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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138906
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】導電性高分子組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20230926BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20230926BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20230926BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20230926BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C08L65/00
C08K3/08
C08K7/06
C08G61/12
H01B1/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005813
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2022044795
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 淳一
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4J002CE001
4J002DA076
4J002FA016
4J002FA036
4J002FA076
4J002FA086
4J002FD116
4J002GQ02
4J002HA06
4J032BA04
4J032BB01
4J032BD05
4J032CG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来に比べて表面抵抗が低い、有機溶媒を溶媒とした導電性高分子組成物を提供する。
【解決手段】スルホン酸もしくはスルホン酸アンモニウム塩の置換基を有する3,4-エチレンジオキシチオフェンの構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10重量%含み、有機溶媒分散性金属(B)を0.01~1.0重量%含み、更に有機溶媒(C)を含むことを特徴とする、導電性高分子組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10重量%含み、有機溶媒分散性金属(B)を0.01~1.0重量%含み、更に有機溶媒(C)を含むことを特徴とする、導電性高分子組成物。
【化1】
[上記一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。Mは、有機アンモニウムイオン、又は第4級アンモニウムイオンを表す。]
【請求項2】
前記の有機溶媒分散性金属(B)が、銀ナノ粒子、銀ナノプレート、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子、銅ナノプレート、及び銅ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒分散性金属である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項3】
前記の有機溶媒分散性金属(B)が、有機溶媒分散性銀ナノワイヤーである、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項4】
前記のポリチオフェン(A)の含有量が、0.1~5質量%である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項5】
前記の有機溶媒分散性金属(B)の含有量が、前記ポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.01~100質量部である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の導電性高分子組成物を、支持体に塗布し、次いで、乾燥させることを特徴とする膜の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と有機溶媒分散性金属(B)を含む膜。
【化2】
[上記一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。Mは、有機アンモニウムイオン、又は第4級アンモニウムイオンを表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子組成物及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はポリピロール等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発されている。前記導電性高分子材料については、例えば、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電波遮蔽材、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサー、アクチュエータ等への応用が検討されている。このような用途の中には、樹脂との高い相溶性が求められるものや、水を嫌うものがあるため、有機溶媒を溶媒とした導電性高分子組成物が求められている。
【0003】
有機溶媒に溶解する導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン型導電性高分子やポリチオフェン型導電性高分子(例えば、特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-210356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された有機溶媒型導電性高分子組成物については、製膜された際の導電性高分子膜の表面抵抗が比較的高い傾向があるが、そのために用途が限定されるという課題があった。
【0006】
本発明は、従来公知の組成物に比べて表面抵抗が低い導電性高分子膜を製造可能な有機溶媒型導電性高分子組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す導電性高分子組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示す導電性高分子組成物、及び導電性高分子膜に関するものである。前記組成物を用いて製造される導電性高分子膜は、例えば透明電極や透明導電膜としての使用が可能となる。
【0009】
[1] 下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10重量%含み、有機溶媒分散性金属(B)を0.01~1.0重量%含み、更に有機溶媒(C)を含むことを特徴とする、導電性高分子組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[上記一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。Mは、有機アンモニウムイオン、又は第4級アンモニウムイオンを表す。]
[2] 前記の有機溶媒分散性金属(B)が、銀ナノ粒子、銀ナノプレート、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子、銅ナノプレート、及び銅ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒分散性金属である、[1]に記載の導電性高分子組成物。
【0012】
[3] 前記の有機溶媒分散性金属(B)が、有機溶媒分散性銀ナノワイヤーである、[1]又は[2]に記載の導電性高分子組成物。
【0013】
[4] 前記のポリチオフェン(A)の含有量が、0.1~5質量%である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0014】
[5] 前記の有機溶媒分散性金属(B)の含有量が、前記ポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.01~100質量部である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0015】
[6] [1]乃至[5]のいずれかに記載の導電性高分子組成物を、支持体に塗布し、次いで、乾燥させることを特徴とする、膜の製造方法。
【0016】
[7] 下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と有機溶媒分散性金属(B)を含む膜。
【0017】
【化2】
【0018】
[上記一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。Mは、有機アンモニウムイオン、又は第4級アンモニウムイオンを表す。]
【発明の効果】
【0019】
本発明は、従来公知の組成物に比べて表面抵抗が低い導電性高分子膜を製造可能な有機溶媒型導電性高分子組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその両端の数値を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0021】
本発明の導電性高分子組成物は、上記の通り、従来公知の組成物に比べて表面抵抗が低い導電性高分子膜を提供可能である。また、前記の導電性高分子膜については、膜質の均一性に優れ、優れた電波遮蔽性を示す。このように、本発明の導電性高分子組成物は、従来技術と比較して顕著な効果を奏するものである。
【0022】
また、詳細については、別途後述するが、本発明の導電性高分子組成物は、優れた耐湿熱耐久特性を示すものであり、有機溶媒分散性金属の湿熱劣化を著しく抑制できるという点で、顕著な効果を奏するものである。
【0023】
さらに、本発明の導電性高分子組成物は、高い導電性を示し、尚且つ透明性に優れる導電性高分子膜を提供できるため、着色や変色が極めて少ない電波遮蔽薄膜を提供できるという、顕著な効果を奏するものである。
【0024】
また、本発明の導電性高分子組成物は、電波吸収体表面向けに、極めて透明度の高い抵抗被膜を提供できるという点で顕著な効果を奏するものである。
【0025】
本発明の一態様は、下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10重量%含み、有機溶媒分散性金属(B)を0.01~1.0重量%含み、更に有機溶媒(C)を含むことを特徴とする、導電性高分子組成物に係る。
【0026】
【化3】
【0027】
[上記一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。Mは、有機アンモニウムイオン、又は第4級アンモニウムイオンを表す。]
上記一般式(1)及び(2)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。
【0028】
前記の炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
上記のRについては、成膜性の点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましく、水素原子、又はメチル基であることがより好ましい。
【0030】
上記一般式(1)及び(2)中、mは、1~10の整数を表し、成膜性の点で、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0031】
上記一般式(1)及び(2)中、nは、0又は1を表し、導電性に優れる点で、1であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(2)で表される構造単位は、上記一般式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
【0033】
ドーピングにより絶縁体-金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
【0034】
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型高分子と呼ばれている。
【0035】
上記一般式(1)及び(2)中、Mは、有機アンモニウムイオン、又は第4級アンモニウムイオンを表す。
【0036】
前記有機アンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、[NH(R)(Rで表される有機アンモニウムイオンを挙げることができる。なお、前記のRは、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。前記のRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0037】
前記の炭素数1~20のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘキシル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、メチルヘプチル基、エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、エチルオクチル基、ブチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、オクチルノニル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、又はオクチルドデカン基等が挙げられる。
【0038】
前記の置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する炭素数7~20のアルキル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、8-ヒドロキシオクチル基、又は9-アミノノニル基等が例示される。
【0039】
これらのうち、置換基Rとしては、高導電性を発揮しやすい点で、各々独立して、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、各々独立して、炭素数6~12のアルキル基であることがより好ましく、各々独立して、炭素数6~8のアルキル基であることがより好ましく、各々独立して、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-オクチル基、又はイソオクチル基であることがより好ましい。
【0040】
また、置換基Rとしては、高導電性を発揮しやすい点で、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子、又は炭素数6~12のアルキル基であることがより好ましく、各々独立して、水素原子、又は炭素数6~8のアルキル基であることがより好ましく、各々独立して、水素原子、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-オクチル基、又はイソオクチル基であることがより好ましい。 前記の有機アンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、n-ヘプチルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリイソオクチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、n-ノニルアミン、ジ-n-ノニルアミン、トリ-n-ノニルアミン、n-デシルアミン、ジ-n-デシルアミン、トリ-n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、ジ-n-ドデシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ジ-n-ヘキサデシルアミン、トリ-n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、ジ-n-オクタデシルアミン、トリ-n-オクタデシルアミン、n-イコシルアミン、ジ-n-イコシルアミン、トリ-n-イコシルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、N-メチル-N,N-ジ-n-オクチルアミン、N-メチル-N,N-ジイソオクチルアミン、又はN-メチル-N,N-ジ-n-ヘキシルアミン、N,N-ジメチル-n-ヘプチルアミン、N,N-ジメチル-n-オクチルアミン、N,N-ジメチル-n-ノニルアミン、N,N-ジメチル-n-デシルアミン、N,N-ジメチル-n-ドデシルアミン、N,N-ジメチル-n-ヘキサデシルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチル-n-イコシルアミン、N,N-ジエチル-n-ヘプチルアミン、N,N-ジエチル-n-オクチルアミン、N,N-ジエチル-n-ノニルアミン、N,N-ジエチル-n-デシルアミン、N,N-ジエチル-n-ドデシルアミン、N,N-ジエチル-n-ヘキサデシルアミン、N,N-ジエチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジエチル-n-イコシルアミン、N-メチル-N-n-ヘキシルアミン、N-メチル-N-n-ヘプチルアミン、N-メチル-N-n-オクチルアミン、N-メチル-N-n-ノニルアミン、N-メチル-N-n-ドデシルアミン、N-メチル-N-n-ヘキサデシルアミン、N-メチル-N-n-オクタデシルアミン、N-エチル-N-n-ヘキシルアミン、N-エチル-N-n-ヘプチルアミン、N-エチル-N-n-オクチルアミン、N-エチル-N-n-ノニルアミン、N-エチル-N-n-ドデシルアミン、N-エチル-N-n-ヘキサデシルアミン、N-エチル-N-n-オクタデシルアミン、7-ヒドロキシヘプチルアミン、8-ヒドロキシオクチルアミン、9-ヒドロキシノニルアミン、10-ヒドロキシデシルアミン、12-ヒドロキシドデシルアミン、16-ヒドロキシヘキサデシルアミン、18-ヒドロキシオクタデシルアミン、20-ヒドロキシイコシルアミン、7-アミノヘプチルアミン、8-アミノオクチルアミン、9-アミノノニルアミン、10-アミノデシルアミン、12-アミノドデシルアミン、16-アミノヘキサデシルアミン、18-アミノオクタデシルアミン、又は20-アミノイコシルアミン等が挙げられる。
【0041】
前記の有機アンモニウムイオンについては、成膜性に優れる点で、これらのうち、ジ-n-オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリイソオクチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、N-メチル-N,N-ジ-n-オクチルアミン、N-メチル-N,N-ジイソオクチルアミン、N-メチル-N,N-ジ-n-ヘキシルアミン、N-イソプロピル-N,N-ジメチルアミン、又はN-n-ブチル-N,N-ジメチルアミンであることが好ましい。
【0042】
前記の第4級アンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラノルマルプロピルアンモニウム、テトラノルマルブチルアンモニウム、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウム等が挙げられる。
【0043】
上記式(1)又は(2)で表される構造単位としては、特に限定するものではないが、具体的には、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ジイソオクチルアミン塩、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸トリ-n-オクチルアミ塩、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸トリイソオクチルアミン塩、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ジイソオクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ジイソオクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩、又は4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸ジ-n-オクチルアミン塩等が例示される。
【0044】
本発明の上記一般式(1)で表される構造単位、及び上記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)については、上記一般式(1)で表される構造単位、及び上記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上繰り返して含むポリチオフェン(A)であることが好ましく、上記一般式(1)で表される構造単位、及び上記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位からなり、当該構造単位を2つ以上繰り返してなるポリチオフェン(A)であることがより好ましい。
【0045】
本発明においてポリチオフェン(A)の導電率は、特に限定するものではないが、フィルム状態での導電率(電気伝導度)として、0.01S/cm以上であることが好ましい。
【0046】
なお、本発明におけるポリチオフェン(A)については、公知情報に基づいて合成したものを用いることができる。
【0047】
本発明の導電性高分子組成物において、前述した一般式(1)で表される構造単位、及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)の濃度については、前記の導電性高分子組成物全量を100重量%として、0.01~10重量%の範囲であることを特徴とする。なお、導電率及び操作性に優れる点で、本発明の導電性高分子組成物中のポリチオフェン(A)の濃度は、0.02~7重量%の範囲であることが好ましく、0.03~5重量%の範囲であることがより好ましく、0.03~3重量%の範囲であることがより好ましく、0.03~2重量%の範囲であることがより好ましい。
【0048】
本発明の導電性高分子組成物は、有機溶媒分散性金属(B)を含有し、その濃度が、前記の導電性高分子組成物全量を100重量%として、0.01~1.0重量%あることを特徴とする。この特徴により、導電率の高い塗膜を得ることができる。
【0049】
前記の有機溶媒分散性金属(B)としては、特に限定するものではないが、具体的には、有機溶媒分散性銀粒子、又は有機溶媒分散性銅粒子が挙げられる。これらの有機溶媒分散性金属の形状としては特に制限はなく、粒子、フィラー、プレート、ロッド、ピラミッド、キューブ、チューブ、ワイヤー、ファイバー、又はパーティクル等の形状のものを使用することができる。
【0050】
また、前記の有機溶媒分散性金属(B)としては、導電性に優れる点で、銀ナノ粒子、銀ナノプレート、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子、銅ナノプレート、及び銅ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒分散性金属が好ましく、保存安定性の観点から、有機溶媒分散性銀ナノワイヤーがより好ましい。
【0051】
前記の有機溶媒分散性金属(B)の好ましいサイズについては、その形状によって変動する。例えば、ナノ粒子については、粒子直径が1~1000nmであることが好ましい。ナノワイヤーについては、長さが1~50μmであることが好ましい。ナノファイバーについては、直径が1~100nm、長さが直径の100倍以上であることが好ましい。ナノロッドについては、直径が1~100nm、長さが直径の20~100倍であることが好ましい。ナノキューブについては、一片の長さが1~200nmであることが好ましい。ナノプレートについては、厚みが1~100nm、横幅が厚みの2~20倍であることが好ましい。
【0052】
なお、前記の有機溶媒分散性金属(B)は、有機溶媒中に分散している、又は分散し得る金属を表す。すなわち、本発明の導電性高分子組成物については、有機溶媒分散性金属(B)のペーストを配合することによって製造することもできるし、有機溶媒分散性金属(B)の有機溶媒分散液を配合することによって製造することもできる。有機溶媒分散性金属(B)の有機溶媒分散液を配合することによって前記の導電性高分子組成物が製造された場合、前記有機溶媒分散液に含まれる有機溶媒ついては、前記の有機溶媒(C)の一成分として取り扱われる。
【0053】
本発明の導電性高分子組成物は、有機溶媒分散性金属(B)を0.01~1.0重量%含むことを特徴とするが、当該含有量については、有機溶媒分散性金属(B)そのものの含有量を表す。すなわち、有機溶媒分散性金属(B)の有機溶媒分散液を利用して本発明の導電性高分子組成物を製造する場合、前記有機溶媒分散液に含まれる溶媒等の成分については、有機溶媒分散性金属(B)の含有量として加味されない。
【0054】
前記有機溶媒分散性金属(B)の含有量については、導電性高分子との相溶性が高く、高い導電性を維持することができるという点で、好ましくは0.05~0.9重量%であり、より好ましくは0.08~0.8重量%である。
【0055】
また、前記有機溶媒分散性金属(B)の含有量は、特に限定するものではないが、前記のポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましく、0.05~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。
【0056】
前記の有機溶媒(C)としては、特に限定するものではないが、例えば、アルコール溶媒(例えばメタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、1-ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ケトン溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等)、エーテル溶媒(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4-ジオキサン等)、グリコールエステル溶媒(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等)、グリコールエーテル溶媒(メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、ハロゲン溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、アミド溶媒(N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等)若しくは含硫黄溶媒(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)が挙げられる。
【0057】
これらの有機溶媒(C)は、単独で用いてもよく、あるいは2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0058】
なお、前記の有機溶媒(C)については、樹脂との相溶性に優れる点で、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる有機溶媒であることが好ましい。
【0059】
なお、前述の通りであるが、前記の有機溶媒(C)については、前記の有機溶媒分散性金属(B)の有機溶媒分散液に含まれる有機溶媒を含んでいてもよい。
【0060】
本発明の導電性高分子組成物における有機溶媒(C)の濃度(含有量)としては、特に限定するものではないが、施工性に優れる点で、80~99.9重量%の範囲であることが好ましく、85~99.8重量%であることがより好ましい。
【0061】
また、前記の有機溶媒(C)の含有量は、特に限定するものではないが、前記のポリチオフェン(A) 1質量部に対して、10~3,000質量部であることが好ましく、50~2,000質量部であることがより好ましく、100~1,500質量部であることがより好ましい。
【0062】
本発明の導電性高分子組成物については、上記のポリチオフェン(A)、有機溶媒分散性金属(B)、及び有機溶媒(C)に加えて、その他に添加剤(D)を含んでいてもよい。
【0063】
前記のその他の添加剤(D)としては、特に限定するものではないが、例えば、バインダー、又は界面活性剤等を挙げることができる。なお、当該その他の添加剤(D)については、単独で用いられてもよいし、複数同時に組み合わせて用いられてもよい。
【0064】
前記のバインダーとしては、特に限定するものではないが、例えば、ビニルピロリドン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メチルメタクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、ニトロセルロース若しくはその他のセルロース樹脂、又はポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。硬化方法としては、熱硬化やUV硬化が挙げられる。
【0065】
前記のバインダーについては、成膜性に優れる点で、ビニルピロリドン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0066】
なお、前記のバインダーの含有量は、特に限定するものではないが、前記のポリチオフェン(A) 1質量部に対して、1~1,500質量部であることが好ましく、1~1,000質量部であることがより好ましく、1~500質量部であることがより好ましい。
【0067】
前記の界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、高分子型非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はアセチレングリコール型界面活性剤等で例示される。
【0068】
前記両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0069】
前記フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0070】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
【0071】
フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤はレベリング剤として塗膜の平坦性を改善するのに有効である。
【0072】
なお、前記の界面活性剤の含有量は、特に限定するものではないが、前記のポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.0001~1質量部であることが好ましく、0.001~1質量部であることがより好ましく、0.001~0.1質量部であることがより好ましい。
【0073】
本実施形態の導電性高分子組成物については、特に限定するものではなく、一般的な手法に従い、各成分を混合することによって製造することができるが、例えば一例として、以下の手順に従って製造することが好ましい。
【0074】
工程1:従来公知の製造方法に従って、下記一般式(2)で表される構造単位、及び下記一般式(3)で表される構造単位で構成される重合物の水溶液を製造する。
【0075】
【化4】
【0076】
[上記一般式(2)及び(3)において、R、m、及びnは、上記の一般式(1)及び(2)におけるR、m、及びnと同義である。]
工程2:前記の重合物の水溶液に、前記の有機アンモニウムイオンの元となる有機アミン化合物若しくはその溶液、又は前記の第4級アンモニウムイオンの元となる第4級アンモニウム化合物のアルコール溶液を添加し、混合撹拌することによって上記の一般式(1)で表される構造単位、及び上記の一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を得る。
【0077】
工程3:工程2の混合物から溶媒を取り除き、上記のポリチオフェン(A)の固体を得る。
【0078】
工程4:工程3で得られた固体のポリチオフェン(A)と、前記の有機溶媒分散性金属(B)と前記の有機溶媒(C)を、一般公知の方法に基づいて、任意の順番で混合し、更に必要に応じて、上記以外の添加剤(D)を混合して撹拌し、本実施形態の導電性高分子組成物を得る。
【0079】
前記の工程1については、特に限定するものではないが、例えば、公知のモノマー化合物を、従来公知の方法で酸化重合し、次いで、従来公知の方法で酸処理することによって実施することができる。
【0080】
なお、前記の工程2~3については、導電性に優れる導電性高分子組成物を得るという点で、上記のポリチオフェン(A)を、水及び/又はアルコール溶媒中、有機アミン化合物、又は第4級アンモニウムイオンと反応させた後、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることが好ましい。
【0081】
前記の有機アミン化合物については、上記の有機アンモニウムイオンの共役酸を除いたものを用いることができる。
【0082】
前記の第4級アンモニウム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルプロピルアンモニウムクロリド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロリド、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0083】
前記のアルコール溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、又はエチレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができる。
【0084】
前記の工程4は、上記のポリチオフェン(A)の固体と、有機溶媒分散性金属(B)と、有機溶媒(C)を混合することを特徴とするが、このとき、必要に応じて前記のその他の添加剤(D)をさらに添加して混合することもできる。なお、上記の(A)、(B)、及び(D)の各材料については、予め、別々に有機溶媒(C)に溶解しておいたものを混合することが、操作性の観点で、より好ましい。前記の各材料を添加混合する順番については、特に限定されるものはなく、これらの材料を任意の順で混合することにより本発明の導電性高分子組成物を調製することができる。
【0085】
ここで、混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温~加温下で行うことができる。0℃以上40℃以下が好ましい。
【0086】
混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でもよいが、不活性ガス中であることが好ましい。
【0087】
また、混合する方法としては、スターラーチップや攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作を挙げることができる。このような混合溶解操作に加えて、超音波照射、又はホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
【0088】
本発明の導電性高分子組成物の粘度(20℃における粘度)は、200mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下である。
【0089】
本発明の導電性高分子組成物における各成分の濃度は、配合比で調整してもよいし、配合後に濃縮又は希釈により調整してもよい。濃縮の方法は、減圧下に溶媒を留去する方法であっても、限外ろ過膜を利用する方法であってもよい。
【0090】
本発明の導電性高分子組成物については、溶媒を除いた全成分の濃度が、0.5~20重量%の範囲であることが好ましく、0.5~15重量%の範囲であることがより好ましい。
【0091】
本発明の導電性高分子組成物から導電性高分子膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の導電性高分子組成物を、支持体に塗布し、次いで、乾燥する方法を挙げることができる。
【0092】
前記支持体としては、本実施形態の導電性高分子組成物が塗布可能なものであれば特に限定するものではないが、例えば、高分子支持体又は無機支持体が挙げられる。高分子支持体としては、特に限定するものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド等が挙げられる。不織布としては、例えば、天然繊維、又は合成繊維などが挙げられる。紙としては、一般的なセルロースを主成分とするものが挙げられる。無機支持体としては、特に限定するものではないが、例えば、ガラス、ガラス繊維、セラミックス、酸化アルミニウム、又は酸化タンタル等が挙げられる。
【0093】
導電性高分子組成物の塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、又はオフセット印刷法等が挙げられる。
【0094】
塗膜の乾燥温度は、均一な導電性高分子膜が得られる温度及び支持体の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温~300℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは室温~250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温~200℃の範囲である。
【0095】
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0096】
得られる導電性高分子膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10-3~10μmの範囲が好ましい。より好ましくは10-3~10-1μmである。
【0097】
本発明の導電性高分子組成物から得られた導電性高分子膜は導電性に優れる。
【0098】
また前記の導電性高分子膜は、例えば、電極材料、透明電導膜に加え、電波遮蔽材として使用される。
【実施例0099】
以下に本発明に関する実施例を示す。
【0100】
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0101】
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC-2014。
【0102】
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini-200。
【0103】
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600 又は、三菱化学社製ハイレスタUX MCP-HT8000
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
【0104】
[粘度測定]
装置:コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV-1 Prime。
【0105】
[全光線透過率]
装置:日本電色工業社製、Haze Meter NDH 4000。
[導電性膜の作製方法]
ポリエステルフィルム(東洋紡製 コスモシャイン A4100)上に、ワイヤーバーコーターを使用して、実施例等で調製した導電性高分子組成物(例えば、前記のポリチオフェン(A))を塗布し、wet膜厚12μmの塗膜を形成させた。ついで、大気下、150℃で5分間、加熱乾燥し、導電性高分子膜を得た。
【0106】
[導電性厚膜の作製方法]
実施例等で調製した導電性ポリマー(例えば、前記のポリチオフェン(A))を含む導電性高分子組成物を、25mm角の無アルカリガラス板上に、マイクロシリンジを使用し500μl滴下し、大気下、120℃で60分間、加熱乾燥し、導電性高分子膜を得た。
【0107】
[電波遮蔽材の作製方法]
ポリエステルフィルム(東洋紡製 コスモシャイン A4100)上に、ワイヤーバーコーターを使用して、実施例等で調製した導電性高分子組成物(例えば、前記のポリチオフェン(A))を塗布し、wet膜厚100μmの塗膜を形成させた。ついで、大気下、120℃で5分間、加熱乾燥し、電波遮蔽材を得た。
【0108】
[電波遮蔽測定]
前記の作製方法で作製した電波遮蔽材について、KEC法にてネットワークアナライザを使用し、100kHz~1GHzの電波遮蔽測定を行った。
[電波吸収材表面向けの抵抗皮膜の作製方法]
50×100mm角の無アルカリガラス板上に、ワイヤーバーコーターを使用して、実施例等で調製した導電性高分子組成物(例えば、前記のポリチオフェン(A))を塗布し、塗膜を形成させた。ついで、大気下、200℃で2分間、加熱乾燥し、電波吸収材表面向けの抵抗皮膜を得た。
【0109】
実施例1
公知文献(特開2019-196443号公報)の合成例1及び合成例2に準拠して、ポリ(3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸)(下記一般式(2)で表される構造単位、及び下記一般式(3)で表される構造単位で構成される重合物であって、以下、「PEDOT-MPS」という。)を1重量%含む水溶液を合成した。当該PEDOT-MPSは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が6,303であり、鉄イオン、及びナトリウムイオンを、各々44ppm、及び12ppm(対ポリマー)含有していた。
【0110】
【化5】
【0111】
ガラス容器に前記のPEDOT-MPSを1重量%含む水溶液 50.0gに、ジオクチルアミンを5重量%含むメタノール溶液 7.4gを撹拌しながら加え、室温で1時間撹拌した。析出した沈殿を減圧濾過器で固液分離した後、沈殿を真空乾燥することにより、ポリチオフェンA(固体)を0.6g取得した。尚、ポリチオフェンAは、上記のMがジオクチルアンモニウムであるポリチオフェン(A)に該当し、その導電率は、326S/cmであった。
【0112】
前記のポリチオフェンA(固体) 0.1gを有機溶媒(C)としてイソプロピルアルコール 9.9gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むイソプロピルアルコール溶液 10gを調製し、次いで当該イソプロピルアルコール溶液に有機溶媒分散性金属(B)として、0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散物(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm)90gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.10重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.45重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0113】
実施例2.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.25gを有機溶媒(C)としてイソプロピルアルコール 24.75gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むイソプロピルアルコール溶液 25gを調整した。当該イソプロピルアルコール溶液 25gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm) 75gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.25重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.38重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0114】
実施例3.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.5gを有機溶媒(C)としてイソプロピルアルコール 49.5gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むイソプロピルアルコール溶液50gを調整した。当該イソプロピルアルコール溶液 50gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm) 50gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.5重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.25重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0115】
実施例4.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.75gを有機溶媒(C)としてイソプロピルアルコール 74.25gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むイソプロピルアルコール溶液75gを調整した。当該イソプロピルアルコール溶液 75gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm) 25gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.75重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.13重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0116】
実施例5.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.1gを有機溶媒(C)としてイソプロピルアルコール 9.9gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むイソプロピルアルコール溶液10gを調整した。当該イソプロピルアルコール溶液 10gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号778095、diam.×L=120-150nm×20-50μm) 90gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.1重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.45重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0117】
比較例1.
0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm) 99gと非導電性樹脂であるエチルセルロース(東京化成工業製製品コードE0265)1gを攪拌混合した。その結果、エチルセルロースの固形分濃度が1重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.495重量%の組成物が得られた。得られた組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0118】
比較例2.
0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm) 99.9gと非導電性樹脂であるエチルセルロース(東京化成工業製製品コードE0265)0.1gを攪拌混合した。その結果、エチルセルロースの固形分濃度が0.1重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.4995重量%の組成物が得られた。得られた組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0119】
比較例3.
0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm) 99.9gにPEDOT:PSS粒子(Sigma―Aldrich製製品番号768618)0.1gを加えホモジナイザーを使用し攪拌混合したが、PEDOT:PSS粒子が分散せず、更に銀の析出も発生し、均一な分散液組成物を得ることができなかった。また、そのために前記組成物を製膜することが出来なかった。
【0120】
比較例4.
比較例3にてPEDOT:PSSと銀ナノワイヤーの混合が出来なかったために銀ナノワイヤー膜の上にPEDOT:PSS膜の形成を行った。
【0121】
初めに0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm)を用い、上記の方法で導電性膜を作製した。
【0122】
次に PH500(Hreaeus社製PEDOT:PSS分散水溶液、固形分濃度1.1重量%) 84.9g、エチレングリコール(キシダ化学製製品コード000-29335)10g、ソルビトール(富士フイルム和光純薬製製品コード198-03755)、及びオルフィンExp.4200(日信化学工業製)0.1gを混合攪拌混合し、導電性高分子組成物を得た。前記の導電性高分子組成物を用い、前記の導電成膜の上に塗り重ねるようにして、上記の方法で導電性膜を作製した。得られた積層膜について表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0123】
参考例1.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.1gを有機溶媒(C)としてイソプロピルアルコール 9.9gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むイソプロピルアルコール溶液10gを調整した。当該イソプロピルアルコール溶液を用い、上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0124】
参考例2.
0.5重量%銀ナノワイヤーのイソプロピルアルコール分散液(Sigma―Aldrich製製品番号739421、diam.×L=60nm×10μm)を用い、上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0125】
参考例3.
PH500(Hreaeus社製PEDOT:PSS分散水溶液、固形分濃度1.1重量%) 84.9g、エチレングリコール(キシダ化学製製品コード000-29335)10g、ソルビトール(富士フイルム和光純薬製製品コード198-03755)とオルフィンExp.4200(日信化学工業製)0.1gを攪拌混合した。その結果、PEDOT:PSSの固形分濃度が0.9重量%の組成物が得られた。得られた組成物を用いて、上記の方法で導電性膜を作製し、表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示した通り、ポリチオフェン(A)と有機溶媒分散性金属(B)と有機溶媒(C)とを含む本発明の組成物については、表面抵抗値が低い膜を提供することができる。
【0128】
また、本発明の導電性高分子組成物については、凝集を起こさず、全光線透過率や保存安定性に優れるため、産業利用上きわめて好ましいという顕著な効果を奏する。
【0129】
実施例6.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.25gを、有機溶媒(C)としてエタノール 24.75gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 25gを調整した。当該エタノール溶液 5gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 95gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.05重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.48重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表2に示す。また導電性厚膜を大気下、85℃、85%RH下にて250時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表2に示す。
【0130】
実施例7.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.25gを有機溶媒(C)としてエタノール 24.75gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 25gを調整した。当該エタノール溶液 7.5gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 92.5gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.075重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.46重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表2に示す。また導電性膜を大気下、85℃、85%RH下にて250時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表2に示す。
【0131】
実施例8.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.25gを有機溶媒(C)としてエタノール 24.75gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 25gを調整した。当該エタノール溶液 10gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 90gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.1重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.45重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表2に示す。また導電性膜を大気下、85℃、85%RH下にて250時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表2に示す。
【0132】
実施例9.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 1gを有機溶媒(C)としてエタノール 99gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 100gを調整した。当該エタノール溶液 60gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219)40gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.6重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.2重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表2に示す。また導電性膜を大気下、85℃、85%RH下にて250時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表2に示す。
【0133】
実施例10.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 1gを有機溶媒(C)としてエタノール 99gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 100gを調整した。当該エタノール溶液 80gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219)20gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.8重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.1重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表2に示す。また導電性膜を大気下、85℃、85%RH下にて250時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表2に示す。
【0134】
参考例4.
0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219)を用い、上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表2に示す。また導電性膜を大気下、85℃、85%RH下にて250時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
表2に示した通り、ポリチオフェン(A)と有機溶媒分散性金属(B)と有機溶媒(C)を含む本発明の組成物については、湿熱耐久性の高い導電成膜を提供することができる。
【0137】
実施例11.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.25gを有機溶媒(C)としてエタノール 24.75gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 25gを調整した。当該エタノール溶液 5gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 95gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.05重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.48重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表3に示す。また、大気下、200℃、1時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表3に示す。
【0138】
実施例12.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.25gを有機溶媒(C)としてエタノール 24.75gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 25gを調整した。当該エタノール溶液 10gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 90gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.1重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.45重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表3に示す。また、大気下、200℃、1時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表3に示す。
【0139】
実施例13.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 1gを有機溶媒(C)としてエタノール 99gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 100gを調整した。当該エタノール溶液 60gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 40gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.6重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.2重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表2に示す。また、大気下、200℃、1時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表3に示す。
【0140】
参考例5.
0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219)を用い、上記の方法で導電性厚膜を作製し、表面抵抗値を測定した。このときの表面抵抗値(初期表面抵抗値)を表3に示す。また、大気下、200℃、1時間保管後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を表3に示す。
【0141】
【表3】
【0142】
表3に示した通り、ポリチオフェン(A)と有機溶媒分散性金属(B)と有機溶媒(C)を含む本発明の組成物については、高熱耐久性の高い導電成膜を提供することができる。
【0143】
実施例14.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 1gを有機溶媒(C)としてエタノール 99gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 100gを調整した。当該エタノール溶液 80gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 20gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.8重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.1重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で電波遮蔽材を作製し、電波遮蔽特性を測定した。電波遮蔽特性を表4に示す。
【0144】
参考例6.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 0.8gを有機溶媒(C)としてエタノール 99.2gに溶解させ、ポリチオフェンAを0.8重量%含むエタノール溶液 を用い、上記の方法で電波遮蔽材を作製し、電波遮蔽特性を測定した。電波遮蔽特性を表4に示す。
【0145】
参考例7.
0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219)20gにエタノール 80gを加え0.1重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液 100gを調整した。得られた分散液を用い、上記の方法で電波遮蔽材を作製し、電波遮蔽特性を測定した。電波遮蔽特性を表4に示す。
【0146】
【表4】
【0147】
表4に示した通り、ポリチオフェン(A)と有機溶媒分散性金属(B)と有機溶媒(C)を含む本発明の組成物については、優れた電波遮蔽膜を提供することができる。
【0148】
実施例15.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 1gを有機溶媒(C)としてエタノール 99gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液 100gを調整した。当該エタノール溶液 20gに、0.5重量%銀ナノワイヤーのエタノール分散液(星光PMC製 品名T-AG219) 10g、エタノール70gを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェンAの固形分濃度が0.2重量%、銀ナノワイヤーの固形分濃度が0.05重量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法でwet膜厚12μm塗工乾燥し、電波吸収材表面向けの抵抗皮膜を作製した。表面抵抗値と全光線透過率を表5に示す。
【0149】
参考例8.
実施例1と同様の操作を行って、ポリチオフェンA(固体)を取得し、当該ポリチオフェンA(固体) 1.0gを有機溶媒(C)としてエタノール 99.0gに溶解させ、ポリチオフェンAを1.0重量%含むエタノール溶液を用い、上記の方法でwet膜厚46μm塗工乾燥し、電波吸収材表面向けの抵抗皮膜を作製した。表面抵抗値と全光線透過率を表5に示す。
【0150】
【表5】
【0151】
電波吸収体は、電波を効率良く吸収するために、その表面においてインピーダンス調整が施される。インピーダンス調整とは、電波吸収体の表面のインピーダンスを大気中のインピーダンス(377Ω/□)と合わせることを意味する。すなわち、電波吸収体については、その表面が、例えば、377Ω/□程度のインピーダンスを示す抵抗皮膜で覆われていることが好ましい。
【0152】
表5に示した通り、ポリチオフェン(A)と有機溶媒分散性金属(B)と有機溶媒(C)を含む本発明の組成物については、全光線透過率の高い(透明度の高い)電波吸収材表面向けの抵抗皮膜を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の導電性高分子組成物は、良好な導電性高分子膜を形成し、高い導電率、及び優れた電波遮蔽効果を示すことから、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電波遮蔽材、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサー、又はアクチュエータ等への応用が期待できる。