フラスコに、[WAX分散液]160部、[結晶性ポリエステル分散液]165部、酢酸エチル160部、[マスターバッチ]75部、[非晶性ポリエステル樹脂B-5]190部を加えて撹拌し、溶解・分散させた。攪拌しながら、酢酸エチル10部、[プレポリマーA]45部、20%水酸化ナトリウム水溶液15部を添加して中和率75%になるようにして[油相6]を作製した。
【0130】
<水相2の作製>
1100部のイオン交換水に、酢酸エチルを飽和溶解量に対して100%となるように加え、さらに界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム塩)を水相に対して2%となるように加え、[水相2]を作製した。
【0131】
<乳化・脱溶剤>
[油相6]に[水相2]を徐々に加えて転相乳化を行った。その後脱溶媒を行い、[乳化スラリー6]を得た。
【0132】
<凝集・融着工程>
[乳化スラリー6]1500部、イオン交換水1600部を容器に入れて5分間撹拌した。次に、20%硫酸マグネシウム水溶液100部を滴下してさらに5分間撹拌した後、60℃に昇温した。その後、さらに20%硫酸マグネシウム水溶液75部を滴下して、粒径が5.0μmになったところで20%硫酸ナトリウム水溶液350部を添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー]を得た。
【0133】
そのまま凝集スラリーを撹拌しながら70℃に加熱して、所望の円形度である0.960になったところで冷却し、[分散スラリー6]を得た。
【0134】
<アニーリング工程・洗浄・乾燥工程>
[分散スラリー6]を、45℃で10時間保管した後に減圧濾過し、以下のように洗浄と乾燥を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した後濾過して、[濾過ケーキ]を得た。
得られた濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体粒子6]を得た。
【0135】
<外添剤処理工程>
[トナー母体粒子6]100部に対して、疎水性シリカ(HDK-2000、クラリアント株会社製)2.0部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、[トナー6]を得た。
【0136】
(比較例1)
実施例1における[非晶性ポリエステルB-1]を[非晶性ポリエステルB-6]に変更した以外は、実施例1と同様にして[乳化スラリー7]、[分散スラリー7]、[トナー母体粒子7]、[トナー7]を得た。
【0137】
(比較例2)
実施例1における[非晶性ポリエステルB-1]を[非晶性ポリエステルB-7]に変更した以外は、実施例1と同様にして[乳化スラリー8]、[分散スラリー8]、[トナー母体粒子8]、[トナー8]を得た。
【0138】
表2に、実施例1~6及び比較例1、2のトナーの組成、並びにトナー全体におけるバイオマス由来成分、リサイクル由来成分、及び石油由来成分の算出比率(質量%)を、各評価と共に示す。
【0139】
【0140】
<評価>
(高温定着性)
カラー複合機(imagio MP C5503、株式会社リコー製)の定着ユニットを用いて、普通紙に0.6mg/cm2の黒ベタ未定着画像を形成し、定着温度を変えて定着した。ホットオフセットの発生する温度を測定し、下記の評価基準により評価を行った。
[評価基準]
◎;190℃以上
〇;180℃以上190℃未満
△;170℃以上180℃未満
×;170℃未満
【0141】
(低温定着性)
カラー複合機(imagio MP C5503、株式会社リコー製)の定着ユニットを用いて、普通紙に0.6mg/cm2の黒ベタ未定着画像を形成し、定着温度を変えて定着した。コールドオフセットの発生する温度を測定し、下記の評価基準により評価を行った。
[評価基準]
◎;120℃未満
〇;120℃以上125℃未満
△;125℃以上130℃未満
×;130℃以上
【0142】
(耐熱保存性)
100mlのガラス瓶にトナー10gを入れ、50℃24時間の環境下に放置し、下記評価基準により評価を行った。
[評価基準]
◎;10回振ってすべて粉に戻る
〇;10回振って半分粉に戻る
△;10回振って若干粉に戻る
×;10回振っても粉に戻らない
【0143】
(耐久性)
10万枚複写試験後の現像剤からブローオフによりトナーを除去し、残ったキャリアの質量を測定し、これをW1とした。次に、このキャリアをトルエン中に入れて溶融物を溶解し、洗浄、乾燥後質量を測定し、これをW2とした。そして、下記式よりスペント化率を求め下記評価基準で評価を行った。
スペント化率(%)=〔(W1―W2)/W1〕×100
[評価基準]
◎:0質量%以上0.01質量%未満
〇:0.01質量%以上0.02質量%未満
△:0.02質量%以上0.05質量%未満
×:0.05質量%以上
【0144】
(平均粒径)
トナーの体積平均粒径(Dv)は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)等を用いて測定した。測定においては、まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性の界面活性剤))を0.1mL~5mL加えた。電解水溶液は、1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製したもので、ISOTON-II(コールター社製)を使用した。さらに測定試料を2mg~20mg加えた。超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行ない、試料を懸濁した電解水溶液を得た。上記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積を測定して、体積分布を算出した。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(Dv)を求めた。
【0145】
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
[評価基準]
◎:体積平均粒径が4.5μm以上5.0μm未満
〇:体積平均粒径が5.0μm以上5.5μm未満
△:体積平均粒径が5.5μm以上6.0μm未満
×:体積平均粒径が6.0μm以上
【0146】
(平均円形度)
平均円形度の計測には、フロー式粒子像分析装置FPIA-3000(シスメックス株式会社製)を用いた。
【0147】
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100~150ml中に分散剤として界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1~0.5ml加え、さらに得られたトナーを0.1~0.5g程度加えた。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、分散液濃度を3000~1万個/μlとして上記装置によりトナーの平均円形度を測定した。フロー式粒子像分析装置の解析条件は、
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
とした。
また、本実施形態における平均円形度の定義は次の通りであった。
(平均円形度)=(投影面積と等しい円の周囲長)/(投影像の周囲長)
[評価基準]
◎:平均円形度が0.970以上
〇:平均円形度が0.960以上0.970未満
△:平均円形度が0.950以上0.960未満
×:平均円形度が0.950未満
【0148】
表2より、結着樹脂全量に対する、バイオマス由来成分及びリサイクル由来成分の合計量が50質量%以下の例(実施例1~実施例6)では、低温定着性、高温定着性、耐熱保存性、耐久性のいずれの評価も良好な上、画像品質(粒径、円形度)の評価も良好であった。一方、バイオマス由来成分及びリサイクル由来成分の合計量が50質量%未満の例(比較例1、2)では、粒径、円形度の評価が、実施例1~実施例6よりも低く画像品質が劣ることが分かった。
【0149】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> バイオマス由来成分と、リサイクル由来成分とを含有する結着樹脂を含み、
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である、樹脂粒子。
<2> 前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が20質量%以上50質量%以下である、前記<1>に記載の樹脂粒子。
<3> 前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が30質量%以上50質量%以下である、前記<2>に記載の樹脂粒子。
<4> 前記結着樹脂中の前記バイオマス由来成分の含有率が、前記結着樹脂中の前記リサイクル由来成分の含有率を上回る、請求項1に記載の樹脂粒子。
<5> 前記結着樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含む、前記<1>から<4>のいずれかに記載の樹脂粒子。
<6> さらに、着色剤と離型剤とを含有する、前記<1>から<5>のいずれかに記載の樹脂粒子。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂粒子に外添剤が添加されてなる、トナー。
<8> 前記<7>に記載のトナーを含む現像剤。
<9> バイオマス由来成分とリサイクル由来成分とを含有する結着樹脂及び/又は当該結着樹脂の前駆体を用いた、樹脂粒子の製造方法であって、
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である、樹脂粒子の製造方法。
<10> (a)結着樹脂及び/又は当該結着樹脂の前駆体を、有機溶媒に溶解させて溶解液を作製し、
(b)前記溶解液に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させ、
(c)前記水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得て、
(d)前記微粒子分散液の微粒子を凝集させて凝集粒子を得ることを含む、前記<9>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<11> 前記<9>又は<10>に記載の樹脂粒子の製造方法によって得られた樹脂粒子に外添剤を添加することを含む、トナーの製造方法。
<12> バイオマス由来成分とリサイクル由来成分とを含有する結着樹脂及び/又は当該結着樹脂の前駆体を用いて製造された、樹脂粒子であって、
前記結着樹脂全量に対する、前記バイオマス由来成分及び前記リサイクル由来成分の合計量が50質量%以下である、樹脂粒子。
<13> 前記結着樹脂及び/又は前記結着樹脂の前駆体と、着色剤と、離型剤とを、有機溶媒に溶解させて溶解液を調製し、
前記溶解液に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させ、
前記水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得て、
前記微粒子分散液の微粒子を凝集させることによって製造された、前記<12>に記載の樹脂粒子。