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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138891
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/04 20060101AFI20230926BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230926BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20230926BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20230926BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20230926BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20230926BHJP
【FI】
A41D19/04 B
C08L27/06
C08K5/42
C08K5/11
C08K5/12
C08K3/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044797
(22)【出願日】2022-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和徳
【テーマコード(参考)】
3B033
4J002
【Fターム(参考)】
3B033BA01
4J002BD081
4J002DC008
4J002EH087
4J002EH097
4J002EH137
4J002EH147
4J002EV256
4J002FD027
4J002FD036
4J002FD038
4J002FD208
4J002GC00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】 優れた柔軟性、フィット性、装着性等を有し、質感と機械的強度とのバランスにも優れる手袋を提供する。
【解決手段】 酢酸ビニル残基単位5~20重量%、平均重合度1000~3000であるペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む手袋。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニル残基単位5~20重量%、平均重合度1000~3000であるペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含むものであることを特徴とする手袋。
【請求項2】
ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、アルキル硫酸エステル塩0.5~2重量部を含み、下記一般式(1)で表される化合物100~3000ppm、を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の手袋。
【化1】
(1)
(式中、Aは炭素数2~4のアルキレン基を示し、nは1~200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
【請求項3】
アルキル硫酸エステル塩が、ラウリル硫酸リチウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム及びラウリル硫酸トリエタノールアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、ことを特徴とする請求項2に記載の手袋。
【請求項4】
ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、可塑剤80~180重量部及び安定剤1~5重量部を含むものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の手袋。
【請求項5】
可塑剤が、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル、アジピン酸(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)及びトリメリット酸トリイソデシルからなる群より選択される少なくとも1種以上の可塑剤であり、安定剤が、カルシウム-亜鉛系安定剤、エポキシ系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤からなる群より選択される少なくとも1種以上の安定剤であることを特徴とする請求項4に記載の手袋。
【請求項6】
ディッピング加工製であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋に関し、詳しくは、優れた柔軟性、フィット性、装着性、永久伸びと機械物性(破断強度、破断伸び)等を有し、質感と機械的強度とのバランスにも優れるペースト塩化ビニル系樹脂製の手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合もある。)は、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより、ペースト塩ビゾルを調製し、該ペースト塩ビゾルを使用し種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋などの様々な成形加工品に用いられている。
【0003】
そして、塩化ビニル樹脂製の手袋等は、機械的強度が強く、耐摩耗性、耐薬品性、耐油性に優れ、水産業、農業、鉱業等の広い分野に使用されているが、その反面、伸縮性、柔軟性が低く、硬い、ゴワゴワする、装着し難い、等の手袋としての質感に課題を有していた。
【0004】
そこで、これら課題を補うため手袋基体内面に無機物の微粉末等を散布する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-136602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の提案においては、装着性を改善するものであるが、使用時に粉が手や物に付着し不快感を与える、電子工業、精密工業等の粉塵を嫌う産業での使用に適さない、という課題を有すると共に特に手袋としての柔軟性、永久伸びと機械物性のバランス等については何ら検討のなされていないものであった。
【0007】
そこで、本発明は、柔軟性、フィット性、装着性、永久伸びと機械物性(破断強度、破断伸び)等を有し、質感と機械的強度とのバランスにも優れるペースト塩化ビニル系樹脂製の手袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定のペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む手袋が、柔軟性、フィット性、装着性、永久伸びと機械物性(破断強度、破断伸び)等を有し、質感と機械的強度とのバランスにも優れるものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、酢酸ビニル残基単位5~20重量%、平均重合度1000~3000であるペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とする手袋に関するものである。
【0010】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0011】
本発明の手袋は、酢酸ビニル残基単位5~20重量%、平均重合度1000~3000であるペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含むものであり、該ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル残基単位の含量が5~20重量%(すなわち、酢酸ビニル残基単位含量は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して5~20重量部に相当する。)であり、特に手袋として優れた柔軟性と永久伸びとなることから、当該酢酸ビニル残基単位7~15重量%(すなわち、酢酸ビニル残基単位含量は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して7~15重量部に相当する。)であることが好ましい。ここで、酢酸ビニル残基単位含有量が5重量%未満のものである場合、手袋は柔軟性、永久伸びに劣るものとなる。一方、酢酸ビニル残基単位が20重量%を超えるものである場合、手袋として加工する際のゾルの粘度の経時変化が大きくなり、加工性に劣るものとなる。また、該ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、その平均重合度が1000~3000のものであり、特に手袋として優れたものを提供することが可能となることから、平均重合度1600~2000であることが好ましい。ここで、平均重合度が、1000未満のものである場合、手袋は機械的強度に劣るものとなる。一方、3000を超えるものである場合、手袋とする際の生産性に劣るものとなる。なお、平均重合度は、例えばJIS-K6721に準拠した方法で求めることができる。
【0012】
本発明の手袋を構成するペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体としては、一般的にペースト加工に適したペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体として知られているものでよく、例えば塩化ビニルモノマー及び酢酸ビニルモノマーを、乳化重合法、ミクロ懸濁重合法、シード乳化重合法、シードミクロ懸濁重合法等により重合して得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体のいずれもが使用できる。また、市販品であってもよい。
【0013】
本発明の手袋は、特に柔軟性、永久伸びに極めて優れるものとなることからペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、アルキル硫酸エステル塩0.5~2重量部を含むものであることが好ましく、特に0.7~1.1重量部を含むものであることが好ましい。また、該アルキル硫酸エステル塩については、手袋製造時の添加は無論のこと、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の製造時に添加するものであってもよく、その際には重合時の安定性の点からから、全炭素数が10~14のアルキル硫酸エステル塩であることが好ましく、例えば、ラウリル硫酸リチウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウム等のラウリル硫酸塩;オレイル硫酸リチウム、オレイル硫酸カリウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸トリエタノールアンモニウム等のオレイル硫酸塩;ミリスチル硫酸リチウム、ミリスチル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸トリエタノールアンモニウム等のミリスチル硫酸塩、等が挙げられ、特にラウリル硫酸リチウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウム等のラウリル硫酸塩であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の手袋は、特に柔軟性、永久伸びに極めて優れ、生産時の生産性にも優れるものとなることから下記一般式(1)で示される化合物を100~3000ppmを含むものであることが好ましく、特に500~2000ppmを含むものであることが好ましい。
【0015】
【化1】
(1)
(ここで、Aは炭素数2~4のアルキレン基を示し、nは1~200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
【0016】
そして、上記一般式(1)で示される化合物は、手袋製造時の添加は無論のこと、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の製造時に界面活性剤として添加するものであってもよく、中でも、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の製造時に安定性は無論のこと、手袋とする際のディッピング加工(浸漬加工)時のゾルの液だれを抑制させることに極めて優れることから、Aは炭素数2~3のアルキレン基、nは1~40であることが好ましく、具体例としてノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0017】
本発明の手袋は、柔軟性に優れ、ブリードアウト等の品質、衛生上の課題が発生しないことから、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、可塑剤80~180重量部を含むものであることが好ましく、特に80~150重量部、更に80~100重量部を含むものであることが好ましい。該可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂用の可塑剤として一般的に知られているものでよく、中でも、柔軟性、永久伸びと機械的強度とのバランスに優れる手袋となることから、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル、アジピン酸(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)及びトリメリット酸トリイソデシルからなる群より選択される少なくとも1種以上の可塑剤であることが好ましく、特に耐熱老化性にも優れる手袋となることからテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(以下、DOTPと称することもある。)であることが好ましい。
【0018】
本発明の手袋は、熱安定に優れ、ブリードアウト等の品質、衛生上の課題が発生しないことから、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、安定剤1~5重量部を含むものであることが好ましく、特に1~4重量部、更に2~3重量部を含むものであることが好ましい。該安定剤としては、塩化ビニル系樹脂用の安定剤として一般的に知られているものでよく、例えばエポキシ系安定剤、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤等が挙げられ、また、市販のカルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤等の複合安定剤を挙げることができ、特に熱安定性に優れる手袋となることからカルシウム-亜鉛系安定剤、エポキシ系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤であることが好ましく、更にカルシウム-亜鉛系安定剤が好ましい。
【0019】
本発明の手袋は、本発明の目的を超えない範囲でペースト塩ビに通常添加される添加剤、例えば、充填剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料等の着色剤、界面活性剤、帯電防止剤等を含有していてもよく、またそれらの配合量も一般に使用される範囲で差し支えない。
【0020】
本発明の手袋の製造方法としては、ゾル成形法として知られている方法を用いることができ、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に例えば可塑剤、安定剤、場合によってはアルキル硫酸エステル塩、上記一般式(1)で示される化合物、その他添加剤等を配合し、例えばミキサー等により混錬を行い、ゾルを調製した後、該ゾルを塗布、型注入、噴霧又はゾルに型浸漬、を行った後に固化することにより手袋とすることができる。その中でも、ゾルとしての特性を利用したディッピング加工法(浸漬加工法)を用い手袋とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の手袋は、優れた柔軟性、フィット性、装着性、永久伸びと機械物性(破断強度、破断伸び)等を有し、質感と機械的強度とのバランスに優れ、各種産業での利用が期待されるものである。
【実施例0022】
以下に、実施例及び比較例により本発明の内容を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
以下に実施例における評価・測定方法を示す。
【0024】
<柔軟性の評価>
実施例及び比較例により得られた手袋の柔軟性を以下の基準にて評価した。
〇;手袋の装着性がよく、フィット感があり、装脱着時によく伸びる。
×;手袋の装着性、フィット感に劣り、装脱着時に伸びが悪く硬い。
【0025】
<破断強度、破断伸びの評価>
実施例及び比較例により得られた手袋よりJIS 3号ダンベルを切り出し、試験片を作成し、試験片の中央に20mm間隔の標線を入れ、引張り試験装置に取り付け、23℃で50mm/分の速度で引張り、破断時の荷重及び標線間の伸びを測定し、破断伸び、破断応力及び伸び200%での応力を測定し評価した。評価基準は以下のようにした。
破断伸びが300%以上;柔軟性に優れる。
破断応力が9MPa以上;強度に優れる。
伸び200%での応力が4MPa以上10MPa以下;強度と柔軟性のバランスに優れる。
【0026】
<永久伸びの評価>
実施例及び比較例により得られた手袋よりJIS 3号ダンベルを切り出し、試験片を作成し、試験片の中央に20mm間隔の標線を入れ、引張り試験装置に取り付け、23℃で50mm/分の速度で引っ張った。伸びが250%となった時点で、応力を取り除いた時の標線間の伸びを測定し、永久伸びとして評価した。評価基準は以下のようにした。
永久伸び30%以下:引っ張った際の伸び、戻りに優れ、装着性に優れる手袋となる。
永久伸び30%を超える:張った際に硬く、戻りが悪く、装着性に劣る手袋となる。
【0027】
<平均重合度>
JIS-K6721に準拠し求めた。
【0028】
<平均酢酸ビニル残基単位の含有量>
ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体中に含有する平均酢酸ビニル残基単位の含有量(重量%)(VAc含量と記す場合もある。)は、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子100mgと臭化カリウム10mgを混合し、すりつぶして成形した測定サンプルを赤外分光光度計(島津社製、(商品名)FTIR-8100A)にて測定したスペクトルにて、下記式より算出した。
VAc含量=(3.73×B/A+0.024)×1.04
A:1430cm-1付近のC-H面内変角による吸収ピークトップのAbs.値。
B:1740cm-1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップのAbs.値。
【0029】
合成例1
1mステンレス製オートクレーブに脱イオン水360kg、塩化ビニルモノマー300kg、過酸化ラウロイル5.7kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、ホモジナイザーを用いて3時間循環し均質化処理を行なった後、反応系の温度を45℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、固形分含有率35重量%、平均粒子径0.55μm、塩化ビニル系樹脂に対して2重量%の過酸化ラウロイルを含有する塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)を得た。
【0030】
合成例2
1mステンレス製オートクレーブに脱イオン水400kg、塩化ビニルモノマー350kg、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び16重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5kgを仕込み、反応系の温度を60℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、固形分含有率40重量%、平均粒子径0.15μmである塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)を得た。
【0031】
合成例3
2.5Lステンレス製オートクレーブに脱イオン水720g、塩化ビニルモノマー800g、酢酸ビニルモノマー112g、5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液10g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4重量部、合成例2により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(b)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し2重量部仕込み、この反応混合物の温度を30℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液とノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製、(商品名)アクアロンBC-1025)0.1重量部を連続的に添加した。重合圧が30℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.21MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを得た。
【0032】
得られた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、ラウリル硫酸ナトリウム0.9重量部を含み、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩870ppmを含むものであった。また、酢酸ビニル残基単位の含量は7.4wt%、重合度は2560であった。
【0033】
合成例4
2.5Lステンレス製オートクレーブに脱イオン水720g、塩化ビニルモノマー800g、酢酸ビニルモノマー112g、5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液10g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4重量部、合成例2により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(b)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し2重量部仕込み、この反応混合物の温度を48℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液とノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンBC-1025)0.1重量部を連続的に添加した。重合圧が48℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.42MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを得た。
【0034】
得られた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、ラウリル硫酸ナトリウム0.9重量部を含み、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を870ppm含むものであった。また、酢酸ビニル残基単位の含量は8.0wt%、重合度は1170であった。
【0035】
合成例5
2.5リットルオートクレーブ中に脱イオン水500g、1段目仕込み単量体として塩化ビニルモノマーを493g(混合単量体の全仕込み量に対して62重量%)と酢酸ビニルモノマーを96g(混合単量体の全仕込み量に対して12重量%)、5%水溶液ラウリル硫酸ナトリウムを9g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を85g、0.1%水溶液硫酸銅を4g仕込み、その後、この反応混合物の温度を35℃に上げて1段目重合を開始するとともに、0.05重量%アスコルビン酸水溶液を全重合時間を通じて、重合温度を維持するように連続的に添加した。重合転化率が50%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニルモノマー140g(混合単量体の全仕込み量に対して17重量%)を2.5リットルオートクレーブに仕込み、重合温度35℃にて2段目重合を継続した。
【0036】
更に、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が80%となったところで3段目仕込み単量体として、塩化ビニルモノマー70g(混合単量体の全仕込み量に対して9重量%)を2.5リットルオートクレーブに仕込み、重合温度35℃にて3段目重合を継続し、混合単量体の合計に対して重合転化率が90%となったところで重合を終了した。
【0037】
重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液とノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンBC-1025)0.1重量部を連続的に添加し、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを得た。
【0038】
得られた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、ラウリル硫酸ナトリウム0.8重量部を含み、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を1200ppm含むものであった。また、酢酸ビニル残基単位の含量は9.0wt%、重合度は1900であった。
【0039】
合成例6
2.5リットルオートクレーブ中に脱イオン水500g、1段目仕込み単量体として塩化ビニルモノマーを450g(混合単量体の全仕込み量に対して56重量%)と酢酸ビニルモノマーを160g(混合単量体の全仕込み量に対して20重量%)、5%水溶液ラウリル硫酸ナトリウムを9g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を85g、0.1%水溶液硫酸銅を4g仕込み、その後、この反応混合物の温度を35℃に上げて1段目重合を開始するとともに、0.05重量%アスコルビン酸水溶液を全重合時間を通じて、重合温度を維持するように連続的に添加した。重合転化率が50%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニルモノマー130g(混合単量体の全仕込み量に対して16重量%)を2.5リットルオートクレーブに仕込み、重合温度35℃にて2段目重合を継続した。
【0040】
更に、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が80%となったところで3段目仕込み単量体として、塩化ビニルモノマー65g(混合単量体の全仕込み量に対して8重量%)を2.5リットルオートクレーブに仕込み、重合温度35℃にて3段目重合を継続し、混合単量体の合計に対して重合転化率が90%となったところで重合を終了した。
【0041】
重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液とノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンBC-1025)0.1重量部を連続的に添加し、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを得た。
【0042】
得られた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、ラウリル硫酸ナトリウム0.8重量部を含み、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を1200ppm含むものであった。また、酢酸ビニル残基単位の含量は15.1wt%、重合度は1500であった。
【0043】
実施例1
合成例3により得られたペースト塩ビ-酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、可塑剤としてテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(ジェイ・プラス社製)100重量部、カルシウム-亜鉛複合系熱安定剤(ADEKA社製、グレード名:SC-320)3重量部を添加してディゾルバーを用いて混練し、ゾルとした。
【0044】
得られたゾルに陶磁器性手型を浸漬し、ゾルが滴下しない程度の速さで引き上げ、手型表面に塩化ビニルゾルを付着させた。次にこの手型をギヤーオーブン(200℃)中で8分間加熱処理し、全体を完全にゲル化した後、手型より反転離型して手袋を得るディッピング加工を行った。
【0045】
得られた手袋により、柔軟性、破断強度、破断伸び、永久伸びの評価を行った。評価結果を表1に示す。得られた手袋は、柔軟性と機械物性のバランスに優れるものであった。
【0046】
実施例2~4
合成例3により得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の代わりに、合成例4,5,6により得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様に方法により手袋を得、その評価を行った。
【0047】
評価結果を表1に示す。得られた手袋は、柔軟性と機械物性のバランスに優れるものであった。
【0048】
【表1】
【0049】
合成例7
2.5Lステンレス製オートクレーブに脱イオン水720g、塩化ビニルモノマー800g、5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液10g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4重量部、合成例2により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(b)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し2重量部仕込み、この反応混合物の温度を48℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液とノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンBC-1025)0.1重量部を連続的に添加した。重合圧が48℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.50MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを得た。
【0050】
得られた塩化ビニル重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル重合体は、塩化ビニル重合体100重量部に対し、ラウリル硫酸ナトリウム0.9重量部を含み、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を870ppm含むものであった。また、重合度は1650であった。
【0051】
合成例8
2.5Lステンレス製オートクレーブに脱イオン水520g、塩化ビニルモノマー800g、5重量%スルホコハク酸ナトリウム水溶液10g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4重量部、合成例2により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(b)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し1重量部仕込み、この反応混合物の温度を42℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.5重量部の5重量%スルホコハク酸ナトリウム水溶液を連続的に添加した。重合圧が42℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.33MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを得た。
【0052】
得られた塩化ビニル重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル重合体は、ラウリル硫酸ナトリウム及びノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を含有しないものであった。また、重合度は2100であった。
【0053】
合成例9
2.5Lステンレス製オートクレーブに脱イオン水610g、塩化ビニルモノマー730g、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液15g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し4重量部、合成例2により得られた平均粒子径0.15μmのシードラテックス(b)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し5重量部仕込み、この反応混合物の温度を54℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.7重量部の5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を連続的に添加した。重合圧が54℃における塩化ビニルモノマーの飽和蒸気圧から0.37MPaまで降下したときに重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマーを回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを得た。
【0054】
得られた塩化ビニル重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル重合体は、ラウリル硫酸ナトリウム、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を含有しないものであった。また、重合度は1100であった。
【0055】
合成例10
2.5リットルオートクレーブ中に脱イオン水500g、1段目仕込み単量体として塩化ビニルモノマーを450g(混合単量体の全仕込み量に対して56重量%)と酢酸ビニルモノマーを40g(混合単量体の全仕込み量に対して5重量%)、5%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを9g、合成例1により得られた平均粒子径0.55μmのシードラテックス(a)を85g、0.1%水溶液硫酸銅を4g仕込み、その後、この反応混合物の温度を56℃に上げて1段目重合を開始するとともに、0.05重量%アスコルビン酸水溶液を全重合時間を通じて、重合温度を維持するように連続的に添加した。重合転化率が85%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニルモノマー300g(混合単量体の全仕込み量に対して38重量%)を2.5リットルオートクレーブに仕込み、重合温度53℃にて2段目重合を継続し、混合単量体の合計に対して重合転化率が90%となったところで重合を終了した。
【0056】
重合を開始してから重合を終了までの間、塩化ビニルモノマーに対し0.8重量部の5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を連続的に添加し、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを得た。
【0057】
得られた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックス1kgを、回転円盤式のスプレードライヤーを用い、熱風温度160℃、出口温度60℃で噴霧乾燥し、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を得た。得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、ラウリル硫酸ナトリウム、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩を含有しないものであった。また、酢酸ビニル残基単位の含量は4.0wt%、重合度は1030であった。
【0058】
比較例1~4
合成例3により得られたペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の代わりに、合成例7,8,9,10により得られたペースト塩化ビニル重合体、ペースト塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体のそれぞれを用いた以外は、実施例1と同様の方法により手袋を得、その評価を行った。
【0059】
評価結果を表2に示す。得られた手袋は、柔軟性と機械物性のバランスに劣るものであった。
【0060】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の手袋は、優れた柔軟性、フィット性、装着性、永久伸びと機械物性(破断強度、破断伸び)等を有し、質感と機械的強度とのバランスにも優れ、各種産業における作業時に適用可能であり、その産業的価値は極めて高いものである。