(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138368
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】光電変換素子用材料、有機薄膜、光電変換素子及び縮合環化合物
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20230922BHJP
C07D 213/61 20060101ALI20230922BHJP
C07D 241/42 20060101ALI20230922BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20230922BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230922BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230922BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20230922BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L31/10 A
C07D213/61 CSP
C07D241/42
C07D401/14
H10K50/15
H10K85/60
H10K39/32
H01L27/146 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027623
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2022043039
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏亮
(72)【発明者】
【氏名】北國 智子
(72)【発明者】
【氏名】坂部 将仁
(72)【発明者】
【氏名】新井 信道
(72)【発明者】
【氏名】岡田 壮史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰裕
【テーマコード(参考)】
3K107
4C055
4C063
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107CC11
3K107DD71
3K107DD78
4C055AA01
4C055BA01
4C055BA02
4C055BA03
4C055BA39
4C055BA59
4C055CA01
4C055CA02
4C055CA08
4C055CA59
4C055DA01
4C055DA08
4C055EA01
4C063AA03
4C063BB01
4C063CC34
4C063DD12
4C063EE10
4M118AA03
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA14
4M118CB14
4M118CB20
4M118HA26
5F149AA01
5F149AB11
5F149BA30
5F149BB03
5F149FA02
5F149FA05
5F149XA01
5F149XA55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】正孔輸送能力に優れた光電変換素子を実現可能な光電変換素子用材料を提供する。
【解決手段】式(1)で表される縮合環化合物を含有する、光電変換素子用材料。
[式(1)中、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R
11(R
11は、水素原子又は置換基を表す。)を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、=N-R
21(R
21は、電子求引基を表す。)又は=C(R
22)
2(R
22は、水素原子又は電子求引基を表し、R
22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される縮合環化合物を含有する、光電変換素子用材料。
【化1】
[式(1)中、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R
11(R
11は、水素原子又は置換基を表す。)を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、=N-R
21(R
21は、電子求引基を表す。)又は=C(R
22)
2(R
22は、水素原子又は電子求引基を表し、R
22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。
R
1とR
2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。R
3とR
4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
1がC-R
11であるとき、Y
1におけるR
11とR
1とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
2がC-R
11であるとき、Y
2におけるR
11とR
2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
3がC-R
11であるとき、Y
3におけるR
11とR
3とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
4がC-R
11であるとき、Y
4におけるR
11とR
4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。]
【請求項2】
前記R21及び前記R22における前記電子求引基が、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、又は、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の基で置換された芳香族炭化水素基若しくは複素芳香族基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項3】
前記R1、前記R2、前記R3及び前記R4が、水素原子又は電子求引基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項4】
前記R1、前記R2、前記R3及び前記R4が、水素原子、フルオロアルキル基、又は、電子求引基で置換された複素芳香族基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項5】
前記R1、前記R2、前記R3及び前記R4のうち少なくとも1つが水素原子以外の基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項6】
前記Y1及び前記Y2が同じ基であり、前記Y3及びY4が同じ基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項7】
前記X
1及び前記X
2が、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)、(2-9)、(2-10)、(2-11)、(2-12)、(2-13)又は(2-14)で表される基である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【化2】
【請求項8】
前記縮合環化合物が、下記式(A-1)、(A-1)、(A-1)、(A-1)又は(A-5)で表される化合物である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【化3】
【請求項9】
光電変換素子用正孔輸送促進材である、請求項1に記載の光電変換素子用材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光電変換素子用材料を含む、有機薄膜。
【請求項11】
第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に配置された複数の有機層と、を備え、
前記有機層が、少なくとも光電変換層、正孔輸送層及び正孔輸送促進層を含み、
前記正孔輸送促進層が、請求項1~9のいずれか一項に記載の光電変換素子用材料を含有する、光電変換素子。
【請求項12】
式(1)で表される縮合環化合物。
【化4】
[式(1)中、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子、フルオロアルキル基、又は、電子求引基を有する複素芳香族基を表し、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R
11(R
11は、水素原子又は置換基を表す。)を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、=N-R
21(R
21は、電子求引基を表す。)又は=C(R
22)
2(R
22は、水素原子又は電子求引基を表し、R
22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。
但し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち、少なくとも1つは水素原子以外の基である。]
【請求項13】
前記R21及び前記R22における前記電子求引基が、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、又は、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の基で置換された芳香族炭化水素基若しくは複素芳香族基である、請求項12に記載の縮合環化合物。
【請求項14】
前記Y1及び前記Y2が同じ基であり、前記Y3及びY4が同じ基である、請求項12に記載の縮合環化合物。
【請求項15】
前記X
1及び前記X
2が、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)、(2-9)、(2-10)、(2-11)、(2-12)、(2-13)又は(2-14)で表される基である、請求項12に記載の縮合環化合物。
【化5】
【請求項16】
下記式(A-1)、(A-1)、(A-1)、(A-1)又は(A-5)で表される、請求項12に記載の縮合環化合物。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子用材料、有機薄膜、光電変換素子及び縮合環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子用の光電変換素子として、有機光電変換素子の開発が期待されている。例えば、特許文献1には、ベンゾチエノベンゾチオフェン骨格を有する化合物を含む撮像素子用光電変換素子用材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光電変換素子には、高い正孔輸送能力が求められている。特に、撮像素子用の光電変換素子では、光電変換層で生成したキャリアを電極に運ぶ速度が遅いと、動画撮影時の残像の原因となる。
【0005】
本発明は、正孔輸送能力に優れた光電変換素子を実現可能な光電変換素子用材料を提供することを目的とする。また本発明は、上記光電変換素子用材料を含む有機薄膜及び光電変換素子を提供することを目的とする。更に本発明は、上記光電変換素子用材料として有用な縮合環化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の環骨格を有する縮合環化合物が、光電変換素子における正孔輸送促進材として有用であり、当該縮合環化合物の使用によって、正孔輸送能力に優れた光電変換素子を実現し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の第1の態様は、式(1)で表される縮合環化合物を含有する、光電変換素子用材料である。
【化1】
[式(1)中、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R
11(R
11は、水素原子又は置換基を表す。)を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、=N-R
21(R
21は、電子求引基を表す。)又は=C(R
22)
2(R
22は、水素原子又は電子求引基を表し、R
22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。
R
1とR
2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。R
3とR
4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
1がC-R
11であるとき、Y
1におけるR
11とR
1とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
2がC-R
11であるとき、Y
2におけるR
11とR
2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
3がC-R
11であるとき、Y
3におけるR
11とR
3とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
4がC-R
11であるとき、Y
4におけるR
11とR
4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。]
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る光電変換素子用材料を含む、有機薄膜である。
【0009】
本発明の第3の態様は、第一の電極と、第二の電極と、上記第一の電極及び上記第二の電極の間に配置された複数の有機層と、を備え、上記有機層が、少なくとも光電変換層、正孔輸送層及び正孔輸送促進層を含み、上記正孔輸送促進層が、第1の態様に係る光電変換素子用材料を含有する、光電変換素子である。
【0010】
本発明の第4の態様は、式(1)で表される縮合環化合物である。
【化2】
[式(1)中、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子、フルオロアルキル基、又は、電子求引基を有する複素芳香族基を表し、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R
11(R
11は、水素原子又は置換基を表す。)を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、=N-R
21(R
21は、電子求引基を表す。)又は=C(R
22)
2(R
22は、水素原子又は電子求引基を表し、R
22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。
但し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち、少なくとも1つは水素原子以外の基である。]
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正孔輸送能力に優れた光電変換素子を実現可能な光電変換素子用材料が提供される。また本発明によれば、上記光電変換素子用材料を含む有機薄膜及び光電変換素子が提供される。更に本発明によれば、上記光電変換素子用材料として有用な縮合環化合物を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】光電変換素子の積層構造の一例を示す概略断面図である。
【
図2】ホールオンリー素子の積層構造の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<縮合環化合物>
本実施形態の縮合環化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【化3】
【0015】
式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R11(R11は、水素原子又は置換基を表す。)を表す。X1及びX2は、それぞれ独立に、=N-R21(R21は、電子求引基を表す。)又は=C(R22)2(R22は、水素原子又は電子求引基を表し、R22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。
【0016】
R1とR2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。R3とR4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y1がC-R11であるとき、Y1におけるR11とR1とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y2がC-R11であるとき、Y2におけるR11とR2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y3がC-R11であるとき、Y3におけるR11とR3とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y4がC-R11であるとき、Y4におけるR11とR4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。これらの形成される環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であることが好ましく、芳香族炭素環であることがより好ましい。これらの環が有していてよい置換基としては、後述のR1、R2、R3及びR4における置換基と同じ基が例示できる。
【0017】
本実施形態の縮合環化合物は、特定の環骨格を有するため、光電変換素子における正孔輸送促進材として優れた機能を有する。このような効果が奏される理由として、以下の理由が考えられる。まず、本実施形態の縮合環化合物は、縮合環の中心骨格が歪んでおり、アモルファス性を有するため、有機層である正孔輸送層との密着性に優れた層を形成できる。また、本実施形態の縮合環化合物は、X1及びX2が電子求引基を含むため、LUMO準位が十分に低く、正孔輸送材料のHOMO準位との相互作用を引き起こす事が期待される。更に、X1及びX2が電子求引基であることによって電極を構成する金属との密着性に優れた層を形成する事も期待できる。すなわち、本実施形態の縮合環化合物によれば、正孔輸送層及び電極の両方との相互作用に優れる正孔輸送促進層を形成でき、正孔輸送層と電極との間の正孔の移動が顕著に促進される。
【0018】
なお、本明細書中、電子求引基は、水素原子と比較して、結合している原子側から電子を引きつけやすい置換基を示す。
【0019】
R1、R2、R3及びR4における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、フルオロアルキル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、含窒素芳香族基、電子求引基で置換された芳香族炭化水素基、電子求引基で置換された複素芳香族基等の電子求引基;アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、トルイル基、メシチル基、チエニル基、フルオレニル基等の電子供与基;ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等の共役系を伸長する基;ベンゾキノリニル基、ナフトキノリニル基、アントラキノリニル基、キノジメタニル基等の含キノイド基;ベンゾ縮環構造、ナフト縮環構造、アザベンゾ縮環構造等の隣り合う置換基が縮環を形成する基;などが挙げられ、正孔輸送能力に優れる点で電子求引基が好ましい。
【0020】
R1、R2、R3及びR4における電子求引基としては、例えば、フルオロ基(-F)、フルオロアルキル基、シアノ基(-CN)、ニトロ基(-NO2)、電子求引基(例えば、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の基)で置換された芳香族炭化水素基、電子求引基(例えば、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の基)で置換された複素芳香族基、等が挙げられる。
【0021】
フルオロアルキル基は、アルキル基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置換した基である。フルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。フルオロアルキル基の炭素数は、例えば1~18であってよく、1~16、1~12、1~10又は1~8であってもよい。フルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、パーフルオロプロパン-1-イル基、パーフルオロプロパン-2-イル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、パーフルオロヘキサン-1-イル基、パーフルオロヘキシル基、等が挙げられる。
【0022】
芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素から水素原子を一つ除いてなる一価の基を示す。芳香族炭化水素基の炭素数は、例えば6~30であってよく、好ましくは6~18である。芳香族炭化水素基は、単環の芳香族炭化水素基、2環以上の芳香環が連結した芳香族炭化水素基、又は、縮環の芳香族炭化水素基であってよい。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0023】
電子求引基で置換された芳香族炭化水素基は、上記芳香族炭化水素基の芳香環上の水素原子の一部又は全部を電子求引基で置換した基であってよい。電子求引基で置換された芳香族炭化水素基としては、例えば、下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)、(3-4)、(3-5)、(3-6)、(3-7)、(3-8)で表される基が挙げられる。なお、下記式中、R
Aは、電子求引基(例えば、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基又はニトロ基)を表し、R
Aが複数存在するとき、複数のR
Aは互いに同一でも異なっていてもよい。
【化4】
【0024】
複素芳香族基は、複素芳香族化合物から水素原子を一つ除いてなる一価の基を示す。複素芳香族基の炭素数は、例えば3~36であってよく、3~24又は3~12であってもよい。複素芳香族基は、単環の複素芳香族基、2環以上の芳香環が連結した複素芳香族基、又は、縮環の複素芳香族基であってよい。なお、複素芳香族基が複数の芳香環を有する場合、当該芳香環の少なくとも一つがヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含んでいればよい。複素芳香族基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、1,3,5-トリアジル基、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジン基、チアントレニル基等が挙げられる。複素芳香族基としては、ピリジル基、チエニル基、チアゾリル基、キノリニル基、ピラジル基、ピリミジル基、1,3,5-トリアジル基が好ましく、ピリジル基が特に好ましい。
【0025】
電子求引基で置換された複素芳香族基は、上記複素芳香族基の芳香環上の水素原子の一部又は全部を電子求引基で置換した基であってよい。電子求引基で置換された複素芳香族基としては、例えば、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)、(4-5)、(4-6)で表される基が挙げられる。なお、下記式中、R
Aは、電子求引基(例えば、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基又はニトロ基)を表し、R
Aが複数存在するとき、複数のR
Aは互いに同一でも異なっていてもよい。
【化5】
【0026】
本実施形態の縮合環化合物において、上記効果がより顕著に奏される観点から、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つが水素原子以外の基(好ましくは電子求引基)であることが好ましく、少なくとも2つが水素原子以外の基(好ましくは電子求引基)であることがより好ましい。
【0027】
一態様において、R1、R2、R3及びR4は、水素原子、フルオロアルキル基、又は、電子求引基で置換された複素芳香族基であってよい。
【0028】
Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R11を表す。本実施形態の縮合環化合物がR11を複数有する場合、複数のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
R11における置換基としては、R1、R2、R3及びR4における置換基と同じ基が例示できる。
【0030】
R11は、好ましくは水素原子又は電子求引基であり、より好ましくは水素原子である。
【0031】
Y1及びY2は、同じ基であることが好ましい。すなわち、例えばY1が窒素原子であるとき、Y2は窒素原子であることが好ましい。また、Y1がC-R11であるとき、Y2はC-R11であることが好ましい。
【0032】
Y3及びY4は、同じ基であることが好ましい。すなわち、例えばY3が窒素原子であるとき、Y4は窒素原子であることが好ましい。また、Y3がC-R11であるとき、Y4はC-R11であることが好ましい。
【0033】
本実施形態の縮合環化合物は、Y1及びY2が窒素原子若しくはC-R11であり、Y3及びY4がC-R11である、又は、Y1及びY2がC-R11であり、Y3及びY4が窒素原子若しくはC-R11であることが好ましい。
【0034】
X1及びX2は、それぞれ独立に、=N-R21(R21は、電子求引基を表す。)又は=C(R22)2(R22は、水素原子又は電子求引基を表し、R22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。複数存在するR22は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0035】
R21及びR22における電子求引基としては、R1、R2、R3及びR4における電子求引基と同じ基が例示できる。
【0036】
合成が容易となる観点から、X1及びX2は同じ基であることが好ましい。すなわち、X1及びX2は、両方が=N-R21、又は、両方が=C(R22)2であることが好ましい。上記効果がより顕著に得られる観点からは、X1及びX2は、両方が=C(R22)2であることがより好ましい。
【0037】
X
1及びX
2は、例えば、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)、(2-9)、(2-10)、(2-11)、(2-12)、(2-13)又は(2-14)で表される基であってよく、式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-7)、(2-10)又は(2-14)で表される基であることが好ましい。
【化6】
【0038】
本実施形態の縮合化合物としては、例えば、下記式(A-1)~(A-226)で示される化合物を例示することができ、(A-1)~(A-117)で表される化合物がさらに好ましく、(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)又は(A-5)で表される化合物がことさら好ましい。なお、本実施形態の縮合化合物は、以下に例示した化合物の限りではない。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0039】
〈縮合環化合物の製造方法〉
本実施形態の縮合環化合物の製造方法は特に限定されない。本実施形態の縮合環化合物は、例えば、式(B-1)で表される化合物と式(C-1)で表される化合物との反応(以下、反応(1-1))、又は、式(B-1)で表される化合物と式(C-2)で表される化合物との反応(以下、反応(1-2))により製造することができる。
【化32】
【化33】
【0040】
式中、R1、R2、R3、R4、Y1、Y2、Y3、Y4、R21及びR22は上記と同義である。
【0041】
反応(1-1)の反応条件は特に限定されず、例えば、慣用されているKnoevenagel反応の反応条件であってよい。
Knoevenagel反応の溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロアルカン;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア;ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール;等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点でクロロホルム、ジクロロメタン、THF、DMFが好ましい。
Knoevenagel反応を促進する目的で、アルミナ、シリカゲル、酸化マグネシウム等の固体酸;四塩化チタン、四塩化スズ、五塩化アンチモン等の金属塩化物;トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基;などを加えることができる。反応収率の点で有機塩基が好ましく、生成物の純度の点でピリジンがとりわけ好ましい。Knoevenagel反応による(1-1)の製造は、-80℃~300℃から適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率がよい点で-20℃~150℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0042】
反応(1-2)の反応条件は特に限定されず、例えば、非特許文献(Angewandte Chemie,1984年,23巻,447頁;Journal Of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,2016年,54巻, 1998頁)に示されているシアノイミン基を導入する反応、非特許文献(Pharma Chemica,2014年,6巻,288頁)に示されているパラトルエンスルホン酸などの脱水剤を用いてアリルイミン基を導入する反応、非特許文献(Chemical Comminucation,2011年,47巻,10942頁)に示されている四塩化チタンを用いてアリルイミン基を導入する反応等の反応条件であってよい。
【0043】
式(B-1)で表される化合物、式(C-1)で表される化合物及び式(C-2)で表される化合物は、公知の方法に基づいて合成してよく、市販品を用いてもよい。
【0044】
<光電変換素子用材料>
本実施形態の光電変換素子用材料は、上記の縮合環化合物を含有する。
【0045】
本実施形態の光電変換素子用材料は、光電変換素子における有機層(例えば、正孔輸送層と電極(第一の電極)との間に配置される正孔輸送促進層)を構成するための材料である。本実施形態の光電変換素子用材料を用いることで、正孔輸送能力に優れた光電変換素子を実現できる。
【0046】
上述の縮合環化合物が、光電変換素子における正孔輸送材として好適に機能することから、本実施形態の光電変換素子用材料は、正孔輸送促進層を構成するための材料として、特に好適に用いることができる。
【0047】
本実施形態の光電変換素子用材料は、上記縮合環化合物以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、従来公知の正孔輸送材料(例えば、後述の正孔輸送材料に例示した化合物)が挙げられる。
【0048】
本実施形態の光電変換素子用材料は、上記縮合環化合物を主成分とする材料であることが好ましく、上記縮合環化合物のみから構成されていてもよい。本実施形態の光電変換素子用材料において、上記縮合環化合物の含有量は、光電変換素子用材料の全量基準で、例えば50質量%以上であってよく、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0049】
本実施形態の光電変換素子用材料は、上記縮合環化合物を、公知の正孔輸送材料にドープしたものであってもよい。このとき、上記縮合環化合物の含有量は、光電変換素子用材料の全量基準で、例えば0.1~50質量%であってよく、0.1~10質量%又は0.1~5質量%であってもよい。
【0050】
<光電変換素子>
本実施形態の光電変換素子は、上述の光電変換素子用材料を含む。本実施形態の光電変換素子は、第一の電極と、第二の電極と、第一の電極及び第一の電極の間に配置された複数の有機層と、を備える。有機層は、少なくとも、光電変換層、正孔輸送層及び正孔輸送促進層を含み、正孔輸送促進層が、上述の光電変換素子用材料を含有する。なお、本実施形態の光電変換素子中の有機層は、それぞれを有機薄膜と見做すこともできる。
【0051】
本実施形態の光電変換素子の構成は特に限定されないが、例えば、以下の(i)~(v)の構成が挙げられる。
(i)第二の電極/光電変換層/正孔輸送層(電子ブロッキング層)/正孔輸送促進層/第一の電極
(ii)第二の電極/電子輸送層(正孔ブロッキング層)/光電変換層/正孔輸送層(電子ブロッキング層)/正孔輸送促進層/第一の電極
(iii)第二の電極/電子輸送層(正孔ブロッキング層)/光電変換層/電子ブロッキング層/正孔輸送層/正孔輸送促進層/第一の電極
(iV)第二の電極/電子輸送層/正孔ブロッキング層/光電変換層/電子ブロッキング層/正孔輸送層/正孔輸送促進層/第一の電極
【0052】
以下、本実施形態に係る光電変換素子を、上記(iii)の構成を例に挙げて、
図1を参照しながらより詳細に説明する。
図1は、本実施形態の光電変換素子の積層構造の一例を示す概略断面図である。
【0053】
図1の光電変換素子100は、基板1、電極2(第二の電極)、電子輸送層(正孔ブロッキング層)3、光電変換層4、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5、正孔輸送促進層6及び電極7(第一の電極)をこの順で備える。なお、本実施形態の光電変換素子は、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、他の層が追加されていてもよい。
【0054】
光電変換素子100では、透明な基板1及び電極2の下方から光が入射する。また、光電変換素子100は、光電変換層4で発生した正孔及び電子のうち、電子が電極2に移動し、正孔が電極7に移動するように、電圧が印加されてよい。すなわち、光電変換素子100は、下部の電極(電極2)を電子捕集電極とし、上部の電極(電極7)を正孔捕集電極としている。
【0055】
光電変換素子100は、正孔輸送促進層6に光電変換素子用材料を含む。
【0056】
以下、光電変換素子100を例に挙げて、各層の詳細について説明する。
【0057】
[基板1]
基板1は特に限定されず、例えば、ガラス板、石英板、プラスチック板等が挙げられる。基板1側から光が入射する構成の場合、基板1は入射する光の波長に対して高い透過性(例えば、透過率80%以上、好ましくは透過率90%以上)を有することが好ましい。
【0058】
[電極2]
基板1上には電極2が設けられている。
光が電極2を通過して、光電変換層に入射する構成の光電変換素子の場合、電極2は、入射する光の波長に対して高い透過性(例えば、透過率80%以上、好ましくは透過率90%以上)を有することが好ましい。
【0059】
電極2を構成する材料は特に限定されない。光透過性に優れる観点からは、電極2を構成する材料は、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、硫化亜鉛等の金属硫化物等であってよい。
【0060】
なお、電極7側のみから光が光電変換層に入射する構成の光電変換素子の場合、電極2の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の電極2を構成する材料は、例えば、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等であってよい。
【0061】
[電子輸送層(正孔ブロッキング層)3]
電極2と後述する光電変換層4との間には、電子輸送層(正孔ブロッキング層)3が設けられている。
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、光電変換層4で発生した電子を電極2へ輸送する役割と、光電変換層4で発生した正孔が電極2へ移動するのをブロックする役割とを有する。
【0062】
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、例えば、正孔ブロッキング性に特化した材料からなる光電変換層4と隣接する層と、電子輸送性に特化した材料からなる電極2に隣接する層と、を含む2層構造であってよい。
【0063】
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、従来公知の電子輸送材料を含有する層であってよい。従来公知の電子輸送材料としては、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン、N,N’-ジフェニル-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0064】
[光電変換層4]
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3と後述する正孔輸送層(電子ブロッキング層)5との間には、光電変換層4が設けられている。光電変換層4は、光電変換機能を有する材料を含む。
【0065】
光電変換層4は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0066】
一種の材料からなる単層構造の光電変換層としては、例えば、クマリン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、フタロシアニン及びその誘導体等の材料からなる光電変換層が挙げられる。
【0067】
二種以上の材料からなる単層構造の光電変換層としては、例えば、(i)クマリン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、並びに、フタロシアニン及びその誘導体からなる群より選択される第一の材料と、(ii)フラーレン及びその誘導体からなる群より選択される第二の材料とを含む光電変換層が挙げられる。当該光電変換層は、(iii)正孔輸送材料を更に含んでいてもよい。これらの材料からなる光電変換層4は、例えば、各材料の粉末を混合した混合粉末を用いた蒸着により形成してもよく、任意の割合で各材料を共蒸着することで形成してもよい。
【0068】
(i)クマリン誘導体の具体例としては、クマリン6、クマリン30等が挙げられる。キナクリドン誘導体の具体例としては、N,N-ジメチルキナクリドン等が挙げられる。フタロシアニン誘導体の具体例としては、ホウ素サブフタロシアニンクロリド、ホウ素サブナフタロシアニンクロリド(SubNC)等が挙げられる。
【0069】
(ii)フラーレン及びその誘導体の具体例としては、[60]フラーレン、[70]フラーレン、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル([60]PCBM)等が挙げられる。
【0070】
(iii)正孔輸送材料は、公知の正孔輸送材料であってよい。正孔輸送材料としては、例えば、芳香族第三級アミン化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、テトラセン化合物、ペンタセン化合物、フェナントレン化合物、ピレン化合物、ペリレン化合物、フルオレン化合物、カルバゾール化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピセン化合物、チオフェン化合物、ベンゾトリフラン化合物、ベンゾトリチオフェン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾジチオフェン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が挙げられる。これらの中でも、フルオレン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が好ましく、フルオレン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物がより好ましい。
【0071】
正孔輸送材料の具体例としては、9,9’-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7’-ジイル)ビス[9H-カルバゾール]、2,7-ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(DiPh-BTBT)、ベンゾ[1,2-b:3,4-b’:5,6-b’’]トリフラン化合物、ベンゾ[1,2-b:3,4-b’:5,6-b’’]トリチオフェン化合物、ナフト[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン、ナフト[2,3-b]ナフト[2’,3’:4,5]チエノ[2,3-d]チオフェン、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ビス[1]ベンゾチオフェン、ナフト[1,2-b:5,6-b’]ビス[1]ベンゾチオフェン、クリセノ[1,2-b:8,7-b’]ジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン、下記式(ic-1)で表される化合物、下記式(ic-2)で表される化合物等が挙げられる。
【化34】
【0072】
なお、上述の光電変換機能を有する材料は、光電変換層4のみに含有されていてもよく、光電変換層4以外の層にも含有されていてもよい。例えば、光電変換層4に隣接した層(電子輸送層(正孔ブロッキング層)3、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5)は、光電変換機能を有する材料を含有していてもよい。
【0073】
[正孔輸送層(電子ブロッキング層)5]
光電変換層4と後述する正孔輸送促進層6との間には、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5が設けられている。
【0074】
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、光電変換層4で発生した正孔を電極7側へ輸送する役割と、光電変換層4で発生した電子が電極7側へ移動するのをブロックする役割とを有する。
【0075】
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、例えば、電子ブロッキング性に特化した材料からなる光電変換層4と隣接する層と、正孔輸送性に特化した材料からなる正孔輸送促進層6に隣接する層と、を含む2層構造であってよい。
【0076】
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、従来公知の正孔輸送材料を含有する層であってよい。従来公知の正孔輸送材料の好ましい化合物及び具体例としては、光電変換層4の項目に記載した正孔輸送材料と同じものが挙げられる。
【0077】
[正孔輸送促進層6]
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5と後述する電極7との間には、正孔輸送促進層6が設けられている。
【0078】
正孔輸送促進層6は、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5から電極7への正孔の移動を促進する役割を有し、正孔輸送促進層6は、上述の光電変換素子用材料を含有する。
【0079】
[電極7]
正孔輸送促進層6上には電極7が設けられている。
電極7は、例えば金属電極又は透明電極であってよい。
電極7の材料は特に限定されず、例えば、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、金、銀、マグネシウム/銀混合物、アルミニウム、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等であってよい。
【0080】
電極7が透明電極である場合、電極7を構成する材料としては、電極2を構成する材料として例示した材料と同じ材料が例示できる。電極7を構成する材料は電極2を構成する材料と同一であっても異なっていてもよい。
【0081】
[各層の形成方法]
電極2及び電極7以外の各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて、更に結着樹脂、溶剤等)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法等の公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
【0082】
電極2及び電極7以外の各層の厚さは特に限定されず、状況に応じて適宜選択することができる。電極2及び電極7以外の各層の厚さは、通常は5nm以上5μm以下の範囲である。
【0083】
電極2及び電極7は、電極材料を、蒸着、スパッタリング等の方法によって薄膜化することにより形成することができる。
【0084】
電極2及び電極7がパターンを有する場合、例えば、所望の形状のマスクを介して蒸着、スパッタリング等を行うことでパターンを形成できる。また、蒸着、スパッタリング等によって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0085】
電極2及び電極7の厚さは、例えば1μm以下であってよく、10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0086】
電極2及び電極7は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えてもよい(逆型構造とも呼ばれる)。この場合、光が、電極7を通過して、光電変換層4に入射する構成光電変換素子となる。
【0087】
本実施形態の光電変換素子は、撮像素子、センサー用途、太陽電池等に用いることができる。
【0088】
本実施形態の光電変換素子は、撮像素子用光電変換素子として特に好適に用いることができる。本実施形態の光電変換素子を備えた撮像素子は、例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像素子、携帯電話等に内蔵された撮像素子等に適用することができる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0090】
例えば、本発明は、式(1)で表される縮合環化合物からなる光電変換素子用正孔輸送促進材に関するものであってよい。
【0091】
また、本発明は、上述の光電変換素子用材料を含有する、ホールオンリー素子に関するものであってよい。
【0092】
ホールオンリー素子の素子構成は特に限定されないが、例えば、以下の(a)又は(b)の構成が挙げられる。
(a)電極/正孔輸送層/正孔輸送促進層/電極
(b)電極/正孔注入層/正孔輸送層/正孔輸送促進層/電極
【0093】
ホールオンリー素子は、正孔輸送促進層に光電変換素子用材料を含むことが好ましい。なお、光電変換素子用材料は、ホールオンリー素子が備える複数の層に含まれていてもよい。
【0094】
以下、ホールオンリー素子を、上記(b)の構成を例に挙げて、
図2を参照しながらより詳細に説明する。
図2は、ホールオンリー素子の積層構造の一例を示す概略断面図である。
【0095】
図2のホールオンリー素子110は、基板11、電極12、正孔注入層13、正孔輸送層14、正孔輸送促進層15及び電極16をこの順で備える。なお、ホールオンリー素子は、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、他の層が追加されていてもよい。
【0096】
ホールオンリー素子110は、正孔輸送促進層15に光電変換素子用材料を含むことが好ましい。なお、光電変換素子用材料は、ホールオンリー素子110が備える複数の層に含まれていてもよい。
【0097】
以下、正孔輸送層14が光電変換素子用材料を含むホールオンリー素子110を例に挙げて、各層の詳細について説明する。
【0098】
[基板11]
基板11は特に限定されず、上述の光電変換素子における基板と同じものが例示できる。
【0099】
[電極12]
基板11上には電極12が設けられている。電極12としては、上述の光電変換素子における電極と同じものが例示できる。
【0100】
[正孔注入層13]
電極12と正孔輸送層14との間には、正孔注入層13が設けられている。
正孔注入層13は、電極12から正孔輸送層14への正孔の注入を促進する役割を有する。
【0101】
正孔注入層13は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0102】
正孔注入層13は、例えば、従来公知の正孔注入材料を含有する層であってよい。従来公知の正孔注入材料としては、例えば、酸化モリブデン、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(HATCN)等が挙げられる。
【0103】
[正孔輸送層14]
正孔注入層13と正孔輸送促進層15との間には、正孔輸送層14が設けられている。
正孔輸送層14は、正孔注入層13から運ばれた正孔を、電極16側へ輸送する役割を有する。
【0104】
正孔輸送層14は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0105】
正孔輸送層14は、従来公知の正孔輸送材料を含んでいてもよい。従来公知の正孔輸送材料の好ましい化合物及び具体例としては、上述の光電変換素子100における光電変換層4の項目に記載した正孔輸送材料と同じものが挙げられる。
【0106】
[正孔輸送促進層15]
正孔輸送層14と電極16との間には、正孔輸送促進層15が設けられている。
正孔輸送促進層15は、正孔輸送層14から電極16への正孔の移動を促進する役割を有し、正孔輸送促進層15は、上述の光電変換素子用材料を含有する。
【0107】
[電極16]
正孔輸送促進層15の上には電極16が設けられている。電極16としては、上述の光電変換素子における第一の電極と同じものが例示できる。
【0108】
[各層の形成方法]
電極12及び電極16以外の各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて、更に結着樹脂、溶剤等)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法等の公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
【0109】
電極12及び電極16以外の各層の厚さは特に限定されず、状況に応じて適宜選択することができる。電極12及び電極16以外の各層の厚さは、通常は5nm以上5μm以下の範囲である。
【0110】
電極12及び電極16は、電極材料を、蒸着、スパッタリング等の方法によって薄膜化することにより形成することができる。
【0111】
電極12及び電極16がパターンを有する場合、例えば、所望の形状のマスクを介して蒸着、スパッタリング等を行うことでパターンを形成できる。また、蒸着、スパッタリング等によって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0112】
電極12及び電極16の厚さは、例えば1μm以下であってよく、10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0113】
電極12及び電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えてもよい。
【0114】
本発明は、例えば、以下の[1]~[16]に関するものであってもよい。
[1]
式(1)で表される縮合環化合物を含有する、光電変換素子用材料。
【化35】
[式(1)中、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R
11(R
11は、水素原子又は置換基を表す。)を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、=N-R
21(R
21は、電子求引基を表す。)又は=C(R
22)
2(R
22は、水素原子又は電子求引基を表し、R
22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。
R
1とR
2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。R
3とR
4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
1がC-R
11であるとき、Y
1におけるR
11とR
1とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
2がC-R
11であるとき、Y
2におけるR
11とR
2とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
3がC-R
11であるとき、Y
3におけるR
11とR
3とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。Y
4がC-R
11であるとき、Y
4におけるR
11とR
4とは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は置換基を有していてもよい。]
[2]
前記R
21及び前記R
22における前記電子求引基が、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、又は、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の基で置換された芳香族炭化水素基若しくは複素芳香族基である、[1]に記載の光電変換素子用材料。
[3]
前記R
1、前記R
2、前記R
3及び前記R
4が、水素原子又は電子求引基である、[1]又は[2]に記載の光電変換素子用材料。
[4]
前記R
1、前記R
2、前記R
3及び前記R
4が、水素原子、フルオロアルキル基、又は、電子求引基で置換された複素芳香族基である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の光電変換素子用材料。
[5]
前記R
1、前記R
2、前記R
3及び前記R
4のうち少なくとも1つが水素原子以外の基である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の光電変換素子用材料。
[6]
前記Y
1及び前記Y
2が同じ基であり、前記Y
3及びY
4が同じ基である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の光電変換素子用材料。
[7]
前記X
1及び前記X
2が、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)、(2-9)、(2-10)、(2-11)、(2-12)、(2-13)又は(2-14)で表される基である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の光電変換素子用材料。
【化36】
[8]
前記縮合環化合物が、下記式(A-1)、(A-1)、(A-1)、(A-1)又は(A-5)で表される化合物である、[1]に記載の光電変換素子用材料。
【化37】
[9]
光電変換素子用正孔輸送促進材である、[1]~[8]のいずれか一つに記載の光電変換素子用材料。
[10]
[1]~[9]のいずれか一つに記載の光電変換素子用材料を含む、有機薄膜。
[11]
第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に配置された複数の有機層と、を備え、
前記有機層が、少なくとも光電変換層、正孔輸送層及び正孔輸送促進層を含み、
前記正孔輸送促進層が、[1]~[9]のいずれか一つに記載の光電変換素子用材料を含有する、光電変換素子。
[12]
式(1)で表される縮合環化合物。
【化38】
[式(1)中、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子、フルオロアルキル基、又は、電子求引基を有する複素芳香族基を表し、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4は、それぞれ独立に窒素原子又はC-R
11(R
11は、水素原子又は置換基を表す。)を表し、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、=N-R
21(R
21は、電子求引基を表す。)又は=C(R
22)
2(R
22は、水素原子又は電子求引基を表し、R
22のうち少なくとも一方は電子求引基である。)を表す。
但し、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち、少なくとも1つは水素原子以外の基である。]
[13]
前記R
21及び前記R
22における前記電子求引基が、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、又は、フルオロ基、フルオロアルキル基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の基で置換された芳香族炭化水素基若しくは複素芳香族基である、[12]に記載の縮合環化合物。
[14]
前記Y
1及び前記Y
2が同じ基であり、前記Y
3及びY
4が同じ基である、[12]又は[13]に記載の縮合環化合物。
[15]
前記X
1及び前記X
2が、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)、(2-5)、(2-6)、(2-7)、(2-8)、(2-9)、(2-10)、(2-11)、(2-12)、(2-13)又は(2-14)で表される基である、[12]~[14]のいずれか一つに記載の縮合環化合物。
【化39】
[16]
下記式(A-1)、(A-1)、(A-1)、(A-1)又は(A-5)で表される、[12]に記載の縮合環化合物。
【化40】
【実施例0115】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0116】
なお、1H-NMRの測定には、Bruker ASCEND HD(400MHz;BRUKER製)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
【0117】
(合成実施例1:縮合環化合物(A-1))
(1)化合物(B-1)の合成
2,6-ビス(2,6-ジフルオロピリジン-3-イル)-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-1)):
【化41】
を、以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモ-9,10-アントラキノン(3.31g,9.08mmol)、2,6-ジフルオロ-3-ピリジンボロン酸(3.39g,20.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(632mg,0.55mmol)をTHF(150mL)に懸濁させた。この懸濁液に、2M-炭酸カリウム水溶液(50mL)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水及びメタノ-ルを加えた。析出した固体をろ取し、洗浄(トルエン)により精製することで、目的の化合物(B-1)を得た(3.69g,8.57mmol,91%)。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm):7.04(dd,J=8.2,2.9Hz,2H),8.03(dt,J=8.3,1.8Hz,2H),8.15(dd,J=8.3,8.1Hz,2H),8.46(d,J=8.2Hz,2H).8.50(s,2H).
【0118】
(2)縮合環化合物(A-1)の合成
2,6-ビス(2,6-ジフルオロピリジン-3-イル)-9,9,10,10-テトラシアノジベンゾキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-1)):
【化42】
を以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、化合物(B-1)(3.69g,8.57mmol)をクロロホルム(60mL)に懸濁させ、60℃に加熱した。この懸濁液に、マロノニトリル(1.70g,25.7mmol)、四塩化チタン(4.88g,25.7mmol)、ピリジン(5mL)を4回に分けて加え、計6時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に少量の水とクロロホルムを加えて良く撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えた。反応混合物をろ過して固形物を除いた後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を洗浄(メタノール)により精製することで、目的の縮合環化合物(A-1)を得た(3.66g,5.71mmol,80%)。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm):7.06(dd,J=8.1,2.8Hz,2H),7.98(dt,J=8.5,1.8Hz,2H),8.13(dd,J=9.2,8.5,2H),8.38-8.42(m,4H).
【0119】
(合成実施例2:縮合環化合物(A-2))
(1)化合物(B-2)の合成
2,6-ビス(2-フルオロピリジン-4-イル)-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-2)):
【化43】
を以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモ-9,10-アントラキノン(4.00g,10.9mmol)、2-フルオロピリジン-4-ボロン酸(3.38g,24.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(630mg,0.05mmol)をTHF(218mL)中に懸濁させた。この懸濁液に2.0M-炭酸ナトリウム水溶液(27mL)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水及びメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、熱トルエンにより洗浄することで、目的の化合物(B-2)を得た。
1HNMR(CDCl
3)δ7.28-7.30(m,2H),7.56(dt,J=5.2,1.7Hz,2H),8.09(dd,J=8.1,2.0Hz,2H),8.40(d,J=5.2Hz,2H),8.50(d,J=7.8Hz,2H),8.61(d,J=1.6Hz,2H).
【0120】
(2)縮合環化合物(A-2)の合成
2,6-ビス(2-フルオロピリジン-4-イル)-9,9,10,10-テトラシアノジベンゾキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-2)):
【化44】
を以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、化合物(B-2)(3.17g,7.96mmol)をクロロホルム(400mL)中に懸濁させた。この懸濁液にプロパンジニトリル(1.58g,23.9mmol)、ピリジン(4.2mL,47.8mmol)、四塩化チタン(4.8mL,23.9mmol)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水を加え、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体をメタノールにより洗浄することで、目的の縮合環化合物(A-2)を得た(3.02g,6.12mmol,77%)。
1HNMR(CDCl
3)δ7.20-7.22(m,2H),7.48(dt,J=5.2,1.6Hz,2H),8.00(dd,J=8.2,1.8Hz,2H),8.40-8.46(m,4H),8.52(d,J=1.6Hz,2H).
【0121】
(合成実施例3:縮合環化合物(A-3))
(1)化合物(B-3)の合成
2,6-ビス(3-シアノピリジン-4-イル)-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-3)):
【化45】
を以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモ-9,10-アントラキノン(3.00g,6.52mmol)、3-シアノ-4-クロロピリジン(1.92g,14.3mmol)、酢酸パラジウム(73.2mg,0.32mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(311mg,0.65mmol)をTHF(130mL)中に懸濁させた。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(17mL)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水及びメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、水で洗浄することで、目的の化合物(B-3)を得た(2.26g,5.48mmol,84%)。
1HNMR(TFA-d)δ8.53(dd,J=8.2,1.9Hz,2H),8.68(d,J=6.3Hz,2H),8.90(d,J=8.2Hz,2H),9.09(d,J=1.8Hz,2H),9.46(d,J=6.4Hz,2H),9.67(s,2H).
【0122】
(2)縮合環化合物(A-3)の合成
2,6-ビス(3-シアノピリジン-4-イル)-9,9,10,10-テトラシアノジベンゾキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-3)):
【化46】
を以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、化合物(B-3)(2.26g,5.48mmol)をクロロホルム(274mL)中に懸濁させた。この懸濁液にプロパンジニトリル(1.09g,16.4mmol)、ピリジン(2.9mL,32.9mmol)、四塩化チタン(3.5mL,16.4mmol)を加えた後、24時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水を加え、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体をメタノールにより洗浄することで、目的の縮合環化合物(A-3)を得た(560mg,1.10mmol,20%)。
1HNMR(CDCl
3)δ7.62(d,J=5.1Hz,2H),8.11(dd,J=8.2,1.7Hz,2H),8.43(d,J=1.5Hz,2H),8.50(d,J=8.2Hz,2H),8.99(d,J=5.2Hz,2H),9.06(s,2H).
【0123】
(合成実施例4:縮合環化合物(A-4))
(1)化合物(B-4)の合成
1,4-ジアザ-2,3-ビス(2-シアノピリジン-5-イル)-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-4)):
【化47】
を以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、1,4-ジアザ-2,3-ジクロロ-9,10-アントラキノン(500mg,1.79mmol)、2-シアノ-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(907mg,3.93mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(73.1mg,0.09mmol)を1,4-ジオキサン(18mL)中に懸濁した。この懸濁液に、2.0M-炭酸カリウム(4.4mL)を加えた後、60℃で24時間加熱撹拌した。放冷後、反応混合物に飽和食塩水及びクロロホルムを加え、有機層を分離した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル)により精製することで、目的の化合物(B-4)を得た(286mg,0.70mmol,39%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.84(dd,J=8.0,0.8Hz,2H),7.96-8.01(m,2H),8.31(dd,J=8.2,2.3Hz,2H),8.46-8.51(m,2H),8.85(dd,J=2.3,0.8Hz,2H).
【0124】
(2)縮合環化合物(A-4)の合成
1,4-ジアザ-2,3-ビス(2-シアノピリジン-5-イル)-9,9,10,10,-テトラシアノジベンゾキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-4)):
【化48】
を以下の方法で合成した。
まず、アルゴン雰囲気下、化合物(B-4)(760mg,1.83mmol)をジクロロメタン(92mL)中に懸濁させた。この懸濁液に、プロパンジニトリル(364g,5.49mmol)、ピリジン(0.9mL,10.9mmol)、四塩化チタン(1.1mL,5.49mmol)を0℃で2回加え、室温で計4時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム及び少量の水を加え撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過により固体を取り除いた後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体を洗浄(メタノール)により精製することで、目的の縮合環化合物(A-4)を得た(458mg,0.90mmol,49%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.87(dd,J=8.2,0.7Hz,2H),7.91-7.96(m,2H),8.38(dd,J=8.1,2.3Hz,2H),8.58-8.63(m,2H),8.88(dd,J=2.2,0.6Hz,2H).
【0125】
(合成実施例5:縮合環化合物(A-206))
(1)化合物(B-5)の合成
2,6-ビス(トリフルオロメチル)-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-5)):
【化49】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモ-9,10-アントラキノン(10.0g,27.3mmol)、ヨウ化銅(I)(10.4g,54.6mmol)をトルエン(270mL)とDMF(270mL)の混合液中に懸濁した。この懸濁液を100℃に加熱し、2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルホニル)酢酸メチル(27.8mL,218mmol)を滴下した後、115℃で24時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に飽和食塩水及び酢酸エチルを加え、有機層を分離した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体を酢酸エチルにより再結晶することで、目的の化合物(B-5)を得た(6.60g,19.1mmol,70%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):8.08-8.13(m,2H),8.50(d,J=8.1Hz,2H),8.61-8.64(m,2H).
19FNMR(CDCl
3)δ(ppm):-63.40(s,6F).
【0126】
(2)縮合環化合物(A-206)の合成
2,6-ビス(トリフルオロメチル)-11,11,12,12-テトラシアノ-9,10-アントラキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-206)):
【化50】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ビス(トリフルオロメチル)-9,10-アントラキノン(2.60g,7.55mmol)をジクロロメタン(370mL)中に懸濁した。この懸濁液に、プロパンジニトリル(1.50g,22.7mmol)、ピリジン(3.85mL,45.3mmol)、四塩化チタン(4.45mL,22.7mmol)を0℃で加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム及び少量の水を加え撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過により固体を取り除いた後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体を酢酸エチル/ヘキサンにより再結晶することで、目的の縮合環化合物(A-206)を得た(2.60g,6.12mmol,81%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):8.04(dd,J=8.2,1.0Hz,2H),8.41(d,J=8.2Hz,2H),8.51(d,J=1.0Hz,2H).
【0127】
(合成実施例6:縮合環化合物(A-207))
(1)化合物(B-6)の合成
2,6-ジシアノ-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-6)):
【化51】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモ-9,10-アントラキノン(10.0g,27.4mmol)、シアン化銅(I)(12.3g,137mmol)をDMF(900mL)中に懸濁した。この懸濁液を150℃で18時間加熱攪拌した。放冷後、反応混合液に水を加え、生じた固体をろ取した。得られた固体をソックスレー抽出(クロロホルム)し、クロロホルムにより洗浄することで目的の化合物(B-6)を得た(1.22g,4.66mmol,17%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):8.12(dd,J=8.1,1.6Hz,2H),8.48(dd,J=8.0,0.5Hz,2H),8.64(dd,J=1.6,0.5Hz,2H).
【0128】
(2)縮合環化合物(A-207)の合成
2,6-ジシアノ-11,11,12,12-テトラシアノ-9,10-アントラキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-207)):
【化52】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ジシアノ-9,10-アントラキノン(2.39g,9.25mmol)をジクロロメタン(460mL)中に懸濁した。この懸濁液に、プロパンジニトリル(1.83g,27.8mmol)、ピリジン(4.71mL,55.5mmol)、四塩化チタン(5.45mL,27.8mmol)を0℃で加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム及び少量の水を加え撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過により固体を取り除いた後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体をクロロホルムにより再結晶することで、目的の縮合環化合物(A-207)を得た(1.41g,5.74mmol,62%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):8.07(dd,J=8.2,1.5Hz,2H),8.38(dd,J=8.2,0.4Hz,2H),8.49(dd,J=1.5,0.4Hz,2H).
【0129】
(合成実施例7:縮合環化合物(A-236))
(1)化合物(B-7)の合成
(9,10-アントラキノン-2,6-イル)-ビス[ビス(1,1,1-トリフルオロメチルスルホニル)アミン](以下、化合物(B-7)):
【化53】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ジアミノ-9,10-アントラキノン(1.00g,4.20mmol)をジクロロメタン(210mL)に懸濁した。この懸濁液にN-エチル-N-(1-メチルエチル)プロパン-2-アミン(4.35mL,25.2mmol)を加えた後、ジクロロメタンに溶解したトリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.19mL,25.2mmol)を滴下し、室温で16時間撹拌した。反応混合物に飽和食塩水及びクロロホルムを加え、有機層を分離した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をメタノールにより洗浄することで、目的の化合物(B-7)を得た(950mg,1.26mmol,30%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.87(dd,J=8.4,2.1Hz,2H),8.36(d,J=2.1Hz,2H),8.52(d,J=8.4Hz,2H).
【0130】
(2)縮合環化合物(A-236)の合成
(11,11,12,12-テトラシアノ-アントラキノジメタン-2,6-イル)-ビス[ビス(1,1,1-トリフルオロメチルスルホニル)アミン](以下、縮合環化合物(A-236)):
【化54】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、(9,10-アントラキノン-2,6-イル)-ビス[ビス(1,1,1-トリフルオロメチルスルホニル)アミン](200mg,0.26mmol)をジクロロメタン(11mL)中に懸濁した。この懸濁液に、プロパンジニトリル(51.7mg,0.78mmol)、ピリジン(0.134mL,1.55mmol)、四塩化チタン(0.15mL,0.78mmol)を0℃で加え、室温で3時間撹拌した。その後、空気雰囲気下で反応混合物を1時間撹拌し、ろ過により固体を取り除いた。ろ液を減圧濃縮することで、目的の縮合環化合物(A-236)を得た(194mg,0.22mmol,86%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.84(dd,J=8.4,2.2Hz,2H),8.24(d,J=2.2Hz,2H),8.42(d,J=8.4Hz,2H).
【0131】
(合成実施例8:縮合環化合物(A-235))
(1)化合物(B-8)の合成
2,6-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-8)):
【化55】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモ-9,10-アントラキノン(4.76g,13.0mmol)、2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル(5.00g,28.6mmol)、酢酸パラジウム(176mg,6mol%)、炭酸カリウム(2.71g,19.5mmol)をキシレン(45mL)中に懸濁した。この懸濁液に、トリシクロヘキシルホスフィン(0.6Mトルエン溶液)(4.05mL,18mol%)、2-エチルヘキサン酸(0.43mL,20mol%)を加え、140℃で16時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に飽和食塩水及びクロロホルムを加え、有機層を分離した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン)により精製することで、目的の化合物(B-8)を得た(4.22g,7.67mmol,59%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.95(dd,J=8.1,1.6Hz,2H),8.48(d,J=1.6Hz,2H),8.53(d,J=8.1Hz,2H).
【0132】
(2)縮合環化合物(A-235)の合成
2,6-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル-4-イル)-11,11,12,12-テトラシアノ-9,10-アントラキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-235)):
【化56】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル-4-イル)-9,10-アントラキノン(2.80g,5.05mmol)をジクロロメタン(253mL)中に懸濁した。この懸濁液に、プロパンジニトリル(1.00g,15.2mmol)、ピリジン(3.09mL,30.3mmol)、四塩化チタン(3.65mL,15.2mmol)を0℃で加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム及び少量の水を加え撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過により固体を取り除いた後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体をメタノール洗浄し、酢酸エチル/ヘキサンにより再結晶することで、目的の縮合環化合物(A-235)を得た(1.82g,2.78mmol,55%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.89(dd,J=8.3,1.3Hz,2H),8.35(d,J=1.3Hz,2H),8.46(d,J=8.3Hz,2H).
【0133】
(合成実施例9:縮合環化合物(A-237))
(1)化合物(B-9)の合成
2,6-ビス[2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル]-9,10-アントラキノン(以下、化合物(B-9)):
【化57】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモ-9,10-アントラキノン(1.50g,3.26mmol)、4-クロロ-2-(トリフルオロメチル)ピリジン(1.30g,7.17mmol)、酢酸パラジウム(36.6mg,5mol%)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(155mg,10mol%)をTHF(65mL)中に懸濁した。この懸濁液に2.0M-炭酸カリウム水溶液(8.2mL)を加えた後16時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に水及びメタノールを加えた。生じた固体をろ取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル)により精製することで、目的の化合物(B-9)を得た(1.03g,2.09mmol,64%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.86(dd,J=5.0,1.7Hz,2H),8.03(d,J=1.7Hz,2H),8.14(dd,J=8.1,2.0Hz,2H),8.54(d,J=8.1Hz,2H),8.65(d,J=1.7Hz,2H),8.91(d,J=5.0Hz,2H).
19FNMR(CDCl
3)δ(ppm):-67.95(s,6F).
【0134】
(2)縮合環化合物(A-237)の合成
2,6-ビス[2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル]-11,11,12,12-テトラシアノ-9,10-アントラキノジメタン(以下、縮合環化合物(A-237)):
【化58】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、(1.03g,2.07mmol)をジクロロメタン(104mL)中に懸濁した。この懸濁液に、プロパンジニトリル(410.2mg,6.21mmol)、ピリジン(1.06mL,12.4mmol)、四塩化チタン(1.22mL,6.21mmol)を0℃で加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム及び少量の水を加え撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過により固体を取り除いた後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体をメタノール洗浄し、酢酸エチル/ヘキサンにより再結晶することで、目的の縮合環化合物(A-237)を得た(814mg,1.37mmol,66%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.79(dd,J=5.0,1.5Hz,2H),7.95(d,J=1.5Hz,2H),8.06(dd,J=8.2,1.6Hz,2H),8.47(d,J=8.2Hz,2H),8.56(d,J=1.6Hz,2H),8.93(d,J=5.0Hz,2H).
19FNMR(CDCl
3)δ(ppm):-68.05(s,6F).
【0135】
(合成実施例10:縮合環化合物(A-234))
(1)化合物(B-10)の合成(9,10-アントラキノン-2-イル)-ビス(1,1,1-トリフルオロメチルスルホニル)アミン(以下、化合物(B-10)):
【化59】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2-アミノ-9,10-アントラキノン(300mg,1.34mmol)をジクロロメタン(25mL)に懸濁した。この懸濁液にN-エチル-N-(プロパン-2-イル)プロパン-2-アミン(0.70mL,4.02mmol)を加えた後、ジクロロメタン(2mL)に溶解したトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.68mL,4.02mmol)を滴下し、室温で4時間撹拌した。反応混合物に飽和食塩水及びクロロホルムを加え、有機層を分離した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体をショートカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製することで、目的の化合物(B-10)を得た(4.22g,7.67mmol,59%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.77(dd,J=8.5,0.5Hz,1H),7.79-7.84(m,2H),8.23-8.32(m,3H),8.39(d,J=8.5Hz,1H).
【0136】
(2)縮合環化合物(A-234)の合成
(11,11,12,12-テトラシアノ-アントラキノジメタン-2-イル)-ビス(1,1,1-トリフルオロメチルスルホニル)アミン(以下、縮合環化合物(A-234)):
【化60】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、(9,10-アントラキノン-2-イル)-ビス(1,1,1-トリフルオロメチルスルホニル)アミン(100mg,0.21mmol)をジクロロメタン(11mL)中に懸濁した。この懸濁液に、プロパンジニトリル(40.7mg,0.63mmol)、ピリジン(0.11mL,1.26mmol)、四塩化チタン(0.12mL,0.63mmol)を0℃で加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム及び少量の水を加え撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過により固体を取り除いた後、ろ液を減圧濃縮した。生じた固体を酢酸エチル/ヘキサンにより再結晶することで、目的の縮合環化合物(A-234)を得た(80mg,0.14mmol,66%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.77-7.84(m,3H),8.23(d,J=2.1Hz,1H),8.15-8.21(m,2H),8.59(d,J=8.5Hz,1H).
【0137】
(合成実施例11:縮合環化合物(A-226))
(1)化合物(B-11)の合成
2,3-ジシアノナフト[2,3-f]キノキサリン-7,12-ジオン(以下、化合物(B-11)):
【化61】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、文献(J.Org.Chem.1972,37,4133)に従って合成したジイミノスクシノニトリル(401mg,3.78mmol)及び1,2-ジアミノ-9,10-アントラキノン(600mg,2.52mmol)をTFA(12.6mL)中に懸濁した。この懸濁液を室温で16時間撹拌した。反応溶液を水に注ぎ、沈殿物をろ過により回収した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル)により精製することで、目的の化合物(B-11)を得た(119mg,0.38mmol,15%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.87-7.97(m,2H),8.32-8.39(m,2H),8.60(d,J=8.9Hz,1H),8.99(d,J=8.9Hz,1H).
【0138】
(2)縮合環化合物(A-226)の合成
2,2’-(2,3-ジシアノナフト[2,3-f]キノキサリン-7,12-ジイリデン)ビス-プロパンジニトリル(以下、縮合環化合物(A-226)):
【化62】
を以下の方法で合成した。
アルゴン雰囲気下、2,3-ジシアノナフト[2,3-f]キノキサリン-7,12-ジオン(30mg,0.10mmol)をジクロロメタン(2mL)中に懸濁した。この懸濁液に、プロパンジニトリル(19.8mg,0.30mmol)、ピリジン(0.05mL,0.60mmol)、四塩化チタン(0.06mL,0.30mmol)を0℃で加え、室温で3時間撹拌した。その後、空気雰囲気下で反応混合物を1時間撹拌し、ろ過により固体を取り除いた。ろ液を減圧濃縮することで、目的の縮合環化合物(A-226)を得た(37.4mg,0.09mmol,92%)。
1HNMR(CDCl
3)δ(ppm):7.80-7.88(m,2H),8.30-8.39(m,2H),8.62(d,J=8.9Hz,1H),8.84(d,J=8.9Hz,1H).
【0139】
(合成実施例12:縮合環化合物(A-230))
(1)縮合環化合物(A-230)の合成
2,2’-(アントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-6,11-ジイリデン)ジプロパンジニトリル(以下、縮合環化合物(A-230)):
【化63】
を以下の方法で合成した。
アルゴン置換下、文献(Bioorg.Med.Chem.Lett.2017,27,1929.)に従って合成したアントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-6,11-ジオン(2.55g,9.6mmol)を塩化メチレン(300mL)に溶解し、プロパンジニトリル(1.90g,28mmol)、ピリジン(4.54g,57mmol)、塩化チタン(IV)(3.2mL,28mmol)を計2回加え、終夜で撹拌した。セライトろ過を2回行い溶媒留去することで粗生成物3.9gを濃褐色固体として得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(φ:6cm,h:7cm,クロロホルム)で精製することで、目的の縮合環化合物(A-230)を得た(1.3g,39%)。
1HNMR(CDCl
3)δ7.77(m,2H),8.30(dd,J=6.8,2.0Hz,1H),8.36(dd,J=6.8,2.0Hz,1H),8.41(s,2H).
【0140】
(合成実施例13:縮合環化合物(A-231))
(1)化合物(B-12)の合成
4-ブロモアントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-6,11-ジオン(以下、化合物(B-12)):
【化64】
を以下の方法で合成した。
アントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-6,11-ジオン(4.8g,18.1mmol)を臭化水素(30%酢酸溶液)(60mL)に懸濁させ、0℃に冷却後、臭素(9.3mL,181mmol)を滴下した。90℃で3時間撹拌後、蒸留水(300mL)と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(50mL)を混合した希薄チオ硫酸ナトリウム水溶液に反応混合物をあけ、吸引ろ過を行うことで粗生成物6.26gを黄色固体として得た。これを熱クロロベンゼン(300mL)に溶解させ、熱時ろ過後放冷することで、目的の化合物(B-12)を得た(5.2g,83%)。
1HNMR(CDCl
3)δ7.88(m,2H),8.32(dd,J=7.3,1.9Hz,1H),8.39(dd,J=7.3,1.9Hz,1H),8.84(s,1H).
【0141】
(2)化合物(B-13)の合成
6,11-ジオキソ-6,11-ジヒドロアントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-4-カルボニトリル(以下、化合物(B-13)):
【化65】
を以下の方法で合成した。
アルゴン置換下、4-ブロモアントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-6,11-ジオン(900mg,2.6mmol)、シアン化銅(1.17g,13mmol)をDMF(50mL)に溶解し、150℃で終夜撹拌した。放冷後蒸留水(150mL)にあけて晶析し、遠心分離を蒸留水で2回繰り返すことでDMFを取り除いた後に乾燥し、黒色固体を2.3g得た。これをシリカゲル(10g)と混練してクロロホルムを用いてソックスレー抽出を行うことで、目的の化合物(B-13)を得た(276mg,36%)。
1HNMR(CDCl
3)δ7.92(m,2H),8.35(dd,J=7.0,2.0Hz,1H),8.41(dd,J=7.0,2.0Hz,1H),9.02(s,1H).
【0142】
(3)縮合環化合物(A-231)の合成
2,2’-(4-シアノアントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-6,11-ジイリデン)ジプロパンジニトリル(以下、縮合環化合物(A-231)):
【化66】
を以下の方法で合成した。
アルゴン置換下、6,11-ジオキソ-6,11-ジヒドロアントラ[1,2-c][1,2,5]チアジアゾール-4-カルボニトリル(200mg,0.69mmol)を塩化メチレン(150mL)に溶解し、プロパンジニトリル(142mg,2.1mmol)、ピリジン(340mg,4.1mmol)、塩化チタン(IV)(0.23mL,2.1mmol)を計2回加え、終夜で撹拌した。反応混合物をセライトろ過した後、溶媒を留去することで粗精製物を得た。粗精製物をトルエンで再結晶することで、目的の縮合環化合物(A-231)を得た(58mg,22%)。
1HNMR(CDCl
3)δ7.82(m,2H),8.31(dd,J=6.6,2.3Hz,1H),8.37(dd,J=6.6,2.3Hz,1H),8.78(s,1H).
【0143】
(素子実施例1及び2)
合成実施例1及び2で合成した縮合環化合物(A-1)及び(A-2)を用い、以下の方法でホールオンリー素子を作成し、正孔輸送能力を評価した。
(1)基板及び電極12の用意
電極12をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(2)真空蒸着
洗浄後の表面処理が施された電極上に、真空蒸着法で各層を積層した。具体的には、真空蒸着槽内に、ITO透明電極付きガラス基板を導入し、1.0×10
-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層を作製した。
(i)正孔注入層の作製
電極12上にMoO
3を厚さ1nmで成膜し、正孔注入層13を作製した。
(ii)正孔輸送層の作製
昇華精製したN,N’-ビス(1-ナフチル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジアミン(NPD)を厚さ30nmで成膜し、正孔輸送層14を作製した。
【化67】
(iii)正孔輸送促進層の作製
実施例で合成した縮合環化合物を厚さ15nmで成膜し、正孔輸送促進層15を作製した。
(iv)電極の作製
Agを厚さ30nmで成膜し、電極16を作製した。
【0144】
得られたホールオンリー素子の電極12と電極16にそれぞれプラスとマイナスの電界をかけ、10mA/cm2の電流密度における電圧値を測定した。結果を表1に示す。
【0145】
(素子比較例1)
縮合環化合物(A-1)に代えて、下記のトリアジン誘導体(NPT)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様にしてホールオンリー素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【化68】
【0146】
(素子比較例2)
縮合環化合物(A-1)に代えて、下記化合物(HAT-CN)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様にしてホールオンリー素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【化69】
【0147】
(素子比較例3)
正孔輸送促進層を設けなかったこと以外は、素子実施例1と同様にしてホールオンリー素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0148】
【0149】
表1の結果から、実施例の縮合環化合物を含む正孔輸送促進層により、優れた正孔輸送能力が実現されることが確認された。
【0150】
(素子実施例3及び4)
合成実施例9及び5で合成した縮合環化合物(A-237)及び(A-206)を用い、以下の方法でホールオンリー素子を作成し、正孔輸送能力を評価した。
(1)基板及び電極12の用意
電極12をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(2)真空蒸着
洗浄後の表面処理が施された電極上に、真空蒸着法で各層を積層した。具体的には、真空蒸着槽内に、ITO透明電極付きガラス基板を導入し、1.0×10
-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層を作製した。
(i)正孔注入層の作製
電極12上にMoO
3を厚さ1nmで成膜し、正孔注入層13を作製した。
(ii)正孔輸送層の作製
昇華精製した(HTL-1)を厚さ100nmで成膜し、正孔輸送層14を作製した。尚、(HTL-1)は特開2018-193371に記載の方法で合成した。
【化70】
(iii)正孔輸送促進層の作製
実施例で合成した縮合環化合物を厚さ10nmで成膜し、正孔輸送促進層15を作製した。
(iv)電極の作製
Auを厚さ50nmで成膜し、電極16を作製した。
得られたホールオンリー素子の電極12と電極16にそれぞれプラスとマイナスの電界をかけ、10mA/cm
2の電流密度における電圧値を測定した。結果を表2に示す。
【0151】
(素子比較例4)
正孔輸送促進層を設けなかったこと以外は、素子実施例3と同様にしてホールオンリー素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0152】
【0153】
表2の結果から、実施例の縮合環化合物を含む正孔輸送促進層により、優れた正孔輸送能力が実現されることが確認された。
【0154】
(素子実施例5)
基板/電極2/電子輸送層3/光電変換層4/正孔輸送層5/正孔輸送促進層6/電極7からなる積層構成を有する光電変換素子を作製し、該光電変換素子の暗電流及び外部量子効率を評価した。
(i)基板、電極2の用意
電極2をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(ii)真空蒸着の準備
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、7.0×10-5Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
(iii)電子輸送層3の作製
昇華精製した化合物4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジンを0.03nm/秒の速度で10nm成膜し、電子輸送層3を作製した。
(iv)光電変換層4の作製
N,N-ジメチルキナクリドン及びフラーレンC60を4:1(質量比)の割合で250nm成膜し、光電変換層14を作製した。成膜速度は0.13nm/秒であった。
(v)正孔輸送層5の作製
正孔輸送材料として(HTL-1)を0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送層5を作製した。
(vi)正孔輸送促進層6の作製
化合物(A-237)を0.20nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送促進層6を作製した。
(vii)第一の電極7の作製
最後に、基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、第一の電極7を成膜した。第一の電極は、Auを80nm成膜した。Auの成膜速度は0.1nm/秒であった。
【0155】
以上により、面積4mm
2の
図1に示す光電変換素子を作製した。
作製した光電変換素子に、電極2側に電子が、第一の電極7側に正孔が輸送されるように、絶対値として2.5Vの電圧を印加したときの、外部量子効率を評価した。外部量子効率の測定には太陽電池分光感度測定装置(相馬光学社製)を用いた。照射光の波長は560nmで、強度50μW/cm
2で測定を行った。結果を表3に示す。なお外部量子効率は、後述する素子比較例5における結果を基準値(100)とした相対値である。外部量子効率は数値が高いほど性能に優れることを示す。
【0156】
(素子実施例6)
正孔輸送促進層6の作製において、化合物(A-237)の代わりに、化合物(A-206)を用いたこと以外は、素子実施例5と同様の方法により、素子実施例6の光電変換素子を作製し、素子実施例5と同じ方法により外部量子効率を測定した。結果を表3に示す。
【0157】
(素子比較例5)
正孔輸送促進層6の作製において、化合物(A-237)の代わりに、NPTを用いたこと以外は、素子実施例5と同様の方法により、素子比較例5の光電変換素子を作製し、素子実施例5と同じ方法により外部量子効率を測定した。結果を表3に示す。
(素子比較例6)
正孔輸送促進層6を設けなかったこと以外は、素子実施例5と同様の方法により、素子比較例6の光電変換素子を作製し、実施例5と同じ方法により外部量子効率を測定した。結果を表3に示す。
【0158】
【0159】
<有機薄膜の評価>
合成実施例1で合成した縮合環化合物(A-1)を、シリコン基板上に真空蒸着によって10nm成膜し、有機薄膜を製造した。得られた有機薄膜の表面の算術平均粗さを、原子間力顕微鏡(島津製作所社製、SPM-9600)によって測定した。結果を表4に示す。
また、縮合環化合物(A-1)に代えて化合物(HAT-CN)を用い、同様にして有機薄膜を製造した。得られた有機薄膜の表面の算術平均粗さを、原子間力顕微鏡(島津製作所社製、SPM-9600)により測定した。結果を表4に示す。
【0160】
【0161】
表4の結果から、実施例の縮合環化合物が高いアモルファス性を有し、形成される膜表面が平坦となることが確認された。
1…基板、2…電極、3…電子輸送層、4…光電変換層、5…正孔輸送層、6…正孔輸送促進層、7…電極、100…光電変換素子、11…基板、12…電極、13…正孔注入層、14…正孔輸送層、15…正孔輸送促進層、16…電極、110…ホールオンリー素子。