IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-138311電磁波吸収/反射体、平面アンテナ、及び電磁波吸収/反射体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138311
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】電磁波吸収/反射体、平面アンテナ、及び電磁波吸収/反射体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20230922BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20230922BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20230922BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20230922BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20230922BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H05K9/00 M
H01Q17/00
H01Q13/08
H01Q21/06
H01P11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197447
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2022044204
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】志連 陽平
(72)【発明者】
【氏名】平野 由希子
(72)【発明者】
【氏名】畑中 伸一
(72)【発明者】
【氏名】福田 智男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平塚 弘行
(72)【発明者】
【氏名】田村 麻人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】中森 英雄
(72)【発明者】
【氏名】若林 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘司
【テーマコード(参考)】
5E321
5J020
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5E321AA31
5E321BB21
5E321GG11
5J020AA03
5J020BA06
5J020CA05
5J020EA04
5J020EA05
5J020EA07
5J020EA09
5J020EA10
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021JA07
5J045AB05
5J045DA10
5J045FA02
5J045GA05
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】基材の表面に形成される導電体パターンのサイズを増大させずに、数GHz以下の周波数に対応可能な薄型の電磁波吸収/反射体を提供する。
【解決手段】電磁波吸収/反射体は、基材と、前記基材の表面に周期的に設けられた導電体の単位パターンとを有し、前記単位パターンの一部は、隣接する単位パターンの一部と、間に誘電体層を挟んで前記基材の積層方向に重なり合っている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面に周期的に設けられた導電体の単位パターンと、
を有し、前記単位パターンの一部は、隣接する単位パターンの一部と、間に誘電体層を挟んで前記基材の積層方向に重なり合っている、
電磁波吸収/反射体。
【請求項2】
前記単位パターンは、前記隣接する単位パターンに向かって延びるアームを有し、前記アームが前記誘電体層を挟んで前記隣接する単位パターンのアームと前記積層方向に重なり合って容量結合部が形成されている、
請求項1に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項3】
前記容量結合部は、第1の面積で前記積層方向に重なり合う第1の容量結合部と、前記第1の面積と異なる第2の面積で前記積層方向に重なり合う第2の容量結合部とを含む、
請求項2に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項4】
前記容量結合部は、前記積層方向に重なり合う第1の容量結合部と、隣接する2つの単位パターンを面内方向に分離する間隙に形成される第2の容量結合部と、を含む、
請求項2に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項5】
前記第2の容量結合部は前記間隙に絶縁層を含む、
請求項4に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項6】
前記アームは、前記隣接する単位パターンのアームと長さ方向で重なり合う、
請求項2に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項7】
前記アームは、前記隣接する単位パターンのアームと幅方向で重なり合う、
請求項2に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項8】
前記アームは前記アームの幅が広がった幅広部を有し、前記アームは前記隣接する単位パターンのアームと前記幅広部で重なり合う、
請求項2に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項9】
前記容量結合部は導電性インクで形成されている、
請求項2に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項10】
前記誘電体層の厚み、前記単位パターンの大きさ、前記容量結合部の面積、前記基材の厚みの少なくとも1種にばらつきをもっている、
請求項2から9のいずれか1項に記載の電磁波吸収/反射体。
【請求項11】
基材と、
前記基材の表面に第1導電体で形成される第1グループの単位パターンと、
前記第1グループの単位パターンの少なくとも一部を覆う誘電体層と、
前記誘電体層の上に設けられ、前記誘電体層を間に挟んで前記第1グループの単位パターンと積層方向に重なり合わないように第2導電体で形成される第2グループの単位パターンと、
を有する電磁波吸収/反射体。
【請求項12】
請求項1または11に記載の電磁波吸収/反射体と、
前記単位パターンに設けられた給電点と、
を有するアンテナ。
【請求項13】
基材の表面に、第1グループの単位パターンを導電体で形成し、
前記第1グループの単位パターンの少なくとも一部を覆う誘電体層を形成し、
前記誘電体層の上に、前記誘電体層を間に挟んで前記第1グループの単位パターンの前記一部と積層方向に重なり合うように第2グループの単位パターンを導電体で形成する、
電磁波吸収/反射体の製造方法。
【請求項14】
前記誘電体層の厚み、前記第1グループの単位パターンの大きさ、前記第2グループの単位パターンの大きさ、前記積層方向に重なり合う領域の面積、前記基材の厚みの少なくとも1種についてばらつきを持たせる、
請求項13に記載の電磁波吸収/反射体の製造方法。
【請求項15】
基材の表面に、第1グループの単位パターンを導電体で形成し、
前記第1グループの単位パターンの少なくとも一部を覆う誘電体層を形成し、
前記誘電体層の上に、前記誘電体層を間に挟んで、前記第1グループの単位パターンの前記一部と積層方向に重なり合わないように第2グループの単位パターンを導電体で形成する、
電磁波吸収/反射体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収/反射体、平面アンテナ、及び電磁波吸収/反射体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアルは、物質の電磁的または熱的な特性、機械的な振動などを操作する人工的な構造体である。メタサーフェスや周波数選択板は二次元的なメタマテリアルの一種であり、物質の電磁波等に対する特性を操作する人工的な表面を有する。たとえば、図1に示すように、導電性のパターンPの周期的な二次元配列でメタサーフェスが形成される。パターンPのサイズ、ピッチ(中心間距離)、導電性のパターンPを担持する基材の誘電率等を適切に設計することで、特定周波数の電磁波に対する吸収、反射、発振等の特性が制御される。特定周波数、すなわち共振周波数fは、パターンPの等価LC回路のインダクタンスLeffとキャパシタンスCeffを用いて
f=1/2π(Leff・Ceff)^1/2
と概算される。
【0003】
周期構造をもつパターンPのサイズは、ターゲットの電磁波の波長λの1/2以下に設定され、一般的には波長の1/10から1/4程度に設定される。現在、5G移動体通信規格で用いられる28GHz帯以上において、通信機器内部での電磁波自家中毒を防ぐため電磁波吸収体が求められている。メタマテリアルまたはメタサーフェスで28GHz帯を吸収するサイズは数mm程度となり、小型の通信機器内部に導入するにはサイズが大きく、導入することが難しい。また、数GHz以下の低周波の電磁波を扱う場合、導電性パターンのサイズとピッチは、数センチメートル以上になる。このように大きなサイズのパターンを繰り返し配置する構成では、電磁波吸収体として狭い空間内に導入することが難しい。発振用途では、低周波用のアンテナのサイズが増大する。
【0004】
1GHz以下の低周波吸収体として、磁性損失を利用した軟磁性体のノイズ抑制シートが用いられている。軟磁性体のノイズ抑制シートの電磁波吸収量は厚さに依存し、シートの厚さと重量がかさむ。また、1GHzを超える周波数では、電磁波に対する吸収量が低下する。メタマテリアルの単位パターンを構成する導電体パッチの間にコンデンサを半田付けして、低周波の電磁波吸収を実現する構成が提案されている(たとえば、特許文献1、及び非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電体パッチの間にコンデンサ素子を半田付けする構成は、コストが高く、量産に不向きである。半田付けされたコンデンサ素子を用いる場合、メタマテリアル層の厚さに加えてコンデンサ素子の厚みが生じる。1GHzの電磁波に対しては、メタマテリアル層のみの厚さはサブミリメートルであるが、コンデンサ素子を含むと、1ミリメートルからで数ミリメートルの厚さになる。
【0006】
ひとつの側面で、本発明は、基材の表面に形成される導電体パターンのサイズを増大させずに、所望の周波数に対応可能な薄型の電磁波吸収または反射体を提供する。以下で「電磁波吸収または反射体」を「電磁波吸収/反射体」と表記する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、電磁波吸収/反射体は、
基材と、
前記基材の表面に周期的に設けられた導電体の単位パターンと、
を有し、前記単位パターンの一部は、隣接する単位パターンの一部と、間に誘電体層を挟んで前記基材の積層方向に重なり合っている。
【0008】
別の実施形態で、電磁波吸収/反射体は、
基材と、
前記基材の表面に第1導電体で形成される第1グループの単位パターンと、
前記第1グループの単位パターンの少なくとも一部を覆う誘電体層と、
前記誘電体層の上に設けられ、前記誘電体層を間に挟んで前記第1グループの単位パターンと積層方向に重なり合わないように第2導電体で形成される第2グループの単位パターンと、
を有する。
【発明の効果】
【0009】
基材の表面に形成される導電体パターンのサイズを増大させずに、薄型の電磁波吸収/反射体とその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】メタサーフェスに用いられる一般的な導電性パターンを示す図である。
図2】実施形態の電磁波吸収/反射体の基本構成図である。
図3】第1実施形態の電磁波吸収/反射体の平面模式図である。
図4図3の電磁波吸収/反射体のA-A断面の構成例を示す図である。
図5図3の電磁波吸収/反射体のA-A断面の別の構成例である。
図6図3の電磁波吸収/反射体のA-A断面のさらに別の構成例である。
図7A図4の電磁波吸収/反射体の製造工程図である。
図7B図4の電磁波吸収/反射体の製造工程図である。
図7C図4の電磁波吸収/反射体の製造工程図である。
図8A図5の電磁波吸収/反射体の製造工程図である。
図8B図5の電磁波吸収/反射体の製造工程図である。
図8C図5の電磁波吸収/反射体の製造工程図である。
図9A図4の電磁波吸収/反射体の容量増強の構成例を示す断面模式図である。
図9B図5の電磁波吸収/反射体の容量増強の構成例を示す断面模式図である。
図10】第2実施形態の電磁波吸収/反射体のキャパシタ調整例を示す図である。
図11】電磁波吸収/反射体の別のキャパシタ調整例を示す図である。
図12】第3実施形態の電磁波吸収/反射体の構成例を示す図である。
図13】第3実施形態の電磁波吸収/反射体の別の構成例を示す図である。
図14】間隙を利用した容量結合の構成例である。
図15】特性評価用モデルの構成図である。
図16】上層と下層の単位パターンの面内方向の重なり量を変えたときの吸収周波数特性の変化を示す図である。
図17】上層と下層の単位パターンの積層方向の間隔を変えたときの吸収周波数特性の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ひとつの実施形態では、繰り返し配置される導電体の単位パターンの一部が、誘電体層を挟んで隣接する単位パターンの一部と積層方向に重なり合う構成を提供し、上下のパターンの間で容量結合させる。容量結合の大きさ(すなわちキャパシタンス)は、重なり合いの面積、誘電体層の厚さ、及び誘電率を設計することで、所望の値に設定可能である。別の実施形態では、基板と垂直な方向から見たときに上層と下層の単位パターンは面内方向には重なり合わずに、基板と水平な方向に容量結合を形成する。単位パターンの一部を用いてパターン間に所望の大きさの容量結合を設けることで、単位パターンのサイズを小さく保ったまま、より低い周波数の電磁波に対する吸収、反射、発振等の特性を実現することができる。
【0012】
隣接する単位パターンと単位パターンの間に設けられる容量結合は、インクジェット、スクリーン印刷、スプレイ法などの印刷法で形成可能である。容量結合部を塗布薄膜で形成することにより、薄型の電磁波吸収/反射体が作製される。容量結合部の重なり合いの面積、誘電体層の厚さ、材料を変えるだけで、電磁波に対する特性を容易に制御できる。また、複数種類の容量結合を形成することで、吸収あるいは反射のスペクトルを複数持たせる、あるいはブロードにすることができる。
【0013】
以下で、実施形態の電磁波吸収/反射体の具体的な構成を示す。実施形態で、同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する記載を省略する場合がある。
【0014】
図2は、実施形態の電磁波吸収/反射体10の基本構成図である。電磁波吸収/反射体10は、基材11の表面に周期的に設けられた導電体の単位パターン15を有する。図示の便宜上、電磁吸収/反射体10の繰り返しパターンの一部だけを示している。隣接する単位パターン15と単位パターン15の間に、容量結合部12が設けられている。容量結合部12は、隣り合う単位パターン15同士の重なり合いにより形成されている。ある単位パターン15の一部と、隣接する単位パターン15の一部が、間に誘電体を挟んで基材11と垂直な方向(積層方向)で重なり合っている。
【0015】
導電体パッチと導電体パッチの間にコンデンサ素子を半田付けする構成と異なり、単位パターン15と同じ塗布膜を用いて容量結合部12が形成される。単位パターン15同士の重なり合いの面積と、間に挿入される誘電体層の厚さ、及び誘電率を選択することで、所望の大きさの容量結合が得られる。単位パターン15が形成される基材11は、誘電体の基材、あるいは金属フォイル上に誘電体膜が形成された基材であってもよい。基材11は、薄いガラスプレートのような無機誘電体であってもよいし、絶縁性の樹脂フィルムを用いてもよい。また、インクジェット、スクリーン印刷、スプレイ法などの印刷法で形成した樹脂膜でもよい。基材11として樹脂材料を用いる場合、フレキシブルな電磁波吸収/反射体10が得られ、曲面、屈曲面などに電磁波吸収/反射体10を適用することができる。
【0016】
単位パターン15の縦方向及び横方向のサイズと中心間距離は、一般的にはターゲットの周波数の波長に応じて決定される。これに対し、実施形態では塗布薄膜で容量結合部12を形成し、容量結合の大きさを所望の値に設定できる。したがって、より高い周波数に対するパターンサイズを維持しながら、電磁波吸収/反射体10の共振周波数を低周波側にシフトさせて、薄型、かつ小型の電磁波吸収/反射体10が実現される。
【0017】
電磁波吸収/反射体10を電磁波吸収シートとして用いる場合、入射波に対する反射波の比(反射波/入射波)で表される反射係数Γがゼロに近づくように、容量結合部12を含む全体のインピーダンスが調整される。反射係数Γがゼロに近づくと、電磁波吸収/反射体10の固有インピーダンスが、電磁波伝搬媒体である空気のインピーダンスと見かけ上整合する。この場合、入射した電磁波はほとんど反射されず、電磁波吸収/反射体10の内部で吸収される。
【0018】
電磁波吸収/反射体10をリフレクタとして用いる場合、反射係数Γが最大となるように、すなわち電磁波吸収/反射体10のインピーダンスが見かけ上無限大になるように、容量結合部12のインピーダンスを調整してもよい。あるいは、隣接する単位パターン15で反射された電磁波が所望の方向に向かうように、位相差を制御してもよい。電磁波吸収/反射体10を平面アレイアンテナとして用いる場合は、ターゲットの周波数において最大パワーで電波が放射され、受信されるように、容量結合の大きさが決定される。
【0019】
容量結合部12がない場合、周波数選択性は単位パターン15のサイズとピッチで決まり、数GHz以下の低い周波数に対しては、単位パターン15を大きくせざるをえない。実施形態では、単位パターン15の一部で容量結合部12を形成し、所望の大きさの容量結合を実現することで、単位パターン15を小さいサイズに維持しつつ、より低い周波数帯に対応することができる。
【0020】
図2の例では、単位パターン15として正方形の導電体パターンを用いているが、単位パターン15の形状は正方形に限定されない。三角形または六角形の導電体パターンを、繰り返し周期性を持つ配置で並べ、隣接する単位パターンの間に、互いの単位パターンの一部が基材11と垂直な方向で重なり合う容量結合部12を設けてもよい。あるいは、円、楕円、多角形の単位パターンを格子配置、または互い違いに並べて、隣接する単位パターン15の間に容量結合部12を設けてもよい。
【0021】
容量結合部12は、すべての隣接する単位パターン15の間に設ける必要はなく、少なくとも2つの隣接する単位パターン15の間に設けられていればよい。電磁波吸収/反射体10に設けられる容量結合の大きさは同じである必要はなく、複数種類の容量結合を設けてもよい。これらの具体的な構成は以下の実施形態で説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図3は、第1実施形態の電磁波吸収/反射体10の平面模式図である。電磁波吸収体/反射体10は、図2の基本構成を採用している。基材11の表面に、略同じ大きさと形状の導電体の単位パターン15が周期的に形成されている。「略同じ」というのは、設計上大きさと形状が同じに設定されていることを意味し、許容範囲内の製造誤差が含まれていてもよい。
【0023】
複数の単位パターン15の少なくとも一部は、隣接する単位パターン15に向かって延びるアーム151を有する。ある単位パターン15のアーム151と、隣接する単位パターン15のアーム151は、間に誘電体層13を挟んで、積層方向に重なり合っている。積層方向で重なり合う上下のアーム151と、間に挟まれる誘電体層13で、容量結合部12が形成される。
【0024】
アーム151を含む単位パターン15の全体を、インクジェット、スクリーン印刷などの印刷法で形成してもよい。あるいは、単位パターン15のアーム151を除く本体部分を室温スパッタリング等で形成し、容量結合部12を印刷法で形成してもよい。印刷法のうちインクジェット法は、導電体性の材料と絶縁性の材料を、所望のタイミングで、基材11上の正確な位置に吐出できるので、有利である。基材11にフレキシブルな高分子材料を用いる場合も、室温で簡単にパターン形成できる印刷法が有利である。
【0025】
図4は、図3の電磁波吸収/反射体10のA-A断面の構成例を示す。図4の電磁波吸収/反射体10Aにおいて、誘電体層13は、単位パターン15が重なり合う領域にだけ設けられている。基材11の上に設けられた単位パターン15は、端部にアーム151を有し、アーム151で隣接する単位パターンのアーム151と重なり合う。下側のアーム151と上側のアーム151の間に誘電体層13が挿入され、容量結合部12を形成するとともに、隣接する単位パターン15の間を電気的に隔離する。
【0026】
図5は、図3の電磁波吸収/反射体10のA-A断面の別の構成例を示す。図5の電磁波吸収/反射体10Bにおいて、誘電体層13は、基材11の上の全面に形成されている。誘電体層13の下に設けられる単位パターン15-1と、誘電体層13の上に設けられる単位パターン15-2が、間に誘電体層13を挟んで、アーム151で互いに重なり合っている。誘電体層13を挟む下側のアーム151と上側のアーム151の間に容量結合部12が形成されるとともに、隣接する単位パターン15の間が電気的に隔離される。
【0027】
図6は、図3の電磁波吸収/反射体10のA-A断面のさらに別の構成例を示す。図6の電磁波吸収/反射体10Cは、図4の構成に加えて、基材11の裏面にグランド層16を有する。各単位パターン15とグランド層16の間にキャパシタンスが形成され、単位パターン15ごとに位相遅れの大きさを制御することができる。図6では、図4の構成にグランド層16を設けているが、図5の構成にグランド層16を適用してもよいことは言うまでもない。
【0028】
図7A図7Cは、図4の電磁波吸収/反射体10Aの製造工程を上面図と断面図で示す。図7Aで、基材11の上に、第1グループの単位パターン15-1を形成する。最終的な単位パターン15を、図3のような格子配置とする場合、第1グループの単位パターン15-1は、一つ置きの交互配置で形成される。
【0029】
図7Bで、第1グループの単位パターン15-1のアーム151を覆って、誘電体層13が部分的に設けられる。誘電体層13は、インクジェットでアーム151の上に形成されてもよい。誘電体層13は、すべてのアーム151の上に設ける必要はなく、選択されたアーム151の上にだけ形成されてもよい。
【0030】
図7Cで、第2グループの単位パターン15-2が形成され、電磁波吸収/反射体10Aが得られる。第2グループの単位パターン15-2のアーム151は誘電体層13の上に形成され、誘電体層13の下に形成されている第1グループの単位パターン15-1のアーム151と、積層方向で重なる。第2グループの単位パターン15-2の全体をインクジェットで形成してもよいし、単位パターン15-2のアーム151を除く領域をスクリーン印刷で形成し、アーム151をインクジェットで形成してもよい。
【0031】
アーム151の幅、または重なり合う長さを調整することで、容量結合部12の面積を調整することができる。誘電体層13の厚さは、成膜プロセスを制御することで制御可能である。したがって、2つの隣接する単位パターン15の間に、所望の大きさの容量結合を形成することができる。図7Aの工程の前、あるいは図7Cの工程の後に、基材11の裏面にグランド層16(図6参照)を形成してもよい。
【0032】
図8A図8Cは、図5の電磁波吸収/反射体10Bの製造工程を上面図と断面図で示す。図8Aで、基材11の上に、第1グループの単位パターン15-1を形成する。最終的な単位パターン15を、図3のような格子配置とする場合、第1グループの単位パターン15-1は、一つ置きの交互配置で形成される。単位パターン15-1は、印刷法、室温スパッタリングなど、適切な方法で形成される。
【0033】
図8Bで、単位パターン15-1が形成された基材11の全面を覆って、誘電体層13が形成される。誘電体層13は塗布膜として印刷法で形成されてもよいし、印刷法以外の方法で形成されてもよい。図8Cで、誘電体層13の上に第2グループの単位パターン15-2が形成され、電磁波吸収/反射体10Bが得られる。第2グループの単位パターン15-2のアーム151は、誘電体層13を間に挟んで、下層の単位パターン15-1のアーム151と積層方向で重なっている。
【0034】
第2グループの単位パターン15-2の全体を印刷法で形成してもよい。単位パターン15-2のアーム151を除く領域をスクリーン印刷で形成し、アーム151をインクジェット法やスプレイ法で形成してもよい。アーム151の幅と、重なり合いの長さの少なくとも一方を調整して容量結合部12の面積を調整する、または、誘電体層13の厚さを制御することで、所望の大きさの容量結合を形成することができる。図8Aの工程の前、または図8Cの工程の後に、基材11の裏面にグランド層16(図6参照)を形成してもよい。
【0035】
図9Aは、図4の電磁波吸収/反射体の容量増強の構成例を示す断面模式図、図9B図5の電磁波吸収/反射体の容量増強の構成例を示す断面模式図である。容量結合部12にさらに誘電体層13D(または13E)と導電層15-3を重ねることで、容量を増大することができる。この場合、積層コンデンサと同様に、キャパシタンスCは、
C=ε(S/d)N[F]
と表される。ここで、Sは導電層が積層方向に重なり合う面積、dは導電層間の積層方向の間隔、εは誘電率、Nは積層数である。積層数を増やすことで、キャパシタンスを大きくすることができる。
【0036】
第1実施形態では、単位パターン15のアーム151の幅と、重なり合いの長さの少なくとも一方を調整することで、容量結合部12の面積を大きくすることができる。また、隣接する単位パターン15間の電気的な絶縁が確保される範囲内で、誘電体層13を薄く形成することができる。アーム151の重なり合いの面積を大きくする、あるいは、誘電体層13の厚さを低減することで容量結合を大きくして、共振周波数を低周波側にシフトさせることができる。容量結合部12は、単位パターン15の形成過程で形成される。薄膜工程で形成される容量結合部12の基材11の表面からの高さは、数μm~数十μm以下である。コンデンサ素子を半田付けする構成と比較して、簡単なプロセスで薄い容量結合が形成される。電磁波吸収/反射体10(または10A~10E)は、単位パターン15のサイズを小さく保ったまま、所望の周波数に調整することができる。
【0037】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態の電磁波吸収/反射体20のキャパシタ調整例を示す。第1実施形態では、隣接する単位パターン15のアーム151の幅と、重なり合いの長さの少なくとも一方を調整することで、容量結合部12の面積を制御していた。図10では、アームの形状を部分的に変えることで、容量結合の大きさを調整する。
【0038】
電磁波吸収/反射体20は、基材21の表面に、複数の単位パターン25の周期的な配列を有する。複数の単位パターン25の少なくとも一部は、隣接する単位パターン25に向かって延びるアーム251を有する。隣接する2つの単位パターン25のアーム251は、間に誘電体層13を挟んで積層方向(基材11と垂直な方向)に重なり合い、容量結合部22が形成される。
【0039】
アーム251は、単位パターン15の外周に接続されるベース252と、ベース252の先端の幅広部253を含む。幅広部253は、隣接する単位パターン25のアーム251の幅広部253と積層方向に重なり合って、容量結合部22を形成する。幅広部253の面積を大きくすることで、容量結合を大きくすることができる。あるいは、誘電体層13の膜厚を薄くすることで容量結合を大きくしてもよい。
【0040】
第1実施形態と同様に、単位パターン25と誘電体層13は、インクジェット法などの印刷法により、簡単、かつ高い位置合わせ精度で形成される。
【0041】
図11は、電磁波吸収/反射体30のキャパシタ調整例を示す。第1実施形態では、隣接する2つの単位パターン15の重なり合いを、アーム151が延びる方向の重なり合いの長さで調整した。図11では、アーム351の幅(w)方向の重なり合いを調整して、容量結合の大きさを調整する。
【0042】
電磁波吸収/反射体30は、基材31の表面に、複数の単位パターン35の周期的な配列を有する。複数の単位パターン35の少なくとも一部は、隣接する単位パターン35に向かって延びるアーム351を有する。アーム351の一部は、誘電体層13を挟んで、隣接する単位パターン35のアーム351の一部と積層方向で重なり合い、容量結合部32が形成される。
【0043】
アーム351の幅(w)方向の重なり量を変えることで、容量結合部32の面積が変わるが、単位パターン35の縦方向と横方向の長さL(サイズ)は変わらない。単位パターン35の長さLの変化は、特性周波数に影響する。単位パターン35の縦方向と横方向の長さLを一定に保って、容量結合の大きさを変えることができる。これにより、単位パターン35のサイズ変動による特性周波数への影響を抑え、容量結合部32による共振周波数の制御を容易にする。
【0044】
第1実施形態と同様に、単位パターン25と誘電体層13は、インクジェット法などの印刷法を用いて簡単に、かつ高い位置合わせ精度で形成可能である。下層のアーム351-1と、上層のアーム351-2の幅方向の重なり量を、インクジェットの位置合わせ精度で制御することができる。隣接するアーム間の幅方向の重なり合いの量は必ずしも一定でなくてもよいし、一部のアームでのみ、間に誘電体層13をはさんで幅方向に重ね合わせてもよい。これにより、単位パターン35の増大を抑制しつつ、数GHz以下の低周波帯に対応可能な薄型の電磁波吸収/反射体30が実現される。
【0045】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態の電磁波吸収/反射体40の構成例を示す。第3実施形態では大きさの異なる容量結合を設ける。電磁波吸収/反射体40に複数種類の容量結合を持たせることで、吸収または反射される電磁波の帯域幅を広げることができる。
【0046】
電磁波吸収/反射体40は、基材41の表面に、複数の単位パターン45の周期的な配列を有する。複数の単位パターン45の一部または全部は、隣接する単位パターン45に向かって延びるアーム451と452の少なくとも一方を有する。アーム451と452の幅wは異なっていてもよい。アーム451、452の幅w、あるいは、アームの幅wと直交する方向の重なり合いの長さを変えることで、容量結合部の面積を変えることができる。
【0047】
たとえば、重なり合いの面積が小さい方から順に、容量が異なる容量結合部42a、42b、及び42cを設けてもよい。容量結合部の種類の数は3種類に限定されず、2種類であってもよいし、4種類以上でもよい。容量結合の大きさを少しずつ変えることで、ターゲットの周波数帯の幅を広げることができる。
【0048】
図12の構成でも、単位パターン45のサイズを小さく保ったまま、共振周波数を低周波側にシフトさせて、数GHz以下の周波数帯に対応することができる。
【0049】
図13は、電磁波吸収/反射体50の構成例を示す。図13では、複数種類の容量結合の一部に、単位パターン平面に対して、空気層を挟んだ水平方向の容量結合を用いる。水平方向に容量結合を形成する単位パターン同士は、積層方向で重なり合っていなくてもよい。電磁波吸収/反射体50は、基材51の表面に、複数の単位パターン55の周期的な配列を有する。複数の単位パターン55の一部または全部は、隣接する単位パターン55に向かって延びるアーム551を有する。隣接する2つの単位パターン55のアーム551が、誘電体層13を間に挟んで積層方向に重なり合う箇所で、第1の容量結合部52aが形成される。隣接する2つの単位パターンのアーム551が積層方向で重ならない箇所、すなわち面内方向で分離された箇所で、間隙552を挟む一対のアーム551によって、第2の容量結合部52bが形成される。間隙552の幅を変えることで、容量結合の種類をさらに増やしてもよい。
【0050】
図13の構成でも、単位パターン55のサイズを小さく保ったまま、共振周波数を低周波側にシフトさせて、数GHz以下の周波数帯に対応することができる。なお、図14に示すように、間隙552に絶縁層131を適用して、第2の容量結合部52bを形成しつつ絶縁破壊を抑制する構成にしてもよい。この構成により、隣接するアーム551間の電気的な絶縁を確実にすることができ、選択した工法の精度限界よりも狭い間隔での容量結合部を実現することができる。これにより、設計可能な波長の選択性を高めることができる。
【0051】
<吸収特性の評価(計算値)>
図15に十字パターンを用いた評価用モデルを示す。十字の大きさをL、十字の線幅をw、下層の単位パターン15-1と上層の単位パターン15-2の重なり長さをG、基材11の厚みをt_film、単位パターンを構成する導電層の厚みをt_metal、基材11と下層の単位パターン15-1との間の誘電体層13の厚みをd1、下層の単位パターン15-1と上層の単位パターン15-2の間の誘電体層13の厚みをd2とする。下層の単位パターン15-1と上層の単位パターン15-2が、面垂直方向から見て重なっているとき、重なり長さG、すなわち上層と下層の単位パターンの面内方向での重なり量が正となるようにとる。図14のように面内方向に間隙がある場合は、重なり長さGは負の値となる。
【0052】
上記構造について、基材11の比誘電率ε=3.4、誘電正接tanδ=0.004、誘電体層13の比誘電率ε=3.02、誘電正接tanδ=0.028、導電層の導電率は2×10^7[Siemens/m]として行った計算結果を図16及び図17に示す。計算はパターン面への電磁波入射に対する反射強度から吸収量を求めたものである。
【0053】
図16は、L=1.0[mm]、w=0.3[mm]、t_metal=0.2[μm]、t_film=100[μm]、d=1.6[μm]、d2=10[μm]の時、重なり長さGを0[mm]から0.30[mm]まで変化させた場合の、周波数と吸収量の関係を示すグラフである。下層の単位パターン15-1と上層の単位パターン15-2の重なり長さGが大きいほど、吸収周波数は低下するため、設計により重なり長さGを調整することで所望の吸収周波数を持つ吸収体を得ることが出来る。
【0054】
金属パターンの面垂直方向の上下を考慮しなければ、面水平方向の繰り返しパターンの単位格子サイズはL-G=0.7mm以上1.0mm以下となり、吸収ピーク波長に対し、最小で1/20である。また、厚みは約112μmであり、周波数ピークの波長に対し最小で1/120と、薄型化が実現できる。
【0055】
図17は、L=1.0[mm]、w=0.7[mm]、t_metal=0.2[μm]、t_film=100[μm]、d=1.6[μm]、G=0.1[mm]の時、d2を5[μm]から20[μm]に変化させた場合の、周波数と吸収量の関係を示すグラフである。下層の単位パターン15-1と上層の単位パターン15-2の間の誘電体層13の厚みd2が小さいほど、吸収周波数は低下するため、設計によりd2を調整することで所望の吸収周波数を持つ吸収体を得ることが出来る。また、上層と下層の単位パターンの間を隔てる誘電体層13の厚みd2にばらつきを持たせることにより、吸収体の吸収ピークをブロードにとることができる。ここでいう「ばらつき」は、製造ばらつき、プロセスばらつきの他に、設計で与えられたばらつきを含む。たとえば、インクジェット印刷による成膜時の着弾位置のばらつき、膜厚のばらつきは、ブロードな吸収特性に利用できる。設計で与えられるばらつきは、製造プロセスのばらつき量の制御を含む。例えば、d2に10[μm]から15[μm]の範囲でばらつきを持たせた設計を行うことにより、およそ24~32[GHz]に吸収をもつ吸収体を得ることができる。上層と下層の単位パターン間の誘電体層13の厚みd2以外にも、単位パターンの大きさ、容量結合部の面積、基材11の厚み、導電層の厚みについてもばらつきを与えることによりブロードな吸収を得ることができる。
【0056】
金属パターンの面垂直方向の上下を考慮しなければ、面水平方向の繰り返しパターンの単位格子サイズはL-G=0.9mmとなり、吸収ピーク波長に対し、最小で1/19である。また、厚みは約112μmであり、周波数ピークの波長に対し最小で1/150と、薄型化が実現できる。
【0057】
以上、実施形態の電磁波吸収/反射体を特定の構成例に基づいて説明したが、電磁波吸収/反射体の構成は上述した例に限定されない。矛盾がないかぎり、各構成例の特徴を互いに組み合わせてもよい。たとえば、図15の評価用モデルを用いた図16図17の計算結果は、第1実施形態から第3実施形態のいずれの構成にも当てはまる。誘電体層13の厚み、単位パターン15の大きさ、容量結合部の面積、基材11の厚みの少なくとも1種について設計されたばらつきを持たせるで、ブロードな吸収特性を実現することができる。
【0058】
図13の間隙552を利用した水平方向の容量結合部52bを、電磁波吸収/反射体20、30、または40に組み合わせてもよい。その場合に、印刷精度によっては間隙552が導通することを防ぐために、図14のように間隙552に絶縁層131を設けてもよい。電磁波吸収/反射体20、30、40、50の積層方向の容量結合部の断面形状は、図4図5のいずれを採用してもよいし、図6のように基材の裏面にグランド層16を設けてもよい。電磁波吸収/反射体20、30、40、50の単位パターン25、35、45、55の形状は矩形に限定されず、円形(真円、楕円を含む)、矩形以外の多角形(例えば三角形、六角形、十字型など)であってもよい。単位パターン25、35、45、55の形状を六角形とした場合、複数の単位パターンの周期的な配列としてハニカム状に配列することができる。
【0059】
実施形態の電磁波吸収/反射体を平面状、または曲面状のアレイアンテナに適用する場合は、各単位パターンに給電点を設ける。給電点は、対応する単位パターンとインピーダンス整合する位置に設けられる。一般的に、二次元アレイアンテナの発振周波数(共振周波数)は、導電体パターンのサイズ(一辺の長さ)と、パターン間隔で決まり、数GHz以下の低周波では、導電体パターンが大型化する。これに対し、実施形態の容量結合構成を用いることで、導電体パターンのサイズを増大させずに、数GHz以下の電波の放射と受信に対応することができる。
【0060】
電磁波吸収/反射体の製造工程では、導電体の単位パターンの少なくとも一部を印刷法で形成する。導電性の材料として導電インクを用いて、容量結合部を構成するアームをインクジェット法で形成してもよい。また、誘電体層13の少なくとも一部を印刷法で形成する。誘電体層13のうち、容量結合部を構成する部分を、ポリイミド系等の絶縁性インクを用いてインクジェット法で形成してもよい。
【0061】
いずれの場合も、隣接する単位パターンの間の重なり合いの程度(重なり合わない間隙552を含む)、または誘電体層の厚さを制御することで、単位パターンの間に、薄膜構造の所望の容量結合を形成することができる。これにより、ターゲットの周波数を低周波側にシフトさせ、単位パターンの大型化が抑制された薄型の電磁波吸収/反射体を実現できる。
【0062】
電磁波吸収/反射体は、たとえば電磁波吸収シートとして、スマートフォンの筐体に適用できる。基材の裏面(グランド層側)に接着層を設けて、筐体の内部に貼り付ける構成にしてもよい。単位パターンのサイズが抑制されているので、小型のスマートフォンや携帯電話などの電子機器の内部への導入が容易である。
【0063】
以上の開示は、以下の態様をとり得る。
(項1)
基材と、
前記基材の表面に周期的に設けられた導電体の単位パターンと、
を有し、前記単位パターンの一部は、隣接する単位パターンの一部と、間に誘電体層を挟んで前記基材の積層方向に重なり合っている、
電磁波吸収/反射体。
(項2)
前記単位パターンは、前記隣接する単位パターンに向かって延びるアームを有し、前記アームが前記誘電体層を挟んで前記隣接する単位パターンのアームと前記積層方向に重なり合って容量結合部が形成されている、
項1に記載の電磁波吸収/反射体。
(項3)
前記容量結合部は、第1の面積で前記積層方向に重なり合う第1の容量結合部と、前記第1の面積と異なる第2の面積で前記積層方向に重なり合う第2の容量結合部とを含む、
項2に記載の電磁波吸収/反射体。
(項4)
前記容量結合部は、前記積層方向に重なり合う第1の容量結合部と、隣接する2つの単位パターンを面内方向に分離する間隙に形成される第2の容量結合部と、を含む、
項2に記載の電磁波吸収/反射体。
(項5)
前記第2の容量結合部は前記間隙に絶縁層を含む、
項4に記載の電磁波吸収/反射体。
(項6)
前記アームは、前記隣接する単位パターンのアームと長さ方向で重なり合う、
項2に記載の電磁波吸収/反射体。
(項7)
前記アームは、前記隣接する単位パターンのアームと幅方向で重なり合う、
項2に記載の電磁波吸収/反射体。
(項8)
前記アームは前記アームの幅が広がった幅広部を有し、前記アームは前記隣接する単位パターンのアームと前記幅広部で重なり合う、
項2に記載の電磁波吸収/反射体。
(項9)
前記容量結合部は導電性インクで形成されている、
項2から8のいずれかに記載の電磁波吸収/反射体。
(項10)
前記誘電体層の厚み、前記単位パターンの大きさ、前記容量結合部の面積、前記基材の厚みの少なくとも1種に設計されたばらつきをもっている、
項2から9のいずれかに記載の電磁波吸収/反射体。
(項11)
基材と、
前記基材の表面に第1導電体で形成される第1グループの単位パターンと、
前記第1グループの単位パターンの少なくとも一部を覆う誘電体層と、
前記誘電体層の上に設けられ、前記誘電体層を間に挟んで前記第1グループの単位パターンと積層方向に重なり合わないように第2導電体で形成される第2グループの単位パターンと、
を有する電磁波吸収/反射体。
(項12)
項1から11のいずれか記載の電磁波吸収/反射体と、
前記単位パターンに設けられた給電点と、
を有するアンテナ。
(項13)
基材の表面に、第1グループの単位パターンを導電体で形成し、
前記第1グループの単位パターンの少なくとも一部を覆う誘電体層を形成し、
前記誘電体層の上に、前記誘電体層を間に挟んで、前記第1グループの単位パターンの前記一部と積層方向に重なり合うように第2グループの単位パターンを導電体で形成する、
電磁波吸収/反射体の製造方法。
(項14)
前記誘電体層の厚み、前記第1グループの単位パターンの大きさ、前記第2グループの単位パターンの大きさ、前記積層方向に重なり合う領域の面積、前記基材の厚みの少なくとも1種についてばらつきを持たせる、
項13に記載の電磁波吸収/反射体の製造方法。
(項15)
基材の表面に、第1グループの単位パターンを導電体で形成し、
前記第1グループの単位パターンの少なくとも一部を覆う誘電体層を形成し、
前記誘電体層の上に、前記誘電体層を間に挟んで、前記第1グループの単位パターンの
前記一部と積層方向に重なり合わないように第2グループの単位パターンを導電体で形成する、
電磁波吸収/反射体の製造方法。
【符号の説明】
【0064】
10、10A~10E、20、30、40、50 電磁波吸収/反射体
11、21、31、41、51 基材
12、22、32、42a~42c、52a、52b 容量結合部
13 誘電体層
131 絶縁層
15、15-1、15-2、25、35、45、55 単位パターン
151、251、351、451、452、551 アーム
552 間隙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特許第4926099号公報
【非特許文献】
【0066】
【非特許文献1】Bui Xuan Khuyen, et al., "Ultra-subwavelength thickness for dual/triple-band methamaterial absorber at very low frequency", Sci Rep. (2018) 8(1):11632
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17