(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138339
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】有価物含有スラッジの製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/62 20230101AFI20230922BHJP
【FI】
C02F1/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014297
(22)【出願日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2022042863
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 正寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 典正
(72)【発明者】
【氏名】羅 中力
【テーマコード(参考)】
4D038
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB67
4D038AB87
4D038AB90
4D038BA06
4D038BB13
4D038BB18
(57)【要約】
【課題】 公知のニッケル処理技術として、鉄酸化細菌を用いる方法や、水流化ソーダを用いる方法が知られているが、前者は最近の馴化が必要で処理速度が遅いという課題があり、後者は硫化水素ガス発生の潜在リスクが有るという点で課題があった。
【解決手段】 ニッケル含有排水に、水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を添加してニッケルを固定化させた後、ニッケル成分を含有するスラッジを固液分離することを特徴とするニッケル含有スラッジの製造方法を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル含有排水に、水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を添加してニッケルを固定化させた後、ニッケル成分を含有するスラッジを固液分離することを特徴とするニッケル含有スラッジの製造方法。
【請求項2】
ニッケル含有排水が、20mg/L以上1500mg/L以下の濃度のニッケルを含む排水であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【請求項3】
ジチオカルバミン酸の塩が、ピペラジン又はテトラエチレンペンタミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【請求項4】
固液分離する前に、高分子凝集剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【請求項5】
高分子凝集剤を添加する前に、電荷中和剤を添加することを特徴とする請求項4に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【請求項6】
水酸化カルシウム添加後のニッケル含有排水のpHが、6~11の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル等の重金属を含有するスラッジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重金属を含有した水溶液の処理方法として、水酸化カルシウムや水酸化ナトリウム等によるアルカリ沈殿法、塩化第二鉄等の鉄塩や硫酸バンド等のアルミニウム塩を用いた共沈法等が知られている。これらの方法は、反応制御が容易であり、プロセスの安全性は高いものの、処理した排水の重金属を排水基準値以下に低減できない場合も多い。一方で、水溶液から分離したスラッジは、結晶水や塩を多く含むため、埋め立てなど投棄処理することが一般的ではあるものの、銅やニッケル等を含むスラッジは金属原料として再資源化することが可能である。
【0003】
このようなニッケル等の有価金属のリサイクルの観点から、スラッジ中の有価金属の含有率を向上させる方法として、馴化細菌を用いた有価金属を沈降分離する方法(例えば、特許文献1参照)や水硫化ソーダ等の硫化剤を用いた方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-238181公報
【特許文献2】特開2007-69068公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、鉄酸化細菌を用いて溶解度が低い3価鉄イオンを形成し、3価鉄イオンの水酸化により他の有価金属を共沈することを特徴とする。しかしながら、事前に細菌を馴化することが必要であり、細菌と鉄の反応に時間がかかるため、排水を連続処理することが困難である。
【0006】
特許文献2に記載の方法は、pHを1~5に保持して水硫化ソーダ等の硫化剤を重金属含有排水に添加することを特徴とする。しかしながら、このような酸性条件における水硫化ソーダの添加は、毒性の強い硫化水素ガスの発生を引き起こす恐れがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を用いて、中性から弱アルカリ性領域のpHで排水中のニッケルを固定化させた後、ニッケル成分を含有するスラッジを固液分離する方法により、硫化水素ガスの発生を抑制できると同時に、スラッジ中の有価金属の含有率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
【0009】
[1]ニッケル含有排水に、水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を添加してニッケルを固定化させた後、ニッケル成分を含有するスラッジを固液分離することを特徴とするニッケル含有スラッジの製造方法。
【0010】
[2]ニッケル含有排水が、20mg/L以上1500mg/L以下の濃度のニッケルを含む排水であることを特徴とする上記[1]に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【0011】
[3]ジチオカルバミン酸の塩が、ピペラジン又はテトラエチレンペンタミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【0012】
[4]固液分離する前に、高分子凝集剤を添加することを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【0013】
[5]高分子凝集剤を添加する前に、電荷中和剤を添加することを特徴とする上記[4]に記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【0014】
[6]水酸化カルシウム添加後のニッケル含有排水のpHが、6~11の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のニッケル含有スラッジの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のニッケル含有スラッジの製造方法は、細菌の馴化等の操作を要しない、また、硫化水素ガス発生のリスクを回避できる点で、効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のニッケル含有スラッジの製造方法は、重金属含有排水に水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を用いて、排水中のニッケルを固定化させた後、ニッケル成分を含有するスラッジを固液分離することを特徴とする。
【0018】
本発明のニッケル含有スラッジの製造方法は、ニッケルを排水基準値以下に処理できると同時に硫化水素ガスの発生を抑制でき、またニッケル含有スラッジ中の有価金属の含有率を向上させることができるという効果を奏する。
【0019】
さらに、本発明のニッケル含有スラッジの製造方法は、中性領域のpHで処理可能であることから、ニッケルを固定化した後の排水を放流可能なpHに調整する工程を省略することができるという効果を奏するため、産業上極めて有用である。
【0020】
本発明で用いるニッケル含有排水としては、特に限定するものではないが、例えば、ニッケル以外にカドミウム、クロム、銅、鉄、水銀、鉛、亜鉛、パラジウム、金、銀、白金、コバルト、インジウム、モリブデン、アンチモン、スズ、チタン、ジルコニウム、マンガン、タングステン等の重金属類が含まれていてもよい。
【0021】
ニッケル含有排水におけるニッケルの濃度としては特に限定されないが、ニッケル含有スラッジの製造効率に優れる点で、20mg/L以上1500mg/L以下であることが好ましく、20mg/L以上1200mg/L以下であることが好ましく、20mg/L以上1000mg/L以下であることがより好ましい。
【0022】
当該排水としては、特に限定するものではないが、例えば、工業排水や生活排水を挙げることができ、より具体的には、メッキ工場排水、金属加工工場排水、又は自動車工場排水等を挙げることができる。
【0023】
なお、前記にニッケル含有排水におけるニッケルについては、通常、ニッケルイオン、又はニッケルイオン錯体化合物として、排水中に溶解しているものを指す。
【0024】
本発明で用いるジチオカルバミン酸の塩としては、分子内にジチオカルバミル基を有する化合物であれば特に限定されない。例えば、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物が挙げられる。1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を2つ以上有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物であることがより好ましい。
【0025】
1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物としては、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ジエチレントリアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘプタエチレンオクタミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンと塩化ベンジルの縮合物等が例示される。
【0026】
本発明で用いるジチオカルバミン酸の塩としては、重金属の処理性能、及び化合物としての安定性の点で、ピペラジン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミン、又はジエチルアミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物であることが好ましい。
【0027】
ピペラジンと二硫化炭素とアルカリ金属水酸化物との反応生成物としては、例えば、ジカリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)、又はジナトリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)が挙げられる。
【0028】
ジエチルアミンと二硫化炭素とアルカリ金属水酸化物との反応生成物としては、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸カリウム、又はN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウムが挙げられる。
【0029】
ジメチルアミンと二硫化炭素とアルカリ金属水酸化物との反応生成物としては、N,N-ジメチルジチオカルバミド酸カリウム、又はN,N-ジメチルジチオカルバミド酸ナトリウムが挙げられる。
【0030】
テトラエチレンペンタミンのジチオカルバミン酸の塩は、原料であるテトラエチレンペンタミンが、主成分のリニア体[下記式(1)参照]以外に類縁体[下記式(2)~(4)参照]を含む組成物として工業的に製造されているため、得られるジチオカルバミン酸の塩もその組成に対応した組成物となり、品質管理上煩雑になる欠点がある。一方、ピペラジン又はジエチルアミンのジチオカルバミン酸の塩はこのような欠点がなく、特に好ましい。
【0031】
【0032】
本発明で用いるジチオカルバミン酸の塩としては、ニッケル含有スラッジの製造効率に優れる点で、ジカリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)、ジナトリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム、N,N-ジメチルジチオカルバミド酸ナトリウム、又はテトラエチレンペンタミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることが好ましく、ジカリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)、ジナトリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)、又はテトラエチレンペンタミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物であることが好ましく、ジカリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)、又はジナトリウム=ピペラジン-1,4-ビス(カルボジチオアート)であることがより好ましい。
【0033】
本発明で用いるジチオカルバミン酸の塩を得る際に使用するアルカリ金属水酸化物としては、一般的な市販品を用いることができ、入手が容易な点で、試薬グレード品や工業グレード品の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが特に好ましい。
【0034】
前記のジチオカルバミン酸の塩の添加量については、特に限定するものではないが、例えば、添加後のニッケル含有排水におけるジチオカルバミン酸の塩の濃度が、1~5,000mg/Lであることが好ましく、5~2,500mg/Lであることがより好ましく、10~1,000mg/Lであることがより好ましい。
【0035】
また、前記のジチオカルバミン酸の塩の添加量については、特に限定するものではないが、例えば、ニッケル含有排水に含まれるニッケル 100重量部に対して、1~500重量部であることが好ましく、2~400重量部であることがより好ましく、4~200重量部であることがより好ましい。
【0036】
ニッケル含有排水に水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を添加する方法としては、例えば、ニッケル含有排水にそれぞれの固体物質を添加する方法、又はそれぞれの水溶液を添加する方法を挙げることができるが、操作性に優れる点で、それぞれの水溶液を添加する方法が好ましい。
【0037】
また、ニッケル含有排水に水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を添加するときは、それぞれを別々に添加してもよいし、両方を事前に混合してから添加してもよい。別々に添加する場合は、pH調整の観点から、先に水酸化カルシウムを添加することが好ましい。さらに、水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩の質量比は特に限定されない。
【0038】
ニッケル含有排水にジチオカルバミン酸の塩を添加する際(ニッケル含有排水に対して、水酸化カルシウムを添加した後)、ニッケル含有排水のpHは、中性からアルカリ性の領域(pH6.5~14)であることを特徴とし、ジチオカルバミン酸の塩の分解に伴う硫化水素ガスの発生を抑制できる点から、中性から弱アルカリ性の領域(pH6.5~11)がより好ましく、ニッケルを固定化した後の排水を放流可能なpHの点から、中性領域(pH6.5~9)がさらに好ましい。
【0039】
ニッケル含有排水に水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を添加した後は、混合物を撹拌することが好ましいが、撹拌温度は-10℃~40℃、好ましくは4℃~40℃、撹拌時間は、通常、数分~2時間の範囲から選ばれる。
【0040】
ニッケル含有排水に水酸化カルシウムとジチオカルバミン酸の塩を添加する際には、無機硫化物、重量平均分子量300以上のポリアミン、窒素原子を3~8有するポリアミン、又はヒドロキシアミノカルボン酸若しくはその塩等を添加してもよい。このような添加剤を用いることによって、ニッケル含有スラッジの製造効率が向上したり、固液分離操作が容易になるという効果が期待される。
【0041】
当該添加物の添加タイミングについては、ジチオカルバミン酸の塩の添加の前であってもよいし、ジチオカルバミン酸の塩の添加と同時であってもよいし、又はジチオカルバミン酸の塩の添加の後であってもよい。
【0042】
無機硫化物の塩としては、例えば、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、硫化カルシウム、硫化水素カルシウム、硫化水素マグネシウム、又は硫化アンモニウム等が挙げられる。
【0043】
重量平均分子量300以上のポリアミンとしては、例えば、重量平均分子量300以上のポリエチレンイミン類、又は重量平均分子量300以上のポリエーテルアミン(ポリプロピレングリコール、又はポリエチレングリコール等の末端水酸基を1級アミノ基に変換した化合物)等が挙げられる。
【0044】
窒素原子を3~8有するポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、又はヘプタエチレンオクタミン等が挙げられる。
【0045】
ヒドロキシアミノカルボン酸若しくはその塩としては、例えば、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジアミノヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)若しくはその塩等が挙げられる。
【0046】
ニッケル成分を含有するスラッジを固液分離する前に、高分子凝集剤を添加してもよい。高分子凝集剤の添加により、ニッケル成分を含有するスラッジ中の有価金属含有率を高めると同時に、スラッジの固液分離を容易にする。
【0047】
高分子凝集剤は、市販されている高分子凝集剤を使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸ポリマー、アクリルアミドポリマー、又はジメチルアミノエチルメタアクリレートポリマー等が挙げられる。これらのうち、凝集性能の点で、弱アニオン性のアクリル酸ポリマーが好ましい。
【0048】
前記の高分子凝集剤の添加量については、特に限定するものではないが、例えば、添加後のニッケル含有排水における高分子凝集剤の濃度が、100~10,000mg/Lであることが好ましく、200~5,000mg/Lであることがより好ましく、500~2,000mg/Lであることがより好ましい。
【0049】
一方、特に限定されないが、例えば、塩化第二鉄、硫酸第一鉄等の鉄化合物、又は硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物などの無機凝集剤は、ニッケル成分を含有するスラッジ中の有価金属含有率を低下させるため、使用しないことが好ましい。
【0050】
本発明のニッケル含有スラッジの製造方法については、前記の高分子凝集剤を添加する前に(固液分離する前に)、電荷中和剤を添加してもよい。
【0051】
電荷中和剤の添加により、高分子凝集剤の添加量を低減させることができ、処理対象液中のTOC(全有機炭素)量を低減することができ、また、ニッケル成分を含有するスラッジ中の有価金属含有率を高めると同時に、スラッジの固液分離を容易にする。
【0052】
前記の電荷中和剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリジアリルアミンが挙げられ、更に具体的には、例えば、下記一般式(5)又は(6)で示される繰り返し単位を少なくとも2つ以上有するポリジアリルアミンが挙げられる。
【0053】
【0054】
(式中、R1、R2、及びR3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。)
前記一般式(5)、及び(6)において、R1、R2、及びR3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0055】
前記炭素数1~10のアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、炭素数3~10の直鎖状のアルキル基、又は炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
【0056】
前記の炭素数3~10の直鎖状のアルキル基、又は炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチル-ブチル基、1,2-ジメチル-ブチル基、1,3-ジメチル-ブチル基、2,2-ジメチル-ブチル基、2,3-ジメチル-ブチル基、1,1-ジメチル-2-メチル-プロピル基、1-ジメチル-2、2-ジメチル-プロピル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基等を挙げることができる。
【0057】
また、R1、R2、及びR3については、排水処理性能に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。
【0058】
また、R1、及びR2については、排水処理性能に優れる点で、ともに、メチル基、又はエチル基であることがより好ましい。
【0059】
R3については、排水処理性能に優れる点で、水素原子であることがより好ましい。
【0060】
前記一般式(5)において、X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。当該X-については、ポリジアリルアミンが合成容易な点で、塩化物イオンであることが好ましい。
【0061】
上記の一般式(5)又は(6)で示される繰り返し単位を少なくとも2つ以上有するポリジアリルアミンについては、特に限定するものではないが、例えば、ポリ(ジアリルアミン)、ポリ(メチルジアリルアミン)、ポリ(エチルジアリルアミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルメチルエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムブロマイド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムヨージド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムヨージド)、又はポリ(ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト)、ポリ(プロピルジアリルアミン)、ポリ(i-プロピルジアリルアミン)、ポリ(ブチルジアリルアミン)、ポリ(i-ブチルジアリルアミン)、ポリ(tert-ブチルジアリルアミン)、ポリ(sec-ブチルジアリルアミン)、ポリ(ペンチルジアリルアミン)、ポリ(イソペンチルジアリルアミン)、ポリ(1-メチルブチルジアリルアミン)、ポリ(1,1-ジメチルプロピルジアリルアミン)、ポリ(2,2-ジメチルプロピルジアリルアミン)、ポリ(ヘキシルジアリルアミン)、ポリ(1-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(2-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(3-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(4-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(1,1-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(1,2-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(1,3-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(2,2-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(2,3-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(1,1-ジメチル-2-メチル-プロピルジアリルアミン)、ポリ(1-ジメチル-2、2-ジメチル-プロピルジアリルアミン)、ポリ(シクロヘキシルジアリルアミン)、ポリ(ヘプチルジアリルアミン)、ポリ(オクチルジアリルアミン)、ポリ(ノニルジアリルアミン)、ポリ(デシルジアリルアミン)、ポリ(ジプロピルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(i-プロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジブチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(i-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(tert-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(sec-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジペンチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(イソペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1-メチルブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,1-ジメチルプロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2,2-ジメチルプロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジヘキシルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(3-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(4-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,1-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,2-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,3-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2,2-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2,3-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,1-ジメチル-2-メチル-プロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1-ジメチル-2、2-ジメチル-プロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジシクロヘキシルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジヘプチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジオクチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジノニルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジデシルジアリルアンモニウムクロライド)、アリルアミンジアリルアミン共重合体、アリルアミンジアリルジメチルアンモニウムクロリド共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムサルフェイト二酸化硫黄共重合体、メチルジアリルアミン二酸化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩酸塩アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアクリルアミド共重合体、メチルジアリルアミンジアリルジメチルアンモニウムクロリド共重合体、エピクロロヒドリン付加型3級アミン塩酸塩4級アンモニウム塩共重合体、ジアリルアミン塩酸塩マレイン酸共重合体、メチルジアリルアミンマレイン酸共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイトマレイン酸共重合体、又はジアリルメチルエチルアンモニウムクロライドマレイン酸共重合体等を挙げることができ、その具体的製品として、例えば、ユニセンスFPA100L、PAS-21CL、PAS-21、PAS-M-1L、PAS-M-1、PAS-22SA-40,PAS-M-1A,PAS-H-1L、PAS-H-1LL、PAS-H-5L、PAS-H-10L、PAS-24、PAS-92、PAS-2401、PAS-92A、PAS-2201、PAS-2201CL、PAS-2201A、PAS-A-1、PAS-A-5、PAS-2141CL、PAS-J-81L、PAS-J-81、PAS-J-81LL、PAS-J-41、PAS-J-41H、PAS-2223、PAS-880、PAS-410C、PAS-411C、PAS-410L、PAS-410SA、PAS-2251、PAS-84、PAS-2451、又はPAS-2351等を挙げることができる。
【0062】
前記の電荷中和剤、又はポリジアリルアミンについては、排水処理能力に優れる点で、その平均分子量が、1,000~500,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましい。
【0063】
前記の平均分子量については、水系サイズ排除クロマトグラフィー測定によって測定される重量平均分子量を表す。なお、分子量標準については、プルラン分子量標準品が用いられる。
【0064】
前記の電荷中和剤については、前記の高分子凝集剤を添加する前に添加することが重要であり、例えば、前記のジチオカルバミン酸と同時に添加しでもよいし、前記のジチオカルバミン酸添加後に添加しでもよい。
【0065】
前記の電荷中和剤の添加量については、特に限定するものではないが、例えば、添加後のニッケル含有排水における電荷中和剤の濃度が、1~100mg/Lであることが好ましく、5~50mg/Lであることがより好ましい。
【0066】
なお、前記の電荷中和剤を添加する場合は、前記の高分子凝集剤の添加量を低減することができる。この時の高分子凝集剤の添加量については、特に限定するものではないが、例えば、添加後のニッケル含有排水における高分子凝集剤の濃度が、10~5,000mg/Lであることが好ましく、50~2,000mg/Lであることがより好ましく、100~800mg/Lであることがより好ましい。
【0067】
前記スラリーから固体成分を分離する方法としては特に限定されないが、例えば、ろ過、遠心分離、又は前記固体成分を沈降させた後、上澄み液と分離する方法等が挙げられる。
【0068】
このような操作でスラリーから分離された固体成分は本発明におけるニッケル含有スラッジに該当し、後述する実施例では、湿潤スラッジと称している。
【0069】
また、湿潤スラッジを乾燥させることによって、乾燥スラッジを製造することもできる。当該乾燥スラッジについても、本発明におけるニッケル含有スラッジに該当する。
【0070】
本発明のニッケル含有スラッジの製造方法は、連続式で実施してもよいし、単一式(バッチ式)で実施してもよい。
【0071】
本発明のニッケル含有スラッジの製造方法において、水溶液を酸性又はアルカリ性に調整する場合、pH調整剤を使用してもよい。pH調整剤としては、例えば、酸性に調整する場合は塩酸、硫酸、燐酸、硝酸等の無機塩及びその水溶液、アルカリ性に調整する場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム等の無機塩基及びその水溶液等が挙げられる。
【0072】
本発明のニッケル含有スラッジの製造方法は、連続式で実施してもよいし、単一式(バッチ式)で実施してもよい。
【実施例0073】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0074】
(ニッケル濃度分析方法)
水溶液中のニッケル濃度は、ICP発光分光分析装置(ICPE-9800、島津製作所社製)で測定した。
【0075】
排水処理中の水溶液から発生する硫化水素ガス量は、ガステック社製ガス検知管 4LKで測定した。
【0076】
排水1L当たりのスラッジ発生量[g/L]は、排水1Lを処理したときの固液分離後のニッケル含有スラッジを105℃で2時間乾燥させた後、測定した。
【0077】
乾燥処理したスラッジ中のニッケル含有率(%)は、下記の計算式で算出した。
【0078】
(排水処理前のニッケル濃度[mg/L]-排水処理後のニッケル濃度[mg/L])×10-3/スラッジ発生量[g/L]×100
調製例1
実施例で使用したジチオカルバミン酸の塩は、以下の方法に従って調製した。
【0079】
(ジチオカルバミン酸の塩Aの調製)
ピペラジン(東ソー社製)112gと純水386gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化カリウム306g(キシダ化学社製)と二硫化炭素196g(キシダ化学社製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、下記式(7)に示す化合物40重量%を含む水溶液を得た。
【0080】
【0081】
(ジチオカルバミン酸の塩Bの調製)
テトラエチレンペンタミン(東ソー社製)159gと純水331gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化ナトリウム281g(キシダ化学社製)と二硫化炭素230g(キシダ化学社製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、下記式(8)に示す化合物40重量%を含む水溶液を得た。
【0082】
【0083】
(ジチオカルバミン酸の塩Cの調製)
N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬社製)52.6gに全量が100gになるまで純水を加え、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム40重量%を含む水溶液を得た。
【0084】
【0085】
(ジチオカルバミン酸の塩Dの調製)
N,N-ジメルジチオカルバミド酸ナトリウム二水和物(東京化成工業社製)50.1gに全量が100gになるまで純水を加え、N,N-ジメチルジチオカルバミド酸ナトリウム40重量%を含む水溶液を得た。
【0086】
【0087】
(電荷中和剤)
電荷中和剤として、以下のものを使用した。
【0088】
ジアリルアミン重合体(平均分子量5,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-21)(PDAA-1と略す)。
【0089】
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(平均分子量8,500)(ニットーボーメディカル社製、PAS-H-1L)(PDAA-2と略す)。
【0090】
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(平均分子量30,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-H-5L)(PDAA-3と略す)。
【0091】
PDAA-1~3の構造を表1に示す。
【0092】
【0093】
(高分子凝集剤)
高分子凝集剤として、オルガノ社製OA-23(弱アニオンポリマー)を使用した。
【0094】
実施例1
ジャーテスター(Jar Tester)に設置した1000mLビーカーに、ニッケル含有排水E(pH3、ニッケル濃度500mg/L含有)500mLを投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、5重量%水酸化カルシウム水溶液を添加し、前記ニッケル含有排水EをpH8.5に調整した。次いで、上記式(7)に示す化合物(ジチオカルバミン酸の塩A)を40重量%含む水溶液を300mg添加し(ジチオカルバミン酸の塩Aとして120mg、濃度として240mg/L)、150rpmで10分間撹拌した。次いで、高分子凝集剤としてOA-23を1000mg添加し(濃度として2000mg/L)、50rpmで5分間攪拌した。撹拌終了後、10分間静置した。処理液の入った1000mLビーカーをジャーテスターから取り外して卓上遠心機(久保田商事 S700T)に設置し、3800rpmで20分間遠心分離することで水溶液と汚泥を分離した。一連の処理工程中における硫化水素ガス発生量は、作業環境評価基準値未満であった。また、処理後の水溶液のニッケル濃度、スラッジ発生量、乾燥処理後のスラッジ中のニッケル含有率の結果を表2に示す。
【0095】
実施例2~3
添加するジチオカルバミン酸の塩を表1に示す条件に変更する以外、実施例1と同様の操作を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0096】
比較例1
上記式(7)に示す化合物(ジチオカルバミン酸の塩A)を添加しない以外、実施例1と同様の操作を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0097】
実施例4
ジャーテスター(Jar Tester)に設置した1000mLビーカーに、ニッケル含有排水F(pH5、ニッケル濃度70mg/L含有)500mLを投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、5重量%水酸化カルシウム水溶液を添加し、前記ニッケル含有排水FをpH7に調整した。次いで、上記式(7)に示す化合物(ジチオカルバミン酸の塩A)を40重量%含む水溶液を150mg添加し(ジチオカルバミン酸の塩Aとして60mg、濃度として120mg/L)、150rpmで10分間撹拌した。次いで、高分子凝集剤としてOA-23を1000mg添加し(濃度として2000mg/L)、50rpmで5分間攪拌した。撹拌終了後、10分間静置した。処理液の入った1000mLビーカーをジャーテスターから取り外して卓上遠心機(久保田商事 S700T)に設置し、3800rpmで20分間遠心分離することで水溶液と汚泥を分離した。一連の処理工程中における硫化水素ガス発生量は、作業環境評価基準値未満であった。また、処理後の水溶液のニッケル濃度、スラッジ発生量、乾燥処理後のスラッジ中のニッケル含有率の結果を表2に示す。
【0098】
比較例2
上記式(7)に示す化合物(ジチオカルバミン酸の塩A)を添加しない以外、実施例4と同様の操作を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0099】
実施例5
ジャーテスター(Jar Tester)に設置した1000mLビーカーに、ニッケル含有排水G(pH3、ニッケル濃度1000mg/L含有)500mLを投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、5重量%水酸化カルシウム水溶液を添加し、前記ニッケル含有排水GをpH9に調整した。次いで、上記式(7)に示す化合物(ジチオカルバミン酸の塩A)を40重量%含む水溶液を250mg添加し(ジチオカルバミン酸の塩Aとして100mg、濃度として200mg/L)、150rpmで10分間撹拌した。次いで、高分子凝集剤としてOA-23を1000mg添加し(濃度として2000mg/L)、50rpmで5分間攪拌した。撹拌終了後、10分間静置した。処理液の入った1000mLビーカーをジャーテスターから取り外して卓上遠心機(久保田商事 S700T)に設置し、3800rpmで20分間遠心分離することで水溶液と汚泥を分離した。一連の処理工程中における硫化水素ガス発生量は、作業環境評価基準値未満であった。また、処理後の水溶液のニッケル濃度、スラッジ発生量、乾燥処理後のスラッジ中のニッケル含有率の結果を表2に示す。
【0100】
比較例3
上記式(7)に示す化合物(ジチオカルバミン酸の塩A)を添加しない以外、実施例5と同様の操作を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0101】
実施例6
添加するジチオカルバミン酸の塩を表2に示す条件に変更する以外、実施例1と同様の操作を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0102】
実施例7
ジャーテスター(Jar Tester)に設置した1000mLビーカーに、ニッケル含有排水E(pH3、ニッケル濃度500mg/L含有)500mLを投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、5重量%水酸化カルシウム水溶液を添加し、前記ニッケル含有排水EをpH8.5に調整した。次いで、上記式(7)に示す化合物(ジチオカルバミン酸の塩A)を40重量%含む水溶液を300mg添加し(ジチオカルバミン酸の塩Aとして120mg、濃度として240mg/L)、次いで上記表1に示す電荷中和剤PDAA―1を10mg添加し(濃度として20mg/L)、150rpmで10分間撹拌した。次いで、高分子凝集剤としてOA-23を400mg添加し(濃度として800mg/L)、50rpmで5分間攪拌した。撹拌終了後、10分間静置した。処理液の入った1000mLビーカーをジャーテスターから取り外して卓上遠心機(久保田商事 S700T)に設置し、3800rpmで20分間遠心分離することで水溶液と汚泥を分離した。一連の処理工程中における硫化水素ガス発生量は、作業環境評価基準値未満であった。また、処理後の水溶液のニッケル濃度、スラッジ発生量、乾燥処理後のスラッジ中のニッケル含有率の結果を表2に示す。
【0103】
実施例8~9
添加する電荷中和剤を表2に示す条件に変更する以外、実施例7と同様の操作を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0104】
実施例10
添加するジチオカルバミン酸の塩を表2に示す条件に変更する以外、実施例7と同様の操作を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0105】
比較例4
ジャーテスター(Jar Tester)に設置した1000mLビーカーに、ニッケル含有排水E(pH3、ニッケル濃度500mg/L含有)500mLを投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、5重量%水酸化カルシウム水溶液を添加し、前記ニッケル含有排水EをpH8.5に調整した。次いで、上記表1に示す電荷中和剤PDAA―1を10mg添加し(濃度として20mg/L)、150rpmで10分間撹拌した。次いで、高分子凝集剤としてOA-23を400mg添加し(濃度として800mg/L)、50rpmで5分間攪拌した。撹拌終了後、10分間静置した。処理液の入った1000mLビーカーをジャーテスターから取り外して卓上遠心機(久保田商事 S700T)に設置し、3800rpmで20分間遠心分離することで水溶液と汚泥を分離した。一連の処理工程中における硫化水素ガス発生量は、作業環境評価基準値未満であった。また、処理後の水溶液のニッケル濃度、スラッジ発生量、乾燥処理後のスラッジ中のニッケル含有率の結果を表2に示す。
【0106】