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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139034
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20230926BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20230926BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230926BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230926BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230926BHJP
   H10K 50/854 20230101ALI20230926BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20230926BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230926BHJP
   H10K 50/856 20230101ALI20230926BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20230926BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230926BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/18
G02B5/30
G02B5/02 B
H10K50/10
H10K50/854
H10K50/86
H10K59/10
H10K50/856
C08J7/04 A CER
C08J7/04 CEZ
B32B7/023
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110921
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2021173180の分割
【原出願日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0138548
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0138549
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145418
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】高 京門
(72)【発明者】
【氏名】邊 眞錫
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ミン▼秀
(72)【発明者】
【氏名】張 影來
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、低い反射率を実現しながらも、無色透明な特性を有する光学積層体、前記光学積層体を含む偏光板、前記光学積層体を含むディスプレイ装置、及び前記光学積層体を含む有機発光ダイオードディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、高分子樹脂層、および前記高分子樹脂層の一面に形成され、バインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層;を含み、前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ5nm~10nm領域と前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ50nm~150nmの領域で、それぞれシリコン元素に対するジルコニウム元素の特定体積比を有する光学積層体と前記光学積層体を含む偏光板、ディスプレイ装置および有機発光ダイオードディスプレイ装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂層;および
前記高分子樹脂層の一面に形成され、バインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層;を含み、
前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ5nm~10nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が2.6未満であり、
前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ50nm~150nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が1.62以上である、光学積層体。
【請求項2】
前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子が共に存在し、25~100nmの厚さを有する粒子混在層が前記光学機能層内に存在する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記粒子混在層は前記高分子樹脂層の一面から50nm以上の距離をおいて位置する、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記粒子混在層の厚さは楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を拡散層モデル(Diffuse layer model)により最適化(fitting)して決定される、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記粒子混在層に対して楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を下記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき、Aは1.100~1.200であり、Bは0~0.007であり、Cは0~1*10-3である、請求項2に記載の光学積層体:
【数1】
前記一般式2において、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【請求項6】
前記ソリッド型無機ナノ粒子はソリッド型シリカナノ粒子およびソリッド型ジルコニアナノ粒子を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記ソリッド型シリカナノ粒子に対して前記ソリッド型ジルコニアナノ粒子の重量比は10以上である、請求項6に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記光学機能層は20~240nmの厚さを有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記光学積層体の波長550nmでの反射率が0.5%以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記光学積層体の波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記高分子樹脂層は表面エネルギが34mN/m以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項12】
前記高分子樹脂層は波長550nmで平均屈折率が1.46超過であり、
前記光学機能層は波長550nmで平均屈折率が1.46以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項13】
前記光学機能層で前記ソリッド型無機ナノ粒子全体のうち50体積%以上が前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間に存在する、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項14】
前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域は波長550nmで1.46~1.75の屈折率を有する、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項15】
前記光学機能層で前記中空型無機ナノ粒子全体のうち50体積%以上が前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域に存在する、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項16】
前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域は波長550nmで1.0~1.40の屈折率を有する、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項17】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は0.5~100nmの直径を有し、
前記中空型無機ナノ粒子は1~200nmの直径を有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項18】
前記ソリッド型無機ナノ粒子および前記中空型無機ナノ粒子の間の密度の差が0.7~8.5g/cmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項19】
前記光学機能層に含まれるバインダ樹脂は光重合性化合物の(共)重合体および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋(共)重合体を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項20】
前記高分子樹脂層は光硬化性樹脂を含むバインダ樹脂および前記バインダ樹脂に分散した有機または無機微粒子;を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項21】
前記光学機能層と対向するように高分子樹脂層の他の一面に形成される光透過性基材層をさらに含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項22】
請求項1に記載の光学積層体および偏光子を含む、偏光板。
【請求項23】
請求項1に記載の光学積層体を含む、ディスプレイ装置。
【請求項24】
請求項1に記載の光学積層体を含む、有機発光ダイオードディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年10月23日付韓国特許出願第10-2020-0138549号、2020年10月23日付韓国特許出願第10-2020-0138548号および2020年11月3日付韓国特許出願第10-2020-0145418号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は光学積層体に関し、より詳細には低い反射率と高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を高め得る光学積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
一般にPDP、LCDなどの平板ディスプレイ装置には外部から入射される光の反射を最小化するための光学フィルムが取り付けられる。光の反射を最小化するための方法としては樹脂に無機微粒子などのフィラを分散させて基材フィルム上にコートして凹凸を付与する方法(anti-glare:AGコーティング);基材フィルム上に屈折率が異なる多数の層を形成させて光の干渉を用いる方法(anti-reflection:ARコーティング)またはこれらを混用する方法などがある。
【0004】
その中で、前記AGコーティングの場合は反射する光の絶対量は一般的なハードコートと等しい水準であるが、凹凸による光散乱を用いて目に入る光の量を減らすことによって低反射効果を得ることができる。しかし、前記AGコーティングは表面凹凸によって画面の鮮明度が落ちるので、最近ではARコーティングに対する多くの研究がなされている。
【0005】
前記ARコーティングを用いたフィルムとしては基材フィルム上に高屈折率層、低反射コート層などが積層された多層構造であるものが商用化されている。しかし、上記のように多数の層を形成させる方法は各層を形成する工程を別に行うことにより層間密着力(界面接着力)が弱いため耐スクラッチ性が落ちる短所がある。
【0006】
また、以前にはARコーティングの耐スクラッチ性を向上させるためにはナノメータサイズの多様な粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの粒子)を添加する方法が主に試みられた。しかし、上記のようにナノメータサイズの粒子を使用する場合、反射率を低下させるとともに、かつ耐スクラッチ性を同時に高めることは難しい限界があり、ナノメータサイズの粒子によって光学フィルムの表面が有する防汚性が大きく低下した。
【0007】
そのため、外部から入射される光の絶対反射量を減らし、表面の耐スクラッチ性と共に防汚性を向上させるための多くの研究がなされているが、これに伴う物性改善の程度は不十分な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、低い反射率を実現しながらも、無色透明な特性を有する光学積層体を提供する。
【0009】
また、本発明は前記光学積層体を含む偏光板を提供する。
【0010】
また、本発明は前記光学積層体を含むディスプレイ装置を提供する。
【0011】
また、本発明は前記光学積層体を含む有機発光ダイオードディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、高分子樹脂層;および前記高分子樹脂層の一面に形成され、バインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層;を含み、前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ5nm~10nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が2.6未満であり、前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ50nm~150nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が1.62以上である光学積層体が提供される。
【0013】
また、本明細書では、前記光学積層体および偏光子を含む偏光板が提供される。
【0014】
また、本明細書では、前記光学積層体を含むディスプレイ装置が提供される。
【0015】
また、本明細書では、前記光学積層体を含む有機発光ダイオードディスプレイ装置が提供される。
【0016】
以下、発明の具体的な実施形態による光学積層体、偏光板、ディスプレイ装置および有機発光ダイオードディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0017】
本明細書で、光重合性化合物は光が照射されると、例えば可視光線または紫外線が照射されると重合反応を起こす化合物を通称する。
【0018】
また、含フッ素化合物は化合物のうち少なくとも1個以上のフッ素元素が含まれた化合物を意味する。
【0019】
また、(メタ)アクリル[(Meth)acryl]はアクリル(acryl)およびメタクリレート(Methacryl)の両方をすべて含む意味である。
【0020】
また、(共)重合体は共重合体(co-polymer)および単独重合体(homo-polymer)の両方をすべて含む意味である。
【0021】
また、中空シリカ粒子(silica hollow particles)とはけい素化合物または有機けい素化合物から導き出されるシリカ粒子として、前記シリカ粒子の表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0022】
発明の一実施形態によれば、高分子樹脂層;および前記高分子樹脂層の一面に形成され、バインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層;を含み、前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ5nm~10nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が2.6未満であり、前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ50nm~150nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が1.62以上である光学積層体が提供されることができる。
【0023】
光学機能層を含む光学フィルムが低い屈折率を有する場合、緑色領域での反射率に比べて青い色領域での反射率が高くなる。これによってフィルムが青い色を帯びて偏光板またはディスプレイ装置などに適用するのに適しない程度の不透明性または有色性を有する場合がある。
【0024】
そこで、本発明者らは光学積層体に関する研究を行い、中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層が、特定領域でシリコン元素およびジルコニウム元素を特定体積比で含むことによって、低い反射率およびヘイズを実現しながらも、ブラック視感が向上し、青い色を帯びる程度を顕著に減らして無色透明な特性を有するようにすることができることを実験により確認して発明を完成した。
【0025】
また、前記光学積層体は上述した特徴と共に高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現できる特徴を有することができる。
【0026】
具体的には、前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ5nm~10nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が2.6未満、0.5~2.0、1.0~1.8または1.2~1.6であり得る。
【0027】
前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ50nm~150nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が1.62以上、1.70~2.5、1.75~2.3または1.80~2.0であり得る。
【0028】
上述した領域でシリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比は上述した領域で体積比の算術平均値に該当する。
【0029】
また、上述した領域でシリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が上述した範囲を満たすことによって低い反射率を実現しながらも無色透明な特性を有し、さらに高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができる。
【0030】
前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ5nm~10nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が2.6以上の場合、低い反射率を実現することが難しいか無色透明な特性を示すことが難しい。
【0031】
前記高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から前記光学機能層の厚さ50nm~150nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が1.62未満であれば、低い反射率を実現することが難しいか無色透明な特性を示すことが難しい。
【0032】
前記一実施形態による光学積層体に含まれる前記光学機能層は、中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を共に含むことにより高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができる。また、前記ソリッド型無機ナノ粒子としてソリッド型シリカナノ粒子およびソリッド型ジルコニアナノ粒子を共に含み得る。これによって、前記光学積層体は低いヘイズを示しながらもブラック視感が向上することができる。
【0033】
例えば、前記光学機能層はバインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子、ソリッド型シリカナノ粒子およびソリッド型ジルコニアナノ粒子を含み、前記ソリッド型シリカナノ粒子に対して前記ソリッド型ジルコニアナノ粒子の重量比は10以上、15~40、20~30、または23~28であり得る。
【0034】
前記ソリッド型シリカナノ粒子に対して前記ソリッド型ジルコニアナノ粒子を10以上の重量比で含むことによって、高い透光率を有しながらも高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、低い反射率およびヘイズを実現しながらも、ブラック視感が向上し、無色透明な特性を示すことができる。
【0035】
一方、前記ソリッド型シリカナノ粒子に対して前記ソリッド型ジルコニアナノ粒子の重量比が10未満の場合、前記粒子混在層の厚さが増加し得、これによって適正屈折率差を付与することはできないため反射率およびヘイズが増加する。
【0036】
前記光学機能層内には、前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子が共に存在して25~100nmの厚さを有する粒子混在層が存在し得る。
【0037】
前記粒子混在層の存在によって、前記光学積層体が低い反射率を実現しながらも無色透明な特性を有し得るが、前記光学機能層が中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含むことにより高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができる。
【0038】
具体的には、前記高分子樹脂層の一面上に前記光学機能層が形成され得、前記粒子混在層は前記高分子樹脂層の一面から50nm以上の距離をおいて位置し得、または前記粒子混在層は前記高分子樹脂層の一面から50nm~250nm、または60nm~220nm、または70nm~200nm、または80nm~180nm、または90nm~150nm、または100nm~120nmの距離をおいて位置し得る。
【0039】
前記粒子混在層は前記高分子樹脂層の一面から50nm以上の距離をおいて位置することにより、光学機能層内で層間の屈折率の急激な差を緩和させる役割をし、前記波長550nmでの反射率が0.5%以下の光学積層体が有する短波長領域の反射率パターンの傾きの絶対値が低くなる。
【0040】
前記粒子混在層が前記高分子樹脂層の一面から50nm未満の領域に位置する場合、光学機能層内で層間の屈折率の差を緩和させる効果が制限的であるため前記波長550nmでの反射率が0.5%以下の光学積層体が有する反射率パターンの傾きの絶対値を十分に見つけることができない。
【0041】
前記粒子混在層と前記高分子樹脂層の間の距離は、前記高分子樹脂層の面方向を基準として前記高分子樹脂層の一面と前記粒子混在層の間の距離のうち最短距離とする。または前記粒子混在層と前記高分子樹脂層の間の距離は、前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域の厚さで定義することができる。
【0042】
前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域が存在することは楕円偏光法(ellipsometry)により確認することができる。前記粒子混在層や前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域それぞれに対して楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率をコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき、特定のコーシーパラメータA、BおよびCを有するようになり、そのため前記粒子混在層や前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域それぞれは互いに区分される。
【0043】
具体的には、前記光学機能層についてJ.A.Woollam Co.M-2000の装置を用いて、70°の入射角を適用して380~1000nmの波長範囲で線偏光を測定することができる。前記測定された線偏光測定データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))をComplete EASE softwareを用いて前記光学機能層内の細部層に対して下記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)することができる。
【0044】
【数1】
【0045】
前記一般式2において、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0046】
また、前記楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を前記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)および拡散層モデル(Diffuse Layer Model)により最適化(fitting)することにより前記粒子混在層や前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域それぞれの厚さも導き出され得るため、前記光学機能層内で前記粒子混在層や前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域それぞれの定義が可能になる。
【0047】
また、波長550nmでの反射率が0.5%以下である光学積層体は、波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5以上、5~20、5.5~15、または6~12であり得る。
【0048】
前記光学積層体が波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5以上、または5~20、または5.5~15、または6~12である特性を満たすことにより、前記光学積層体は緑色領域での反射率に比べて青い色領域での反射率が低い光学特性を有することができ、そのため低い反射率を実現しながらも無色透明な特性を有することができる。
【0049】
前記波長550nmでの反射率が0.5%以下である光学積層体が波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5未満の場合、前記光学積層体が青い色を帯びて偏光板またはディスプレイ装置に適用するのに適しない程度の不透明性または有色性を有するようになる。特に、波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5未満の光学積層体の場合、有機発光ダイオードディスプレイ装置の色再現力を低下させる。
【0050】
前記波長550nmでの反射率が0.5%以下である光学積層体の波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5以上、または5~20、または5.5~15、または6~12であることを満たす範囲で、前記光学積層体の波長550nmでの反射率が0.05%~5.0%、または0.06~4.0%であるか、または0.07~3.0%であるか、または0.08%~0.3%であり得る。
【0051】
また、前記光学積層体の400nmでの反射率が0.5%~3.50%、または0.80%~2.0%であり得る。
【0052】
前記光学積層体の波長550nmでの反射率に対して、波長700nmでの反射率の比率が5以上、または5~20、または6~15、または7~12である特性を有することができる。そのため、前記光学積層体は緑色領域での反射率に比べて青い色領域での反射率が低い光学特性を有することができ、そのため低い反射率を実現しながらも無色透明な特性を有することができる。波長700nmでの反射率が波長550nmでの反射率に比べて過度に高い場合、赤色光領域の反射率が相対的に高くなり該当光学フィルムは黄色または赤く見える。
【0053】
一方、前記波長550nmでの反射率が0.5%以下である光学積層体は、前記光学機能層内に前記所定の厚さを有する粒子混在層を含み、前記波長550nmでの反射率が0.5%以下である光学積層体の波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5以上、または5~20、または5.5~15、または6~12であり得るが、そのため前記光学積層体はCIE Lab色空間でb*の絶対値が4以下、または3以下、または2以下、または1.5以下の特性を有することができる。
【0054】
前記CIE Lab色空間での各数値は、前記色空間の各座標を測定する一般的な方式を適用して測定することができ、例えば、測定位置に積分区形態の検出器(detector)を有する装備(spectrophotometer)(例:CM-2600d、KONICA MINOLTA社)を位置させた後に製造会社のマニュアルに従って測定することができる。一つの例示で前記CIE Lab色空間の各座標は前記偏光子または偏光板を液晶パネル、例えば前記高反射液晶パネルに付着した状態で測定することもでき、前記偏光子または偏光板自体に対して測定することもできる。
【0055】
前記CIE Lab色空間は、人間視覚の拮抗理論に基づいてCIE XYZ色空間を非線状変換した色空間である。このような色空間でL*値は明るさを示し、L*値が0の場合は黒い色、L*値が100の場合は白色を示す。また、a*値が負数の場合は緑に偏る色になり、正数の場合は赤に偏る色になる。また、b*値が負数の場合は青に偏る色になり、b*値が正数の場合は黄に偏る色になる。
【0056】
すなわち、前記光学積層体はCIE Lab色空間でb*値の絶対値が4以下、または3以下、または2以下、または1.5以下である特性を有することにより、低い反射率を実現しながらも赤い色や青い色を帯びる程度を顕著に減らして無色透明な特性を有することができる。
【0057】
より具体的には、前記光学積層体の波長550nmでの反射率が0.5%以下であり得、このような低い反射率を実現しながらもCIE Lab色空間でb*値の絶対値が4以下、または3以下、または2以下、または1.5以下である特性を有することができる。
【0058】
このように、低い反射率を実現し、かつCIE Lab色空間でb*値の絶対値を低い水準を維持することにより、前記光学積層体は高いコントラスト比および輝度を有するディスプレイに容易に適用され、色再現率が高い性能を実現することができる。
【0059】
前記光学積層体の上述した特徴を有するために、前記光学機能層内に中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を共に含み、25~100nm、または35nm~90nm、または40nm~85nm、または50nm~80nm、または60nm~75nmの厚さを有する粒子混在層が存在することができる。
【0060】
前記粒子混在層の厚さが小さすぎると、前記光学機能層の耐スクラッチ特性が低くなる。これに対し、前記粒子混在層の厚さが厚すぎる場合、これにより前記光学積層体の透明度などの光学特性が低下し得る。
【0061】
前記粒子混在層の屈折率や厚さは多様な光学測定方法により確認することが可能であり、例えば楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を拡散層モデル(Diffuse layer model)により最適化(fitting)する方法などを用いても確認可能である。
【0062】
前記楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率および関連データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))は通常知られている方法および装置を用いて測定することができる。例えば、前記光学機能層に含まれた粒子混在層または他の領域に対してJ.A.Woollam Co.M-2000の装置を用いて、70°の入射角を適用して380~1000nmの波長範囲で線偏光を測定することができる。
【0063】
前記測定された線偏光測定データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))は、Complete EASE softwareを用いて粒子混在層については拡散層モデル(Diffuse layer model)を、粒子混在層の下層および上層については下記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により前記2個の層を分けて適用してMSEが5以下になるように最適化(fitting)することができる。
【0064】
【数2】
【0065】
前記一般式2において、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0066】
前記光学機能層に含まれた粒子混在層の厚さと屈折率の範囲が上述した前記範囲を満たす場合、各層間の屈折率の急激な差を緩和させることができ、そのため前記光学積層体は低い反射率を実現しながらもCIE Lab色空間でb*値の絶対値を低い水準に維持できるようにする。
【0067】
一方、前記光学機能層に含まれるバインダ樹脂の組成、粒子の種類や含有量、光学機能層形成時の具体的な工程(例えばコーティング速度やコーティング方法または乾燥条件など)、高分子樹脂層の特性などを調節して前記光学機能層内に粒子混在層を形成することができる。
【0068】
このような例は前記粒子混在層の形成のための方法や手段の例示であり、前記方法や手段を同時に用いる場合のみ前記光学機能層内に粒子混在層が形成されるのではなく、光学機能層を形成する細部材料およびこれらの含有量、光学機能層の厚さ、高分子樹脂層の細部材料およびこれらの含有量、高分子樹脂層の表面特性および厚さなどに応じて調整することが可能である。すなわち、前記光学機能層内に粒子混在層の存在およびこれによる効果は明細書の説明や実施例に基づいて実現することが可能である。
【0069】
例えば、前記光学積層体に含まれる高分子樹脂層は、光硬化性樹脂を含むバインダ樹脂および前記バインダ樹脂に分散した有機または無機微粒子;を含み得、このような高分子樹脂層上にバインダ樹脂および中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層を所定の条件により形成する場合は前記粒子混在層が存在し得る。
【0070】
また、前記光学積層体に含まれる高分子樹脂層は、34mN/m以上、または34mN/m~60mN/m、または35mN/m~55mN/mの表面エネルギを有し得るが、このような数値範囲の表面エネルギを有する高分子樹脂層上にバインダ樹脂および中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層が形成される場合、界面の高い表面エネルギによる光学機能層内での表面エネルギ最適化の過程で上述した粒子混在層が形成され得る。
【0071】
前記高分子樹脂層が有する表面エネルギは前記高分子樹脂層の表面特性を調節することにより得られる。例えば、前記高分子樹脂層の表面硬化度、乾燥条件などを調節することによって、前記高分子樹脂層が有する表面エネルギを調節することができる。
【0072】
具体的には、前記高分子樹脂層の形成過程で硬化条件、例えば光照射量または光照射強度や注入される窒素の流量などを調節することによって、前記高分子樹脂層の硬化度を調節することができる。例えば、前記高分子樹脂層は窒素大気条件を適用するために窒素パージをした状態で、前記高分子樹脂層を形成する樹脂組成物を5~100mJ/cm、または10~25mJ/cmの露光量で紫外線を照射して得られる。
【0073】
前記表面エネルギは通常知られている測定装置、例えばKruss社のDSA-100接触角測定装備を用いてdi-water(Gebhardt)とdi-iodomethane(Owens)の接触角を10pointsで測定して平均値を出した後平均接触角を表面エネルギに換算して測定する。具体的には、前記表面エネルギの測定ではDropshape Analysisソフトウェアを用い、OWRK(Owen,Wendt,Rable,Kaelble) methodの下記一般式1をプログラム上に適用して接触角を表面エネルギに換算する。
【0074】
【数3】
【0075】
また、後述するように、光学機能層の形成時に乾燥温度、風量調節などを適用することにより前記粒子混在層が形成される。
【0076】
具体的には、前記光学機能層の形成過程で乾燥条件、例えば吸気または排気量を調節することによって、乾燥過程で風量を調節することができる。例えば、前記光学機能層のコーティング後乾燥過程で風量を0.5m/s以上、または0.5m/s~10m/s、または0.5m/s~8m/s、または0.5m/s~5m/sで行うこともできる。
【0077】
より具体的には、前記高分子樹脂層の一面上に前記光学機能層が形成され、前記光学機能層はバインダ樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含み得、このとき、前記光学機能層で前記ソリッド型無機ナノ粒子全体のうち50体積%以上、または60体積%以上、または70体積%以上、または前記数値以上または95体積%以下が前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間に存在し得る。
【0078】
このように、前記ソリッド型無機ナノ粒子が前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域に主に分布することにより、前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域は波長550nmで1.46~1.75の屈折率を有する。
【0079】
「前記ソリッド型無機ナノ粒子全体のうち50体積%以上が特定領域に存在する」ことは、前記光学機能層の断面で前記ソリッド型無機ナノ粒子が前記特定領域に大部分存在するという意味で定義され、具体的には前記ソリッド型無機ナノ粒子全体のうち70体積%以上は前記ソリッド型無機ナノ粒子全体の体積を測定して確認することが可能である。
【0080】
例えば、前記ソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子それぞれが主に分布する領域それぞれが光学機能層内に存在することを可視的に認すことができる。例えば透過電子顕微鏡[Transmission Electron Microscope]または走査電子顕微鏡[Scanning Electron Microscope]などを用いて個別層または個別領域それぞれが光学機能層内に存在することを可視的に確認することができ、また、光学機能層内で該当層または該当領域それぞれに分布するソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子の比率もまた確認することができる。
【0081】
また、前記光学機能層で、前記中空型無機ナノ粒子全体のうち50体積%以上、または60体積%以上、または70体積%以上、または前記数値以上または95体積%以下が前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域に存在し得る。前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面は前記高分子樹脂層と接する面と逆方向に位置する他の一面を意味する。
【0082】
このように、前記中空型無機ナノ粒子が前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域に主に分布することにより、前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域は波長550nmで1.0~1.40の屈折率を有することができる。
【0083】
前記光学積層体の光学機能層では上述した粒子混在層が存在し、かつ前記高分子樹脂層および前記光学機能層の間の界面の近くにソリッド型無機ナノ粒子が主に分布し、前記界面の反対面の方には中空型無機ナノ粒子が主に分布するが、前記ソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子それぞれが主に分布する領域が光学機能層内で可視的に確認される独立した層を形成することができる。
【0084】
具体的には、前記光学積層体の光学機能層のうち前記高分子樹脂層および前記光学機能層の間の界面の近くにソリッド型無機ナノ粒子を主に分布させ、前記界面の反対面の方には中空型無機ナノ粒子を主に分布させる場合、以前に無機粒子を使用して得られることができた実際の反射率に比べてより低い反射率を達成することができ、大きく向上した耐スクラッチ性および防汚性を共に実現することができる。
【0085】
そして、前記実施形態の光学積層体では光学機能層内でソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子が偏在する領域が前記粒子混在層を基準に分かれるが、そのため前記光学積層体は波長550nmでの反射率が0.5%以下であり、かつCIE Lab色空間でb*値の絶対値が4以下、または3以下、または2以下、または1.5以下であるが、そのため低い反射率を実現しながらも青い色を帯びる程度を顕著に減らして無色透明な特性を有することができる。
【0086】
また、前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域および前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域それぞれは個別層に区別し得、前述したようにこれら個別層に分布するシリコン元素およびジルコニウム元素の体積比もまた区別することができる。
【0087】
より具体的には、前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を下記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき、下記Aは1.00~1.65であり、Bは0.0010~0.0350であり、Cは0~1*10-3の条件を満たす。また、前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域に対して、下記Aは1.25~1.55、1.30~1.52、または1.45~1.51であり、かつ下記Bは0.0010~0.0150、0.0010~0.0080、または0.0010~0.0050であり、かつ下記Cは0~8.0*10-4、0~5.0*10-4、または0~4.1352*10-4の条件を満たすことができる。
【0088】
【数4】
【0089】
前記一般式2において、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0090】
また、前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を前記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき、前記Aは1.00~1.50であり、Bは0~0.007であり、Cは0~1*10-3の条件を満たす。また、前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域に対して、前記Aは1.00~1.30、1.00~1.20、1.00~1.09、または1.00~1.05であり、かつ前記Bは0~0.0060、0~0.0055、または0~0.00513であり、かつ前記Cは0~8*10-4、0~5.0*10-4、または0~4.8685*10-4の条件を満たす。
【0091】
また、前記粒子混在層に対して楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を前記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき、前記Aは1.100~1.200、1.130~1.199、1.150~1.198、または1.180~1.195であり、Bは0~0.007、0~0.006、0~0.005、または0~0.004であり、Cは0~1*10-3、0~8*10-4、0~5.0*10-4、または0~4.8685*10-4の条件を満たす。
【0092】
一方、前記粒子混在層、前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域および前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域それぞれは一つの層内で共通した光学特性を共有することができ、そのため一つの層として定義されることができる。
【0093】
より具体的には、前記粒子混在層、前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域および前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域それぞれは、楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を前記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき、特定のコーシーパラメータA、BおよびCを有し、そのため各領域は互いに区分される。また、前記楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を前記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)することによりそれぞれ領域の厚さも導き出されるため、前記光学機能層内でそれぞれ領域の定義が可能になる。
【0094】
一方、前記楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を前記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき導き出されるコーシーパラメータA、BおよびCは一つの領域内での平均値であり得る。そのため、前記それぞれ領域の間に界面が存在する場合、前記それぞれ領域が有するコーシーパラメータA、BおよびCが重なる。ただし、このような場合にも、前記それぞれの領域それぞれが有するコーシーパラメータA、BおよびCの平均値を満たす領域に応じて、前記それぞれ領域の厚さおよび位置が特定される。
【0095】
一方、前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子が特定された領域に存在するかどうかはそれぞれの中空型無機ナノ粒子またはソリッド型無機ナノ粒子が前記特定された領域内に粒子が存在するかどうかにより決定し、前記特定領域の境界面にかけて存在する粒子は除いて決定する。
【0096】
上述した粒子混在層を含む光学機能層は、前記高分子樹脂層に平均屈折率が低くてもよく、例えば、前記光学機能層は波長550nmで平均屈折率が1.46以下、1.43以下、1.40以下、または1.39~1.30であり得る。また、前記高分子樹脂層は波長550nmで平均屈折率が1.46超過、1.47以上または1.49~1.52であり得る。
【0097】
一方、前述したように、光学機能層でも「前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域は屈折率が波長550nmで1.46~1.75」であり、「前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域は屈折率が波長550nmで1.0~1.40」であるが、前記光学機能層の平均屈折率はこのような領域と粒子混在層をすべて包括する前記光学機能層全般の屈折率の平均値を意味する。同様に高分子樹脂層の平均屈折率もまた、層全般で測定された屈折率の平均値を意味する。
【0098】
前記光学機能層で前記ソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子の特異的分布は後述する特定の製造方法において、上述したナノ粒子を含む光学機能層形成用光硬化性樹脂組成物を乾燥温度、乾燥風量、乾燥時間などを調節するなどの方法および上述した粒子混在層の形成方法などにより得られる。
【0099】
前記光学積層体が波長550nmで0.5%以下の反射率を有するために、前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を選択する際、これらの間の屈折率差が大きい種類を選択する。
【0100】
より具体的には、前記ソリッド型無機ナノ粒子および前記中空型無機ナノ粒子の間の密度の差が0.7~8.5g/cm、0.8~7.5g/cm、0.9~6.5g/cm、1.1~5.5g/cm、1.20~4.5g/cmまたは1.24~4.27g/cmであり得る。
【0101】
ソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子の間の密度の差が過度に大きい場合、前記ソリッド型無機ナノ粒子が高分子樹脂層に密集して前記中空型無機ナノ粒子が主に分布する領域と分離したりソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子が主に分布する領域の間に粒子が実質的に存在しない中間層が形成され得る。このように前記ソリッド型無機粒子が光学機能層と高分子樹脂層の界面に集中して集まったり前記光学機能層の形成過程で粒子の移動および偏在が円滑でない場合もあり、光学機能層の表面にシミが発生したり光学機能層のヘイズ(Haze)が大きく上昇して透明度が低下し得る。
【0102】
また、ソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子の間の密度の差が小さすぎる場合、上述したソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子が偏在が現れないため反射率が大きく上昇したり無色透明な特性が現れない。
【0103】
したがって、前記一実施形態の光学積層体に含まれる光学機能層は上述した密度差を有する無機粒子を含み、高い透光率を有し、かつ高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、低い反射率およびヘイズを実現しながらも、ブラック視感が向上し、無色透明な特性を有することができる。
【0104】
より具体的には、前記ソリッド型無機ナノ粒子が前記中空型無機ナノ粒子に比べてより高い密度を有することができ、例えば前記ソリッド型無機ナノ粒子が1.2~10.5g/cm、2.0~7.5g/cmまたは3.0~5.5g/cmの密度を有することができ、前記中空型無機ナノ粒子は0.50g/cm~2.00g/cm、0.70g/cm~1.80g/cmまたは1.00g/cm~1.60g/cmの密度を有することができる。
【0105】
前記ソリッド型無機ナノ粒子の具体的な種類としてはジルコニア、チタニア、五酸化アンチモン、シリカまたは酸化スズなどが挙げられ、例えば、ソリッド型シリカナノ粒子およびソリッド型ジルコニアナノ粒子を含み得る。このとき、前記ソリッド型ジルコニアナノ粒子は密度が3~7g/cmまたは5~6g/cmであり得、前記ソリッド型シリカナノ粒子は密度が2~4g/cmまたは2.5~3.0g/cmであり得る。
【0106】
また、前記中空型無機ナノ粒子の具体的な種類としては中空シリカなどが挙げられる。
【0107】
一方、前記光学機能層はバインダ樹脂と前記バインダ樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含み得る。
【0108】
前記実施形態の光硬化性コーティング組成物に含まれる光重合性化合物は製造される光学機能層のバインダ樹脂の基材を形成することができる。
【0109】
具体的には、前記光重合性化合物は(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含み得る。より具体的には、前記光重合性化合物は(メタ)アクリレートまたはビニル基を1以上、または2以上、または3以上含む単量体またはオリゴマーを含み得る。
【0110】
前記(メタ)アクリレートを含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートまたはこれらの2種以上の混合物であるか、またはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー、デンドリックアクリレートオリゴマー、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。このとき、前記オリゴマーの分子量は1,000~10,000であることが好ましい。
【0111】
前記ビニル基を含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ジビニルベンゼン、スチレンまたはパラメチルスチレンが挙げられる。
【0112】
前記光硬化性コーティング組成物中の前記光重合性化合物の含有量が大きく限定されるものではないが、最終的に製造される光学機能層や光学積層体の機械的物性などを考慮して前記光硬化性コーティング組成物の固形分中の前記光重合性化合物の含有量は5重量%~80重量%であり得る。前記光硬化性コーティング組成物の固形分は前記光硬化性コーティング組成物中の液相の成分、例えば後述するように選択的に含まれ得る有機溶媒などの成分を除いた固体の成分のみを意味する。
【0113】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は100nm以下の最大直径を有し、その内部に空の空間が存在しない形態の粒子を意味する。
【0114】
また、前記中空型無機ナノ粒子は200nm以下の最大直径を有し、その表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0115】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は0.5~100nm、または1~50nm、または5~30nm、または10~20nmの直径を有することができる。
【0116】
前記中空型無機ナノ粒子は1~200nm、または10~100nm、または50~120nm、または30~90nm、または40~80nmの直径を有することができる。
【0117】
前記中空型無機ナノ粒子の直径と前記ソリッド型無機ナノ粒子の直径は相違してもよい。
【0118】
また、前記中空型無機ナノ粒子の直径が前記ソリッド型無機ナノ粒子の直径より大きくてもよい。
【0119】
前記ソリッド型無機ナノ粒子および前記中空型無機ナノ粒子それぞれの直径は断面で確認される前記ナノ粒子の最長直径を意味する。
【0120】
一方、前記ソリッド型無機ナノ粒子および前記中空型無機ナノ粒子それぞれは、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)およびチオール基(Thiol)からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含有することができる。前記ソリッド型無機ナノ粒子および前記中空型無機ナノ粒子それぞれが表面に上述した反応性官能基を含有することにより、前記光学機能層はより高い架橋度を有することができ、そのためより向上した耐スクラッチ性および防汚性を確保することができる。
【0121】
前記光学機能層は前記光硬化性コーティング組成物を所定の基材上に塗布し、塗布された結果物を光硬化することによって得られる。前記基材の具体的な種類や厚さは大きく限定されるものではなく、光学機能層または光学積層体の製造に使用されると知られている基材を大きな制限なく使用することができる。
【0122】
前記光硬化性コーティング組成物を塗布するのに通常用いられる方法および装置を格別な制限なく用いることができ、例えば、Meyer barなどのバーコート法、グラビアコーティング法、2 roll reverseコート法、vacuum slot dieコート法、2 rollコート法などを用いることができる。
【0123】
前記光学機能層は20nm~240nm、または50nm~200nm、または80nm~180nmの厚さを有することができる。
【0124】
前記光硬化性コーティング組成物を光硬化させる段階では200~400nm波長の紫外線または可視光線を照射し得、照射時露光量は100~4,000mJ/cmが好ましい。露光時間も特に限定されるものではなく、用いられる露光装置、照射光線の波長または露光量に応じて適宜変更させることができる。
【0125】
また、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化させる段階では窒素大気条件を適用するために窒素パージなどを行うことができる。
【0126】
一方、前記光学機能層に含まれるバインダ樹脂は光重合性化合物の(共)重合体および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋(共)重合体を含み得る。
【0127】
上述した光学機能層は光重合性化合物、光反応性官能基を含む含フッ素化合物、中空型無機ナノ粒子、ソリッド型無機ナノ粒子および光開始剤を含む光硬化性コーティング組成物から製造されることができる。そのため、前記光学機能層に含まれるバインダ樹脂は光重合性化合物の(共)重合体および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋(共)重合体を含み得る。
【0128】
前記含フッ素化合物を含むバインダ樹脂の疎水性と高分子樹脂層の高い表面エネルギによる親水性によって、光学積層体の乾燥過程中に前記含フッ素化合物がコート層の表面に動く速度に影響を及ぼす。これによって溶媒内に対流が形成され、溶媒に等しく分布していた微細粒子はその粒子の特性に応じて異なる挙動を示す。特に、この過程で各粒子は互いに異なる複数の層を形成することができ、それぞれの層を形成させる途中に溶媒の蒸発が終わると上述した粒子混在層が形成される。
【0129】
前記含フッ素化合物の表面上昇が中空型無機ナノ粒子の表面上昇を誘導することができ、相対的に小さい大きさを有するソリッド型無機ナノ粒子はその影響を少なく受けるため各粒子の相分離が起きられるが、その過程中の溶媒の蒸発が終わって粒子の流動性が消えることにより前記光学機能層内に上述した混在層の所定の厚さを有して形成される。
【0130】
前記光重合性化合物は上述した単量体またはオリゴマー以外にフッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーをさらに含み得る。前記フッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーをさらに含む場合、前記(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーに対する前記フッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーの重量比は0.1%~10%であり得る。
【0131】
前記フッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、下記化学式11~15からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0132】
【化1】
【0133】
前記化学式11において、Rは水素基または炭素数1~6のアルキル基で、aは0~7の整数であり、bは1~3の整数である。
【0134】
【化2】
【0135】
前記化学式12において、cは1~10の整数である。
【0136】
【化3】
【0137】
前記化学式13において、dは1~11の整数である。
【0138】
【化4】
【0139】
前記化学式14において、eは1~5の整数である。
【0140】
【化5】
【0141】
前記化学式15において、fは4~10の整数である。
【0142】
一方、前記光学機能層には前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物から由来した部分が含まれ得る。
【0143】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物には1以上の光反応性官能基が含まれるかまたは置換され得、前記光反応性官能基は光の照射によって、例えば可視光線または紫外線の照射によって重合反応に参加できる官能基を意味する。前記光反応性官能基は光の照射によって重合反応に参加できると知られている多様な官能基を含み得、その具体的な例としては(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)またはチオール基(Thiol)が挙げられる。
【0144】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物それぞれは、2,000~200,000、好ましくは5,000~100,000の重量平均分子量(GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)を有することができる。
【0145】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物の重量平均分子量が小さすぎると、前記光硬化性コーティング組成物において含フッ素化合物が表面に均一でかつ効果的に配列されず、最終的に製造される光学機能層の内部に位置するが、そのため前記光学機能層の表面が有する防汚性が低下し、前記光学機能層の架橋密度が低くなり全体的な強度や耐スクラッチ性などの機械的物性が低下し得る。
【0146】
また、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物の重量平均分子量が過度に高いと、前記光硬化性コーティング組成物において他の成分との相容性が低くなり、そのため最終的に製造される光学機能層のヘイズが高まったり光透過度が低くなり、前記光学機能層の強度もまた低下し得る。
【0147】
具体的には、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環式化合物;ii)1以上の光反応性官能基に置換され、少なくとも一つの水素がフッ素に置換され、一つ以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環式化合物;iii)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つのシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子(例えば、ポリジメチルシロキサン系高分子);iv)1以上の光反応性官能基に置換され、少なくとも一つの水素がフッ素に置換されたポリエーテル化合物、または前記i)~iv)のうち2以上の混合物またはこれらの共重合体が挙げられる。
【0148】
前記光硬化性コーティング組成物は前記光重合性化合物100重量部に対して前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物20~300重量部を含み得る。
【0149】
前記光重合性化合物に対して前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物が過量添加される場合、前記実施形態の光硬化性コーティング組成物のコーティング性が低下したり前記光硬化性コーティング組成物から得られた光学機能層が十分な耐久性や耐スクラッチ性を有することができない。また、前記光重合性化合物に対して前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物の量が小さすぎると、前記光硬化性コーティング組成物から得られた光学機能層が十分な防汚性や耐スクラッチ性などの機械的物性を有することができない。
【0150】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物はケイ素またはけい素化合物をさらに含み得る。すなわち、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は選択的に内部にケイ素またはけい素化合物を含有し得、具体的には前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物中のケイ素の含有量は0.1重量%~20重量%であり得る。
【0151】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物に含まれるケイ素は、前記実施形態の光硬化性コーティング組成物に含まれる他の成分との相容性を高めることができ、そのため最終的に製造される屈折層にヘイズ(haze)が発生することを防止して透明度を高める役割をすることができる。一方、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物中のケイ素の含有量が過度に大きい場合、前記光硬化性コーティング組成物に含まれた他の成分と前記含フッ素化合物間の相容性がかえって低下し得、そのため最終的に製造される光学機能層や光学積層体が十分な透光度や反射防止性能を有することができないため表面の防汚性もまた低下し得る。
【0152】
前記光学機能層は前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して前記中空型無機ナノ粒子10~400重量部、20~350重量部、または50~300重量部で含まれ得る。また、前記光学機能層は前記光重合性化合物の(共)重合体100重量部に対して前記ソリッド型無機ナノ粒子10~400重量部、20~350重量部、または50~300重量部で含まれ得る。
【0153】
前記光学機能層中の前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子の含有量が多すぎる場合、前記光学機能層の製造過程で前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子の間の相分離が十分に起きず混在して反射率が高くなり、表面凹凸の過多発生により防汚性が低下し得る。また、前記光学機能層中の前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子の含有量が過小な場合、前記高分子樹脂層および前記光学機能層の間の界面から近い領域に前記ソリッド型無機ナノ粒子のうち多数が位置することが難しく、前記光学機能層の反射率は非常に高くなる。
【0154】
前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子それぞれは、所定の分散媒に分散したコロイド状に組成物に含まれ得る。前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含むそれぞれのコロイド状は分散媒として有機溶媒を含み得る。
【0155】
前記光硬化性コーティング組成物中の前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子それぞれの含有量の範囲や前記光硬化性コーティング組成物の粘度などを考慮して前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子それぞれのコロイド状中の含有量が決定され得、例えば前記コロイド状中の前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子それぞれの固形分含有量は5重量%~60重量%であり得る。
【0156】
ここで、前記分散媒のうち有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル類;またはこれらの混合物が含まれ得る。
【0157】
前記光重合開始剤としては光硬化性樹脂組成物に使用できると知られている化合物であれば大きな制限なく使用することが可能であり、具体的にはベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0158】
前記光重合性化合物100重量部に対して、前記光重合開始剤は1~100重量部の含有量で使用される。前記光重合開始剤の量が小さすぎると、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化段階で未硬化されて残留する物質が発生し得る。前記光重合開始剤の量が多すぎると、未反応開始剤が不純物として残留したり架橋密度が低くなって製造されるフィルムの機械的物性が低下したり反射率が非常に高くなる。
【0159】
一方、前記光硬化性コーティング組成物は有機溶媒をさらに含み得る。
【0160】
前記有機溶媒の非制限的な例としては、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0161】
このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、ジアセトンアルコール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0162】
前記有機溶媒は前記光硬化性コーティング組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されたり各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されることにより前記光硬化性コーティング組成物に含まれ得る。前記光硬化性コーティング組成物中の有機溶媒の含有量が小さすぎると、前記光硬化性コーティング組成物の流れ性が低下して最終的に製造されるフィルムに縞が生じるなど不良が発生し得る。また、前記有機溶媒を過量添加時固形分含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分に行われないことによりフィルムの物性や表面特性が低下し得、乾燥および硬化過程で不良が発生し得る。そのため、前記光硬化性コーティング組成物は含まれる成分の全体固形分の濃度が1重量%~50重量%、または2~20重量%になるように有機溶媒を含み得る。
【0163】
一方、前記実施形態の光学積層体は、光硬化型化合物またはその(共)重合体、光反応性官能基を含む含フッ素化合物、光開始剤、中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層形成用樹脂組成物を高分子樹脂層上に塗布して35℃~100℃の温度で乾燥する段階;および前記樹脂組成物の乾燥物を光硬化する段階;を含む光学積層体の製造方法により提供される。
【0164】
前記光学機能層は、光硬化型化合物またはその(共)重合体、光反応性官能基を含む含フッ素化合物、光開始剤、中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含む光学機能層形成用樹脂組成物を高分子樹脂層上に塗布して35℃~100℃、または40℃~80℃の温度で乾燥することにより形成されることができる。
【0165】
前記高分子樹脂層上に塗布された光学機能層形成用樹脂組成物を乾燥する温度が35℃未満の場合、前記形成される光学機能層が有する防汚性が大きく低下し得る。また、前記高分子樹脂層上に塗布された光学機能層形成用樹脂組成物を乾燥する温度が100℃超過する場合、前記光学機能層の製造過程で前記中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子の間の相分離が十分に起きず混在して前記光学機能層の耐スクラッチ性および防汚性が低下するだけでなく反射率も非常に高くなる。
【0166】
前記高分子樹脂層上に塗布された光学機能層形成用樹脂組成物を乾燥する過程で前記乾燥温度とともに前記ソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子の間の密度差を調節することで上述した特性を有する光学機能層を形成することができる。
【0167】
一方、前記高分子樹脂層上に塗布された光学機能層形成用樹脂組成物を35℃~100℃の温度で乾燥する段階は10秒~5分間、または30秒~4分間行われる。
【0168】
前記乾燥時間が短すぎる場合、上述した前記ソリッド型無機ナノ粒子および中空型無機ナノ粒子の間の相分離現象が十分に起きない。これに対して、前記乾燥時間が長すぎる場合、前記形成される光学機能層が高分子樹脂層を侵食する。
【0169】
前記高分子樹脂層は0.1μm~100μmの厚さを有することができる。
【0170】
前記高分子樹脂層の一例として、光硬化性樹脂を含むバインダ樹脂および前記バインダ樹脂に分散した有機または無機微粒子;を含む高分子樹脂層が挙げられる。
【0171】
前記高分子樹脂層に含まれる光硬化型樹脂は紫外線などの光が照射されると重合反応を起こし得る光硬化型化合物の重合体として、当業界における通常のものであり得る。具体的には、前記光硬化性樹脂はウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシレイテッドグリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシレイテッドグリセロトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体群より選ばれる1種以上を含み得る。
【0172】
前記有機または無機微粒子の粒径は具体的に限定されるものではないが、例えば有機微粒子は1~10μmの粒径を有することができ、前記無機粒子は1nm~500nm、または1nm~300nmの粒径を有することができる。前記有機または無機微粒子の粒径は体積平均粒径で定義されることができる。
【0173】
また、前記高分子樹脂層に含まれる有機または無機微粒子の具体的な例に限定されるものではないが、例えば前記有機または無機微粒子はアクリル系樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂およびナイロン樹脂からなる有機微粒子であるか酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる無機微粒子であり得る。
【0174】
前記高分子樹脂層のバインダ樹脂は重量平均分子量10,000以上の高分子量(共)重合体をさらに含み得る。
【0175】
前記高分子量(共)重合体はセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エポキシド系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、およびポリオレフィン系ポリマーからなる群より選ばれる1種以上であり得る。
【0176】
一方、前記高分子樹脂層のまた他の一例として、光硬化性樹脂のバインダ樹脂;および前記バインダ樹脂に分散した帯電防止剤を含む高分子樹脂層が挙げられる。
【0177】
前記高分子樹脂層に含まれる光硬化型樹脂は紫外線などの光が照射されると重合反応を起こし得る光硬化型化合物の重合体として、当業界における通常のものであり得る。ただし、好ましくは、前記光硬化型化合物は多官能性(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーであり得、このとき、(メタ)アクリレート系官能基の数は2~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~7であることが高分子樹脂層の物性確保の側面から有利である。より好ましくは、前記光硬化型化合物はペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびトリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であり得る。
【0178】
前記帯電防止剤は四級アンモニウム塩化合物;ピリジニウム塩;1~3個のアミノ基を有するカチオン性化合物;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性化合物;アミノ酸系またはアミノ硫酸エステル系化合物などの両性化合物;イミノアルコール系化合物、グリセリン系化合物、ポリエチレングリコール系化合物などの非イオン性化合物;スズまたはチタンなどを含む金属アルコキシド化合物などの有機金属化合物;前記有機金属化合物のアセチルアセトナート塩などの金属キレート化合物;このような化合物の2種以上の反応物または高分子化物;このような化合物の2種以上の混合物であり得る。ここで、前記四級アンモニウム塩化合物は分子内に1個以上の四級アンモニウム塩基を有する化合物であり得、低分子形または高分子形を制限なく使用することができる。
【0179】
また、前記帯電防止剤としては導電性高分子と金属酸化物微粒子も使用することができる。前記導電性高分子としては芳香族共役系ポリ(パラフェニレン)、ヘテロ環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、脂肪族共役系のポリアセチレン、ヘテロ原子を含有した共役系のポリアニリン、混合形態共役系のポリ(フェニレンビニレン)、分子中に複数の共役鎖を有する共役系である複鎖型共役系化合物、共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重合させた導電性複合体などがある。また、前記金属酸化物微粒子としては酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化セリウム、インジウムスズ酸化物、酸化インジウム、酸化アルミニウム、アンチモンドーピングされた酸化スズ、アルミニウムドーピングされた酸化亜鉛などが挙げられる。
【0180】
前記光硬化性樹脂のバインダ樹脂;および前記バインダ樹脂に分散した帯電防止剤を含む高分子樹脂層はアルコキシシラン系オリゴマーおよび金属アルコキシド系オリゴマーからなる群より選ばれる1種以上の化合物をさらに含み得る。
【0181】
前記アルコキシシラン系化合物は当業界における通常のものであり得るが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物であり得る。
【0182】
また、前記金属アルコキシド系オリゴマーは金属アルコキシド系化合物および水を含む組成物のゾル-ゲル反応により製造することができる。前記ゾル-ゲル反応は前述したアルコキシシラン系オリゴマーの製造方法に準ずる方法により行うことができる。
【0183】
ただし、前記金属アルコキシド系化合物は水と急激に反応し得るので、前記金属アルコキシド系化合物を有機溶媒に希釈した後水をゆっくりドロップする方法により前記ゾル-ゲル反応を行うことができる。このとき、反応効率などを勘案して、水に対する金属アルコキシド化合物のモル比(金属イオン基準)は3~170の範囲内で調節することが好ましい。
【0184】
ここで、前記金属アルコキシド系化合物はチタンテトラ-イソプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、およびアルミニウムイソプロポキシドからなる群より選ばれる1種以上の化合物であり得る。
【0185】
前記光学積層体は前記光学機能層と対向するように高分子樹脂層の他の一面に形成される光透過性基材層をさらに含み得る。
【0186】
前記光透過性基材層は300nm以上の波長で透過率が50%以上、75%以上、85%以上、または95%以上であり得る。
【0187】
前記光透過性基材層は透明性プラスチック樹脂を含み得る。前記プラスチック樹脂の具体的な例としてはポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂またはスルホン系樹脂などが挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用される。
【0188】
より具体的には前記光透過性基材層はポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate,PET)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer,COC)、ポリアクリレート(polyacrylate,PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate,PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon,PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate,PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide,PEI)、ポリイミド(polyimide,PI)、ポリアミドイミド(polyamideimide,PAI)およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose,TAC)の少なくとも一つを含み得る。
【0189】
一方、前記光透過性基材層は単層であってもよく、または互いに同一または異なる物質からなる2層以上の多層構造であってもよい。一例として、前記支持基材はポリエチレンテレフタレート(PET)の多層構造体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリカーボネート(PC)の共押出で形成した多層構造体、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリカーボネート(PC)の共重合体(copolymer)を含む単一層構造体であり得る。
【0190】
また、前記光透過性基材層は必要に応じてプラズマ表面処理されたものであり得、その方法は特に制限されず通常の方法により行われることができる。
【0191】
また、前記光透過性基材層はその厚さが過度に厚いかまたは薄いと表面硬度、耐衝撃性の低下またはフォールディング特性の問題があるため、その範囲を適切に設定することが好ましい。一例としては、前記光透過性基材は20~200μm、30~150μm、または50~120μmの厚さを有することができる。
【0192】
発明の他の実施形態によれば、前記光学積層体を含む偏光板が提供されることができる。
【0193】
前記偏光板は偏光子と前記偏光子の少なくとも一面に形成された光学積層体を含み得る。
【0194】
前記偏光子の材料および製造方法は特に限定せず、当技術分野に知られている通常の材料および製造方法を用いることができる。例えば、前記偏光子はポリビニルアルコール系偏光子であり得る。
【0195】
前記偏光子と前記光学積層体は水系接着剤または非水系接着剤などの接着剤によって合紙される。
【0196】
発明のまた他の実施形態によれば、上述した光学積層体を含むディスプレイ装置が提供されることができる。
【0197】
前記ディスプレイ装置の具体的な例は限定されるものではなく、例えば液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diodes)ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置などの装置であり得る。
【0198】
前記ディスプレイ装置で前記光学積層体はディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外郭表面に備えられる。
【0199】
前記光学積層体を含むディスプレイ装置は、1対の偏光板のうち相対的にバックライトユニットと距離が遠い偏光板の一面に光学積層体が位置し得る。
【0200】
また、前記ディスプレイ装置はディスプレイパネル、前記パネルの少なくとも一面に備えられた偏光子および前記偏光子のパネルと接する反対側面に備えられた光学機能層を含み得る。
【0201】
発明のまた他の実施形態によれば、前記光学積層体を含む有機発光ダイオードディスプレイ装置が提供されることができる。
【0202】
通常有機発光ダイオードディスプレイ装置は、高解像度および高い色再現力を有するが、高い色値、例えばCIE Lab色空間でb*の絶対値が4超過の特性を有する光学積層体の場合、有機発光ダイオードディスプレイ装置の色再現力を低下させる。
【0203】
これに対して、前記一実施形態の光学積層体は高い透光率および低い反射率を実現しながらもCIE Lab色空間でb*の絶対値が4以下で低い色値を有して無色透明な特性を有することができ、そのため有機発光ダイオードディスプレイ装置の色再現力をそのまま維持したりまたは高める効果を実現することができる。
【発明の効果】
【0204】
本発明によれば、高い透光率を有して高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができ、低い反射率を実現しながらも無色透明な特性を有する光学積層体、それを含む偏光板、ディスプレイ装置および有機発光ダイオードディスプレイ装置が提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
図1】実施例1の光学積層体の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真である。
図2】実施例1の光学積層体断面のシリコン元素およびジルコニウム元素に対するTEM-EDS map写真である。
図3】比較例1の光学積層体の断面を透過電子顕微鏡で撮影した写真である。
図4】比較例1の光学積層体断面のシリコン元素およびジルコニウム元素に対するTEM-EDS map写真である。
図5】比較例2の光学積層体の断面を透過電子顕微鏡で撮影した写真である。
図6】比較例2の光学積層体断面のシリコン元素およびジルコニウム元素に対するTEM-EDS map写真である。
図7】実施例1、比較例1および比較例2の各波長別の反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0206】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0207】
製造例1:高分子樹脂層の製造
LAS-1467KR(Toyo-ink社)の固形分をシクロヘキサノン溶媒に固形分濃度40重量%になるように希釈して高分子樹脂層形成用コート液を製造した。前記希釈した高分子樹脂層形成用コート液をトリアセチルセルロースフィルムに#10mayer barでコートして、紫外線強度25mJ/cmで乾燥し、窒素パージしながら光硬化し、4μmの厚さを有する高分子樹脂層を製造した。
【0208】
実施例1:光学積層体の製造
(1)光学機能層製造用光硬化性コーティング組成物の製造
トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(M3190,MIWON社)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約70~80nm、密度:1.41g/cm、JSC catalyst and chemicals社)297重量部、ソリッド型ジルコニアナノ粒子(直径:約11nm、密度:5.68g/cm、Daiken社)1326重量部、ソリッド型シリカナノ粒子(直径:約10~15nm、密度:2.65g/cm、Nissan chemical社)51.75重量部、シランカップリング剤(KBM-503,ShinEtsu silicone社)146重量部、第1含フッ素化合物(KY-1207,ShinEtsu社)183重量部、第2含フッ素化合物(RS-4137,エギョン化学社)74.5重量部、開始剤(SPI-02,サムヤン社)12.9重量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK):ジアセトンアルコール(DAA):イソプロピルアルコール(IPA):メチルエチルケトン(MEK):エタノール(EtOH)を26.32:6.12:24.23:25.33:9.49の重量比で混合した溶媒に固形分濃度8重量%になるように希釈した。
【0209】
(2)光学機能層および光学積層体の製造
前記製造例1の高分子樹脂層上に、前記で得られた光硬化性コーティング組成物を#4mayer barで厚さが約150nmになるようにコートし、0.5m/s以上の風速および90℃温度で1分間乾燥し、紫外線強度254mJ/cmで窒素パージしながら硬化した。
【0210】
<比較例:光学積層体の製造>
【0211】
比較例1
光学機能層製造用光硬化性コーティング組成物にソリッド型シリカナノ粒子を使用せずソリッド型ジルコニアナノ粒子を1440重量部で使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で光学積層体を製造した。
【0212】
比較例2
光学機能層製造用光硬化性コーティング組成物にソリッド型シリカナノ粒子を145重量部で使用してソリッド型ジルコニアナノ粒子を1133重量部で使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で光学積層体を製造した。
【0213】
<実験例:光学積層体の物性測定>
前記実施例および比較例で得られた光学積層体について次のような項目の実験を施行し、その結果を下記表1に示した。
【0214】
1.光学機能層内にシリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比
実施例および比較例それぞれで得られた光学機能層に対してMicrotomeを用いて薄片製作後透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope、製品名:H-7650)でFETEM Bright field mode(加速電圧:100kV)でSTEM EDS map分析を行った。
【0215】
前記分析により得られた光学機能層内のシリコン(Si)元素およびジルコニウム(Zr)元素の体積をOPEN-CV programを用いて総ピクセル(total)に対して各元素が占めるピクセル(pixel)でそれぞれの体積を定量化した。
【0216】
光学機能層内の各元素の体積が定量化された結果データを用いて、「高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から光学機能層の厚さ5nm~10nm領域」と「高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から光学機能層の厚さ50nm~150nm領域」内でシリコン(Si)元素に対するジルコニウム(Zr)元素の体積比(算術平均値)を計算した。
【0217】
2.高分子樹脂層の表面エネルギの測定
実施例および比較例それぞれの高分子樹脂層の表面エネルギは、Kruss社のDSA-100接触角測定装備を用いてdi-water(Gebhardt)とdi-iodomethane(Owens)の接触角を10pointsで測定して平均値を出した後平均接触角を表面エネルギに換算して測定した。前記表面エネルギの測定ではDropshape Analysisソフトウェアを用いてOWRK(Owen,Wendt,Rable,Kaelble) methodの下記一般式1をプログラム上に適用して接触角を表面エネルギに換算した。
【0218】
【数5】
【0219】
3.光学積層体の平均反射率およびCIE Lab色空間でのa値およびb*値の測定
実施例および比較例で得られた光学積層体に対して、可視光線領域(380~780nm)で各波長での反射率とa値およびb*値をSolidspec 3700(SHIMADZU)装備を用いて測定した。試験片を波長380から780nmまでスキャンして各波長での反射率を測定した後UV-2401PC Color Analysisプログラムを用いて平均反射率とa値およびb*値を導き出した。
【0220】
4.耐スクラッチ性の測定
スチールウール(#0000)に荷重をかけて27rpmの速度で10回往復して実施例および比較例で得られた光学積層体の表面を擦った。肉眼で観察される1cm以下のスクラッチ1個の以下が観察される最大荷重を測定した。
【0221】
5.楕円偏光法(ellipsometry)の測定
前記実施例および比較例それぞれで得られた光学機能層に対して楕円偏光法(ellipsometry)により偏極の楕円率を測定した。
【0222】
具体的には、前記実施例および比較例それぞれで得られた光学機能層に対して、J.A.Woollam Co.M-2000の装置を用いて、70°の入射角を適用して38~1000nmの波長範囲で線偏光を測定した。前記測定された線偏光測定データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))をComplete EASE softwareを用いて前記光学機能層に対して下記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)によりMSEが3以下になるように最適化(fitting)した。
【0223】
【数6】
【0224】
前記一般式1において、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0225】
6.反射率の測定
前記実施例および比較例で得られた光学機能層に含まれる粒子混在層に対して380nm~1,000nmの波長で測定された楕円偏光とCauchyモデルを用いて波長550nm、波長400nmおよび波長700nmでそれぞれの反射率を計算した。
【0226】
7.ヘイズの測定
前記実施例および比較例で得られた光学積層体から4cm×4cmの試験片を準備し、ヘイズ測定機(HM-150,A光源、村上社)で3回測定して平均値を計算し、これを全体ヘイズ値として算出した。このとき、ヘイズはJIS K 7136規格によって測定した。
【0227】
8.ブラック視感の評価
実施例および比較例で得られた光学積層体に対して評価されたCIE lab色空間およびヘイズ値に基づいてブラック視感評価をした。
【0228】
<評価基準>
良好:CIE lab a*およびb*の絶対値がそれぞれ2未満および3未満であり、ヘイズ値(JIS K7136規格)が0.6%未満
低下:CIE lab a*およびb*の絶対値がそれぞれ2以上および3以上であるか、ヘイズ値(JIS K7136規格)が0.6%以上
【0229】
【表1】
【0230】
前記表1に示すように、高分子樹脂層と光学機能層の間の界面から光学機能層の厚さ5nm~10nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が2.6未満であり、前記界面から前記光学機能層の厚さ50nm~150nmの領域で、シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比が1.62以上である実施例1の光学機能層は、波長550nmでの0.2%以下の反射率を実現しながらもCIE Lab色空間でa*およびb*の絶対値が2以下で低い色値を有して無色透明な特性を有し得ることが確認された。
【0231】
また、実施例の光学積層体は光学機能層に25~100nmの厚さを有する粒子混在層を含み、かつ中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子が主に分布する領域が区分されるように相分離され、前述したように、CIE Lab色空間でa*およびb*の絶対値が2以下で低い色値を有して無色透明な特性を有しながらも、ブラック視感が良好で、かつ優れた耐スクラッチ性を実現することを確認した。
【0232】
これに対して、比較例は上述した領域で特定シリコン元素に対するジルコニウム元素の体積比を満たさず、これにより、比較例1はソリッド型シリカ粒子を使用しないため、光学積層体のCIE Lab色空間でa*の絶対値が2を超えて赤色を帯び、ヘイズ値が大きいためブラック視感が低下することにより耐スクラッチ性も低下することを確認した。また、比較例2は中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子がそれぞれ主に分布する領域に区分されて偏在(相分離)せず、過度な厚さを有する粒子混在層が存在し、前記粒子混在層が高分子樹脂層に過度に近接して位置するが、これによってb*の絶対値が2を超えて青い色を帯び、偏光板またはディスプレイ装置への適用に適しない程度の不透明性(高いヘイズ)または有色性を有することを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂層;および
前記高分子樹脂層の一面に形成された光学機能層を含み、
中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を共に含む粒子混在層が前記光学機能層内に存在し
前記ソリッド型無機ナノ粒子は、ソリッド型シリカナノ粒子およびソリッド型ジルコニアナノ粒子を含み、
前記粒子混在層は、前記高分子樹脂層および光学機能層の間の界面から50nm以上の距離をおいて位置する、光学積層体。
【請求項2】
前記粒子混在層は、厚さが25~100nmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記粒子混在層の厚さは楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を拡散層モデル(Diffuse layer model)により最適化(fitting)して決定される、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記粒子混在層に対して楕円偏光法(ellipsometry)により測定した偏極の楕円率を下記一般式2のコーシーモデル(Cauchy model)により最適化(fitting)したとき、Aは1.100~1.200であり、Bは0~0.007であり、Cは0~1×10-3である、請求項に記載の光学積層体:
【数1】
前記一般式2において、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【請求項5】
前記光学機能層は、50nm~240nmの厚さを有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記光学積層体の波長550nmでの反射率が0.5%以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記光学積層体の波長550nmでの反射率に対して波長400nmでの反射率の比率が5以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記光学機能層に含まれている前記ソリッド型シリカナノ粒子に対して前記ソリッド型ジルコニアナノ粒子の重量比は、10以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記高分子樹脂層は表面エネルギが34mN/m以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記高分子樹脂層は波長550nmで平均屈折率が1.46以下であり、
前記光学機能層は波長550nmで平均屈折率が1.46超過である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記光学機能層は、バインダー樹脂と前記バインダー樹脂に分散した中空型無機ナノ粒子およびソリッド型無機ナノ粒子を含み、
前記光学機能層で前記ソリッド型無機ナノ粒子全体のうち50体積%以上が前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間に存在する、請求項に記載の光学積層体。
【請求項12】
前記高分子樹脂層の一面から前記粒子混在層の間の領域は波長550nmで1.46~1.75の屈折率を有する、請求項に記載の光学積層体。
【請求項13】
前記光学機能層で前記中空型無機ナノ粒子全体のうち50体積%以上が前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域に存在する、請求項11に記載の光学積層体。
【請求項14】
前記粒子混在層から前記高分子樹脂層と対向する光学機能層の一面までの領域は波長550nmで1.0~1.40の屈折率を有する、請求項に記載の光学積層体。
【請求項15】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は0.5~100nmの直径を有し、
前記中空型無機ナノ粒子は1~200nmの直径を有する、請求項1または11に記載の光学積層体。
【請求項16】
前記ソリッド型無機ナノ粒子および前記中空型無機ナノ粒子の間の密度の差が0.7~8.5g/cmである、請求項1または11に記載の光学積層体。
【請求項17】
前記光学機能層に含まれるバインダ樹脂は光重合性化合物の(共)重合体および光反応性官能基を含む含フッ素化合物の間の架橋(共)重合体を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項18】
前記高分子樹脂層は光硬化性樹脂を含むバインダ樹脂および前記バインダ樹脂に分散した有機または無機微粒子;を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項19】
前記光学機能層と対向するように高分子樹脂層の他の一面に形成される光透過性基材層をさらに含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項20】
請求項1に記載の光学積層体および偏光子を含む、偏光板。
【請求項21】
請求項1に記載の光学積層体を含む、ディスプレイ装置。
【請求項22】
請求項1に記載の光学積層体を含む、有機発光ダイオードディスプレイ装置。