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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138380
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/12 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01L31/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031414
(22)【出願日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2022044703
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】福中 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】古屋 貴明
【テーマコード(参考)】
5F889
【Fターム(参考)】
5F889BB06
5F889BC02
5F889BC22
5F889BC25
5F889BC30
5F889CA09
5F889GA07
(57)【要約】
【課題】半導体基板の変形による特性変動を抑制可能なガスセンサが提供される。
【解決手段】ガスセンサ(1)は、基板(再配線層30)と、基板の一方の面である表面(30a)に、又は基板に埋め込まれて設けられた発光素子(11)と、基板の表面に、又は基板に埋め込まれて設けられ、発光素子から出射された光を受光する受光素子(12)と、基板の表面と反対の面である裏面(30b)にあって、少なくとも一部が発光素子及び受光素子と電気的に接続される複数の外部接続端子(40)と、を備え、複数の外部接続端子は、平面視で、任意の2つの外部接続端子を結ぶ線上に発光素子及び受光素子が存在しないように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面である表面に、又は前記基板に埋め込まれて設けられた発光素子と、
前記基板の前記表面に、又は前記基板に埋め込まれて設けられ、前記発光素子から出射された光を受光する受光素子と、
前記基板の前記表面と反対の面である裏面にあって、少なくとも一部が前記発光素子及び前記受光素子と電気的に接続される複数の外部接続端子と、を備え、
前記複数の外部接続端子は、平面視で、任意の2つの外部接続端子を結ぶ線上に前記発光素子及び前記受光素子が存在しないように配置される、ガスセンサ。
【請求項2】
前記複数の外部接続端子は、平面視で、前記発光素子及び前記受光素子のそれぞれに対して一方向の領域に配置される、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記発光素子及び前記受光素子は、一部が封止部によって覆われている、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記基板は、前記発光素子及び前記受光素子の電極形成面側に形成される再配線層を含み、
前記発光素子及び前記受光素子は、前記再配線層を介して、少なくとも一部の前記複数の外部接続端子と電気的に接続される、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記発光素子から出射された光を前記受光素子に導く導光部材を備え、
前記導光部材は前記基板の前記表面の接着面で前記基板に接着され、前記接着面は、平面視で、前記接着面における任意の2点を結ぶ線上に前記発光素子及び前記受光素子が存在しないように設けられる、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記接着面は前記裏面において前記複数の外部接続端子が配置された領域に対応する前記表面の領域に含まれる、請求項5に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記発光素子の出射面又は前記受光素子の受光面に設けられた光学フィルタを備える、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記複数の外部接続端子はLGA又はBGAである、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記発光素子及び前記受光素子は、前記基板に埋め込まれており、前記発光素子及び前記受光素子の電極形成面とは反対側の面が前記基板から露出している、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子として、受光した赤外線に応じた信号を出力する赤外線受光素子(赤外線センサ)及び入力した電力に応じて赤外線を発光する赤外線発光素子(赤外線LED:light emitting diode)が知られている。量子型の赤外線受光素子は、pn接合又はpin接合を有する半導体が赤外線を吸収することで発生した光電流により赤外線を検知する。赤外線発光素子は順方向に印加した電圧により赤外線を発光する。赤外線受光素子及び赤外線発光素子は、例えばNDIR(non dispersive infrared)方式ガスセンサに利用されることがある。NDIR方式ガスセンサは、検出対象ガスに応じた吸収波長帯の赤外線を受光する赤外線受光素子及びその吸収波長帯の赤外線を発光する赤外線発光素子を用いて、ガス濃度を計測することができる。例えば特許文献1は、内部にミラーを設けたキャップで覆われて、基板上に構成部品を配置して形成される小型のNDIR方式ガスセンサを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/222764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、半導体素子を基板上に配置して構成されるデバイスでは、半導体基板に対しても応力がかかる場合がある。例えば、デバイスの実装時の熱膨張などの影響によって半導体基板が反ることがあり得る。デバイスがガスセンサである場合に、反りによってガスセンサの特性変動が生じることがある。特に小型のガスセンサにおいて、半導体基板の変形は特性に大きく影響するため、半導体素子への影響を抑制可能な技術が求められていた。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、半導体基板の変形による特性変動を抑制可能なガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係るガスセンサは、
基板と、
前記基板の一方の面である表面に、又は前記基板に埋め込まれて設けられた発光素子と、
前記基板の前記表面に、又は前記基板に埋め込まれて設けられ、前記発光素子から出射された光を受光する受光素子と、
前記基板の前記表面と反対の面である裏面にあって、少なくとも一部が前記発光素子及び前記受光素子と電気的に接続される複数の外部接続端子と、を備え、
前記複数の外部接続端子は、平面視で、任意の2つの外部接続端子を結ぶ線上に前記発光素子及び前記受光素子が存在しないように配置される。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記複数の外部接続端子は、平面視で、前記発光素子及び前記受光素子のそれぞれに対して一方向の領域に配置される。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記発光素子及び前記受光素子は、一部が封止部によって覆われている。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記基板は、前記発光素子及び前記受光素子の電極形成面側に形成される再配線層を含み、
前記発光素子及び前記受光素子は、前記再配線層を介して、少なくとも一部の前記複数の外部接続端子と電気的に接続される。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記発光素子から出射された光を前記受光素子に導く導光部材を備え、
前記導光部材は前記基板の前記表面の接着面で前記基板に接着され、前記接着面は、平面視で、前記接着面における任意の2点を結ぶ線上に前記発光素子及び前記受光素子が存在しないように設けられる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態として、(5)において、
前記接着面は前記裏面において前記複数の外部接続端子が配置された領域に対応する前記表面の領域に含まれる。
【0012】
(7)本開示の一実施形態として、(1)から(6)のいずれかにおいて、
前記発光素子の出射面又は前記受光素子の受光面に設けられた光学フィルタを備える。
【0013】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(7)のいずれかにおいて、
前記複数の外部接続端子はLGA又はBGAである。
【0014】
(9)本開示の一実施形態として、(1)から(8)のいずれかにおいて、
前記発光素子及び前記受光素子は、前記基板に埋め込まれており、前記発光素子及び前記受光素子の電極形成面とは反対側の面が前記基板から露出している。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、半導体基板の変形による特性変動を抑制可能なガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るガスセンサの構成例を示す概略図である。
図2図2は、図1のガスセンサの断面を示す断面図である。
図3図3は、図1のガスセンサの導光部材を除いた上面を示す平面図である。
図4図4は、図1のガスセンサの上面を示す平面図である。
図5図5は、図1のガスセンサの光電変換素子を含む一部の拡大断面を示す断面図である。
図6図6は、外部接続端子がBGA(Ball Grid Array)である場合の応力を説明する図である。
図7図7は、外部接続端子がLGA(Land Grid Array)である場合の応力を説明する図である。
図8図8は、外部接続端子の他の配置例を示す概略図である。
図9図9は、外部接続端子の他の配置例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るガスセンサが説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の構成例を示す概略図である。図1では、発光素子11及び受光素子12などの位置を示すために、基板を透過させて示している。図2は、図1の中央の仮想線bにおけるガスセンサ1の断面を示す断面図である。図3及び図4は、ガスセンサ1の上面を示す平面図である。図3では、ガスセンサ1の導光部材15を除いて(透過させて)示している。
【0019】
図1図4、後述する図8及び図9において、ガスセンサ1の向きに対応する直交座標が設定される。z軸方向は、ガスセンサ1の高さ方向である。y軸方向は、ガスセンサ1の縦方向に対応し、本実施形態において長方形状の基板の長手方向に対応する。また、x軸方向は、ガスセンサ1の横方向(幅方向)に対応し、本実施形態において長方形状の基板の短手方向に対応する。ここで、基板は正方形状であってよく、このときx軸方向及びy軸方向が1つの辺の方向及びそれに直交する方向に対応してよい。以下において、この直交座標の軸を用いて、位置関係を説明することがある。
【0020】
図1図4に示すように、ガスセンサ1は、基板と、発光素子11と、受光素子12と、複数の外部接続端子40と、を備える。本実施形態において、ガスセンサ1は、発光素子11から出射された光を受光素子12に導く導光部材15と、発光素子11の出射面に設けられた光学フィルタ16が樹脂成形されたフィルタブロック16aと、をさらに備える。また、本実施形態において、ガスセンサ1は、発光素子11及び受光素子12の動作を制御し、被検出ガスの濃度を演算するIC13(Integrated Circuit)と、IC13で使用されるデータ及びプログラムなどを記憶するメモリ14と、をさらに備える。複数の外部接続端子40は、少なくとも一部が発光素子11及び受光素子12と電気的に接続される。また、複数の外部接続端子40の一部は、IC13又はメモリ14と電気的に接続されてよい。また、発光素子11及び受光素子12の一方又は両方は、直接IC13と電気的に接続されてよい。また、メモリ14は、IC13に設けることが可能なら備えなくてよい。IC13を外部に設ける場合に、ガスセンサ1は、IC13を備えていなくてよい。また、メモリ14を外部に設ける場合に、ガスセンサ1は、メモリ14を備えていなくてよい。
【0021】
ここで、半導体素子が樹脂により封止されたデバイスにおいて、デバイスの小型化のために、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)又はWLCSP(Wafer level Chip Size Package)のようなパッケージ構造が用いられることがある。本実施形態において、発光素子11、受光素子12、IC13及びメモリ14が半導体素子であって、ガスセンサ1はFOWLPのパッケージ構造を有する小型の検出装置を実現する。基板は、これらの半導体素子を実装して電気的な接続を行うが、本実施形態において発光素子11及び受光素子12の電極形成面側に形成される再配線層30を含む。再配線層30の詳細については後述する。また、以下の説明において、基板(再配線層30)の一方の面であって、半導体素子が設けられる方の面が表面30aと称される。基板の表面30aと反対の面であって、複数の外部接続端子40がある方の面が裏面30bと称される。ここで、ガスセンサ1のパッケージ構造はFOWLPに限定されるものでなく、例えばWLCSP、SON(Small Outline Non-leaded package)などの他の種類であってよい。また、発光素子11及び受光素子12なども単体で素子を構成する基板を有するが、素子の基板は半導体基板111(図5参照)と称される。また、ガスセンサ1を部品として用いる製品も基板を有するが、製品の基板は製品基板と称される。ここで、「裏面30bにある」とは、直接に裏面30bに設けられて存在している状態だけでなく、間接的に設けられて存在している状態を含む。例えば複数の外部接続端子40は別の層などを介して裏面30bに設けられてよいが、このような間接的な設置による場合も「裏面30bにある」と記載される。
【0022】
発光素子11は、基板の表面30aに、又は基板に埋め込まれて設けられ、被検出ガスの検出に用いられる光を出射する。発光素子11は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光を出力するものであれば特に制限されない。本実施形態において、発光素子11が発する光は赤外線であるが、これに限定されない。本実施形態において、発光素子11はLEDであるが、別の例として半導体レーザ又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒータ等であり得る。ここで、「表面30aに設けられる」とは、直接に表面30aに設けられることだけでなく、間接的に設けられることを含む。例えば発光素子11は、基板の表面30aに導電性の接着材又は別の層などを介して設けられてよいが、このような間接的な設置も「表面30aに設けられる」と記載される。
【0023】
ここで、赤外線の波長は2μm~12μmであってよい。2μm~12μmの領域は、各種ガスに固有の吸収帯が数多く存在し、ガスセンサ1で用いるのに特に適した波長帯である。例えば3.3μmの波長にメタン、4.3μmの波長に二酸化炭素、9.5μmの波長にアルコール(エタノール)の吸収帯が存在する。
【0024】
受光素子12は、基板の表面30aに、又は基板に埋め込まれて設けられ、発光素子11から出射された光を受光する。受光素子12は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光の帯域に感度を有するものであれば特に制限されない。本実施形態において、受光素子12が受け取る光は赤外線であるが、これに限定されない。受光素子12は、受け取った光を電気信号に変換して、変換した電気信号を出力する。電気信号は、例えばIC13に出力される。電気信号を受け取ったIC13は、光の透過率等に基づいて被検出ガスの濃度を演算する。
【0025】
ここで、図2に示すように、発光素子11及び受光素子12は、基板に埋め込まれていてよい。発光素子11及び受光素子12の電極形成面とは反対側の面が基板から露出している。基板への埋め込みによって、ガスセンサ1の薄型化が可能になる。一般に、基板に埋め込まれる場合、発光素子11及び受光素子12は基板の反りの影響を直接的に受ける。しかし、本実施形態に係るガスセンサ1の構成は、後述するように、変形による発光素子11及び受光素子12の特性変動を抑制できる。ここで、図2に示すように、発光素子11及び受光素子12だけでなく、IC13及びメモリ14が基板に埋め込まれていてよい。
【0026】
導光部材15は、発光素子11から出射された光を受光素子12に導く部材である。導光部材15は、ガスセンサ1の光学系である。導光部材15は光学部材を備え、発光素子11から受光素子12への光路を構成する。ここで、光学部材は例えばミラー、レンズ等である。本実施形態において、導光部材15は、基板の表面30aの接着面17で基板に接着され、内部に気体が導入される空間を形成する。発光素子11から出射された光は、導光部材15によって空間内の気体を通って受光素子12で受光される。空間内の気体に被検出ガスが含まれれば、特定の波長の光が濃度に応じて吸収されるため、吸収量を検出することにより被検出ガスの濃度を測定することができる。
【0027】
光学フィルタ16は、波長選択機能を有する部材である。光学フィルタ16は、被検出ガスの吸収波長帯の光を透過させるバンドパスフィルタであってよい。本実施形態において、光学フィルタ16は発光素子11の出射面に設けられているが、これに限定されない。光学フィルタ16は、例えば受光素子12の受光面(入射面)に設けられてよい。
【0028】
ここで、図5は、図1のガスセンサ1の光電変換素子10を含む一部の拡大断面を示す断面図である。光電変換素子10は、発光素子11又は受光素子12である。発光素子11及び受光素子12に共通の構造を説明する場合に、光電変換素子10の言葉で説明することがある。図5における拡大した断面は、例えば図1の発光素子11及び外部接続端子40を横切る仮想線aにおける断面である。
【0029】
図5に示すように、光電変換素子10の光出入射面10aと反対側の面には、電極113が設けられている。光電変換素子10の電極113が形成された面である電極形成面10bは、再配線層30と接している。光電変換素子10は、電極113を介して再配線層30と電気的に接続される。
【0030】
半導体基板111は、PN接合又はPIN接合のフォトダイオード構造の半導体層112を成膜することが可能な素子の基板である。半導体基板111は、赤外線等の光透過性を有するものであれば特に制限されない。半導体基板111は、半導体を含む材料を含んでよいし、絶縁性であってよい。半導体基板111は、一例として、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、サファイヤ、リン化インジウム(InP)等で形成される。半導体層112がIn、Sb、As、Al等を含むナローギャップ半導体材料(例えばInSb)を含む材料で形成される場合、格子欠陥の少ない半導体層112を形成する観点から、半導体基板111としてGaAs基板を用いることが好ましい。この場合、半導体基板111は光に対して高い透過率を有し、半導体基板111上に高品質の結晶性成長が可能となる。さらに、半導体基板111の10a面は、凹凸を形成したり、Ti0等の反射防止膜を形成したりしてよい。光取り出しを向上することが可能となる。
【0031】
半導体層112は、例えば第1導電型半導体層、活性層及び第2導電型半導体層で構成されたPIN接合のフォトダイオード構造を有している。半導体層112としては、PIN接合又はPN接合のフォトダイオード構造又はLED構造を有するものであれば、特定の構造に限定されない。半導体層112は、赤外線等の特定波長の光に対して感度を有する公知の物質を適用することが可能であり、例えばInSbを適用することができる。半導体層112上に電極113が形成される。
【0032】
封止部20は、樹脂材料で構成されており、光電変換素子10の光出入射面10aを露出させるように、光電変換素子10の側面を覆っている。また、光電変換素子10の電極形成面10bが再配線層30に対して露出する。すなわち、本実施形態に係るガスセンサ1において、光電変換素子10の光出入射面10a及び電極形成面10b以外が封止部20によって封止されている。ここで、封止部20は、半導体基板111を介して半導体層112に赤外線等の光が出入射できるように形成されていればよく、覆う面について特に限定されない。例えば、封止部20は、光電変換素子10の電極形成面10bの一部を覆っていてよいし、光電変換素子10の側面の一部を覆っていなくてよい。封止部20のうち光電変換素子10の側面を覆う部分の上面は光出入射面10aより薄くてよいし、光出入射面10aと面一になっていてよい。
【0033】
封止部20としては、量産性、機械強度及び光電変換素子10への応力の観点から、再配線層30と近い線膨張係数を有する樹脂材料を用いることが好ましい。封止部20は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料で形成されてよい。
【0034】
また、封止部20を構成する材料は、エポキシ樹脂等の樹脂材料の他にフィラー、不可避的に混在する不純物などを含んでいてよい。フィラーとしては、例えばシリカ、アルミナ等が好適に用いられる。
【0035】
再配線層30は、光電変換素子10及び封止部20の電極形成面10b側に形成される。再配線層30は、第1絶縁層311及び第2絶縁層312を有する絶縁層31と、光電変換素子10の電極113と電気的に接続される再配線32と、外部接続端子40を接続するためのパッド33と、を備えている。本実施形態において、電極113に対して再配線32が接続されて、再配線32は外部接続端子40に接続されている。
【0036】
第1絶縁層311は、光電変換素子10及び封止部20の電極形成面10b側に形成されている。第1絶縁層311は、反りが小さく、再配線32との接合性に優れ、耐熱性の高い材料により形成され、具体的にはポリイミド等の樹脂材料により形成される。第1絶縁層311は、光電変換素子10の電極113の位置に第1絶縁層311を貫通する開口311aを有している。開口311aを介して、再配線32が電極113と電気的に接続可能となる。
【0037】
再配線32は、第1絶縁層311と第2絶縁層312との間に設けられている。再配線32は、第1絶縁層311の開口311aから露出する電極113の表面及び開口311aの側壁を覆い、開口311aの側壁からパッド33まで第1絶縁層311の表面上で延在する。
【0038】
再配線32は、下地層321及び導体層322を有している。下地層321は、例えば無電解めっき又はスパッタリングにより形成される。また、下地層321は、第1絶縁層311と導体層322との接着性を向上させる役割も果たす。下地層321は、例えば銅(Cu)により形成される。導体層322は、下地層321上に形成され、例えば電解めっきにより形成される。導体層322は、例えば銅(Cu)により形成される。
【0039】
第2絶縁層312は、第1絶縁層311の表面に形成された絶縁層である。第2絶縁層312は、第1絶縁層311と同様に、例えばポリイミド等の樹脂材料により形成される。第2絶縁層312は、平面視で第1絶縁層311の開口311aと重ならない領域に、第2絶縁層312を貫通する開口312aを有する。開口312aを介して、パッド33が再配線32と電気的に接続可能となる。
【0040】
パッド33は、外部接続端子40を再配線32と接続するために設けられる。パッド33は、例えばNi層とAu層との積層膜により形成される。パッド33は、第2絶縁層312の開口312aから露出する再配線32の表面及び開口312aの側壁を覆う。
【0041】
外部接続端子40は、パッド33と接しており、第2絶縁層312の開口312aから露出する再配線32と電気的に接続されている。本実施形態において、複数の外部接続端子40はBGA(Ball Grid Array)である。外部接続端子40は例えばはんだボールである。ただし、外部接続端子40の形状などは限定されない。例えば複数の外部接続端子40はLGA(Land Grid Array)であってよい。
【0042】
ガスセンサ1は、例えば測定機器などの製品の部品として用いられ、製品基板に実装される際に、複数の外部接続端子40が製品基板の所定位置でリフローによってはんだ付けされる。
【0043】
従来、光学デバイスの実装時のリフローで生じる熱膨張及びその後の冷却による収縮などの影響によって、光学デバイスの基板に力が加わり、結果として光学素子が変形して、光学デバイスの特性変動が生じることがあった。例えば図6の上図のように、従来構造の外部接続端子1040がBGAである小型のガスセンサ1001は、リフローの熱によって基板(再配線層1030)が反った状態で、はんだボールである外部接続端子1040が溶融し、温度が下がったときに押し潰された状態で固まることがあり得る。すると、光電変換素子1010が変形してガスセンサ1001の特性変動が生じることがある。また、例えば図7の上図のように、従来構造の外部接続端子1040がLGAである小型のガスセンサ1001は、リフロー後に温度が下がったときに、製品基板よりもLGAパッケージの線膨張係数の方が大きいために収縮し、結果として製品基板に接続された外部接続端子1040の方に引っ張る応力が生じる。すると、光電変換素子1010が複数の外部接続端子1040の方に引っ張られて変形し、ガスセンサ1001の特性変動が生じることがある。
【0044】
本実施形態に係るガスセンサ1は、光電変換素子10に対して、複数の外部接続端子40が、平面視で、一方向の領域に配置される。例えば図1に示すように、複数の外部接続端子40は、発光素子11に対して、平面視で一方向(y軸負方向)に位置する領域cにある。ここで、複数の外部接続端子40が配置された領域cは、複数の外部接続端子40のうちで最外にある外部接続端子40で囲まれる範囲として定められてよい。また、複数の外部接続端子40は、受光素子12に対しても、平面視で一方向(y軸正方向)に位置する領域cにある。光電変換素子10と外部接続端子40のこのような位置関係によって、本実施形態に係るガスセンサ1は、図6の下図に示すように、リフローの際に基板(再配線層30)が反った状態で固まることがない。そのため、本実施形態に係るガスセンサ1は、半導体基板111の変形による特性変動を抑制可能である。また、本実施形態に係るガスセンサ1で、外部接続端子40をLGAとする場合にも、図7の下図に示すように、リフローの際に複数の外部接続端子40の方に引っ張られることがない。そのため、半導体基板111の変形による特性変動を抑制可能である。
【0045】
ここで、ガスセンサ1において、光電変換素子10に対して、複数の外部接続端子40が、実質的に一方向の領域に配置されればよい。具体的に述べると、複数の外部接続端子40は、平面視で、任意の2つの外部接続端子40を結ぶ線上に発光素子11及び受光素子12が存在しないように配置されればよい。
【0046】
図8は、光電変換素子10に対して、複数の外部接続端子40が実質的に一方向の領域に配置されている状態を例示する図である。図1と比べると、発光素子11のx軸負方向にも外部接続端子40が配置され、受光素子12のx軸正方向にも外部接続端子40が配置されている。つまり、複数の外部接続端子40は、発光素子11に対して、平面視でy軸負方向及びx軸負方向に位置する。また、複数の外部接続端子40は、受光素子12に対して、平面視でy軸正方向及びx軸正方向に位置する。しかし、複数の外部接続端子40の任意の2つを結ぶ線上に、発光素子11及び受光素子12は存在しない。図8の仮想線dは、このような2つの外部接続端子40を結ぶ線の例である。したがって、図8に示すような複数の外部接続端子40の配置であっても、図6の上図のように光電変換素子1010を挟んで基板(再配線層1030)が反った状態で固まることは生じない。また、図7の上図のように光電変換素子1010を挟んで反対方向に引っ張る力が加わることは生じない。そのため、ガスセンサ1において、複数の外部接続端子40が任意の2つの外部接続端子40を結ぶ線上に発光素子11及び受光素子12が存在しないように配置されることによって、半導体基板111の変形による特性変動を抑制可能である。
【0047】
また、図1及び図8の例において、発光素子11及び受光素子12は、平面視で複数の外部接続端子40を挟むように配置されているが、このような位置関係に限定されない。例えば図9に示すように、平面視で複数の外部接続端子40に対して一方向(一例としてy軸正方向)に発光素子11及び受光素子12が並んで配置されてよい。このとき、複数の外部接続端子40が配置される領域cを拡大することが可能である。また、図1及び図8の例において、発光素子11及び受光素子12は、平面視で同じ向きに(各辺が平行であるように)配置されているが、一方が他方に対して角度を有して(回転して)配置されてよい。角度は一例として45°であるが、特に限定されない。
【0048】
また、ガスセンサ1が基板に接着される導光部材15を備える場合に、接着剤の収縮などによって基板に力が加わるおそれがある。そのため、接着面17は、平面視で、接着面17における任意の2点を結ぶ線上に発光素子11及び受光素子12が存在しないように設けられることが好ましい。図3に示すように、接着面17は裏面30bにおいて複数の外部接続端子40が配置された領域cに対応する表面30aの領域に含まれることが特に好ましい。接着面17をこのように制限することによって、半導体基板111の変形による特性変動を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るガスセンサ1は、上記の構成によって、従来構造と比べて、半導体基板111の変形による特性変動を抑制することができる。
【0050】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガスセンサ
10 光電変換素子
10a 光出入射面
10b 電極形成面
11 発光素子
12 受光素子
13 IC
14 メモリ
15 導光部材
16 光学フィルタ
16a フィルタブロック
17 接着面
20 封止部
30 再配線層
30a 表面
30b 裏面
31 絶縁層
32 再配線
33 パッド
40 外部接続端子
111 半導体基板
112 半導体層
113 電極
311 第1絶縁層
311a 開口
312 第2絶縁層
312a 開口
321 下地層
322 導体層
1001 ガスセンサ
1010 光電変換素子
1030 再配線層
1040 外部接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9