(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001391
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/245 20060101AFI20221222BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221222BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221222BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20221222BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20221222BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221222BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221222BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221222BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221222BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61K31/245
A61K9/06
A61K9/08
A61K31/14
A61K31/4425
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/38
A61P17/00 101
A61P23/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182023
(22)【出願日】2022-11-14
(62)【分割の表示】P 2020175121の分割
【原出願日】2016-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】来福 七央人
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩を含む医薬組成物において、光暴露によって生じる黄変を抑制でき、優れた製剤安定性を備えさせる製剤技術を提供することである。
【解決手段】アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩と共に、多価アルコール、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシエチルセルロースの中から1種以上を組み合わせて配合した医薬組成物は、光暴露によって生じる黄変が抑制され、優れた製剤安定性を備え得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミノ安息香酸エチル、(B)第四級アンモニウム塩、並びに(C)ポリビニルピロリドン及び/又はヒドロキシエチルセルロースを含有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、塩化セチルピリジニウムである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記(C)成分がポリビニルピロリドンであり、さらに多価アルコールを含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
外用医薬品又は粘膜適用医薬品である、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
アミノ安息香酸エチル、及び第四級アンモニウム塩を含む医薬組成物の光暴露によって生じる黄変を抑制する方法であって、
医薬組成物に、(A)アミノ安息香酸エチル、及び(B)第四級アンモニウム塩と共に、(C)ポリビニルピロリドン及び/又はヒドロキシエチルセルロースを配合する、
前記医薬組成物の光暴露によって生じる黄変の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩を含みながらも、光暴露によって生じる黄変が抑制され、優れた製剤安定性を有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ安息香酸エチルは、局所麻酔剤として知られ、粘膜や皮膚の局所的な痒みや疼痛を緩和するために広く使用されており、従来、アミノ安息香酸エチルを配合した医薬組成物の処方についても、種々検討されている。例えば、特許文献1には、アミノ安息香酸エチル等の塩基性局所麻酔剤と、その塩酸塩を含有する局所麻酔組成物は、局所麻酔作用の速効性と持続性を兼ね備え得ることが報告されている。
【0003】
また、塩化セチルピリジニウムや塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩は、殺菌剤として知られており、様々な医薬品等で広く使用されており、従来、第四級アンモニウム塩を配合した医薬組成物の処方についても、種々検討されている。例えば、特許文献2には、四級アンモニウム塩を0.05~2重量%、クロルフェニラミンマレイン酸塩を0.1~4重量%および塩化物イオン供給源を0.01~10重量%含有することを特徴とする外用薬組成物は、結晶の生成を抑制した安定な製剤を実現し得ることが報告されている。
【0004】
近年、医薬組成物には、多機能性が求められており、局所麻酔剤と殺菌剤を併用した製剤処方も開発されている。しかしながら、医薬組成物を実用化するには、機能性のみならず、製剤安定性についても十分な配慮する必要があるが、従来技術では、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩を含む医薬組成物の製剤安定性については十分な検討がなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-259464号公報
【特許文献2】特開2010-159251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩を含む医薬組成物を実用化すべく検討を進めたところ、当該外用組成物では、光暴露によって黄色に変色(黄変)し、良好な外観性状を維持できず、製剤安定性が悪いという新たな課題に直面した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩を含む医薬組成物において、光暴露によって生じる黄変を抑制でき、優れた製剤安定性を備えさせる製剤技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩と共に、多価アルコール、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシエチルセルロースの中から1種以上を組み合わせて配合した医薬組成物は、光暴露によって生じる黄変が抑制され、優れた製剤安定性を備え得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)アミノ安息香酸エチル、(B)第四級アンモニウム塩、並びに(C)多価アルコー
ル、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシエチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、医薬組成物。
項2. 前記(B)成分が、塩化セチルピリジニウムである、項1に記載の医薬組成物。
項3. 前記多価アルコールが、プロピレングリコール及び/又はグリセリンである、項1又は2に記載の医薬組成物。
項4. 前記モノテルペンがメントールである、項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
項5. 前記(C)成分として、多価アルコール及びポリビニルピロリドンを含む、項1~
4のいずれかに記載の医薬組成物。
項6. 外用医薬品又は粘膜適用医薬品である、項1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
項7. アミノ安息香酸エチル、及び第四級アンモニウム塩を含む医薬組成物の光暴露によって生じる黄変を抑制する方法であって、
医薬組成物に、(A)アミノ安息香酸エチル、及び(B)第四級アンモニウム塩と共に、(C)
多価アルコール、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシエチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種を配合する、
前記医薬組成物の光暴露によって生じる黄変の抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医薬組成物によれば、アミノ安息香酸エチルと第四級アンモニウム塩が共存していても、光暴露によって生じる黄変を抑制でき、優れた製剤安定性を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.医薬組成物
本発明の医薬組成物は、アミノ安息香酸エチル((A)成分と表記することもある)、第
四級アンモニウム塩((B)成分と表記することもある)、並びに多価アルコール、モノテ
ルペン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシエチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種((C)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。以
下、本発明の医薬組成物について詳述する。
【0012】
(A)アミノ安息香酸エチル
アミノ安息香酸エチルは、エチル4-アミノベンゾエート、ベンゾカイン等とも称される公知の局所麻酔剤である。
【0013】
本発明の医薬組成物において、(A)成分の含有量については、特に制限されず、医薬組
成物に付与すべき局所麻酔作用の程度、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~5重量%、好ましくは0.3~2重量%、更に好ましくは0.3~1重量%が挙げられる。
【0014】
(B)第四級アンモニウム塩
本発明で使用される第四級アンモニウム塩は、殺菌作用を有し、且つ薬学的に許容されるものであればよく、その種類については、特に制限されないが、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。
【0015】
これらの第四級アンモニウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらの第四級アンモニウム塩の中でも、光暴露による黄変をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウム、更に好ましくは塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0017】
本発明の医薬組成物において、(B)成分の含有量については、特に制限されず、医薬組
成物に付与すべき殺菌作用の程度、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.05~1重量%、好ましくは0.1~0.5重量%、更に好ましくは0.3~0.5重量%が挙げられる。
【0018】
本発明の医薬組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、(A)成分及
び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分100重量部当たり、(B)成分
が10~300重量部、好ましくは50~200重量部、更に好ましくは50~150重量部が挙げられる。
【0019】
(C)多価アルコール、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及び/又はヒドロキシエチルセルロース
本発明の医薬組成物では、(C)成分として、多価アルコール、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及び/又はヒドロキシエチルセルロースを含有する。当該(C)成分を含むことにより、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩が共存して光暴露を受けた際に生じる黄変を抑制することが可能になる。
【0020】
(C)成分として使用される多価アルコールの種類については、薬学的に許容されること
を限度として特に制限されないが、例えば、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらの多価アルコールの中でも、光暴露による黄変をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはプロピレングリコール及びグリセリンが挙げられる。
【0022】
(C)成分として使用されるモノテルペンとは、分子内にイソプレン単位が2個含まれる
構造を有し、清涼化作用等を有する公知の成分である。(C)成分として使用されるモノテ
ルペンの種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、メントール、チモール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、シネオール、テルピネオール等のアルコール系モノテルペン;シトラール、シトロネラール、ペリルアルデヒド、サフラナール等のアルデヒド系モノテルペン;カンフル、メントン、カルボメントン、ヨノン等のケトン系モノテルペン等が挙げられる。これらのモノテルペンは、光学異性体が存在する場合には、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。これらのモノテルペンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
また、本発明では、モノテルペンとして、モノテルペンを含む精油の状態で使用してもよい。モノテルペンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。なお、本明細書におけるモノテルペンの含有量や比率に関する記載は、モノテルペンを含む精油を使用する場合は、当該精油に含まれるモノテルペン量に換算した値である。
【0024】
これらのモノテルペンの中でも、光暴露による黄変をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはアルコール系モノテルペン、更に好ましくはメントール、特に好ましくはl-メントールが挙げられる。
【0025】
(C)成分として使用されるポリビニルピロリドンとは、N-ビニル-2-ピロリドンが
重合した水溶性の高分子化合物である。(C)成分として使用されるポリビニルピロリドン
の重量平均分子量については、特に制限されないが、例えば、5千~300万程度、更に好ましくは4万~300万程度が挙げられる。ここで、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー/多角度光散乱光度計(GPC/MALLS)によって測定される値を指す。ポリビニルピロリドンのK値(粘性特性値)については、特に制限されないが、10~120程度のものを好ましく使用することができる。また、本発明において、ポリビニルピロリドンは、市販品を使用することができる。ポリビニルピロリドンの市販品としては、具体的には、第一工業製薬株式会社製の「アイフタクト K-30PH」、株式会社日本触媒製の「ポリビニルピロリドン K-30」、「ポリビニルピロリドン K-85」、「ポリビニルピロリドン K-90」、アイエスピー・ジャパン製の「PVP K-90」等が挙げられる。
【0026】
(C)成分として使用されるヒドロキシエチルセルロースとは、セルロースにエチレンオ
キサイドを付加することにより水溶性を向上させたセルロース誘導体である。(C)成分と
して使用されるヒドロキシエチルセルロースの酸化エチレンの平均付加モル数、平均分子量等については、特に制限されず、医薬分野で通常使用されているものであればよいが、例えば、2.0重量%水溶液(20℃)において粘度500mPa・s以上、好ましくは、500~50000mPa・sであるものが挙げられる。ここで、当該粘度は、B型粘度計「TOKI SANGYO VISCOMETER TVB-10」(東機産業株式会社製)において、測定する粘度に応じて、ローター:M3又はM4(回転速度:12~30rpm、時間:1min、単位:mPa・s)を使用して適切に測定した値をいう。また、本発明において、ヒドロキシエチルセルロースは、市販品を使用することができる。ヒドロキシエチルセルロースの市販品としては、具体的には、住友精化株式会社製の「HEC CF-V」、「HEC CF-W」、「HEC CF-X」、「HEC CF-Y」、「HEC AH-15F」、「HEC AV-15F」、「HEC AW-15F」、「HEC SW-25F」、ダイセルファインケム株式会社製の「HECダイセル SP500」、「HECダイセル SP600」、「HECダイセル SP850」、「HECダイセル SP900」、Ashland社製の「NATROSOL 250HX」等が挙げられる。
【0027】
本発明の医薬組成物において、(C)成分として、多価アルコール、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシエチルセルロースの中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
光暴露による黄変をより一層効果的に抑制するという観点から、(C)成分として、好ましくは多価アルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせ、更に好ましくはプロピレングリコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせが挙げられる。
【0029】
(C)成分として多価アルコールとポリビニルピロリドンとを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、光暴露による黄変をより一層効果的に抑制するという観点から、多価アルコール100重量部当たり、ポリビニルピロリドンが通常0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部、更に好ましくは0.5~5重量部となる比率が挙げられる。
【0030】
本発明の医薬組成物において、(C)成分の含有量については、使用する(C)成分の種類、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(C)成分の総量
で0.01~80重量%、好ましくは0.05~70重量%、更に好ましくは0.1~65重量%が挙げられる。
【0031】
より具体的には、(C)成分の種類毎の含有量として、以下の範囲が挙げられる;
多価アルコールを使用する場合:1~80重量%、好ましくは5~60重量%。
・多価アルコールとして2価アルコールを使用する場合:更に好ましくは1~60重量%、特に好ましくは1~50重量%、最も好ましくは5~40重量%。
・多価アルコールとして3価アルコールを使用する場合:更に好ましくは10~60重量%、特に好ましくは30~60重量%、最も好ましくは30~50重量%。
モノテルペンを使用する場合:0.01~3重量%、好ましくは0.05~1重量%、更に好ましくは0.1~1重量%。
ポリビニルピロリドンを使用する場合:0.05~3重量%、好ましくは0.1~1重量%、更に好ましくは0.5~1重量%。
ヒドロキシエチルセルロースを使用する場合:0.05~3重量%、好ましくは0.1~1重量%、更に好ましくは0.5~1重量%。
【0032】
本発明の医薬組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分100重量部当たり、(C)成分が10~20000重量部、好ましくは15~18000重量部が挙げられる。
【0033】
より具体的には、(A)成分100重量部に対する(C)成分の種類毎の比率として、以下の範囲が挙げられる;
多価アルコールを使用する場合:総量で、1500~20000重量部、好ましくは3000~18000重量部。
・多価アルコールとして2価アルコールを使用する場合:総量で、更に好ましくは1500~18000重量部、特に好ましくは3000~18000重量部、最も好ましくは5000~18000重量部。
・多価アルコールとして3価アルコールを使用する場合:総量で、更に好ましくは2000~18000重量部、特に好ましくは5000~18000重量部、最も好ましくは8000~18000重量部。
モノテルペンを使用する場合:総量で、15~500重量部、好ましくは15~400重量部、更に好ましくは15~350重量部。
ポリビニルピロリドンを使用する場合:総量で、10~500重量部、好ましくは20~400重量部、更に好ましくは50~350重量部。
ヒドロキシエチルセルロースを使用する場合:総量で、30~500重量部、好ましくは50~500重量部、更に好ましくは50~400重量部。
【0034】
低級アルコール
本発明の医薬組成物には、アミノ安息香酸エチルを安定に溶解させるために、必要に応じて低級アルコールを含んでいてもよい。
【0035】
本発明で使用される低級アルコールの種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロパノール等の炭素数2~6の低級アルコールが挙げられる。これらの低級アルコールの中でも、好ましくはエタノールが挙げられる。
【0036】
これらの低級アルコールは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本発明の医薬組成物に低級アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.5~20重量%、好ましくは1~10重量%、更に好ましくは5~10重量%が挙げられる。
【0038】
水
本発明の医薬組成物の好適な態様として、水を含んでいること(即ち、水性製剤)が挙げられる。従来技術では、水の存在下で、アミノ安息香酸エチル及び第四級アンモニウム塩を共存させると、光暴露による黄変が顕著に生じる傾向が認められるが、本発明では、水を含む場合であっても、当該黄変を効果的に抑制することができる。
【0039】
本発明の医薬組成物を水性製剤にする場合、水の含有量については、特に制限されず、医薬組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1~80重量%、好ましくは5~60重量%、更に好ましくは10~50重量%が挙げられる。
【0040】
その他の成分
本発明の医薬組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等)、アミノ安息香酸エチル以外の局所麻酔剤(プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン、リドカイン等)、第四級アンモニウム塩以外の殺菌剤(ヨウ素、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール等)、抗炎症剤(グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、ビタミン類(ビタミンA等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン等)等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の医薬組成物は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、前述する成分以外の基材や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、油類(オリーブ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ラード、スクワラン、魚油等)、鉱物油(流動パラフィン、パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリン等)、ワックス類・ロウ類(ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル等)、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、リノール酸、ラノリン等)、脂肪酸エステル(パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル等)、低級アルコール(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等)、高級アルコール(ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等)、コレステロール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン等)等の油性基剤;POE(10~50モル)フィトステロールエーテル、POE(10~50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10~50モル)2-オクチルドデシルエーテル、POE(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)オレイルエーテル、POE(2~50モル)セチルエーテル、POE(5~50モル)ベヘニルエーテル、POE(5~30モル)ポリオキシプロピレン(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)ポリオキシプロピレン(2~30モル)セチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、これらのリン酸・リン酸塩(POEセチルエーテルリン酸ナトリウムなど)、POE(20~60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10~60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10~80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10~30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20~100モル)・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、POE・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(5~100)、ポリソルベート(20~85)、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリン等)、水素添加大豆リン脂質、水素添加ラノリンアルコール等の界面活性剤;清涼化剤(メントール、カンフル、ボルネオール、ハッカ水、ハッカ油等)、防腐剤(メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸等)、着香剤(シトラール、1,8-シオネール、シトロネラール、ファルネソール等)、着色剤(タール色素(褐色201号、青色201号、黄色4号、黄色403号等)、カカオ色素、クロロフィル、酸化アルミニウム等)、粘稠剤(アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等)、pH調整剤(リン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、湿潤剤(dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、D-ソルビトール液、マクロゴール等)、安定化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、DL-アラニン、グリシン、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン、ローズマリー抽出物等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0042】
製剤形態
本発明の医薬組成物の剤型については、特に制限されず、液状、半固形状(ゲル状、軟膏状、ペースト状等)、固形状等のいずれであってもよいが、好ましくは水性製剤である液状又は半固形状が挙げられる。
【0043】
また、本発明の医薬組成物は、外用医薬品、粘膜適用医薬品、又は内服用医薬品のいずれであってもよい。外用医薬品としては、具体的には、ジェル剤、クリーム剤、ローション剤、乳液剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等が挙げられる。粘膜適用医薬品としては、具体的には、ジェル剤、クリーム剤、ローション剤、乳液剤、液剤、軟膏剤等が挙げられる。内服用医薬品としては、具体的には、液剤、ゼリー剤等が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の
方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0044】
これらの製剤形態の中でも、好ましくはジェル剤、クリーム剤、ローション剤、乳液剤、液剤等の皮膚外用医薬品及び粘膜適用医薬品が挙げられる。
【0045】
2.黄変抑制方法
更に、本発明は、(A)アミノ安息香酸エチル、及び(B)第四級アンモニウム塩を含む医薬組成物の光暴露によって生じる黄変を抑制する方法であって、当該医薬組成物に、(C)多価アルコール、モノテルペン、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシエチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする。
【0046】
当該黄変抑制方法において、使用する(A)~(C)の種類や含有量、配合される他の成分の種類や含有量、医薬組成物の製剤形態等については、前記「1.医薬組成物」の場合と同様である。
【実施例0047】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
試験例
1.医薬組成物の調製
表1及び2に示す医薬組成物(皮膚外用医薬品、液剤)を調製した。具体的には、所定量のアミノ安息香酸エチル及びl-メントールをそれぞれエタノールに溶解させた後、他
の成分と共に水に添加して混合することにより、医薬組成物(皮膚外用医薬品、液剤)を得た。
【0049】
2.光暴露による製剤安定性の評価
各医薬組成物をスクリュー管(直径24mm、高さ50mmのガラス製透明容器)に入れ、蛍光灯照射下12000lx・hr及び25℃に設定したグロースチャンバー内で96時間静置した。その後、スクリュー管を2~3回転倒混和し、医薬組成物の外観を目視にて観察し、以下の判定基準に従って光暴露による製剤安定性を評価した。
<光暴露による製剤安定性の評価基準>
◎:黄変は全く認められず、実用化に全く問題ない。
○:ほんの僅かな黄変が認められるが、実用化には問題ない。
△:明らかな黄変が認められ、実用化に不適合である。
×:著しい黄変が認められ、実用化に不適合である。
【0050】
3.結果
得られた結果を表1及び2に示す。アミノ安息香酸エチルのみを溶解させた医薬組成物は、光暴露を受けても全く黄変は認められなかった(参考例1)。しかし、アミノ安息香酸エチルを塩化セチルピリジニウムと共存させた場合には、光暴露により著しい黄変が認められた(比較例1)。これに対して、アミノ安息香酸エチルと塩化セチルピリジニウムと共に、グリセリン、プロピレングリコール、メントール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースの内1種以上を共存させると、光暴露による黄変を大幅に改善できていた(実施例1~22)。特に、光暴露による製剤安定性が◎と評価された医薬組成物の中でも、アミノ安息香酸エチル、塩化セチルピリジニウム、多価アルコール(特に、プロピレングリコール)、及びポリビニルピロリドンを組み合わせて含む場合には、格段顕著な製剤安定性が認められた。
【0051】
【0052】
【0053】
処方例
表3に示す医薬組成物(口腔粘膜適用医薬品)を調製した。得られた医薬組成物について、前記試験例と同様の方法で光暴露による製剤安定性を評価したところ、いずれも黄変が認められなかった。
【0054】