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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023138917
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電子スイッチングデバイス
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/38 20060101AFI20230926BHJP
   H10B 63/00 20230101ALI20230926BHJP
【FI】
C07F9/38 B CSP
H10B63/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023040223
(22)【出願日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】22162370.5
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ,ペアー
(72)【発明者】
【氏名】サイム,ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーゲス,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ハイル,ホルガー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メモリスタデバイスにおける使用に適した、第1の電極に結合した分子層を含む改善された電子部品の製作のための新規化合物であって、改善された耐久性に関する改善をもたらす化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、メモリ、センサ、電界効果トランジスタまたはジョセフソン接合における使用のための、有機分子層を含む電子スイッチングデバイス、特にトンネル接合に関する。よりとりわけ、本発明は、ランダムアクセス不揮発性メモリスタメモリ(RRAM)の分野に包含される。本発明の別の側面は、分子層における使用のための、下記式Iで表される化合物に関する。本発明は、さらに、前記分子層の使用、ならびに電子スイッチング素子およびそれに基づく部品の製造および動作のためのプロセスに関する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される化合物であって、
【化1】
式中
Tは、以下の基:
a)各1~20個のC原子を有する、直鎖または分枝のアルキルまたはアルコキシ、ここでそれらのラジカルにおける1以上のCH2基は、互いに独立して、-C≡C-、-CH=CH-、
【化2】
-O-、-S-、-CF2O-、-OCF2-、-CO-O-、-O-CO-,-SiR0R00-、-NH-,-NR0-または-SO2-によって、O原子が互いに直接的に連結されないようなやり方において、各々置き換えられていてもよく、およびここで、1以上のH原子は、ハロゲン、CN、SCNまたはSF5によって置き換えられていてもよく、
b)少なくとも1個の-CH2-基が、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-もしくは-N(O)Rx-で置き換えられているか、または少なくとも1個の-CH=基が、-N=で置き換えられている、3~10員の飽和もしくは部分的に不飽和の脂肪族環、
c)ダイアモンドイドラジカル
からなるラジカルの群から選択され、
ZT、Z1、Z2、およびZ4は、各出現において、同一にまたは異なるように、単結合、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-(CH2)n1-、-(CF2)n2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CH=CH-,-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH2)n3O-、-O(CH2)n4-、-C≡C-、-O-、-S-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、-N(O)=N-または-N=C-C=N-を表し、ここで、n1、n2、n3、n4は、同一にまたは異なるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
Z3は、-O-、-S-、-CH2-、-C(O)-、-CF2-、-CHF-、-C(Rx)2-、-S(O)-または-SO2-を表し、
【化3】
は、各出現において、同一にまたは異なるように、4~25個の環原子を有する、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ脂肪族の環を表し、それは縮合環もまた含有していてもよく、および、Xによって単置換されていてもよく、または、RLによって単置換または多置換されていてもよく、
【化4】
は、5~25個の環原子を有する、芳香族またはヘテロ芳香族の環を表し、それは縮合環もまた含有していてもよく、および、Xによって単置換されていてもよく、または、RCによって単置換または多置換されていてもよく、
【化5】
は、
【化6】
を表し、
Xは、F、Cl、Br、I、CN、SF5、CF3、OCF3、またはOCHF2、好ましくはClまたはF、極めて好ましくはFを表し、
RLは、各出現において、同一にまたは異なるようにH、1~6個のC原子を有するアルキル、2~6個のC原子を有するアルケニルまたは1~5個のC原子を有するアルコキシ、好ましくはHまたは1~4個のC原子を有するアルキル、極めて好ましくはH、メチルまたはエチルを表し、
RCは、各出現において、同一にまたは異なるように、直鎖または分枝の、各場合において、1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシまたは各々が3~12個のC原子を有するシクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオを表し、
Spは、スペーサー基または単結合を表し、
R0、R00、Rxは、直鎖または分枝の1~6個のC原子を有するアルキルを表し、
Gは、-OH、-SH、-SO2OH、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-C(OH)(PO(OH)2)2、-COOH、-Si(ORx)3、-SiCl3、-CH=CH2、-POCl2、-COH(PO(OH)2)2、-CO(NHOH)、-CO(NR0OH)、-Si(NMe2)3;または1個、2個もしくは3個のジェミナルでないH原子がOHによって置き換えられている、直鎖もしくは分枝の1~12個のC原子を有するアルキル;または-O-C(O)-ORV、-O-C(O)-Si(ORx)3、PO(ORV)2、SO2ORVから選択される基を表し、
RVは、直鎖または分枝の1~12個のC原子を有するアルキルを表し、および
r、s、tおよびuは、同一にまたは異なるように、0、1または2である、
前記化合物。
【請求項2】
化合物が、式IA-1a~IA-1f
【化7】
からなる群から選択され、
式中、T、ZT
【化8】
Z1、Z2、SpおよびGが、請求項1において与えられる意味を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Tは、H、
【化9】
または各々1~7個のC原子を有する直鎖もしくは分枝のアルキルまたはアルコキシ、または2~7個のC原子を有する直鎖もしくは分枝のアルケニルを表し、
ZTは、CH2O、OCH2、CH2CH2、または単結合を表し、
Z1およびZ2は、同一にまたは異なるように、CH2O、OCH2、CH2CH2、CF2O、OCF2、C(O)O、OC(O)もしくは単結合を表し、
A1およびA2は、同一にまたは異なるように、
【化10】
を表し,
Y1は、各出現において、同一にまたは異なるように、H、FまたはClを表し、
Spは、1以上の非隣接するCH2-基がOによって置き換えられていてもよい、分枝または非分枝の1~12個のC原子を有する1,ω-アルキレンを表し、
Gは、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-COH(PO(OH)2)2または-PO(ORV) 2を表し、および
RVは、メチル、エチルまたは1~6個のC原子を有する二級もしくは三級のアルキルを表す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が、式IA-2:
【化11】
で表される化合物から選択され、出現する基およびパラメータが請求項1において与えられる意味を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
A1およびA4は、同一にまたは異なるように、
【化12】
を表し、
A3-Z3は、
【化13】
を表し、
ZTは、単結合、-CH2O-、-OCH2-または-CH2CH2-を表し、
L1およびL2は、同一にまたは異なるように、F、CF3またははClを表し、
Y2は、同一にまたは異なるように、式Iについて上に与えられるXの意味の1つを有し、および好ましくはH、FまたはClを表し、
Y3およびY4は、同一にまたは異なるように、式IのRCの意味の1つを有し、および好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、またはトリフルオロメチルチオを表し、
Z3は、CH2またはOを表し、
Z1、Z2は、互いに独立して、単結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、OCH2-または-CH2CH2-を表し、
Gは、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-COH(PO(OH)2)2または-PO(ORV)2を表し、
RVは、メチル、エチルまたは1~6個のC原子を有する二級もしくは三級のアルキルを表し、および
rおよびuは、独立して、0、1または2である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式中、
【化14】
基が、
【化15】
を表す、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
電子スイッチングデバイス(100)であって、この順番において、
第1の電極(102)、
分子層(103)、および
第2の電極(104)を含み、
ここで第1および第2の電極が、同一にまたは異なるように、好ましくはAg、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ni、Pt、Ru、SiおよびWから選択される金属、またはCrN、HfN、MoN、NbN、TaNTiN、WN、WCN、VN、ZrN、TiO2、RuO2、VO2およびニオブでドープされたストロンチウムチタネートから選択されるセラミック材料を含み、
分子の層が、請求項1~6のいずれか一項に記載の式Iで表される1以上の化合物から本質的に形成されることにおいて特徴づけられる、
前記電子スイッチングデバイス(100)。
【請求項8】
第1の電極(102)と分子層(103)との間に中間膜(105)が配置され、中間膜(105)が酸化性材料を含み、および分子層(103)が前記酸化性材料に結合され、および第1の電極(102)および中間膜(105)が、第1の電極(102')として作動可能である、請求項7に記載の電子スイッチングデバイス(100)。
【請求項9】
酸化性中間膜が、TiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、またはSiO2を含む、請求項8に記載の電子スイッチングデバイス(100)。
【請求項10】
請求項1に定義されるとおりの、式Iで表される化合物の基Gが、化学吸着によってまたは共有的に、第1の電極(102、102')に結合される、請求項7~9のいずれか一項に記載の電子スイッチングデバイス(100)。
【請求項11】
分子層(103)が分子単分子膜である、請求項8~10のいずれか一項に記載の電子スイッチングデバイス(100)。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の1つ以上のスイッチングデバイス(100)を含む、電子部品。
【請求項13】
部品が、多数のスイッチングデバイス(100)を有し、スイッチングデバイス(100)の第1の電極(102)および第2の電極(104)がクロスバーアレイを形成している、請求項12に記載の電子部品。
【請求項14】
スイッチングデバイス(100)が、高い電気抵抗を有する状態と低い電気抵抗を有する状態との間で変化するように構成されており、高い電気抵抗と低い電気抵抗との間の商が10と100,000との間である、請求項12または13に記載の電子部品。
【請求項15】
部品が、抵抗性メモリデバイス、センサ、電界効果トランジスタまたはジョセフソン接合である、請求項12~14のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載の電子部品を動作するための方法であって、対応する第1の電極(102)を第1の電位に設定し、および対応する第2の電極(104)を第2の電位に設定することによって、電子部品のスイッチングデバイス(100)が高電気抵抗の状態へ切り替えられ、2つの電極(102、104)間の電圧の値が第1のスイッチング電圧より大きく、および第1の電位が第2の電位より大きく、電子部品のスイッチングデバイス(100)が、対応する第1の電極(102)を第3の電位に設定し、および対応する第2の電極(104)を第4の電位に設定することによって、電気抵抗の低い状態に切り替えられ、2つの電極(102、104)間の電圧の値が第2のスイッチング電圧より大きく、および第4の電位が第3の電位より大きく、および対応する電極(102、104)の間に第1および第2のスイッチング電圧より小さい値の読み取り電圧を適用することおよび電流流量を測定することによってスイッチング装置の状態が決定されることを特徴とする前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ、センサ、電界効果トランジスタまたはジョセフソン接合における使用のための有機分子層を含む、電子スイッチングデバイス、特に、トンネル接合に関する。よりとりわけ、本発明は、ランダムアクセス不揮発性メモリスタメモリ(RRAM)の分野に、包含される。本発明のさらなる側面は、分子層における使用のための化合物、分子層の使用、および電子スイッチングエレメントおよびそれに基づく部品の製造および動作のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル接合は、超伝導ジョセフソン接合からトンネルダイオードまでの範囲におよぶ、電子産業における多くの用途のために使用されている。それらは、絶縁体として、極めて薄い誘電体材料を必要とする。かかる絶縁層を1桁のナノメートルの厚さで生成する最も費用対効果の高い方法の1つは、自己組織化単分子膜(SAM)を使用することによってである。
【0003】
コンピュータ技術では、ここで記憶された情報の書き込みや読み出しアクセスを高速に行うことができる記憶媒体が必要とされる。固体状態メモリまたは半導体メモリは、可動部が全く必要ないため、とりわけ早くおよび信頼性の高い記憶媒体が達成されることを許容する。現在では、使用は主にダイナミックアクセスメモリ(DRAM)によってなされる。DRAMは、記憶された情報への迅速なアクセスを許容するが、しかしこの情報は定期的に更新されなければならず、電源サプライがスイッチオフされると、記憶された情報が失われることを意味する。
【0004】
先行技術はまた、フラッシュメモリまたは磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)など、電源サプライがスイッチオフにされた後でさえ情報が保持される、不揮発性半導体メモリを開示する。フラッシュメモリの欠点は、書き込みアクセスが比較的遅く起こり、フラッシュメモリのメモリーセルが無限に消去され得ないことである。フラッシュメモリの寿命は、通常、最大100万回の読み/書きに制限されている。MRAMはDRAMと類似したやり方で使用され得、および長い寿命を有するが、しかし製造工程が難しいことに起因し、それ自体を確立することができていない。
【0005】
さらなる代替物は、メモリスタに基づくメモリである。用語メモリスタは、「メモリ」および「抵抗器」の短縮であり、および電気抵抗を高抵抗および低抵抗の間で再現性よく変化させることができる部品を表す。夫々の状態(高抵抗または低抵抗)が電圧サプライなしに保持され、不揮発性メモリをメモリスタによって達成することができることを意味する。メモリスタのクロスバーアレイは、不揮発性固体メモリ、プログラマブルロジック、信号処理、制御システム、パターン認識および他の用途を包含する様々な用途およに使用されてもよい。メモリスタクロスバーアレイは、多数の行線、行線と交差して多数の接合部を形成する多数の列線、および接合部において行線および列線の間に結合された多数の抵抗性メモリデバイスを包含する。
【0006】
例えば、WO 2012/127542 A1およびUS 2014/008601 A1は、2つの電極と、2つの電極の間に配置される活性領域とを有する有機分子メモリを開示する。活性領域は、導電性の芳香族アルキンの分子層を有し、その導電性は電界の影響下で変化され得る。酸化還元活性ピリジニウム化合物に基づく類似した部品がUS 2005/0099209 A1に提案される。
【0007】
導電率または抵抗値の変化に基づく周知のメモリは、分子層の分子を通して電流が流れることによって形成されるフリーラジカル中間体が原理的に劣化プロセスに感受性が高く、部品の寿命に悪影響を有するという欠点を有する。
【0008】
WO 2018/007337 A2において、脂肪族スペーサー基を介して基板に連結された双極性化合物を含む非酸化活性分子層を利用する改善されたスイッチング層が記載され、そこで化合物は、分子双極子の配向性を引き起こす電界の適用によって可逆的にスイッチされ、およびしたがって分子のそれぞれの配向性に応じて低抵抗状態および高抵抗状態を可能にする。
【0009】
構造的に柔軟な双極子をもつ有機化合物から電気的にスイッチング可能なトンネル接合を得るためには、2つの導電性電極の間にサンドイッチのように囲まれた分子層が所望される。この分子層の電極上への堆積は、スピンコートによってまたは有機溶媒からのディップコートによってのいずれかで達成される。得られたメモリデバイスの基本原理は、WO 2016/110301 A1およびWO 2018/007337 A2に記載される。
【0010】
自己組織化された双極性単分子膜から作製された電気的にスイッチング可能なトンネル障壁を用いた情報記憶装置は、例えば85℃までの高温においてさえ、選択された状態の長い保持時間を有することが所望される。長い保持時間は、より少ないリフレッシュサイクルを要するメモリデバイスを可能にする。当該技術分野において、長い保持時間を有するデバイスに対する必要性が依然として存在する。
【0011】
さらに、前記情報記憶装置には、1015回以上の読み書きサイクルの耐久性を有することが所望される。このような極めて高い信頼性を達成するためには、分子層内のイオン性不純物の数や移動度を低減することが必要である。特に、イオンマイグレーションは、耐久性の低減、高い電気的特性のサイクル-サイクル間変動、および低い電気的性能のデバイス‐デバイス間の再現性等の信頼性問題を引き起こし得る。
【0012】
本発明の目的は、例えばメモリスタデバイスにおける使用のために適した、第1の電極に結合した分子層を含む改善された電子部品の製作ための新規化合物であって、上述された欠点を有さず、および、特に、改善された耐久性に関する改善をもたらす化合物を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
課題を解決するために、式Iで表される化合物が提供され、
【化1】
式中
Tは、以下の基:
a)各1~20個のC原子を有する、直鎖または分枝のアルキルまたはアルコキシ、ここでそれらのラジカルにおける1以上のCH2基は、互いに独立して、-C≡C-、-CH=CH-、
【化2】
-O-、-S-、-CF2O-、-OCF2-、-CO-O-、-O-CO-、-SiR0R00-、-NH-、-NR0-または-SO2-によって、O原子が互いに直接的に連結されないようなやり方において、各々置き換えられていてもよく、およびここで、1以上のH原子は、ハロゲン、CN、SCNまたはSF5によって置き換えられていてもよく、
b)少なくとも1個の-CH2-基が、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-もしくは-N(O)Rx-で置き換えられているか、または少なくとも1個の-CH=基が、-N=で置き換えられている、3~10員の飽和もしくは部分的に不飽和の脂肪族環、
c)ダイアモンドイドラジカル、好ましくは低級ダイアモンドイドから由来する、極めて好ましくはアダマンチル、ジアンマチル、およびトリアンマチルからなる群から選択される低級ダイアモンドイド、ここで1以上のH原子は、Fによって置き換えられ得、各場合において、任意にフッ素化された、最大12個のC原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルコキシ、特に
【化3】
からなるラジカルの群から選択され;
ZT、Z1、Z2、およびZ4は、各出現において、同一にまたは異なるように、単結合、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-(CH2)n1-、-(CF2)n2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH2)n3O-、-O(CH2)n4-、-C≡C-、-O-、-S-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、-N(O)=N-または-N=C-C=N-を表し、ここで、n1、n2、n3、n4は、同一にまたは異なるように、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
Z3は、-O-、-S-、-CH2-、-C(O)-、-CF2-、-CHF-、-C(Rx)2-、-S(O)-または-SO2-を表し、
【化4】
は、各出現において、同一にまたは異なるように、4~25個の環原子を有する、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ脂肪族の環を表し、それは縮合環もまた含有していてもよく、および、Xによって単置換されていてもよく、または、RLによって単置換または多置換されていてもよく、
【化5】
は、5~25個の環原子を有する、芳香族またはヘテロ芳香族の環を表し、それは縮合環もまた含有していてもよく、および、Xによって単置換されていてもよく、またはRによって単置換または多置換されていてもよく、
【化6】
は、
【化7】
を表し、
Xは、F、Cl、Br、I、CN、SF5、CF3、OCF3、またはOCHF2、好ましくはClまたはF、極めて好ましくはFを表し、
RLは、各出現において、同一にまたは異なるようにH、1~6個のC原子を有するアルキル、2~6個のC原子を有するアルケニルまたは1~5個のC原子を有するアルコキシ、好ましくはHまたは1~4個のC原子を有するアルキル、極めて好ましくはH、メチルまたはエチルを表し、
RCは、各出現において、同一にまたは異なるように、直鎖または分枝の、各場合において、1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシまたは各々が3~12個のC原子を有するシクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシまたはトリフルオロメチルチオを表し、
Spは、スペーサー基または単結合を表し、
R0、R00、Rxは、直鎖または分枝の1~6個のC原子を有するアルキルを表し、
Gは、-OH、-SH、-SO2OH、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-C(OH)(PO(OH)2)2、-COOH、-Si(ORx)3、-SiCl3、-CH=CH2、-POCl2、-COH(PO(OH)2)2、-CO(NHOH)、-CO(NR0OH)、-Si(NMe2)3;または1個、2個もしくは3個のジェミナルでないH原子がOHによって置き換えられている、直鎖もしくは分枝の1~12個のC原子を有するアルキル;または-O-C(O)-ORV、-O-C(O)-Si(ORx)3、PO(ORV)2、SO2ORVから選択される基を表し、
RVは、直鎖または分枝の1~12個のC原子を有するアルキルを表し、および
r、s、tおよびuは、同一にまたは異なるように、0、1または2であり、ここでr+s+t+u=0、1、2、3または4である。
【0014】
本発明の別の側面によると、この順序において
第1の電極、
分子層、および
第2の電極、
を含むスイッチングデバイスが提供され、ここで、分子層は、上および以下に定義される式Iの化合物の1以上、好ましくは1つから本質的に形成される。
【0015】
一態様において、分子層は、第1の電極に接着される。好ましい態様において、第1電極および分子層の間に中間膜が提供される。この場合、分子層は中間膜に接着され、言い換えると、第1の電極および中間膜は第1の電極として作動可能である。
【0016】
本発明は、さらに、少なくとも以下のステップを含む、本発明によるスイッチングデバイスの製造のためのプロセスに関する:
i.表面を有する第1の電極の製造;
ii.上記で定義した式Iの化合物の群から選択される1つ以上の化合物を含む分子層の、第1の電極の表面上への堆積;
iii.第2の電極の適用。
【0017】
本発明はさらに、本発明による電子部品の動作方法に関し、対応する第1の電極を第1の電位に設定し、対応する第2の電極を第2の電位に設定することにより、電子部品のスイッチングデバイスを高電気抵抗状態に切り換えることを特徴とし、ここで2つの電極間の電圧の値が第1のスイッチング電圧よりも大きく、および第1の電位が第2の電位よりも大きく、対応する第1の電極を第3の電位に設定し、対応する第2の電極を第4の電位に設定することにより、電子部品のスイッチングデバイスを低電気抵抗状態に切り替え、ここで2つの電極間の電圧の値が前記第2のスイッチング電圧よりも大きく、かつ第4の電位が第3の電位よりも大きく、および対応する電極の間に第1および第2のスイッチング電圧よりも値が小さい読み出し電圧を適用し、および流れる電流を測定することにより、スイッチングデバイスの状態を決定する。
【0018】
本発明の別の側面によると、部品が本発明による多数のスイッチングデバイスを含むメモリスタクロスバーアレイである、電子部品が提供される。該クロスバーアレイは、2つ以上のクロスバーアレイのスタックを含むセルの3次元アレイに統合されることができる。かかる構成は、3Dクロスポイントまたは3D Xポイントメモリデバイスとして知られている。
【0019】
本発明はさらに、メモリスタ電子部品における請求項1に指し示されるような1以上の化合物から得られる分子層の使用に関する。
結果として得られるデバイスは、メモリ、センサ、電界効果トランジスタまたはジョセフソン接合において、好ましくは抵抗性メモリデバイスにおいて、使用されることができる。
本発明はさらに、メモリ、センサ、電界効果トランジスタまたはジョセフソン接合におけるスイッチングデバイスの使用に関する。
【0020】
本発明によるスイッチングデバイスは、電子部品において、特にメモリ、センサ、電界効果トランジスタまたはジョセフソン接合において、極めてとりわけ、上に指し示した有利な特性を奏するメモリスタクロスバーアレイなどのメモリスタ部品において使用するのに適している。
【0021】
本発明による式Iの化合物は、技術水準と比較して数桁の程度改善された保持によって区別されるスイッチングデバイスを可能にする。上記式IのSAM前駆体に基づくトンネル接合は、それらの電流-電圧特性において有意により高い電流密度を示し、より速い読み動作およびより高い集積密度を可能にする。
【0022】
本発明によるスイッチングデバイスのスイッチング電圧は、有利に低い。スイッチングデバイスは、高い信頼性と耐久性を奏する。
さらに、メモリウインドウは有利に大きく、先行技術から知られるデバイスよりも改善される。
【0023】
本発明による化合物に基づくメモリデバイスは、ノイズのより少ない電流-電圧(I-V)特性を示し、より高速な読み出しまたは書き込みを許容する。先行技術の高度にフッ素化された化合物と比較して、本発明に記載の低減した化合物の極性は、分子間静電相互作用を低減し、およびしたがって、特に書き込み速度を増大する。また、耐久性も、有意に改善される。
【0024】
本発明によるデバイスに使用されることができる電極材料は、半導体産業のデバイスや製作プロセスとの適合性が高く、および安定で均質な分子単分子膜の形成に驚くほどよく適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1Aは、電子スイッチングデバイスの第1の態様の層構造の概略図を示す。図1Bは、本発明による電子スイッチングデバイスの第2の態様の層構造の概略図を示す。
【0026】
図2図2は、本発明による電子スイッチングデバイスの電流-電圧曲線を示す。
図3図3は、分子単分子膜のない電子基準デバイスの電流-電圧曲線を示す。
【0027】
請求項7において、「から本質的に形成される」という表現は、分子層の形成に使用される化合物中に特定のさらなる化合物、すなわち分子層の本質的特性に重大な影響を与えないものが存在し得ることを意味すると解される。
本明細書では、「RRAM」または「抵抗性メモリデバイス」という用語は、電圧をかけることによって抵抗値を制御できる分子スイッチング層を使用するメモリデバイスを意味すると解される。
【0028】
抵抗記憶装置の低抵抗状態(LRS)またはON状態とは、抵抗記憶装置が低い電気抵抗を有する状態を意味すると解される。高抵抗状態(HRS)または抵抗記憶装置のOFF状態は、抵抗記憶装置が高抵抗を有する状態を意味すると解される。
メモリウインドウは、下限(lower bound)および上限(upper bound)を有する抵抗値の間隔を意味すると解される。
【0029】
この区間の下限よりも低い抵抗値を持つ状態がON状態と考慮される。
この区間の上限より高い抵抗値を有する状態がOFF状態と考慮される。
【0030】
用語「ダイアモンドイド」は、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ペンタマンタン、ヘキサマンタン、ヘプタマンタン、オクタマンタン等々のアダマンタン系列の置換および非置換のケージド化合物(caged compound)を指し、そのすべての異性体および立体異性体を包含する。これらの化合物は、炭素原子の配置が面心立方ダイアモンド格子の断片に重なることを意味する「ダイアモンドイド」トポロジーを有する。第1のシリーズからの置換されたダイアモンドイドは、1~4個の独立に選択されたアルキルまたはアルコキシの置換基をもつことが好ましい。
【0031】
ダイアモンドイドは、本明細書で定義されるように「低級ダイアモンドイド」および「高級ダイアモンドイド」、ならびに低級おび高級ダイアモンドイドのいずれの組み合わせの混合物を包含する。用語「低級ダイアモンドイド」は、アダマンタン、ジアマンタンおよびトリアマンタン、およびアダマンタン、ジアマンタンおよびトリアマンタンの非置換および置換誘導体のいずれのおよび/またはすべてを指す。これらの低級ダイアモンド構成要素は異性体やキラリティを示さず、容易に合成され、「高級ダイアモンド」からそれらを区別する。用語「高級ダイアモンドイド」は、いずれのおよび/またはすべての置換および非置換のテトラマンタン構成要素を;いずれのおよび/またはすべての置換および非置換のペンタマンタン構成要素を;いずれのおよび/またはすべての置換および非置換のヘキサマンタン構成要素を;いずれのおよび/またはすべての置換および非置換のヘプタマンタン構成要素を;いずれのおよび/またはすべての置換および非置換のオクタマンタン構成要素;ならびに上記の混合物、および、テトラマンタン、ペンタマンタン、ヘキサマンタン、ヘプタマンタン、オクタマンタンの異性体および立体異性体を指す。アダマンタンの化学については、Fort, Jr.らによる"Adamantane: Consequences of the Diamondoid Structure," Chem. Rev. vol. 64, pp. 277-300 (1964)に評論されている。アダマンタンは、ダイアモンドイドシリーズの中で最も小さいメンバーであり、および単一のケージ結晶のサブユニットとして考えられていてもよい。ジアマンタンは2個、トリアマンタンは3個、テトラマンタンは4個、などのようにサブユニットを含有する。アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタンの異性体は1個のみある一方、テトラマンタンは4種類の異性体があり(うち2つはエナンチオマー対)、言い換えると、4個の異なるやり方、または4個のアマンタンサブユニットの配置があり得る。ペンタマンタン、ヘキサマンタン、ヘプタマンタン、オクタマンタン等、ダイヤモイドシリーズの各より上位メンバーにともない、可能な異性体の数は非線形的に増大する。市販のアダマンタンは、広範囲に渡って研究されている。アダマンタン含有材料の熱力学的安定性、官能基化、および特性などの、多数の分野の方向に研究が向けられている。例として、Schreiber et al., New J. Chem., 2014, 38, 28-41は、銀および金表面上に大面積SAMを形成するための官能化ダイアモンドイドの合成および適用を記載する。K. T. Narasimha et al., Nature Nanotechnology 11, March 2016 page 267-273において、ダイアモンドイドの単分子膜が、金属の仕事関数の有意な減少により、強化された電界放出特性を金属表面に効果的に付与すると記載されている。
【0032】
本明細書で使用されるように、アンカー基は、物理吸着、化学吸着、または化学反応によって、化合物が基板または電極の表面に吸着または結合するための官能基である。この化学反応は、例えば基板または電極の表面において、in situで、アンカー基の前駆体を変換することを包含する。
【0033】
本発明の意味では、スペーサー基は、双極性部位およびアンカー基の間にある柔軟な鎖で、これらの部分構造の間に隔たりを生じさせ、同時に、その柔軟性により、基板に結合した後の双極性部位の移動性を改善する。
スペーサー基は、分枝鎖または直鎖であり得る。キラルスペーサーは、分枝であり、および光学的に活性であり、および非ラセミ的である。
【0034】
本明細書において、アルキルは直鎖または分枝であり、1~15個のC原子を有し、好ましくは直鎖であり、および、特に指し示されない限り、1、2、3、4、5、6または7個のC原子を有し、およびそれに従って好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルである。
【0035】
本明細書において、アルコキシラジカルは、直鎖または分枝であり、および1~15個のC原子を含有する。それは、好ましくは直鎖であり、および他に指し示されない限り、1、2、3、4、5、6または7個のC原子を有し、およびそれに従って好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシオキシまたはヘプトキシである。
【0036】
本明細書において、アルケニルラジカルは、好ましくは、2~15個のC原子を有するアルケニルラジカルであり、直鎖または分枝であり、および少なくとも1つのC-C二重結合を含有する。それは、好ましくは直鎖であり、および2~7個のC原子を有する。それに応じて、それは、好ましくはビニル、プロパ-1-または-2-エニル、ブタ-1-、-2-または-3-エニル、ペンタ-1-、-2-、-3-または-4-エニル、ヘキサ-1-、-2-、-3-、-4-または-5-エニル、ヘプタ-1-、-2-、-3-、4-、-5-または-6-エニルである。C-C二重結合の2つのC原子が置換されている場合、アルケニルラジカルは、Eおよび/またはZ異性体(トランス/シス)の形態であり得る。一般に、それぞれのE異性体が、好ましい。アルケニルラジカルのうち、プロパ-2-エニル、ブタ-2-および-3-エニル、およびペンタ-3-および-4-エニルが、とりわけ好ましい。
【0037】
本明細書において、アルキニルは、直鎖または分枝であり、および少なくとも1つのC-C三重結合を含有する2~15個のC原子を有するアルキニルラジカルを意味すると解される。1-および2-プロピニル、および1-、2-および3-ブチニルが好ましい。
【0038】
一般式Iで表される化合物は、文献(例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準著作において)において記載されるように、それ自体既知の方法、および既知の、および前記反応のために好適な反応条件下で調製される。
【0039】
好ましい合成経路は、WO 2018/007337 A2、WO 2019/238649 A2、WO 2020/225270 A2、WO 2020/225398 A2、WO 2021/078699 A2、WO 2021/078714 A2およびWO 2021/083934 A2において記載される類似した化合物の合成に類似のものである。使用は、ここでは、既知であり、および文献に記載され、および実施例によって以下に例示される変形でなされることができる。
【0040】
式Iにおいて、好ましいアリール基は、例えば、親構造のベンゼン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、9,10-ジヒドロフェンアントレン、フルオレン、インデンおよびインダンから由来する。
【0041】
式Iにおいて、好ましいヘテロアリール基は、例えば、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾールおよび1,3,4-チアジアゾールなどの5員環、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、および1,2,3-トリジンなどの6員環、または、例えば、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフチミダゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チエノ[2,3b]-チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェン、2H-クロメン(2H-1-ベンゾピラン)、4H-クロメン(4H-1-ベンゾピラン)およびクマリン(2H-クロメン-2-オン)などの縮合環、あるいはこれらの基の組み合わせである。
【0042】
式Iにおいて、好ましいシクロ脂肪族は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、デカヒドロナフタレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、スピロ[3.3]ヘプタンおよびオクタヒドロ-4,7-メタノインダンである。
【0043】
好ましいスペーサー基Spは、式IのラジカルG-Sp-が式 G-Sp'-X'-に対応するように式Sp'-X'から選択され、
ここで、
Sp'は、1~20個、好ましくは1~12個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキレンを表し、それは、任意にF、Cl、Br、IまたはCNによって単置換または多置換され、およびここで、加えて、1以上の非隣接するCH2基は、互いに独立して、-O-、-S-、-NH-、-NR0-、-SiR00R000-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-NR0-CO-O-、-O-CO-NR0-、-NR0-CO-NR0-、-CH=CH-または-C≡C-によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接的に連結されないようなやり方において、各々置き換えられていてもよく、
X'は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR00-,-NR00-CO-、-NR00-CO-NR00-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-,-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR00-、-CYx=CYx'-、-C≡C-,-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合を表し、
R0、R00およびR000は、各々、相互に独立して、Hまたは1~12個のC原子を有するアルキルを表し、および
YxおよびYx‘は、各々、相互に独立して、H、F、ClまたはCNを表し、
X'は、好ましくは-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-,-NR0-CO-、-NR0-CO-NR0-または単結合である。
【0044】
好ましい基Sp'は、-(CH2)p1-、-(CF2)p1-、-(CH2CH2O)q1-CH2CH2-、-(CF2CF2O)q1-CF2CF2-、-CH2CH2-S-CH2CH2-、-CH2CH2-NH-CH2CH2-または-(SiR00R000-O)p1-であり、ここで、p1は、1から12までの整数であり、q1は、1から3までの整数であり、およびR00およびR000は、上に指し示される意味を有する。
【0045】
とりわけ好ましい基-X'-Sp'-は、-(CH2)p1-、-O-(CH2)p1-、-(CF2)p1-,-O(CF2)p1-、-OCO-(CH2)p1-および-OC(O)O-(CH2)p1-であり、ここでp1は、上に指し示される意味を有する。
【0046】
とりわけ好ましい基 Sp'は、例えば、各場合において、直鎖エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロペンチレン、ペルフルオロへキシレン、ペルフルオロへプチレン、ペルフルオロオクチレン、ペルフルオロノニレン、ペルフルオロデシレン、ペルフルオロウンデシレン、ペルフルオロドデシレン、ペルフルオロオクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン-N-メチルイミノエチレン、1-メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0047】
とりわけ好ましい基X'は、-O-または単結合である。
好ましい態様において、式Iおよびそのサブ式において、ラジカルTは、好ましくは、
【化8】
を表し、
ここで、Rxは、1~6個のC原子を有するアルキルを表し、好ましくはメチルである。
【0048】
別の好ましい態様では、式Iおよびそのサブ式において、ラジカルTは、1~12個のC原子を有する直鎖または分枝アルキルを示し、これらのラジカル中の1以上のCH2基は、互いに独立して、-C≡C-、-CH=CH-、
【化9】
または-O-によって、O原子が互いに直接的に連結されないようなやり方において、各々置き換えられていてもよく、および1以上のH原子がハロゲンによって、好ましくはFによって置き換えられていてもよい。
【0049】
好ましい態様において、式Iで表される化合物は、式IA-1a~IA-1fで表される化合物から選択され、
【化10】
ここで、T、ZT
【化11】
Z1、Z2、SpおよびGは、式Iに上記に与えられた意味を有し、および好ましくは
Tは、H、
【化12】
または各々1~7個のC原子を有する直鎖もしくは分枝のアルキルもしくはアルコキシまたは2~7個のC原子を有する直鎖もしくは分枝のアルケニル、好ましくは各々1~7個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシを表し、
ZTは、CH2O、OCH2、CH2CH2、または単結合、好ましくは単結合を表し、
Z1およびZ2は、同一にまたは異なるように、CH2O、OCH2、CH2CH2、CF2O、OCF2、C(O)O、OC(O)または単結合、好ましくは単結合を表し,
A1およびA2は、同一にまたは異なるように、
【化13】
を表し、
Y1は、各出現において、同一にまたは異なるように、H、FまたはCl、好ましくはHまたはFを表し、
Spは、分枝または非分枝の1~12個のC原子を有する1,ω-アルキレンを表し、ここで、1以上の非隣接するCH2-基がOによって置き換えられていてもよく、
Gは、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-COH(PO(OH)2)2または-PO(ORV)2、好ましくは-PO(OH)2を表し、および
RVは、1~6個のC原子を有するメチル、エチルまたは二級もしくは三級のアルキルを表す。
極めて好ましいのは、式IA-1bおよびIA-1c、特にIA-1bで表される化合物である。
【0050】
別の好ましい態様において、式Iの化合物は、式IA-2の化合物から選択され、
【化14】
ここで出現する基およびパラメータは、上記の式Iに与えられる意味を有し、および好ましくは
A1およびA4は、同一にまたは異なるように、
【化15】
を表す;
A3-Z3は、
【化16】
を表す;
ZTは、単結合、-CH2O-、-OCH2-または-CH2CH2-を表し、
L1およびL2は、同一にまたは異なるように、F、CF3またはClを表し、
Y2は、同一にまたは異なるように、上記の式Iへ与えられる意味の1つを有し、および好ましくはH、FまたはClを表し、
Y3およびY4は、同一にまたは異なるように、式IのRCの意味の1つを有し、および好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、またはトリフルオロメチルチオを表し、
Z3は、CH2またはOを表し、
Z1、Z2は、互いに独立して、単結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、OCH2-または-CH2CH2 -、好ましくは単結合を表し、
Gは、OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-COH(PO(OH)2)2または-PO(ORV)2を表し、
RV は、メチル、エチルまたは1~6個のC原子を有する二級もしくは三級のアルキルを表し、および
rおよびuは、独立して、0、1または2であり、極めて好ましくは、uは、0およびrは、0または1を表す。
【0051】
式Iおよびそのサブ式において、
【化17】
基は、
好ましくは、
【化18】
を表す。
【0052】
本発明の別の側面に従って、分子の層は、式Iで表される化合物から選択される1以上のキラル非ラセミ化合物を含む。
【0053】
式Iで表されるキラル化合物から得られる分子の層は、メモリスタデバイスが有意にさらに低減された確率論的なノイズおよびより速いスイッチングをもつことを可能にし、読みおよび書き誤差率を低減し、エネルギー-効率における確かな効果を有する。加えて、トンネル電流の増加が観察され、より小さな接合サイズへの統合を許容する。
【0054】
好ましくは、キラル化合物は、50%より上の、好ましくは80%、90%、または95%より上の、より好ましくは97%より上の、特に98%より上のエナンチオマー過剰量(ee)を有する。
【0055】
キラリティは、1個以上、好ましくは1個または2個、極めて好ましくは1個の非対称に置換された炭素原子(または:不斉炭素原子、C*)、以降Sp*と称される)を有する上記式Iの分枝のキラル基Spによって達成される。Sp*において、不斉炭素原子は、好ましくは、2つの異なるように置換された炭素原子、水素原子、およびハロゲン(好ましくはF、Cl、またはBr)、各場合において1~5個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ、およびCNの群から選択される置換基と連結される。
【0056】
キラルの有機のラジカルSp*、好ましくは式
【化19】
を有し、
ここで、
X’は、上に定義される意味を有し、および好ましくは-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CH=CH-COO-または単結合、より好ましくは-CO-O-、-O-CO-、-O-または単結合、極めて好ましくは-O-または単結合を表し、
QおよびQ’は、同一にまたは異なるように、単結合または1~10個の炭素原子を有する任意にフッ素化されたアルキレン、ここで、Xに連結されないCH2基が-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-または-CH=CH-によってもまた置き換えられ得、好ましくは、1~10個の炭素原子を有するアルキレンまたは単結合、とりわけ好ましくは(CH2)n5-または単結合を表し、
n5は、1、2、3、4、5、または6であり、
Yは、1~15個の炭素原子を有する任意にフッ素化されたアルキル、ここで、1または2の非隣接するCH2基はまた、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-および/または-CH=CH-によっても置き換えられ得、さらにCNまたはハロゲン、好ましくは任意に1~7個のC原子を有する任意にフッ素化されたアルキルもしくはアルコキシ、-CNまたはCl、とりわけ好ましくは-CH3、-C2H5、-CF3またはClを表す。
【0057】
加えて、キラリティは、上の式Iのキラル基Tによって達成され、1以上の、好ましくは1または2、極めて好ましくは1の、非対称に置換された炭素原子(または:不斉炭素原子、C*)(以降R*と称される)を有する、上の式Iのキラル基Tによって達成され、。
【0058】
R*において、不斉炭素原子は、好ましくは、2つの異なる置換炭素原子、水素原子、ならびに、ハロゲン(好ましくはF、Cl、またはBr)、各場合において1~5個の炭素原子をもつアルキルまたはアルコキシ、およびCNの群から選択される置換基と連結される。
【0059】
キラルの有機のラジカルは、好ましくは式
【化20】
を有し、ここで、
X’は、式Iについて上に定義される意味を有し、および好ましくは-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CH=CH-COO-または単結合、より好ましくは-CO-O-、-O-CO-、-O-、または単結合、極めて好ましくは-O-または単結合を表し、
Qは、単結合または1~10個の炭素原子を有する任意にフッ素化されたアルキレン、ここでXに連結されないCH2基は、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-または-CH=CH-によっても置き換えられ得、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキレンまたは単結合、とりわけ好ましくは-CH2-、-CH2CH2-または単結合を表し、
Yは、1~15個の炭素原子を有する任意にフッ素化されたアルキル、1個または2個の非隣接するCH2 基は、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-および/または-CH=CH-によっても置き換えられ得、さらにCNまたはハロゲン、好ましくは1~7個のC原子を有する任意にフッ素化されたを有するアルキルもしくはアルコキシ、-CNまたはCl、とりわけ好ましくは‐CH3、-C2H5、-CF3またはClを表し、
RChは、Yとは異なる1~15個の炭素原子を有するアルキル基を表し、ここで1個または2個の非隣接するCH2基はまた-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-および/または-CH=CH-によっても置き換えられ得、好ましくは1個~10個の、特に1個~7個の炭素原子を有する直鎖のアルキルを表し、ここで、不斉炭素原子へ連結されたCH2基はまた-O-、-O-CO-または-CO-O-によって置き換えられ得る。
【0060】
好ましくは、各セルの第1電極および/または第2電極は、金属、導電性合金、導電性セラミック、半導体、導電性酸化材料、導電性もしくは半導電性有機分子、または層状導電性2次元材料から作製される。第1電極および/または第2電極は、例えば多層システムの形態で、前記材料のうち1より多くの組み合わせを含むことができる。第1電極と第2電極の材料は、同一に、または異なるように選択されてもよい。
【0061】
好適な金属は、Ag、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ni、Pt、Ru、W、Pd、Ptを包含し、ここでAl、CrおよびTiが、好ましい。
好適な導電性セラミック材料は、CrN、HfN、MoN、NbN、TiO2、RuO2、VO2、NSTO(ニオブドープチタン酸ストロンチウム)、TaNおよびTiN、WN、WCN、VNおよびZrNを包含し、ここでTiNが好ましい。
【0062】
好適な半導体材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウムガリウム酸化物(IGO)、InGa-α-ZnO(IGZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、スズドープ酸化亜鉛(TZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)やアンチモンスズ酸化物を包含する。
【0063】
好適な元素半導体は、Si、Ge、C(ダイアモンド、グラファイト、グラフェン、フラーレン)、α-Sn、B、SeおよびTeを包含する。好適な化合物半導体は、III-V族半導体、特にGaAs、GaP、InP、InSb、InAs、GaSb、GaN、TaN、TiN、MoN、WN、AlN、InN.Alx Ga1-x AsおよびInx Ga1-x Ni、II-VI族半導体、特にZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdTe、Hg(1-x) Cd(x)Te、BeSe、BeTexおよびHgS;およびIII-VI族半導体、とりわけGaS、GaSe、GaTe、InS、InSexおよびInTe、I-III-VI族半導体、特にCuInSe2、CuInGaSe2、CuInS2およびCuInGaS2、IV-IV族半導体、特にSiCおよびSiGe、IV-VI族半導体、特にSeTeを包含する。
【0064】
好適な高度にドープされた半導体材料は、p+Si、n+Siを包含する。
好適な層状導電性2次元材料の一つの例は、グラフェンである。
【0065】
好適な半導電性有機分子は、ポリチオフェン、テトラセン、ペンタセン、フタロシアニン、PTCDA、MePTCDI、キナクリドン、アクリドン、インダンスロン、フラランスロン(flaranthrone)、ペリノン、AlQ3、および混合システム、特にPEDOT:PSSおよびポリビニルカルバゾール/TLNQ複合体を包含する。
【0066】
好ましい態様において、第1電極および第2電極は、同一にまたは異なるように、Ag、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ni、Pt、Ru、Si、W、CrN、HfN、MoN、NbN、TiN、TaN、WN、WCN、VNおよびZrNからなる群から選択される材料を含む。
【0067】
より好ましくは、第1電極および第2電極は、同一にまたは異なるように、CrN、HfN、MoN、NbN、TiN、TaN、WN、タングステンカーバイドニトリド(WCN)、VNおよびZrNから選択される金属窒化物を含む、好ましくはからなる。
【0068】
特に、第1電極はCrN、HfN、MoN、NbN、TiN、TaN、WN、WCN、VN、およびZrNから選択される金属窒化物からなり、第2電極はTiNからなる。
極めてとりわけ、第1電極と第2電極は、いずれもTiNからなる。
【0069】
本発明の例示的な態様の以下の記載において、同一または類似の構成要素およびエレメントは、同一または類似の参照番号によって表され、そこで個々のケースにおいてこれらの構成要素または要素の繰り返しの説明が回避される。図は、本発明の主題を図式的に描写するのみである。
【0070】
図1Aは、本発明の態様による分子スイッチング層103を有するナノスケール不揮発性固体抵抗デバイス100を例証する。デバイス100は、本態様において、2端子メモリである。デバイス100は、第1電極102、分子スイッチング層103、および第2電極104を包含する。デバイス100は、本態様において抵抗性メモリデバイスであるが、しかし他の態様では他の型のデバイスであってもよい。分子スイッチング層は、適切な制御回路を使用し、電極に電圧を適用し、およびリセットすることにより、様々な抵抗値に選択的に設定され得る。デバイス100の抵抗値は、分子スイッチング層103の分子双極子の配向に応じて変化する。デバイス100は、外側の半導体基板101の上に形成されている。半導体基板は、シリコン基板またはIII-VもしくはII-VI型の化合物基板であってよい。一態様において、基板は、半導体材料で作製されず、例えば、プラスチックで作製される。
【0071】
とりわけ好適な基板は、以下:
- 元素半導体、Si、Ge、C(ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、フラーレン)、-Sn、B、SeおよびTeなど;
- 化合物半導体、好ましくは
-III-V族半導体、特にGaAs、GaP、InP、InSb、InAs、GaSb、GaN、TaN、TiN、MoN、WN、AlN、InN、AlxGa1-xAsおよびInxGa1-xNi、
-II-VI族半導体、特にZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1-x)Cd(x)Te、BeSe、BeTexおよびHgS;
-III-VI族半導体、特にGaS、GaSe、GaTe、InS、InSexおよびInTe、
-I-III-VI族半導体、特にCuInSe2、CuInGaSe2、CuInS2およびCuInGaS2
-IV-IV族半導体、特にSiCおよびSiGe,
-IV-VI族半導体、特にSeTe;
- 有機半導体、特にポリチオフェン、テトラセン、ペンタセン、フタロシアニン、PTCDA、MePTCDI、キナクリドン、アクリドン、インダンスロン、フラバンスロン、ペリノン、AlQ3、および混合システム、特にPEDOT:PSSおよびポリビルカルバゾール/TLNQ複合体;
- 金属、特に、Ta、Ti、Co、Mo、Pt、Ru、Au、Ag、Cu、Al、WおよびMg;
-導電性酸化物、特にインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウムガリウム酸化物(IGO)、InGa-α-ZnO(IGZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、スズドープ酸化亜鉛(TZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛(FTO)、およびアンチモン酸化スズ
から選択される。
【0072】
基板101としての結晶シリコンの使用が好ましく、ここでは、表面を有するシリコンウェハ(100)がとりわけ好ましい。表面が配向しているシリコンウェハ(100)は、マイクロエレクトロニクスにおいて従来の基板として採用され、および高品質でおよび表面欠陥の低い割合をもつものものが入手可能である。
【0073】
本発明によるスイッチングデバイスでは、分子層103の分子は、上に定義されるとおりのアンカー基Gの手段によって第1電極102へ結合される。
【0074】
分子層は、任意に、第1電極102上に位置される、例えばTiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、またはSiO2などの比較的薄い(好ましくは0.5~5nmの厚さ)酸化性中間層105に結合されてもよく、したがってこの態様において、第1電極は、請求項1において定義される材料を含む第1層と分子層103が結合される第2酸化性層とを含む(図1B)。ゆえに、第1電極102および中間層105は、代替的な第1電極102'として作動可能である。
【0075】
本発明の分子層は、電気絶縁性、非導電性、非半導電性の有機化合物の層である。
分子層は、本質的に、式Iの前駆体から形成される。好ましくは、分子層の形成に使用される前駆体は、式Iの化合物からなる。
【0076】
分子層の厚さは、好ましくは10nm以下、とりわけ好ましくは5nm以下、非常に特に好ましくは3nm以下である。
分子層は、式Iの化合物を含む1、2、3またはそれ以上の分子層からなってもよい。
【0077】
本発明に従って採用される分子層は、好ましくは、分子単層である。
一態様において、分子層は自己組織化単分子膜(SAM)である。
【0078】
自己組織化単分子膜の製造は、当業者に知られており、レビューは、例えば、A. Ulman, Chem. Rev. 1996, 96, 1533-1554において与えられている。
基板の被覆の程度は、好ましくは90%~100%、とりわけ好ましくは95%~100%、極めてとりわけ好ましくは98%~100%である。
好ましくは、第2電極104はTiNからなる。
【0079】
一態様において、図1Aの態様において、描画面に垂直に走る導体トラックの形態で実装される第1の電極102が、基板101上に配置される。
【0080】
第1電極102と同様に、導体トラックの形態である第2電極104は、基板101の外方を向く分子層103の側面に配置されている。しかしながら、第2電極104は、第1電極102に対して90°回転されるため、十字型の配置が生じる。この配置はクロスバーアレイとも呼ばれ、ここでは一つの例として90°の角度が選択され、および第2電極104と第1電極102とが直角からずれた角度で交差する配置もまた想到され得る。第2電極104と第1電極102との間の各交差点において、この順序で、第2電極104、分子層103および第1電極102を有する層システムから形成されるスイッチングデバイス100が、配置される。一態様において、各スイッチングデバイス100にダイオードもまた割り当てられる。
【0081】
クロスバーアレイは、対応する第1電極102と第2電極104との間に電圧を適用することによって、各スイッチングデバイス100が電気的に処理されることを可能にする。
【0082】
電極の製造および構造化は、当業者に知られるプロセスによって行われ、実施例を参照することにより以下により一層詳細に説明される。
【0083】
電極102、104の構造は、マイクロエレクトロニクスから当業者に知られている構造化方法によって製造され得る。例えば、第1の電極102の製造には、リソグラフィ法が採用され得る。これにおいて、金属層が、気相蒸着の手段によって基板101に適用される。この金属層は、続いて、製造される構造によって曝露される、フォトレジストで被覆される。レジストの現像および、必要なところ、焼き付けの後、金属層の不要な部分は、例えば、湿式化学エッチングによって除去される。残ったレジストは、続いて、例えば溶剤を使用し、除去される。
【0084】
電極102、104の製造のためのさらなる可能性は、シャドウマスクの補助を伴う気相蒸着である。この方法において、製造される電極102、104の形状に対応する開口部を持つマスクを部品上に置き、および続いて、気相蒸着によって金属を適用する。金属蒸気は、マスクによって覆われていないエリアにおける部品上にのみ沈殿し、電極102、104を形成することができる。
【0085】
本発明によるスイッチングデバイスの製作のための好適かつ好ましいプロセスは、EP3813132、段落[0113]~[0126]に公開されている。本発明による化合物は、それらに記載されているように使用され得る。
【0086】
複数のデバイス100が定義される基板101が提供される。基板は、本態様において、シリコン(pドープ、抵抗率<0.001Ωcm-1、プライムグレード)である。好ましい態様において、シリコン基板は、隔離層として機能し、および誘導体化を改善するSiO2層からなる。他の態様において、III-V型およびII-VI型半導体化合物などの他の半導体材料が基板として使用されてもよい。デバイス100は、実装に応じて、フロントエンドプロセスまたはバックエンドプロセスの一部として形成されてもよい。よって、基板101は、基板が本プロセスのために提供されるとき、その上に形成されパターン化された材料の1以上の層を含んでいてもよい。
【0087】
第1の電極は、例えば、化学気相成長(CVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、無線周波CVD(RFCVD)、物理気相成長(PVD)、原子層堆積(ALD)、分子ビーム堆積(MBD)、パルスレーザー堆積(PLD)、および/または液体ソース霧状化学堆積(LSMCD)等の任意の堆積プロセス、ならびに/あるいはスパッタリング、あるいは第1の電極の少なくとも上部を形成する別の堆積または成長プロセスを使って基板101上に形成される。下部電極は、好ましくは、イオン移動のための高電圧閾値を有する材料を含むべきであり、および、それは、フォトリソグラフィーまたは当業者に知られている他の高度なリソグラフィープロセス、例えばナノインプリントリソグラフィーまたはディップペンリソグラフィーによって覆われる(blanket)か、または構造化され得る。
【0088】
任意に、第1電極は、ヒドロキシル基をもつ親水性酸化性表面を得るために、酸素、アルゴン、窒素プラズマまたはUV/オゾンによって処理される。この型の酸化性表面が縮合反応による可能な誘導体化の目的をもつ表面改質のために、単に機能し、および本当の意味における、絶縁体層または中間層を象徴しないことは明らかである。この酸化表面は、1nm程度の薄い膜厚であるため、この酸化表面を通して、十分に大きなトンネル電流が可能である。
【0089】
第1電極102の上に、分子層103が形成されている。
第1電極への分子層の堆積は、純物質により、または溶液から、好ましくは溶液から行われる。好適な積方法および溶媒は当業者に知られており、例はスピンコーティングまたはディップコーティングである。
【0090】
一態様において、特に式Iおよびそれらのサブ式の化合物の分子層を形成する化合物のアンカー基Gは、OH、
【化21】
-CH(CH2OH)2、-COOH、および-O-C(O)-OR2から選択され、ここで、R2は、一級のまたは二級または三級の1~6個のC原子を有するアルキル、好ましくは tert.-ブチルを表す;好ましくは、アンカー基Gは、OH、
【化22】
-CH(CH2OH)2および-COOからなる群から選択され、およびここで、分子層は、WO2021/083934において記載されるとおりのALDプロセスにおいて形成される。本発明の別の側面によると、ALDプロセスが提供され、ここで、前記ALDプロセスの第1の反応物は関連するフッ素原子を有し、およびここで分子層を形成する化合物、特に式Iおよびそれらのサブ式の化合物、のアンカー基Gは、-OSiR3、-COOSiR3、-CH(CH2OSiR3)2
【化23】
および-O-C(O)-OSiR3,
から選択され、
ここでRは、各出現において、同一にまたは異なるように、1~6個のC原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチルまたはイソプロピル、極めて好ましくはメチルを表す。
【0091】
分子層の分子は、好ましくは化学吸着または共有結合により、より好ましくは共有結合により、第1電極に結合される。結合は、例えば、基板の表面に位置するヒドロキシル基との縮合によって、当業者に熟知される知られる方法によって行われる。
代替の態様において、分子層103は、直接的にではなく、第1の電極のものとは異なる金属(例えば、Al2O3、ZrO2)由来の薄い酸化性接着層105を介してもまた連結され得、およびそれは第1の電極に、第1の電極について上に言及された堆積テクニック、好ましくはCVD、を使用して堆積される。
【0092】
好ましいのは、アンカー基Gがホスホン酸基である式Iの分子により、窒化チタン第1電極102の上に直接的に分子層をグラフトすることである。
【0093】
好ましい態様において、デバイスは、単分子膜の堆積後にアニールされる。アニールは、20℃を超えおよび300℃未満、好ましくは50℃を超えおよび200℃未満、とりわけ好ましくは90℃を超えおよび150℃未満の温度にて行われる。アニールの時間的な持続時間は、1~48時間、好ましくは4~24時間、とりわけ好ましくは8~16時間である。
【0094】
本発明の別の態様において、単分子膜は、式Iで表される1以上の化合物から製作され、ここでアンカー基Gが-SO2ORV、OP(O)(ORV)2、-PO(ORV)2、C(OH)(PO(ORV)2)2、-COORVまたはSi(ORV)3を表し、ここでRVは1~20個のC原子を有するアルキル、好ましくは20個までのC原子を有する2級または3級アルキルを表す。これらの化合物は、とりわけ高い溶解性によって区別され、スピンコーティングなどの工業的プロセスによく適している。加えて、これらの化合物を、気相堆積法によって処理することが可能である。これらの化合物は、対応する遊離酸の前駆体として機能し、第1電極への蒸着後に化合物を熱処理することにより、in situで得ることができる。次いで、第1の電極は、60℃と300℃との間、好ましくは100℃と250℃との間、特に140℃と180℃との間の温度まで加熱される。
【0095】
方向(例えば、水平方向)に沿って延びる電極を得るために、第1電極102をパターン化する。このステップにおいて、第1の方向に沿って平行に延びる複数の第1の電極が形成される。
【0096】
パターン化された第2電極は、リフトオフフォトレジスト、パターン化ステップ、電極蒸着、およびリフトオフを含む知られる処理一連を使用する、またはフォトレジストを使用する、リフトオフプロセスによって、分子層103上に形成される。
第2電極104は、例えば、スパッタリングまたは原子層堆積法によって堆積され得、好ましくはスパッタリングによって堆積され得る。
【0097】
本発明の別の側面によると、複数のセルが3次元のセルのアレイ状に配置されている。よって、アレイは、電子素子が形成される基板によって定義されてもよい平面の2方向に延長し、およびこの平面に垂直な垂直方向に延長していてもよい。平面の2つの方向または次元のそれぞれに配置されるセルの数は、極めて高くてもよく、少なくとも2~数千個、数百万のセル、あるいはさらに数十億のセルの範囲にある。例えば、x方向において1024個のセル、y方向において1024個のセルの配置構成において、単一の2次元のセルの層は、1048576個のセルを含む。直交する2本の電極線の交差部に各セルが位置されている、かかる2次元配列のセルは、クロスバーアレイとして知られる。
【0098】
垂直方向または次元に配列されたセルのレベルまたは層の数は、典型的にはより低く、2から少なくとも64、好ましくは少なくとも1024まで、またはさらに高い範囲にある。好ましくは、アレイは、少なくとも16レベルのセルを含、より好ましくは少なくとも32レベルのセルを含み、および最も好ましいのは少なくとも64レベルのセルを含む。かかるセルの3次元配列は、3Dクロスバーアレイまたは3Dクロスポイントデバイスとして知られる。
【実施例0099】

合成例
例1:(11‐{2‐フルオロ‐4‐[4‐ペンチルシクロヘキシル]フェノキシ}ウンデシル)ホスホン酸
ステップ1:ジエチル(11‐{2‐フルオロ‐4‐[4‐ペンチルシクロヘキシル]フェノキシ}ウンデシル)ホスホナート
【化24】
2‐フルオロ‐4‐(4‐ペンチルシクロヘキシル)フェノール (5.0 g、18.9 mmol)、ジエチル(11-ブロモウンデシル)-ホスホナート(9.1g、24.6mmol)、炭酸カリウム(10.5g、75.7mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.14g、0.95 mmol)およびブタノン(65 ml)を、窒素下で20時間の間、加熱し還流した。反応混合物を、ろ過し、およびろ過物を、蒸発乾固することによって、オレンジ色の油を与ええられる。油は、酢酸エチル/ジクロロメタンをもつシリカの上のカラムクロマトグラフィーによって精製されることによって、ジエチル(11‐{2‐フルオロ‐4‐[4‐ペンチルシクロヘキシル]-フェノキシ}ウンデシル)ホスホナートを無色の油として与えられた。
1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ ppm 0.90 (3 H, t, J=7.0 Hz), 0.96 - 1.09 (2 H, m), 1.15 - 1.51 (31 H, m), 1.52 - 1.66 (2 H, m), 1.67 - 1.92 (8 H, m), 2.39 (1 H, tt, J=12.2, 2.8 Hz), 3.99 (2 H, t, J=6.6 Hz), 4.03 - 4.17 (4 H, m), 6.83 - 6.90 (2 H, m), 6.92 (1 H, d, J=13.4 Hz).
【0100】
ステップ2:(11‐{2‐フルオロ‐4‐[(4‐ペンチルシクロヘキシル]フェノキシ}ウンデシル)ホスホン酸
【化25】
ジエチル(11‐{2‐フルオロ‐4‐[4‐ペンチルシクロヘキシル]フェノキシ}ウンデシル)ホスホナート(7.1g、12.8mmol)を、窒素下で、ジクロロメタン(107ml)中に溶解した。ブロモトリメチルシラン(19.7g、128.0mmol)を、滴下により追加しおよび終夜撹拌した。反応混合物を、in vacuoにおいて蒸発乾固し、および結果として生じる黄色の油を、メタノール (85ml)中に溶解し、次いで再度蒸発することによって、黄色固体が生産された。固体を、ジクロロメタン(67ml)中によって再溶解し、次いでメタノール(67ml)を、加えた。溶液を、in vacuoにおいて、40℃にて、結晶化が始まるまで、ゆっくり濃縮し、その時点において、蒸留を止め、およびフラスコを-5℃にて氷アセトンバスに遷し-および45分間撹拌した。結果として生じる固体を、濾過によって収集し、および冷メタノール(3 x 10 ml)により、フィルターの上で洗浄し、および乾燥することによって、(11‐{2‐フルオロ‐4‐[(4‐ペンチルシクロヘキシル]フェノキシ}-ウンデシル)ホスホン酸を無色の固体として与えられた。
1H NMR (400 MHz, THF-d8) δ ppm 0.90 (3 H, t, J=7.0 Hz), 0.98 - 1.14 (2 H, m), 1.18 - 1.52 (26 H, m), 1.53 - 1.67 (4 H, m), 1.70 - 1.80 (2 H, m), 1.81 - 1.92 (4 H, m), 2.40 (1 H, tt, J=12.1, 3.1 Hz), 3.97 (2 H, t, J=6.4 Hz), 6.67 - 7.17 (2 H, m).
19F NMR (376 MHz, THF-d8) δ ppm -135.71.
31P NMR (162 MHz, THF-d8) δ ppm 30.62.
【0101】
合成例1に類似して、以下の化合物を得た:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0102】
デバイスの製作
テストチップの調製
ALDによって堆積させた4nmのTiO2トップ層をもつ45x45mmのシリコンウェハを、オゾンで15分間処理し、および次いでTHF中のホスホン酸の1mM溶液の中へ72時間浸漬した。チップを窒素気流中で乾燥し、および次いで120℃にて1時間テンパリングした。チップを、THFで洗浄しおよび窒素気流中で乾燥する。
【0103】
水接触角の測定
11-{2-フルオロ-4-[(4-ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ}ウンデシル)-ホスホン酸で処理したテストチップは、100.8°の水接触角を有する。
【0104】
電気的特性評価
11-{2-フルオロ-4-[(4-ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ}ウンデシル)-ホスホン酸で処理して得られたシリコンウェハーを、1M塩酸に浸して清浄した銅板に銀導電ペーストによって接着する。銀導電性ペーストを、窒素の流れの下で80℃にて10分間アニールした。次いで、試料を、窒素グローブボックスに導入し、およびHgのキャピラリーによって、銅コンタクトにおける下部および上部に接触する。各測定のために、新たなHg滴を生産した。滴のサイズを、接点面積の決定のためにカメラシステムによって、測定した。
【0105】
接点面積あたり、40mVステップにおいて、-3と+3Vとの間の4サイクルの電流-電圧(I-V)測定を、とった。リテンション測定のために、セット動作(低抵抗状態、LRS)のための0~3Vまでおよび0Vに戻すことのI-V測定の半サイクルを、実行する。リセットのために、0~-3Vまで、および0Vに戻すI-V測定をとった(高抵抗状態、HRS)。一定時間間隔の後、1Vでの短い定電圧測定をした。その結果である電流-電圧曲線を図2において示す。
【0106】
分子単分子膜のない参照デバイスの測定結果を、図3に示す。
図1
図2
図3
【外国語明細書】