(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138329
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】熱処理装置及び熱処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230922BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230922BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/316 S
H01L29/78 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005289
(22)【出願日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2022041039
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将久
【テーマコード(参考)】
5F045
5F058
5F140
【Fターム(参考)】
5F045AA20
5F045AB32
5F045AC11
5F045AC15
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE25
5F045AF03
5F045BB02
5F045CA05
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EB03
5F045EF02
5F045EF14
5F045EK06
5F045EM10
5F058BB04
5F058BC02
5F058BF55
5F058BF60
5F058BF63
5F058BJ01
5F140AA00
5F140BA01
5F140BF04
5F140BF27
5F140BG41
5F140BG44
5F140BG50
5F140BK19
(57)【要約】
【課題】水分を含む減圧雰囲気での酸化処理の均一性を改善できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による熱処理装置は、減圧可能な処理容器と、水素と酸素を触媒反応させて水分を生成する水分発生装置と、前記水分発生装置に水素及び酸素を導入するガス導入部と、前記水分発生装置が生成する前記水分を前記処理容器内に供給するノズルと、を有し、前記ガス導入部が導入する酸素に対する水素の流量比は2より大きく、前記処理容器は、前記ノズルから供給される前記水分を滞留させる滞留部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧可能な処理容器と、
水素と酸素を触媒反応させて水分を生成する水分発生装置と、
前記水分発生装置に水素及び酸素を導入するガス導入部と、
前記水分発生装置が生成する前記水分を前記処理容器内に供給するノズルと、
を有し、
前記ガス導入部が導入する酸素に対する水素の流量比は2より大きく、
前記処理容器は、前記ノズルから供給される前記水分を滞留させる滞留空間を有する、
熱処理装置。
【請求項2】
前記処理容器は、基板を収容する処理空間を有し、
前記滞留空間は、前記処理容器の内部の前記処理空間の上方に区画板を介して設けられ、
前記区画板は、前記処理空間と前記滞留空間とを連通させる複数のガス孔を有する、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記処理容器は、下端が開口しかつ天井部を含む円筒形状を有し、
前記処理空間には、前記基板が水平姿勢で多段に収容される、
請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記水分を前記滞留空間の中心付近で垂直方向上側、もしくは垂直方向下側に吐出する、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記処理容器内を減圧する真空ポンプを有する、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記ガス導入部が前記水分発生装置に導入する酸素の流量は、50sccm以上である、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記処理容器内を加熱する加熱部を有し、
前記加熱部は、前記処理容器内を850℃以下に加熱する、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記水素は、水素ガス(H2)、重水素ガス(D2)及び三重水素ガスのうちの少なくとも1つを含み、
前記水分は、水(H2O)、重水(D2O)及び三重水のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項9】
基板を収容した処理容器内を減圧する工程と、
水分発生装置により水素と酸素を触媒反応させて水分を生成する工程と、
減圧された前記処理容器内に前記水分を供給する工程と、
を有し、
前記水分を生成する工程において前記水分発生装置に導入される酸素に対する水素の流量比は2より大きく、
前記水分を供給する工程は、前記処理容器内に供給される前記水分を滞留させることを含む、
熱処理方法。
【請求項10】
前記基板には、金属が露出する領域と、シリコンが露出する領域とが設けられ、
前記水分を供給する工程は、前記金属を酸化させることなく、前記シリコンを選択的に酸化させることを含む、
請求項9に記載の熱処理方法。
【請求項11】
前記水素は、水素ガス(H2)、重水素ガス(D2)及び三重水素ガスのうちの少なくとも1つを含み、
前記水分は、水(H2O)、重水(D2O)及び三重水のうちの少なくとも1つを含む、
請求項9又は10に記載の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理装置及び熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素の触媒反応により発生させた水分を処理容器内に供給し、処理容器内の基板に対して酸化処理を施す技術が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-353210号公報
【特許文献2】特開2003-045867号公報
【特許文献3】特開2001-351910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、水分を含む減圧雰囲気での酸化処理の均一性を改善できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による熱処理装置は、減圧可能な処理容器と、水素と酸素を触媒反応させて水分を生成する水分発生装置と、前記水分発生装置に水素及び酸素を導入するガス導入部と、前記水分発生装置が生成する前記水分を前記処理容器内に供給するノズルと、を有し、前記ガス導入部が導入する酸素に対する水素の流量比は2より大きく、前記処理容器は、前記ノズルから供給される前記水分を滞留させる滞留部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、水分を含む減圧雰囲気での酸化処理の均一性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔熱処理装置〕
図1を参照し、実施形態に係る熱処理装置1について説明する。熱処理装置1は、複数枚の基板Wに対して一度に処理を行う縦型のバッチ装置として構成される。基板Wは、例えば半導体ウエハである。
【0010】
熱処理装置1は、処理容器10と、供給部20と、排気部30と、加熱部40と、制御部90とを有する。
【0011】
処理容器10は、内部を減圧可能に構成される。処理容器10は、内管11と、外管12とを有する。内管11は、下端が開放された有天井の円筒形状を有する。外管12は、下端が開放されて内管11の外側を覆う有天井の円筒形状を有し、均熱を確保することを目的としている。内管11及び外管12は、同軸状に配置されて2重管構造となっている。内管11及び外管12は、石英等の耐熱材料により形成される。外管12は無くても良い。
【0012】
内管11は、例えば平坦な天井部11aを有する。内管11は、天井部11aの少し下方に位置する区画板11bを有する。区画板11bは、内管11内を処理空間A1と滞留空間A2とに区画する。処理空間A1には、基板Wが収容される。処理空間A1は、内管11の下部の側壁に設けられる排気ポート13を介して減圧される。滞留空間A2は、処理空間A1の上方に位置する。滞留空間A2は、処理空間A1に比べて容積が小さい。滞留空間A2には、ノズル14の先端が挿通される。ノズル14は、内管11と外管12との間において上下方向に延び、先端が内管11の上部においてL字状に屈曲されて滞留空間A2に挿通され、基端が内管11の下部においてL字状に屈曲されて外部に取り出される。ノズル14には、基端の側から処理ガスが導入される。ノズル14は、先端から滞留空間A2に処理ガスを吐出する。ノズル14が処理ガスを吐出する方向は限られないが、滞留空間A2内の処理ガス濃度の均一化のために、滞留空間A2の中心付近で垂直方向上側、もしくは垂直方向下側に向かって吐出することが好ましい。滞留空間A2に吐出される処理ガスは、滞留空間A2において一時的に滞留する。区画板11bには、処理空間A1と滞留空間A2とを連通させる複数のガス孔11cが形成される。複数のガス孔11cは、滞留空間A2で滞留する処理ガスを処理空間A1に供給する。
【0013】
内管11の下端の開口11dには、蓋体15が取り付けられる。蓋体15は、開口11dを気密に塞ぐ。蓋体15は、例えばステンレス鋼により形成される。蓋体15の中央には、図示しない磁性流体シールを介して基板保持具16を回転可能に支持する回転軸17が貫通させて設けられる。回転軸17の下部は、ボートエレベータよりなる昇降機構18に回転自在に支持される。回転軸17には、石英製の保温部材19が設けられる。昇降機構18を昇降させることによって蓋体15と基板保持具16とは一体として上下動し、基板保持具16を処理容器10内に対して挿脱できるようになっている。基板保持具16は、処理空間A1に収容可能である。基板保持具16は、複数枚(例えば50~150枚)の基板Wを水平姿勢で多段に保持する。
【0014】
供給部20は、第1ガスソース21と、第1流量制御器22と、第2ガスソース23と、第2流量制御器24と、水分発生装置25と、第3ガスソース26と、第3流量制御器27とを含む。
【0015】
第1ガスソース21は、水素ガスのガスソースである。水素ガスは、水素ガス(H
2)及び水素同位体ガスのうちの少なくとも1つを含んでよい。水素同位体ガスは、例えば重水素ガス(D
2)、三重水素ガスであってよい。なお、本明細書等において、「水素ガス」は、水素ガス(H
2)及び水素同位体ガスのうちの少なくとも1つを含むガスを意味する。
図1においては、第1ガスソース21は、水素ガス(H
2)のガスソースである。第1ガスソース21は、水分発生装置25に水素ガスを導入する。第1流量制御器22は、制御部90の制御の下、第1ガスソース21から水分発生装置25に導入される水素ガスの流量を制御する。第1流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)である。
【0016】
第2ガスソース23は、酸素ガス(O2)のガスソースである。第2ガスソース23は、水分発生装置25に酸素ガスを導入する。第2流量制御器24は、制御部90の制御の下、第2ガスソース23から水分発生装置25に導入される酸素ガスの流量を制御する。第2流量制御器24は、例えばマスフローコントローラである。
【0017】
第1ガスソース21、第1流量制御器22、第2ガスソース23及び第2流量制御器24は、ガス導入部の一例である。第1流量制御器22及び第2流量制御器24は、水分発生装置25に導入される酸素ガスに対する水素ガスの流量比が2より大きくなるように、それぞれ水素ガスの流量及び酸素ガスの流量を制御する。
【0018】
水分発生装置25は、水素ガスと酸素ガスを触媒反応させて水分を生成し、生成した水分をノズル14に導入する。水分は、水(H
2O)、重水(D
2O)及び三重水のうちの少なくとも1つを含んでよい。なお、本明細書等において、「水分」は、水(H
2O)、重水(D
2O)及び三重水のうちの少なくとも1つを含むものを意味する。
図1においては、水分発生装置25は、水素ガス(H
2)と酸素ガスを触媒反応させて水(H
2O)を生成し、生成した水(H
2O)をノズル14に導入する。水分発生装置25に導入される酸素に対する水素の流量比が2より大きい場合、水分発生装置25は、水素ガスと酸素ガスを触媒反応させて生成する水分と、未反応の水素ガスとをノズル14に導入する。
【0019】
第3ガスソース26は、窒素ガス(N2)のガスソースである。第3ガスソース26は、ノズル14に窒素ガスを導入する。第3流量制御器27は、制御部90の制御の下、第3ガスソース26からノズル14に導入される窒素ガスの流量を制御する。第3流量制御器27は、例えばマスフローコントローラである。
【0020】
係る供給部20は、水分発生装置25が生成する水分と、水分発生装置25で未反応の水素ガスと、第3ガスソース26が導入する窒素ガスとを含む処理ガスを、ノズル14に導入する。ノズル14は、供給部20から導入される処理ガスを滞留空間A2に供給する。
【0021】
排気部30は、圧力制御器31と、真空ポンプ32とを含む。圧力制御器31は、内管11内の圧力を制御する。圧力制御器31は、例えば自動圧力制御機器(APC:Automatic Pressure Controller)を含んでよい。真空ポンプ32は、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでよい。真空ポンプ32は、圧力制御器31を介して排気ポート13に接続される。排気部30は、圧力制御器31で内管11内を所定圧力に制御しながら、真空ポンプ32で内管11内を排気する。
【0022】
加熱部40は、外管12の周囲に設けられる。加熱部40は、外管12を覆うように円筒形状を有する。加熱部40は、内管11内の基板Wを所定温度に加熱する。加熱部40は、例えば抵抗発熱体を含むヒータである。
【0023】
制御部90は、後述する熱処理方法を実施するように熱処理装置1の各要素を制御するように構成される。制御部90は、一部又は全てが熱処理装置1とは別に設けられてもよい。制御部90は、例えばコンピュータを含んでもよい。コンピュータは、例えば処理部と、記憶部とを含んでよい。処理部は、記憶部に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。処理部は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んでよい。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0024】
〔熱処理方法〕
図2を参照し、実施形態に係る熱処理方法の一例として、前述した熱処理装置1において基板Wの表面に選択酸化処理を施す場合について説明する。
【0025】
まず、選択酸化処理を施す対象の基板Wを準備する。基板Wは、シリコン基板101と、シリコン基板101上に形成された電気回路102とを有する。シリコン基板101上には、ソース領域103及びドレイン領域104が設けられると共に、ソース領域103及びドレイン領域104に跨るようにゲート酸化膜105が設けられる。ゲート酸化膜105上には、ポリシリコン膜106が設けられる。ポリシリコン膜106上には、バリア層107を介してタングステン膜108が設けられる。
【0026】
次に、基板Wの表面に選択酸化処理を施す。まず、複数枚の基板Wを搭載した基板保持具16を内管11内にその下方から上昇させることにより搬入する。続いて、蓋体15で内管11の下端の開口11dを塞ぐことにより、内管11内を密閉空間とする。続いて、排気部30により内管11内を減圧して所定圧力に維持すると共に、加熱部40により基板温度を所定温度に上昇させる。所定圧力は、例えば100Torr(13.3kPa)~300Torr(40.0kPa)であってよい。所定温度は、例えば850℃以下であってよい。基板温度が所定温度に安定した後、基板保持具16を回転させながら選択酸化処理を開始する。
【0027】
選択酸化処理は、第1ガスソース21及び第2ガスソース23からそれぞれ水素ガス及び酸素ガスを水分発生装置25に導入し、水分発生装置25において水素ガスと酸素ガスを触媒反応させて水分を生成する工程を含む。該工程において、第1流量制御器22及び第2流量制御器24は、水分発生装置25に導入される酸素ガスに対する水素ガスの流量比が2より大きくなるように、それぞれ水素ガスの流量及び酸素ガスの流量を制御する。この場合、水分発生装置25に導入される水素ガスの一部が未反応の状態でノズル14に導入される。すなわち、水分発生装置25は、水素ガスと酸素ガスを触媒反応させて生成する水分と、未反応の水素ガスとをノズル14に導入する。ノズル14に導入される水分及び水素ガスは、滞留空間A2に供給されて滞留空間A2で滞留した後に、区画板11bの複数のガス孔11cを介して処理空間A1に供給される。処理空間A1に供給された水分及び水素ガスは、基板Wの表面に設けられたタングステン膜108を酸化させずに、ソース領域103、ドレイン領域104及びポリシリコン膜106の露出面を選択的に酸化させて酸化膜109を形成する。また、選択酸化処理は、第3ガスソース26から窒素ガスをノズル14に導入する工程を含んでもよい。
【0028】
選択酸化処理における条件の一例は以下である。
・基板温度:750℃
・水素ガス(H2)の流量:2.0slm
・酸素ガスの流量:0.2slm
・窒素ガスの流量:3.5slm
・圧力:200Torr(26.7kPa)
【0029】
選択酸化処理が終了した後、内管11内に基板Wを搬入した手順と逆の順で内管11内から基板Wを搬出する。
【0030】
ところで、水分発生装置25に導入される酸素ガスに対する水素ガスの流量比が2より大きい水素リッチの条件では、ノズル14に水分と未反応の水素ガスとを含む処理ガスが導入されるが、水分発生装置25で反応しなかった微量の酸素ガスが混入し得る。酸素ガスが混入した処理ガスが処理空間A1に供給されると、基板Wの表面に形成される酸化膜109の膜厚の面内均一性が悪化する場合がある。これは、処理空間A1に収容される基板Wの表面近傍において、酸素ガスと水素ガスとが反応して新たな酸化種が生成されるためと考えられる。
【0031】
例えば、縦型のバッチ装置の場合、内管11の上方から処理ガスが供給される。このため、処理ガスに混入する酸素ガスは、ほとんどが内管11の上方において水素ガスと反応して新たな酸化種となる。このため、基板保持具16に保持される複数枚の基板Wのうち上部に位置する基板Wほど酸化膜109の膜厚の面内均一性が悪化する。
【0032】
そこで、実施形態では、ノズル14から供給される水分及び水素ガスを含む処理ガスを滞留空間A2で滞留させた後に処理空間A1に供給する。このため、処理ガスに微量の酸素ガスが混入している場合であっても、滞留空間A2において水素ガスと酸素ガスとが反応して酸素ガスが消費される。これにより、処理空間A1に酸素ガスが供給されることが抑制される。その結果、基板Wの表面に形成される酸化膜109の膜厚の面内均一性が向上する。
【0033】
上記の選択酸化処理において、第2ガスソース23が水分発生装置25に導入する酸素ガスの流量は例えば50sccm以上であってよい。水素リッチの条件で処理ガスに混入する未反応の酸素ガスの流量は、水分発生装置25に導入される酸素ガスの流量が大きくなるほど大きくなる。水分発生装置25に導入する酸素ガスの流量が50sccm以上の場合、処理ガスを滞留空間A2で滞留させることなく処理空間A1に供給すると、酸化膜109の膜厚の面内均一性が悪化しやすい。そこで、第2ガスソース23が水分発生装置25に導入する酸素ガスの流量が50sccm以上である場合、滞留空間A2を有する実施形態に係る熱処理装置1を用いて選択酸化処理を実施することが有効である。さらに、第2ガスソース23が水分発生装置25に導入する酸素ガスの流量が100sccm以上である場合、処理ガスに混入する未反応の酸素ガスの流量が更に大きくなる。そこで、滞留空間A2を有する実施形態に係る熱処理装置1を用いて選択酸化処理を実施することがより有効である。
【0034】
上記の選択酸化処理において、プロセス温度は例えば850℃以下であってよい。プロセス温度が850℃より高い場合、水素ガスと酸素ガスとの反応が生じやすい。このため、処理ガスを滞留させることなく処理空間A1に供給した場合であっても基板Wの表面近傍に酸素ガスが到達しにくい。一方、プロセス温度が850℃以下の場合、水素ガスと酸素ガスとの反応が生じにくい。このため、処理ガスを滞留させることなく処理空間A1に供給すると、処理ガスに混入する微量の酸素ガスが基板Wの表面近傍に到達し、酸化膜109の膜厚の面内均一性が悪化しやすい。そこで、プロセス温度が850℃以下の場合には、滞留空間A2を有する実施形態に係る熱処理装置1を用いて選択酸化処理を実施することが有効である。さらに、プロセス温度が800℃以下の場合には、水素ガスと酸素ガスとの反応が更に生じにくい。そこで、滞留空間A2を有する実施形態に係る熱処理装置1を用いて選択酸化処理を実施することがより有効である。
【0035】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0036】
上記の実施形態では、選択酸化処理において、タングステンを酸化させることなく、シリコンを選択的に酸化させる場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、タングステンは、別の金属であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 熱処理装置
10 処理容器
14 ノズル
20 供給部
21 第1ガスソース
22 第1流量制御器
23 第2ガスソース
24 第2流量制御器
25 水分発生装置
A1 処理空間
A2 滞留空間