(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139094
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】核内受容体活性化用食品組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20230926BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230926BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20230926BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20230926BHJP
A61P 17/00 20060101ALN20230926BHJP
A61P 3/06 20060101ALN20230926BHJP
A61P 1/16 20060101ALN20230926BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20230926BHJP
A61K 36/31 20060101ALN20230926BHJP
A61K 31/047 20060101ALN20230926BHJP
A61K 31/015 20060101ALN20230926BHJP
A61K 31/203 20060101ALN20230926BHJP
A61K 31/045 20060101ALN20230926BHJP
A61K 31/05 20060101ALN20230926BHJP
A61K 31/01 20060101ALN20230926BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L19/00 Z
A61P43/00 111
A61P3/10
A61P17/00
A61P3/06
A61P1/16
A61K45/00
A61K36/31
A61K31/047
A61K31/015
A61K31/203
A61K31/045
A61K31/05
A61K31/01
A61K127:00
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116600
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2019192498の分割
【原出願日】2019-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】森田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坂下 真実
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 亜美
(72)【発明者】
【氏名】米沢 祐大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 重▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】梅田 涼平
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた核内受容体活性化用食品組成物を提供すること。
【解決手段】本願発明者が鋭意検討して見出したのは、ベビーリーフとしてよく食されているスピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉又はその加工物が核内受容体活性化作用を有することである。すなわち、前述の葉又はその加工物が、複数の種類の核内受容体、具体的には、RAR、RXR、PPAR及びERのうち、何れか1つ又は2つ以上を活性化することである。それにより、空腹時血糖値の正常化、皮膚の炎症性疾患抑制、皮膚の角化症抑制、皮膚の光老化抑制、皮膚の色素沈着抑制、脂肪の蓄積抑制、脂肪肝の抑制、及び、血中HDLコレステロールの増加が期待される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核内受容体活性化用食品組成物であって、 それが含有するのは、ルッコラの葉又はその加工物である。
【請求項2】
請求項1の核内受容体活性化用食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項3】
核内受容体活性化用食品組成物であって、 それが含有するのは、ベビーリーフ又はその加工物である。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの核内受容体活性化用食品組成物であって、 前記核内受容体がRAR、RXR、PPAR又はERのうち、何れか1つ又は2つ以上である。
【請求項5】
請求項4の何れかの核内受容体活性化用食品組成物であって、 前記RARが、RARα、RARβ又はRARγのうち、何れか1つ又は2つ以上であり、 前記RXRが、RXRα、RXRβ又はRXRγのうち、何れか1つ又は2つ以上であり、 前記PPARが、PPARα、PPARγ、PPARδのうち、何れか1つ又は2つ以上であり、 前記ERが、ERβである。
【請求項6】
請求項4の何れかの核内受容体活性化用食品組成物であって、 前記核内受容体が、RARである。
【請求項7】
空腹時血糖値の正常化用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項8】
請求項7の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項9】
請求項7又は8の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項10】
皮膚の炎症性疾患抑制用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項11】
請求項10の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項12】
請求項10又は11の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項13】
皮膚の角化症抑制用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項14】
請求項13の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項15】
請求項13又は14の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項16】
皮膚の光老化抑制用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項17】
請求項16の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項18】
請求項16又は17の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項19】
皮膚の色素沈着抑制用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項20】
請求項19の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項21】
請求項19又は20の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項22】
脂肪の蓄積抑制用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項23】
請求項22の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項24】
請求項22又は23の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項25】
脂肪肝の抑制用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項26】
請求項25の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項27】
請求項25又は26の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項28】
血中HDLコレステロールの増加用食品組成物であって、 それが含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、 その由来は、ルッコラの葉である。
【請求項29】
請求項28の食品組成物であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、RAR活性化寄与成分である。
【請求項30】
請求項28又は29の食品組成物であって、 前記葉は、発芽後30日以内である。
【請求項31】
核内受容体活性化用食品組成物の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも以下の構成である: 抽出:ここで抽出されるのは、核内受容体活性化寄与成分であり、ルッコラの葉から抽出される。
【請求項32】
請求項31の製造方法であって、 前記核内受容体活性化寄与成分は、水、含水エタノール又は有機溶媒により抽出される。
【請求項33】
請求項31又は32の製造方法であって、 前記葉は発芽後30日以内である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、核内受容体活性化用食品組成物及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
核内受容体は様々な生体機能に関与していることから、その活性の制御に関わる因子が注目され、盛んに研究が行われている。核内受容体とは、細胞内に存在するタンパク質であり、リガンドと結合することで核内に移行し、DNAに結合し転写を制御することが知られている。核内受容体として、RAR、RXR、PPAR、ER等がよく知られており、これらは生体内において種々の機能を担っていることが分かっている。
【0003】
核内受容体であるRARα及びRARβの選択的アゴニストのタミバロテンにより、空腹時血糖や空腹時インスリン濃度を低下させる効果があることが報告されている(非特許文献1)。また、核内受容体であるRARαは、膵臓β細胞膜上でグルコース輸送を担うグルコーストランスポーター2(GLUT2)の誘導、及び膵臓β細胞内のグルコースのリン酸化を触媒し、グルコース恒常性を保つ役割を担うグルコキナーゼ(GCK)の発現を誘導し、インスリン産生β細胞の機能を維持すること、並びに、核内受容体であるRARβ2のアゴニストは、高脂肪食で肥満及び2型糖尿病を誘導させた通常マウス、遺伝的に操作された肥満及び2型糖尿病のモデルマウスの何れにおいても、肝臓、膵臓、及び腎臓においてインスリン感受性を改善し、血清グルコース及びインスリンレベルを低下させることが報告されている(非特許文献2)。これらのことから、核内受容体の活性化により、空腹時血糖値を正常化することが考えられている。
【0004】
核内受容体であるRARを活性化するRARアゴニストによって医療適応できる疾患として、皮膚の炎症性疾患、角化症、光老化や色素沈着が報告されており、核内受容体(RAR)の活性化により、それらが抑制されるとされていることから(非特許文献3)、核内受容体の活性化により、皮膚の炎症性疾患、皮膚の角化症、皮膚の光老化、及び、皮膚の色素沈着が抑制されることが考えられている。
【0005】
核内受容体であるRARαの活性化を介して、前駆脂肪細胞の分化の決定因子である亜鉛フィンガータンパク質423(Zfp423)の発現を阻害することで、白色脂肪生成を阻害することが報告されている(非特許文献4)。このことから、核内受容体の活性化により、脂肪蓄積が抑制されることが考えられている。
【0006】
ビタミンAの誘導体である全トランス型レチノイン酸(atRA)は、核内受容体であるRARα及びRARβを介して、肥満誘導性脂肪肝を抑制する肝細胞由来ホルモンであるFGF21の発現を誘導すること、核内受容体であるRARαによって、高中性脂肪(TG)血症発症の中心因子として知られる肝臓アポリポタンパクCIII(Apo-CIII)の発現が抑制され、肝臓と血中のTGレベルが低下することが報告されていることから(非特許文献2)、核内受容体の活性化により、脂肪肝が抑制されることが考えられている。
【0007】
核内受容体であるRARγによりマクロファージのATP結合カセットトランスポーター1(ABCA1)が誘導されること(非特許文献5)、及び、ABCA1は細胞外のアポリポタンパク質A-I(apoA-I)に対して細胞内のコレステロール及びリン脂質を搬出し、apoA-Iとそれらが結合することでHDLコレステロールが形成されること(非特許文献6)が報告されている。これらのことから、核内受容体の活性化により、マクロファージ泡沫細胞からのコレステロールの排出及びHDLコレステロール形成が促進され、血中HDLコレステロールが高められることが考えられる。
【0008】
このように、核内受容体の活性化は、空腹時血糖値の正常化、皮膚の炎症性疾患抑制、皮膚の角化症抑制、皮膚の光老化抑制、皮膚の色素沈着抑制、脂肪の蓄積抑制、脂肪肝の抑制、及び、血中HDLコレステロールの増加につながると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】土谷博之. "非アルコール性脂肪性肝疾患治療薬としてのレチノイドの有用性." YAKUGAKU ZASSHI 132.8 (2012): 903-909.-1
【非特許文献2】Saeed, Ali, et al. "Disturbed vitamin A metabolism in non-alcoholic fatty liver disease (NAFLD)." Nutrients 10.1 (2018): 29.
【非特許文献3】Beckenbach, Lisa, et al. "Retinoid treatment of skin diseases." European Journal of Dermatology 25.5 (2015): 384-391.
【非特許文献4】Wang, Bo, et al. "Retinoic acid inhibits white adipogenesis by disrupting GADD45A-mediated Zfp423 DNA demethylation." Journal of Molecular Cell Biology 9.4 (2017): 338-349.
【非特許文献5】Costet, Philippe, et al. "Retinoic acid receptor-mediated induction of ABCA1 in macrophages." Molecular and Cellular Biology 23.21 (2003): 7756-7766.
【非特許文献6】Yokoyama, Shinji. "Assembly of high-density lipoprotein." Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 26.1 (2006): 20-27.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、新規な核内受容体活性化用食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、ベビーリーフとしてよく食されているスピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉又はその加工物が核内受容体活性化作用を有することである。すなわち、前述の葉又はその加工物が、複数の種類の核内受容体、具体的には、RAR、RXR、PPAR及びERのうち、何れか1つ又は2つ以上を活性化することである。それにより、空腹時血糖値の正常化、皮膚の炎症性疾患抑制、皮膚の角化症抑制、皮膚の光老化抑制、皮膚の色素沈着抑制、脂肪の蓄積抑制、脂肪肝の抑制、及び、血中HDLコレステロールの増加が期待される。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0012】
本発明に係る核内受容体活性化用食品組成物が含有するのは、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉又はその加工物である。つまり、核内受容体活性化に寄与する原料は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉又はその加工物である。核内受容体活性化に寄与する成分は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインに含まれる成分である。前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。前記核内受容体はRAR、RXR、PPAR又はERのうち、何れか1つ又は2つ以上であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る核内受容体活性化用食品組成物が含有するのは、ベビーリーフ又はその加工物である。前記ベビーリーフは、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の幼葉又はその加工物である。前記核内受容体はRAR、RXR、PPAR又はERのうち、何れか1つ又は2つ以上であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る空腹時血糖値の正常化用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である。前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る皮膚の炎症性疾患抑制用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である。前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る皮膚の角化症抑制用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である。前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る皮膚の光老化抑制用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である。前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る皮膚の色素沈着抑制用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である。前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る脂肪の蓄積抑制用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である。前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る脂肪肝の抑制用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である。前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく
、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る血中HDLコレステロールの増加用食品組成物が含有するのは、核内受容体活性化寄与成分であり、その由来は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉である前記核内受容体活性化寄与成分はRAR活性化寄与成分であることが好ましく、前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【0022】
本発明に係る核内受容体活性化用食品組成物の製造方法を構成するのは、少なくとも、抽出工程である。ここで、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉から抽出されるのは、核内受容体活性化寄与成分である。好ましくは、水、含水エタノール又は有機溶媒により抽出される。前述の葉は、発芽後30日以内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明が可能にするのは、新規な核内受容体活性化用食品組成物を提供することである。すなわち、核内受容体活性化の寄与成分が提供されることにより、空腹時血糖値の正常化、皮膚の炎症性疾患抑制、皮膚の角化症抑制、皮膚の光老化抑制、皮膚の色素沈着抑制、脂肪の蓄積抑制、脂肪肝の抑制、及び、血中HDLコレステロールの増加に寄与する食品組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
<本実施の形態に係る核内受容体活性化用食品組成物> 本実施の形態に係る核内受容体活性化用食品組成物(以下、「本組成物」という。)の寄与成分は、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインのうち、何れか1種又は2種以上の葉又はその加工物である。当該品目の葉及びその加工物の詳細は、後述する。
【0026】
<本実施の形態に係る葉> 本実施の形態においては、使用する葉は発芽後90日以内、好ましくは発芽後50日以内の葉を使用することができる。一般的なベビーリーフは、発芽後10~30日程度の葉菜(以下、「幼葉」という。)を意味し、発芽後30日を超える葉菜(以下、「大人葉」という。)よりも好適に使用することができるが、発芽後14~22日の幼葉を用いることが特に好ましい。なお、当該葉には、葉柄を含んでいてもよい。 ベビーリーフの種類は、特に限定されないが、例示すると、アブラナ科、ヒユ科、キク科、セリ科、ユリ科、アカザ科の野菜等である。具体例としては、スピナッチ、ビート、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメイン、レッドオーク、ミズナ、ホウレンソウ、カラシナ、サニーレタス、グリーンカール、サラダナ、グリーンマスタード、赤高菜、ロメイン、ターサイ、小紅菜、ロロロッサ、レッドアジアンマスタード、ピノグリーン、ホワイトケール、レッドケール、デトロイト、パクチョイ等である。上記の中でも、核内受容体活性化作用を示すものとして、スピナッチ(Spinacia oleracea)、ビート(Beta vulgaris)、ルッコラ(Eruca vesicaria)、レッドロメイン(Lactuca sativa L. var. longifolia)又はグリーンロメイン(Lactuca sativa L. var. longifolia)のうち、何れか1つ又は2つ以上を用いることが好ましい。
【0027】
<葉の加工物> 葉の加工物の機能は、核内受容体の活性化である。葉の加工物の態様は特に限定されないが、抽出物であることが好ましく、植物の抽出に用いられる通常の抽出方法により得ることができる。抽出方法は適宜設定することができる。加工物の調製には、葉をそのまま又は乾燥粉砕して用いることができる。核内受容体の活性化に寄与するのは、葉及びその加工物が含有する成分であり、推察される寄与成分を例示すると、ルテイン、α-カロテン、β-カロテン、レチノイン酸、β-クリプトキサンチン、レスベラトロール、リコピン、リコピン代謝物等である。
【0028】
葉の加工物の調製に用いる抽出溶液は、食用に用いる観点から水又は含水エタノールであることが好ましいが、これに限定されず、この種の抽出に通常用いられる溶媒から適宜選択することができる。例示すると、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の鎖状又は環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;ナタネ油、大豆油等の食用油;モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール(DAG)、トリアシルグリセロール(TAG)等のグリセリンの脂肪酸エステル;炭素数8のカプリル酸、炭素数10のカプリン酸等の炭素数が5~12の中鎖脂肪酸(MCT);スクワラン、スクワレン等の油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられる。
【0029】
上記抽出物をそのまま用いてもよく、さらに適当な分離手段、例示すると、ゲル濾過、クロマトグラフィー、精密蒸留等により活性の高い画分を分画して用いることもできる。また、得られた抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、前述の方法により得られた抽出物を、前記抽出溶媒とは異なる溶媒で転溶して用いることもできる。
【0030】
<核内受容体> 核内受容体は、生体内の主に脂溶性低分子化合物をリガンドとするリガンド依存的な転写因子であり、リガンドが結合すると核内に移行してDNAに結合し転写を制御する。発生や細胞増殖、分化、形態形成、代謝などの様々な生物学的現象を調節しており、様々な疾患の発症に関わっている。代表的な核内受容体として、レチノイン酸受容体(RAR)、レチノイドX受容体(RXR)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、エストロゲン受容体(ER)が挙げられる。
【0031】
RARは、主に発生や恒常性の維持、免疫において重要な役割を果たしていることが知られている。RARには、RARα、RARβ、RARγの3つのサブタイプが存在する。本組成物は、上記3つのサブタイプのうち、何れか1つ又は2つ以上を活性化させる。
【0032】
RXRは、主に他の核内受容体とヘテロダイマーを形成し機能を促進する役割を果たしていることが知られている。RXRには、RXRα、RXRβ、RXRγの3つのサブタイプが存在する。本組成物は、上記3つのサブタイプのうち、何れか1つ又は2つ以上を活性化させる。
【0033】
PPARは、主に脂質や糖代謝において重要な役割を果たしていることが知られている。PPARには、PPARα、PPARβ/δ、PPARγの3つのサブタイプが存在する。本組成物は、上記3つのサブタイプのうち、何れか1つ又は2つ以上を活性化させる。
【0034】
ERは、主に雌性の生殖や骨形成、更年期障害緩和などに関与することが知られている。ERには、ERα、ERβの2つのサブタイプが存在する。本組成物は、上記2つのサブタイプのうち、ERβを活性化させる。
【0035】
<核内受容体活性化剤> 核内受容体活性化剤は、空腹時血糖値の正常化、皮膚の炎症性疾患抑制、皮膚の角化症抑制、皮膚の光老化抑制、皮膚の色素沈着抑制、脂肪の蓄積抑制、脂肪肝の抑制、及び、血中HDLコレステロールの増加に寄与する。
【0036】
<空腹時血糖値の正常化> 空腹時血糖値とは、10時間以上絶食の後、採血した静脈血による血糖値のことである。日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診断ガイドライン2013」によると、空腹時血糖値が110 mg/dL未満の場合は正常域とされることから、ヒトにおける空腹時血糖値の正常化とは、110 mg/dL以上の方が、正常域となることを指す。さらに、100~109 mg/dLは正常高値とされるため、それらの方が100 mg/dL未満となることも正常化に含む。
【0037】
<皮膚の炎症性疾患抑制> 皮膚の炎症性疾患抑制とは、ニキビや酒さといった皮膚の炎症を伴う疾患の発生を抑制すること、又は症状を軽減することを指す。
【0038】
<皮膚の角化症抑制> 皮膚の角化症抑制とは、掌蹠角化症、魚鱗癬、ダリエ病といった遺伝性の角化症や、乾癬、毛孔性紅色粃糠疹、苔癬といった後天性の角化症の発生を抑制すること、又は症状を軽減することを指す。
【0039】
<皮膚の光老化抑制> 皮膚の光老化抑制とは、紫外線などにより引き起こる、しわ、たるみ、乾燥などの光老化現象を抑制することを指す。
【0040】
<皮膚の色素沈着抑制> 皮膚の色素沈着抑制とは、皮膚の炎症後に生じるシミや紫外線により引き起こされるシミなどの皮膚への色素沈着を抑制することを指す。
【0041】
<脂肪の蓄積抑制> 脂肪の蓄積抑制とは、内臓脂肪蓄積による肥満が糖尿病や脂質異常症等の生活習慣病を引き起こすため、脂肪の蓄積抑制については、内臓脂肪量の増加抑制や内臓脂肪について組織学的に判定した脂肪滴の減少が認められることを指す。
【0042】
<脂肪肝の抑制> 脂肪肝は肝細胞の30%以上に中性脂肪が溜まった状態であり、脂肪肝の抑制は肝細胞への中性脂肪の蓄積を抑制することを指す。
【0043】
<血中HDLコレステロールの増加> 血中HDLコレステロールは、血液中の余分なコレステロールを肝臓に運ぶ役割を担っており、その血中濃度が高いほど動脈硬化性疾患にかかりにくいため「善玉コレステロール」と呼ばれている。ヒトにおいて、血中HDLコレステロール値の正常範囲は40mg/dL以上であることから、ヒトにおける血中HDLコレステロールの増加とは、40mg/dl未満から、40mg/dlに値が近づくこと、又は、40mg/dl以上となることを指す。
【0044】
<本組成物の製造方法の概要> 本組成物の製造方法(以下、「本製法」という。)の流れは、以下のとおりである。本製法を構成するのは、主に、抽出である。
【0045】
<抽出> 抽出により、葉から抽出物を調製する目的は、寄与成分の濃縮である。抽出する方法は、公知の方法で良く、例示すると水や有機溶媒等を用いた振盪抽出等である。
【0046】
核内受容体の活性化に寄与するのは、抽出された葉の加工物が含有する成分であり、推定される寄与成分を例示すると、ルテイン、α-カロテン、β-カロテン、レチノイン酸、β-クリプトキサンチン、レスベラトロール、リコピン、リコピン代謝物等である。
【0047】
<核内受容体活性化用食品組成物> 本組成物は、食品、飲料、飼料、ペットフードに添加又はこれらと混合して使用することができる。或いは、核内受容体活性化により、予防又は改善しうる疾患又は状態について、その旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性表示食品、病者用食品及び特定保健用食品等に添加又は配合して使用することができる。具体的には、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。製剤形態の食品は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤等の添加材を必要に応じて使用することができる。また、前記寄与成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、そのままのものを食品とすることも可能であり、その種類及び形態は特に限定されないが、例示すると、スープ類、ジュース類、野菜飲料、果実飲料、野菜果実飲料、牛乳、乳飲料、乳清飲料、乳酸菌飲料、茶飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、水飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料、スポーツ飲料、ダイエット飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトな
どの半固形食品組成物、パン類、麺類、菓子類、スプレッド類、調味料等に添加又はこれらと混合することができる。
【実施例0048】
<実施例1> 土壌で栽培した発芽後16~20日(幼葉)及び発芽後36~40日(大人葉)のスピナッチ(品種名:グリーンスピナッチ)、水耕栽培した発芽後16~20日(幼葉)及び発芽後36~40日(大人葉)のビート(品種名:デトロイト)、土壌で栽培した発芽後14~18日(幼葉)及び発芽後36~40日(大人葉)のルッコラ(品種名:ルッコラ(ロケット))、水耕栽培した発芽後18~22日(幼葉)及び発芽後38~42日(大人葉)のレッドロメイン(品種名:レッドロメイン)、水耕栽培した発芽後18~22日(幼葉)及び発芽後38~42日(大人葉)のグリーンロメイン(品種名:グリーンロメイン)の葉柄をハサミで切断し、これら生葉を-80℃ の超低温冷凍庫(アズワン(株))内で予備凍結した。その後速やかに真空凍結乾燥機(ラブコンコ社、FZ-6BT)に移して5~7日間真空乾燥した。乾燥は、真空室の弁とコールドトラップの弁を締め、設定した真空度0.040mbarから20~30分間変化が認められないことを確認したことで乾燥終了とした。その後、粉砕機(東京ユニコム、ハイスピードミルT-351)で粉砕処理し、凍結乾燥したサンプルを得た。次いで、粉末化したサンプルを抽出処理に供した。最終サンプル1 mlあたりの粉末サンプル量(g)は、幼葉については表1、大人葉については表2のとおりである。抽出の具体的な方法は、後述する。
【0049】
【0050】
【0051】
抽出後のサンプルについて、核内受容体であるPPARα、PPARδ、PPARγ、RXRα、RXRβ、RXRγ、ビタミンD受容体(VDR)、アンドロゲン受容体(AR)、グルココルチコイド受容体(GR)、プロゲステロン受容体(PR)、甲状腺ホルモン受容体α(TRα)は、CV-1細胞(JCRB細胞バンク、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所より購入)を用いて、後述のレポーターアッセイにより評価した。核内受容体であるRARα、RARβ、RARγ、ERα、ERβ、ERRα、ERRβ、ERRγは、COS-7細胞(ATCC(American Type Culture Collection)より購入)を用いて、後述のレポーターアッセイにより評価した。核内受容体であるプレグナン受容体(PXR)、ファルネソイドX受容体(FXR)、肝臓X受容体α(LXRα)、肝臓X受容体β(LXRβ)、肝細胞核因子4α(HNF-4α)、RARオーファン受容体α(RORα)、及び、CNCファミリーに属する転写因子(Nrf2)は、Hep G2細胞(理化学研究所バイオリソース研究センター(理研BRC)より購入)を用いて、後述のレポーターアッセイにより評価した。評価結果は、幼葉については
図1、大人葉については
図2に示す。核内受容体及びNrf2活性の詳細な測定方法及び図の説明は、後述する。
【0052】
<水抽出> スピナッチ及びビートの葉の粉末サンプルに50 mg/mlになるように滅菌水を添加し、ルッコラ、レッドロメイン、グリーンロメインの葉の粉末サンプルには100 mg/mlになるように滅菌水を添加した。4℃において24時間振盪し、遠心分離(220×g、10~30分)した後、上清を孔径0.2 μmのメンブレンフィルターで濾過滅菌した。
【0053】
<エタノール抽出> 粉末サンプルを、70%エタノールに100 mg/ml(w/v)となるようそれぞれ浮遊し、室温で3時間シェーカーで振盪した。孔径0.2 μm のメンブレンフィルターで濾過後、濾液を常温で減圧乾燥した。得られた乾固物は200 mg/ml或いは400 mg/mlとなるようジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。
【0054】
<混合溶媒抽出> 粉末サンプルを、ヘキサン:エタノール:アセトン:トルエン混液 (以後 混合溶媒)に100 mg/mlとなるよう添加し、室温において3時間シェーカーで振盪した。その後、遠心分離(890×g、10~30分)し、上清を回収した。孔径0.2 μmのメンブレンフィルターにて濾過滅菌した後、濾液を常温で減圧乾燥した。得られた乾固物は、200 mg/ml或いは400 mg/mlになるようにDMSOに溶解した。
【0055】
<核内受容体活性及びNrf2の測定方法;レポーターアッセイ> アフリカミドリザル腎由来細胞株CV-1、COS-7、ヒト肝ガン細胞株Hep G2をそれぞれ2x105 cells/wellとなるよう、6穴プレートに播種し、DMEM(10% 血清)中で1日培養した。Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4-DBD)と核内受容体のリガンド結合ドメイン(NR-LBD)のキメラタンパク質発現プラスミド、Gal4 DNA応答配列とホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド(pGal4-Luc)及び内部標準用としてウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流に遺伝子構成的発現プロモーター(CMV、SV40)を連結した内部標準プラスミド(pGL4.75hRluc-CMV又はpGL4.73hRluc-SV40)を重量比1:0.9:0.1の割合で混合し、Opti-MEMに10 μg/ml(総DNA量)の濃度で溶解した。
【0056】
転写因子であるNrf2については、Nrf2の標的遺伝子の1つであるグルタチオンS―トランスフェラーゼA2(GSTA2)のプロモーター領域とホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド(GSTA2-Luc)、及び内部標準用としてウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流に遺伝子構成的発現プロモーター(SV40)を連結した内部標準プラスミド(pGL4.73hRluc-SV40)を重量比1.9:0.1の割合で混合し、Opti-MEMに10 μg/ml(総DNA量)の濃度で溶解した。
【0057】
同時に遺伝子導入試薬(X-tremeGENE HP; Roche)を1/43量添加し、15分間静置後、本混合液を200 μlずつ各ウェルに添加し、6時間培養することによって遺伝子を導入した。各受容体のアッセイに使用した細胞株及びプラスミドを表3に示した。
【0058】
遺伝子導入細胞をトリプシンにより分散し、96well plateにそれぞれ1.6x104 cells/well (CV-1)、2.0x104cells/well (COS-7、Hep G2)となるよう再度播種した。この際、培養液をphenol red不含のDMEM培地(10%活性炭処理FBS)に交換した。1時間後に、各濃度の被験物質を含む上記と同様のDMEM培地をそれぞれのウェルへ添加した。陰性コントロール(溶媒コントロール)としては最終濃度0.5%DMSO(70%エタノール抽出, 混合溶媒抽出)、10%超純水(水抽出)を用いた。
【0059】
各サンプルにおける試験濃度は、事前のCV-1細胞、COS-7細胞及びHep G2細胞に対する細胞毒性試験により、細胞毒性を示さない最高濃度から設定した。
【0060】
CO2インキュベーター中で48時間培養後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて細胞を洗浄し、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社)を用いて細胞を溶解した。さらにルシフェリンを含む基質溶液を加え、プレートリーダー(Luminescencer, AB-2350EX , ATTO社)にてホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性を各々測定した。以上の操作は、1サンプル(陽性、陰性コントロールを含む)につき3ウェルを用いて実施し、3ウェルの平均値をデータとして採用した。なお、本実験の精度管理に用いた陽性コントロールは表4のとおりである。表4の物質添加には溶媒としてDMSO(終濃度0.5%)を用いた。
【0061】
【0062】
【0063】
<データ解析> 核内受容体或いは転写因子依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性の内部標準補正値)は、以下のように定義した。
【0064】
(内部標準補正値)=(Gal4-Luc或いはGSTA2-Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc-CMV又はhRluc-SV40によるウミシイタケルシフェラーゼ活性) 活性の評価は陰性コントロールとの比(サンプルにおける活性値/陰性コントロールにおける活性値)で表し、細胞に顕著な障害が認められず(ウミシイタケルシフェラーゼ活性値の顕著な低下が認められない)、本数値(陰性コントロール比)が2.0以上となる場合を、有意な活性と定義した。ただし、Gal4-Lucによるホタルルシフェラーゼ活性のみの数値から、活性が認められないものは、内部標準補正値が2.0以上でも活性なしとした。
【0065】
図1及び
図2は、それぞれ幼葉及び大人葉についての、核内受容体活性化能を比較した結果をまとめたものである。陰性コントロールと比べて、3+は101倍以上(下線は500倍以上)、2+は51~100倍、1+は2~50倍(下線は10倍以上)とした。アッセイで得られた最高値を用いて分類を行った。