(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138351
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の安全状態検知方法、装置、システム、蓄電装置、電源装置、駆動装置、電力制御装置、電力バランス調整装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20230922BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017791
(22)【出願日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2022043087
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】野津 龍太郎
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB02
5G503CB11
5G503EA05
5G503EA08
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を検知することができるリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する方法であって、前記リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値を算出し、前記微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きいときの第1の電池電圧を求め、前記第1の電池電圧に対応して、前記リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定し、決定した前記第2の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の安全状態を検知することを特徴とする、リチウムイオン二次電池の安全状態検知方法。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する方法であって、
前記リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値を算出し、
前記微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きいときの第1の電池電圧を求め、
前記第1の電池電圧に対応して、前記リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定し、
決定した前記第2の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の安全状態を検知することを特徴とする、リチウムイオン二次電池の安全状態検知方法。
【請求項2】
前記増大の度合いは、前記算出された微分係数の絶対値よりも1つ前に算出された微分係数の絶対値から、前記算出された微分係数の絶対値へ、の増大の度合いであり、
前記閾値は1.5倍である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法。
【請求項3】
前記電圧降下分の電圧は、前記リチウムイオン二次電池の電圧から、前記リチウムイオン二次電池に流れる電流と前記リチウムイオン二次電池の内部抵抗との積を差し引いたものである、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法。
【請求項4】
前記リチウムイオン二次電池の蓄電電気量がX(Ah)のとき、前記電圧降下分の電圧は、前記リチウムイオン二次電池に流れる電流の絶対値がX(A)以上の条件を満たす場合に、前記放電曲線を更新する(ただし、Xは正の実数である)、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法。
【請求項5】
前記第1の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の蓄電可能量を予測する、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法。
【請求項6】
前記リチウムイオン二次電池の正極活物質が、LixMO2(ただし、Mは遷移金属、前記リチウムイオン二次電池を3.8Vまで充電したときにx<0.5となる)を含有する、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法。
【請求項7】
リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値を算出し、前記微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きいときの第1の電池電圧を求める、第1電池電圧算出部と、
前記第1の電池電圧に対応して、前記リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定する、第2電池電圧算出部と、
決定した前記第2の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する、判定部と
を備えたことを特徴とする、安全状態検知装置。
【請求項8】
リチウムイオン二次電池と、安全状態検知装置と、を含む安全状態検知システムであって、
前記リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値を算出し、前記微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きいときの第1の電池電圧を求める、第1電池電圧算出部と、
前記第1の電池電圧に対応して、前記リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定する、第2電池電圧算出部と、
決定した前記第2の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する、判定部と
を備えたことを特徴とする、安全状態検知システム。
【請求項9】
リチウムイオン二次電池と、保護回路と、を含む蓄電装置であって、
前記保護回路が、
前記リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値を算出し、前記微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きいときの第1の電池電圧を求め、
前記第1の電池電圧に対応して、前記リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定し、
決定した前記第2の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の安全状態を検知することを特徴とする、蓄電装置。
【請求項10】
前記リチウムイオン二次電池が使用済みのリチウムイオン二次電池である、請求項9に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記リチウムイオン二次電池の安全状態のランク判定に応じた結果が表示機器に提示される、請求項7から10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池を電源とする電源装置。
【請求項12】
請求項11に記載の前記電源装置を利用した駆動装置。
【請求項13】
請求項11に記載の前記電源装置を利用した電力制御装置。
【請求項14】
請求項11に記載の前記電源装置を利用した電力バランス調整装置。
【請求項15】
安全状態検知装置を
リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値を算出し、前記微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きいときの第1の電池電圧を求める、第1電池電圧算出部、
前記第1の電池電圧に対応して、前記リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定する、第2電池電圧算出部、
決定した前記第2の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する、判定部
として機能させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の安全状態検知方法、装置、システム、蓄電装置、電源装置、駆動装置、電力制御装置、電力バランス調整装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器やハイブリッド自動車、電気自動車、電力貯蔵などの電源として、リチウムイオン二次電池の需要が高まっている。リチウムイオン二次電池は、重量当たりのエネルギー密度の高い蓄電池であるため、電池が過充電されたときの電池の安全性が懸念されることが恒常的な課題となっている。
【0003】
このような問題に対して、従来から、リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する技術がある。例えば、特許文献1には、リチウムイオン二次電池の異常温度変化を検知するセンサーが、二次電池の異常温度変化を検知すると、異常発熱した二次電池を冷却する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のリチウムイオン二次電池の安全状態を検知するシステムでは、リチウムイオン二次電池が不安全状態に移行した後または移行する直前でないと、リチウムイオン二次電池の不安全状態を判定することができない。
【0005】
本発明の課題は、リチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を検知することができるリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する方法であって、前記リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値を算出し、前記微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きいときの第1の電池電圧を求め、前記第1の電池電圧に対応して、前記リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定し、決定した前記第2の電池電圧に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の安全状態を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、リチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】リチウムイオン電池セル(電解液にメタクリル酸化合物を含まない場合)の充電電気量または放電電気量と電圧の関係を示す。
【
図2】リチウムイオン電池セル(電解液にメタクリル酸化合物を含む場合)の充電電気量または放電電気量と電圧の関係を示す。
【
図3】二次電池(正極容量が減少する場合)の容量と正負極電位の関係を示す。
【
図4】二次電池(負極容量が減少する場合)の容量と正負極電位の関係を示す。
【
図5】二次電池(正極と負極の充電状態がすれる場合)の容量と正負極電位の関係を示す。
【
図6】リチウムイオン電池の容量と電圧の関係を示す。
【
図7】リチウムイオン電池の充放電における温度変化を示す。
【
図8】リチウムイオン電池の充放電(4.8V)における温度変化を示す。
【
図9】リチウムイオン電池の充電電圧と不可逆電気量の関係を示す。
【
図10】劣化させたリチウムイオン電池の容量と電圧の関係を示す。
【
図11】劣化したリチウムイオン電池の蓄電電気量と充電時に発熱に転じる電圧の関係を示す。
【
図12】劣化により蓄電量が異なるリチウムイオン電池の充放電曲線を示す。
【
図13】放電曲線の傾きを増加させる電圧と発熱に転じる電圧の関係を示す。
【
図14】リチウムイオン電池の内部抵抗が変化する環境における充放電曲線を示す。
【
図15】リチウムイオン電池における電池温度、充電状態、および内部抵抗の関係を示す。
【
図16】リチウムイオン電池に流れる電流の変化を示す。
【
図17】リチウムイオン電池の内部抵抗の変化を示す。
【
図18】リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する方法を実施するフローチャートである。
【
図19】本発明の一実施形態に係る安全状態検知システムの一例である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る蓄電装置の一例である。
【
図21】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。
【
図22】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。
【
図23】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。
【
図24】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。
【
図25】本発明の一実施形態に係る安全状態検知装置のハードウェア構成の一例である。
【
図26】本発明の一実施形態に係る安全状態検知装置の機能構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
図18は、リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する方法を実施するフローチャートである。
【0010】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法(以下、安全状態検知方法または検知方法という場合がある)は、リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する方法である。
【0011】
発明者は、実運用中のリチウムイオン二次電池が過充電された際に電池内部が吸熱状態から発熱状態になる発熱ポイントがリチウムイオン二次電池の劣化に依存することを発見し、この発熱ポイントからリチウムイオン二次電池の不安全状態を予測する方法を見出した。
【0012】
具体的には、電解液にメタクリル酸化合物を含まないリチウムイオン電池セルは、過充電において充電量が170%を超えたのちに電池表面温度が増加するとともに電池内部でガス発生して密閉状態を破壊した結果、放電できない(
図1)。
【0013】
一方、電解液にメタクリル酸化合物を含むリチウムイオン電池セルは、過充電時の電圧増加が見られず、ガス発生を起こさない。250%の過充電後も放電することができ、放電容量が得られる(
図2)。
【0014】
電解液にメタクリル酸化合物を含むリチウムイオン電池セルは、メタクリル酸化合物を含まない場合よりも早いタイミングで、具体的には過充電時の充電量が130%付近から電池表面温度が増加することから、ガス発生していなくても電池内部で酸化反応が起こっていることが理解される。
【0015】
ただし、リチウムイオン二次電池における充放電可能な電気容量は、電池電圧が同じでも、電池のサイクル数の増加によって減少し、電池内の副反応や自己放電により正極と負極の充電状態がずれることによっても減少する(
図3~
図5)。
【0016】
そこで、リチウムイオン二次電池の充放電容量と電池電圧の関係から、過充電領域での発熱ポイントを使用電圧範囲中に検知できないかを検証した(
図6)。
【0017】
一般に、リチウムイオン二次電池では、充電によって、Liの化学量論組成が小さくなると、Li1-xMО2の結晶状態を保てずにОを放出することが知られている。このことから、過充電領域では、正極での酸化(発熱)では、正極活物質Li1-xMО2の酸化または電解質(LiPF6やカーボネート溶媒)の酸化により、酸素が放出され、放出した酸素により負極が酸化(発熱)するものと考えられる。
【0018】
また、リチウムイオン二次電池では、正負極の酸化で発熱し、還元で吸熱し、それらの総和で電池温度が増減する。なお、本実施形態では、充電で吸熱し、放電で発熱するリチウムイオン二次電池を用いた(
図7)。
【0019】
本実施形態では、対象となるリチウムイオン二次電池を4.8Vで充放電したところ、充電(吸熱)中に4.64Vを超えたときに、電池温度が増加に転じ、活物質の充電反応による酸化とは別の酸化が存在することを確認した(
図8)。
【0020】
さらに、下記式(1)から、対象リチウムイオン電池の充電電圧と不可逆電気量の関係を示す(
図9)。
(充電電気量-放電電気量)/放電電気量×100・・・(1)
【0021】
なお、上記式(1)中、(充電電気量-放電電気量)は、充電反応以外に起きた反応(副反応)のモル数に依存し、放電電気量は、蓄電された充電反応のモル数に依存する。
図9は、矢印で示されるように、充電反応でない別の反応が含まれていることを示し、この部分が電池の温度増加に関与していると考えられる。
【0022】
また、電池の劣化によって、放電末期時に電圧の傾きの絶対値が大きく変化し始める電圧が異なることを確認した(
図10)。なお、
図10において、TypeAは、未使用セルである。TypeBは、40℃、4.2V~1.0Vの充放電による劣化後のセルである。TypeCは、60℃、4.2V~1.0Vの充放電による劣化後のセルである。
【0023】
また、劣化した電池の蓄電電気量と充電時に発熱に転じる電圧との間には相関関係があることが分かった(
図11)。この相関関係から、電池に劣化を与えるストレス(例えば、繰返し充放電)が変わっても相関関係にあるか、電圧は、劣化によって変わるため、電極電位を推定できないか、または使用範囲での測定値で安全ポイントが検知できないか、検証した。
【0024】
本実施形態では、劣化により蓄電量が異なったリチウムイオン電池の充放電曲線から、安全ポイントを検知する(
図12)。具体的には、電池蓄電量と放電曲線の一次微分係数の増大ポイントと過充電温度増加ポイントの相関関係を利用して、放電曲線から過充電時の不安全状態を予測する(
図13)。
【0025】
また、本実施形態では、リチウムイオン電池の内部抵抗が変化する環境における充放電曲線を作成した(
図14)。計測されるリチウムイオン二次電池の電池電圧は、下記式(2)から得られる。
[(計測される)電池電圧]=[(電圧降下を排除した)電極電位差]±iR・・・(2)
(但し、+iは充電、-iは放電を示す)
【0026】
ここで、電圧降下は、内部抵抗Rを持つリチウムイオン二次電池に電流iを流したときのリチウムイオン二次電池の電圧は、電圧の高い部位(+端子)から電圧の低い部位(-端子)に向かって外部回路に順方向に電流を流す場合(放電する場合)には、電気化学デバイスの平衡電位からiR分だけ電圧が降下することを示す。-端子から+端子に向かって外部回路に逆方向に電流を流す場合(充電する場合)には、iR分だけ過電圧となる。
【0027】
また、
図15は、リチウムイオン電池における電池温度、充電状態、および内部抵抗の関係を示す。
図16は、リチウムイオン電池に流れる電流の変化を示す。
図17は、
図15、
図16から得られた、リチウムイオン電池の内部抵抗の変化を示す。
図17から、リチウムイオン二次電池の内部抵抗は、時間が経過しても変化しにくく、リチウムイオン二次電池の電気容量が高くなると略一定となることが判る。
【0028】
本発明は、このような知見から得られたものである。
【0029】
図18は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の安全状態を検知する方法(以下、安全状態検知方法という)を実施するフローチャートである。本実施形態の安全状態検知方法では、まず、リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数(放電電圧微分係数)の絶対値を算出する(
図18、ステップS1)。
【0030】
本実施形態の安全状態検知方法で用いられるリチウムイオン二次電池は、1セルまたは2セル以上の直列組電池を備える。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、流れる電流が経過時間と共に変化するものであり、使用済みのリチウムイオン二次電池であってもよい。ここで、使用済みとは、少なくとも一度は実質的に使用されたものであり、再使用が可能なものを意味する。
【0031】
リチウムイオン二次電池は、電解液として非プロトン性の有機溶媒にイオン導電性の電解質溶液(例えば、リチウム塩等を溶解させ電解液)を使用する非水系電解質電池の1種である。
【0032】
本実施形態において、リチウムイオン二次電池の種類は、限定されないが、好ましくは、正極に使用される正極活物質にマンガンを含んだリチウム遷移金属酸化物を含有し、負極が炭素材料で構成されたリチウムイオン二次電池が用いられる。このリチウムイオン二次電池では、正極でリチウムイオンが脱離、吸蔵され、負極でリチウムイオンが挿入、脱離され、充放電が行われる。
【0033】
リチウムイオン二次電池は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・脱離し得るカーボン材料が用いられ、正極活物質としてLiCoO2,LiNiO2,LiMn2O4、LiFeO2などのリチウム含有金属酸化物が用いられる。
【0034】
本実施形態において、リチウムイオン二次電池の正極活物質は、特に限定されないが、LixMO2(ただし、Mは遷移金属、リチウムイオン二次電池を3.8Vまで充電したときにx<0.5となる)を含有することが好ましい。
【0035】
本明細書において、電圧降下分の電圧は、リチウムイオン二次電池の電圧から、リチウムイオン二次電池に流れる電流とリチウムイオン二次電池の内部抵抗との積を差し引いたものである。
【0036】
放電曲線は、リチウムイオン二次電池の蓄電電気量がX(Ah)のとき、電圧降下分の電圧は、リチウムイオン二次電池に流れる電流の絶対値がX(A)以上の条件を満たす場合に、放電曲線を更新する(ただし、Xは正の実数である)ことが好ましい。
【0037】
放電曲線の微分係数の絶対値は、放電時の電圧変化の傾きを示す。
【0038】
なお、本実施形態の安全状態検知方法では、放電電圧微分係数の絶対値を算出する前に、安全状態検知方法を実施するための条件または得られた結果を画面(図示せず)に表示してもよい。また、得られた放電電圧微分係数の絶対値は、メモリー(図示せず)に入出力可能に記録してもよい。
【0039】
本実施形態の安全状態検知方法では、次に、微分係数の絶対値が急激に増加し始めた(つまり、放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きい)ときの第1の電池電圧を求める。具体的には、ステップS1で算出した放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値より大きいか否かを判定する(
図18、ステップS2)。
【0040】
また、放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値より大きいと判定した場合は、微分係数の絶対値が急激に増加し始めた(つまり、放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値よりも大きい)ときの第1の電池電圧を求める。具体的には、第1の電池電圧として、放電時微分係数増大電圧V
dcpを決定する(
図18、ステップS3)。放電時微分係数増大電圧V
dcpは、上述の放電曲線の一次微分係数の増大ポイントに対応する。
【0041】
なお、急激に増加し始めた微分係数の絶対値は、急激に増加し始める直前の微分係数の絶対値の1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.8倍以上、更に好ましくは2.0倍以上である。
【0042】
例えば、リチウムイオン二次電池が満充電から放電を開始して空になるまでの時間を100としたとき、当該時間を100分割した時間間隔でサンプリングした場合のn番目とn+1番目の放電電圧微分係数の絶対値を比較して、n番目の放電電圧微分係数の絶対値よりもn+1番目の放電電圧微分係数の絶対値が1.5倍(好ましくは1.8倍、更に好ましくは2.0倍)になっていれば、急減に増加したと判定する。
【0043】
つまり、放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いは、ステップ1S1で算出した放電電圧微分係数の絶対値よりも1つ前に算出した放電電圧微分係数の絶対値から、ステップ1S1で算出した放電電圧微分係数の絶対値へ、の増大の度合いである。放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いの閾値は、1.5倍が好ましく、より好ましくは1.8倍、更に好ましくは2.0倍である。
【0044】
また、ステップS2で、放電電圧微分係数が閾値以下であると判定した場合は、ステップS1に戻る。
【0045】
次に、ステップS3で決定した第1の電池電圧に対応して、リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定する。具体的には、第2の電池電圧として不安全予兆ポイントV
USPを算出する(
図18、ステップS3)。不安全予兆ポイントV
USPは、上述の過充電温度増加ポイント(過充電領域での発熱ポイント)に対応する。
【0046】
第2の電池電圧(不安全予兆ポイントVUSP)は、例えば、下記式(3)で示されるモデル式に第1の電池電圧(放電時微分係数増大電圧Vdcp)を代入することで、見積もられる。
VUSP=-0.2310Vdcp+5.1957・・・(3)
【0047】
なお、VUSPを表す近似式は、リチウムイオン電池の種類、設計によって異なり、ある特定のリチウムイオン電池について、劣化が異なるセルの過充電時に吸熱から発熱に転じる電圧と放電末期時に電圧の傾きの絶対値が大きく変化し始める電圧を調べることによって定義される。
【0048】
次に、ステップS4で得られた第2の電池電圧(不安全予兆ポイントV
USP)に基づいて、リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する。具体的には、リチウムイオン二次電池の安全レベルを算出し、リチウムイオン二次電池の安全レベルをA、B、Cでランク分けする(
図18、ステップS5)。
【0049】
ランク分けの閾値は、例えば、ランクAは「現在、安全」となる条件[V
USP>β
A(β
A=4.60V)]、ランクBは「近未来に不安全となる可能性あり」となる条件[V
USP>β
B(β
B=4.57V)]、ランクCは「不安全事象が発生する可能性大、使用停止し電池交換が必要」となる条件[V
USP>β
C(β
C=4.55V)]とし、ランクを判定する(
図18、ステップS6)。
【0050】
ステップS6で、ランクの判定がAの場合は、ステップS1に戻り、放電電圧微分係数)の絶対値を算出する。ランクの判定がBの場合は、ステップS7に進んで、リチウムイオン二次電池が「不安全予兆レベル」と判定し、さらにステップS1に戻り、放電電圧微分係数)の絶対値を算出する。ランクの判定がBの場合は、ステップS8に進んで、リチウムイオン二次電池が「継続使用不可レベル」と判定し、安全状態検知方法の実施を終了する。
【0051】
なお、本実施形態の安全状態検知方法では、得られた放電電圧微分係数の絶対値、第1の電池電圧(放電時微分係数増大電圧Vdcp)、第2の電池電圧(不安全予兆ポイントVUSP)、ランク分けの閾値、安全レベルの判定結果は、画面(図示せず)に表示してもよい。
【0052】
また、得られた放電電圧微分係数の絶対値、第1の電池電圧(放電時微分係数増大電圧Vdcp)、第2の電池電圧(不安全予兆ポイントVUSP)、ランク分けの閾値、安全レベルの判定結果は、メモリー(図示せず)に入出力可能に記録してもよい。
【0053】
また、第1の電池電圧に基づいて、リチウムイオン二次電池の蓄電可能量を予測することができる。具体的には、第1の電池電圧(放電時微分係数増大電圧Vdcp)が高い程、リチウムイオン二次電池の放電容量が多いと判定する。
【0054】
本実施形態の安全状態検知方法は、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)、記憶装置、およびキーボードなどの外部機器からの信号を受けるための入力インターフェース等を有するコンピュータで制御されてもよい。
【0055】
本実施形態の安全状態検知方法では、上述のように、リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数の絶対値が急激に増加し始めたときの第1の電池電圧を求める。さらに、この第1の電池電圧に対応する、リチウムイオン二次電池の過充電時の電池内部で生じる酸化熱が増加し始める第2の電池電圧を決定する。そして、この決定した第2の電池電圧に基づいて、リチウムイオン二次電池の安全状態を検知する。
【0056】
これにより、リチウムイオン二次電池の実運用における電圧範囲内で過充電された際に電池内部が吸熱状態から発熱状態になる発熱ポイントをリチウムイオン二次電池が劣化に依存する安全ポイントとしてとらえることができる。そのため、本実施形態によれば、実運用中のリチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を検知することができるので、リチウムイオン二次電池の交換時期等を予測することができる。
【0057】
本実施形態の安全状態検知方法では、上述のように、急激に増加し始めた微分係数の絶対値が、急激に増加し始める直前の微分係数の絶対値の1.5倍以上であることで、リチウムイオン二次電池の過充電時における発熱ポイントを正確にとらえることができる。そのため、本実施形態によれば、リチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を精度高く検知することができる。
【0058】
本実施形態の安全状態検知方法では、上述のように、電圧降下分の電圧が、リチウムイオン二次電池の電圧から、リチウムイオン二次電池に流れる電流とリチウムイオン二次電池の内部抵抗との積を差し引いたものである。これにより、実運用中のリチウムイオン二次電池であっても、過充電時における発熱ポイントを正確にとらえることができる。そのため、リチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を精度高く検知することができる。
【0059】
本実施形態の安全状態検知方法では、上述のように、リチウムイオン二次電池の蓄電電気量がX(Ah)のとき、電圧降下分の電圧は、リチウムイオン二次電池に流れる電流の絶対値がX(A)以上の条件を満たす場合に、放電曲線を更新する(ただしXは正の実数)。これにより、リチウムイオン二次電池のセル数や放電容量、劣化状態等の条件に応じて、発熱ポイントの基になる放電曲線を作り変えることができる。
【0060】
本実施形態の安全状態検知方法では、上述のように、第1の電池電圧に基づいて、リチウムイオン二次電池の蓄電可能量を予測することで、実運用中のリチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆とともに現状の電池性能を把握することができる。
【0061】
本実施形態の安全状態検知方法では、上述のように、リチウムイオン二次電池の正極活物質が、LixMO2(ただし、Mは遷移金属、リチウムイオン二次電池を3.8Vまで充電したときにx<0.5となる)を含有する。これにより、発熱ポイントの基になる放電曲線がきれいになるため(放電曲線が多段になりにくいため)、放電曲線の微分係数の絶対値を正確に算出することができる。
【0062】
本実施形態の安全状態検知方法では、上述のように、リチウムイオン二次電池が使用済みのリチウムイオン二次電池であっても、実運用開始時に不安全状態の予兆が検知できるため、使用済みリチウムイオン二次電池のリサイクルが可能になる。このような観点から、本実施形態は、脱炭素社会ないし循環型社会を構築し、炭素中立(カーボンニュートラル)や持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)の達成に寄与し得る。
【0063】
本実施形態の安全状態検知方法は、上述の効果を利用することにより、各種の電源に用いることができる。すなわち、本実施形態の安全状態検知方法により、電源を構成するリチウムイオン二次電池の安全状態を検知することができる。そのため、実運用中の電源を構成するリチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を検知することができるので、電源におけるリチウムイオン二次電池の交換時期等を予測することができる。
【0064】
また、本実施形態の安全状態検知方法におけるリチウムイオン二次電池を備える電源は、種々の用途に用いることができる。電源の用途としては、例えば、駆動装置、昇降装置、電力制御装置等が挙げられる。
【0065】
駆動装置としては、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両;エレベータ装置などの昇降装置などが挙げられる。
【0066】
車両の場合は、例えば、本実施形態の安全状態検知方法におけるリチウムイオン二次電池を備える電源を、内燃機関およびモーターで駆動するハイブリッド電気自動車に搭載する。搭載された電源は、ハイブリッド電気自動車において、エンジン始動、アイドリングストップ後のエンジン再始動、加速時の電力供給、およびブレーキによる電力回生のための電源として機能し得る。
【0067】
なお、ハイブリッド電気自動車は、本実施形態の安全状態検知方法におけるリチウムイオン二次電池を備える電源が用いられる駆動装置の一例である。
【0068】
また、昇降装置の場合は、例えば、本実施形態の安全状態検知方法におけるリチウムイオン二次電池を備える電源を、エレベータ装置に搭載する。搭載された電源は、エレベータ装置おいて、上下運動および搭載重量によってエネルギー消費とエネルギー発生が入れ替わる際の電力変動を緩和するための電源として搭載することができる。
【0069】
なお、エレベータ装置は、本実施形態の安全状態検知方法におけるリチウムイオン二次電池を備える電源が用いられる駆動装置の他の一例である。
【0070】
本実施形態では、実運用中のリチウムイオン二次電池が駆動装置に用いられる電源を構成する場合でも、該リチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を検知することができる。そのため、電源におけるリチウムイオン二次電池の交換時期等を予測することができる。
【0071】
電力制御装置の場合は、例えば、本実施形態の安全状態検知方法におけるリチウムイオン二次電池を備える電源を電力バランス調整装置などに搭載する。搭載された電源は、電力バランス調整装置において、系統電力の変動を緩和するための電源、または太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる発電電力と電力消費の変動を緩和するための電源として機能し得る。
【0072】
なお、電力バランス調整装置は、本実施形態の安全状態検知方法におけるリチウムイオン二次電池を備える電源に用いられる電力制御装置の一例である。本実施形態では、実運用中のリチウムイオン二次電池が電力バランス調整装置に用いられる電源を構成する場合でも、該リチウムイオン二次電池の不安全状態の予兆を検知することができる。そのため、電源におけるリチウムイオン二次電池の交換時期等を予測することができる。
【0073】
以下、上述したリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を実行することができる安全状態検知装置13、安全状態検知システム1、蓄電装置20について説明する。
【0074】
[安全状態検知装置、安全状態検知システム]
図19は、本発明の一実施形態に係る安全状態検知システム1の一例である。安全状態検知システム1は、リチウムイオン二次電池11と、電圧測定器12と、コンピュータ(安全状態検知装置)13と、二次電池制御機器(スイッチ)14と、表示機器15と、を含むことができる。以下、それぞれについて説明する。
【0075】
リチウムイオン二次電池11は、検知対象(つまり、安全状態が検知される対象となるリチウムイオン二次電池)である。
【0076】
電圧測定器12は、リチウムイオン二次電池11の電圧を測定する。
【0077】
コンピュータ(安全状態検知装置)13は、上述したリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を実行する。コンピュータ(安全状態検知装置)13は、1つまたは複数のコンピュータから構成されてよい。なお、コンピュータ(安全状態検知装置)13は、集積回路で実装されてもよい。
【0078】
二次電池制御機器(スイッチ)14は、リチウムイオン二次電池11を制御する機器(スイッチ)である。
【0079】
表示機器15は、リチウムイオン二次電池11の安全状態等を表示する機器である。なお、コンピュータ(安全状態検知装置)13が表示機器15の機能を備えてもよい。
【0080】
[蓄電装置]
図20は、本発明の一実施形態に係る蓄電装置20の一例である。蓄電装置(電池パックとも呼ばれる)20は、リチウムイオン二次電池21と、保護回路22と、を含むことができる。以下、それぞれについて説明する。
【0081】
リチウムイオン二次電池21は、検知対象(つまり、安全状態が検知される対象となるリチウムイオン二次電池)である。
【0082】
保護回路22は、リチウムイオン二次電池21に実装されている回路であり、上述したリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を実行する。
【0083】
以下、上述した安全状態の検知の対象となるリチウムイオン二次電池を電源装置として利用する例について説明する。
【0084】
図21は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。例えば、駆動装置(例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車などの車、電車、エレベータなど)31は、上述したリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を実行する蓄電装置20を備える。
【0085】
図22は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。
図22に示されるように、駆動装置31と蓄電装置20を別々の装置で実装してもよい。
【0086】
図23は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。例えば、電力制御装置(例えば、エレベータを制御するコントローラなど)32は、上述したリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を実行する蓄電装置20を備えた駆動装置31を制御する。
【0087】
図24は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の用途の一例である。例えば、電力バランス調整装置33は、上述したリチウムイオン二次電池の安全状態検知方法を実行する蓄電装置20を、系統電力の変動を緩和するための電源、または、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる発電電力と電力消費の変動を緩和するための電源、として利用することができる。
【0088】
[ハードウェア構成]
図25は、本発明の一実施形態に係る安全状態検知装置13のハードウェア構成の一例である。
【0089】
図25に示されているように、安全状態検知装置13は、コンピュータによって構築されており、
図25に示されているように、CPU101、ROM102、RAM103、HD104、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ105、ディスプレイ106、外部機器接続I/F(Interface)107、ネットワークI/F108、データバス109、キーボード110、ポインティングデバイス111、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ113、メディアI/F115を備えている。
【0090】
これらのうち、CPU101は、安全状態検知装置13全体の動作を制御する。ROM102は、IPL等のCPU101の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される。HD104は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ105は、CPU101の制御にしたがってHD104に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。ディスプレイ106は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像等の各種情報を表示する。外部機器接続I/F107は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F108は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン109は、
図25に示されているCPU101等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0091】
また、キーボード110は、文字、数値、各種指示等の入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス111は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動等を行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ113は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW112に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F115は、フラッシュメモリ等の記録メディア114に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0092】
[機能構成]
図26は、本発明の一実施形態に係る安全状態検知装置13の機能構成の一例である。安全状態検知装置13は、第1電池電圧算出部1001と、第2電池電圧算出部1002と、判定部1003と、を備えることができる。また、安全状態検知装置13は、プログラムを実行することで、第1電池電圧算出部1001、第2電池電圧算出部1002、判定部1003、として機能することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0093】
第1電池電圧算出部1001は、第1の電池電圧(放電時微分係数増大電圧Vdcp)を算出する。
【0094】
具体的には、第1電池電圧算出部1001は、リチウムイオン二次電池の電圧降下分の電圧を除外した放電曲線の微分係数(放電電圧微分係数)の絶対値を算出する(なお、上述したように、電圧降下分の電圧は、リチウムイオン二次電池の電圧から、リチウムイオン二次電池に流れる電流とリチウムイオン二次電池の内部抵抗との積を差し引いたものである)。第1電池電圧算出部1001は、算出した放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値より大きいか否かを判定する。放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値より大きいと判定された場合には、第1電池電圧算出部1001は、放電電圧微分係数の絶対値が急激に増加し始めたとき(つまり、放電電圧微分係数の絶対値の増大の度合いが閾値より大きいと判定されたとき)の第1の電池電圧(放電時微分係数増大電圧Vdcp)を求める。なお、放電時微分係数増大電圧Vdcpは、上述の放電曲線の一次微分係数の増大ポイントに対応する。
【0095】
第2電池電圧算出部1002は、第2の電池電圧(不安全予兆ポイントVUSP)を算出する。
【0096】
具体的には、第2電池電圧算出部1002は、例えば、下記式(3)で示されるモデル式に第1の電池電圧(放電時微分係数増大電圧Vdcp)を代入することで、第2の電池電圧(不安全予兆ポイントVUSP)を算出することができる。なお、不安全予兆ポイントVUSPは、上述の過充電温度増加ポイント(過充電領域での発熱ポイント)に対応する。
VUSP=-0.2310Vdcp+5.1957・・・(3)
【0097】
なお、上述したように、VUSPを表す近似式は、リチウムイオン電池の種類、設計によって異なり(上記式(3)に限定されず)、ある特定のリチウムイオン電池について、劣化が異なるセルの過充電時に吸熱から発熱に転じる電圧と放電末期時に電圧の傾きの絶対値が大きく変化し始める電圧を調べることによって定義される。
【0098】
判定部1003は、第2の電池電圧(不安全予兆ポイントVUSP)に基づいて、リチウムイオン二次電池の安全状態を判定する。
【0099】
例えば、判定部1003は、リチウムイオン二次電池の安全レベルを算出し、リチウムイオン二次電池の安全レベルをA、B、Cでランク分けする。ランク分けの閾値は、例えば、ランクAは「現在、安全」となる条件[VUSP>βA(βA=4.60V)]、ランクBは「近未来に不安全となる可能性あり」となる条件[VUSP>βB(βB=4.57V)]、ランクCは「不安全事象が発生する可能性大、使用停止し電池交換が必要」となる条件[VUSP>βC(βC=4.55V)]とし、ランクを判定する。判定部1003は、判定の結果を表示してもよいし、メモリに記憶させてもよい。
【0100】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 安全状態検知システム
11 リチウムイオン二次電池
12 電圧測定器
13 コンピュータ(安全状態検知装置)
14 二次電池制御機器(スイッチ)
15 表示機器
20 蓄電装置
21 リチウムイオン二次電池
22 保護回路
31 駆動装置
32 電力制御装置
33 電力バランス調整装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 HD
105 HDDコントローラ
106 ディスプレイ
107 外部機器接続I/F
108 ネットワークI/F
109 バス
110 キーボード
111 ポインティングデバイス
112 DVD-RW
113 DVD-RWドライブ
114 記録メディア
115 メディアI/F
1001 第1電池電圧算出部
1002 第2電池電圧算出部
1003 判定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】