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特開2023-138315電極、電気化学素子、電極の製造装置、及び電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138315
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】電極、電気化学素子、電極の製造装置、及び電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20230922BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230922BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230922BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230922BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20230922BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230922BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230922BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/04 Z
H01G11/26
H01G13/00 381
H01G11/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206417
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2022040933
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】李 木馨
(72)【発明者】
【氏名】後藤 峻
(72)【発明者】
【氏名】壇 達也
(72)【発明者】
【氏名】木田 仁司
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078BA06
5E078BA12
5E078BA27
5E078BA38
5E078BA73
5E078BB30
5E078BB36
5E078FA02
5E078FA13
5E082AB09
5E082BC38
5E082EE02
5E082EE03
5E082EE14
5E082EE23
5E082EE32
5E082EE45
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA15
5H050GA25
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA09
(57)【要約】
【課題】空隙率が均一な電極合材層を有し、容量維持率の向上が図れる電極の提供。
【解決手段】基体と、前記基体上に電極合材層とを有してなり、前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の空隙率d1と、前記第1凸状部の空隙率d2との比(d1/d2)が、0.82以上1.22以下である電極とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体上に電極合材層とを有し、
前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、
前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の空隙率d1と、前記第1凸状部の空隙率d2との比(d1/d2)が、0.82以上1.22以下であることを特徴とする電極。
【請求項2】
基体と、前記基体上に電極合材層とを有し、
前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、
前記一の方向の断面において、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であることを特徴とする電極。
【請求項3】
前記非凸状部の高さh1(μm)と、前記凸状部の高さh2(μm)との比(h1/h2)が0.71以上である、請求項1から2のいずれかに記載の電極。
【請求項4】
隣接する前記凸状部の頂点と前記非凸状部の頂点間の距離をa1とすると、次式、(h2-h1)/a1=0.0060以上0.050以下、を充たす、請求項3に記載の電極。
【請求項5】
請求項1から2のいずれかに記載の電極を有することを特徴とする電気化学素子。
【請求項6】
請求項1から2のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造装置であって、
基体上に活物質及び分散媒を含有する液体組成物を付与し、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を形成する付与手段を有することを特徴とする電極の製造装置。
【請求項7】
前記液体組成物を付与する付与方向及び前記付与方向と直交する方向の少なくともいずれかに凸状部を形成する、請求項6に記載の電極の製造装置。
【請求項8】
前記液体組成物の付与がインクジェット法で行われる、請求項6に記載の電極の製造装置。
【請求項9】
請求項1から2のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造方法であって、
基体上に活物質及び分散媒を含有する液体組成物を付与し、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を形成する付与工程を含むことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項10】
前記液体組成物を付与する付与方向及び前記付与方向と直交する方向の少なくともいずれかに凸状部を形成する、請求項9に記載の電極の製造方法。
【請求項11】
前記液体組成物の付与がインクジェット法で行われる、請求項9に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、電気化学素子、電極の製造装置、及び電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学素子は、ウェアラブルデバイス又はスマートフォン等の民生用小型デバイスから電気自動車又は定置用蓄電池等の大型デバイスまで利用範囲が急速に拡大している。
【0003】
このような電気化学素子の多様化するニーズに対し、従来の電極の製造方法では柔軟に製造品種などを切り替えることが困難であることから、新たな電極の製造方法の提供が望まれている。そこで、例えば、平坦な電極合材層を金型でプレスし、表面に微細な凹凸形状を形成し電極の表面積を増加する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この提案によると、電極表面に微細な凹凸形状を形成することによる表面積の増加によって電気化学素子の性能の向上が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では電極合材層を金型でプレスして凹凸形状を形成しているため、凹凸形状の電極合材層における空隙率が不均一になり、電気化学素子の性能低下が生じるおそれがある。また、従来技術では電極合材層の表面形状を変える度に、金型を変更しなければならず、プレス条件の検討などが必要となり、生産効率の低下及びコスト増加の要因となるという課題がある。
【0005】
本発明は、空隙率が均一な電極合材層を有し、電気化学素子の性能向上を図れる電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の電極は、基体と、前記基体上に電極合材層とを有してなり、前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の空隙率d1と、前記第1凸状部の空隙率d2との比(d1/d2)が、0.82以上1.22以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、空隙率が均一な電極合材層を有し、容量維持率の向上が図れる電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の電極の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、図1の部分拡大図である。
図3図3は、電極合材層のSEM写真を二値化処理した模式図である。
図4図4は、本実施形態の電極の製造装置の一例を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態の電極の製造装置の他の一例を示す模式図である。
図6図6は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図7図7は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態の電極の製造装置としてのドラム状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
図9図9は、本実施形態の電極の製造装置としての無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
図10図10は、電極の製造方法における電極合材層の形成パターンの一例を示す模式図である。
図11図11は、電極の製造方法における電極合材層の形成パターンの他の一例を示す模式図である。
図12図12は、電極の製造方法における電極合材層の形成パターンの他の一例を示す模式図である。
図13図13の(a)及び(b)は、電極の製造方法における電極合材層の形成パターンの他の一例を示す模式図である。
図14図14は、本発明の電気化学素子である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す概略図である
図15図15は、比較例2において凹凸形状を有する負極電極合材層を形成するのに用いた金型を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(電極)
本発明の電極は、第1の形態では、基体と、前記基体上に電極合材層とを有してなり、前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の空隙率d1と、前記第1凸状部の空隙率d2との比(d1/d2)が、0.82以上1.22以下である。
【0010】
本発明の電極は、第2の形態では、基体と、前記基体上に電極合材層とを有してなり、前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、前記一の方向の断面において、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状である。
【0011】
従来技術では、平坦な電極合材層を金型でプレスして、表面に高低差が5μm~100μmの凹凸形状を形成しているので、空隙率が均一な電極合材層を形成することができず、電気化学素子の性能が低下してしまうという問題がある。
【0012】
ここで、図1に示すように、電極10は、基体1と、該基体1上に形成された電極合材層2とを有する。
図1及び図2に示すように、電極合材層2は、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部2aを有し、前記一の方向の断面において、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部2a1と第2凸状部2a2との間に位置する非凸状部2bを有している。
基体1と電極合材層2の接触面から、非凸状部2bの前記接触面と対向する表面までの距離を非凸状部の高さh1とする。
基体1と電極合材層2の接触面から、凸状部の前記接触面と対向する表面までの距離を凸状部の高さh2とする。
隣接する前記凸状部の頂点と前記非凸状部の頂点間の厚み方向と直交する方向における距離をa1とする。
なお、本実施形態において、電極合材層の凸状部及び非凸状部は、互い違いに繰り返し略周期的に形成される。本明細書及び特許請求の範囲において、凸状部の頂点及び非凸状部の頂点とは、1周期のうちで、凸状部においては前記h2が最大となる点であり、非凸状部においては前記h1が最小となる点を表す。
隣り合う凸状部の頂点の高さh2から非凸状部の頂点の高さh1を減じたh3は、電極合材層に含まれる活物質のメジアン径D50の1.4倍以上であり、h3が1.4倍よりも小さい略平面形状とは区別される。このことから、凸状部及び非凸状部には、電極合材層に含まれる1つの活物質粒子によってのみ活物質層表面に形成される凸状部及び非凸状部が含まれないことは明らかである。
図2に示すように、第1凸状部2a1と、非凸状部2bを介して隣り合う第2凸状部2a2とは、凸状部の高さh2から非凸状部2bの高さh1を減じたh3(h2-h1)を2等分(h31=h32)した基体1と平行な直線L1が第1凸状部2a1と第2凸状部2a2との交点からそれぞれ基体1に対して垂直に下した直線L2とL3、直線L4とL5で囲まれた領域である。また、非凸状部2bは直線L3とL4で囲まれた領域である。このとき、凸状部におけるL2とL3との距離D1は、電極合材層に含まれる活物質粒子の最大粒子径であるDmaxの10倍以上の長さであることが好ましい。
【0013】
非凸状部の高さh1、凸状部の高さh2、及び隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は、例えば、レーザ顕微鏡による表面プロファイルにより測定することができる。
【0014】
本発明においては、電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の空隙率d1と、前記第1凸状部の空隙率d2との比(d1/d2)は、0.82以上1.22以下であり、0.85以上1.15以下が好ましい。前記比(d1/d2)が、0.82以上1.22以下であると、電極合材層の空隙が均一的に分布しているので、電気化学素子の出力を十分に向上させることができる。前記比(d1/d2)が0.82未満及び1.22を超える場合には、電極合材層の空隙の分布が不均一であり、電気化学素子の出力が不均一になり、電気化学素子の性能を向上させることができない。
【0015】
ここで、前記非凸状部の空隙率d1及び前記第1凸状部の空隙率d2は、以下のようにして、求めることができる。
53型埋込用エポキシ樹脂の主剤(Lot No.53512040149、株式会社三啓製)と硬化剤(Lot No.53572040342、株式会社三啓製)を体積比1:2でよく混合して、真空含浸装置(BUEHLER VACUUM IMPREGNATION EQUIPMENT I、株式会社三啓製)を使い、電極合材層を樹脂で包埋して、24時間硬化した。エポキシ樹脂で包埋された電極合材層をクロスセクションポリッシャー(日本電子株式会社製)で加工し、断面を卓上走査型電子顕微鏡SEM(Phenom Prox、ジャスコインタナショナル株式会社製)で観察し、電極合材層のSEM写真を撮影する。
得られた電極合材層のSEM写真を画像処理ソフト(image-Pro Premier version 9.2 64-bit、伯東株式会社製)で図3に示すように二値化処理し、粒子に由来する領域の面積及び空隙に由来する領域の面積を求めた後、空隙に由来する面積を全体の面積で割ることにより、第1凸状部及び非凸状部の空隙率を算出した。なお、上述の方法ではソフトウェアを用いた二値化を行っているが、例えば、二値化処理した画像において濃度が50%よりも高い領域を粒子又は空隙とし、濃度が50%以下の領域を空隙又は粒子と判断してもよい。図3中、粒子20は白色のエリア、空隙21は黒色のエリアをそれぞれ示す。
なお、第1凸状部、第2凸状部、及び非凸状部の定義は、上述したとおりである。
【0016】
本発明においては、一の方向の断面において、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状である。
従来の金型により形成した凹凸形状は矩形状(直線状)であるのに対して、本発明においては曲線状となる。
複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であることは、レーザ顕微鏡、触針式段差計などを用いて、表面プロファイルを取得することにより確認することができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、一の方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線及び前記第1凸状部の表面に対応する線とは、前述のように電極合材層に含まれる1つの活物質粒子によってのみ活物質層表面に形成される凸状部及び非凸状部の表面に対応する線は含まれない。
【0017】
本発明の一態様において、非凸状部の高さh1(μm)と、凸状部の高さh2(μm)との比(h1/h2)の下限は0.71以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましい。
前記比(h1/h2)が0.71未満であると、凸状部の高さが非凸状部の高さより大きすぎ、プレス工程において凸状部にかける圧力で、凸状部が折れてしまい、電極の表面形状が崩れやすくて、クラックなどの欠陥が生じるため、電気化学素子の性能を向上させることができない。
また、非凸状部の高さh1(μm)と、凸状部の高さh2(μm)との比(h1/h2)の上限は0.98以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましい。前記比(h1/h2)が0.98を超えると、電極の表面積を増加させるのに充分な凹凸形状を設けることができないので、電気化学素子の性能を向上させることができない。
【0018】
本発明の一態様において、隣接する前記凸状部の頂点と前記非凸状部の頂点間の距離をa1とすると、次式、(h2-h1)/a1の下限は0.0060以上を充たすことが好ましい。
次式、(h2-h1)/a1が0.0060未満であると、電極の表面積を増加させるのに充分な凹凸形状を設けることができないので、電気化学素子の性能を向上させることができない。
また、次式、(h2-h1)/a1の上限は0.050以下を充たすことが好ましく、0.048以下を充たすことがより好ましい。
次式、(h2-h1)/a1が0.050を超えると、凸状部は非凸状部より狭くなり、プレス工程において凸状部にかける圧力で、凸状部が折れてしまい、電極の表面形状が崩れやすくて、クラックなどの欠陥が生じるため、電気化学素子の性能を向上させることができない。
【0019】
<基体>
基体は導電性の高い物質であり、正極基体にはアルミニウム、負極基体には銅が用いられるが、本実施形態に係る基体は前記物質に限定されるものではない。
【0020】
<電極合材層>
電極合材層は、正極活物質又は負極活物質等の活物質を含有し、導電助剤及びバインダを含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0021】
-正極活物質-
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される1種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO四面体(X=P、S、As、Mo、W、Si等)を有するポリアニオン化合物も用いることができる。これらの中でも、サイクル特性の点から、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数及び出力特性の点から、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。
なお、ポリアニオン化合物は、電子伝導性の点から、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0022】
-負極活物質-
負極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
炭素材料以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタンなどが挙げられる。
また、電気化学素子のエネルギー密度の点から、負極活物質としては、例えば、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0023】
活物質のモード径は、0.5μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。活物質のモード径が0.5μm以上10μm以下であると、液体組成物を液体吐出方法により吐出する場合に、吐出不良を起こしにくい。また、活物質のモード径が3μm以上10μm以下であると、より良好な電気特性の電極が得られる。計測された液体組成物における活物質の粒度分布の中で分布の極大値である径をモード径として算出した。
活物質のモード径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)などが挙げられる。
【0024】
活物質の最大粒子径Dmaxは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。活物質の最大粒子径Dmaxが30μm以下であると、液体組成物を液体吐出方法により吐出する場合に、吐出不良を起こしにくい。
活物質の最大粒子径Dmaxの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)などが挙げられる。
【0025】
活物質のメジアン径D50は、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。活物質のメジアン径D50が15μm以下であると、塗工効率の向上と電池特性の向上を図ることができる。
活物質のメジアン径D50の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)などが挙げられる。
【0026】
-導電助剤-
導電助剤としては、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法等により製造されている導電性カーボンブラックや、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粉末等の炭素材料を用いることができる。炭素材料以外の導電助剤としては、例えば、アルミニウム等の金属粒子、金属繊維を用いることができる。なお、導電助剤は、予め活物質と複合化されていてもよい。
【0027】
-バインダ-
バインダとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド化合物、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール(PEO)、ポリメチルメクリル酸(PMMA)、ポリエチレンビニルアセテート(PEVA)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などが挙げられる。
【0029】
<その他の層>
その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁層、保護層などが挙げられる。
【0030】
前記電極合材層は、液体組成物を用いて作製することができる。
<液体組成物>
前記液体組成物は、活物質、導電助剤、分散媒、及び分散剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記活物質及び導電助剤は、上記電極合材層における活物質及び導電助剤と同じである。
【0031】
-分散媒-
分散媒としては、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水性分散媒、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、メシチレン、2-n-ブトキシメタノール、2-ジメチルエタノール、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
-分散剤-
分散剤としては、液体組成物中の活物質の分散性を向上させることが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンオキシド系、ポリプロピレンオキシド系、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール系、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子分散剤、ポリリン酸塩系分散剤等の無機分散剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バインダ、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などが挙げられる。
【0034】
前記液体組成物の25℃での粘度は200mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下が更に好ましい。粘度が200mPa・s以下であると、液体吐出装置で吐出しても吐出不良を起こしにくいという利点がある。なお、本明細書において、粘度が200mPa・s以下であることを、低粘度と称することがある。
前記液体組成物の粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、JIS Z8803に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばTV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
(電極の製造方法及び電極の製造装置)
本発明の電極の製造方法は、本発明の電極を製造する電極の製造方法であって、基体上に活物質及び分散媒を含有する液体組成物を付与し、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有する電極合材層を形成する付与工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
前記液体組成物を吐出方向及び前記吐出方向と直交する方向の少なくともいずれかに吐出し、凸状部を形成することが好ましい。
【0036】
本発明の電極の製造装置は、本発明の電極を製造する電極の製造装置であって、基体上に活物質及び分散媒を含有する液体組成物を付与し、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有する電極合材層を形成する付与手段を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
前記液体組成物を吐出方向及び前記吐出方向と直交する方向の少なくともいずれかに吐出し、凸状部を形成することが好ましい。
【0037】
液体組成物の付与方法としては、特に制限はなく、例えば、インクジェット法、スプレーコート法、ディスペンサ法等の液体吐出方法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を用いると、電極を非接触、自由な形状で製造できる。その結果、電極の生産過程における型抜きによる活物質の損失が少ない等の利点がある。
【0038】
[基材に液体組成物を直接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]
図4は、本実施形態の電極の製造方法を実現するための電極の製造装置(液体吐出装置)の一例を示す模式図である。
電極の製造装置500は、上記した液体組成物を用いて電極合材層を製造する装置である。電極の製造装置500は、印刷基材34上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する付与処理を実施する印刷部100と、必要に応じて加熱部200とを備える。電極の製造装置500は、印刷基材34を搬送する搬送部35を備え、搬送部35は、印刷部100、必要に応じて加熱部200の順に印刷基材34をあらかじめ設定された速度で搬送する。
【0039】
-印刷部100-
印刷部100は、印刷基材34上に電極合材層を形成するための液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段の一例である印刷装置31aと、液体組成物を収容する収容容器31bと、収容容器31bに貯留された液体組成物37を印刷装置31aに供給する供給チューブ31cを備える。
収容容器31bは、液体組成物37を収容し、印刷部100は、印刷装置31aから液体組成物37を吐出して、印刷基材34上に液体組成物37を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器31bは、電極の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極の製造装置と一体化した収容容器や電極の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
収容容器31bや供給チューブ31cは、液体組成物37を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0040】
-加熱部200-
加熱部200は、図4に示すように、加熱装置33aを有し、印刷部100により形成した液体組成物層を加熱装置33aにより加熱して、残存する液体を乾燥させて除去する液体除去工程を行う。これにより電極合材層を形成することができる。加熱部200は、液体除去を減圧下で実施してもよい。
加熱装置33aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒータや温風ヒータなどが挙げられる。
また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物層に含まれる液体の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0041】
図5は、本実施形態の電極の製造方法を実現するための電極の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
前記電極の製造装置を用いると、基材の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
【0042】
本実施形態の電極の製造方法の他の例を図6に示す。
基材上に電極合材層が設けられた電極210の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、基材211上に、液体組成物12Aを、順次吐出する工程を含む。
まず、細長状の基材211を準備する。そして、基材211を筒状の芯に巻き付け、電極合材層を形成する側が、図6中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、基材211は、図6中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の基材211の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、図5と同様にして、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される基材211上に吐出する。
なお、液体吐出ヘッド306は、基材211の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された基材211は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱部309に搬送される。その結果、電極合材層212が形成され、基材上に電極合材層が設けられた電極210が得られる。
【0043】
また、図7のように、タンク307Aは、タンク307Aに接続されたタンク313Aから液体組成物を供給してもよく、液体吐出ヘッドは、複数の液体吐出ヘッド306A、306Bを有してもよい。
【0044】
[基材に液体組成物を間接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]
図8及び図9は、本実施形態の電極の製造装置としての、付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図8は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図9は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す構成図である。
図8に示した印刷部400’は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物又は電極合材層を転写することで基材上に液体組成物層又は電極合材層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0045】
印刷部400’は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。複数のヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に液体組成物層を形成する。複数のヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。複数のヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0046】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、複数のヘッド101による液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層を加熱する。液体組成物層を加熱することで、液体組成物の粘度をさらに向上され、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上の液体組成物層又は電極合材層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0047】
図9に示した印刷部400”は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物又は電極合材層を転写することで基材上に液体組成物層又は電極合材層を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400”は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101から液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体組成物層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体組成物層は、加熱ユニット4007によって加熱されることで粘度が上昇し、中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0048】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した液体組成物層又は電極合材層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図9中矢印方向に移動する。複数のヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、複数のヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0049】
<その他の手段及びその他の工程>
その他の手段としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
ここで、図10図13は、電極の製造方法における電極合材層の形成パターンの一例を示す模式図である。図10図13中X方向は印刷方向の垂直方向、Y方向は印刷方向である。このように電極合材層をパターニングすることにより表面積の増加が図られる。
図10は、X方向に凸状部13と非凸状部14とが周期的に形成され、Y方向に平坦である電極合材層である。
図11は、Y方向に凸状部15と非凸状部16とが周期的に形成され、X方向に平坦である電極合材層である。
図12は、X方向に凸状部17と非凸状部18とが周期的に形成されると共に、Y方向に凸状部17と非凸状部18とが周期的に形成されている電極合材層である。このとき、図10及び図11に示される構成よりも図12で示されるようなX方向及びY方向に沿って凸状部と凹部上部とが周期的に形成されている格子状構造であると、表面積をより増加させることができ、電気化学素子の性能を向上させることができる。
図13の(a)及び(b)は、X方向に凸状部17と非凸状部18とが周期的に形成されると共に、Y方向に凸状部17と非凸状部18とが周期的に形成されている電極合材層であって、凸状部17及び非凸状部18がドット形状(略円形状)である電極合材層である。図13の(a)は平面図、図13の(b)は側面図である。このようなドット形状であるとより高い表面性を有することができるため、電気化学素子の性能をより向上することができる。
【0051】
(電気化学素子)
本発明の電気化学素子は、本発明の電極を有し、電解質、セパレータ、及び外装を有することが好ましい。なお、固体電解質又はゲル電解質を用いる場合は、セパレータは不要である。
【0052】
<電解質>
電解質としては、電解質水溶液又は非水電解質を使用することができる。
【0053】
-電解質水溶液-
電解質水溶液とは、電解質塩が水に溶解している水溶液である。電解質塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩化亜鉛等を使用することができる。
【0054】
-非水電解質-
非水電解質としては、非水電解液又は固体電解質、ゲル電解質を使用することができる。
【0055】
--非水電解液--
非水電解液とは、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液である。
【0056】
--非水溶媒--
非水溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、電解質塩の溶解力が高い点から、鎖状カーボネートが好ましい。また、非プロトン性有機溶媒は、粘度が低いことが好ましい。
【0057】
鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)などが挙げられる。
【0058】
非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量は、50質量%以上であることが好ましい。非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量が50質量%以上であると、鎖状カーボネート以外の非水溶媒で比誘電率が高い環状物質(例えば、環状カーボネート、環状エステル)であっても、環状物質の含有量が少なくなる。このため、2M以上の高濃度の非水電解液を作製しても、非水電解液の粘度が低くなり、非水電解液の電極へのしみ込みやイオン拡散が良好となる。
【0059】
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。
【0060】
なお、カーボネート系有機溶媒以外の非水溶媒としては、例えば、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒などを用いることができる。
【0061】
環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(例えば、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル)、ギ酸アルキルエステル(例えば、ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル)などが挙げられる。
【0062】
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソランなどが挙げられる。
【0063】
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0064】
-電解質塩-
電解質塩としては、イオン伝導性が高く、非水溶媒に溶解することが可能であれば、特に制限はない。
【0065】
電解質塩は、ハロゲン原子を含むことが好ましい。電解質塩を構成するカチオンとしては、例えば、リチウムイオンなどが挙げられる。電解質塩を構成するアニオンとしては、例えば、BF 、PF 、AsF 、CFSO 、(CFSO、(CSOなどが挙げられる。
【0066】
リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CSO)などが挙げられる。これらの中でも、イオン伝導性の点から、LiPFが好ましく、安定性の点から、LiBFが好ましい。
【0067】
なお、電解質塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
非水電解液中の電解質塩の濃度は、目的に応じて適宜選択することができるが、非水系電気化学素子がスイング型である場合、1mol/L~2mol/Lであることが好ましく、非水系電気化学素子がリザーブ型である場合、2mol/L~4mol/Lであることが好ましい。
【0069】
<固体電解質>
固体電解質を構成する材料としては、電子絶縁性を有し、かつイオン伝導性を示す固体物質であれば、特に制限はないが、硫化物固体電解質や酸化物系固体電解質が、高いイオン伝導性を有する観点から好ましく、高い可塑性を有することで、固体電解質粒子間同士、あるいは固体電解質及び活物質間の間で、良好な界面を形成することができる点から、硫化物固体電解質がより好ましい。
なお、本明細書において電子絶縁性を有するとは、固体電解質層を介して正極と負極を対向させた際に短絡しない状態であることを表し、イオン伝導性を示すとは固体電解質層を介して正極と負極を対向させた際に電位差を与えるとイオンのみが移動することを表す。
【0070】
硫化物固体電解質としては、例えば、結晶系硫化物固体電解質とガラス系固体電解質に大別できる。
結晶系硫化物固体電解質としては、例えば、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、Li9.612、Li、Li9.81Sn0.812.1912、Li9.42Si1.022.19.962.04、Li10Ge(P1-xSb12(0≦x≦0.15)、Li10SnP12、Li10.35[M11-xM21.351.6512(M1、M2=Si、Ge、Sn、As、及びSbのいずれか、0≦x≦0.15)、Li11SiPS12、Li11AlP12、Li3.45Si0.450.55、LiPSX(X=Cl、Br、I)、LiPS(X=Cl、Br、I)、Li5.5PS4.5Cl1.5、Li5.35Ca0.1PS4.5Cl1.55、Li6+xSb1-xI(M=Si、Ge、Sn、0≦x≦1)、LiI、γ-LiPS、LiMS(M=Ge、Sn、As)、Li4-xSn1-xSb(0≦x≦0.15)、Li4-xGe1-x(0≦x≦0.15)、Li3+5x1-x(0≦x≦0.3)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
ガラス系硫化物固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-P、LiS-P-LiCl、LiS-SiS、LiS-SiS-P、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-LixMOy(M=Si、P、Ge)などが挙げられる。またガラス系硫化物固体電解質の一部が結晶化した、Li11ガラスセラミクスなども用いることができる。ここで、ガラス系硫化物固体電解質の各原料の混合比は問わない。
【0072】
酸化物系固体電解質としては、結晶系酸化物固体電解質とガラス系酸化物固体電解質に大別できる。結晶系酸化物固体電解質としては、例えば、Li1+xTi2-x(PO)3(M=Al、Cr、Ga、Fe、Sc、In、Lu、Y、La、0≦x≦0.5)、LaLiTiO(0.3≦x≦0.7、0.3≦y≦0.7)、Li7-xLaZr2-x12(M=Nb、Ta、0≦x≦1)などが挙げられる。
ガラス系固体電解質としては、例えば、LiSiO-LiBO、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiOなどが挙げられる。
【0073】
上記に挙げたもの以外でも、当該発明の趣旨を逸脱するものでなければ、特に制限はない。また、これら固体電解質を、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
これらの固体電解質層を構成するために液体に溶解又は分散させるのに適した電解質材料としては、固体電解質の前駆体となる材料である、例えば、LiSとP、LiCl、固体電解質の材料であるLiS-P系ガラス、Li11ガラスセラミクスなどが挙げられる。
前記固体電解質は、公知の方法により調製したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0075】
<ゲル電解質>
ゲル電解質としては、イオン伝導性を示すものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲル電解質の網目構造を構成するポリマーとしてはポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンのコポリマー、ポリエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
また、保持される溶媒分子としてはイオン液体が挙げられる。イオン液体としては、例えば、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
また、テトラグライム、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの液体とリチウム塩を混合したものでもよい。
リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CSO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記に挙げたもの以外でも、当該発明の趣旨を逸脱するものでなければ、問題なく使うことができる。また、ゲル電解質は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
これらのゲル電解質を構成するために液体に溶解又は分散させる電解質材料としては、上記ポリマー化合物とイオン液体又はリチウム塩が溶解された溶液を用いてもよい。またゲル電解質の前駆体となる材料である、例えば両末端がアクリレート基であるポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドなどとイオン液体又はリチウム塩が溶解された溶液を組合せて用いてもよい。
【0080】
<セパレータ>
セパレータは、負極と正極の短絡を防ぐために、必要に応じて、負極と正極の間に設けられている。
【0081】
セパレータとしては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
セパレータの大きさは、電気化学素子に使用することが可能であれば、特に制限はない。セパレータは、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0083】
なお、電解質として、電解質水溶液又は非水電解液を用いる際はセパレータが必要であるが、固体電解質又はゲル電解質を使用する場合はセパレータに置き換えることができる。
【0084】
<外装>
外装は、電極と、電解質と、セパレータあるいは固体電解質又はゲル電解質とを封止することができれば特に制限はない。
【0085】
電気化学素子の形状としては、特に制限はなく、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。
【0086】
(電気化学素子の製造方法及び電気化学素子の製造装置)
本発明の電気化学素子の製造方法は、上述した本発明の電極の製造方法により電極を製造する電極製造工程と、前記電極を用いて電気化学素子を製造する素子化工程と、を含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
本発明の電気化学素子の製造装置は、上述した本発明の電極の製造装置により電極を製造する電極製造部と、前記電極を用いて電気化学素子を製造する素子化部と、を有し、必要に応じて、更にその他の手段を有する。
【0087】
<電極製造工程及び電極製造部>
前記電極製造工程は、上記した本発明の電極の製造方法において説明した、付与工程と、を含み、更に必要に応じて、電極加工工程などのその他の手段を有する。
前記電極製造部は、上記した本発明の電極の製造装置において説明した、収容容器と、付与手段と、を有し、更に必要に応じて、電極加工手段などのその他の手段を有する。
前記電極製造工程及び前記電極製造部により、電極基材と、前記電極基体上に電極合材層と、を有する電極を製造することができる。
【0088】
<素子化工程及び素子化部>
前記素子化工程は、前記電極を用いて電気化学素子を製造する工程である。
前記素子化部は、前記電極を用いて電気化学素子を製造する手段である。
電極を用いて電気化学素子を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の電気化学素子の製造方法を選択することができ、例えば、対向電極の設置、巻回又は積層、容器への収容の少なくともいずれかを行い電気化学素子とする方法が挙げられる。
なお、素子化工程としては、素子化の全行程を備える必要はなく、素子化の一部の工程を含むものであってもよい。
【0089】
<電極加工工程及び電極加工部>
電極加工部は、付与部よりも下流において、電極合材層が形成された電極を加工する手段である。電極加工部は、裁断、折り畳み、及び貼り合わせの少なくとも1つを実施してもよい。電極加工部は、例えば、電極合材層が形成された電極を裁断し、電極の積層体を作製することができる。電極加工部は、電極合材層が形成された電極を巻回又は積層することができる。
電極加工部は、例えば、電極加工装置を有し、電極合材層が形成された電極の裁断やつづら折り、積層や巻回を目的の電池形態に応じて実施する。
電極加工部によって行われる電極加工工程は、例えば、付与工程よりも下流において、電極合材層が形成された電極を加工する工程である。電極加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、及び貼り合わせ工程の少なくとも1つを含んでもよい。
【0090】
<電気化学素子の用途>
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく、例えば、車両等の移動体;スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。
前記移動体としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0091】
[移動体]
図14に、本発明の電気化学素子である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す。移動体50は、例えば電気自動車である。移動体50はモーター51と、電気化学素子52と、移動手段の一例としての車輪53を備える。電気化学素子52は、上述した本発明の電気化学素子である。電気化学素子52は、モーター51に電力を供給することでモーター51を駆動する。駆動されたモーター51は、車輪53を駆動させることができ、その結果、移動体50は移動することができる。
以上の構成によれば、正極と負極との短絡を防止するとともに、電池特性に優れる電気化学素子からの電力により駆動するので、安全かつ効率よく移動体を移動させることができる。
移動体50は電気自動車に限られず、PHEVやHEV、又はディーゼルエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な機関車やバイクであってもよい。又、移動体は、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な、工場等で使用される搬送用ロボットであってもよい。また、移動体は、その物体全体が移動せず、一部のみが移動するもの、例えば、工場の製造ラインに配される、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用してアーム等が動作可能な組立ロボットであってもよい。
【実施例0092】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、「活物質のモード径」、「液体組成物の粘度」、及び「非凸状部の高さh1、凸状部の高さh2、及び隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1」は、以下の方法により測定した。
【0093】
<活物質のモード径>
レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)を用いて、得られた液体組成物における活物質の粒度分布を、室温(25℃)で計測した。計測された前記液体組成物における活物質の粒度分布の中で分布の極大値である径をモード径として算出した。
【0094】
<液体組成物の粘度>
TV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)を用いて、得られた液体組成物の100rpmにおける粘度を、室温(25℃)で測定した。
【0095】
<非凸状部の高さh1、凸状部の高さh2、及び隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1の測定>
レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製)による表面プロファイルを測定することにより、集電箔を基準面としたときの非凸状部の極小点までの高さh1、凸状部の極大点までの高さh2、及び隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1を測定し、h3=h2-h1、比(h1/h2)、及び比(h3/a1)を算出した。
【0096】
(調製例1)
-液体組成物A1の調製-
液体組成物A1に含まれる各物質について記載された質量%は、液体組成物に対する質量%を示す。なお、分散媒の質量%は、100質量%から各成分の質量%を引いた値である。
分散剤(SC-0708A、日油株式会社製、0.5質量%)を加えた乳酸エチル中で、ビーズミルを用いて、ニッケル系正極活物質(NCA、50質量%)(JFEミネラル株式会社製)を粉砕・解砕し、ニッケル系正極活物質を乳酸エチル中に分散させた。カーボンブラック(1.5質量%)(デンカ社製)と、下記一般式1で示すポリアミドイミド化合物(PAI、1.5質量%)とを更に混合し、液体組成物A1を得た。
【0097】
【化1】
得られた液体組成物A1は、活物質のモード径が9.72μm、25℃での粘度が10.7mPa・sであった。
【0098】
(調製例2)
-液体組成物F1の調製-
液体組成物F1に含まれる各物質について記載された質量%は、液体組成物に対する質量%を示す。なお、分散媒の質量%は、100質量%から各成分の質量%を引いた値である。
分散剤(SC-0708A、日油株式会社製、0.5質量%)を加えた乳酸エチル中で、ビーズミルを用いて、チタン酸リチウム(LTO、50質量%)(石原産業株式会社製)を粉砕・解砕し、チタン酸リチウムを乳酸エチル中に分散させた。カーボンブラック(1.5質量%)(デンカ社製)と、上記一般式1で示すポリアミドイミド化合物(PAI、1.5質量%)とを更に混合し、液体組成物F1を得た。
得られた液体組成物F1は、活物質のモード径が3.22μm、25℃での粘度が11.3mPa・sであった。
【0099】
(参考例1)
<正極の作製>
インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、80℃に加熱したステージ上で、上記液体組成物A1を隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が100μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3(h2-h1)が100μmとなるように複数の凸状部を有する正極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、正極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスすることで、正極を得た。
【0100】
得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、非凸状部の高さh1は50μm、凸状部の高さh2は150μm、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は100μm、h3=h2-h1は100μm、比(h1/h2)は0.33、比(h3/a1)は1であった。これらの結果を表1に示した。また、得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0101】
次に、得られた参考例1の正極について、以下のようにして、正極の容量維持率を測定した。結果を表1に示した。
【0102】
<正極の容量維持率>
正極の容量維持率は、充放電測定装置(TOSCAT3001、東洋システム株式会社製)を用いて計測した。
作製した正極を直径16mmの丸型に打ち抜き加工した後、コイン缶中に、正極、厚さ100μmのガラスセパレータD(ADVANTEC株式会社製)、液体組成物A1、対極としての厚さ200μmのリチウム箔(本庄金属株式会社製)を入れ、電気化学素子を作製した。
作製した電気化学素子を、室温(25℃)において、2.0Cで4.2Vまで定電流充電した後、3.0Vまで定電流放電してサイクル充放電試験を実施した。なお、1回目の時、0.2Cで4.2Vまで定電流充電した後、3.0Vまで定電流放電して充放電を実施する条件で、放電容量を、初期の正極の単位面積当たりの放電容量Aを計測した。更に、当該充放電を500回実施後、0.2Cで4.2Vまで定電流充電した後、3.0Vまで定電流放電して充放電を実施する条件で、500回目の放電容量を、正極の単位面積当たりの放電容量Bを計測した。
正極の容量維持率を下記の数式(1)により算出し、下記の基準で評価した。
容量維持率(%)=(放電容量B/放電容量A)×100・・・数式(1)
[評価基準]
◎◎:容量維持率が60%以上
◎:容量維持率が50%以上60%未満
〇:容量維持率が30%以上50%未満
×:容量維持率が30%未満
【0103】
(比較例1)
<正極の作製>
上記液体組成物A1を厚み15μmのアルミ箔集電体上にダイコート装置(オートフィルムアプリケーター、テスター産業株式会社製)により塗布して、ホットプレートで120℃に加熱乾燥し、7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスし、平坦な厚み100μm(h1=h2)の正極電極合材層を形成した。
次に、得られた比較例1の正極について、参考例1と同様にして、容量維持率を測定した。結果を表1に示した。
【0104】
【表1】
表1の結果から、電極合材層が厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有する参考例1は、電極合材層が厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有さない比較例1に比べて容量維持率が優れていることがわかった。
【0105】
(実施例1)
<負極の作製>
インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、上記液体組成物F1を、80℃に加熱したステージ上に、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が100μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3(h2-h1)が10μmとなるように複数の凸状部を有する負極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、更に、負極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスし、負極を得た。
【0106】
得られた負極はその表面に厚み方向と直交するY方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、非凸状部の高さh1は23.2μm、凸状部の高さh2は33.0μm、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は100.6μm、h3=h2-h1は9.8μm、比(h1/h2)は0.70、比(h3/a1)は0.097であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた負極はその表面に厚み方向と直交するY方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0107】
次に、得られた実施例1の負極について、以下のようにして「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び負極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0108】
<第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1>
53型埋込用エポキシ樹脂の主剤(Lot No.53512040149、株式会社三啓製)と硬化剤(Lot No.53572040342、株式会社三啓製)を体積比1:2でよく混合して、真空含浸装置(BUEHLER VACUUM IMPREGNATION EQUIPMENT I、株式会社三啓製)を使い、電極合材層を樹脂で包埋して、24時間硬化した。エポキシ樹脂で包埋された電極合材層をクロスセクションポリッシャー(日本電子株式会社製)で加工し、断面を卓上走査型電子顕微鏡SEM(Phenom Prox、ジャスコインタナショナル株式会社製)で観察し、電極合材層のSEM写真を撮影した。
また、得られた電極合材層のSEM写真を画像処理ソフト(image-Pro Premier version 9.2 64-bit、伯東株式会社製)で二値化処理し、第1凸状部全体又は非凸状部内の、粒子に由来する領域の面積及び空隙に由来する領域の面積を求めた後、空隙の面積を第1凸状部全体又は非凸状部全体の面積で割ることにより、第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1を求め、比(d1/d2)を算出し、下記基準で評価した。
[評価基準]
〇:空隙率の比(d1/d2)が0.82以上1.22以下
×:空隙率の比(d1/d2)が0.82未満又は1.22より大きい
【0109】
<負極の容量維持率>
電極の容量維持率は、充放電測定装置(TOSCAT3001、東洋システム株式会社製)を用いて計測した。
作製した負極を直径16mmの丸型に打ち抜き加工した後、コイン缶中に、正極、厚さ100μmのガラスセパレータD(ADVANTEC株式会社製)、液体組成物F1、対極としての厚さ200μmのチタン酸リチウム(本庄金属株式会社製)を入れ、電気化学素子を得た。
この電気化学素子を、室温(25℃)において、チタン酸リチウムは2.0Cで1.0V~2.0Vの範囲で充放電を実施した後、3.0Vまで定電流放電してサイクル充放電試験を実施した。
なお、1回目の時、0.2Cで1.0V~2.0Vの範囲で充放電を実施した後、3.0Vまで定電流放電して充放電を実施する条件で、放電容量を、初期の負極の単位面積当たりの放電容量Aをとして計測した。
更に、当該充放電を500回実施後、0.2Cで1.0V~2.0Vの範囲で充放電を実施した後、3.0Vまで定電流放電して充放電を実施する条件で、500回目の放電容量を、負極の単位面積当たりの放電容量Bとして計測した。
負極の容量維持率を下記の数式(2)により算出し、下記の基準で評価した。
容量維持率(%)=(放電容量B/放電容量A)×100・・・数式(2)
[評価基準]
◎◎:容量維持率が60%以上
◎:容量維持率が50%以上60%未満
〇:容量維持率が30%以上50%未満
×:容量維持率が30%未満
【0110】
(比較例2)
<負極の作製>
ダイコート装置(オートフィルムアプリケーター、テスター産業株式会社製)により、上記液体組成物F1を厚み20μmの銅箔集電体上に塗布して、ホットプレートで120℃加熱乾燥した。形成された負極をプレス装置で凹凸形状を有する金型でプレスして、凹凸形状を有する負極電極合材層を形成した。このとき、金型は、図15に示すロール状の金型であり、表面に、周囲よりも窪んだ直径100μm、高さ10μmのコップ状の凹部を100μm間隔で複数有している。
【0111】
得られた負極はその表面に厚み方向と直交するY方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、非凸状部の高さh1は24.1μm、凸状部の高さh2は33.1μm、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は103.8μm、h3=h2-h1は9.0μm、比(h1/h2)は0.73、比(h3/a1)は0.087であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた負極はその表面に厚み方向と直交するY方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、直線状であった。
【0112】
次に、得られた比較例2の負極について、実施例1と同様にして、「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び負極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0113】
(実施例2)
<正極の作製>
インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、80℃に加熱したステージの上で、上記液体組成物A1を厚み15μmのアルミ箔集電体上に隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が125μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3(h2-h1)が8μmとなるように複数の凸状部を有する正極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、正極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスすることで、正極を得た。
【0114】
得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、非凸状部の高さh1は22.1μm、凸状部の高さh2は29.7μm、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は124.2μm、h3=h2-h1は7.6μm、比(h1/h2)は0.74、比(h3/a1)は0.061であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0115】
次に、得られた実施例2の正極について、実施例1と同様にして「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び参考例1と同様にして正極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0116】
(実施例3)
<正極の作製>
インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、80℃に加熱したステージの上で、上記液体組成物A1を厚み15μmのアルミ箔集電体上に隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が1,000μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3(h2-h1)が50μmとなるように複数の凸状部を有する正極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、正極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスすることで、正極を得た。
【0117】
得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は1,010.5μm、比(h3/a1)は0.045であった。また、非凸状部の高さh1は98.2μm、凸状部の高さh2は144.0μm、h3=h2-h1は45.8μm、比(h1/h2)は0.68であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0118】
次に、得られた実施例3の正極について、実施例1と同様にして「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び参考例1と同様にして正極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0119】
(比較例3)
<正極の作製>
ダイコート装置(オートフィルムアプリケーター、テスター産業株式会社製)により、上記液体組成物A1を厚み15μmのアルミ箔集電体上に塗布して、ホットプレートで120℃加熱乾燥した。
更に、インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、80℃に加熱したステージの上で、上記液体組成物A1を上記のダイコート塗工により形成した正極上に隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が100μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3(h2-h1)が100μmとなるように複数の凸状部を有する正極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、正極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスすることで、正極を得た。
【0120】
得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は101.6μm、比(h3/a1)は1.017であった。また、非凸状部の高さh1は99.8μm、凸状部の高さh2は203.1μm、h3=h2-h1は103.3μm、比(h1/h2)は0.49であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0121】
次に、得られた比較例3の正極について、実施例1と同様にして「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び参考例1と同様にして正極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0122】
(実施例4)
<正極の作製>
インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、80℃に加熱したステージの上で、上記液体組成物A1を厚み15μmのアルミ箔集電体上に隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が1,200μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3=h2-h1が10μmとなるように複数の凸状部を有する正極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、正極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスすることで、正極を得た。
【0123】
得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は1,266.3μm、比(h3/a1)は0.008であった。また、非凸状部の高さh1は138.7μm、凸状部の高さh2は152.5μm、h3=h2-h1は9.7μm、比(h1/h2)は0.91であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0124】
次に、得られた実施例4の正極について、実施例1と同様にして「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び参考例1と同様にして正極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0125】
(実施例5)
<正極の作製>
インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、80℃に加熱したステージの上で、上記液体組成物A1を厚み15μmのアルミ箔集電体上に隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が650μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3=h2-h1が10μmとなるように複数の凸状部を有する正極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、正極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスすることで、正極を得た。
【0126】
得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は635.3μm、比(h3/a1)は0.016であった。また、非凸状部の高さh1は177.5μm、凸状部の高さh2は187.6μm、h3=h2-h1は10.1μm、比(h1/h2)は0.95であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0127】
次に、得られた実施例5の正極について、実施例1と同様にして「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び参考例1と同様にして正極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0128】
(実施例6)
<正極の作製>
インクジェット装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)により、80℃に加熱したステージの上で、上記液体組成物A1を厚み15μmのアルミ箔集電体上に隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1が2,500μm、凸状部の高さh2から非凸状部の高さh1を減じたh3=h2-h1が15μmとなるように複数の凸状部を有する正極電極合材層を形成し、更にホットプレートで120℃に加熱し乾燥させ、正極電極合材層を7t油圧式ロールプレス機(サンクメタル社製)でプレスすることで、正極を得た。
【0129】
得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において複数の凸状部を有しており、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に非凸状部を有しており、隣接する凸状部の頂点と非凸状部の頂点間の距離a1は2,540μm、比(h3/a1)は0.0057であった。また、非凸状部の高さh1は135.3μm、凸状部の高さh2は148.8μm、h3=h2-h1は14.5μm、比(h1/h2)は0.90であった。これらの結果を表2に示した。また、得られた正極はその表面に厚み方向と直交するX方向の断面において、複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であった。
【0130】
次に、得られた実施例6の正極について、実施例1と同様にして「第1凸状部の空隙率d2と非凸状部の空隙率d1」、及び参考例1と同様にして正極の容量維持率を測定した。結果を表2に示した。
【0131】
【表2】
表2の結果から、実施例1と比較例2、3によると、非凸状部の空隙率d1と第1凸状部の空隙率d2との空隙率の比(d1/d2)が0.82未満又は1.22よりも大きい比較例2、3に比べて、空隙率の比(d1/d2)が0.82以上1.22以下である実施例1は、容量維持率が高いことがわかった。
また、実施例1と実施例2によると、非凸状部の高さh1と凸状部の高さh2との比(h1/h2)が0.71以上であると、容量維持率がより高くなることがわかった。
更に、実施例4、5と実施例6によると、比(h3/a1)が0.0060以上0.050以下であると、容量維持率が更に高くなることがわかっか。
【0132】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 基体と、前記基体上に電極合材層とを有してなり、
前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、
前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の空隙率d1と、前記第1凸状部の空隙率d2との比(d1/d2)が、0.82以上1.22以下であることを特徴とする電極である。
<2> 基体と、前記基体上に電極合材層とを有してなり、
前記電極合材層が、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を有し、
前記一の方向の断面において、前記複数の凸状部の中で互いに隣接する第1凸状部と第2凸状部との間に位置する非凸状部の表面に対応する線と、前記第1凸状部の表面に対応する線とが、曲線状であることを特徴とする電極である。
<3> 前記非凸状部の高さh1(μm)と、前記凸状部の高さh2(μm)との比(h1/h2)が0.71以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の電極である。
<4> 隣接する前記凸状部の頂点と前記非凸状部の頂点間の距離をa1とすると、次式、(h2-h1)/a1=0.0060以上0.050以下、を充たす、前記<3>に記載の電極である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の電極を有することを特徴とする電気化学素子である。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造装置であって、
基体上に活物質及び分散媒を含有する液体組成物を付与し、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を形成する付与手段を有することを特徴とする電極の製造装置である。
<7> 前記液体組成物を付与する付与方向及び前記付与方向と直交する方向の少なくともいずれかに凸状部を形成する、前記<6>に記載の電極の製造装置である。
<8> 前記液体組成物の付与がインクジェット法で行われる、前記<6>から<7>のいずれかに記載の電極の製造装置である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造方法であって、
基体上に活物質及び分散媒を含有する液体組成物を付与し、少なくとも厚み方向と直交する一の方向の断面において複数の凸状部を形成する付与工程を含むことを特徴とする電極の製造方法である。
<10> 前記液体組成物を付与する付与方向及び前記付与方向と直交する方向の少なくともいずれかに凸状部を形成する、前記<9>に記載の電極の製造方法である。
<11> 前記液体組成物の付与がインクジェット法で行われる、前記<9>から<10>のいずれかに記載の電極の製造方法である。
【0133】
前記<1>から<4>のいずれかに記載の電極、前記<5>に記載の電気化学素子、前記<6>から<8>のいずれかに記載の電極の製造装置、及び前記<9>から<11>のいずれかに記載の電極の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 基体
2 電極合材層
2a 凸状部
2a1 第1凸状部
2a2 第2凸状部
2b 非凸状部
3 金型
10 電極
13 凸状部
14 非凸状部
15 凸状部
16 非凸状部
17 凸状部
18 非凸状部
20 粒子
21 空隙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】特開2008-010253号公報
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