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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138413
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品及び容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20230922BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20230922BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20230922BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230922BHJP
   B65D 35/10 20060101ALI20230922BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L23/04
C08L33/12
B65D65/40 D
B65D35/10 A
B65D35/10 B
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036862
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2022043937
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅也
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 甲介
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 真哉
【テーマコード(参考)】
3E064
3E065
3E086
4J002
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064AA08
3E064AA09
3E064AA11
3E064AB23
3E064EA07
3E064HS04
3E065AA02
3E065BA02
3E065BA14
3E065BA25
3E065BB03
3E065CA20
3E065DD05
3E065DD08
3E065FA06
3E065HA01
3E086AA22
3E086AA23
3E086AB03
3E086AD01
3E086AD03
3E086AD08
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB51
3E086BB85
4J002BB032
4J002BB073
4J002BB083
4J002CF061
4J002FD203
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性に優れ、射出成形に適した樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、相溶化剤とを含有し、前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを含み、前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分の少なくともいずれか一方を含み、前記ジオール成分は、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分を含み、前記ポリエステル系樹脂が海相を構成し、前記ポリエチレン系樹脂が島相を構成する海島構造を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、相溶化剤とを含有し、
前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを含み、
前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分の少なくともいずれか一方を含み、
前記ジオール成分は、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分を含み、
前記ポリエステル系樹脂が海相を構成し、前記ポリエチレン系樹脂が島相を構成する海島構造を有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物に対する島相が占める面積比率が、5%~40%である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記島相の平均粒径が、0.1μm~2.5μmである請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記相溶化剤が、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルと、エチレンとの共重合鎖を含有する請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記相溶化剤が、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体である請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジオール成分が、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを含む請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジオール成分が、エチレングリコールを含む請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
メルトフローレートが、5g/10min~15g/10minである請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリエチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンである請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形した成形品。
【請求項11】
射出成形品である請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
請求項11に記載の成形品を部材として用いた容器。
【請求項13】
底部と、口部と、前記底部及び前記口部と接合された、可撓性を有する筒状の胴部とを備え、
前記底部及び前記口部は、剛性を有し、請求項11に記載の成形品から形成されている容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物を成形した成形品及び成形品を部材として用いた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオール成分の一部を3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンで置換したポリエステル樹脂と、ポリカーボネート樹脂からなる樹脂組成物や加飾フィルムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-219667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂とからなる従来の樹脂組成物には、フィルムには加工できるが、溶融粘度が低く、射出成形しにくく、耐衝撃性も十分ではないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成とすることにより、上記課題を解決したものである。本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、相溶化剤とを含有し、前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを含み、前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分の少なくともいずれか一方を含み、前記ジオール成分は、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分を含み、前記ポリエステル系樹脂が海相を構成し、前記ポリエチレン系樹脂が島相を構成する海島構造を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、耐衝撃性に優れ、射出成形に適した樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の容器を示す概略図である。
図2】第2実施形態の容器を示す概略図である。
図3】第3実施形態の容器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、相溶化剤とを含有する。
【0009】
(ポリエステル系樹脂)
本実施形態のポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを含む。ジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分の少なくともいずれか一方を含む。ジオール成分は、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分を含む。
【0010】
テレフタル酸成分とは、テレフタル酸の2つのカルボン酸基から2つのOHが抜けた残基である。イソフタル酸成分とは、イソフタル酸の2つのカルボン酸基から2つのOHが抜けた残基である。また、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分とは、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオールの2つの水酸基から2つのH(水素原子)が抜けた残基である。
【0011】
本実施形態のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールとを脱水縮合して得られたものでもよく、ジカルボン酸エステルとジオールとをエステル交換して得られたものでもよく、脱水縮合とエステル交換とを組み合わせて得られたものでもよい。
【0012】
本実施形態のポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分以外に他のカルボン酸成分を有していてもよい。
【0013】
他のカルボン酸成分としては、例えば、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の芳香族カルボン酸に由来するカルボン酸成分;アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸に由来するカルボン酸成分;トリメリット酸等のトリカルボン酸に由来するカルボン酸成分等が挙げられる。
【0014】
テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分としては、特に制限されないが、例えば、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ジ(1-プロパノール)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、β,β,β',β'-テトラメチル-3,9-ジメタノール-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。これらの中でも、ジオール成分は、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを含むことが好ましい。これにより、ポリエステル系樹脂の結晶性を低くし、ポリエステル系樹脂とポリエチレン系樹脂の相溶性を高めることができるため、本実施形態の樹脂組成物は、より容易に射出成形することができ、より射出成形に適する。
【0015】
本実施形態のポリエステル系樹脂は、ジオール成分として、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分以外に他のジオール成分を含んでいてもよい。
【0016】
他のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状ジオールに由来するジオール成分;シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールに由来するジオール成分;ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジロール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール等の分岐状ジオールに由来するジオール成分等が挙げられる。これらの中でも、特に、他のジオール成分は、エチレングリコールであることが好ましい。これにより、本実施形態の樹脂組成物は、結晶性が低くなり流動性が高くなるため、より射出成形に適する。
【0017】
ポリエステル系樹脂の含有量は、樹脂組成物に対し、60質量%~90質量%であることが好ましく、70質量%~85質量%であることがより好ましい。ポリエステル系樹脂の含有量が、樹脂組成物に対し、60質量%~90質量%であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、より耐衝撃性に優れ、より射出成形に適する。
【0018】
(ポリエチレン系樹脂)
本実施形態のポリエチレン系樹脂としては、特に制限されないが、ポリエチレン樹脂として市場で販売されているものを用いることができる。
【0019】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などが挙げられ、これらは、エチレンモノマーと少量の他のモノマーの共重合体である場合がある。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。これにより、本実施形態の樹脂組成物は、より射出成形に適する。
【0020】
ポリエチレン系樹脂の含有量は、樹脂組成物に対し、1質量%~25質量%であることが好ましく、5質量%~20質量%であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることがさらに好ましい。これにより、本実施形態の樹脂組成物は、より耐衝撃性に優れる。
【0021】
(相溶化剤)
相溶化剤としては、特に制限されないが、ポリエチレン系樹脂と相溶性を有し、ポリエステル系樹脂と反応可能な極性基を有する相溶化剤であることが好ましい。相溶化剤は、単独で添加してもよく、予めポリエステル系樹脂と相溶化剤を反応させた反応物をポリエチレン系樹脂に添加してもよい。
【0022】
相溶化剤は、ポリエステル系樹脂とポリエチレン系樹脂との相溶性を向上させ、ポリエチレン系樹脂を微分散化し、ポリエチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との界面強度を向上させることを目的として配合される。ここで、微分散とは、後述するポリエチレン系樹脂が構成する島相の平均粒径が、2.5μm以下である状態を意味する。
【0023】
相溶化剤は、ポリエチレン鎖又はエチレン共重合鎖を、主鎖又はグラフト鎖として有するものが好ましい。
【0024】
また、相溶化剤は、カルボキシル基、水酸基及びカルボン酸エステル基から選ばれる1種以上と反応しうる極性基を有することが好ましい。カルボキシル基、水酸基及びカルボン酸エステル基から選ばれる1種以上と反応しうる極性基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、グリシジル基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、カルボン酸ハライド基、スルホン酸基、チオール基、チオニルハライド基、イソシアナト基、カルボジイミド基、活性エステル基(カルボン酸チオエステル基、カルボン酸チオアリールエステル基、カルボン酸アリールエステル基など)などが挙げられる。
【0025】
相溶化剤は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルと、エチレンとの共重合鎖を有することが好ましい。これにより、ポリエステル系樹脂とポリエチレン系樹脂との相溶性をより向上させ、ポリエチレン系樹脂をより微分散化し、ポリエチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との界面強度をより向上させることができる。よって、本実施形態の樹脂組成物は、より射出成形に適する。
【0026】
具体的には、相溶化剤は、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体及び/又はエチレン-無水マレイン酸共重合体を含むことが好ましい。
【0027】
相溶化剤は、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体であることがより好ましい。上述した中でも、エポキシ基は、ポリエステル系樹脂のカルボキシル基、水酸基、及びカルボン酸エステル基との反応性が高いため、ポリエステル系樹脂とポリエチレン系樹脂との相溶性をさらに向上させ、ポリエチレン系樹脂をさらに微分散化し、ポリエチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との界面強度をさらに向上させることができる。よって、本実施形態の樹脂組成物は、さらに射出成形に適する。
【0028】
相溶化剤の含有量は、樹脂組成物に対し、1質量%~15質量%であることが好ましく、3質量%~10質量%であることがより好ましい。相溶化剤の含有量が、樹脂組成物に対し、1質量%~15質量%であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、より射出成形に適する。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物は、ISO 1133に準拠して、260℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が、5g/10min~15g/10minであることが好ましく、7g/10min~10g/minであることがより好ましく、8g/10min~10g/minであることがさらに好ましい。メルトフローレート(MFR)が、5g/10min~15g/10minであることにより、本実施形態の樹脂組成物は、より容易に射出成形することができるため、より射出成形に適する。
【0030】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂とポリエチレン系樹脂と相溶化剤の他に、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、離型剤、顔料、充填剤などが挙げられる。
【0031】
-酸化防止剤-
酸化防止剤としては、銅化合物、ヨウ素化合物、リン化合物、フェノール系化合物、硫黄化合物などが挙げられ、フェノール系化合物が好ましい。
【0032】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-メトキシフェノール、2,2'-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2'-メチレンビス〔4-メチル-6-(α-メチルシクロヘキシル)フェノール〕、1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、1,1,3-トリス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、2,2-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-n-ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコール-ビス〔3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチレート〕、1,1-ビス(3,5-ジメチル-2-ヒドロキシフェニル)-3-(n-ドデシルチオ)-ブタン、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロン酸ジオクタデシルエステル、n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0033】
-充填剤-
充填剤としては、有機充填剤や無機充填剤を用いることができるが、無機充填剤がより好ましい。無機充填剤の形状としては、繊維状、粒状、粉状等が挙げられる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー、セラミック繊維、金属繊維等が挙げられる。粒状充填剤及び粉状充填剤としては、タルク、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ、カオリン、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ等が挙げられる。無機充填剤は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。
【0034】
(海島構造)
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂が海相を構成し、ポリエチレン系樹脂が島相を構成する海島構造を有する。換言すると、本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂が連続相(マトリックス)を構成し、ポリエチレン系樹脂が分散相を構成する相分離構造を有する。この構成により、本実施形態の樹脂組成物は、容易に射出成形することができるため射出成形に適する。
【0035】
海相には、ポリエステル系樹脂以外の成分が含まれていてもよい。この場合、海相において、ポリエステル系樹脂以外の成分の含有量は、ポリエステル系樹脂の含有量よりも少ない。
【0036】
島相には、ポリエチレン系樹脂以外の成分が含まれていてもよい。この場合、島相において、ポリエチレン系樹脂以外の成分の含有量は、ポリエチレン系樹脂の含有量よりも少ない。島相は、ポリエチレン系樹脂以外の成分が構成する島相を含んでいてもよい。
【0037】
樹脂組成物に対する島相が占める面積比率は、5%~40%であることが好ましく、10%~40%であることがより好ましく、20%~40%であることがさらに好ましい。樹脂組成物に対する島相が占める面積比率が、5%~40%であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、より射出成形に適する。
【0038】
なお、樹脂組成物に対する島相が占める面積比率とは、樹脂組成物の断面をミクロトームで切削して得た薄片を四酸化ルテニウムで染色し、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、10,000倍で観察して画像を取得し、任意の視野範囲を画像解析ソフトを用いて島相を円形として抽出した際の、樹脂組成物に対する島相が占める面積比率である。
【0039】
島相の平均粒径は、0.1μm~2.5μmであることが好ましく、0.5μm~2.5μmであることがより好ましく、1.0μm~2.5μmであることがさらに好ましい。島相の平均粒径が、0.1μm~2.5μmであることにより、ポリエチレン系樹脂をより微分散化し、ポリエチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との界面強度をより向上させることができる。よって、本実施形態の樹脂組成物は、より射出成形に適する。
【0040】
なお、平均粒径とは、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて10,000倍で観察して画像を取得し、画像解析ソフトを用いて海島構造の島相を円形として抽出した際の、任意の150個の円形の最大径の平均値である。
【0041】
以上の構成により、本実施形態の樹脂組成物は、耐衝撃性に優れ、且つ、容易に射出成形することができるため射出成形に適する。
【0042】
<成形品>
本実施形態の樹脂組成物は、成形品を成形するために用いることができる。本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物を成形しているため、容易に成形することができ、また、耐衝撃性に優れる。
【0043】
成形品の成形方法は、特に制限されず、射出成形、押出成形、ブロー成形、インモールド成形等が挙げられる。この中でも、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形に好適に用いることができ、本実施形態の成形品は、射出成形品であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物を単独で成形した物であってもよく、他の樹脂と積層した成形品であってもよい。積層した成形品としては、積層フィルムや積層板、インモールド成形品などが挙げられる。
【0045】
<容器>
本実施形態の成形品は、容器を製造するための部材として用いることができる。図1は、第1実施形態の容器を示す概略図であり、図2は、第2実施形態の容器を示す概略図であり、図3は、第3実施形態の容器を示す概略図である。
【0046】
第1実施形態の容器は、図1に示すように、筒状の胴部11の両端にそれぞれ口部12と底部13とが接合された筒状容器10である。第1実施形態の筒状容器10は、口部12と底部13の少なくとも一方が、本実施形態の樹脂組成物を用いて成形された成形品、具体的には、射出成型品であることが好ましい。なお、胴部は、円筒状に成形されていてもよい。
【0047】
第1実施形態の筒状容器10は、底部13と、口部12と、底部13及び口部12と接合された、可撓性を有する筒状の胴部11とを備え、底部13及び口部12は、剛性を有し、本実施形態の成形品、具体的には射出成形品から形成されていてよい。
【0048】
筒状容器10が落下したり、転倒した際に衝撃が加わりやすい底部13及び口部12が、本実施形態の成形品から形成されていることにより、本実施形態の容器は、優れた耐衝撃性を有する。また、胴部11が可撓性を有し、底部13及び口部12が剛性を有することにより、筒状容器10の廃棄時に、胴部11を容易に圧縮することができるため、筒状容器10は容易に減容化することができる。そして、容器を資源としてリサイクルするために回収する際、効率良く回収することができる。
【0049】
底部13及び口部12は、筒状容器10が落下したり、転倒した際に受ける外力に対する変形に耐え得る剛性を有していることが好ましい。
【0050】
口部12の厚さは、0.5mm~2.5mmであることが好ましく、1mm~1.5mmであることがより好ましい。口部12の厚さは、底部13の厚さよりも小さいことが好ましい。口部12の厚さが、底部13の厚さよりも小さいことにより、筒状容器10は、安定して自立することができる。底部13の厚さは、2mm~6mmであることが好ましく、4mm~5mmであることがより好ましい。
【0051】
胴部11は、特に限定されないが、例えば、フィルムで形成されている。具体的には、胴部11は、シーラント層と、バリア層と、基材層とを備える積層フィルムで形成されていてよい。シーラント層は、筒状容器10の最内層であり、バリア層は、シーラント層の外周面に設けられ、基材層は、バリア層の外周面に設けられる。さらに、基材層の外側に、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂で形成された最外層が設けられていてもよい。
【0052】
シーラント層を構成する材料としては、本実施形態の樹脂組成物、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。バリア層は、例えば、アルミニウム等で形成される金属層を含んでいてよい。具体的には、バリア層は、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着フィルムであってよい。基材層を構成する材料としては、例えば、ナイロン(脂肪族ポリアミド)が挙げられる。
【0053】
胴部11の厚さは、150μm~350μmであることが好ましく、200μm~300μmであることがより好ましい。胴部11の厚さが、150μm~350μmであることにより、胴部11をより容易に圧縮することができる。胴部11の厚さは、口部12の厚さ及び底部13の厚さのいずれよりも小さいことが好ましい。
【0054】
第2実施形態の容器は、図2に示すように、チューブ状の胴部21の一端に口部22が接合され、胴部の他端が封止部23により封止されたチューブ容器20である。第2実施形態のチューブ容器20は、口部22が、本実施形態の樹脂組成物を用いて成形された成形品、具体的には射出成形品であることが好ましい。封止部23は、胴部21の他端を潰して内面同士を接合することにより形成されている。
【0055】
第3実施形態の容器は、図3に示すように、フィルムから形成された袋状の胴部31の周縁の少なくとも1か所に、口部32が接合されたパウチ容器30である。第3実施形態のパウチ容器30は、口部32が、本実施形態の樹脂組成物を用いて成形された成形品、具体的には射出成形品であることが好ましい。パウチ状の胴部31の形態は特に制限されないが、三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。胴部31は、例えばバッグインボックス用の内袋など大型の包装袋であってもよい。
【0056】
第1~第3実施形態の容器は、口部12、22、32又は底部13が本実施形態の成形品から形成されていることにより、優れた耐衝撃性を有する。
【0057】
以下、本発明を実施例を参照して具体的に説明するが、本発明は以下の態様には限定されない。
【0058】
<成形品及び容器の製造方法>
本実施形態の成形品及び容器の製造方法の一例として、第1実施形態の筒状容器10の製造方法について説明する。
【0059】
本実施形態の樹脂組成物のペレットを用いて、射出成形機で容器の底部13を形成し底板を作製する。また、本実施形態の樹脂組成物のペレットを用いて、熱プレス機で単層フィルムを作製する。次に、単層フィルムをマンドレルに巻き付けて、ヒートシールにより筒状の胴部11を成形する。ついで、樹脂組成物のペレットをマンドレル上に押し出し、型締めして胴部と一体となった口部12を成形する。そして、底板を胴部11にはめ込み、ヒートシールすることにより、筒状容器10が得られる。
【0060】
本実施形態の成形品及び容器の製造方法によれば、容易に射出成形することができ、耐衝撃性に優れた成形品及び容器を製造することができる。
【実施例0061】
<樹脂組成物の作製>
表1及び表2に示す質量割合で、原料樹脂を配合し、溶融混練して樹脂組成物のペレットを作成した。用いた樹脂は、以下のとおりである。
【0062】
(ポリエステル系樹脂)
ポリエステル系樹脂1:ポリエチレンテレフタレート(PET)において、エチレングリコールの一部を3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンに置換した樹脂「ALTESTER S3000」(三菱瓦斯化学社製)
ポリエステル系樹脂2:PETにおいて、エチレングリコールの一部をネオペンチルグリコール成分に置換した樹脂「E-03」(ベルポリエステルプロダクツ社製)
ポリエステル系樹脂3:PETにおいて、テレフタル酸成分の一部をイソフタル酸に置換した樹脂「PIFG10」(ベルポリエステルプロダクツ社製)
(ポリエチレン系樹脂)
直鎖状低密度ポリエチレン(密度:915kg/m、MFR:1g/10min)
(相溶化剤)
エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(密度:930kg/m、MFR:3g/10min)
【0063】
<成形性の評価>
各樹脂組成物のペレットについて、成形性の評価を行った。成形性の評価は、MFRを測定することにより行った。MFRは、ISO 1133に準拠する方法で、260℃、荷重2.16kgで測定した値である。MFRが、4g/10min以上を合格、4g/10min未満を不合格として評価を行い、合格基準を満たしたペレットについて、樹脂組成物に対する島相が占める面積比率の算出、島相の平均粒径の測定、及び耐衝撃性の評価を行った。
【0064】
<樹脂組成物に対する島相が占める面積比率の算出>
実施例1~6の樹脂組成物のペレットについて、断面をミクロトームで切削して得た薄片を四酸化ルテニウムで染色し、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、10,000倍で観察して画像を取得した。得られた画像について、画像解析ソフトを用いて海島構造の島相を円形として抽出し、一定の視野範囲に対する島相が占める面積比率を算出した。
【0065】
<島相の平均粒径の測定>
実施例1~6の樹脂組成物のペレットについて、断面をミクロトームで切削して得た薄片を四酸化ルテニウムで染色し、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、10,000倍で観察して画像を取得した。得られた画像について、画像解析ソフトを用いて海島構造の島相を円形として抽出し、その円形の最大径を測定した。任意の150個の島相について最大径の測定を行い、平均値を島相の平均粒径とした。
【0066】
<耐衝撃性の評価>
実施例1~6、及び比較例4の樹脂組成物のペレットについて、耐衝撃性の評価を行った。耐衝撃性の評価は、シャルピー衝撃試験により衝撃値を測定することにより行った。シャルピー衝撃試験は、ISO 179-1に準拠する方法で、試験片形状80mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)で、ノッチ付き、試験温度23℃で行った。また、ハンマー容量は、実施例1~6は2.0Jであり、比較例4は0.5Jとした。試験片の成形温度は、実施例1~6は305℃、比較例4は280℃で行った。
【0067】
各樹脂組成物のペレットの成形性、樹脂組成物に対する島相が占める面積比率、島相の平均粒径、及び耐衝撃性の評価結果を表1及び2に示す。なお、実施例4の樹脂組成物のペレットについては、海島構造を有しないため、樹脂組成物に対する島相が占める面積比率、及び島相の平均粒径の評価は行っていない。また、実施例6の樹脂組成物のペレットについては、島相が層状であったため、平均粒径の測定は行っていない。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1及び2に示すように、実施例1~6の樹脂組成物では、MFRが合格基準を満たし、射出成形に使用可能な成形性を有していた。比較例1~3の樹脂組成物では、MFRが合格基準を満たさず、射出成形において問題を有することが確認された。また、実施例1~6の樹脂組成物では、比較例4の樹脂組成物に比して、衝撃値が高く耐衝撃性に優れていた。
【0071】
<成形品及び容器の製造>
実施例1の樹脂組成物のペレットを用いて、射出成形機で図1に示す容器の底部を形成し底板を作製した。射出成形において、樹脂組成物が詰まることなく容易に成形することができた。続いて、実施例1の樹脂組成物のペレットを用いて、熱プレス機で厚さ0.5mmの単層フィルムを作製した。
【0072】
得られた単層フィルムをマンドレルに巻き付けて、ヒートシールにより筒状の胴部を成形した。ついで、実施例1の樹脂組成物のペレットをマンドレル上に押し出し、型締めして胴部と一体となった口部を成形した。そして、底板を胴部にはめ込み、ヒートシールして、容器を製造した。得られた容器は、落下試験により、耐衝撃性を有することを確認した。
【0073】
(本発明の態様)
本発明は、以下の態様を含む。
<態様1>
ポリエステル系樹脂と、ポリエチレン系樹脂と、相溶化剤とを含有し、
前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを含み、
前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分の少なくともいずれか一方を含み、
前記ジオール成分は、テトラオキサスピロウンデカン環を有するジオール成分を含み、
前記ポリエステル系樹脂が海相を構成し、前記ポリエチレン系樹脂が島相を構成する海島構造を有する樹脂組成物。
<態様2>
前記樹脂組成物に対する島相が占める面積比率が、5%~40%である態様1に記載の樹脂組成物。
<態様3>
前記島相の平均粒径が、0.1μm~2.5μmである態様1又は2に記載の樹脂組成物。
<態様4>
前記相溶化剤が、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルと、エチレンとの共重合鎖を含有する態様1~3のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<態様5>
前記相溶化剤が、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体である態様4に記載の樹脂組成物。
<態様6>
前記ジオール成分が、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを含む態様1~5のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<態様7>
前記ジオール成分が、エチレングリコールを含む態様1~6のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<態様8>
メルトフローレートが、5g/10min~15g/10minである態様1~7のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<態様9>
前記ポリエチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンである態様1~8のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<態様10>
態様1~9のいずれか一つに記載の樹脂組成物を成形した成形品。
<態様11>
射出成形品である態様10に記載の成形品。
<態様12>
態様11に記載の成形品を部材として用いた容器。
<態様13>
底部と、口部と、前記底部及び前記口部と接合された、可撓性を有する筒状の胴部とを備え、
前記底部及び前記口部は、剛性を有し、態様10又は11に記載の成形品から形成されている容器。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。また、実施形態で説明した複数の特徴は適宜組み合せることも可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 筒状容器
11 筒状容器の胴部
12 筒状容器の口部
13 筒状容器の底部
20 チューブ容器
21 チューブ容器の胴部
22 チューブ容器の口部
23 チューブ容器の封止部
30 パウチ容器
31 パウチ容器の胴部
32 パウチ容器の口部
図1
図2
図3