(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138840
(43)【公開日】2023-10-02
(54)【発明の名称】光ケーブル敷設方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/50 20060101AFI20230922BHJP
G02B 6/46 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G02B6/50 311
G02B6/46 317
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131524
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2022504791の分割
【原出願日】2020-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 信
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 勇太
(72)【発明者】
【氏名】鉄谷 成且
(72)【発明者】
【氏名】泉田 史
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 裕明
(57)【要約】
【課題】本開示は、土木工事を伴うことなく、かつ、光ケーブルを安定な場所に敷設および撤去を可能とする光ケーブル敷設方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の光ケーブル敷設方法は、光ケーブルを埋め込む敷設帯を、路面又は壁面に設置し、設置した前記敷設帯に、光ケーブルを埋め込んだ後に切り込みの切口が塞がるような切り込みを形成し、形成した前記切り込みに光ケーブルを埋め込む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルを埋め込む敷設帯を、路面又は壁面に設置し、
設置した前記敷設帯に、光ケーブルを埋め込んだ後に切り込みの切口が塞がるような切り込みを形成し、
形成した前記切り込みに光ケーブルを埋め込む光ケーブル敷設方法。
【請求項2】
設置した前記敷設帯に光ケーブルを埋め込む切り込みを形成する際に、
前記敷設帯の一部を切り取って、光ケーブルの接続部を収納する空間を形成し、
形成した前記切り込みに光ケーブルを埋め込む際に、
前記空間の底に接続部を配置するトレイを設置し、
前記切り込みから前記トレイへ光ケーブルを導入して、接続部を形成し、
前記トレイに前記接続部を収容した後、前記空間の開放側を蓋部で覆うことを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル敷設方法。
【請求項3】
前記敷設帯には、光ケーブルの接続部を収納する空間が予め形成されており、
設置した前記敷設帯に光ケーブルを埋め込む切り込みを形成し、形成した前記切り込みに光ケーブルを埋め込む際に、
前記空間の底に接続部を配置するトレイを設置し、
前記切り込みから前記トレイへ光ケーブルを導入して、接続部を形成し、
前記トレイに前記接続部を収容した後、前記空間の開放側を蓋部で覆うことを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル敷設方法。
【請求項4】
光ケーブルを埋め込んだ後に切り込みの切口が塞がるような切り込みが予め形成された敷設帯を、路面又は壁面に設置し、
設置した前記敷設帯の前記切り込みに光ケーブルを埋め込む光ケーブル敷設方法。
【請求項5】
設置した前記敷設帯の前記切り込みに光ケーブルを埋め込む際に、
前記敷設帯の一部を切り取って、光ケーブルの接続部を収納する空間を形成し、
前記空間の底に接続部を配置するトレイを設置し、
前記切り込みから前記トレイへ光ケーブルを導入して、接続部を形成し、
前記トレイに前記接続部を収容した後、前記空間の開放側を蓋部で覆うことを特徴とする請求項4に記載の光ケーブル敷設方法。
【請求項6】
前記敷設帯には、光ケーブルの接続部を収納する空間が予め形成されており、
設置した前記敷設帯の前記切り込みに光ケーブルを埋め込む際に、
前記空間の底に接続部を配置するトレイを設置し、
前記切り込みから前記トレイへ光ケーブルを導入して、接続部を形成し、
前記トレイに前記接続部を収容した後、前記空間の開放側を蓋部で覆うことを特徴とする請求項4に記載の光ケーブル敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ケーブル敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信の伝送媒体として光ケーブルが用いられている。光ケーブルを例えば屋外に敷設する場合、架空配線技術か地下配線技術が用いられる。架空配線技術は、地上に予め電柱を建てて、この電柱に光ケーブルを架設する配線技術である。地下配線技術は、地下にあらかじめ管路を埋設し、その管路内に光ケーブルを敷設する配線技術である。
【0003】
これまでは、新たに光ケーブルを敷設する場合、既に通信用のメタリックケーブルが敷設されている地域に、追加で光ケーブルを敷設することが大半であった。この場合は、既に電柱や管路などの基盤設備が整備されているため、新たな土木工事を伴わずに、経済的に光ケーブルを敷設することが可能であった。これは、通信需要の発生する場所が、従前のメタリックケーブルが配線されていた場所と同様であったため、基盤設備を新たに構築することなく追加敷設が可能であったからである。
【0004】
近年では、携帯電話用のアンテナなどを広く展開する為に、これまで基盤設備が整備されていなかったエリアにも、光ファイバを敷設する必要が生じている。また、既に基盤設備はあるものの、家屋やビルへの配線でなく、路上の街灯などの構造物に新たに配線する必要が生じる。このような場合、さらなる基盤設備の整備には大きな投資を伴う。経済的な光ケーブルの配線のためには、可能な限り土木工事を伴わずに光ケーブルを敷設できることが望ましい。
【0005】
土木工事の簡略化のために、管路を利用することなく直接埋設可能な光ケーブルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、あらかじめ舗装されている路面に溝を切り、その溝の中に光ケーブルを敷設する方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Strain Sensing of an In-Road FTTH Field Trial and Implications for Network Reliability, Proc. of IWCS (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの方法は、管路を埋設したり、電柱を建てたりすることは不要となるものの、光ケーブルが敷設される長さだけ地面を掘り起こしたり、アスファルトやコンクリートなどで舗装された路面を掘削する必要がある。このような土木工事は、人力では困難で、重機を用いる規模となる。
【0009】
また、光ケーブルを配線する際には、光ケーブルの延長や分岐のための接続部を設ける必要がある。このような接続部は、一般的にはクロージャなどの筐体に収納される。前記先行技術で光ケーブルを敷設する際には、これらのクロージャを格納するための一定の空間を確保する必要がある。あるいは、光ケーブルを地下から地上に引き上げる場合には、引き上げ口を保護するための空間が必要となる。これらの空間は、光ケーブル敷設に先行して用意しておかなければならない。
【0010】
後から敷設する光ケーブルには、将来の接続や分岐に備えて、余長が必要である。光ケーブルの余長保護のために、その余長を収納するボックスを設ける必要もある。ボックスは、地上に設置するため、道路通行の阻害要因となる。
【0011】
一方で、安定な通信を確保するためには、光ケーブルを安定な場所に敷設する必要がある。さらに、光ケーブルが不要となった場合には、施工時と同様に土木工事を伴うことなく撤去できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、上記課題を解決するものであって、土木工事を伴うことなく、かつ、光ケーブルを安定な場所に敷設および撤去を可能とする光ケーブル敷設方法を提供することを目的とする。
【0013】
本開示では、土木工事を不要とするために、路面又は壁面に設置され、光ケーブルを埋め込む切り込みが形成された敷設帯に、光ケーブルを埋め込む。
【0014】
具体的には、本開示の光ケーブル敷設方法は、
光ケーブルを埋め込む敷設帯を、路面又は壁面に設置し、
設置した前記敷設帯に、光ケーブルを埋め込んだ後に切り込みの切口が塞がるような切り込みを形成し、
形成した前記切り込みに光ケーブルを埋め込む。
【0015】
具体的には、本開示の光ケーブル敷設方法は、
光ケーブルを埋め込んだ後に切り込みの切口が塞がるような切り込みが予め形成された敷設帯を、路面又は壁面に設置し、
設置した前記敷設帯の前記切り込みに光ケーブルを埋め込む。
【発明の効果】
【0016】
本開示の光ケーブル敷設方法によれば、土木工事を伴うことなく、かつ、光ケーブルを安定な場所に敷設および撤去を可能とする光ケーブル敷設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(実施形態1)
本開示の光ケーブル敷設方法の例を
図1から
図3で説明する。
図1から
図3において、11は敷設帯、12は切込み、21は路面、22は光ケーブルである。
【0020】
路面21に設置した敷設帯11を
図1に示す。路面21の凹凸に滑らかに対応でき、路面からの振動を吸収できるよう、敷設帯11は、ゴムや樹脂など弾力性のある材料を用いることが好ましい。敷設帯11が長尺であれば、ロール状に巻き取っておくと敷設現場までの運搬が容易である。敷設帯11を短尺にしてタイル状にすると、積み重ねて運搬することができる。敷設帯11を路面21に設置する際には、路面21に接着剤で固定すると、敷設帯11が安定する。敷設帯11を路面21だけでなく、壁面(不図示)に設置する場合も同様である。
【0021】
光ケーブルを埋め込むための切り込み12を形成した敷設帯11を
図2に示す。敷設帯11の上面に、光ケーブルを敷設する任意の位置で、任意の形状で切れ目を入れて、切り込み12を形成する。障害物がなければ、直線状に切り込み12を形成すればよい。後述する光ケーブルの接続部を収納する空間を形成する予定の場所、あるいはすでにその空間を形成している場所があれば、その空間を横切ったり、迂回したりする位置と形状で切り込み12を形成すればよい。敷設帯11を路面21や壁面(不図示)に設置してから切り込み12を形成すると、敷設帯11を設置する環境に応じて望ましい位置に、望ましい形状の切り込み12を形成することができる。
【0022】
敷設帯11に光ケーブル22を埋め込む状況を
図3に示す。光ケーブル22を切り込み12に挟み込むように埋め込む。光ケーブル22を埋め込んだ後、切り込み12の切り口が塞がるように、敷設帯11は弾力性のある材料を用いることが好ましい。
【0023】
図1から
図2の説明では、敷設帯11を路面21や壁面に設置してから、切り込み12を形成したが、切り込み12が予め形成された敷設帯11を路面21や壁面に設置してもよい。工具や環境の整った場所で予め切り込み12を形成しておけば、切り込み12の形成を容易とすることができる。
【0024】
また、切り込み12が形成された敷設帯11に、新たな切り込み12を追加で形成することもできる。新たな切り込み12を追加で形成すると、光ケーブルの追加敷設が可能となる。
【0025】
光ケーブル22を撤去する際には、敷設帯11を路面21や壁面(不図示)から引き剥がせばよい。光ケーブル22を撤去してから、敷設帯11を引き剥がしてもよいし、光ケーブル22を埋め込んだまま、敷設帯11を引き剥がしてもよい。
【0026】
本実施形態の光ケーブル敷設方法によれば、土木工事を伴うことなく、かつ、光ケーブルを安定な場所に敷設および撤去を可能とする光ケーブル敷設方法を提供することができる。
【0027】
(実施形態2)
本開示の光ケーブル敷設方法の例を
図4から
図9で説明する。
図4から
図9において、11は敷設帯、12は切込み、13は空間、14はトレイ、15は蓋部、21は路面、22は光ケーブル、23は光ファイバ心線、24は接続部である。
【0028】
路面21に設置した敷設帯11を
図4に示す。敷設帯11の構成や設置方法は実施形態1と同様である。
【0029】
光ケーブルを埋め込むための切り込み12及び光ケーブルの接続部を収納する空間13を形成した敷設帯11を
図5及び
図6に示す。この切り込み12の形成は、実施形態1と同様である。
図5に示すように、敷設帯11の一部を切り取るための切れ目を入れ、
図6に示すように、切れ目に沿って切り取って、光ケーブルの接続部を収納する空間13を形成する。空間13を切り込み12に接するように配置すれば、光ケーブルの接続部の収容が容易となる。複数の切り込み12を形成する場合は、空間13を挟んで反対側に切り込み12を形成してもよい。空間13を横切って切り込み12を形成してもよい。空間13を迂回して切り込み12を形成してもよい。敷設帯11を路面21や壁面(不図示)に設置してから切り込み12や空間13を形成すると、敷設帯11を設置する環境に応じて望ましい位置に、望ましい形状の切り込み12や空間13を形成することができる。
【0030】
図4から
図6の説明では、敷設帯11を路面21や壁面に設置してから、切り込み12及び空間13を形成したが、切り込み12のみが予め形成された敷設帯11を路面21や壁面に設置し、設置した敷設帯11に空間13を形成してもよい。空間13のみが形成された敷設帯11を路面21や壁面に設置し、設置した敷設帯11に切り込み12を形成してもよい。切り込み12及び空間13が予め形成された敷設帯11を路面21や壁面に設置してもよい。工具や環境の整った場所で予め切り込み12や空間13を形成しておけば、切り込み12や空間13の形成を容易とすることができる。
【0031】
また、切り込み12又は空間13が形成された敷設帯11に、新たな切り込み12又は空間13を追加で形成することもできる。新たな切り込み12や新たな空間13を追加で形成すると、光ケーブルの追加敷設や接続部の追加収容が可能となる。
【0032】
敷設帯11に光ケーブル22を埋め込み、接続部24を収容する状況を
図7から
図9に示す。
図7及び
図8において、形成した空間13の底に接続部24を配置するトレイ14を設置する。トレイ14は空間13に収まる大きさ、形状が望ましい。トレイ14の設置と前後して、光ケーブル22を切り込み12に挟み込むように埋め込む。
【0033】
図8において、光ケーブル22の接続、分岐を行う場合は、光ケーブル22の端で光ファイバ心線23を露出させ、接続して接続部24を形成する。光ファイバ心線23の余長部や接続部24をトレイ14に収容する。トレイ14を設置しておくと、光ファイバ心線23の余長部や接続部24を保護することができる。これによって、接続部24を収容するクロージャや地上ボックスを別途設置する必要がなくなる。
【0034】
空間13は、光ケーブル22の埋め込み後に形成してもよい。光ケーブル22の実際の長さに合わせて適切な位置に接続部24を配置ことができるため、光ケーブル22の長さの調整が不要となる。これは光ケーブル22の余長を切断する無駄がなくなるだけでなく、光ケーブル22の長さが足りない場合に、十分な長さの光ケーブル22に張り替える手間が不要となる。
【0035】
図9において、空間13の開放側を蓋部15で覆う。蓋部15で覆うことにより、接続部24や光ファイバ心線23を保護することができる。蓋部15の部材は、敷設帯11と同様の部材が好ましい。蓋部15の形状は、空間13の開放側に一致することが好ましい。
【0036】
光ケーブル22を撤去する際には、敷設帯11を路面21や壁面(不図示)から引き剥がせばよい。光ケーブル22を撤去してから、敷設帯11を引き剥がしてもよいし、光ケーブル22を埋め込んだまま、敷設帯11を引き剥がしてもよい。
【0037】
上記の実施形態で敷設帯11を路面に設置する場合は、用いる敷設層、光ケーブル、トレイなどの部材は、例えば1cm程度の厚さに収めるような物品で構成し、かつ適切な機械特性を持たせることによって、踏みつけられることによる故障などを生じさせないよう設計すればよい。これによって、路面上で邪魔にならず、地下への埋設や架空への架設と同様通行の妨げにならないような配線を経済的に構築することができる。
【0038】
本実施形態の光ケーブル敷設方法によれば、土木工事を伴うことなく、かつ、光ケーブルを安定な場所に敷設および撤去を可能とする光ケーブル敷設方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
11:敷設帯
12:切り込み
13:空間
14:トレイ
15:蓋部
21:路面
22:光ケーブル
23:光ファイバ心線
24:接続部