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特開2023-138370終末糖化産物生成抑制剤及び終末糖化産物生成抑制用飲食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138370
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】終末糖化産物生成抑制剤及び終末糖化産物生成抑制用飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230922BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20230922BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230922BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230922BHJP
   A23C 19/072 20060101ALN20230922BHJP
   A23C 19/068 20060101ALN20230922BHJP
   A23C 23/00 20060101ALN20230922BHJP
   A61K 35/20 20060101ALN20230922BHJP
   A61K 8/98 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P3/08
A61Q1/00
A61Q5/00
A23C19/072
A23C19/068
A23C23/00
A61K35/20
A61K8/98
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027983
(22)【出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022043494
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 英樹
(72)【発明者】
【氏名】井越 敬司
(72)【発明者】
【氏名】江口 慧
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 泰幸
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B001BC04
4B001BC99
4B001EC05
4B018LB06
4B018MD71
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA07
4C083CC02
4C083CC31
4C087BB39
4C087CA07
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、使用に関し安全性の高い食品又は食品素材を有効成分とする新規なAGEs生成抑制剤の提供を課題とする。
【解決手段】チーズなどの乳を原料とする食品組成物、又はそれらの抽出画分を有効成分とする終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤を提供する。また、本発明は、チーズなどの乳を原料とする食品組成物、又はそれらの抽出画分を有効成分とする終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品を提供する。チーズとしてはナチュラルチーズが好ましく、ナチュラルチーズとしては、カマンベールチーズ、ブルーチーズ、チェダーチーズ及びゴーダチーズから選ばれる1以上が好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳を原料とする食品組成物又は当該組成物の抽出画分を有効成分とする終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
【請求項2】
乳を原料とする食品組成物が、チーズである請求項1に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
【請求項3】
チーズが、ナチュラルチーズである請求項2に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
【請求項4】
ナチュラルチーズが、カマンベールチーズ、ブルーチーズ、チェダーチーズ及びゴーダチーズからなる群から選ばれる1以上である、請求項3に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
【請求項5】
終末糖化産物(AGEs)生成抑制作用が、ペントシジン、カルボキシメチルアルギニン、カルボキシメチルリジン、クロスリン及びピロピリジンからなる群から選ばれるいずれか1以上の生成抑制作用である請求項1~4のいずれかに記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
【請求項6】
乳を原料とする食品組成物又は当該組成物の抽出画分を有効成分とする終末糖化産物生成抑制用飲食品。
【請求項7】
乳を原料とする食品組成物が、チーズである請求項6に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
【請求項8】
チーズが、ナチュラルチーズである請求項7に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
【請求項9】
ナチュラルチーズが、カマンベールチーズ、ブルーチーズ、チェダーチーズ及びゴーダチーズからなる群から選ばれる1以上である、請求項8に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
【請求項10】
終末糖化産物(AGEs)生成抑制作用が、ペントシジン、カルボキシメチルアルギニン、カルボキシメチルリジン、クロスリン及びピロピリジンからなる群から選ばれるいずれか1以上の生成抑制作用である請求項6~9のいずれかに記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳を原料とする食品組成物、又は当該組成物の抽出画分を有効成分とする終末糖化産物生成抑制剤に関する。より詳しくは、チーズ又はチーズの抽出画分を有効成分とする終末糖化産物生成抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
代謝異常に伴う過剰な還元糖やカルボニル化合物の産生による生体へのストレスである「糖化ストレス」は老化亢進因子の1つと見なされている。終末糖化産物(Advanced Glycation Endproducts、以下、略して単にAGEsということがある)は、蛋白質と糖質が非酵素的に反応し、アマドリ化合物を経て生成される産物であり、糖化ストレスの指標かつ原因物質である。
AGEsの生成や蓄積亢進は、血管疾患(非特許文献1)骨脆弱化(非特許文献2)、皮膚の外観劣化(非特許文献3)といった、老化に伴う身体的問題に関連することから、AGEsの生成を抑制することで、身体の老化を遅延させることが期待される。そのため、超高齢社会を迎える日本において、老化の進行を遅延させるためAGEs生成抑制方法を開発することは重要である。
また、老化自体は疾病ではないため、老化関連疾患に至るまでの期間は、医薬品の処方は行われない。そのため、この期間は日常生活で無理なく安全に摂取できる食品を用いて、AGEsの生成を抑制する手法の開発が求められている。
AGEsの生成抑制作用を有する飲食品素材としては、例えば、特許文献1,2に示す素材が知られている。
【0003】
特許文献1には、アマチャヅル、銀杏、ウイキョウ、ウコン等の植物の有機溶媒抽出画分を有効成分とするグリケーション阻害剤について開示されている。これらは化粧品等の外用剤あるいは飲食品に配合することにより、組織障害予防・治療効果を有する外用剤あるいは飲食品とすることができることについて開示されている。
【0004】
特許文献2には、クロレラ、大豆またはミルクカゼインなどのタンパク質含有素材をプロテアーゼ処理して得られうる生成物を有効成分とする、AGEs生成阻害剤について開示されている。プロテアーゼ処理条件としては、pH5.0~9.0、反応温度は40~65°C、反応時間は2~15時間などが挙げられ、たとえば化粧料などに使用する場合は、3000ダルトン以下の分子サイズにまで分解されて使用されることについても開示されている。
なお、チーズの生理機能に関しては、ナチュラルチーズの水溶性画分にDPPIV阻害活性があることが報告されているものの(特許文献3)、AGEs生成抑制作用についての報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-250445号公報
【特許文献2】WO2006/078067号パンフレット
【特許文献3】特開2007-39424号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】基礎老化研究 3(7 3);33-35,2013
【非特許文献2】Osteoporos Int 21, 195-214, 2010
【非特許文献3】日本化粧品技術者会誌 53(2), 83-90, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、使用に関し安全性の高い食品又は食品素材を有効成分とする新規なAGEs生成抑制剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、このような事情に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、チーズなどの乳を原料とする食品組成物又はそれらの抽出画分にAGEs生成抑制作用を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>乳を原料とする食品組成物又は当該組成物の抽出画分を有効成分とする終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
<2>乳を原料とする食品組成物が、チーズである<1>に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
<3>チーズが、ナチュラルチーズである<2>に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
<4>ナチュラルチーズが、カマンベールチーズ、ブルーチーズ、チェダーチーズ及びゴーダチーズからなる群から選ばれる1以上である、<3>に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
<5>終末糖化産物(AGEs)生成抑制作用が、ペントシジン、カルボキシメチルアルギニン、カルボキシメチルリジン、クロスリン及びピロピリジンからなる群から選ばれるいずれか1以上の生成抑制作用である<1>~<4>のいずれかに記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤。
<6>乳を原料とする食品組成物又は当該組成物の抽出画分を有効成分とする終末糖化産物生成抑制用飲食品。
<7>乳を原料とする食品組成物が、チーズである<6>に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
<8>チーズが、ナチュラルチーズである<7>に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
<9>ナチュラルチーズが、カマンベールチーズ、ブルーチーズ、チェダーチーズ及びゴーダチーズからなる群から選ばれる1以上である、<8>に記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
<10>終末糖化産物(AGEs)生成抑制作用が、ペントシジン、カルボキシメチルアルギニン、カルボキシメチルリジン、クロスリン及びピロピリジンからなる群から選ばれるいずれか1以上の生成抑制作用である<6>~<9>のいずれかに記載の終末糖化産物(AGEs)生成抑制用飲食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全性の高い新規なAGE産生抑制剤及びAGE産生抑制用飲食品を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】カマンベールチーズ由来試料のCMA生成抑制効果を示す図である。平均値±SDで示す。カマンベールチーズA、B、Cはそれぞれ異なるロットを示す。0.1、0.125、0.25、0.5、1.0mg/mlは試料の終濃度を示す。
図2】チェダーチーズ由来試料及びゴーダチーズ由来試料のCMA生成抑制効果を示す図である。平均値±SDで示す。1.0mg/mlは試料の終濃度を示す。
図3】カマンベールチーズ由来試料のペントシジン生成抑制効果を示す図である。平均値±SDで示す。カマンベールチーズA、B、Cはそれぞれ異なるロットを示す。1.0、1.25、2.5、5.0、10mg/mlは試料の終濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(有効成分)
本発明は、乳を原料とする食品組成物又は当該組成物の抽出画分を有効成分とする終末糖化産物(AGEs)生成抑制作用を示す剤又は飲食品に関する。本発明において乳を原料とする食品組成物としては、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、牛乳などが挙げられる。チーズはナチュラルチーズ又はナチュラルチーズを原料としたプロセスチーズを用いることができ、このうちでもナチュラルチーズが好ましい。
本発明において、ナチュラルチーズとしては、カマンベールチーズ、ブルーチーズ、チェダーチーズ、ゴーダチーズ、パルメザンチーズ、グリュイエールチーズ、マリボーチーズ、エメンタールチーズ、エダムチーズ、ブリーチーズ、マンステールチーズ、ポン・レヴェックチーズ、ダナブルーチーズ等が挙げられる。このうちでも、カマンベールチーズ、ブルーチーズ、チェダーチーズ、ゴーダチーズがより好ましく、カマンベールチーズがよりいっそう好ましい。
本発明において、チーズの抽出画分としては、水などの水性溶媒で抽出した水溶性画分が挙げられる。例えばチーズを水性溶媒に懸濁した後、不溶性物質の除去を行って得ることができる。本発明のチーズの水溶性画分においてチーズを水性溶媒に懸濁するということは、チーズに水性溶媒を加えてホモジナイザーなどで均質化したり、または水性溶媒中で破砕したりして、水溶性画分を得やすい大きさにすることをいう。チーズを水性溶媒に懸濁した後、遠心分離して得た上清、あるいは、その上清をさらにろ過して不溶性物質を除去したものが本発明のチーズの水溶性画分である。水性溶媒としては、水、リン酸緩衝液等の溶媒を用いることができる。また、エタノールなどの水溶性の有機溶媒を使用することもでき、エタノールを70%以下の混合割合にて水に混合して用いる場合が特に好ましい。この水溶性画分を凍結乾燥や噴霧乾燥等によって乾燥させることにより粉末化しても良い。
このように、本発明の有効成分は、チーズなどの乳を原料とする食品組成物を原料とするため、原料の入手が極めて容易であり、安価であり、また安全性、毒性の面でも極めて有利である。
【0012】
(終末糖化産物(AGEs)生成抑制作用)
本発明におけるAGEsは、生体内でのタンパク質の糖化反応の最終生産物として生じる化合物群であり、具体的には、CMA(カルボキシメチルアルギニン)、CML(カルボキシメチルリジン)、ペントシジン、クロスリン、ピロピリジン等を包含する。
本発明の有効成分は、AGEsの生成を抑制する作用を有し、一般的なAGEsの蛍光性が励起波長370nm、蛍光波長440nmであるのに対し、AGEsのなかでも特に、蛍光性が励起波長335nm、蛍光波長385nmであるペントシジン、及び蛍光性をもたないCMAの生成を抑制する作用が特に高い。ペントシジンは骨コラーゲンのAGEsであり、骨密度と独立した骨折のリスク因子である。CMAはコラーゲンに蓄積し、肌の老化に関連する。本発明の組成物はこれらのAGEsの生体内又は生体外、特に生体内、での生成を抑制するために用いられる。
AGEsの生成抑制作用は、後述する実施例に示すように評価対象のサンプルの有無により生成されるAGEsの量の差を測定し、阻害率を算出することにより評価することができる。
【0013】
(終末糖化産物(AGEs)生成抑制剤)
本発明のチーズなどの乳を由来とする食品組成物、又はそれらの抽出画分を有効成分とするAGEs生成抑制剤は、AGEs生成抑制用飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。
【0014】
(AGEs生成抑制用飲食品)
本発明の飲食品は、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品、例えば、健康食品、機能性食品、サプリメントあるいは厚生労働省の定める特別用途食品、例えば特定保健用食品、栄養機能食品、病者用食品、病者用組み合わせ食品、高齢者用食品などが挙げられる。また、有効成分はチーズなどの乳を由来とする食品組成物、又はそれらの抽出画分であるから、そのまま飲食品として利用できる。また、通常の飲食品に添加して利用することもできる。
【0015】
通常の飲食品としては、例えば、穀物加工品、油脂加工品、大豆加工品、食肉加工品、水産製品、乳製品、野菜・果実加工品、菓子類、アルコール飲料、嗜好飲料、調味料、缶詰・瓶詰め・袋詰め食品、半乾燥または濃縮食品、乾燥食品、冷凍食品、固形食品、液体食品、香辛料類等の農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品等が挙げられる。
【0016】
本発明の飲食品の製造法は特に限定されるものではなく、調理、加工および一般に用いられている飲食品の製造法を挙げることができる。本発明の飲食品におけるAGEs生成抑制剤の含有量は特に限定されず、作用発現の観点から適宜選択できるが、飲食品100重量部当たり、好ましくは2.5~50重量部、より好ましくは3~10重量部である。
【0017】
(医薬品)
本発明のAGEs生成抑制剤を医薬品組成物として用いる場合の投与方法は、経口投与でも非経口投与でもいずれでもよい。本発明の有効成分を薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの固形製剤;またはシロップ剤、注射剤などの液状製剤として経口または非経口的に投与する為の組成物とすることができる。薬学的に許容される担体としては、各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【0018】
(化粧品、医薬部外品)
本発明のAGEs生成抑制剤を主に化粧品、医薬部外品などに含有させて用いる場合にも、その形態は、特に制限はなく、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム、軟膏、エアゾール剤、カプセル剤、吸収性物品及びシート状製品等の形態をとり得る。
本発明のAGEs生成抑制剤を含む化粧品としては、例えば、水/油または油/水型の乳化化粧料、クリーム、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、口紅、ファンデーション、皮膚洗浄剤、ヘアートニック、整髪剤、育毛剤、入浴剤等が挙げられる。
本発明の化粧品の製造法は特に限定されず、一般に用いられている化粧品の製造法を挙げることができる。
【実施例0019】
[実施例1]
1.試料調製
ストマッカー用袋(アズワン、大阪)内でカマンベールチーズ、チェダーチーズ及びゴーダチーズの各チーズと超純水を1:2の割合で混合し、ストマッカー(SANYO、東京)を用いて15分間破砕した。その後、polytron PT10-35(サントラル科学貿易、東京)で更に破砕し、遠心分離(5800g、30 min、4℃)した。得られた上清を脱脂綿(ハンゾウメディカル、大阪)で濾過し、濾液と99.5%エタノールを3:7の割合で混和して、4℃で一晩静置した。その後、遠心分離(5800g、30 min、4℃)し、得られた上清を脱脂綿で濾過した。濾液をエバポレーター(東京理化器械、東京)で濃縮し、凍結乾燥させて、試料(70%エタノール可溶画分)を得た。
【0020】
2.AGEs生成抑制試験
2-1.カルボキシメチルアルギニン(CMA)生成抑制試験
試料を100mg/mlとなるように、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク)で溶解したのち、遠心分離(13000g、10 min、室温)して得られた上清を、DMSOで希釈し、試料溶液として試験に用いた。また、陽性対照として、ルテオリン(和光純薬工業)を用いた。
無菌的に60mMのリボース水溶液と、4mg/mlのゼラチン水溶液を混合し、本混合液と試料溶液あるいはルテオリン溶液を99:1となるように混和した(終濃度は、試料が0.1、0.125、0.25、0.5および1.0mg/ml、ルテオリンが1.0mg/ml)。また、試料を含まないDMSOを用いて同様の試験を実施した。混和液を各2本に分注し、一方を即座に-80℃に保存し、もう一方を37℃で反応させ7日間静置した。
7日後、各反応サンプルと、-80℃保存していた混和液を融解したサンプルについて、CMAのモノクローナル抗体を用いたELISA法で、生成されたCMAの量を測定した。その後、以下の式を用いて、試料のCMA生成阻害率を算出した。
<式>
阻害率(%)=100×(1-(A-B)/(C-D))
A: 試料を含む混和液の37℃、7日間の反応後の測定値
B: 試料を含む混和液の-80℃保存後、融解した後の測定値
C: 試料を含まない混和液の37℃、7日間の反応後の測定値
D: 試料を含まない混和液の-80℃保存後、融解した後の測定値
【0021】
2-2.ペントシジン生成抑制試験
ウシ血清アルブミン(BSA)およびグルコースをPBSに溶解した後、試料溶液あるいは陽性対照のルテオリン溶液を添加して混和液を調製した(終濃度は、BSAが8mg/ml、グルコースが0.2M、試料が1.0、1.25、2.5、5および10mg/ml、ルテオリンが10mg/ml)(A)。陰性対照として、試料を含まないDMSOを用いた(C)。また、ブランクとして、試料を含まないDMSOを用いて、かつグルコース0 Mの混和液を調製した(D)。さらに、試料ブランクとして、試料溶液を用いるが、グルコース0 Mの混和液を調製した(B)。これら4種類の混和液をそれぞれ、60℃で40時間、静置した。
40時間後、黒色の96ウェルマイクロプレートに、200μlずつ混和液を分注し、マイクロプレートリーダーを用いて蛍光強度を測定した(ペントシジンは励起335 nm/検出385nm)。その後、以下の式を用いて、試料のペントシジン生成阻害率を算出した。
<式>
阻害率(%)=100×(1-(A-B)/(C-D))
A:試料、グルコースを共に含む混和液での測定値
B:試料を含み、グルコースを含まない混和液での測定値
C:試料を含まず、グルコースを含む混和液での測定値
D:試料もグルコースも含まない混和液での測定値
【0022】
3.結果
図1~2より、カマンベールチーズ、チェダーチーズ、ゴーダチーズ由来試料が用量依存的なカルボキシメチルアルギニン(CMA)生成阻害効果を示した。
また、図3より、カマンベールチーズ由来試料が、用量依存的なペントシジン生成抑制効果を示した。
これらの結果から、ナチュラルチーズなどの乳を原料とする食品組成物の抽出画分には、AGEs生成抑制効果があることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、チーズなどの乳を原料とする食品組成物、又はそれらの抽出画分を有効成分とする安全性の高い新規なAGE産生抑制剤及びAGE産生抑制用飲食品を提供することが出来る。
図1
図2
図3