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特開2023-13956電極製造装置、蓄電デバイス製造装置、液体吐出装置、電極製造方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013956
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電極製造装置、蓄電デバイス製造装置、液体吐出装置、電極製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230119BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20230119BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20230119BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230119BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230119BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230119BHJP
【FI】
H01M4/139
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
H01M4/04 A
H01G13/00 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088736
(22)【出願日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2021118051
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】濱口 昌也
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA22
4F041BA34
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB07
4F042DB18
4F042DH09
5E082AB09
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB16
5H050CB18
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA28
5H050GA29
5H050HA03
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】液体吐出対象の変化に応じて、液体吐出手段による吐出を制御すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る電極製造装置は、液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置であって、検知手段と、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段と、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する制御手段と、を備え、前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置であって、
検知手段と、
前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段と、
前記液体吐出手段による吐出条件を制御する制御手段と、を備え、
前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、
前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、
前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する電極製造装置。
【請求項2】
前記検知手段は、所定の時間内、又は前記電極基体が所定の搬送距離を搬送されている間の何れか一方において、時系列に検知した前記複数の検知情報を出力する請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項3】
前記所定の方向と交差する方向は、前記所定の方向と直交する方向である請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記性状には、前記電極基体の厚み、色及び反射率の少なくとも1つが含まれる請求項1又は請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記検知手段は、
前記電極基体上に光スポットを照射する発光素子と、
前記光スポットの前記電極基体による反射光を受光して、前記反射光の光強度に応じた電気信号を出力する受光素子と、を含み、
前記発光素子は、前記光スポット内に前記点が含まれるように前記光スポットを照射し、
前記複数の検知情報は、前記受光素子により時系列に出力される前記電気信号であり、
前記制御手段は、前記電気信号における電圧値又は電流値の少なくとも1つの増減に応じて前記吐出条件を制御する請求項1又は請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記結合検知情報は、前記所定の方向と交差する方向における前記点の位置情報と、前記所定の方向における前記点の位置情報と、を含む請求項1又は請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記電極製造装置は、画像データに基づいて前記液体を吐出し、
前記所定の方向と交差する方向における幅が異なる複数の画像データを、前記結合検知情報に対応付けて格納する格納手段を有し、
前記制御手段は、前記結合検知情報に基づき、前記格納手段を参照して取得される前記画像データに応じて、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する請求項1又は請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記検知手段により検知された前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて、前記所定の方向と交差する方向における幅が異なる前記複数の画像データを生成する生成手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記電極製造装置により前記所定の方向に搬送される前記電極基体上に前記液体を吐出する動作を行う前に、前記複数の画像データを生成し、
前記格納手段は、前記生成手段により生成された前記複数の画像データを格納する請求項7に記載の電極製造装置。
【請求項9】
前記所定の方向における前記検知手段と前記液体吐出手段との間の距離は、300.0[mm]以下である請求項1又は請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項10】
前記電極基体は、前記電極基体上に予め形成された所定のパターンを有する第1の膜領域を含み、
前記制御手段は、前記結合検知情報に基づき前記液体吐出手段により吐出された前記液体によって、前記第1の膜領域を覆う第2の膜領域を形成するように、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する請求項1又は請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記電極基体上において、前記所定の方向及び前記所定の方向と交差する方向それぞれに沿って前記第1の膜領域から所定の長さ分をはみ出しつつ、前記第1の膜領域を覆う前記第2の膜領域を形成するように、前記液体吐出手段による吐出条件を制御し、
前記所定の長さは1.0[mm]以下である請求項10に記載の電極製造装置。
【請求項12】
前記所定の方向における前記液体吐出手段の下流側に下流側検知手段をさらに有し、
前記下流側検知手段は、前記電極基体上において、前記性状が異なる点を時系列に検知した複数の下流側検知情報を出力し、
前記制御手段は、前記複数の下流側検知情報が結合された下流側結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する請求項10に記載の電極製造装置。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の電極製造装置を有する蓄電デバイス製造装置。
【請求項14】
所定の方向に搬送される液体吐出対象上に液体を吐出する液体吐出装置であって、
検知手段と、
前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられた液体吐出手段と、
前記液体吐出手段による吐出条件を制御する制御手段と、を備え、
前記液体吐出対象は、前記液体吐出対象上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、
前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、
前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する液体吐出装置。
【請求項15】
液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置による電極製造方法であって、前記電極製造装置が、
検知手段により検知し、
制御手段により、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段による吐出条件を制御し、
前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、
前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、
前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する電極製造方法。
【請求項16】
液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置に処理を実行させるプログラムであって、
検知手段により検知し、
制御手段により、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段による吐出条件を制御し、
前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、
前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、
前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する
処理を前記電極製造装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造装置、蓄電デバイス製造装置、液体吐出装置、電極製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の方向に搬送される液体吐出対象上に液体を吐出する液体吐出装置が知られている。
【0003】
このような液体吐出装置として、所定の方向に延びる帯状部材上に所定の方向に沿って一定間隔で形成されている膜形成領域に向けて、液滴を吐出する液滴ノズルユニットを備える装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、液滴ノズルユニットの上流側及び下流側それぞれにおいて撮像された位置基準領域情報から算出される位置基準領域のずれ量に基づき、液滴ノズルユニットを制御する。このような構成では、時系列に情報を取得しないため、液体吐出対象の変化に応じた、液滴ノズルユニット等の液体吐出手段による吐出の制御ができないという点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、液体吐出対象の変化に応じて、液体吐出手段による吐出を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電極製造装置は、液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置であって、検知手段と、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段と、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する制御手段と、を備え、前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出対象の変化に応じて、液体吐出手段による吐出を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電極合材層の第1例を示す平面図である。
図2】電極合材層の第2例を示す平面図である。
図3】電極合材層上に形成した樹脂層の第1例を示す図である。
図4】電極合材層上に形成した樹脂層の第2例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る電極印刷装置の構成例を示す側面図である。
図6】第1実施形態に係る電極印刷装置の構成例を示す平面図である。
図7】実施形態に係る処理部のハードウェア構成例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る処理部の機能構成例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る検知器の構成例を示す平面図である。
図10】検知器が備える光センサの構成例を示す側面図である。
図11】第1実施形態に係る検知情報の第1例を示す図である。
図12】第1実施形態に係る検知情報の第2例を示す図である。
図13】第1実施形態に係る電極印刷装置の動作例を示すフロー図である。
図14】第1実施形態に係る電極印刷装置による樹脂層形成例の図である。
図15】第2実施形態に係る検知器の構成例を示す平面図である。
図16】第2実施形態に係る結合検知情報の第1例を示す図である。
図17】第2実施形態に係る結合検知情報の第2例を示す図である。
図18】第3実施形態に係る電極印刷装置の構成例を示す側面図である。
図19】第3実施形態に係る電極印刷装置の構成例を示す平面図である。
図20】第3実施形態に係る処理部の機能構成例を示す図である。
図21】第4実施形態に係る処理部の機能構成例を示す図である。
図22】複数の画像データの一例を示す図である。
図23】第4実施形態に係る電極印刷装置による複数の画像データの生成動作例を示すフロー図である。
図24】転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図24(a)は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部の図、図24(b)は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部の図である。
図25】液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図である。
図26】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図である。
図27】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
図28】平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図である。
図29図28のヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電極製造装置、蓄電デバイス製造装置、液体吐出装置、電極製造方法及びプログラムを例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
実施形態では、電極製造装置および液体吐出装置それぞれの一例として、電極印刷装置について説明する。この電極印刷装置は、樹脂層又は無機層を形成する液体組成物を用いて、集電体の表面上に形成された電極合材層の表面を覆うように樹脂層又は無機層を形成するものである。電極合材層が表面に形成されている集電体を有する電極基体は液体吐出対象に対応する。電極合材層は第1の膜領域に対応し、樹脂層又は無機層は第2の膜領域に対応する。
なお、液体を吐出することで電極基体上に樹脂層又は無機層を形成するとは、液体を吐出することのみで電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する場合だけでなく、液体を吐出することで前駆体が形成され、その後の工程(例えば、加熱工程等)で樹脂層又は無機層が形成される場合等も含む。
【0012】
(集電体)
実施形態に係る集電体は、平面性を有する導電性箔であって、一般に蓄電デバイスである2次電池、キャパシタ、なかでもリチウムイオン2次電池に好適に用いることができる。導電性箔としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、及びそれらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシタに用いられる穴あき集電体等が用いられる。この集電体には、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパー又は繊維状の電極を不織又は織状で平面状にしたものや、上記穴あき集電体のうち微細な穴を有するものが使用可能である。
【0013】
(電極合材層)
実施形態に電極合材層は、集電体上に設けられた活物質を含む層である。電極合材層は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散及び又は溶解し、この液体を電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。電極合材層を形成するには、スプレー、ディスペンサ、ダイコータや引き上げ塗工等を用いられ、塗布後に乾燥して電極合材層を形成する。
【0014】
更に電極合材層は、例えば電子写真方式や、液体現像型電子写真等のオンデマンド印刷によって形成される場合、電極形状が自由に変えられることに加えて、更に、集電体がアルミ箔のような薄い導電性箔である場合、非接触で特定のパターンを位置制御して印刷できることから、液体吐出ヘッドを用いたインクジェット法や、ディスペンサ、ジェットノズル等、液体吐出系の手法で印刷することが好ましく、特にインクジェット法は好ましいものとなる。
【0015】
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極用活物質として使用できる。例えばリチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO4等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。
【0016】
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Se、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、なかでもMn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は、1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケル等が挙げられる。
【0017】
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料としては、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。また、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
【0018】
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-WやTi15Zr21V15Ni29Cr5Co5Fe1Mn8等で代表されるAB2系或いはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。
【0019】
正極又は負極の結着剤には、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。また、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
【0021】
燃料電池での活物質は、一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体を添加、(塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むものを用い)懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極を得る。
【0022】
(電極基体)
本実施形態に係る電極基体とは、集電体及び当該集電体上に電極合材層を有する。
(樹脂層又は無機層)
樹脂層又は無機層は、電極基体に形成されている電極合材層に、液体吐出ヘッドにより液体組成物を吐出することにより形成される、蓄電デバイスとしたときに電極同士を物理的に絶縁する層である。なお、集電体に、まず、比較的正確な精度をもつ塗工方法、例えばスクリーン印刷やグラビア塗工、インクジェット塗工やディスペンサ描画等によって、絶縁性枠状等の所望の電極形状のパターンの樹脂層又は無機層を形成してもよい。この場合、樹脂層又は無機層を形成する。この後、上記活物質をスラリー状にしたものを上記パターン上に塗布し、乾燥する。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程での所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作れることにより、結果として目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。
【0023】
従って、かかる樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、上記活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して反応または溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、絶縁性膜であることを特徴とするものである。ここでいう絶縁性膜は、通常厚さ方向で、メガオーム[/cm]以上の絶縁性を有するものであることが好ましい。また、デバイスの中において長く絶縁性を保つ必要があるため、上記電解液に溶解しにくい必要がある。従って、通常の有機溶媒に溶解した樹脂のみではこれらの性能を達成することは難しく、塗布した後に、熱や電離放射線等によって架橋不要化性能等を有する樹脂群が好ましい。或いは、無機材料は絶縁性を有する微粒子であり、微粒子が溶媒に分散していて、塗布後に乾燥させ絶縁性を有する膜であることが好ましい。また、無機材料は固体電解質材料や半固体電解質材料であってもよい。更に、この樹脂層又は無機層は、電極加工の過程で、最大250[kN]程度の線圧によるプレス工程等が存在するため、上記線圧に対して耐性を有することが好ましい。
【0024】
次に、上述の樹脂層を形成するために、樹脂及び該樹脂の前駆体の少なくとも何れか一方(樹脂又は該樹脂の前駆体)を液体に溶解してなる樹脂層作製用液体組成物を先に説明する。
【0025】
樹脂及び該樹脂の前駆体としては、分子内に電離放射線や赤外線(熱)によって架橋性の構造を保有する樹脂類やオリゴマー類を液体である有機溶剤(有機溶媒)に溶解せしめたものが好ましい。樹脂及び該樹脂の前駆体としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂のうち低分子量のオリゴマー前駆体や、その一部に例えば脂肪族不飽和結合を有する炭化水素基で修飾したものが好ましく、例えばアクリル系共重合体の一部の側鎖にアリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、ブテニル基、シンナミル基、シンナモイル基、クロトメイル基、シクロヘキサジェニル基、インプロペニル基、メタクリロイル基、ペンテニル基、プロペニル基、スチリル基、ビニル基、ブタジェニル基等の不飽和結合を有するもの等が好ましい。
【0026】
更にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、及びセルロース等についても分子量1万以下の比較的低分子量の分散前駆体やセルロースナノファイバーを用い、それらを電離放射線や赤外線によって加熱することにより定着後の不溶性及び架橋性を高めることができる。
【0027】
更にこれらの前駆体は、架橋性を高めるために最大30重量部程度のアジド化合物を含有させても構わない。例えば、3.3′-ジクロロ-4.4′-ジアジドジフェニルメタン、4.4′-ジアジドジフェニルエーテル、4.4′-ジアジドジフェニルジスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルホン、4-アジドカルコン、4-アジド-4′-ヒドロキシカルコン、4-アジド-4′-メトキシカルコン、4-アジド-4′-モルホリノカルコン、4-ジメチルアミノ-4′-アジドカルコン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-シクロヘキサノン、シンナミリデン-4-アジドアセトフェノン、4-アジドシンナミリデンアセトフェノン、4-アジド-4′-ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、シンナミリデン-4-アジドシンナミリデンアセトン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-シクロヘキサノン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデン-3-α-ヒドロキシ-4″-アジドベンジルインデン、9.4′-アジドベンジリデンフルオレン、9.4′-アジドシンナミリデンフルオレン、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-メトキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシエチルフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニルアミド、4.4′-ジアジドベンゾフェノン、4.4′-ジアジドスチルベン、4.4′-ジアジドカルコン、4.4′-ジアジドベンザルアセトン、6-アジド-2-(4'-アジドスチリル)ベンゾイミダゾール、3-アジドベンジリデンアニリン-N-オキシp~(4-アジドベンジリデンアミド)安息香酸、1.4-ビス(3′-アジ1ζスチリル)ベンゼン、3.3′-ジアジドジフェニルスルホン、4.4′-ジアジドジフェニルメタン等が挙げられる。
【0028】
なかでも特に2.6-ビス-(4′アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を好適に用いることができる。これらの材料が溶解される溶媒は特に規定されるものではないが、上記化合物が溶解できて沸点や表面張力が後の塗布や乾燥工程に対して好適なものを単独又は混合して調整し用いることができる。
【0029】
また、集電体上において電極合材層を形成する領域の周囲(枠領域)に先に樹脂層又は無機層を形成しておき、枠領域に樹脂層又は無機層が形成されている集電体上に活物質をスラリー状にしたものを塗布し、乾燥させてもよい。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程における所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作れる。その結果、目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。従って、樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、絶縁性膜である。
【0030】
(集電体上に形成されている電極合材層の一例)
図1及び図2は、集電体2上に形成されている電極合材層2aを例示する図である。図1は第1例、図2は第2例である。図1に示すように、集電体2上には、平面視形状、即ち+Z方向から視た形状が略矩形状である3つの電極合材層2aと、平面視形状がX方向を長手とする長方形状である1つの電極合材層2aが形成されている。電極合材層2aの平面視形状は、用途に応じて適宜設定可能である。この電極合材層2aの平面視形状は所定のパターンに対応する。換言すると、電極合材層2a(第1の膜領域)は、集電体2上に予め形成された所定のパターンを有する。
【0031】
電極合材層2aを形成するために用いられるスプレーやダイコータによる塗工の位置精度は、よいものでも数百[μm]程度である。そのため、集電体2上の電極合材層2aの位置が所望の位置からずれる場合がある。
【0032】
図2は、電極合材層2aの位置ずれを示している。図2に示す3つの電極合材層2aは、理想的には平面視形状がX方向を長手とする長方形状のものであるが、位置ずれにより、Y方向における電極合材層2aの幅が幅w1から幅w2の範囲で変動している。一例として、X方向における電極合材層2aの長さLが2000.0[mm]の場合において幅w1と幅w2の差が1.0[mm]程度となる。
【0033】
(電極合材層上に形成された樹脂層又は無機層の一例)
図3及び図4は、電極合材層2a上に形成される樹脂層2bを例示する図である。図3は第1例、図4は第2例である。なお、樹脂層と無機層の取り扱いは同じである。そのため、以降では説明を簡略化するために、特に区別する場合を除いて樹脂層又は無機層を樹脂層2bに統一表記して説明する。
【0034】
図3では、電極合材層2aが集電体2上の予め定められた位置に、予め定められたパターンで形成されている。そのため、予め定められた位置に予め定められたパターンで樹脂層2bを形成することにより、破線で示した樹脂層2bは、電極合材層2aを覆うことができる。その結果、樹脂層2bは樹脂層2bの絶縁性等の効果を好適に発揮することができる。
【0035】
なお、図3におけるはみ出し幅Pは、樹脂層2bが電極合材層2aからはみ出しているY方向における幅を指している。このようなはみ出し幅を設けて電極合材層2a上に樹脂層2bを形成すると、電極合材層2aを樹脂層2bにより確実に覆うことができる。X方向においても同様に、はみ出し幅を設けることができる。
【0036】
図4では、電極合材層2aが集電体2上の予め定められたパターンからずれている。そのため、予め定められたパターンで樹脂層2bを形成すると、電極合材層2aのずれに応じて、電極合材層2a上に樹脂層2bにより覆われていない非被覆領域2cが生じる。その結果、非被覆領域2cにおいて、電気的な短絡(ショート)等の不具合が発生する場合がある。
【0037】
一方、電極合材層2aのずれの影響を考慮して、電極合材層2aよりも大きい領域を樹脂層2bによって覆うように樹脂層2bを形成すると、必要以上に大きい集電体2の領域を樹脂層2bにより覆ってしまうため、集電体2から導電性の領域を切り出して使用する場合等に、集電体2の領域を有効活用できなくなる。
【0038】
従って、集電体2上における電極合材層2aの位置やパターン等の変化に応じて、液体吐出手段による吐出を制御することにより、樹脂層2bの形成位置を制御可能にすることが求められている。
【0039】
以下において説明する実施形態に係る電極印刷装置は、例えば上記要求に応えることができる。
【0040】
以下に示す図において、X軸、Y軸及びZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、電極印刷装置が電極基体を搬送する方向を示すものとする。また、Y軸に沿うY方向は、電極基体上でX方向に直交する方向を示し、Z軸に沿うZ方向は、X方向及びY方向の両方に直交する方向を示すものとする。X方向は所定の方向の一例であり、Y方向は所定の方向に交差する方向の一例である。
【0041】
X方向で矢印が向いている方向を+X方向又は+X側、+X方向の反対方向を-X方向又は-X側と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向又は+Y側、+Y方向の反対方向を-Y方向又は-Y側と表記する。またZ方向で矢印が向いている方向を+Z方向又は+Z側、+Z方向の反対方向を-Z方向又は-Z側と表記する。
【0042】
[第1実施形態]
<電極印刷装置1の構成例>
図5及び図6を参照して、第1実施形態に係る電極印刷装置1の構成について説明する。図5及び図6は、電極印刷装置1の構成の一例を示す図である。図5は-Y方向側から視た電極印刷装置1の側面図、図6は+Z方向側から視た電極印刷装置1の平面図である。
【0043】
電極印刷装置1は、検知器4と、液体吐出ヘッド5と、処理部100と、を備えている。搬送機構3は、集電体2又は集電体2上に電極合材層2aを有する電極基体を+X方向に搬送する。検知器4及び液体吐出ヘッド5は、+X方向における上流側から下流側にこの順で配置されている。また+X方向における液体吐出ヘッド5の下流側には、光源6及びヒータ7がこの順で設けられている。
【0044】
また電極印刷装置1は、操作部8を備えている。操作部8は、タッチパネル等により構成されており、電極印刷装置1のユーザによる電極印刷装置1の操作入力を受け付けると共に、電極印刷装置1の状態や設定を画面に表示する。
【0045】
集電体2は、X方向に沿って延伸する長尺シート状の導電性箔である。導電性箔は例えば銅箔である。電極基体は、電極基体上に、性状が異なる点を+X方向と交差するY方向に沿って複数有する。この性状には、電極基体の厚み、色及び反射率等があげられるが、これらの少なくとも1つが含まれることが好ましい。具体的には、集電体2上には電極合材層2aが形成されているため、電極基体上において、電極合材層2aが形成されている領域と形成されていない領域との間では厚み、色及び反射率の少なくとも1つが異なっている。性状が異なる点は、電極合材層2aが形成されている領域と、電極合材層2aが形成されていない領域と、の境界に含まれる点である。
【0046】
搬送機構3は、電極基体が検知器4、液体吐出ヘッド5、光源6及びヒータ7の正面を順次通過するように電極基体を搬送する。搬送機構3は、駆動ローラ3aと、従動ローラ3bと、駆動ローラ3aの回転角度信号を出力するエンコーダ31と、駆動ローラ3aを駆動させるモータと、を含んでいる。電極基体は、少なくとも駆動ローラ3a及び従動ローラ3bに架け回されており、駆動ローラ3aの回転に従って+X方向に走行することによって搬送される。なお、搬送機構3は、電極基体の移動を補助するガイド部材等を更に備えてもよい。
【0047】
検知器4は、電極基体における少なくとも上記の性状が異なる点を時系列に検知した複数の検知情報を出力する検知手段の一例である。電極印刷装置1は、検知器4により出力される複数の検知情報に基づいて集電体2上に形成された電極合材層2aの位置情報を取得することができる。検知器4については、別途図9から図12を参照して詳述する。
【0048】
液体吐出ヘッド5は、+X方向に搬送される電極基体が有する集電体2上に形成されている電極合材層2a上に液体組成物を吐出して付与することにより、電極基体上に液体組成物層である樹脂層2bを形成する液体吐出手段の一例である。液体吐出ヘッド5は、+X方向において検知器4から設置距離Mを離れた位置に設置されている。
【0049】
液体吐出ヘッド5は、樹脂層2bを形成するための元データとなる画像データと、検知器4による複数の検知情報が結合された結合検知情報と、に基づいて液体組成物を吐出し、樹脂層2bの前駆状態である樹脂前駆層を形成する。
【0050】
液体吐出ヘッド5としては、Y方向における電極基体の幅以上の幅を有するライン状に並べたヘッドを使用することができる。液体吐出ヘッド5から液体組成物を吐出する圧力発生手段及び駆動方法には特に制限はない。例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力を利用して液体組成物滴を飛翔させるサーマルアクチュエータ、圧電素子によって発生する機械的な圧力パルスを利用して液体組成物滴を飛翔させる圧電アクチュエータ、或いは、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。更には、必要に応じて液体組成物の供給系を圧力オンオフすることにより液体組成物を飛翔させてもよい。
【0051】
光源6は、電極基体上に形成された液体組成物層に光を照射して、液体組成物層を樹脂層2bに硬化させる。光源6としては、例えば、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EBキュア等の電子線照射装置、X線照射装置等を使用することができる。システムを簡便化できる観点では、高周波誘起紫外線発生装置、高・低圧水銀ランプや半導体レーザ等を使用することが好ましい。また、光源6に集光用ミラーや走査光学系を設けてもよい。
【0052】
光源6の例として例えばライトハンマーシリーズ(フュージョンUVシステムズ社製)等が例示される。また、日亜化学工業株式会社に代表されるLEDメーカーから1W以上の高輝度のUV-LEDやレーザーダイオード等が販売されており、これらを線又は平面上に並べることによって好適に用いることができる。また、活物質粉体の隙間にしみ込んだり(入り込んだり)して、光の届きにくい場合には、電子線やX線照射装置を光源として用いることができ、例えば岩崎電気株式会社製の小型EB射装置等が好適に用いられる。
【0053】
ヒータ7は、電極基体上に形成された樹脂層作製用液体組成物の吐出によって形成される樹脂前駆層を加熱することにより、硬化を促進したり乾燥させたりする。ヒータ7としては、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風又は熱風を吹き出すブロワ、水蒸気等を用いたボイラー型熱風を導入した炉等を使用することができる。
【0054】
ヒータ7は、熱源として知られ、制御可能なものであればいかなる物でもよいが、光源6として、例えば可視光に加えて赤外光を発生し得るものを使用した場合には、光照射と同時に加熱を行なうことができる。この場合には、硬化を促進させることができるため、より好ましい。樹脂前駆層に光を照射すると、光源6から発生する熱によって樹脂前駆層が加熱されるため、加熱手段は、ヒータ7のように必ずしも独立した部材として設ける必要はない。しかしながら、光源6からの熱のみにより常温で放置して樹脂前駆層を完全に硬化させるには長時間を要する。従って、常温放置は、完全硬化までに充分に長い時間を確保できる用途に適用することが望まれる。
【0055】
処理部100は、搬送機構3、検知器4、液体吐出ヘッド5、光源6及びヒータ7等の動作を制御すると共に、検知器4により出力される複数の検知情報等を処理する。処理部100は、電極印刷装置1との間において信号又はデータの送受が可能であれば、電極印刷装置1の内部又は外部の何れに配置されていてもよいし、電極印刷装置1から離れた遠隔場所に配置されていてもよい。
【0056】
<処理部100の構成例>
図7は、処理部100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。処理部100は、コンピュータによって構築されており、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、HDD(Hard Disk Drive)104と、I/F(Interface)105と、を備えている。これらは、システムバスBを介して相互に電気的に接続している。
【0057】
CPU101は、各種の演算処理及び制御処理を実行する。ROM102は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU101の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される。HDD104は、プログラム等の各種データを記憶する。HDD104は、SSD(Solid State Drive)等であってもよい。
【0058】
I/F105は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、搬送機構3、検知器4、液体吐出ヘッド5、光源6、ヒータ7及び操作部8等である。
【0059】
図8は、処理部100の機能構成の一例を示すブロック図である。処理部100は、計測部11と、判定部12と、取得部13と、補正部14と、制御部15と、格納部16と、を備えている。また制御部15は、吐出制御部151と、搬送制御部152と、照射制御部153と、加熱制御部154と、を備えている。
【0060】
処理部100は、ROM102からRAM103に展開されたプログラムをCPU101が実行すること、又はI/F105を制御すること等により、計測部11、判定部12、取得部13、補正部14及び制御部15の各機能を実現する。また処理部100は、ROM102からRAM103に展開されたプログラムをCPU101が実行し、HDD104を制御すること等により格納部16の機能を実現する。
【0061】
本実施形態では、処理部100は、検知器4が時系列に出力する複数の検知情報を一つの結合検知情報に結合し、得られた結合検知情報に基づいて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。
【0062】
計測部11は、CPU101のクロックをカウントすることにより時間を計測し、時間計測結果を取得部13に出力する。或いは、計測部11は、エンコーダ31から入力した駆動ローラ3aの回転角度信号に基づき、電極基体が搬送された距離(走行した距離)を計測し、搬送距離計測結果を取得部13に出力することもできる。
【0063】
判定部12は、計測部11による時間計測結果に基づき、所定の時間が経過したか否かを判定し、判定結果を取得部13に出力する。或いは、判定部12は、計測部11による搬送距離計測結果に基づき、電極基体が所定の搬送距離を搬送されたか否かを判定し、判定結果を取得部13に出力することもできる。所定の時間及び所定の搬送距離は、格納部16により格納されている画像データ90のX方向に対応する大きさに応じて予め定められている。
【0064】
取得部13は、検知器4から入力した複数の検知情報を結合することにより一つの結合検知情報を取得する。例えば、取得部13は、判定部12による判定結果に基づき、所定の時間が経過したと判定された場合、或いは電極基体が所定の搬送距離を搬送されたと判定された場合に、複数の検知情報を結合することにより一つの結合検知情報を取得する。取得部13は、取得した結合検知情報を制御部15に出力する。また取得部13は、結合検知情報を取得するにあたり、搬送機構3に設けられたエンコーダ31により検出された駆動ローラ3aの回転角度情報を用いることもできる。
【0065】
補正部14は、取得部13により取得された結合検知情報に基づき、格納部16により格納されている画像データ90を補正し、補正後の画像データを制御部15に出力する。格納部16は格納手段の一例である。
【0066】
吐出制御部151は、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する制御手段の一例である。吐出制御部151は、補正部14から入力した補正後の画像データに基づいて、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。
【0067】
搬送制御部152は、搬送機構3による電極基体の搬送を制御する。照射制御部153は、光源6による樹脂前駆層への光の照射を制御する。加熱制御部154は、ヒータ7による樹脂前駆層への加熱を制御する。
【0068】
<検知器4の構成及び検知情報>
図9及び図10を参照して検知器4の構成について説明する。図9は、検知器4の構成の一例を示す平面図である。図10は、検知器4が備える光センサの構成の一例を示す側面図である。
【0069】
図9において、電極合材層2aは、電極合材層領域21から電極合材層領域23の3つの電極合材層領域を含んでいる。電極合材層領域21及び電極合材層領域23それぞれは、平面視が長方形状であり、X方向に沿って延伸する領域である。電極合材層領域22は、それぞれ平面視が長方形状である7つに分離した領域が、X方向に沿って配列している領域である。
【0070】
検知器4は、光センサ41から光センサ49の9個の光センサを含んでいる。なお、光センサ41から光センサ49は、配置されている位置、検知領域または検知領域面における光の形状が異なっている。以降で区別しない場合には、光センサ40と総称表記する。
【0071】
図10に示すように、光センサ40は、半導体レーザ等の発光素子40aと、フォトダイオード等の受光素子40bと、を含んでいる。発光素子40aの波長は、集電体2に対する吸光度と、電極合材層2aに対する吸光度と、の差が2倍以上となる波長であることが好ましい。また、基体が銅を含む集電体である場合、発光素子40aから発光される光の波長は530~630nmの範囲、すなわち600nm近傍の近赤外線であることが好ましい。
【0072】
検知領域面において発光素子40aから照射された光を受光する領域(光スポット)の形状はY方向が長手方向であり、X方向が短手方向となるようなライン形状であることが好ましい。Y方向を長手方向とすることにより、ダイコータなどのスラリーを塗布することで電極合材層を形成した場合に、形成される凹凸形状をY方向で平均化することが可能となるため、より正確に検知することができる。また、X方向を短手方向とすることによりタイミング検知誤差を小さくすることができる。なお、発光素子40aから照射された光の検知領域面における形状は略円形であってもよい。
【0073】
光センサ40は、電極基体に向けて、電極基体の性状が異なる点が光スポット内に含まれるように発光素子40aから光スポットを照射し、電極基体により反射された光を受光素子により受光する。光スポットの最大径は、集電体2と電極合材層2aの境界における、電極合材層2aの形状変化の最小周期以上に大きいことが好ましい。
【0074】
また、光センサ40は、設置角度は可変な構成であること、即ち発光素子40aから照射された光の電極基体における入射角度、または電極基体において反射された光の受光素子への入射角度は可変とできる構成であることが好ましい。例えば、吸光度の大きい集電体2および吸光度の大きい電極合材層2aを検知対象とする場合、図10において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子40aの角度と、フォトダイオード等の受光素子40bの角度と、が略同じとなるよう配置されると、発光素子40aから射出された光が正反射した光が受光素子40bに入りやすくなり、SN比が小さくなってしまう。光センサ40の設置角度を可変にすると、図10において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子40aの角度と、フォトダイオード等の受光素子40bの角度と、が異なるように配置できる。これにより、発光素子40aの正反射光(入射角と反射角が同一である光)が受光素子40bに入りづらい配置とすることができ、SN比を大きくすることができる。この結果、検知したときに大きな落差が見えるため、エッジ部分の検知精度を向上することができる。
【0075】
一方、吸光度の小さい集電体2と、吸光度の大きい電極合材層2aと、を検知対象とする場合、図10において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子40aの角度と、フォトダイオード等の受光素子40bの角度と、が異なるように配置されると、発光素子40aから射出された光が正反射した光が受光素子40bに入りにくくなるため、SN比が小さくなってしまう。光センサ40の設置角度を可変にすると、図10において電極基体に対する半導体レーザ等の発光素子40aの角度と、フォトダイオード等の受光素子40bの角度と、が略同じとなるように配置できる。これにより、発光素子40aから射出された光が正反射した光(入射角と反射角が同一である光)が受光素子40bに入りやすい構成とすることができ、SN比を大きくすることができる。この結果、検知したときに大きな落差が見えるため、エッジ部分の検知精度を向上することができる。
【0076】
以上に示す通り、光センサ40の設置角度を可変にする機構を設けることにより、集電体2、および電極合材層2aの性状による変化へ対応可能とすることが望ましい。
【0077】
光センサ40は、電極基体による反射光の光強度に応じた時系列の電気信号を出力する。レンズ40cは、発光素子40aにより発せられた光を集光照射するためのレンズである。
【0078】
図9において、9個の光センサ40を示す白丸は、光センサ40が照射する光スポットの形状が円形である場合を表している。本実施形態では、光センサ40は、電極基体上において、電極合材層2aが形成されていない領域と電極合材層2aが形成されている領域との間の境界を、性状が異なる点として検知可能に配置されている。電極合材層2aは集電体2と比較して反射率が異なるため、例えば、電極合材層2aに比べ集電体2の反射率が大きい場合、電極基体の+X方向への搬送に応じ、光スポット内において電極合材層2aが形成されていない領域に対して電極合材層2aが形成されている領域の比率が大きくなると、反射光の光強度が低くなるように変化する。
【0079】
検知器4は、電極基体の+X方向への搬送に伴う反射光の光強度に応じた時系列の電気信号を検知情報として出力する。電極印刷装置1は、検知器4による検知情報に基づき、電極基体の+X方向への搬送に応じた境界位置の変化を検知できる。境界を検出可能な位置は、液体吐出ヘッド5の位置、具体的には液体吐出ヘッド5に設けられており液体組成物を吐出するノズルの位置を基準にして、定めることができる。
【0080】
図9に示すように、光センサ41は、Y方向における電極合材層領域21の中央近傍に配置され、電極合材層領域21のX方向における境界を検知する。光センサ42は、Y方向における電極合材層領域22の中央近傍に配置され、電極合材層領域22のX方向における境界を検知する。光センサ43は、Y方向における電極合材層領域23の中央近傍に配置され、電極合材層領域23のX方向における境界を検知する。なお、中央近傍とは、電極合材層領域のY方向に沿った辺の中央より電極合材層領域のY方向に沿った辺長の10%以内の範囲である。
【0081】
光センサ44は、電極合材層領域21の+Y方向側における集電体2との境界を検知可能に配置されている。光センサ45は、電極合材層領域21の-Y方向側における集電体2との境界を検知可能に配置されている。光センサ46は、電極合材層領域23の+Y方向側における集電体2との境界を検知可能に配置されている。
【0082】
光センサ47は、光センサ44から+X方向側にずれた位置において、電極合材層領域21の+Y方向側における集電体2との境界を検知可能に配置されている。光センサ48は、光センサ45から+X方向側にずれた位置において、電極合材層領域21の-Y方向側における集電体2との境界を検知可能に配置されている。光センサ49は、光センサ46から+X方向側にずれた位置において、電極合材層領域23の+Y方向側における集電体2との境界を検知可能に配置されている。
【0083】
光センサ44から光センサ49は、電極基体の+X方向への搬送に応じたY方向における各境界位置の変化を検知する。
【0084】
光センサ44から光センサ49は、電極合材層領域と集電体との間におけるX方向に延伸する1つの境界線のみを光スポット内に含む(1つの境界線を光スポットが跨ぐ)ように配置されることが好ましい。光スポット内に複数の境界線が含まれず、1つの境界線のみが含まれていることにより、光センサ40は、境界の変化をより正確に検知することができる。Y方向における光スポットの幅は、Y方向における電極合材層同士の間隔以下、換言すると、電極合材層同士の間において電極合材層が形成されていない集電体2の幅以下であることが好ましい。これにより、光スポットは、X方向に延伸する1つの境界線のみを含むことができる。
【0085】
図11及び図12は、第1実施形態に係る検知情報の一例を示す図である。図11は、光センサ41が出力する検知情報111を示し、図12は、光センサ44が出力する検知情報112を示している。図11及び図12それぞれにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は光センサ40が出力する検知情報(ここでは電圧信号)を示している。
【0086】
図11において、期間t1においては、光センサ41により光スポットが照射された位置には電極合材層2aは形成されておらず、検知情報111が大きくなっている(反射率が高い)。期間t2においては、光センサ41により光スポットが照射された位置に電極合材層2aが形成されており、検知情報111が小さくなっている(反射率が低い)。換言すると、境界のX方向における位置に応じて、電圧信号における電圧値が変化している。
【0087】
検知器4は、光センサ41により期間t1と期間t2における検知情報111を取得部13に出力する。ここで、期間t1と期間t2を加算した時間は、所定の時間の一例である。
【0088】
取得部13は時系列に入力した検知情報111を結合することにより、結合検知情報121を取得する。補正部14は、この結合検知情報121に基づき、電極合材層領域21のX方向における境界位置を検知し、この境界位置が所望の位置からずれている場合には、ずれに応じて画像データ90を補正する。
【0089】
電極印刷装置1は、電極合材層領域22及び電極合材層領域23についても同様に、光センサ42及び光センサ43それぞれが出力する検知情報に基づき、X方向における境界を検知し、境界位置が所望の位置からずれている場合には補正部14により画像データを補正する。電極印刷装置1は、補正後の画像データに基づいて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御することにより、液体吐出ヘッド5から吐出された液体組成物が集電体2上に着弾するX方向における位置を制御できる。
【0090】
図12において、期間t3では、光センサ44により照射された光スポットの一部が電極合材層2aを照射し、光スポットの他の部分が集電体2を照射している。そのため、光スポットの全部が集電体2を照射する場合と比較して検知情報112が小さくなっている。期間t4では電極合材層2aの+Y方向側における境界が+Y方向側に徐々にずれ、集電体2を照射する光スポットの面積が徐々に減ることにより検知情報112が徐々に小さく(反射率が低く)なっている。換言すると、境界のY方向における位置に応じて、電圧信号における電圧値が減少している。
【0091】
検知器4は、期間t3と期間t4における検知情報112を取得部13に出力し、取得部13は時系列に入力した検知情報112を結合することにより、結合検知情報122を取得する。期間t3と期間t4とを加算した時間は、所定の時間の一例である。
【0092】
補正部14は、結合検知情報122に基づき、電極合材層領域21の+Y方向側の境界の位置情報を取得し、境界位置の変化に応じて画像データ90を補正する。電極印刷装置1は、同様に、光センサ48及び光センサ49それぞれが出力する検知情報に基づき、電極合材層領域22及び電極合材層領域23それぞれのY方向における境界位置が変化する場合には、補正部14により画像データを補正する。電極印刷装置1は、補正後の画像データに基づき、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御し、液体吐出ヘッド5から吐出された液体組成物が電極基体上に着弾するY方向における位置を制御できる。
【0093】
電極印刷装置1は、Y方向における電極合材層2aの位置ずれだけでなく、Y方向における電極合材層2aの幅(大きさ)の変化も検知できる。例えば、電極基体の+X方向への搬送に応じて、電極合材層領域21の+Y方向側の境界位置が+Y方向側に徐々にずれており(電圧値が徐々に減少)、電極合材層領域21の-Y方向側の境界位置が-Y方向側に徐々にずれている(電圧値が徐々に減少)場合には、電極印刷装置1は、Y方向における電極合材層領域21の幅が徐々に大きくなっていることを検知できる。
【0094】
電極基体の+X方向への搬送に応じた電圧値の変化と、Y方向において境界位置がずれる方向と、の関係は、光センサ40の配置位置に応じて予め対応づけられ、格納部16に対応情報が格納されている。電極印刷装置1は、電圧値の変化に基づき、格納部16を参照してY方向において境界位置がずれる方向を検知し、Y方向における幅の変化を検知できる。
【0095】
電極印刷装置1は、この幅の変化に応じて補正部14により画像データを補正する。電極印刷装置1は、補正後の画像データに基づき、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御することにより、液体吐出ヘッド5から吐出された液体組成物が電極基体上に着弾する位置を制御できる。
【0096】
電極印刷装置1は、集電体2と電極合材層2aとの境界等の性状が異なる点を、Y方向に沿って少なくとも2つ、検知器4により検知することによって、1つの電極合材層2aにおけるY方向における幅の変化を検知することができる。
【0097】
<電極印刷装置1の動作例>
図13は、電極印刷装置1の動作の一例を示すフローチャートである。電極印刷装置1は、操作部8を用いたユーザによる電極印刷開始の操作入力の受付をトリガーにして図13に示す動作を開始する。
【0098】
まず、ステップS131において、電極印刷装置1は、搬送制御部152により搬送機構3を駆動させることによって、電極基体を+X方向に向けて搬送開始する。この際の電極基体の搬送速度は、例えば、0.1[m/min]から数100[m/min]の範囲内である。電極印刷装置1は、電極基体を停止させるまで、電極基体を搬送機構3により搬送し続ける。
【0099】
続いて、ステップS132において、電極印刷装置1は、計測部11により、CPU101のクロックをカウント開始することによって時間計測を開始する。
【0100】
続いて、ステップS133において、電極印刷装置1は、取得部13により、集電体2と電極合材層2aとの境界の検知器4による検知情報を入力開始し、入力した複数の検知情報を格納部16に一時保持させる。電極印刷装置1は、検知器4による検知情報の入力を停止させるまで該検知情報を入力し続ける。
【0101】
続いて、ステップS134において、電極印刷装置1は、判定部12により、計測部11による時間計測結果に基づき、所定の時間が経過したか否かを判定する。
【0102】
ステップS134において、所定の時間が経過していないと判定された場合には(ステップS134、No)、電極印刷装置1は、ステップS133の動作を再度行う。
【0103】
一方、ステップS134において、所定の時間が経過したと判定された場合には(ステップS134、Yes)、ステップS135において、電極印刷装置1は、取得部13により、格納部16に一時保持された複数の検知情報を一つに結合して結合検知情報を取得する。
【0104】
続いて、ステップS136において、電極印刷装置1は、計測部11による時間計測結果をリセットする。なお、ステップS135とステップS136の動作は、順序を入れ替えてもよいし、並行に行われてもよい。
【0105】
続いて、ステップS137において、電極印刷装置1は、補正部14により、格納部16に格納されている画像データ90を読み出し、取得部13により取得された結合検知情報に基づいて、読み出した画像データ90を補正する。その後、補正部14は、補正後の画像データを制御部15に出力すると共に、格納部16に一時保持された複数の検知情報を消去する。
【0106】
続いて、ステップS138において、電極印刷装置1は、電極基体上に形成されている電極合材層2aが液体吐出ヘッド5に向き合う位置に到達したタイミングにおいて、補正後の画像データに基づき、吐出制御部151により液体吐出ヘッド5を駆動させることによって、液体組成物を吐出する。これにより、電極合材層2a上に液体組成物が塗布され、液体組成物層が形成される。
【0107】
続いて、ステップS139において、電極印刷装置1は、液体組成物層が形成された電極合材層2aが光源6に向き合う位置に到達したタイミングにおいて、照射制御部153により光源6を駆動させることによって、液体組成物層に向けて光を照射し、樹脂前駆層を硬化させる。なお、液体組成物層表面の位置ごとでの照射光強度は、使用する光源の波長等に応じて異なるが、数[mW/cm2]から1[KW/cm2]の範囲内である。液体組成物層への光の照射時間は、液体組成物の感度や電極基体の搬送速度等に応じて適宜設定することができる。
【0108】
続いて、ステップS140において、電極印刷装置1は、硬化状態にある樹脂前駆層を担持した電極合材層2aがヒータ7に向き合う位置又はその近傍に到達したタイミングにおいて、加熱制御部154によりヒータ7を駆動させる。そして電極印刷装置1は、電極合材層2aに形成された樹脂前駆層を加熱して、樹脂前駆層内での架橋反応を促進する。なお、電極印刷装置1においては、ヒータ7による加熱時間は数[秒]から数10[秒]程度と比較的短い。従って、ヒータ7により樹脂前駆層の硬化をほぼ完全に進行させる場合には、電極印刷装置1は、最高到達温度が例えば200[℃]程度以下、好ましくは80[℃]から200[℃]或いは60[℃]から180[℃]程度の比較的高い温度となるように加熱を行なう。
【0109】
続いて、ステップS141において、電極印刷装置1は、処理部100により、電極印刷を終了するか否かを判定する。例えば、操作部8を用いてユーザにより電極印刷終了を示す操作入力がなされた場合に、電極印刷装置1は、電極印刷を終了すると判定する。
【0110】
ステップS141において、終了しないと判定された場合には(ステップS141、No)、電極印刷装置1は、ステップS132以降の動作を再度行う。
【0111】
一方、ステップS141において、終了すると判定された場合には(ステップS141、Yes)、ステップS142において、電極印刷装置1は、取得部13により、検知器4による検知情報の入力を停止する。
【0112】
続いて、ステップS143において、電極印刷装置1は、搬送制御部152により搬送機構3を停止させることによって、電極基体の搬送を停止する。
【0113】
このようにして、電極印刷装置1は、集電体2上に形成されている電極合材層2aを覆うように樹脂層2bを形成することができる。
【0114】
その後、電極基体は巻き取られ、或いはストッカ(薄膜電極を収納する容器)へと搬送される。なお、更に得られた薄膜電極をプレスする手段としてのプレスロールや、薄膜電極を切り分けるスリット刃やレーザ等のカット機構を同時に具備してもよい。
【0115】
実施形態に係る電極印刷装置1においては、異なる液体組成物(例えば樹脂層及び無機層の両方の液体組成物)を吐出する2つ以上の液体吐出ヘッドを設けて、多層同時印字や着弾点での液体組成物同士の混合に適用することもできる。
【0116】
また電極印刷装置1においては、液体吐出ヘッド5に対して電極基体を相対移動させるために、所望の厚さの樹脂層又は無機層を形成するために電極基体を搬送する搬送機構3を設けて電極基体を移動させているが、液体吐出ヘッド5を-X方向に移動させてもよい。また、電極基体と液体吐出ヘッド5の双方を移動させてもよい。
【0117】
図14は、電極印刷装置1による樹脂層2bの形成結果を例示する図である。図14の見方は図4と同様である。図14において、破線で示した樹脂層2bを構成する複数の矩形領域20は、1つの画像データに基づき形成される樹脂層2bの領域を示している。電極合材層2aのY方向における幅の変化に応じて、矩形領域20のY方向における幅が補正され、変化している。これにより、非被覆領域をなくし、電極合材層2aの全体が樹脂層2bにより覆われている。
【0118】
<電極印刷装置1の作用効果>
以上説明したように、電極印刷装置1(電極製造装置、液体吐出装置)は、X方向(所定の方向)に搬送される電極基体(液体吐出対象)上に液体組成物(液体)を吐出するものである。電極印刷装置1は、検知器4(検知手段)と、X方向における検知器4の下流側に設けられた液体吐出ヘッド5(液体吐出手段)と、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する制御部15(制御手段)と、を備える。電極基体は、集電体2上において、集電体2と電極合材層2aとの境界(性状が異なる点)をY方向(所定の方向と交差する方向)に沿って複数有し、検知器4は、少なくとも境界を時系列に検知した複数の検知情報112を出力し、制御部15は、複数の検知情報112が結合された結合検知情報122に基づいて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。
【0119】
+X方向への電極基体の搬送に応じて、集電体2上における電極合材層2aのY方向における幅が変化すると、Y方向における電極合材層2aの複数の境界を検知器4により検知された検知情報112が、該幅の変化に応じて変化する。電極印刷装置1は、このような時系列の幅の変化を含む結合検知情報122に応じて画像データを補正することにより、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御できる。その結果、液体吐出ヘッド5による吐出を電極基体の変化に応じて制御することができる。
【0120】
また本実施形態では、検知器4は、所定の時間内、又は電極基体が所定の搬送距離を搬送されている間の何れか一方において、時系列に検知した複数の検知情報112を出力する。これにより、X方向に対応する画像データの大きさ等に基づく所望の取得条件に従って、所定の時系列検知情報を取得でき、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御することができる。
【0121】
また本実施形態では、電極基体の性状には、電極基体の厚み、色及び反射率、並びに電極基体に形成された集電体2の厚み、色及び反射率の少なくとも1つが含まれる。これにより、+X方向への電極基体の搬送に応じた電極合材層2aのY方向における幅の変化を検知することができる。
【0122】
また本実施形態では、検知器4の光センサ40は、電極基体上に光スポットを照射する発光素子40aと、光スポットの電極基体による反射光を受光して、反射光の光強度に応じた電気信号を出力する受光素子40bと、を含む。
【0123】
発光素子40aは、集電体2と電極合材層2aとの境界が光スポット内に含まれるように光スポットを照射する。複数の検知情報は、受光素子40bにより時系列に出力される電圧信号(電気信号)である。制御部15は、この電圧信号における電圧値の増減に応じて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。本実施形態では、このような簡単な構成により、集電体2と電極合材層2aとの境界位置の変化を検知し、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御することができる。なお、電気信号は電圧信号に限らず、電流信号であってもよい。つまり制御部15は、受光素子により時系列に出力される電流信号における電流値の増減に応じて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御することもできる。
【0124】
また本実施形態では、結合検知情報は、集電体2と電極合材層2aとの境界の、Y方向における位置情報と、X方向における位置情報と、を含む。これにより、集電体2上に形成されている電極合材層2aのX方向及びY方向それぞれにおける変化を検知可能になる。
【0125】
また本実施形態では、電極基体は、集電体2上に予め形成された所定のパターンを有する電極合材層2a(第1の膜領域)を含み、制御部15は、結合検知情報122に基づき液体吐出ヘッド5により吐出された液体組成物によって、電極合材層2aを覆う樹脂層2b(第2の膜領域)を形成するように、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。集電体2上に形成されている電極合材層2aのパターンに沿って、電極合材層2aを樹脂層2bにより覆うことができるため、液体組成物により形成される樹脂層2bの絶縁性等の機能を好適に発揮させることができる。そして、電極基体から導電性の領域を切り出して使用する場合等においても、電極基体の短絡等の不具合を防ぎつつ、電極基体の領域を有効活用することができる。
【0126】
また本実施形態では、制御部15は、電極基体上において、X方向及びY方向それぞれに沿って所定の長さ分をはみ出しつつ電極合材層2aを覆う樹脂層2bを形成するように、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。所定の長さは1.0[mm]以下であることが好ましい。具体的には、図3におけるはみ出し幅Pが所定の長さに対応し、はみ出し幅Pは1.0[mm]以下であることが好ましい。
【0127】
電極印刷装置1は、はみ出し幅Pを1.0[mm]以下にすることにより、電極合材層2aを樹脂層2bにより確実に覆い、液体組成物によって形成される樹脂層2bの絶縁性等の機能を、より好適に発揮させることができる。
【0128】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る電極印刷装置1aについて説明する。なお、第1実施形態と同じ構成部には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。この点は、以降において説明する他の実施形態においても同様である。
【0129】
図15は、電極印刷装置1aの構成の一例を示す平面図である。電極印刷装置1aは、検知器4aを備えている。また検知器4aは、光センサ41aと、インラインセンサ41bと、を備えている。光センサ41aは、3つの光センサの総称表記である。
【0130】
光センサ41aの構成は、第1実施形態における光センサ40の構成と同じである。3つの光センサ41aは、電極合材層領域21から電極合材層領域23の3つの電極合材層領域と対をなすように、それぞれのY方向における中央近傍に配置されており、各電極合材層領域のX方向における位置を検知する。なお、中央近傍とは、電極合材層領域のY方向に沿った辺の中央より電極合材層領域のY方向に沿った辺長の10%以内の範囲である。
【0131】
インラインセンサ41bは、Y方向に沿って配列している複数の画素からなるラインセンサを含んでいる。ラインセンサの各画素は、受光した光強度に応じた電圧信号を出力する。インラインセンサ41bは、電極基体に撮像用の光を照射する光源を必要に応じて備えてもよい。
【0132】
図16及び図17は、第2実施形態に係る検知情報の一例を示す図である。図16は、光センサ41aが出力する検知情報111aを示している。図16において、横軸は時間を示し、縦軸は光センサ41aが出力する検知情報(ここでは電圧)を示している。
【0133】
検知器4aは、光センサ41aにより期間t1aと期間t2aにおける検知情報111aを取得部13に出力する。取得部13は時系列に入力した検知情報111aを結合することにより、結合検知情報121aを取得する。補正部14は、結合検知情報121aに基づき、電極合材層領域21のX方向における位置を検知し、この位置が所望の位置からずれている場合には、ずれに応じて画像データ90を補正する。電極印刷装置1aは、補正後の画像データに基づいて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御することによって、液体吐出ヘッド5から吐出された液体組成物が電極基体上に着弾するX方向における位置を制御できる。
【0134】
図17は、インラインセンサ41bが出力する検知情報112aを示している。図17において、横軸は時間を示し、縦軸はY方向における位置(画素位置)を示している。検知情報112aは、インラインセンサ41bにより撮像されたライン画像である。
【0135】
X方向におけるインラインセンサ41bと電極基体との相対位置は、時間に応じて変化するため、横軸はX方向における位置に対応する。従って、検知器4aにより時系列に出力された検知情報112aが取得部13により結合された結合検知情報122aは、電極基体を+Z方向から撮影した2次元画像に対応する。
【0136】
電極基体が+X方向に搬送されることに応じて、集電体2上に形成されている電極合材層2aの位置又は大きさ等が変化すると、この変化に応じた電極合材層2aの画像が結合検知情報122aにより得られる。補正部14は、結合検知情報122aに基づき、電極合材層2aのY方向における位置又は大きさ等を検知し、この位置が所望の位置からずれている場合には、ずれに応じて画像データ90を補正する。電極印刷装置1aは、補正後の画像データに基づいて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御することにより、液体吐出ヘッド5から吐出された液体組成物が電極基体上に着弾するY方向における位置を制御できる。
【0137】
このように電極印刷装置1aは、検知器4aがインラインセンサ41bを備えることにより、Y方向における電極合材層2aの位置又は大きさ等をより高精度に検知できる。そして、液体吐出ヘッド5から吐出された液体組成物が電極基体上に着弾するY方向における位置を、より正確に制御できる。なお、これ以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0138】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る電極印刷装置1bについて説明する。
【0139】
図18及び図19を参照して、電極印刷装置1bの構成について説明する。図18及び図19は、電極印刷装置1bの構成の一例を示す図である。図18は電極印刷装置1bの側面図、図19は電極印刷装置1bの平面図である。
【0140】
図18及び図19に示すように、電極印刷装置1bは、+X方向における上流側から下流側に向けて、検知器4a、液体吐出ヘッド5、光源6、ヒータ7、検知器4aA、液体吐出ヘッド5A、光源6A、ヒータ7A及び検知器4aA等をこの順で備えている。また電極印刷装置1bは、処理部100bを備えている。
【0141】
検知器4aAは、+X方向における液体吐出ヘッド5の下流側に設けられた下流側検知手段の一例である。検知器4aAは、電極基体上において、性状が異なる点を時系列に検知した複数の下流側検知情報を出力する。
【0142】
電極基体が検知器4aAに向き合う位置においては、集電体2上に形成されている電極合材層2aの上には樹脂層2bが形成されている。検知器4aAは、平面視において、性状が異なる点として樹脂層2bと集電体2との境界位置を検知可能に配置されている。
【0143】
検知器4aAによる下流側検知情報は、電極基体上に形成された樹脂層2bの位置又は大きさや、樹脂層2bが部分的に形成されていない領域である欠陥領域等を検知するために使用される。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、欠陥領域とは、周囲とのZ方向における膜厚の差が1.0%以上となる領域である。電極印刷装置1bは、検知結果に応じて、+X方向における検知器4aAの上流側に配置されている液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御したり、+X方向における検知器4aAの下流側に配置されている液体吐出ヘッド5Aによる吐出条件を制御したりすることができる。
【0144】
液体吐出ヘッド5Aは、+X方向における液体吐出ヘッド5Aの上流側において樹脂層2bが形成された電極基体上に、連続して電極合材層又は樹脂層を形成するために液体組成物を吐出する。
【0145】
この液体吐出ヘッド5Aに代えて、間欠機能を有するダイヘッドや、高速ディスペンサ、ジェットノズル、スプレーノズル、或いは上記と同様な液体吐出ヘッド等を用いて、液体組成物を塗布してもよい。
【0146】
液体吐出ヘッド5Aは、検知器4aAによる下流側検知情報に基づいて取得される欠陥領域情報に基づき、電極基体上の欠陥領域に電極合材層又は樹脂層を形成することができる。
【0147】
光源6Aは、液体吐出ヘッド5Aにより電極基体上に付与された追加液体組成物に光を照射して硬化させる。ヒータ7Aは追加液体組成物を加熱して乾燥させる。
【0148】
<処理部100bの機能構成例>
図20は、処理部100bの機能構成の一例を示すブロック図である。処理部100bは、取得部13bと、補正部14bと、制御部15bと、を備えている。また制御部15bは、吐出制御部151bを備えている。
【0149】
取得部13bは、検知器4aから出力された複数の検知情報を結合して一つの結合検知情報を取得すると共に、検知器4aAから出力された複数の下流側検知情報を結合して一つの下流側結合検知情報を取得する。
【0150】
補正部14bは、取得部13bにより取得された結合検知情報及び下流側結合検知情報それぞれに基づいて、液体吐出ヘッド5により樹脂層2bを形成するための画像データ、及び液体吐出ヘッド5Aにより樹脂層又は電極合材層を形成するための画像データを補正する。
【0151】
吐出制御部151bは、結合検知情報に基づいて液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御すると共に、下流側結合検知情報に基づいて液体吐出ヘッド5及び液体吐出ヘッド5Aそれぞれによる吐出条件を制御することができる。
【0152】
以上説明したように、電極印刷装置1bは、+X方向における液体吐出ヘッド5の下流側に検知器4aA(下流側検知手段)をさらに有し、検知器4aAは、電極基体上において、性状が異なる点を時系列に検知した複数の下流側検知情報を出力する。
【0153】
制御部15bは、複数の下流側検知情報が結合された一つの下流側結合検知情報に基づいて液体吐出ヘッド5及び液体吐出ヘッド5Aそれぞれによる吐出条件を制御する。これにより、電極基体上に形成された樹脂層2bの位置又は大きさ等が所望のものからずれている場合に、該ずれをフィードバックすることにより、以降における樹脂層2bの形成を補正することができる。また+X方向における上流側で形成された樹脂層2bに欠陥領域が含まれている場合には、下流側において液体吐出ヘッド5Aにより追加液体組成物を吐出して付与することにより、欠陥領域を低減或いはなくすことができる。
【0154】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る電極印刷装置1cについて説明する。
【0155】
図21は、電極印刷装置1cが備える処理部100cの機能構成の一例を示すブロック図である。処理部100cは、生成部17と、格納部16cと、補正部14cと、を備えている。
【0156】
生成部17は、電極印刷装置1cにより、+X方向に搬送される電極基体上に液体組成物を吐出する動作を行う前において、検知器4による複数の検知情報が結合された一つの結合検知情報に基づいて、Y方向における幅が異なる複数の画像データを生成する生成手段の一例である。
【0157】
格納部16cは、生成部17により生成された複数の画像データである画像データ91、画像データ92及び画像データ93と、生成部17により複数の画像データが生成される際に用いられた結合検知情報と、を対応付けて格納する。
【0158】
補正部14cは、取得部13により取得された結合検知情報に基づいて、格納部16cを参照して結合検知情報に対応付けられた画像データを取得し、制御部15cに出力する。
【0159】
制御部15cは、補正部14cから入力した画像データに応じて、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。
【0160】
図22は、複数の画像データである画像データ91、画像データ92及び画像データ93の一例を示す図である。幅L1はY方向における画像データ91の幅であり、幅L2はY方向における画像データ92の幅であり、幅L3はY方向における画像データ93の幅である。図22に示すように、幅L1、幅L2及び幅L3は異なっている。
【0161】
上述した実施形態における補正部14及び補正部14bは、取得部13により取得された結合検知情報に基づいて、Y方向における幅が適正になるように、基準とする画像データを補正する処理を行う。これに対し、補正部14cは、取得部13により取得された結合検知情報に基づいて、格納部16cに予め格納されている画像データ91、画像データ92及び画像データ93のうちの何れか1つを選択することにより、画像データのY方向における幅を適正化する。これにより、電極印刷装置1cは、画像データのY方向における幅を適正化するための処理を簡略化し、また処理を高速化することができる。
【0162】
画像データ91、画像データ92及び画像データ93は、電極印刷装置1cが電極基体に樹脂層2bを形成する動作を行う前に先立って、生成部17により生成され、格納部16cにより格納される。
【0163】
図23は、電極印刷装置1cによる複数の画像データの生成動作の一例を示すフローチャートである。電極印刷装置1cは、ユーザによる操作部8を用いた操作入力の受付をトリガーにして図23に示す動作を開始する。
【0164】
電極印刷装置1cは、電極印刷装置1cによる電極基体への樹脂層2bの形成を行う前の時期であれば、特段の制限なく任意の時期に、複数の画像データを生成することができる。但し、生成した画像データを適切に機能させる観点では、電極印刷装置1cは、電極印刷装置1cによる電極基体への樹脂層2bの形成を行う時期に近い時期に、複数の画像データを生成することが好ましい。或いは、電極印刷装置1cの設置場所の変更等により、電極印刷装置1の動作環境が変更された後に、電極印刷装置1cは、複数の画像データを生成することが好ましい。また電極印刷装置1は、毎朝等の定期的な時期に複数の画像データを生成してもよい。
【0165】
まず、ステップS231において、電極印刷装置1cは、搬送制御部152により搬送機構3を駆動させることによって、電極基体を+X方向に向けて搬送開始する。この際の電極基体の搬送速度は、電極印刷装置1cにより電極印刷を行う場合と同じ搬送速度であることが好ましい。電極印刷装置1cは、電極基体を停止させるまで、電極基体を搬送機構3により搬送し続ける。
【0166】
続いて、ステップS232において、電極印刷装置1cは、計測部11により、CPU101のクロックをカウント開始することによって時間計測を開始する。
【0167】
続いて、ステップS233において、電極印刷装置1cは、取得部13により、集電体2と電極合材層2aとの境界の検知器4による検知情報を入力開始し、入力した複数の検知情報を格納部16cに一時保持させる。電極印刷装置1cは、検知器4による検知情報の入力を停止させるまで該検知情報を入力し続ける。
【0168】
続いて、ステップS234において、電極印刷装置1cは、判定部12により、計測部11による時間計測結果に基づき、所定の時間が経過したか否かを判定する。
【0169】
ステップS234において、所定の時間が経過していないと判定された場合には(ステップS234、No)、電極印刷装置1cは、ステップS233の動作を再度行う。
【0170】
一方、ステップS234において、所定の時間が経過したと判定された場合には(ステップS234、Yes)、ステップS235において、電極印刷装置1cは、取得部13により、格納部16cに一時保持された複数の検知情報を一つに結合して結合検知情報を取得する。
【0171】
続いて、ステップS236において、電極印刷装置1cは、計測部11による時間計測結果をリセットする。なお、ステップS235とステップS236の動作は、順序を入れ替えてもよいし、並行に行われてもよい。
【0172】
続いて、ステップS237において、電極印刷装置1cは、補正部14cにより、取得部13により取得された結合検知情報に基づいて、Y方向における幅を適正化した画像データを生成する。その後、補正部14cは、生成した画像データと、結合検知情報と、を格納部16cに出力すると共に、格納部16cに一時保持された複数の検知情報を消去する。
【0173】
なお、補正部14cは、格納部16cに予め格納された基準となる画像データを読み出し、取得部13により取得された結合検知情報に基づいて、基準となる画像データのY方向における幅を補正することにより、Y方向における幅を適正化した画像データを生成してもよい。
【0174】
続いて、ステップS238において、電極印刷装置1cは、格納部16cにより、生成部17によって生成された画像データと、結合検知情報と、を対応付けて格納する。
【0175】
続いて、ステップS239において、電極印刷装置1cは、処理部100cにより、電極印刷を終了するか否かを判定する。例えば、操作部8を用いてユーザにより電極印刷終了を示す操作入力がなされた場合に、電極印刷装置1cは、電極印刷を終了すると判定する。
【0176】
ステップS239において、終了しないと判定された場合には(ステップS239、No)、電極印刷装置1cは、ステップS232以降の動作を再度行う。
【0177】
一方、ステップS239において、終了すると判定された場合には(ステップS239、Yes)、ステップS240において、電極印刷装置1cは、取得部13により、検知器4による検知情報の入力を停止する。
【0178】
続いて、ステップS241において、電極印刷装置1cは、搬送制御部152により搬送機構3を停止させることによって、電極基体の搬送を停止する。
【0179】
このようにして、電極印刷装置1cは、生成部17により画像データを生成し、生成された画像データを格納部16cにより格納することができる。
【0180】
以上説明したように、電極印刷装置1cは、Y方向における幅が異なる複数の画像データを、結合検知情報に対応付けて格納する格納部16cを有する。制御部15は、検知器4が出力する複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づき、格納部16cを参照して取得される画像データに応じて、液体吐出ヘッド5による吐出条件を制御する。
【0181】
電極印刷装置1cは、検知器4により検知された複数の検知情報が結合された一つの結合検知情報に基づいて、複数の画像データを生成する生成部17(生成手段)を備える。生成部17は、電極印刷装置1cにより+X方向に搬送される電極基体上に液体組成物を吐出する動作を行う前に、複数の画像データを生成する。格納部16c(格納手段)は、生成部17により生成された複数の画像データを格納する。
【0182】
この構成により、電極印刷の際に画像データのY方向における幅を適正化する処理を実行しなくてよいため、電極印刷装置1cは、処理を簡略化及び高速化することができる。
【0183】
X方向における検知器4と液体吐出ヘッド5との間の設置距離M(図5参照)を短くするほど、電極印刷装置1cを小型化できる。設置距離Mを短くするためには、検知器4による検知後に補正処理を実行し、液体吐出ヘッド5により液体組成物を吐出するまでの処理時間を短くすることが求められる。本実施形態では、処理を簡略化及び高速化することにより、X方向における検知器4と液体吐出ヘッド5との距離を短くできるため、電極印刷装置1cを小型化することができる。
【0184】
なお、本実施形態に係る電極印刷装置は、必要に応じて液体吐出ヘッド5の前段または後段に各種工程を実行する装置を備えることで蓄電デバイス製造装置としてもよい。
【0185】
上記の蓄電デバイス製造装置は、電極基体に液体を付与する電極印刷装置1に加え、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体をセル化に向けて加工する電極基体加工部などを含む。
【0186】
<電極基体加工部>
電極基体加工部は、液体吐出ヘッド5よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する。電極基体加工部は、裁断、折り畳み、および貼り合わせの少なくとも1つを実施してもよい。電極基体加工部は、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を裁断し、電極基体積層体を作製することができる。電極基体加工部は、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を巻回または積層することができる。絶縁層が融点またはガラス転移点を有する材料を含む場合、電極基体加工部では、例えば、一の電極基体積層体と他の電極基体積層体は、加熱により少なくとも一部が接着される。
【0187】
電極基体加工部は、例えば、電極基体加工装置を有し、樹脂層又は無機層が形成された電極基体の裁断やつづら折り、積層や巻回、積層や巻回後の電極基体間の熱接着等を目的の電池形態に応じて実施する。電極基体加工部において樹脂層又は無機層が形成された電極基体の加工が行われるときは、加工後の電極基体にシワ等のダメージを低減させることが可能となる理由から、電極基体の搬送速度は比較的遅いことが好ましい。
【0188】
電極基体加工部によって行われる電極基体加工工程は、例えば、液体吐出ヘッド5よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する工程である。電極基体加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、および貼り合わせ工程の少なくとも1つを含んでもよい。
【0189】
ここで、表1は、設置距離Mと、電極基体上に形成された1つの樹脂層2bの位置ずれ量と、の関係を調べた実験結果の一例である。
【0190】
【表1】
【0191】
設置距離Mが3000.0[mm]である場合においては、Y方向における樹脂層2bの幅に1.0[mm]の変動があった。設置距離Mが1000.0[mm]である場合においては、0.3[mm]のスキュー変動が生じた。なお、スキュー変動とは、電極基体の表面内での樹脂層2bの傾き(回転)に伴う位置ずれを意味する。
【0192】
このように、幅変動及びスキュー変動等の位置ずれ量は、設置距離Mに応じて異なる。設置距離Mが300.0[mm]である場合には、幅変動とスキュー変動との合計値(以下、合計値という)が0.24[mm]であった。設置距離Mが1000.0[mm]である場合には、合計値が0.8[mm]であった。設置距離Mが3000.0[mm]である場合には、合計値が2.4[mm]であった。
【0193】
以上の実験結果から、例えば、電極合材層2aに対する樹脂層2bのはみ出し幅Pの仕様値を1.0[mm]以内とした場合に、この仕様値の1/2(0.5[mm])以下に合計値を抑えるには、設置距離は300.0[mm]以内とすると好適であることが分かった。
【0194】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0195】
実施形態では、液体吐出手段が画像データに基づいて液体を吐出する構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、液体吐出手段は、検知器による検知情報に基づいて液体を吐出する構成であってもよい。この場合には、図21に示した機能構成において、生成部17は、電極印刷装置1cにより電極基体に樹脂層2bが形成される際に、取得部13から入力した結合検知情報に基づいて、電極合材層2aの変化に応じた画像データをリアルタイムに生成する。そして、生成部17は生成した画像データを制御部15に出力する。制御部15は、生成部17にから入力した画像データに基づき液体組成物を吐出することによって、電極基体上に樹脂層2bを形成することができる。
【0196】
また液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する一例として、電極基体に対して液体吐出手段から直接液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する構成を例示したが、図24に示した構成のように、電極基体に対して間接的に液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する構成であってもよい。電極基体に間接的に液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する構成としては、例えば、転写工程を介してインクを基材に付与する方式(転写方式)がある。図24は、転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図である。
【0197】
図24は、転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図24(a)は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図24(b)は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示している。
【0198】
図24(a)に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0199】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
【0200】
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体インクを吐出し、中間転写体4001上にインク層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0201】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101によるインクの吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、インクの粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上のインク層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。インク層を加熱することで、インク層中の樹脂が溶融し、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
【0202】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上のインク層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0203】
図24(b)に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0204】
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101からインク滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上にインク層を形成する。中間転写ベルト4006に形成されたインク層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、インク層は中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0205】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化したインク層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0206】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0207】
<ヘッドの構成>
次に、図25図27を用いて液体吐出ヘッドの構成を説明する。図25は液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図、図26は液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図、図27は液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
【0208】
ヘッド101は、ノズル板10、流路板(個別流路部材)20、振動板部材30、共通流路部材50、ダンパ部材60、フレーム部材80および駆動回路104を実装した基板(フレキシブル配線基板)105などを備える。
【0209】
ノズル板10は、インクを吐出する複数のノズル37を備え、複数のノズル37は、ノズル板短手方向およびこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
【0210】
流路板20には、複数のノズル37に各々連通する複数の液室(個別圧力室)26と、複数の液室26に各々通じる複数の供給流路(個別供給流路)27および回収流路(個別回収流路)28とが設けられている。なお、以降の説明では便宜上、1つの液室26と、当該液室26に通じる供給流路27および回収流路28とを併せて個別流路25とも称する。
【0211】
振動板部材30は、液室26の変形が可能な壁面である振動板35を形成し、振動板35には圧電素子36が一体に設けられている。振動板部材30には、供給流路27に通じる供給側開口32と、回収流路28に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子36は、振動板35を変形させて液室26内のインクを加圧する。
【0212】
なお、流路板20と振動板部材30は、別部材であることに限定されるものではない。例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を使用して流路板20および振動板部材30を同一部材で一体に形成することも可能である。
【0213】
つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を流路板20とし、シリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜で振動板35を形成できる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は流路板20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0214】
共通流路部材50は、2以上の供給流路27に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の回収流路28に通じる複数の共通回収流路支流53とを、ノズル板長手方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材50には、供給流路27の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、回収流路28の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。
【0215】
共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1または複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1または複数の共通回収流路本流57を形成している。
【0216】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する回収側ダンパ63を備える。共通供給流路支流52および共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62または回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜または無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0217】
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面には、流路内を流れるインクに対して内壁面を保護するための保護膜が形成されている。例えば、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面は、Si基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0218】
フレーム部材80は、その上部に供給ポート81と排出ポート82を備える。供給ポート81は共通供給流路本流56にインクを供給し、排出ポート82は共通回収流路本流57より排出されるインクを排出する。
【0219】
上述のようにヘッド101は、インクを吐出するノズル37、ノズル27に通じる液室26、液室26にインクを供給する供給流路27、および液室26からインクを回収する回収流路28を有する。ここで、ヘッド101は「液体吐出ヘッド」の一例、液室26は「液室」の一例、供給流路27は「供給流路」の一例、回収流路28は「回収流路」の一例である。
【0220】
なお、ヘッド101の構成として、ノズル板10のノズル面(ノズル37が形成された面)の形状は長方形に限らず、台形、ひし形、平行四辺形など、長方形以外の形状であってもよい。その一例を、図28および図29を用いて説明する。図28は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図、図29は、図28のヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。
【0221】
ヘッド1Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1Rの液体吐出部101Rおよびノズル板10Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10Rを有し、ノズル板10Rには複数のノズル37Rが規則的に二次元状に配列されている。ノズル37Rの配列は、例えば、N個のノズル37Rによって1列のノズル列37Nが構成され、このノズル列37Nを、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
【0222】
上記構成のヘッド1Rは、図29に示すように複数のヘッド1Ra,1Rbをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、これにより、使用する基材の記録幅に合わせて、所望の長さのラインヘッドを得ることができる。
【0223】
実施形態に係る液体吐出装置は、電極印刷装置に限定されるものではない。例えば、実施形態に係る液体吐出装置は、用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置等であってもよい。
【0224】
実施形態は、電極製造方法も含む。例えば、電極製造方法は、液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置による電極製造方法であって、前記電極製造装置が、検知手段により検知し、制御手段により、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段による吐出条件を制御し、前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する。このような電極製造方法により、上述した電極製造装置(電極印刷装置)と同様の作用効果を得ることができる。
【0225】
実施形態は、プログラムも含む。例えば、プログラムは、液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置に処理を実行させるプログラムであって、検知手段により検知し、制御手段により、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段による吐出条件を制御し、前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する処理を前記電極製造装置に実行させる。このようなプログラムにより、上述した電極製造装置(電極印刷装置)と同様の作用効果を得ることができる。
【0226】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0227】
機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0228】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0229】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置であって、検知手段と、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段と、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する制御手段と、を備え、前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する電極製造装置である。
<2> 前記検知手段は、所定の時間内、又は前記電極基体が所定の搬送距離を搬送されている間の何れか一方において、時系列に検知した前記複数の検知情報を出力する前記<1>に記載の電極製造装置である。
<3> 前記所定の方向と交差する方向は、前記所定の方向と直交する方向である前記<1>又は前記<2>に記載の電極製造装置である。
<4> 前記性状には、前記電極基体の厚み、色及び反射率の少なくとも1つが含まれる前記<1>乃至前記<3>の何れかに記載の電極製造装置である。
<5> 前記検知手段は、前記電極基体上に光スポットを照射する発光素子と、前記光スポットの前記電極基体による反射光を受光して、前記反射光の光強度に応じた電気信号を出力する受光素子と、を含み、前記発光素子は、前記光スポット内に前記点が含まれるように前記光スポットを照射し、前記複数の検知情報は、前記受光素子により時系列に出力される前記電気信号であり、前記制御手段は、前記電気信号における電圧値又は電流値の少なくとも1つの増減に応じて前記吐出条件を制御する前記<1>乃至前記<4>の何れかに記載の電極製造装置である。
<6> 前記結合検知情報は、前記所定の方向と交差する方向における前記点の位置情報と、前記所定の方向における前記点の位置情報と、を含む前記<1>乃至前記<5>の何れかに記載の電極製造装置である。
<7> 前記電極製造装置は、画像データに基づいて前記液体を吐出し、前記所定の方向と交差する方向における幅が異なる複数の画像データを、前記結合検知情報に対応付けて格納する格納手段を有し、前記制御手段は、前記結合検知情報に基づき、前記格納手段を参照して取得される前記画像データに応じて、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する前記<1>乃至前記<6>の何れかに記載の電極製造装置である。
<8> 前記検知手段により検知された前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて、前記所定の方向と交差する方向における幅が異なる前記複数の画像データを生成する生成手段をさらに備え、前記生成手段は、前記電極製造装置により前記所定の方向に搬送される前記電極基体上に前記液体を吐出する動作を行う前に、前記複数の画像データを生成し、前記格納手段は、前記生成手段により生成された前記複数の画像データを格納する前記<7>に記載の電極製造装置である。
<9> 前記所定の方向における前記検知手段と前記液体吐出手段との間の距離は、300.0[mm]以下である前記<1>乃至前記<8>の何れかに記載の電極製造装置である。
<10> 前記電極基体は、前記電極基体上に予め形成された所定のパターンを有する第1の膜領域を含み、前記制御手段は、前記結合検知情報に基づき前記液体吐出手段により吐出された前記液体によって、前記第1の膜領域を覆う第2の膜領域を形成するように、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する前記<1>乃至前記<9>の何れかに記載の電極製造装置である。
<11> 前記制御手段は、前記電極基体上において、前記所定の方向及び前記所定の方向と交差する方向それぞれに沿って前記第1の膜領域から所定の長さ分をはみ出しつつ、前記第1の膜領域を覆う前記第2の膜領域を形成するように、前記液体吐出手段による吐出条件を制御し、前記所定の長さは1.0[mm]以下である前記<10>に記載の電極製造装置である。
<12> 前記所定の方向における前記液体吐出手段の下流側に下流側検知手段をさらに有し、前記下流側検知手段は、前記電極基体上において、前記性状が異なる点を時系列に検知した複数の下流側検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の下流側検知情報が結合された下流側結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する前記<10>に記載の電極製造装置である。
<13> 前記<1>乃至前記<12>の何れかに記載の電極製造装置を有する蓄電デバイス製造装置である。
<14> 所定の方向に搬送される液体吐出対象上に液体を吐出する液体吐出装置であって、検知手段と、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられた液体吐出手段と、前記液体吐出手段による吐出条件を制御する制御手段と、を備え、前記液体吐出対象は、前記液体吐出対象上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する液体吐出装置である。
<15> 液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置による電極製造方法であって、前記電極製造装置が、検知手段により検知し、制御手段により、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段による吐出条件を制御し、前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する電極製造方法である。
<16> 液体を吐出することで、所定の方向に搬送される電極基体上に樹脂層又は無機層を形成する電極製造装置に処理を実行させるプログラムであって、検知手段により検知し、制御手段により、前記所定の方向における前記検知手段の下流側に設けられ、前記液体を吐出することで樹脂層又は無機層を形成する液体吐出手段による吐出条件を制御し、前記電極基体は、前記電極基体上において、性状が異なる点を前記所定の方向と交差する方向に沿って複数有し、前記検知手段は、少なくとも前記点を時系列に検知した複数の検知情報を出力し、前記制御手段は、前記複数の検知情報が結合された結合検知情報に基づいて前記液体吐出手段による吐出条件を制御する処理を前記電極製造装置に実行させるプログラムである。
【符号の説明】
【0230】
1 電極印刷装置(電極製造装置の一例、液体吐出装置の一例)
2 集電体
2a 電極合材層(第1の膜領域の一例)
2b 樹脂層(第2の膜領域の一例)
21~23 電極合材層領域
3 搬送機構
31 エンコーダ
4 検知器(検知手段の一例)
40、41~49 光センサ
40a 発光素子
40b 受光素子
5 液体吐出ヘッド(液体吐出手段の一例)
6 光源
7 ヒータ
8 操作部
11 計測部
12 判定部
13 取得部
14 補正部
15 制御部(制御手段の一例)
16、16c 格納部(格納手段の一例)
17 生成部(生成手段の一例)
100 処理部
111、112 検知情報
121、122 結合検知情報
90 画像データ
91、92、93、94 複数の画像データ
X 方向(所定の方向の一例)
Y 方向(所定の方向と交差する方向の一例)
M 設置距離
P はみ出し幅(所定の長さの一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0231】
【特許文献1】特開2018-65111号公報
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