(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138306
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】面発光レーザ、投影装置、ヘッドアップディスプレイ、移動体、ヘッドマウントディスプレイ及び検眼装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20230922BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20230922BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20230922BHJP
H01S 5/02255 20210101ALI20230922BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20230922BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20230922BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20230922BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230922BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/22
H01S5/343 610
H01S5/02255
H01S5/0239
G02B27/01
G02B27/02 Z
B60K35/00 A
H04N5/64 511A
H04N5/64 521Z
H04N5/64 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192216
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022044205
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上西 盛聖
(72)【発明者】
【氏名】岩田 浩和
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5F173
【Fターム(参考)】
2H199CA06
2H199CA12
2H199CA29
2H199CA34
2H199CA47
2H199CA59
2H199CA66
2H199CA75
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA28
2H199DA30
2H199DA34
2H199DA44
3D344AA11
3D344AC25
5F173AC03
5F173AC14
5F173AC26
5F173AC35
5F173AC42
5F173AC44
5F173AF64
5F173AF72
5F173AF92
5F173AF96
5F173AG17
5F173AH22
5F173AJ04
5F173AK22
5F173AP05
(57)【要約】
【課題】共振器に注入される電流の密度の均一性を向上することができる面発光レーザ、投影装置、ヘッドアップディスプレイ、移動体、ヘッドマウントディスプレイ及び検眼装置を提供する。
【解決手段】面発光レーザは、第1の反射鏡と、第2の反射鏡と、前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡との間に設けられた、活性層を含む共振器と、前記共振器に電流を注入する導電性層と、を有し、前記共振器を含む半導体積層構造を備え、前記半導体積層構造は、第1のp型半導体層を含む第1の層と、前記第1の層と前記活性層との間に設けられ、第2のp型半導体層を含む第2の層と、を有し、前記第2のp型半導体層は、前記第1の層に接するとともに、前記第1のp型半導体層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを備え、前記第1の層の上面の一部又は全部と、前記第1の層と前記第2の層との界面と、が前記導電性層と接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反射鏡と、
第2の反射鏡と、
前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡との間に設けられた、活性層を含む共振器と、
前記共振器に電流を注入する導電性層と、
を有し、
前記共振器を含む半導体積層構造を備え、
前記半導体積層構造は、
第1のp型半導体層を含む第1の層と、
前記第1の層と前記活性層との間に設けられ、第2のp型半導体層を含む第2の層と、
を有し、
前記第2のp型半導体層は、前記第1の層に接するとともに、前記第1のp型半導体層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを備え、
前記第1の層の上面の一部又は全部と、前記第1の層と前記第2の層との界面と、が前記導電性層と接することを特徴とする面発光レーザ。
【請求項2】
前記第1の層は、前記第1のp型半導体層のバンドギャップ以下のバンドギャップを有するアンドープ半導体層をさらに含み、
前記アンドープ半導体層が前記第2の層に接することを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項3】
前記第1の層及び前記第2の層の積層体はリッジ構造を有し、
前記第1の層の上面に垂直な方向からの平面視で、前記第1の層の外周が前記活性層の外周よりも内側にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
【請求項4】
前記積層体の前記平面視で前記リッジ構造の外側に位置する部分と前記導電性層とを電気的に絶縁する絶縁領域を有することを特徴とする請求項3に記載の面発光レーザ。
【請求項5】
前記リッジ構造は、厚さ方向で、
前記第1の層の全部と、
前記第2のp型半導体層の一部又は全部と、
を含み、
前記絶縁領域は、上面が前記第1の層と前記第2の層との界面より前記活性層側にある誘電体層を有することを特徴とする請求項4に記載の面発光レーザ。
【請求項6】
前記リッジ構造は、厚さ方向で、前記第1の層の全部を含み、
前記絶縁領域は、上面が前記第1の層と前記第2の層との界面より前記活性層側にあり、アクセプターを不活性化させる不純物元素を含む不活性半導体層を有することを特徴とする請求項4に記載の面発光レーザ。
【請求項7】
前記導電性層は、
前記第1の層の上面に接し、発振される光の少なくとも一部を透過する第1の導電性層と、
前記第1の層と前記第2の層との界面に接する第2の導電性層と、
を含み、
前記第2の導電性層の電気抵抗は前記第1の導電性層の電気抵抗よりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
【請求項8】
前記第2の導電性層は金属層であることを特徴とする請求項7に記載の面発光レーザ。
【請求項9】
前記第1のp型半導体層はInaGa1-aN層(0≦a<1)であり、
前記第2のp型半導体層はAlbGa1-bN層(0<b<1)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の面発光レーザと、
前記面発光レーザが発した光を偏向する光偏向装置と、
を備え、
前記光を偏向して投影する、投影装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の面発光レーザを備える、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項12】
請求項11に記載のヘッドアップディスプレイを備える、移動体。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の面発光レーザを備える、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の面発光レーザを備える、検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ、投影装置、ヘッドアップディスプレイ、移動体、ヘッドマウントディスプレイ及び検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:VCSEL)は一対の反射鏡で薄い活性層を挟み、基板に垂直な方向に共振器を形成したレーザである。そのため、反射鏡には、99%以上の反射率が求められることがある。
【0003】
GaN系の材料においてはGaAs系に比べて半導体反射鏡を低抵抗で形成することが難しい。このため、面発光レーザをGaN系材料で作製するにあたっては活性層に電流に注入するための構造として反射鏡を通電させず、共振器中でコンタクトをとるイントラキャビティコンタクト構造をとることが多い。このとき、p側のコンタクトはハイドープされたp-GaN上に誘電体などの高抵抗層を用いて限定された開口部(アパーチャ)を電流狭窄構造として作り、酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性透明膜で電流を注入することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ITOを用いた電流注入構造を持つVCSELにおいては、ITOの光吸収が問題になる。通常、ITOはGaN系VCSELで開発されている400nm帯から可視光域に対しては数千cm-1の光吸収を持つ。このため、ITOを共振器中の電界強度の節部分に薄く設けることで吸収の影響を小さくされている。ITOの厚さは50nm以下であることがほとんどで、20nm以下であることが多い。
【0005】
ITOの抵抗率は通常1×10-4Ωcm台であり、横方向のITOは抵抗が高くならざるを得ない。さらに、注入される側のp-GaNの抵抗率が1桁Ωcm台であるため、ITOから注入された電流はほぼ横方向に広がることなく、共振器中を縦方向に活性層側に流れることになる。この際に、薄いITOの影響でアパーチャの外周部分と中心部分で電流の密度を均一にすることが難しくなり、結果として活性層への電流注入密度が、外周で密、中心部で粗になりやすくなる。特にアパーチャの直径が大きいほどその影響が大きい。これによってアパーチャ内側の活性層が均一な利得を得ることが難しくなり、特にシングルモードを安定に得られにくくなる。
【0006】
また、非特許文献1には、n側の分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector:DBR)を導電性にすることでアパーチャの内部への電流注入を均一化しようとする試みが記載されている。しかし、非特許文献1に記載の構成においても、ITOの電気抵抗が高いことに起因する電流注入密度の不均一は解決されていない。
【0007】
本発明は、共振器に注入される電流の密度の均一性を向上することができる面発光レーザ、投影装置、ヘッドアップディスプレイ、移動体、ヘッドマウントディスプレイ及び検眼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の一態様によれば、面発光レーザは、第1の反射鏡と、第2の反射鏡と、前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡との間に設けられた、活性層を含む共振器と、前記共振器に電流を注入する導電性層と、を有し、前記共振器を含む半導体積層構造を備え、前記半導体積層構造は、第1のp型半導体層を含む第1の層と、前記第1の層と前記活性層との間に設けられ、第2のp型半導体層を含む第2の層と、を有し、前記第2のp型半導体層は、前記第1の層に接するとともに、前記第1のp型半導体層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを備え、前記第1の層の上面の一部又は全部と、前記第1の層と前記第2の層との界面と、が前記導電性層と接する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、共振器に注入される電流の密度の均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る面発光レーザを示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る面発光レーザのリッジ近傍を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る面発光レーザのリッジ近傍を示す断面図である。
【
図4】第3実施形態に係る面発光レーザのリッジ近傍を示す断面図である。
【
図5】第4実施形態に係る面発光レーザのリッジ近傍を示す断面図である。
【
図6】第5実施形態に係る面発光レーザのリッジ近傍を示す断面図である。
【
図7】第6実施形態に係る投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイを示す模式図である。
【
図8】第6実施形態に係るヘッドアップディスプレイを搭載した自動車を示す模式図である。
【
図9】第7実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの外観を例示する斜視図である。
【
図10】第7実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの構成を部分的に例示する図である。
【
図11】第8実施形態に係る検眼装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は面発光レーザに関する。
図1は、第1実施形態に係る面発光レーザを示す断面図である。
図2は、第1実施形態に係る面発光レーザのリッジ構造の近傍を示す断面図である。
図2(a)は
図1の一部を拡大して示す断面図であり、
図2(b)は
図2(a)中の破線の円で示す領域近傍における電流を矢印で示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係る面発光レーザ1は、基板50と、下側反射鏡10と、共振器20と、導電性層40と、上側反射鏡30とを有する。下側反射鏡10は基板50の上にあり、共振器20は下側反射鏡10の上にあり、導電性層40は共振器20の上にあり、上側反射鏡30は導電性層40の上にある。面発光レーザ1は、波長が450nmの光を出力するように構成されている。
【0014】
基板50は、例えば上面がc面であるGaN基板である。下側反射鏡10は、例えば、半導体を材料とするDBRである。
【0015】
共振器20は、下側スペーサ層100と、活性層200と、上側スペーサ層300とを有する。下側スペーサ層100は下側反射鏡10の上にあり、活性層200は下側スペーサ層100の上にあり、上側スペーサ層300は活性層200の上にある。必須ではないが、活性層200と上側スペーサ層300との間に、厚さが20nm程度の電子ブロック層250があってもよい。共振器20は半導体積層構造の一例である。
【0016】
例えば、下側スペーサ層100は、例えばSiが3×1018/cm3の濃度でドープされたn型のGaN層である。活性層200は、複数のInGaN層及びGaN層を含む多重量子井戸層を有し、450nmで発光する。電子ブロック層250は、例えばMgが2×1019/cm3の濃度でドープされたAl0.2Ga0.8N層である。
【0017】
上側スペーサ層300は、
図2(a)に示すように、第1の層310と、第2の層320と、第3の層330とを有する。第3の層330の上に第2の層320があり、第2の層320の上に第1の層310がある。第3の層330は、上側スペーサ層300のうちで最も活性層200側の層である。第3の層330は、例えばMgが2×10
19/cm
3の濃度でドープされたp型GaN層である。第2の層320は、例えばMgが2×10
19/cm
3の濃度でドープされたp型のAl
0.05Ga
0.95N層である。第2の層320の厚さは、例えば10nmである。第1の層310は、例えばMgが2×10
19/cm
3の濃度でドープされたp型のIn
0.07Ga
0.93N層である。第1の層310の厚さは、例えば15nmである。ただし、第1の層310の上面から深さ10nmまでの最表層部は、より高濃度に、例えば3×10
20/cm
3の濃度にMgがドープされている。第2の層320のバンドギャップは第1の層310のバンドギャップよりも大きい。本実施形態では、第2の層320は第2のp型半導体層の一例であり、第1の層310は第1のp型半導体層の一例である。
【0018】
上側スペーサ層300、活性層200及び下側スペーサ層100に、メサ構造340が形成されている。メサ構造340は、メサ構造340の周囲に下側スペーサ層100が露出する高さで形成されている。メサ構造340は、直径が25μmの円柱状に形成されている。
【0019】
上側スペーサ層300に、リッジ構造350が形成されている。リッジ構造350は、リッジ構造350の周囲に第2の層320が露出する高さで形成されている。例えば、リッジ構造350の高さは20nmである。リッジ構造350は、直径が10μmの円柱状に形成されている。リッジ構造350から露出する第2の層320の上に誘電体層60が形成されている。誘電体層60は、第2の層320のリッジ構造350を構成する部分の側面に接する。誘電体層60の上面は、第1の層310と第2の層320との界面よりも活性層200側にある。誘電体層60は、例えばSiO2層である。
【0020】
導電性層40は、誘電体層60及びリッジ構造350の上に設けられている。導電性層40は、第1の層310の上面の全部と、第1の層310と第2の層320との界面とに接する。導電性層40は、例えばITO層等の透明導電層である。
【0021】
上側反射鏡30は、平面視でリッジ構造350と重なるように配置されている。上側反射鏡30は、例えば誘電体DBRである。
【0022】
メサ構造340から露出するn型の下側スペーサ層100の上に、下側スペーサ層100とオーミック接触するn側電極71が形成されている。n側電極71は、例えば、下から順にTi膜、Al膜、Pt膜及びAu膜が積層された積層膜を有する。n型の下側スペーサ層100のうちn側電極71が形成された部分を除く部分と、メサ構造340の側面との上に誘電体層80が形成されている。誘電体層80は、例えばSiN層である。
【0023】
上側反射鏡30の周囲において、導電性層40の上にp側電極72が形成されている。p側電極72は、例えば、下から順にTi膜及びAu膜が積層された積層膜を有する。
【0024】
なお、第1の層310のうちで高濃度にドープされた部分の近傍又は導電性層40の近傍に電界強度の節が位置することが好ましい。
【0025】
次に、第1実施形態に係る面発光レーザの製造方法について説明する。
【0026】
まず、基板50の上に、有機金属気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法により下側反射鏡10、下側スペーサ層100、活性層200及び上側スペーサ層300を形成する。
【0027】
次に、上側スペーサ層300、活性層及び下側スペーサ層100の積層体にメサ構造340を形成する。メサ構造340の形成では、フォトリソグラフィーを用いてエッチングマスクをフォトレジスト又はメタルで上側スペーサ層300の上に形成し、上側スペーサ層300、活性層及び下側スペーサ層100の積層体のドライエッチングを行う。このとき、ドライエッチングは、下側スペーサ層100の厚さ方向の途中で停止する。
【0028】
次に、メサ構造340の近傍において、メサ構造340から露出する下側スペーサ層100の上にn側電極71を形成する。n側電極71は、リフトオフを用いて形成することができる。n側電極71を構成する金属膜を形成した後、550℃においてN2雰囲気でアニールすることでn側電極71を下側スペーサ層100にオーミック接触させることができる。
【0029】
次に、メサ構造340及びn側電極71を覆う誘電体層80を下側スペーサ層100の上に形成する。次に、例えばフォトリソグラフィーを用いて、メサ構造340の上面のみを露出するレジストマスクを形成し、ウェットエッチングにより誘電体層80を除去する。次に、上側スペーサ層300にリッジ構造350を形成する。リッジ構造350の形成では、フォトリソグラフィーを用いてレジストマスクを上側スペーサ層300の上に形成し、上側スペーサ層300のドライエッチングを行う。
【0030】
次に、リッジ構造350から露出する上側スペーサ層300の上に誘電体層60を形成する。誘電体層60の厚さは、誘電体層60の上面が、第1の層310と第2の層320との界面よりも活性層200側に位置する程度の厚さとする(
図2(a)参照)。次に、誘電体層60及びリッジ構造350の上に導電性層40を形成する。誘電体層60及び導電性層40の形成では、まず、リッジ構造350の形成に用いたレジストマスクを残したままSiO
2層及びITO層をスパッタ法等により形成し、その後にレジストマスクを除去する。つまり、リフトオフを行う。この時、ITO層の厚さは、ITO層の上面が、リッジ構造350の上面と略面一となる厚さとする。そして、リフトオフの後に、更に、他のITO層をリッジ構造350の上面に接するように形成する。その後、誘電体層80の上に形成された余分なITO層を、例えばウェットエッチングにより除去する。
【0031】
次に、導電性層40の上に上側反射鏡30を形成する。上側反射鏡30は、例えばリフトオフにより形成することができる。次に、上側反射鏡30の周囲において、導電性層40の上にp側電極72を形成する。p側電極72は、例えばリフトオフにより形成することができる。次に、誘電体層80のn側電極71上の部分をドライエッチング等で除去する。
【0032】
このようにして、第1実施形態に係る面発光レーザ1を製造することができる。
【0033】
第1実施形態に係る面発光レーザ1では、第1の層310(例えばIn0.07Ga0.93N層)の下に第2の層320(例えばAl0.05Ga0.95N層)があり、第2の層320のバンドギャップが第1の層310のバンドギャップよりも大きい。このため、第1の層310の第2の層320との界面の近傍に2次元ホールガス(2DHG)が形成される。2DHGは厚さ1nm程度の狭い領域に2次元状に形成された高濃度のキャリアを含む。また、導電性層40は、第1の層310の上面の全部と、第1の層310と第2の層320との界面とに接する。
【0034】
従って、
図2(b)に示すように、導電性層40から共振器20へは、第1の層310の上面から電流が注入されるだけでなく、第1の層310と第2の層320との界面からも電流が注入される。つまり、リッジ構造350の上面及び側壁面を経由して導電性層40から共振器20へと電流が注入される。また、2DHGの電気抵抗は第1の層310及び第2の層320の電気抵抗よりも低いため、横方向にキャリアが広がりやすい。従って、リッジ構造350の上面から注入された電流は2DHGで横方向に広がり、電流注入密度がアパーチャの内部で均一になりやすい。つまり、リッジ構造350の内部における電流注入密度のばらつきが抑制される。
【0035】
このように、面発光レーザ1によれば、アパーチャの内部を流れる電流の密度が均一性を向上し、電気抵抗を低減することができる。面発光レーザ1では、リッジ構造350の内側と外側とで共振波長に対する位相がずれるため、実効的な屈折率差が生じ、横方向の光の閉じ込めを図ることもできる。横方向における光の閉じ込めを向上させることで横方向のシングルモード性を向上することができる。また、横方向における光の閉じ込めに屈折率差を利用することで、回折による損失を小さくでき、低閾でシングルモードを得やすい。
【0036】
なお、導電性層40が第1の層310と第2の層320との界面に接すれば、リッジ構造350の形成の際に第2の層320がエッチングされていなくてもよい。つまり、第1の層310のエッチングにより第2の層320が露出すれば、第2の層320がエッチングされなくてもよい。ただし、第2の層320のエッチングも行うと、第1の層310と第2の層320との界面が明確にリッジ構造350の側壁面に現れ、導電性層40をこの界面に接触させやすくなる。従って、第1の層310のエッチングだけでなく第2の層320のエッチングも行うことがより好ましい。
【0037】
また、第1の層310の材料はInGaNに限定されず、第1の層310がp型のGaN層であってもよい。一般化すると、例えば、第1の層310はInaGa1-aN層(0≦a<1)であり、第2の層320はAlbGa1-bN層(0<b<1)である。第1の層310の材料がGaNである場合、第1の層310と第2の層320との界面における結晶欠陥を抑制しやすく、2DHGに実効的に高い移動度を得やすい。また、第1の層310の材料がInGaNである場合、高濃度の2DHGを得やすい。誘電体層60の材料はSiO2に限定されず、誘電体層60がSiNx層又はTaOx層等であってもよい。
【0038】
また、第1実施形態では、共振器20内に第1の層310及び第2の層320が設けられているが、上側反射鏡の一部又は全部を半導体DBRとし、この半導体DBRの一部として機能するよう第1の層と第2の層の厚さを調節することで、反射鏡内に第1の層及び第2のp層を含ませてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主としてリッジ構造の構成の点で第1実施形態と相違する。
図3は、第2実施形態に係る面発光レーザのリッジ構造の近傍を示す断面図である。
図3(b)は
図3(a)中の破線の円で示す領域近傍における電流を矢印で示す断面図である。
【0040】
図3に示すように、第2実施形態に係る面発光レーザでは、第1の層310は、第1のp型半導体層311と、アンドープ半導体層312とを含む。第2の層320の上にアンドープ半導体層312があり、アンドープ半導体層312の上に第1のp型半導体層311がある。アンドープ半導体層312は、例えばIn
0.07Ga
0.93N層である。アンドープ半導体層312の厚さは、例えば2.5nmである。第1のp型半導体層311は、例えばMgが2×10
19/cm
3の濃度でドープされたp型のIn
0.07Ga
0.93N層である。第1のp型半導体層311の厚さは、例えば12.5nmである。ただし、第1のp型半導体層311の上面から深さ10nmまでの最表層部は、より高濃度に、例えば3×10
20/cm
3の濃度にMgがドープされている。第2の層320のバンドギャップは第1の層310のバンドギャップよりも大きい。
【0041】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0042】
第2実施形態に係る面発光レーザでは、第1のp型半導体層311(例えばIn0.07Ga0.93N層)の下にアンドープ半導体層312(例えばIn0.07Ga0.93N層)があり、アンドープ半導体層312の下に第2の層320(例えばAl0.05Ga0.95N層)がある。また、第2の層320のバンドギャップが第1の層310のバンドギャップよりも大きい。このため、アンドープ半導体層312の第2の層320との界面の近傍に2DHGが形成される。2DHGはアンドープ半導体層312中の厚さ1nm程度の狭い領域に2次元状に形成された高濃度のキャリアを含む。また、導電性層40は、第1の層310の上面の全部と、第1の層310と第2の層320との界面とに接する。
【0043】
従って、
図3(b)に示すように、導電性層40から共振器20へは、第1の層310の上面から電流が注入されるだけでなく、第1の層310と第2の層320との界面からも電流が注入される。つまり、リッジ構造350の上面及び側壁面を経由して導電性層40から共振器20へと電流が注入される。また、2DHGの電気抵抗は第1の層310及び第2の層320の電気抵抗よりも低く、例えば、アンドープ半導体層312中のキャリアの移動度(単位:m
2/(V・s))が2桁程度で見込まれる。従って、2DHGの濃度が1×10
19/cm
3以上であれば、p-GaN層(通常キャリア濃度が1×10
17台で移動度1桁)より3桁以上抵抗の低い領域が形成されることになる。このため、リッジ構造350の上面から注入された電流は2DHGで横方向に広がり、電流注入密度がアパーチャの内部で均一になりやすい。つまり、リッジ構造350の内部における電流注入密度のばらつきが抑制される。
【0044】
このように、第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、導電性層40がアンドープ半導体層312と第2の層320との界面に接すれば、リッジ構造350の形成の際に第2の層320がエッチングされていなくてもよい。つまり、アンドープ半導体層312のエッチングにより第2の層320が露出すれば、第2の層320がエッチングされなくてもよい。ただし、第2の層320のエッチングも行うと、アンドープ半導体層312と第2の層320との界面が明確にリッジ構造350の側壁面に現れ、導電性層40をこの界面に接触させやすくなる。従って、第1の層310のエッチングだけでなく第2の層320のエッチングも行うことがより好ましい。
【0046】
また、第1のp型半導体層311の材料はInGaNに限定されず、第1のp型半導体層311がp型のGaN層であってもよい。この場合、アンドープ半導体層312はIn0.08Ga0.92N層であることが好ましい。アンドープ半導体層312のバンドギャップを、第1のp型半導体層311のバンドギャップよりも小さくすることで、2DHGが形成されやすくなる。このように、第2の層320のバンドギャップが第1の層310のバンドギャップよりも大きい上で、第1のp型半導体層311のバンドギャップがアンドープ半導体層312のバンドギャップ以上であることが好ましい。一般化すると、例えば、第1のp型半導体層311及びアンドープ半導体層312はInaGa1-aN層(0≦a<1)であり、第2の層320はAlbGa1-bN層(0<b<1)である。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として絶縁領域の構成の点で第2実施形態と相違する。
図4は、第3実施形態に係る面発光レーザのリッジ構造の近傍を示す断面図である。
【0048】
図4に示すように、第3実施形態に係る面発光レーザは、誘電体層60に代えて不活性半導体層321を有する。不活性半導体層321は、アクセプターを不活性化させる不純物元素を含み、電気的に絶縁体の層となっている。
【0049】
不活性半導体層321は、例えば、リッジ構造350の形成後に、リッジ構造350の形成に用いたレジストマスクを残したまま、アクセプターを不活性化させる不純物元素を第2の層320の表層に注入することにより形成されている。アクセプターを不活性化させる不純物元素としては、p型ドーパントと結合して不活性化させたり、深い準位を形成したりして、アクセプターを不活性化させる効果を有する元素が用いられる。このような元素の一例として、B、H及びFeが挙げられる。
【0050】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0051】
第3実施形態によっても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、誘電体層60の形成を省略することができる。
【0052】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、主として導電性層の構成の点で第2実施形態と相違する。
図5は、第4実施形態に係る面発光レーザのリッジ構造の近傍を示す断面図である。
【0053】
図5に示すように、第4実施形態に係る面発光レーザでは、導電性層40は、透明導電層41と、金属層42とを含む。誘電体層60の上に金属層42があり、金属層42の上に透明導電層41がある。金属層42は第1の層310と第2の層320との界面に直接接する。金属層42は、例えばAu層である。透明導電層41は、例えばITO層である。例えば、金属層42の上面と第1の層310の上面とは略面一である。透明導電層41は第1の導電性層の一例であり、金属層42は第2の導電性層の一例である。
【0054】
第4実施形態に係る面発光レーザの製造に際しては、例えば誘電体層60の形成後に、リッジ構造350の形成に用いたレジストマスクを残したまま、誘電体層60に続けて金属層42を形成し、その後にレジストマスクを除去する。この時、金属層42の厚さは、金属層42の上面が、リッジ構造350の上面と略面一となる厚さとする。そして、リフトオフの後に、透明導電層41をリッジ構造350の上面に接するように形成する。
【0055】
他の構成は第2実施形態と同様である。
【0056】
第4実施形態によっても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、金属層42の電気抵抗は透明導電層の電気抵抗よりも低いため、面発光レーザ全体の電気抵抗をより低減することができる。更に、金属層42で覆われたリッジ構造350の外側で光が遮光されるため、横方向で光を閉じ込めやすい。
【0057】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、主として導電性層の構成の点で第4実施形態と相違する。
図6は、第5実施形態に係る面発光レーザのリッジ構造の近傍を示す断面図である。
図6(b)は
図6(a)中の破線の円で示す領域近傍における電流を矢印で示す断面図である。
【0058】
図6(a)に示すように、第5実施形態に係る面発光レーザでは、導電性層40は、第1透明導電層43と、第2透明導電層44とを含む。誘電体層60の上に第2透明導電層44があり、第2透明導電層44の上に第1透明導電層43がある。第2透明導電層44は第1の層310と第2の層320との界面に直接接する。第1透明導電層43及び第2透明導電層44は、例えばITO層である。第2透明導電層44の電気抵抗が第1透明導電層43の電気抵抗よりも低い。例えば、第2透明導電層44の上面と第1の層310の上面とは略面一である。第1透明導電層43は第1の導電性層の一例であり、第2透明導電層44は第2の導電性層の一例である。
【0059】
第5実施形態に係る面発光レーザの製造に際しては、例えば誘電体層60の形成後に、リッジ構造350の形成に用いたレジストマスクを残したまま、誘電体層60に続けて第2透明導電層44を形成し、その後にレジストマスクを除去する。この時、第2透明導電層44の厚さは、第2透明導電層44の上面が、リッジ構造350の上面と略面一となる厚さとする。そして、リフトオフの後に、第1透明導電層43をリッジ構造350の上面に接するように形成する。
【0060】
他の構成は第4実施形態と同様である。
【0061】
第5実施形態によっても第4実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1透明導電層43の材料には、光を吸収しにくく、良好な平坦性を得やすいITO等の材料を用いつつ、第2透明導電層44には、第1透明導電層43よりも光を吸収しやすかったり、平坦性が低くなったりしても電気抵抗が低いITO等の材料を用いることができる。このため、第2透明導電層44の電気抵抗が第1透明導電層43の電気抵抗よりも低く、
図6(b)に示すように、導電性層40から共振器20へは、第1の層310と第2の層320との界面から電流が注入されやすい。従って、面発光レーザ全体の電気抵抗をより低減することができる。
【0062】
更に、第4実施形態と比較して、回折による損失を小さくでき、低閾でシングルモードを得やすい。
【0063】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態は、投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ(head-up display:HUD)に関する。
図7は、第6実施形態に係る投影装置の一例であるHUDを示す模式図である。
図8は、第6実施形態に係るHUDを搭載した自動車を示す模式図である。
【0064】
投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばHUDである。
【0065】
第6実施形態に係るHUD500は、
図8に示すように、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。HUD500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。これにより、運転者402は、HUD500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。自動車400は移動体の一例である。
【0066】
図7に示すように、HUD500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメートレンズ502,503,504と、2つのダイクロイックミラー505,506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面514を有する可動装置513にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記HUD500では、レーザ光源501R,501G,501B、コリメートレンズ502,503,504、ダイクロイックミラー505,506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。レーザ光源501R,501G,501Bは、第1~第5実施形態のいずれかに係る面発光レーザを含む。レーザ光源501R,501G,501Bが、第1~第5実施形態のいずれかに係る面発光レーザを複数備えた面発光レーザアレイを含んでもよい。
【0067】
HUD500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0068】
レーザ光源501R,501G,501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメートレンズ502,503,504で略平行光とされ、合成部となる2つのダイクロイックミラー505,506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面514を有する可動装置513によって二次元走査される。可動装置513で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0069】
可動装置513は、反射面514を2軸方向に往復可動させ、反射面514に入射する投射光Lを二次元走査する。この可動装置513の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0070】
光源ユニット530及び可動装置513は制御装置515により制御される。
【0071】
以上、投影装置の一例としてのHUD500の説明をしたが、投影装置は、反射面514を有した可動装置513により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ等にも、同様に適用することができる。
【0072】
また、投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0073】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。第7実施形態は、ヘッドマウントディスプレイ(head mount display:HMD)に関する。
図9は、第7実施形態に係るHMDの外観を例示する斜視図である。
【0074】
HMDは、人間の頭部に装着可能な頭部装着型ディスプレイで、例えば、眼鏡に類する形状とすることができる。
【0075】
第7実施形態に係るHMD600は、
図9に示すように、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント600a、及びテンプル600bにより構成されている。フロント600aは、例えば、導光板610により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル600bに内蔵することができる。
【0076】
図10は、HMD600の構成を部分的に例示する図である。なお、
図10では、左眼用の構成を例示しているが、HMD600は右眼用としても同様の構成を有している。
【0077】
HMD600は、制御装置515と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面514を有する可動装置513と、導光板610と、ハーフミラー620とを有している。
【0078】
光源ユニット530は、上述したように、レーザ光源501R、501G、及び501Bと、コリメートレンズ502、503、及び504と、ダイクロイックミラー505、及び506とを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、レーザ光源501R、501G、及び501Bからの三色のレーザ光は、合成部となるダイクロイックミラー505及び506で合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。
【0079】
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置513に入射する。可動装置513は、制御装置515からの信号に基づき、反射面514をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。この可動装置513の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われ、走査光によりカラー画像が形成される。
【0080】
可動装置513による走査光は、導光板610に入射する。導光板610は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー620に導光する。導光板610は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
【0081】
ハーフミラー620は、導光板610からの光をHMD600の背面側に反射し、HMD600の装着者630の眼の方向に出射する。ハーフミラー620は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー620での反射により、装着者630の網膜に結像する。或いは、ハーフミラー620での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者630の網膜に結像する。またハーフミラー620での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者630は、XY方向に走査される光で形成される画像を、観察することができる。
【0082】
フロント600aにハーフミラー620が設けられているため、装着者630には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して観察される。ハーフミラー620に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを観察できる構成としてもよい。
【0083】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。第8実施形態は、検眼装置に関する。
図11は、第8実施形態に係る検眼装置を示すブロック図である。
【0084】
第8実施形態に係る検眼装置800は、視力検査、眼屈折力検査、眼圧検査、眼軸長検査など種々の検査を行うことができる装置である。検眼装置800は、眼球830に非接触で検査可能な装置であって、光源ユニット810と、制御部821と、入力部822と、記憶部823と、表示部824とを有している。光源ユニット810は、光源811と、投影光学系812とを有している。検眼に際し、制御部821が光源811を制御し、投影光学系812は光源811が発した光を被検者の眼球830に投影する。つまり、光源ユニット810から被検者の眼球830に光が検査用情報として照射される。入力部822は、被検者又は操作者が検眼に使用する情報を入力する機器である。入力部822に入力された情報は制御部821に伝達される。記憶部823は、制御部821が出力した情報を記憶する。表示部824は、制御部821が出力した情報を表示する。被検者は、被験者の顔を支持する支持部に顔を固定し、検眼窓から投影光学系812により投影される検査用情報を凝視する。光源ユニット810の検査用情報の投影のための光源811に、第1~第5実施形態のいずれかに係る面発光レーザを用いることができる。検査用情報の投影のための光源811に、第1~第5実施形態のいずれかに係る面発光レーザを複数備えた面発光レーザアレイを用いてもよい。また、検眼装置がグラス形態の検眼装置であってもよい。グラス形態の検眼装置により、検査に必要な空間や大型の検眼装置が不要となり、簡便な構成で場所に左右されることなく検査が可能となる。
【0085】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0086】
本開示の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
第1の反射鏡と、
第2の反射鏡と、
前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡との間に設けられた、活性層を含む共振器と、
前記共振器に電流を注入する導電性層と、
を有し、
前記共振器を含む半導体積層構造を備え、
前記半導体積層構造は、
第1のp型半導体層を含む第1の層と、
前記第1の層と前記活性層との間に設けられ、第2のp型半導体層を含む第2の層と、
を有し、
前記第2のp型半導体層は、前記第1の層に接するとともに、前記第1のp型半導体層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを備え、
前記第1の層の上面の一部又は全部と、前記第1の層と前記第2の層との界面と、が前記導電性層と接することを特徴とする面発光レーザ。
<2>
前記第1の層は、前記第1のp型半導体層のバンドギャップ以下のバンドギャップを有するアンドープ半導体層をさらに含み、
前記アンドープ半導体層が前記第2の層に接することを特徴とする前記<1>に記載の面発光レーザ。
<3>
前記第1の層及び前記第2の層の積層体はリッジ構造を有し、
前記第1の層の上面に垂直な方向からの平面視で、前記第1の層の外周が前記活性層の外周よりも内側にあることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の面発光レーザ。
<4>
前記積層体の前記平面視で前記リッジ構造の外側に位置する部分と前記導電性層とを電気的に絶縁する絶縁領域を有することを特徴とする前記<3>に記載の面発光レーザ。
<5>
前記リッジ構造は、厚さ方向で、
前記第1の層の全部と、
前記第2のp型半導体層の一部又は全部と、
を含み、
前記絶縁領域は、上面が前記第1の層と前記第2の層との界面より前記活性層側にある誘電体層を有することを特徴とする前記<4>に記載の面発光レーザ。
<6>
前記リッジ構造は、厚さ方向で、前記第1の層の全部を含み、
前記絶縁領域は、上面が前記第1の層と前記第2の層との界面より前記活性層側にあり、アクセプターを不活性化させる不純物元素を含む不活性半導体層を有することを特徴とする前記<4>に記載の面発光レーザ。
<7>
前記導電性層は、
前記第1の層の上面に接し、発振される光の少なくとも一部を透過する第1の導電性層と、
前記第1の層と前記第2の層との界面に接する第2の導電性層と、
を含み、
前記第2の導電性層の電気抵抗は前記第1の導電性層の電気抵抗よりも低いことを特徴とする前記<1>から<6>のいずれかに記載の面発光レーザ。
<8>
前記第2の導電性層は金属層であることを特徴とする前記<7>に記載の面発光レーザ。
<9>
前記第1のp型半導体層はInaGa1-aN層(0≦a<1)であり、
前記第2のp型半導体層はAlbGa1-bN層(0<b<1)であることを特徴とする前記<1>から<8>のいずれかに記載の面発光レーザ。
<10>
前記<1>から<9>のいずれかに記載の面発光レーザと、
前記面発光レーザが発した光を偏向する光偏向装置と、
を備え、
前記光を偏向して投影する、投影装置。
<11>
前記<1>から<9>のいずれかに記載の面発光レーザを備える、ヘッドアップディスプレイ。
<12>
前記<11>に記載のヘッドアップディスプレイを備える、移動体。
<13>
前記<1>から<9>のいずれかに記載の面発光レーザを備える、ヘッドマウントディスプレイ。
<14>
前記<1>から<9>のいずれかに記載の面発光レーザを備える、検眼装置。
【符号の説明】
【0087】
1 面発光レーザ
20 共振器
40 導電性層
41 透明導電層
42 金属層
43 第1透明導電層
44 第2透明導電層
310 第1の層
311 第1のp型半導体層
312 アンドープ半導体層
320 第2の層
321 不活性半導体層
330 第3の層
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0088】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 59, SGGE08 (2020)